印刷マスクのクリーニング装置及び印刷装置
【課題】 ローラ形状のクリーニング部材を押し当ててクリーニングする場合に比較して、印刷マスクの表面をより確実にクリーニングすることができるクリーニング装置及び印刷装置を提供する。
【解決手段】 複数の支持ローラ602、603、604に掛け渡されたクリーニングシート620と、クリーニングシート620を印刷マスク2に対して押圧するクリーニングヘッド610とを備える。クリーニングヘッド610で押圧されたクリーニングシート620が印刷マスク2の裏面を擦るように、クリーニングシート620及びクリーニングヘッド610を印刷マスク2の裏面に沿って移動させる。クリーニングシート610を押圧するクリーニングヘッド610の押圧面は、クリーニングシート620の移動方向について凸状に湾曲している。
【解決手段】 複数の支持ローラ602、603、604に掛け渡されたクリーニングシート620と、クリーニングシート620を印刷マスク2に対して押圧するクリーニングヘッド610とを備える。クリーニングヘッド610で押圧されたクリーニングシート620が印刷マスク2の裏面を擦るように、クリーニングシート620及びクリーニングヘッド610を印刷マスク2の裏面に沿って移動させる。クリーニングシート610を押圧するクリーニングヘッド610の押圧面は、クリーニングシート620の移動方向について凸状に湾曲している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の開口部が形成された印刷マスクをクリーニングするクリーニング装置及びそのクリーニング装置を用いる印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線基板等にクリーム半田を印刷する印刷装置に用いるメタル版(印刷マスク)をクリーニングするローラ形状のクリーニング部材であるクリーニングローラが知られている(特許文献1参照)。このクリーニングローラは、シャフトに弾性体を貼り合わせた太鼓型胴部とその胴部に貼り合わせたクリーニングシートとにより構成され、そのクリーニングシートが貼り合わせられたローラ表面がメタル版の表面に直接押し当てられる。
【特許文献1】特公平7−37135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記従来のクリーニングローラでは、そのローラ軸に直交する断面においてローラ表面とのメタル版(印刷マスク)の表面との接触幅を広くとることができないため、メタル版の裏面にクリーム半田が残留し、メタル版の裏面を確実にクリーニングすることができないおそれがある。
【0004】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、ローラ形状のクリーニング部材を押し当ててクリーニングする場合に比較して、印刷マスクの表面をより確実にクリーニングすることができるクリーニング装置及び印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、複数の開口部が形成された印刷マスクをクリーニングするクリーニング装置であって、複数の支持ローラに掛け渡されたシート状のクリーニング部材と、該クリーニング部材を印刷マスクに対して押圧する押圧部材と、該押圧部材で押圧された該クリーニング部材が該印刷マスクの被クリーニング面を擦るように、該クリーニング部材及び該押圧部材を該印刷マスクの被クリーニング面に沿って移動させる駆動手段とを備え、該クリーニング部材を押圧する該押圧部材の押圧面は、該クリーニング部材の移動方向について凸状に湾曲していることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のクリーニング装置において、上記押圧部材の押圧面に、上記クリーニング部材の移動方向と交差する方向に延在する溝が形成されていることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2のクリーニング装置において、上記クリーニング部材は、気流が厚さ方向に通過し得る素材で構成され、上記押圧部材の押圧面に形成された上記溝の開口から気流を引き込むように吸引する吸引手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項2又は3のクリーニング装置において、上記溝は、上記クリーニング部材の移動方向に複数本並設されていることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかのクリーニング装置において、上記クリーニング部材の移動方向について凸状に湾曲している上記押圧部材の押圧面の曲率半径は、該押圧面が上記印刷マスクの撓み形状に沿うように、該押圧部材の押し当て量及び上記印刷マスクのテンションに応じて設定されていることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかのクリーニング装置において、上記押圧部材の押圧面は、上記クリーニング部材の移動方向と交差する方向について凸状に湾曲していることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6のクリーニング装置において、上記クリーニング部材の移動方向と交差する方向について凸状に湾曲している上記押圧部材の押圧面の曲率半径は、該押圧面が上記印刷マスクの撓み形状に沿うように、該押圧部材の押し当て量及び上記印刷マスクのテンションに応じて設定されていることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれかのクリーニング装置において、上記シート状のクリーニング部材は、クリーンルーム無塵服用の織物の布であることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれかのクリーニング装置において、上記押圧部材の上記押圧面を有する表面部は、剛性材で形成されていることを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項1乃至9のいずれかのクリーニング装置において、上記クリーニング部材及び上記押圧部材を上記印刷マスクの被クリーニング面に沿って移動させているときに、該クリーニング部材を回転させるように上記支持ローラを回転駆動する回転駆動手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項1乃至9のいずれかのクリーニング装置において、上記クリーニング部材及び上記押圧部材を上記印刷マスクの被クリーニング面に沿って移動させていないクリーニング待機中に、該印刷マスクに該クリーニング部材の未使用表面が対向するまで該クリーニング部材を回転させるように上記支持ローラを回転駆動する回転駆動手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項1乃至11のいずれかのクリーニング装置において、上記クリーニング部材の移動方向と交差する方向に、上記印刷マスクの被クリーニング面に沿って該クリーニング部材を往復動させる手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、複数の開口部が形成された印刷マスクを印刷対象物上にセットし、該印刷マスクの開口部に印刷物質を充填した後、該印刷マスクと該印刷対象物とを離間させることにより、該印刷対象物の被印刷面に該印刷物質を印刷する印刷装置であって、上記印刷マスクの上記印刷対象物と対向する面をクリーニングするクリーニング装置として、請求項1乃至12のいずれかのクリーニング装置を用いたことを特徴とするものである。
【0006】
請求項1のクリーニング装置及びそのクリーニング装置を備えた請求項13の印刷装置では、クリーニング部材及び押圧部材を印刷マスクの被クリーニング面に沿って移動させ、押圧部材で押圧されたクリーニング部材が印刷マスクの被クリーニング面を擦ることにより、印刷マスクの被クリーニング面に付着している印刷物質等のクリーニング対象の付着物が除去される。ここで、クリーニング部材を押圧する押圧部材の押圧面は、クリーニング部材の移動方向について凸状に湾曲しているため、押圧部材で押圧されたクリーニング部材が接触することで印刷マスクの表面が撓んでも、その印刷マスクの湾曲した表面にクリーニング部材の凸状に湾曲した表面を接触させて両者の接触面積を広くした状態で、印刷マスクの被クリーニング面をクリーニング部材で擦ることができる。しかも、そのクリーニング部材を押圧する押圧部材の押圧面の湾曲は、半径で曲率が決まってしまうローラ状のクリーニング部材の外周面とは異なり、クリーニング対象の印刷マスクの種類やクリーニング部材の押圧力等のクリーニング条件に応じて比較的自由に設定することにより、印刷マスクの被クリーニング面とクリーニング部材の表面との接触面積を確保できる。
【0007】
また、請求項2のクリーニング装置及びそのクリーニング装置を備えた請求項13の印刷装置では、押圧部材の押圧面に形成されている溝の角の部分でクリーニング部材を印刷マスクの被クリーニング面に集中的に押し当てることができる。この状態で、クリーニング部材が印刷マスクの被クリーニング面を擦ることにより、印刷マスクの被クリーニング面に付着している付着物を掻き取るように除去することができるので、更にクリーニング性能が高まる。
【0008】
また、請求項3のクリーニング装置及びそのクリーニング装置を備えた請求項13の印刷装置では、押圧部材の押圧面に形成された溝の開口から気流を引き込むように吸引することにより、印刷マスク側からクリーニング部材を通して押圧部材の押圧面に形成された溝の開口に引き込むような気流が発生する。この気流により、印刷マスクがクリーニング部材により強く押し付けられクリーニング部材によるクリーニング性能を高めるとともに、印刷マスクの被クリーニング面に付着している付着物を吸い込むように除去できるので、更にクリーニング性能が高まる。
【0009】
また、請求項4のクリーニング装置及びそのクリーニング装置を備えた請求項13の印刷装置では、押圧部材の押圧面上の溝が、クリーニング部材の移動方向に複数本並設されているため、前述の溝の角部分による印刷マスクの被クリーニング面上の付着物に対する掻き取りを複数箇所で多段階に行うことができるので、更にクリーニング性能が高まる。
【0010】
上記印刷マスクは押圧部材でクリーニング部材が押し当てられているため撓んでおり、その撓みの程度は、押圧部材の押し当て量及び印刷マスクのテンションに応じて変化する。
そこで、請求項5のクリーニング装置及びそのクリーニング装置を備えた請求項13の印刷装置では、押圧部材の押し当て量及び印刷マスクのテンションに応じて、押圧部材の押圧面が印刷マスクの撓み形状に沿うように押圧面の曲率半径が設定されている。従って、押圧部材の押し当て量及び印刷マスクのテンションの大きさにかかわらず、押圧部材の押圧面で押し当てられるクリーニング部材が印刷マスクの被クリーニング面に対して確実に接触するようになり、印刷マスクの被クリーニング面とクリーニング部材の表面との接触面積を確保できるため、更にクリーニング性能が高まる。
【0011】
クリーニング部材の移動方向と交差する方向における印刷マスクの両端部が枠体に固定されている場合に、クリーニング部材が印刷マスクに対して押圧されると、印刷マスクの中央部が凹状にへこむように湾曲するため、上記交差の方向における両端部側でクリーニング部材の押圧力が強くなり中央部側でクリーニング部材の押圧力が弱くなる。
そこで、請求項6のクリーニング装置及びそのクリーニング装置を備えた請求項13の印刷装置では、押圧部材の押圧面が、クリーニング部材の移動方向と交差する方向について凸状に湾曲しているため、上記交差の方向における印刷マスクの両端部が枠体に固定されている場合であっても、上記交差の方向における両端部側と中央部側との間でクリーニング部材の押圧力の差が小さくなる。従って、印刷マスクの全体にわたって良好なクリーニング性能が得られる。
【0012】
上記交差の方向における印刷マスクの撓みの程度は、押圧部材の押し当て量及び印刷マスクのテンションに応じて変化する。
そこで、請求項7のクリーニング装置及びそのクリーニング装置を備えた請求項13の印刷装置では、押圧部材の押し当て量及び印刷マスクのテンションに応じて、押圧部材の押圧面が印刷マスクの上記交差の交差における撓み形状に沿うように押圧面の曲率半径が設定されている。従って、押圧部材の押し当て量及び印刷マスクのテンションの大きさにかかわらず、押圧部材の押圧面で押し当てられるクリーニング部材が印刷マスクの被クリーニング面に対して確実に接触するようになり、印刷マスクの被クリーニング面とクリーニング部材の表面との接触面積を確保できるため、更にクリーニング性能が高まる。
【0013】
また、請求項8のクリーニング装置及びそのクリーニング装置を備えた請求項13の印刷装置では、上記シート状のクリーニング部材が織物の布であるため、不織布の場合に比較して繊維のゴミが発生しにくく、繊維のゴミによる印刷マスクの汚染を防止できる。しかも、上記クリーニング部材に用いる布はクリーンルーム無塵服用の布であるため、上記繊維のゴミが更に発生しにくい。
【0014】
上記押圧部材の押圧面を有する表面部が弾性体で形成されていると、その押圧部材で印刷マスクに押し当てられるクリーニング部材の一部が、印刷マスクの開口部の中に入り込むように変形し、その開口部の内壁面に残留している印刷物質を掻き取る。このクリーニング部材いよって印刷マスクの開口部の内壁面から掻き取られた印刷物質は、印刷マスクの被クリーニング面に付着して印刷マスクを汚染し、クリーニング性能の低下につながる。
そこで、請求項9のクリーニング装置及びそのクリーニング装置を備えた請求項13の印刷装置では、押圧部材の上記押圧面を有する表面部を剛性材で形成することにより、押圧部材で印刷マスクに押し当てられるクリーニング部材が、印刷マスクの開口部の中に入り込むように変形しにくくなるので、印刷マスクの開口部の内壁面から掻き取られた印刷物質による被クリーニング面の汚染を防止できる。
【0015】
また、請求項10のクリーニング装置及びそのクリーニング装置を備えた請求項13の印刷装置では、クリーニング部材及び押圧部材を印刷マスクの被クリーニング面に沿って移動させているときに、クリーニング部材を回転させることにより、印刷マスクの被クリーニング面に対するクリーニング部材の相対的な移動速度を高めることができ、更にクリーニング性能が高まる。
【0016】
また、請求項11のクリーニング装置及びそのクリーニング装置を備えた請求項13の印刷装置では、クリーニング部材及び押圧部材を印刷マスクの被クリーニング面に沿って移動させていないクリーニング待機中に、印刷マスクにクリーニング部材の未使用表面が対向するまでクリーニング部材を回転させる。このクリーニング待機中におけるクリーニング部材の回転により、クリーニング部材の使用済みの部分が印刷マスクのクリーニングに再使用されるのを回避できるため、クリーニング部材で印刷マスクから一旦除去された物質によって印刷マスクが汚染されるのを防止できる。
【0017】
請求項12のクリーニング装置及びそのクリーニング装置を備えた請求項13の印刷装置では、上記クリーニング部材の移動方向と交差する方向に、印刷マスクの被クリーニング面に沿ってクリーニング部材を往復動させることにより、その交差の方向について印刷マスクの被クリーニング面に対してクリーニング部材を摺擦させる。これにより、印刷マスクの被クリーニング面に付着している付着物に対するクリーニング部材の除去効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、クリーニング部材を押圧する押圧部材の押圧面は、クリーニング部材の移動方向について凸状に湾曲しているため、押圧部材で押圧されたクリーニング部材が接触することで印刷マスクの表面が撓んでも、その印刷マスクの湾曲した表面にクリーニング部材の凸状に湾曲した表面を接触させて両者の接触面積を広くした状態で、印刷マスクの被クリーニング面をクリーニング部材で擦ることができる。しかも、そのクリーニング部材を押圧する押圧部材の押圧面の湾曲は、半径で曲率が決まってしまうローラ状のクリーニング部材の外周面とは異なり、クリーニング対象の印刷マスクの種類やクリーニング部材の押圧力等のクリーニング条件に応じて比較的自由に設定することにより、印刷マスクの被クリーニング面とクリーニング部材の表面との接触面積を確保できる。従って、ローラ形状のクリーニング部材を押し当ててクリーニングする場合に比較して、印刷マスクの表面をより確実にクリーニングすることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る印刷方法を採用した印刷工程を含む基板製造方法全体の一例を示す工程図である。また、図2(a)及び(b)はそれぞれ、本実施形態の基板製造方法で製造する電子回路基板1の断面構造の一例を示す説明図及び平面図である。
基板1は、図2(a)に示すように第1の電子部品としての表面実装用の樹脂外装部品(以下、「樹脂外装チップ」という。)1bと、第2の電子部品としての表面実装用のベアチップ部品(以下、単に「ベアチップ」という。)1cとが実装された電子回路基板である。樹脂外装チップ1bは、樹脂で封止された半導体IC、抵抗、コンデンサー等の部品であり、ベアチップ1cは、樹脂で封止する前の裸の半導体ICチップである。基板1とベアチップ1cとの間には、ベアチップ1cが基板1上に安定して固定されるように樹脂55が充填されている。一方、基板1と樹脂外装チップ1bとの間には樹脂が充填されていない。
【0020】
また、上記基板1は、図2(b)に示すように所定の機能を有する同じ形状及び回路の仕様を有する個別基板1aを多数(例えば数10個〜数100個)並べて一括形成された基板である。この基板1は、上記樹脂外装チップ1bやベアチップ1cが実装され所定の機能検査が行われた後、各個別基板1aに分離される。これらの分離された個別基板1aの一つ一つが所定の機能を有する回路モジュール部品として用いられる。
【0021】
図1に示す基板製造方法においては、まず、樹脂外装チップ1bやベアチップ1cが実装される前の基板1に、導電性の印刷物質(印刷剤)としてのクリーム半田3を印刷する半田印刷工程(P1)を実行される。この半田印刷工程の後、同一の1台の部品装着装置により、上記樹脂外装チップ1bを基板1の所定位置に装着する第1のマウント工程(P2)と、上記ベアチップ1cを基板1の所定箇所に装着する第2のマウント工程(P3)とが実行される。なお、第1のマウント工程と第2のマウント工程の順序は逆でもよい。
次に、上記樹脂外装チップ1b及びベアチップ1cのマウント工程の後、リフロー工程(P4)を実行する。このように2つのマウント工程(P2,P3)を実行した後に、リフロー工程を実行することにより、基板1上の電子部品に対する加熱回数を低減することができる。
次に、上記リフロー工程の後、基板1とベアチップ1cとの隙間に、その隙間を埋める充填剤としての樹脂55を充填する、アンダーフィル処理工程(P5)を実行する。
以上により、アンダーフィル処理を施さない外装チップ1bとアンダーフィル処理を施すベアチップ1cとを、同一の基板1上に混在実装することができる。
【0022】
以上、本実施形態の基板製造方法によれば、基板1上に実装した電子部品に対する加熱回数を低減することができるので、これら電子部品に与えるヒートショック回数を低減することができる。また、従来では個別に実施されていた樹脂外装部品1bのリフロー工程とベアチップ1cのリフロー工程とを同時に実施するので、処理工程数を低減して作業性を向上させることができる。
【0023】
上記基板製造方法を実現することができる基板製造システムは、例えば、基板1の所定の電極上にクリーム半田3を印刷する印刷装置と、基板1の所定位置に部品を位置決めして装着する部品装着装置としてのマウント装置と、ベアチップ1c及び樹脂外装チップ1bが装着された基板1を加熱するリフロー装置と、ベアチップ1cと基板1との隙間に樹脂55を充填するアンダーフィル装置とを用いて構成することができる。
【0024】
図3は、印刷方法(半田印刷工程)に用いることができる印刷装置の一例を示す概略構成図である。この印刷装置は、シート状のプラスチック材からなる孔版マスクである印刷マスク2を用いて、導電性の印刷物質(印刷剤)としてのクリーム半田3を基板1に印刷するものである。印刷マスク2は、所定の印刷パターンに応じて形成された厚さ方向に貫通した複数の開口部201を備え、所定のテンションでマスク取付部材としての四角形のマスク取付枠20に、紗膜を使用せずに直接貼り合わせられている。このマスク取付枠20に取り付けられた印刷マスク2は、マスク支持手段としてのマスク枠保持部材40で支持されている。
【0025】
上記基板1は、電極が形成されている電極形成面(被印刷面)が上面になるようにステージ5上に保持されている。このステージ5の下面には、基板1の電極形成面(被印刷面)に垂直な上下方向に沿ってステージ5を直線状に進退移動させる駆動手段としての基板駆動ユニット7が設けられている。この基板駆動ユニット7は、正逆回転可能なステッピングモータ700と、ボールネジ及びモータ700で回転駆動される図示しないナット等からなるステージ上下動機構701とを用いて構成されている。このステッピングモータ700を回転制御することにより、上記ステージ5を上下方向に駆動し、基板1を、印刷マスク2に接触する所定の印刷位置まで上昇させたり、印刷マスク2から離間させるように下降させたりすることができる。
【0026】
また、上記印刷位置に移動したステージ5の上方には、印刷マスク2の開口部201にクリーム半田3を充填する充填手段が設けられている。この充填手段は、印刷マスク2の開口部201にクリーム半田3を刷り込むための充填部材としてのスキージ8、そのスキージ8を駆動ベルト等によって図中左右方向に駆動するための図示しないスキージ駆動ユニット等により構成されている。
【0027】
上記基板1上に印刷されるクリーム半田は、印刷対象物である基板1や半田付けされる電子部品の種類に応じて、所定の半田や添加物を含有するものが用いられる。例えば、上記微細パターンの印刷マスク2を用いて印刷するときに用いるクリーム半田としては、例えば半田の平均粒径が10μm以下であり、フラックス成分の含有率が11質量%程度のものが好ましい。
【0028】
上記印刷用マスク2には、各種電子部品が実装される電極にそれぞれ対応する複数の開口部201が設けられている。この開口部201は、印刷マスクの厚さ方向に貫通した貫通孔であり、その印刷面方向における形状及び寸法は、印刷対象の電極の寸法や形状等に応じて設定される。例えば微小印刷パターンの印刷を行う場合、開口部201の寸法及び形状は、一辺が100〜200μm程度の四角形や、同様な寸法の直径を有する円形である。また、印刷マスク2のベースシートとしては、例えば、厚さが数10〜数100μm(より好適な具体例としては約150μm)の2軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)又はポリイミド等のプラスチックシートを用いる。また、ベースシートに対してレーザ照射、放電加工、プレス加工などを行うことにより開口部が形成される。また、ベースシートの印刷対象物に接する側の表面には、ベースシートよりも熱収縮率が大きい被膜として、カーボンを含有させたポリウレタン樹脂からなる導電性被膜を形成してもよい。このように導電性被膜を形成しておくと、印刷マスク2を用いて印刷する場合に、スキージングや印刷マスクの剥離時の静電気による印刷対象物(基板)上のデバイスの破損を防止することができる。
【0029】
上記印刷装置のように印刷マスク2を用いてクリーム半田3を印刷する場合、図4に示すように、印刷マスク2の開口部201内に充填されたクリーム半田の一部3’が、印刷マスク2の裏面(基板に対向する面)と基板1との間に回り込み、印刷マスク2の裏面に付着するおそれがある。この印刷マスク2の裏面に付着した付着物は、次の印刷工程において基板1の予定外の領域に付着し、基板1の汚れや回路の短絡などの不具合の原因になるおそれがある。そこで、本実施形態の印刷装置では、後述のクリーニング装置により、所定のタイミングで印刷マスク2の裏面(基板に対向する面)をクリーニングしている。特に、基板1上の多数の個別基板に対してチップ実装用のクリーム半田3を一括して印刷し、そのクリーム半田3として微細粒径(例えば10μm以下程度)の半田粒子を有するものを用いる場合は、印刷マスク2の裏面に残留して付着したクリーム半田を確実に除去するのが難しい。そのため、本実施形態では、以下に示すように従来よりもクリーニング性能を高めたクリーニング装置を用いて印刷マスク2をクリーニングしている。
【0030】
図5は、印刷マスク2をクリーニングするときの印刷装置の一例を示す概略構成図である。クリーム半田3の印刷に1回又は複数回使用された印刷マスク2をクリーニングするときは、その印刷マスク2の下にセットされていた基板1のステージ5及び基板駆動ユニット7を、クリーニング装置6に入れ換える。あるいは、基板1のステージ5及び基板駆動ユニット7の上方にセットされていた印刷マスク2を、クリーニング装置6の上に移動してセットするようにしてもよい。クリーニング装置6は、本体ステージ部600上にセットされたクリーニングヘッドユニット601が印刷マスク2の裏面に沿った方向(図中のB方向)に移動するように駆動される。印刷マスク2の1回のクリーニング工程は、印刷マスク2の裏面に沿って一方向に1回だけ移動(片道移動)することで完了してもよいし、印刷マスク2の裏面に沿って1回又は複数回往復するように移動することで完了してもよい。また、本体ステージ部600は、印刷マスクに対するクリーニングヘッドユニット601の上下方向の相対的な位置を調整可能に構成してもよい。
【0031】
図3及び図5に示すように、上記クリーニング装置6、基板駆動ユニット7及びスキージ駆動ユニットは、CPU、RAM、ROMなどの備えるコンピュータ装置で構成された制御手段としての主制御部100によって制御される。主制御部100は、入力装置101からオペレータが入力した処理指示に基づいて、ハードディスクなどで構成された記憶装置102からプログラムや各種制御用データを読み込み、読み込んだプログラムを実行することにより、印刷マスククリーニング工程を含む所定の印刷工程を行うように、上記クリーニング装置6、基板駆動ユニット7及びスキージ駆動ユニット等を制御する。
【0032】
図6は、上記クリーニングヘッドユニット601の一構成例を示す概略構成図である。このクリーニングヘッドユニット601は、シート状のクリーニング部材(以下、「クリーニングシート」という。)620を備えている。このクリーニングシート620は、無端ベルト状の形状をしており、複数の支持ローラ602、603、604及びシート押圧部材としてのクリーニングヘッド610に掛け渡されている。支持ローラ602は、クリーニングシート620に付与されるテンションを調整するためのテンションローラとしても機能し、支持ローラ603は、所定のタイミングでクリーニングシート620を図中矢印Dで示す反時計方向に回転させるための回転駆動ローラとしても機能する。支持ローラ(回転駆動ローラ)603は図示しない回転駆動源としてのモータの回転軸に、ギヤ等の駆動伝達部材を介して連結されている。
【0033】
上記クリーニングヘッド610は、ヘッド上下動装置15により、印刷マスク2に押し当てるように上昇させたり印刷マスク2から離すように下降させたりすることができる。ヘッド上下動装置15としては、例えば、気体供給装置から所定圧力の気体が供給されるエアーシリンダーや、駆動モータで回転駆動されるボールネジ等を用いることができる。また、クリーニングヘッド610は所定の上限位置で上昇を停止するように制御される。例えば、クリーニングヘッド610が所定の上限位置に到達したときに作動するマイクロスイッチ等のストッパーを設けておき、このストッパーの出力に基づいてクリーニングヘッド610の上昇駆動を停止するようにヘッド上下動装置15を制御する。また、クリーニングシート620のテンションを検知するセンサーを設けておき、このセンサーの出力が所定の大きさになったときにクリーニングヘッド610が所定の上限位置に到達したと判断し、クリーニングヘッド610の上昇駆動を停止するようにヘッド上下動装置15を制御してもよい。
【0034】
また、後述するように、クリーニングヘッド610の押圧面は、クリーニングシート620の移動方向(図中の矢印Bの方向)について凸状に湾曲している。そして、このクリーニングヘッド610で押圧されたクリーニングシート620が印刷マスク2の被クリーニング面である裏面を擦るように、少なくともクリーニングヘッド610及びクリーニングシート620を含むクリーニングヘッドユニット601を印刷マスク2の裏面に沿って移動させる駆動手段としてのクリーニングユニット駆動機構を備えている。
【0035】
図7は、上記クリーニングヘッドユニット601の他の構成例を示す概略構成図である。このクリーニングヘッドユニット601は、図6のユニットとは異なり、無端ベルト状のクリーニングシート620に代えて巻き取り式のクリーニングシート620が用いられ、支持ローラ(回転駆動ローラ)603に代えてシート供給ローラ606とシート回収ローラ605とを備えている。そして、これら2つのローラ605,606のうち少なくともシート回収ローラ605は、所定のタイミングでクリーニングシート620を図中矢印Dで示す反時計方向に回転させるための回転駆動ローラとしても機能する。この回転により、クリーニングシート620の使用済み部分がシート回収ローラ605に回収されるとともに、クリーニングシート620の未使用部分がシート供給ローラ606から供給される。
【0036】
図8は、上記クリーニングヘッドユニット601の更に他の構成例を示す概略構成図である。このクリーニングヘッドユニット601は、図6のユニットとは異なり、クリーニングシート620が2つの支持ローラ607a,607bに掛け渡された簡易構成になっている。この2つの支持ローラ607a,607bの一方が、所定のタイミングでクリーニングシート620を図中矢印Dで示す反時計方向に回転させるための回転駆動ローラとしても機能する。
【0037】
図9は、上記クリーニングヘッドユニット601の更に他の構成例を示す概略構成図である。このクリーニングヘッドユニット601は、図8のユニットとは異なり、無端ベルト状のクリーニングシート620に代えて巻き取り式のクリーニングシート620が用いられ、支持ローラ607aに代えてシート回収ローラ608aを備え、支持ローラ607bに代えてシート供給ローラ608bを備えている。そして、これら2つのローラ608a,608bのうち少なくともシート回収ローラ608aは、所定のタイミングでクリーニングシート620を図中矢印Dで示す反時計方向に回転させるための回転駆動ローラとしても機能する。この回転により、クリーニングシート620の使用済み部分がシート回収ローラ608aに回収されるとともに、クリーニングシート620の未使用部分がシート供給ローラ608bから供給される。
【0038】
上記クリーニングシート620は、クリーニングヘッドユニット601を移動させているときに回転駆動してもいいし、クリーニングヘッドユニット601を移動させていないクリーニング待機中に、印刷マスク2にクリーニングシート620の未使用表面が対向するまでクリーニングシート620を回転駆動してもよい。
【0039】
図10(a)、(b)及び(c)はそれぞれ、上記クリーニングヘッドユニット601を構成するクリーニングヘッド610の一構成例を示す正面断面図、側面断面図及び平面図である。クリーニングヘッド610の押圧面610aは、その面に沿った互いに交差する2方向それぞれについて所定の曲率半径で凸状に湾曲している。より具体的には、クリーニングヘッド610の押圧面610aは、クリーニング時のクリーニングヘッド610及びクリーニングシート620の移動方向(短手方向)について曲率半径R1で湾曲し、その移動方向と直交する長手方向について曲率半径R2で湾曲している。これらの曲率半径R1及びR2は、上記押圧面610aが印刷マスク2の撓み形状に沿うように、クリーニングヘッド610の押し当て量や、印刷マスク2の材料(ベースシート)、テンション及びマスク取付枠20のサイズ(特に、枠の内側のサイズ)に応じて設定される。例えば、印刷マスク2の材料(ベースシート)がPETであり、マスク取付枠20のサイズが550〜650mm程度である場合は、上記曲率半径R1,R2は数1000mm〜数10000mm(より好適には9200mm程度)に設定される。このようにクリーニングヘッド610の押圧面610aが所定の曲率で凸状に湾曲しているため、図11(a)及び(b)に示すようにクリーニングヘッド610で押圧されたクリーニングシート620が接触することで印刷マスク2の表面が撓んでも、その印刷マスク2の湾曲した表面にクリーニングシート620の凸状に湾曲した表面を接触させて両者の接触面積を広くした状態で、印刷マスク2の裏面(被クリーニング面)をクリーニングシート620で擦ることができる。
【0040】
図12は、クリーニングヘッド610の押し当て量ΔDの説明図である。クリーニングヘッド610の押圧面610aの中央上端と基準水平面との間の距離(凸部の高さ)をΔD1とし、クリーニングヘッド610の押圧面610aの基準水平面と印刷マスク2下面との間の距離をΔD2とすると、印刷マスク2に対するクリーニングヘッド610の押し当て量ΔDはΔD1とΔD2の和になる。例えば、上記ΔD1及びΔD2それぞれが0.78mm及び1.85mmである場合には、上記押し当て量ΔDは2.63mmになる。また、この数値例における印刷マスク2の中央部及び端部のテンション(伸び量)をそれぞれ測定したところ0.58mm及び0.53mmであった。
【0041】
また、上記クリーニングヘッド610の押圧面610aを有する表面部は、弾性材ではなく剛性材で形成するのが好ましい。このようにクリーニングヘッド610の表面部を剛性材で形成することにより、クリーニングヘッド610で印刷マスク2に押し当てられるクリーニングシート620が、印刷マスク2の開口部201の中に入り込むように変形しにくくなるので、印刷マスク2の開口部201の内壁面から掻き取られたクリーム半田3による裏面(被クリーニング面)の汚染いわゆる裏汚れを防止できる。
【0042】
また、クリーニングヘッド610の押圧面610aには、クリーニング時のクリーニングヘッド610及びクリーニングシート620の移動方向と直交する長手方向に延在する複数の溝611、612、613が形成されている。これらの溝のうち中央の溝611は裏側まで貫通した貫通孔になっている。クリーニング動作には、溝611の貫通孔を通して上部開口から気流を引き込むように吸引される。この気流を吸引する吸引手段は、取り付け孔614を介してクリーニングヘッド610がネジ留めで固定される図示しないベース部材に形成された吸引気流経路、真空ポンプ、および、その吸引気流経路と真空ポンプとの間をつなぐように設けられる配管などで構成される。
【0043】
図13は、上記クリーニングヘッド610の各溝611、612、613と印刷マスク2のサイズとの関係を示す説明図である。クリーニングヘッド610の押圧面610aが形成されている凸状部分の長手方向の長さLc1は、印刷マスク2のマスク取付枠20と干渉しないように、マスク取付枠20の内側のサイズLm1よりも短く設定されている。また、クリーニングヘッド610の押圧面610aに形成されている溝のうち長手方向の長さが一番短い溝(本実施例の場合は中央の貫通溝611)の長さLc2は、印刷マスク2の開口部201が形成されている開口部形成領域(印刷領域)202を少なくもクリーニングできるように、その開口部形成領域202の長さLm2よりも長く設定されている。また、クリーニングシート620の幅についても、上記印刷マスク2の開口部形成領域202に接触してクリーニングできるように、その開口部形成領域202の長さLm2よりも長く設定されている。また、上記クリーニングヘッド610の押圧面610aが形成されている凸状部分の角でクリーニングシート620の幅方向の端部が破損しないように、クリーニングシート620の幅は、その押圧面610aが形成されている凸状部分の長手方向の長さLc1よりも短く設定するのが好ましい。クリーニングヘッド610の押圧面610aに形成されている中央の貫通溝611の開口が露出して吸引手段に過剰な負荷が加わるのを防止するために、クリーニングシート620の幅は、その貫通溝611の長さLc2よりも長く設定するのが好ましい。
【0044】
なお、上記クリーニングヘッド610は、その長手方向と直交する短手方向について分割された複数部材で構成してもよい。例えば、上記クリーニングヘッド610は、上記中央の溝611を有する中央ヘッド部材、及びその両側の溝612、613をそれぞれ有する上流側ヘッド部材及び下流側ヘッド部材の、3つの部材で構成してもよい。この場合、上記中央ヘッド部材、上流側ヘッド部材及び下流側ヘッド部材の3つの部材3つの部材の印刷マスク2に対する突き出し量を互いに独立に設定できるようにしてもよい。
【0045】
また、上記クリーニングシート620の材料としては、繊維のゴミによる印刷マスクの汚染を防止できるように、繊維のゴミが発生しにくいクリーンルーム無塵服用の織物(クロスタイプ)の布が好ましい。また、このクリーニングシート620に用いる布の繊維の断面形状は、円形ではなく、クリーニング対象の物質であるクリーム半田を巻き込みやすい多角形(例えば三角形)が好ましい。更に、上記クリーニングシート620に用いる布の繊維は細く密度が高いのが好ましい。より具体的には、クリーニングシート620の繊維の断面におけるの大きさ(太さ)は、1〜10μmの範囲(より好しくは2〜9μmの範囲)がよい。
【0046】
なお、クリーニングシート620の繊維が細すぎたり密度が高すぎたりすると、繊維の腰が弱くなりすぎてしまい、繊維内に一旦取り込んだ半田を離す(印刷マスク側に戻す)おそれがあるので、繊維の太さの下限や密度の上限は、その繊維の編み方等とのバランスを考慮して設定するのが好ましい。
【0047】
更に、上記クリーニングシート620の材料としては、例えば、ナイロン6(含有量:50%)及びポリエステル(含有量:50%)からなる樹脂繊維のシート、ポリエチレンテレフタレート(含有量:66.6%)、ポリカプロラクタムアミド(含有量62.8%)及び二酸化チタン(含有量:0.3未満)からなるを含む樹脂繊維のシートを使用することができる。この例示したような材料からなる樹脂繊維を目付量(密度):100〜200g/m2程度及び厚み:0.18mm程度で編み込んで布(クロス)状にすることにより、クロスタイプのシートを得ることができる。また、これらのクロスタイプのシートと同等な特性が得られるものであれば、不織布タイプのシートであってもよい。
【0048】
また、上記クリーニングシート620としては、市販の樹脂繊維のシートを用いることができる。例えば、旭化成せんい株式会社製の品名:「ベンリーゼ(登録商標)」,型式:TS100−350*18や、NI帝人商事株式会社製の品名:「ミクロスター(登録商標)」,型式:G89001を用いることができる。
【0049】
また、印刷マスク2のクリーニングの際に、クリーニングシート620に対する溶剤(例えばIPA:イソプロピルアルコール)等の吹き付けは行わずに、乾燥状態でクリーニングシート620を用いるのが好ましい。上記溶剤などの吹き付けを行うと、印刷マスク2の開口部201内に残留しているクリーム半田のフラックス成分が印刷マスク2の裏面側に引き出され、その印刷マスク2を用いた次の印刷工程で印刷不良が発生するおそれがある。
【0050】
以上、本実施形態における印刷マスク2のクリーニング装置及びそれを備えた印刷装置によれば、クリーニングシート620を押圧するクリーニングヘッド610の押圧面610aは、クリーニングヘッドユニット601(クリーニングシート620)の移動方向について凸状に湾曲しているため、クリーニングヘッド610で押圧されたクリーニングシート620が接触することで印刷マスク2が撓んでも、その印刷マスクの湾曲した裏面にクリーニングシート620の凸状に湾曲した表面を接触させて両者の接触面積を広くした状態で、印刷マスク2の裏面をクリーニングシート620で擦ることができる。しかも、そのクリーニングシート620を押圧するクリーニングヘッド610の押圧面610aの湾曲は、半径で曲率が決まってしまう従来のクリーニングローラの外周面とは異なり、クリーニング対象の印刷マスク2の種類やクリーニングシート620押圧力等のクリーニング条件に応じて比較的自由に設定することにより、印刷マスク2の裏面とクリーニングシート620との接触面積を確保できる。従って、従来のローラ形状のクリーニング部材であるクリーニングローラを押し当ててクリーニングする場合に比較して、印刷マスク2の表面をより確実にクリーニングすることができる。
また、本実施形態によれば、クリーニングヘッド610の押圧面610aに形成されている溝611、612、613の角の部分でクリーニングシート620を印刷マスク2の裏面に集中的に押し当てることができる。この状態で、クリーニングシート620が印刷マスク2の裏面を擦ることにより、印刷マスク2の裏面に付着しているクリーム半田3等の付着物を掻き取るように除去することができるので、更にクリーニング性能が高まる。
また、本実施形態によれば、クリーニングヘッド610の押圧面610aに形成された中央溝611の開口から気流を引き込むように吸引することにより、印刷マスク2側からクリーニングシート620を通して中央溝611の開口に引き込むような気流が発生する。この気流により、印刷マスク2がクリーニングシート620により強く押し付けられクリーニングシート620によるクリーニング性能を高めるとともに、印刷マスク2の裏面に付着しているクリーム半田3等の付着物を吸い込むように除去できるので、更にクリーニング性能が高まる。
また、本実施形態によれば、クリーニングヘッド610の押圧面610aに溝611、612、613が複数本並設されているため、前述の溝の角部分による印刷マスク2の裏面上の付着物に対する掻き取りを複数箇所で多段階に行うことができるので、更にクリーニング性能が高まる。
また、本実施形態によれば、クリーニングヘッド610の押圧面610aが、クリーニングヘッドユニット601(クリーニングシート620)の移動方向と交差する長手方向について凸状に湾曲しているため、上記長手方向における印刷マスク2の両端部が枠体20に固定されている場合であっても、その長手方向における両端部側と中央部側との間でクリーニングシート620の押圧力の差が小さくなる。従って、印刷マスク2の全体にわたって良好なクリーニング性能が得られる。
【0051】
特に、本実施形態によれば、基板1上の多数の個別基板に対してチップ実装用のクリーム半田3を一括して印刷し、そのクリーム半田3として微細粒径(例えば10μm以下程度)の半田粒子を有するものを用いる高精細の印刷を行う場合にも、印刷マスク2の裏面に残留して付着したクリーム半田を確実に除去することができる。従来のクリーニングローラを用いたクリーニング装置の場合には、かかる高精細の印刷に用いた印刷マスク2の印刷領域の中央部分に、クリーニング部材移動方向に沿って帯状のクリーニング不良領域が発生してしまう。これに対し、本実施形態のクリーニング装置を用いた場合は、上記帯状のクリーニング不良領域の発生もなく、印刷マスクの裏面の全体にわたって良好なクリーニング性能が得られる。
【0052】
図14は、上記図6の構成のクリーニング装置6を用いて印刷マスク3をクリーニングしたときのクリーニング性能を測定したクリーニングテストの結果を示している。このクリーニングテストでは、クリーニングシート620として、繊維の太さは2〜9μmのクリーンルーム無塵服用の織物の布を用いた。このクリーニング装置6を用い、1回の印刷工程で用いた印刷マスク3の裏面をクリーニングするようにクリーニングヘッドユニット601を一往復させた。この後、印刷マスク2の裏面を顕微鏡で残留の半田玉を観察し、「拭き取り率」を求めた。ここで、「拭き取り率」は、顕微鏡で観察した全領域(クリーニングした全領域)の面積を複数の観察区画に分割し、その観察区画の総数(N0)のうち、半田玉が1個も残留していない観察区画の数(N1)の割合である。すなわち、「拭き取り率」(%)は、N1÷N0×100で算出した。以上の印刷マスク2を用いた印刷、印刷マスク2のクリーニング及びクリーニング性能の測定を、同じ印刷マスク2を用いて5回繰り返した。
【0053】
図14に示すように、本実施形態のクリーニング装置6において、繊維の太さは2〜9μmのクリーンルーム無塵服用の織物の布からなるクリーニングシート620を用いた場合は、5回の印刷を行った場合でも拭き取り率80%以上の良好なクリーニング性能が得られた。これに対し、クリーニングシートとして繊維の太さが13〜16μmの不織布を用いた場合は、図15に示すように、印刷及びクリーニングを重ねるたびにクリーニング性能が低下し、4回目以降では、「拭き取り率」が20〜40%程度まで落ち込んだ。
【0054】
なお、上記実施形態において、上記クリーニングシート620は、クリーニングヘッドユニット601の移動方向と交差する方向であるクリーニングヘッド610の長手方向に、印刷マスク2の裏面(被クリーニング面)に沿ってクリーニングシート620を往復動(振動)させてもよい。このようにクリーニングヘッド610の長手方向にクリーニングシート620を往復動させることにより、その長手方向について印刷マスク2の裏面に対してクリーニングシート620を摺擦させる。これにより、印刷マスク2の裏面に付着している付着物に対する除去効率を高めることができる。
【0055】
図16(a)〜(c)はそれぞれクリーニングシート620をクリーニングヘッド610とともに長手方向に往復動させる構成を上方から見た説明図である。
図16(a)の例では、クリーニングヘッド610の長手方向端部に、クリーニングヘッド610を長手方向に往復動させるヘッド往復動手段としてのエアーシリンダー631が設けられている。このエアーシリンダー631による往復動手段は、圧縮バネ及び引っ張りバネと組み合わせてもよい。この例において、クリーニングヘッドユニット601を水平方向である図中B方向に移動させる際に、エアーシリンダー631に対するエアー供給を断続的に行ったり供給エアーの圧力を変動させたりする。これにより、クリーニングヘッド610を長手方向(図中のE方向)に往復動させるとともに、そのクリーニングヘッド610が押し当てられているクリーニングシート620を同方向に往復動させることができる。
また、図16(b)の例では、クリーニングヘッド610の長手方向端部に、クリーニングヘッド610を長手方向に往復動させるヘッド往復動手段(微振動付与手段)としての超音波発生装置632が接続されている。この超音波発生装置632は例えば圧電素子を用いて構成することができる。この例において、クリーニングヘッドユニット601を水平方向である図中B方向に移動させる際に、超音波発生装置632で発生した超音波により、クリーニングヘッド610を長手方向(図中のE方向)に往復動(振動)させるとともに、そのクリーニングヘッド610が押し当てられているクリーニングシート620を同方向に往復動(振動)させることができる。
また、図16(c)の例では、クリーニングヘッド610の側面部に、クリーニングヘッド610を長手方向に往復動させるヘッド往復動手段として、モータ等で回転駆動される回転部材633及びその回転部材633の回転運動を長手方向の直線運動に変換してクリーニングヘッド610に伝達する駆動変換機構634が設けられている。このエアーシリンダー631による往復動手段は、圧縮バネ及び引っ張りバネと組み合わせてもよい。この例において、クリーニングヘッドユニット601を水平方向である図中B方向に移動させる際に、回転部材633の回転を断続的に行ったり回転部材633の回転方向の切り換えながら回転駆動したりする。これにより、クリーニングヘッド610を長手方向(図中のE方向)に往復動させるとともに、そのクリーニングヘッド610が押し当てられているクリーニングシート620を同方向に往復動させることができる。
【0056】
なお、上記図16(a)〜(c)の例において、クリーニングヘッド610を長手方向に往復動させる際に、そのクリーニングヘッド610とクリーニングシート620とが互いに擦れるように相対移動すると、その擦れなどによってクリーニングシート620の裏面に手羽立ちや繊維の切断が発生し、クリーニングシート620の裏面を印刷マスクのクリーニングに利用できなくなってしまったり、装置内に繊維くずなどのコミが浮遊して印刷マスク2や印刷対象の製品に付着しまったりするおそれがある。
そこで、クリーニングヘッド610及びクリーニングシート620を長手方向に往復動させる際にクリーニングヘッド610とクリーニングシート620とが互いに擦れるような相対移動が発生しないように構成するのが好ましい。例えば、クリーニングヘッド610上の長手方向における所定位置からクリーニングシート620がずれないようにガイド部材やストップクランプを設ける。また、クリーニングヘッド610側にクリーニングシート620を吸引する手段や、クリーニングシート620のテンションを所定テンションに維持する手段を設けてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、印刷マスク2を固定してクリーニングヘッドユニット601を移動させることにより印刷マスク2をクリーニングしているが、クリーニングヘッドユニット601を固定して印刷マスク2を移動させるようにしてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、印刷対象物が基板1である場合について説明したが、本発明は、印刷対象物として基板1以外の半導体ウェーハなどの電子部品の表面に印刷する場合にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係る印刷装置を用いた印刷工程を含む基板製造方法全体の一例を示す工程図。
【図2】(a)及び(b)はそれぞれ同基板製造方法で製造する電子回路基板の断面構造の一例を示す説明図及び平面図。
【図3】印刷時の印刷装置の一例を示す概略構成図。
【図4】印刷マスクの裏面に付着した半田の汚れの説明図。
【図5】本発明の実施形態に係るクリーニング時の印刷装置の一例を示す概略構成図。
【図6】本発明の実施形態に係るクリーニング装置のクリーニングヘッドユニットの一構成例を示す概略構成図。
【図7】クリーニングヘッドユニットの他の構成例を示す概略構成図。
【図8】クリーニングヘッドユニットの更に他の構成例を示す概略構成図。
【図9】クリーニングヘッドユニットの更に他の構成例を示す概略構成図。
【図10】(a)、(b)及び(c)はそれぞれクリーニングヘッドユニットを構成するクリーニングヘッドの一構成例を示す正面断面図、側面断面図及び平面図。
【図11】(a)及び(b)はクリーニングヘッドで押圧されて撓んでいる印刷マスクの様子を示す説明図。
【図12】クリーニングヘッドの押し当て量の説明図。
【図13】クリーニングヘッドの各溝と印刷マスクのサイズとの関係を示す説明図。
【図14】本発明の一実施例のクリーニングシートを用いた場合のクリーニング性能の測定結果を示すグラフ。
【図15】比較例のクリーニングシートを用いた場合のクリーニング性能の測定結果を示すグラフ。
【図16】(a)〜(c)はそれぞれクリーニングシートをクリーニングヘッドとともに長手方向に往復動させる構成の説明図。
【符号の説明】
【0060】
1 基板
2 印刷マスク
3 クリーム半田
5 ステージ
6 クリーニング装置
7 基板駆動ユニット
8 スキージ
20 マスク取付枠
41、42 マスク枠保持部材
600 本体ステージ部
601 クリーニングヘッドユニット
601a 押圧面
602,603,604 支持ローラ
610 クリーニングヘッド
611 溝(貫通孔)
612,613 溝
620 クリーニングシート
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の開口部が形成された印刷マスクをクリーニングするクリーニング装置及びそのクリーニング装置を用いる印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線基板等にクリーム半田を印刷する印刷装置に用いるメタル版(印刷マスク)をクリーニングするローラ形状のクリーニング部材であるクリーニングローラが知られている(特許文献1参照)。このクリーニングローラは、シャフトに弾性体を貼り合わせた太鼓型胴部とその胴部に貼り合わせたクリーニングシートとにより構成され、そのクリーニングシートが貼り合わせられたローラ表面がメタル版の表面に直接押し当てられる。
【特許文献1】特公平7−37135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記従来のクリーニングローラでは、そのローラ軸に直交する断面においてローラ表面とのメタル版(印刷マスク)の表面との接触幅を広くとることができないため、メタル版の裏面にクリーム半田が残留し、メタル版の裏面を確実にクリーニングすることができないおそれがある。
【0004】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、ローラ形状のクリーニング部材を押し当ててクリーニングする場合に比較して、印刷マスクの表面をより確実にクリーニングすることができるクリーニング装置及び印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、複数の開口部が形成された印刷マスクをクリーニングするクリーニング装置であって、複数の支持ローラに掛け渡されたシート状のクリーニング部材と、該クリーニング部材を印刷マスクに対して押圧する押圧部材と、該押圧部材で押圧された該クリーニング部材が該印刷マスクの被クリーニング面を擦るように、該クリーニング部材及び該押圧部材を該印刷マスクの被クリーニング面に沿って移動させる駆動手段とを備え、該クリーニング部材を押圧する該押圧部材の押圧面は、該クリーニング部材の移動方向について凸状に湾曲していることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のクリーニング装置において、上記押圧部材の押圧面に、上記クリーニング部材の移動方向と交差する方向に延在する溝が形成されていることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2のクリーニング装置において、上記クリーニング部材は、気流が厚さ方向に通過し得る素材で構成され、上記押圧部材の押圧面に形成された上記溝の開口から気流を引き込むように吸引する吸引手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項2又は3のクリーニング装置において、上記溝は、上記クリーニング部材の移動方向に複数本並設されていることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかのクリーニング装置において、上記クリーニング部材の移動方向について凸状に湾曲している上記押圧部材の押圧面の曲率半径は、該押圧面が上記印刷マスクの撓み形状に沿うように、該押圧部材の押し当て量及び上記印刷マスクのテンションに応じて設定されていることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかのクリーニング装置において、上記押圧部材の押圧面は、上記クリーニング部材の移動方向と交差する方向について凸状に湾曲していることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6のクリーニング装置において、上記クリーニング部材の移動方向と交差する方向について凸状に湾曲している上記押圧部材の押圧面の曲率半径は、該押圧面が上記印刷マスクの撓み形状に沿うように、該押圧部材の押し当て量及び上記印刷マスクのテンションに応じて設定されていることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれかのクリーニング装置において、上記シート状のクリーニング部材は、クリーンルーム無塵服用の織物の布であることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれかのクリーニング装置において、上記押圧部材の上記押圧面を有する表面部は、剛性材で形成されていることを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項1乃至9のいずれかのクリーニング装置において、上記クリーニング部材及び上記押圧部材を上記印刷マスクの被クリーニング面に沿って移動させているときに、該クリーニング部材を回転させるように上記支持ローラを回転駆動する回転駆動手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項1乃至9のいずれかのクリーニング装置において、上記クリーニング部材及び上記押圧部材を上記印刷マスクの被クリーニング面に沿って移動させていないクリーニング待機中に、該印刷マスクに該クリーニング部材の未使用表面が対向するまで該クリーニング部材を回転させるように上記支持ローラを回転駆動する回転駆動手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項1乃至11のいずれかのクリーニング装置において、上記クリーニング部材の移動方向と交差する方向に、上記印刷マスクの被クリーニング面に沿って該クリーニング部材を往復動させる手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、複数の開口部が形成された印刷マスクを印刷対象物上にセットし、該印刷マスクの開口部に印刷物質を充填した後、該印刷マスクと該印刷対象物とを離間させることにより、該印刷対象物の被印刷面に該印刷物質を印刷する印刷装置であって、上記印刷マスクの上記印刷対象物と対向する面をクリーニングするクリーニング装置として、請求項1乃至12のいずれかのクリーニング装置を用いたことを特徴とするものである。
【0006】
請求項1のクリーニング装置及びそのクリーニング装置を備えた請求項13の印刷装置では、クリーニング部材及び押圧部材を印刷マスクの被クリーニング面に沿って移動させ、押圧部材で押圧されたクリーニング部材が印刷マスクの被クリーニング面を擦ることにより、印刷マスクの被クリーニング面に付着している印刷物質等のクリーニング対象の付着物が除去される。ここで、クリーニング部材を押圧する押圧部材の押圧面は、クリーニング部材の移動方向について凸状に湾曲しているため、押圧部材で押圧されたクリーニング部材が接触することで印刷マスクの表面が撓んでも、その印刷マスクの湾曲した表面にクリーニング部材の凸状に湾曲した表面を接触させて両者の接触面積を広くした状態で、印刷マスクの被クリーニング面をクリーニング部材で擦ることができる。しかも、そのクリーニング部材を押圧する押圧部材の押圧面の湾曲は、半径で曲率が決まってしまうローラ状のクリーニング部材の外周面とは異なり、クリーニング対象の印刷マスクの種類やクリーニング部材の押圧力等のクリーニング条件に応じて比較的自由に設定することにより、印刷マスクの被クリーニング面とクリーニング部材の表面との接触面積を確保できる。
【0007】
また、請求項2のクリーニング装置及びそのクリーニング装置を備えた請求項13の印刷装置では、押圧部材の押圧面に形成されている溝の角の部分でクリーニング部材を印刷マスクの被クリーニング面に集中的に押し当てることができる。この状態で、クリーニング部材が印刷マスクの被クリーニング面を擦ることにより、印刷マスクの被クリーニング面に付着している付着物を掻き取るように除去することができるので、更にクリーニング性能が高まる。
【0008】
また、請求項3のクリーニング装置及びそのクリーニング装置を備えた請求項13の印刷装置では、押圧部材の押圧面に形成された溝の開口から気流を引き込むように吸引することにより、印刷マスク側からクリーニング部材を通して押圧部材の押圧面に形成された溝の開口に引き込むような気流が発生する。この気流により、印刷マスクがクリーニング部材により強く押し付けられクリーニング部材によるクリーニング性能を高めるとともに、印刷マスクの被クリーニング面に付着している付着物を吸い込むように除去できるので、更にクリーニング性能が高まる。
【0009】
また、請求項4のクリーニング装置及びそのクリーニング装置を備えた請求項13の印刷装置では、押圧部材の押圧面上の溝が、クリーニング部材の移動方向に複数本並設されているため、前述の溝の角部分による印刷マスクの被クリーニング面上の付着物に対する掻き取りを複数箇所で多段階に行うことができるので、更にクリーニング性能が高まる。
【0010】
上記印刷マスクは押圧部材でクリーニング部材が押し当てられているため撓んでおり、その撓みの程度は、押圧部材の押し当て量及び印刷マスクのテンションに応じて変化する。
そこで、請求項5のクリーニング装置及びそのクリーニング装置を備えた請求項13の印刷装置では、押圧部材の押し当て量及び印刷マスクのテンションに応じて、押圧部材の押圧面が印刷マスクの撓み形状に沿うように押圧面の曲率半径が設定されている。従って、押圧部材の押し当て量及び印刷マスクのテンションの大きさにかかわらず、押圧部材の押圧面で押し当てられるクリーニング部材が印刷マスクの被クリーニング面に対して確実に接触するようになり、印刷マスクの被クリーニング面とクリーニング部材の表面との接触面積を確保できるため、更にクリーニング性能が高まる。
【0011】
クリーニング部材の移動方向と交差する方向における印刷マスクの両端部が枠体に固定されている場合に、クリーニング部材が印刷マスクに対して押圧されると、印刷マスクの中央部が凹状にへこむように湾曲するため、上記交差の方向における両端部側でクリーニング部材の押圧力が強くなり中央部側でクリーニング部材の押圧力が弱くなる。
そこで、請求項6のクリーニング装置及びそのクリーニング装置を備えた請求項13の印刷装置では、押圧部材の押圧面が、クリーニング部材の移動方向と交差する方向について凸状に湾曲しているため、上記交差の方向における印刷マスクの両端部が枠体に固定されている場合であっても、上記交差の方向における両端部側と中央部側との間でクリーニング部材の押圧力の差が小さくなる。従って、印刷マスクの全体にわたって良好なクリーニング性能が得られる。
【0012】
上記交差の方向における印刷マスクの撓みの程度は、押圧部材の押し当て量及び印刷マスクのテンションに応じて変化する。
そこで、請求項7のクリーニング装置及びそのクリーニング装置を備えた請求項13の印刷装置では、押圧部材の押し当て量及び印刷マスクのテンションに応じて、押圧部材の押圧面が印刷マスクの上記交差の交差における撓み形状に沿うように押圧面の曲率半径が設定されている。従って、押圧部材の押し当て量及び印刷マスクのテンションの大きさにかかわらず、押圧部材の押圧面で押し当てられるクリーニング部材が印刷マスクの被クリーニング面に対して確実に接触するようになり、印刷マスクの被クリーニング面とクリーニング部材の表面との接触面積を確保できるため、更にクリーニング性能が高まる。
【0013】
また、請求項8のクリーニング装置及びそのクリーニング装置を備えた請求項13の印刷装置では、上記シート状のクリーニング部材が織物の布であるため、不織布の場合に比較して繊維のゴミが発生しにくく、繊維のゴミによる印刷マスクの汚染を防止できる。しかも、上記クリーニング部材に用いる布はクリーンルーム無塵服用の布であるため、上記繊維のゴミが更に発生しにくい。
【0014】
上記押圧部材の押圧面を有する表面部が弾性体で形成されていると、その押圧部材で印刷マスクに押し当てられるクリーニング部材の一部が、印刷マスクの開口部の中に入り込むように変形し、その開口部の内壁面に残留している印刷物質を掻き取る。このクリーニング部材いよって印刷マスクの開口部の内壁面から掻き取られた印刷物質は、印刷マスクの被クリーニング面に付着して印刷マスクを汚染し、クリーニング性能の低下につながる。
そこで、請求項9のクリーニング装置及びそのクリーニング装置を備えた請求項13の印刷装置では、押圧部材の上記押圧面を有する表面部を剛性材で形成することにより、押圧部材で印刷マスクに押し当てられるクリーニング部材が、印刷マスクの開口部の中に入り込むように変形しにくくなるので、印刷マスクの開口部の内壁面から掻き取られた印刷物質による被クリーニング面の汚染を防止できる。
【0015】
また、請求項10のクリーニング装置及びそのクリーニング装置を備えた請求項13の印刷装置では、クリーニング部材及び押圧部材を印刷マスクの被クリーニング面に沿って移動させているときに、クリーニング部材を回転させることにより、印刷マスクの被クリーニング面に対するクリーニング部材の相対的な移動速度を高めることができ、更にクリーニング性能が高まる。
【0016】
また、請求項11のクリーニング装置及びそのクリーニング装置を備えた請求項13の印刷装置では、クリーニング部材及び押圧部材を印刷マスクの被クリーニング面に沿って移動させていないクリーニング待機中に、印刷マスクにクリーニング部材の未使用表面が対向するまでクリーニング部材を回転させる。このクリーニング待機中におけるクリーニング部材の回転により、クリーニング部材の使用済みの部分が印刷マスクのクリーニングに再使用されるのを回避できるため、クリーニング部材で印刷マスクから一旦除去された物質によって印刷マスクが汚染されるのを防止できる。
【0017】
請求項12のクリーニング装置及びそのクリーニング装置を備えた請求項13の印刷装置では、上記クリーニング部材の移動方向と交差する方向に、印刷マスクの被クリーニング面に沿ってクリーニング部材を往復動させることにより、その交差の方向について印刷マスクの被クリーニング面に対してクリーニング部材を摺擦させる。これにより、印刷マスクの被クリーニング面に付着している付着物に対するクリーニング部材の除去効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、クリーニング部材を押圧する押圧部材の押圧面は、クリーニング部材の移動方向について凸状に湾曲しているため、押圧部材で押圧されたクリーニング部材が接触することで印刷マスクの表面が撓んでも、その印刷マスクの湾曲した表面にクリーニング部材の凸状に湾曲した表面を接触させて両者の接触面積を広くした状態で、印刷マスクの被クリーニング面をクリーニング部材で擦ることができる。しかも、そのクリーニング部材を押圧する押圧部材の押圧面の湾曲は、半径で曲率が決まってしまうローラ状のクリーニング部材の外周面とは異なり、クリーニング対象の印刷マスクの種類やクリーニング部材の押圧力等のクリーニング条件に応じて比較的自由に設定することにより、印刷マスクの被クリーニング面とクリーニング部材の表面との接触面積を確保できる。従って、ローラ形状のクリーニング部材を押し当ててクリーニングする場合に比較して、印刷マスクの表面をより確実にクリーニングすることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る印刷方法を採用した印刷工程を含む基板製造方法全体の一例を示す工程図である。また、図2(a)及び(b)はそれぞれ、本実施形態の基板製造方法で製造する電子回路基板1の断面構造の一例を示す説明図及び平面図である。
基板1は、図2(a)に示すように第1の電子部品としての表面実装用の樹脂外装部品(以下、「樹脂外装チップ」という。)1bと、第2の電子部品としての表面実装用のベアチップ部品(以下、単に「ベアチップ」という。)1cとが実装された電子回路基板である。樹脂外装チップ1bは、樹脂で封止された半導体IC、抵抗、コンデンサー等の部品であり、ベアチップ1cは、樹脂で封止する前の裸の半導体ICチップである。基板1とベアチップ1cとの間には、ベアチップ1cが基板1上に安定して固定されるように樹脂55が充填されている。一方、基板1と樹脂外装チップ1bとの間には樹脂が充填されていない。
【0020】
また、上記基板1は、図2(b)に示すように所定の機能を有する同じ形状及び回路の仕様を有する個別基板1aを多数(例えば数10個〜数100個)並べて一括形成された基板である。この基板1は、上記樹脂外装チップ1bやベアチップ1cが実装され所定の機能検査が行われた後、各個別基板1aに分離される。これらの分離された個別基板1aの一つ一つが所定の機能を有する回路モジュール部品として用いられる。
【0021】
図1に示す基板製造方法においては、まず、樹脂外装チップ1bやベアチップ1cが実装される前の基板1に、導電性の印刷物質(印刷剤)としてのクリーム半田3を印刷する半田印刷工程(P1)を実行される。この半田印刷工程の後、同一の1台の部品装着装置により、上記樹脂外装チップ1bを基板1の所定位置に装着する第1のマウント工程(P2)と、上記ベアチップ1cを基板1の所定箇所に装着する第2のマウント工程(P3)とが実行される。なお、第1のマウント工程と第2のマウント工程の順序は逆でもよい。
次に、上記樹脂外装チップ1b及びベアチップ1cのマウント工程の後、リフロー工程(P4)を実行する。このように2つのマウント工程(P2,P3)を実行した後に、リフロー工程を実行することにより、基板1上の電子部品に対する加熱回数を低減することができる。
次に、上記リフロー工程の後、基板1とベアチップ1cとの隙間に、その隙間を埋める充填剤としての樹脂55を充填する、アンダーフィル処理工程(P5)を実行する。
以上により、アンダーフィル処理を施さない外装チップ1bとアンダーフィル処理を施すベアチップ1cとを、同一の基板1上に混在実装することができる。
【0022】
以上、本実施形態の基板製造方法によれば、基板1上に実装した電子部品に対する加熱回数を低減することができるので、これら電子部品に与えるヒートショック回数を低減することができる。また、従来では個別に実施されていた樹脂外装部品1bのリフロー工程とベアチップ1cのリフロー工程とを同時に実施するので、処理工程数を低減して作業性を向上させることができる。
【0023】
上記基板製造方法を実現することができる基板製造システムは、例えば、基板1の所定の電極上にクリーム半田3を印刷する印刷装置と、基板1の所定位置に部品を位置決めして装着する部品装着装置としてのマウント装置と、ベアチップ1c及び樹脂外装チップ1bが装着された基板1を加熱するリフロー装置と、ベアチップ1cと基板1との隙間に樹脂55を充填するアンダーフィル装置とを用いて構成することができる。
【0024】
図3は、印刷方法(半田印刷工程)に用いることができる印刷装置の一例を示す概略構成図である。この印刷装置は、シート状のプラスチック材からなる孔版マスクである印刷マスク2を用いて、導電性の印刷物質(印刷剤)としてのクリーム半田3を基板1に印刷するものである。印刷マスク2は、所定の印刷パターンに応じて形成された厚さ方向に貫通した複数の開口部201を備え、所定のテンションでマスク取付部材としての四角形のマスク取付枠20に、紗膜を使用せずに直接貼り合わせられている。このマスク取付枠20に取り付けられた印刷マスク2は、マスク支持手段としてのマスク枠保持部材40で支持されている。
【0025】
上記基板1は、電極が形成されている電極形成面(被印刷面)が上面になるようにステージ5上に保持されている。このステージ5の下面には、基板1の電極形成面(被印刷面)に垂直な上下方向に沿ってステージ5を直線状に進退移動させる駆動手段としての基板駆動ユニット7が設けられている。この基板駆動ユニット7は、正逆回転可能なステッピングモータ700と、ボールネジ及びモータ700で回転駆動される図示しないナット等からなるステージ上下動機構701とを用いて構成されている。このステッピングモータ700を回転制御することにより、上記ステージ5を上下方向に駆動し、基板1を、印刷マスク2に接触する所定の印刷位置まで上昇させたり、印刷マスク2から離間させるように下降させたりすることができる。
【0026】
また、上記印刷位置に移動したステージ5の上方には、印刷マスク2の開口部201にクリーム半田3を充填する充填手段が設けられている。この充填手段は、印刷マスク2の開口部201にクリーム半田3を刷り込むための充填部材としてのスキージ8、そのスキージ8を駆動ベルト等によって図中左右方向に駆動するための図示しないスキージ駆動ユニット等により構成されている。
【0027】
上記基板1上に印刷されるクリーム半田は、印刷対象物である基板1や半田付けされる電子部品の種類に応じて、所定の半田や添加物を含有するものが用いられる。例えば、上記微細パターンの印刷マスク2を用いて印刷するときに用いるクリーム半田としては、例えば半田の平均粒径が10μm以下であり、フラックス成分の含有率が11質量%程度のものが好ましい。
【0028】
上記印刷用マスク2には、各種電子部品が実装される電極にそれぞれ対応する複数の開口部201が設けられている。この開口部201は、印刷マスクの厚さ方向に貫通した貫通孔であり、その印刷面方向における形状及び寸法は、印刷対象の電極の寸法や形状等に応じて設定される。例えば微小印刷パターンの印刷を行う場合、開口部201の寸法及び形状は、一辺が100〜200μm程度の四角形や、同様な寸法の直径を有する円形である。また、印刷マスク2のベースシートとしては、例えば、厚さが数10〜数100μm(より好適な具体例としては約150μm)の2軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)又はポリイミド等のプラスチックシートを用いる。また、ベースシートに対してレーザ照射、放電加工、プレス加工などを行うことにより開口部が形成される。また、ベースシートの印刷対象物に接する側の表面には、ベースシートよりも熱収縮率が大きい被膜として、カーボンを含有させたポリウレタン樹脂からなる導電性被膜を形成してもよい。このように導電性被膜を形成しておくと、印刷マスク2を用いて印刷する場合に、スキージングや印刷マスクの剥離時の静電気による印刷対象物(基板)上のデバイスの破損を防止することができる。
【0029】
上記印刷装置のように印刷マスク2を用いてクリーム半田3を印刷する場合、図4に示すように、印刷マスク2の開口部201内に充填されたクリーム半田の一部3’が、印刷マスク2の裏面(基板に対向する面)と基板1との間に回り込み、印刷マスク2の裏面に付着するおそれがある。この印刷マスク2の裏面に付着した付着物は、次の印刷工程において基板1の予定外の領域に付着し、基板1の汚れや回路の短絡などの不具合の原因になるおそれがある。そこで、本実施形態の印刷装置では、後述のクリーニング装置により、所定のタイミングで印刷マスク2の裏面(基板に対向する面)をクリーニングしている。特に、基板1上の多数の個別基板に対してチップ実装用のクリーム半田3を一括して印刷し、そのクリーム半田3として微細粒径(例えば10μm以下程度)の半田粒子を有するものを用いる場合は、印刷マスク2の裏面に残留して付着したクリーム半田を確実に除去するのが難しい。そのため、本実施形態では、以下に示すように従来よりもクリーニング性能を高めたクリーニング装置を用いて印刷マスク2をクリーニングしている。
【0030】
図5は、印刷マスク2をクリーニングするときの印刷装置の一例を示す概略構成図である。クリーム半田3の印刷に1回又は複数回使用された印刷マスク2をクリーニングするときは、その印刷マスク2の下にセットされていた基板1のステージ5及び基板駆動ユニット7を、クリーニング装置6に入れ換える。あるいは、基板1のステージ5及び基板駆動ユニット7の上方にセットされていた印刷マスク2を、クリーニング装置6の上に移動してセットするようにしてもよい。クリーニング装置6は、本体ステージ部600上にセットされたクリーニングヘッドユニット601が印刷マスク2の裏面に沿った方向(図中のB方向)に移動するように駆動される。印刷マスク2の1回のクリーニング工程は、印刷マスク2の裏面に沿って一方向に1回だけ移動(片道移動)することで完了してもよいし、印刷マスク2の裏面に沿って1回又は複数回往復するように移動することで完了してもよい。また、本体ステージ部600は、印刷マスクに対するクリーニングヘッドユニット601の上下方向の相対的な位置を調整可能に構成してもよい。
【0031】
図3及び図5に示すように、上記クリーニング装置6、基板駆動ユニット7及びスキージ駆動ユニットは、CPU、RAM、ROMなどの備えるコンピュータ装置で構成された制御手段としての主制御部100によって制御される。主制御部100は、入力装置101からオペレータが入力した処理指示に基づいて、ハードディスクなどで構成された記憶装置102からプログラムや各種制御用データを読み込み、読み込んだプログラムを実行することにより、印刷マスククリーニング工程を含む所定の印刷工程を行うように、上記クリーニング装置6、基板駆動ユニット7及びスキージ駆動ユニット等を制御する。
【0032】
図6は、上記クリーニングヘッドユニット601の一構成例を示す概略構成図である。このクリーニングヘッドユニット601は、シート状のクリーニング部材(以下、「クリーニングシート」という。)620を備えている。このクリーニングシート620は、無端ベルト状の形状をしており、複数の支持ローラ602、603、604及びシート押圧部材としてのクリーニングヘッド610に掛け渡されている。支持ローラ602は、クリーニングシート620に付与されるテンションを調整するためのテンションローラとしても機能し、支持ローラ603は、所定のタイミングでクリーニングシート620を図中矢印Dで示す反時計方向に回転させるための回転駆動ローラとしても機能する。支持ローラ(回転駆動ローラ)603は図示しない回転駆動源としてのモータの回転軸に、ギヤ等の駆動伝達部材を介して連結されている。
【0033】
上記クリーニングヘッド610は、ヘッド上下動装置15により、印刷マスク2に押し当てるように上昇させたり印刷マスク2から離すように下降させたりすることができる。ヘッド上下動装置15としては、例えば、気体供給装置から所定圧力の気体が供給されるエアーシリンダーや、駆動モータで回転駆動されるボールネジ等を用いることができる。また、クリーニングヘッド610は所定の上限位置で上昇を停止するように制御される。例えば、クリーニングヘッド610が所定の上限位置に到達したときに作動するマイクロスイッチ等のストッパーを設けておき、このストッパーの出力に基づいてクリーニングヘッド610の上昇駆動を停止するようにヘッド上下動装置15を制御する。また、クリーニングシート620のテンションを検知するセンサーを設けておき、このセンサーの出力が所定の大きさになったときにクリーニングヘッド610が所定の上限位置に到達したと判断し、クリーニングヘッド610の上昇駆動を停止するようにヘッド上下動装置15を制御してもよい。
【0034】
また、後述するように、クリーニングヘッド610の押圧面は、クリーニングシート620の移動方向(図中の矢印Bの方向)について凸状に湾曲している。そして、このクリーニングヘッド610で押圧されたクリーニングシート620が印刷マスク2の被クリーニング面である裏面を擦るように、少なくともクリーニングヘッド610及びクリーニングシート620を含むクリーニングヘッドユニット601を印刷マスク2の裏面に沿って移動させる駆動手段としてのクリーニングユニット駆動機構を備えている。
【0035】
図7は、上記クリーニングヘッドユニット601の他の構成例を示す概略構成図である。このクリーニングヘッドユニット601は、図6のユニットとは異なり、無端ベルト状のクリーニングシート620に代えて巻き取り式のクリーニングシート620が用いられ、支持ローラ(回転駆動ローラ)603に代えてシート供給ローラ606とシート回収ローラ605とを備えている。そして、これら2つのローラ605,606のうち少なくともシート回収ローラ605は、所定のタイミングでクリーニングシート620を図中矢印Dで示す反時計方向に回転させるための回転駆動ローラとしても機能する。この回転により、クリーニングシート620の使用済み部分がシート回収ローラ605に回収されるとともに、クリーニングシート620の未使用部分がシート供給ローラ606から供給される。
【0036】
図8は、上記クリーニングヘッドユニット601の更に他の構成例を示す概略構成図である。このクリーニングヘッドユニット601は、図6のユニットとは異なり、クリーニングシート620が2つの支持ローラ607a,607bに掛け渡された簡易構成になっている。この2つの支持ローラ607a,607bの一方が、所定のタイミングでクリーニングシート620を図中矢印Dで示す反時計方向に回転させるための回転駆動ローラとしても機能する。
【0037】
図9は、上記クリーニングヘッドユニット601の更に他の構成例を示す概略構成図である。このクリーニングヘッドユニット601は、図8のユニットとは異なり、無端ベルト状のクリーニングシート620に代えて巻き取り式のクリーニングシート620が用いられ、支持ローラ607aに代えてシート回収ローラ608aを備え、支持ローラ607bに代えてシート供給ローラ608bを備えている。そして、これら2つのローラ608a,608bのうち少なくともシート回収ローラ608aは、所定のタイミングでクリーニングシート620を図中矢印Dで示す反時計方向に回転させるための回転駆動ローラとしても機能する。この回転により、クリーニングシート620の使用済み部分がシート回収ローラ608aに回収されるとともに、クリーニングシート620の未使用部分がシート供給ローラ608bから供給される。
【0038】
上記クリーニングシート620は、クリーニングヘッドユニット601を移動させているときに回転駆動してもいいし、クリーニングヘッドユニット601を移動させていないクリーニング待機中に、印刷マスク2にクリーニングシート620の未使用表面が対向するまでクリーニングシート620を回転駆動してもよい。
【0039】
図10(a)、(b)及び(c)はそれぞれ、上記クリーニングヘッドユニット601を構成するクリーニングヘッド610の一構成例を示す正面断面図、側面断面図及び平面図である。クリーニングヘッド610の押圧面610aは、その面に沿った互いに交差する2方向それぞれについて所定の曲率半径で凸状に湾曲している。より具体的には、クリーニングヘッド610の押圧面610aは、クリーニング時のクリーニングヘッド610及びクリーニングシート620の移動方向(短手方向)について曲率半径R1で湾曲し、その移動方向と直交する長手方向について曲率半径R2で湾曲している。これらの曲率半径R1及びR2は、上記押圧面610aが印刷マスク2の撓み形状に沿うように、クリーニングヘッド610の押し当て量や、印刷マスク2の材料(ベースシート)、テンション及びマスク取付枠20のサイズ(特に、枠の内側のサイズ)に応じて設定される。例えば、印刷マスク2の材料(ベースシート)がPETであり、マスク取付枠20のサイズが550〜650mm程度である場合は、上記曲率半径R1,R2は数1000mm〜数10000mm(より好適には9200mm程度)に設定される。このようにクリーニングヘッド610の押圧面610aが所定の曲率で凸状に湾曲しているため、図11(a)及び(b)に示すようにクリーニングヘッド610で押圧されたクリーニングシート620が接触することで印刷マスク2の表面が撓んでも、その印刷マスク2の湾曲した表面にクリーニングシート620の凸状に湾曲した表面を接触させて両者の接触面積を広くした状態で、印刷マスク2の裏面(被クリーニング面)をクリーニングシート620で擦ることができる。
【0040】
図12は、クリーニングヘッド610の押し当て量ΔDの説明図である。クリーニングヘッド610の押圧面610aの中央上端と基準水平面との間の距離(凸部の高さ)をΔD1とし、クリーニングヘッド610の押圧面610aの基準水平面と印刷マスク2下面との間の距離をΔD2とすると、印刷マスク2に対するクリーニングヘッド610の押し当て量ΔDはΔD1とΔD2の和になる。例えば、上記ΔD1及びΔD2それぞれが0.78mm及び1.85mmである場合には、上記押し当て量ΔDは2.63mmになる。また、この数値例における印刷マスク2の中央部及び端部のテンション(伸び量)をそれぞれ測定したところ0.58mm及び0.53mmであった。
【0041】
また、上記クリーニングヘッド610の押圧面610aを有する表面部は、弾性材ではなく剛性材で形成するのが好ましい。このようにクリーニングヘッド610の表面部を剛性材で形成することにより、クリーニングヘッド610で印刷マスク2に押し当てられるクリーニングシート620が、印刷マスク2の開口部201の中に入り込むように変形しにくくなるので、印刷マスク2の開口部201の内壁面から掻き取られたクリーム半田3による裏面(被クリーニング面)の汚染いわゆる裏汚れを防止できる。
【0042】
また、クリーニングヘッド610の押圧面610aには、クリーニング時のクリーニングヘッド610及びクリーニングシート620の移動方向と直交する長手方向に延在する複数の溝611、612、613が形成されている。これらの溝のうち中央の溝611は裏側まで貫通した貫通孔になっている。クリーニング動作には、溝611の貫通孔を通して上部開口から気流を引き込むように吸引される。この気流を吸引する吸引手段は、取り付け孔614を介してクリーニングヘッド610がネジ留めで固定される図示しないベース部材に形成された吸引気流経路、真空ポンプ、および、その吸引気流経路と真空ポンプとの間をつなぐように設けられる配管などで構成される。
【0043】
図13は、上記クリーニングヘッド610の各溝611、612、613と印刷マスク2のサイズとの関係を示す説明図である。クリーニングヘッド610の押圧面610aが形成されている凸状部分の長手方向の長さLc1は、印刷マスク2のマスク取付枠20と干渉しないように、マスク取付枠20の内側のサイズLm1よりも短く設定されている。また、クリーニングヘッド610の押圧面610aに形成されている溝のうち長手方向の長さが一番短い溝(本実施例の場合は中央の貫通溝611)の長さLc2は、印刷マスク2の開口部201が形成されている開口部形成領域(印刷領域)202を少なくもクリーニングできるように、その開口部形成領域202の長さLm2よりも長く設定されている。また、クリーニングシート620の幅についても、上記印刷マスク2の開口部形成領域202に接触してクリーニングできるように、その開口部形成領域202の長さLm2よりも長く設定されている。また、上記クリーニングヘッド610の押圧面610aが形成されている凸状部分の角でクリーニングシート620の幅方向の端部が破損しないように、クリーニングシート620の幅は、その押圧面610aが形成されている凸状部分の長手方向の長さLc1よりも短く設定するのが好ましい。クリーニングヘッド610の押圧面610aに形成されている中央の貫通溝611の開口が露出して吸引手段に過剰な負荷が加わるのを防止するために、クリーニングシート620の幅は、その貫通溝611の長さLc2よりも長く設定するのが好ましい。
【0044】
なお、上記クリーニングヘッド610は、その長手方向と直交する短手方向について分割された複数部材で構成してもよい。例えば、上記クリーニングヘッド610は、上記中央の溝611を有する中央ヘッド部材、及びその両側の溝612、613をそれぞれ有する上流側ヘッド部材及び下流側ヘッド部材の、3つの部材で構成してもよい。この場合、上記中央ヘッド部材、上流側ヘッド部材及び下流側ヘッド部材の3つの部材3つの部材の印刷マスク2に対する突き出し量を互いに独立に設定できるようにしてもよい。
【0045】
また、上記クリーニングシート620の材料としては、繊維のゴミによる印刷マスクの汚染を防止できるように、繊維のゴミが発生しにくいクリーンルーム無塵服用の織物(クロスタイプ)の布が好ましい。また、このクリーニングシート620に用いる布の繊維の断面形状は、円形ではなく、クリーニング対象の物質であるクリーム半田を巻き込みやすい多角形(例えば三角形)が好ましい。更に、上記クリーニングシート620に用いる布の繊維は細く密度が高いのが好ましい。より具体的には、クリーニングシート620の繊維の断面におけるの大きさ(太さ)は、1〜10μmの範囲(より好しくは2〜9μmの範囲)がよい。
【0046】
なお、クリーニングシート620の繊維が細すぎたり密度が高すぎたりすると、繊維の腰が弱くなりすぎてしまい、繊維内に一旦取り込んだ半田を離す(印刷マスク側に戻す)おそれがあるので、繊維の太さの下限や密度の上限は、その繊維の編み方等とのバランスを考慮して設定するのが好ましい。
【0047】
更に、上記クリーニングシート620の材料としては、例えば、ナイロン6(含有量:50%)及びポリエステル(含有量:50%)からなる樹脂繊維のシート、ポリエチレンテレフタレート(含有量:66.6%)、ポリカプロラクタムアミド(含有量62.8%)及び二酸化チタン(含有量:0.3未満)からなるを含む樹脂繊維のシートを使用することができる。この例示したような材料からなる樹脂繊維を目付量(密度):100〜200g/m2程度及び厚み:0.18mm程度で編み込んで布(クロス)状にすることにより、クロスタイプのシートを得ることができる。また、これらのクロスタイプのシートと同等な特性が得られるものであれば、不織布タイプのシートであってもよい。
【0048】
また、上記クリーニングシート620としては、市販の樹脂繊維のシートを用いることができる。例えば、旭化成せんい株式会社製の品名:「ベンリーゼ(登録商標)」,型式:TS100−350*18や、NI帝人商事株式会社製の品名:「ミクロスター(登録商標)」,型式:G89001を用いることができる。
【0049】
また、印刷マスク2のクリーニングの際に、クリーニングシート620に対する溶剤(例えばIPA:イソプロピルアルコール)等の吹き付けは行わずに、乾燥状態でクリーニングシート620を用いるのが好ましい。上記溶剤などの吹き付けを行うと、印刷マスク2の開口部201内に残留しているクリーム半田のフラックス成分が印刷マスク2の裏面側に引き出され、その印刷マスク2を用いた次の印刷工程で印刷不良が発生するおそれがある。
【0050】
以上、本実施形態における印刷マスク2のクリーニング装置及びそれを備えた印刷装置によれば、クリーニングシート620を押圧するクリーニングヘッド610の押圧面610aは、クリーニングヘッドユニット601(クリーニングシート620)の移動方向について凸状に湾曲しているため、クリーニングヘッド610で押圧されたクリーニングシート620が接触することで印刷マスク2が撓んでも、その印刷マスクの湾曲した裏面にクリーニングシート620の凸状に湾曲した表面を接触させて両者の接触面積を広くした状態で、印刷マスク2の裏面をクリーニングシート620で擦ることができる。しかも、そのクリーニングシート620を押圧するクリーニングヘッド610の押圧面610aの湾曲は、半径で曲率が決まってしまう従来のクリーニングローラの外周面とは異なり、クリーニング対象の印刷マスク2の種類やクリーニングシート620押圧力等のクリーニング条件に応じて比較的自由に設定することにより、印刷マスク2の裏面とクリーニングシート620との接触面積を確保できる。従って、従来のローラ形状のクリーニング部材であるクリーニングローラを押し当ててクリーニングする場合に比較して、印刷マスク2の表面をより確実にクリーニングすることができる。
また、本実施形態によれば、クリーニングヘッド610の押圧面610aに形成されている溝611、612、613の角の部分でクリーニングシート620を印刷マスク2の裏面に集中的に押し当てることができる。この状態で、クリーニングシート620が印刷マスク2の裏面を擦ることにより、印刷マスク2の裏面に付着しているクリーム半田3等の付着物を掻き取るように除去することができるので、更にクリーニング性能が高まる。
また、本実施形態によれば、クリーニングヘッド610の押圧面610aに形成された中央溝611の開口から気流を引き込むように吸引することにより、印刷マスク2側からクリーニングシート620を通して中央溝611の開口に引き込むような気流が発生する。この気流により、印刷マスク2がクリーニングシート620により強く押し付けられクリーニングシート620によるクリーニング性能を高めるとともに、印刷マスク2の裏面に付着しているクリーム半田3等の付着物を吸い込むように除去できるので、更にクリーニング性能が高まる。
また、本実施形態によれば、クリーニングヘッド610の押圧面610aに溝611、612、613が複数本並設されているため、前述の溝の角部分による印刷マスク2の裏面上の付着物に対する掻き取りを複数箇所で多段階に行うことができるので、更にクリーニング性能が高まる。
また、本実施形態によれば、クリーニングヘッド610の押圧面610aが、クリーニングヘッドユニット601(クリーニングシート620)の移動方向と交差する長手方向について凸状に湾曲しているため、上記長手方向における印刷マスク2の両端部が枠体20に固定されている場合であっても、その長手方向における両端部側と中央部側との間でクリーニングシート620の押圧力の差が小さくなる。従って、印刷マスク2の全体にわたって良好なクリーニング性能が得られる。
【0051】
特に、本実施形態によれば、基板1上の多数の個別基板に対してチップ実装用のクリーム半田3を一括して印刷し、そのクリーム半田3として微細粒径(例えば10μm以下程度)の半田粒子を有するものを用いる高精細の印刷を行う場合にも、印刷マスク2の裏面に残留して付着したクリーム半田を確実に除去することができる。従来のクリーニングローラを用いたクリーニング装置の場合には、かかる高精細の印刷に用いた印刷マスク2の印刷領域の中央部分に、クリーニング部材移動方向に沿って帯状のクリーニング不良領域が発生してしまう。これに対し、本実施形態のクリーニング装置を用いた場合は、上記帯状のクリーニング不良領域の発生もなく、印刷マスクの裏面の全体にわたって良好なクリーニング性能が得られる。
【0052】
図14は、上記図6の構成のクリーニング装置6を用いて印刷マスク3をクリーニングしたときのクリーニング性能を測定したクリーニングテストの結果を示している。このクリーニングテストでは、クリーニングシート620として、繊維の太さは2〜9μmのクリーンルーム無塵服用の織物の布を用いた。このクリーニング装置6を用い、1回の印刷工程で用いた印刷マスク3の裏面をクリーニングするようにクリーニングヘッドユニット601を一往復させた。この後、印刷マスク2の裏面を顕微鏡で残留の半田玉を観察し、「拭き取り率」を求めた。ここで、「拭き取り率」は、顕微鏡で観察した全領域(クリーニングした全領域)の面積を複数の観察区画に分割し、その観察区画の総数(N0)のうち、半田玉が1個も残留していない観察区画の数(N1)の割合である。すなわち、「拭き取り率」(%)は、N1÷N0×100で算出した。以上の印刷マスク2を用いた印刷、印刷マスク2のクリーニング及びクリーニング性能の測定を、同じ印刷マスク2を用いて5回繰り返した。
【0053】
図14に示すように、本実施形態のクリーニング装置6において、繊維の太さは2〜9μmのクリーンルーム無塵服用の織物の布からなるクリーニングシート620を用いた場合は、5回の印刷を行った場合でも拭き取り率80%以上の良好なクリーニング性能が得られた。これに対し、クリーニングシートとして繊維の太さが13〜16μmの不織布を用いた場合は、図15に示すように、印刷及びクリーニングを重ねるたびにクリーニング性能が低下し、4回目以降では、「拭き取り率」が20〜40%程度まで落ち込んだ。
【0054】
なお、上記実施形態において、上記クリーニングシート620は、クリーニングヘッドユニット601の移動方向と交差する方向であるクリーニングヘッド610の長手方向に、印刷マスク2の裏面(被クリーニング面)に沿ってクリーニングシート620を往復動(振動)させてもよい。このようにクリーニングヘッド610の長手方向にクリーニングシート620を往復動させることにより、その長手方向について印刷マスク2の裏面に対してクリーニングシート620を摺擦させる。これにより、印刷マスク2の裏面に付着している付着物に対する除去効率を高めることができる。
【0055】
図16(a)〜(c)はそれぞれクリーニングシート620をクリーニングヘッド610とともに長手方向に往復動させる構成を上方から見た説明図である。
図16(a)の例では、クリーニングヘッド610の長手方向端部に、クリーニングヘッド610を長手方向に往復動させるヘッド往復動手段としてのエアーシリンダー631が設けられている。このエアーシリンダー631による往復動手段は、圧縮バネ及び引っ張りバネと組み合わせてもよい。この例において、クリーニングヘッドユニット601を水平方向である図中B方向に移動させる際に、エアーシリンダー631に対するエアー供給を断続的に行ったり供給エアーの圧力を変動させたりする。これにより、クリーニングヘッド610を長手方向(図中のE方向)に往復動させるとともに、そのクリーニングヘッド610が押し当てられているクリーニングシート620を同方向に往復動させることができる。
また、図16(b)の例では、クリーニングヘッド610の長手方向端部に、クリーニングヘッド610を長手方向に往復動させるヘッド往復動手段(微振動付与手段)としての超音波発生装置632が接続されている。この超音波発生装置632は例えば圧電素子を用いて構成することができる。この例において、クリーニングヘッドユニット601を水平方向である図中B方向に移動させる際に、超音波発生装置632で発生した超音波により、クリーニングヘッド610を長手方向(図中のE方向)に往復動(振動)させるとともに、そのクリーニングヘッド610が押し当てられているクリーニングシート620を同方向に往復動(振動)させることができる。
また、図16(c)の例では、クリーニングヘッド610の側面部に、クリーニングヘッド610を長手方向に往復動させるヘッド往復動手段として、モータ等で回転駆動される回転部材633及びその回転部材633の回転運動を長手方向の直線運動に変換してクリーニングヘッド610に伝達する駆動変換機構634が設けられている。このエアーシリンダー631による往復動手段は、圧縮バネ及び引っ張りバネと組み合わせてもよい。この例において、クリーニングヘッドユニット601を水平方向である図中B方向に移動させる際に、回転部材633の回転を断続的に行ったり回転部材633の回転方向の切り換えながら回転駆動したりする。これにより、クリーニングヘッド610を長手方向(図中のE方向)に往復動させるとともに、そのクリーニングヘッド610が押し当てられているクリーニングシート620を同方向に往復動させることができる。
【0056】
なお、上記図16(a)〜(c)の例において、クリーニングヘッド610を長手方向に往復動させる際に、そのクリーニングヘッド610とクリーニングシート620とが互いに擦れるように相対移動すると、その擦れなどによってクリーニングシート620の裏面に手羽立ちや繊維の切断が発生し、クリーニングシート620の裏面を印刷マスクのクリーニングに利用できなくなってしまったり、装置内に繊維くずなどのコミが浮遊して印刷マスク2や印刷対象の製品に付着しまったりするおそれがある。
そこで、クリーニングヘッド610及びクリーニングシート620を長手方向に往復動させる際にクリーニングヘッド610とクリーニングシート620とが互いに擦れるような相対移動が発生しないように構成するのが好ましい。例えば、クリーニングヘッド610上の長手方向における所定位置からクリーニングシート620がずれないようにガイド部材やストップクランプを設ける。また、クリーニングヘッド610側にクリーニングシート620を吸引する手段や、クリーニングシート620のテンションを所定テンションに維持する手段を設けてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、印刷マスク2を固定してクリーニングヘッドユニット601を移動させることにより印刷マスク2をクリーニングしているが、クリーニングヘッドユニット601を固定して印刷マスク2を移動させるようにしてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、印刷対象物が基板1である場合について説明したが、本発明は、印刷対象物として基板1以外の半導体ウェーハなどの電子部品の表面に印刷する場合にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係る印刷装置を用いた印刷工程を含む基板製造方法全体の一例を示す工程図。
【図2】(a)及び(b)はそれぞれ同基板製造方法で製造する電子回路基板の断面構造の一例を示す説明図及び平面図。
【図3】印刷時の印刷装置の一例を示す概略構成図。
【図4】印刷マスクの裏面に付着した半田の汚れの説明図。
【図5】本発明の実施形態に係るクリーニング時の印刷装置の一例を示す概略構成図。
【図6】本発明の実施形態に係るクリーニング装置のクリーニングヘッドユニットの一構成例を示す概略構成図。
【図7】クリーニングヘッドユニットの他の構成例を示す概略構成図。
【図8】クリーニングヘッドユニットの更に他の構成例を示す概略構成図。
【図9】クリーニングヘッドユニットの更に他の構成例を示す概略構成図。
【図10】(a)、(b)及び(c)はそれぞれクリーニングヘッドユニットを構成するクリーニングヘッドの一構成例を示す正面断面図、側面断面図及び平面図。
【図11】(a)及び(b)はクリーニングヘッドで押圧されて撓んでいる印刷マスクの様子を示す説明図。
【図12】クリーニングヘッドの押し当て量の説明図。
【図13】クリーニングヘッドの各溝と印刷マスクのサイズとの関係を示す説明図。
【図14】本発明の一実施例のクリーニングシートを用いた場合のクリーニング性能の測定結果を示すグラフ。
【図15】比較例のクリーニングシートを用いた場合のクリーニング性能の測定結果を示すグラフ。
【図16】(a)〜(c)はそれぞれクリーニングシートをクリーニングヘッドとともに長手方向に往復動させる構成の説明図。
【符号の説明】
【0060】
1 基板
2 印刷マスク
3 クリーム半田
5 ステージ
6 クリーニング装置
7 基板駆動ユニット
8 スキージ
20 マスク取付枠
41、42 マスク枠保持部材
600 本体ステージ部
601 クリーニングヘッドユニット
601a 押圧面
602,603,604 支持ローラ
610 クリーニングヘッド
611 溝(貫通孔)
612,613 溝
620 クリーニングシート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の開口部が形成された印刷マスクをクリーニングするクリーニング装置であって、
複数の支持ローラに掛け渡されたシート状のクリーニング部材と、
該クリーニング部材を印刷マスクに対して押圧する押圧部材と、
該押圧部材で押圧された該クリーニング部材が該印刷マスクの被クリーニング面を擦るように、該クリーニング部材及び該押圧部材を該印刷マスクの被クリーニング面に沿って移動させる駆動手段とを備え、
該クリーニング部材を押圧する該押圧部材の押圧面は、該クリーニング部材の移動方向について凸状に湾曲していることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
請求項1のクリーニング装置において、
上記押圧部材の押圧面に、上記クリーニング部材の移動方向と交差する方向に延在する溝が形成されていることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項3】
請求項2のクリーニング装置において、
上記クリーニング部材は、気流が厚さ方向に通過し得る素材で構成され、
上記押圧部材の押圧面に形成された上記溝の開口から気流を引き込むように吸引する吸引手段を備えたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項4】
請求項2又は3のクリーニング装置において、
上記溝は、上記クリーニング部材の移動方向に複数本並設されていることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかのクリーニング装置において、
上記クリーニング部材の移動方向について凸状に湾曲している上記押圧部材の押圧面の曲率半径は、該押圧面が上記印刷マスクの撓み形状に沿うように、該押圧部材の押し当て量及び上記印刷マスクのテンションに応じて設定されていることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかのクリーニング装置において、
上記押圧部材の押圧面は、上記クリーニング部材の移動方向と交差する方向について凸状に湾曲していることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項7】
請求項6のクリーニング装置において、
上記クリーニング部材の移動方向と交差する方向について凸状に湾曲している上記押圧部材の押圧面の曲率半径は、該押圧面が上記印刷マスクの撓み形状に沿うように、該押圧部材の押し当て量及び上記印刷マスクのテンションに応じて設定されていることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかのクリーニング装置において、
上記シート状のクリーニング部材は、クリーンルーム無塵服用の織物の布であることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかのクリーニング装置において、
上記押圧部材の上記押圧面を有する表面部は、剛性材で形成されていることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかのクリーニング装置において、
上記クリーニング部材及び上記押圧部材を上記印刷マスクの被クリーニング面に沿って移動させているときに、該クリーニング部材を回転させるように上記支持ローラを回転駆動する回転駆動手段を備えたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれかのクリーニング装置において、
上記クリーニング部材及び上記押圧部材を上記印刷マスクの被クリーニング面に沿って移動させていないクリーニング待機中に、該印刷マスクに該クリーニング部材の未使用表面が対向するまで該クリーニング部材を回転させるように上記支持ローラを回転駆動する回転駆動手段を備えたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかのクリーニング装置において、
上記クリーニング部材の移動方向と交差する方向に、上記印刷マスクの被クリーニング面に沿って該クリーニング部材を往復動させる手段を備えたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項13】
複数の開口部が形成された印刷マスクを印刷対象物上にセットし、該印刷マスクの開口部に印刷物質を充填した後、該印刷マスクと該印刷対象物とを離間させることにより、該印刷対象物の被印刷面に該印刷物質を印刷する印刷装置であって、
上記印刷マスクの上記印刷対象物と対向する面をクリーニングするクリーニング装置として、請求項1乃至12のいずれかのクリーニング装置を用いたことを特徴とする印刷装置。
【請求項1】
複数の開口部が形成された印刷マスクをクリーニングするクリーニング装置であって、
複数の支持ローラに掛け渡されたシート状のクリーニング部材と、
該クリーニング部材を印刷マスクに対して押圧する押圧部材と、
該押圧部材で押圧された該クリーニング部材が該印刷マスクの被クリーニング面を擦るように、該クリーニング部材及び該押圧部材を該印刷マスクの被クリーニング面に沿って移動させる駆動手段とを備え、
該クリーニング部材を押圧する該押圧部材の押圧面は、該クリーニング部材の移動方向について凸状に湾曲していることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
請求項1のクリーニング装置において、
上記押圧部材の押圧面に、上記クリーニング部材の移動方向と交差する方向に延在する溝が形成されていることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項3】
請求項2のクリーニング装置において、
上記クリーニング部材は、気流が厚さ方向に通過し得る素材で構成され、
上記押圧部材の押圧面に形成された上記溝の開口から気流を引き込むように吸引する吸引手段を備えたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項4】
請求項2又は3のクリーニング装置において、
上記溝は、上記クリーニング部材の移動方向に複数本並設されていることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかのクリーニング装置において、
上記クリーニング部材の移動方向について凸状に湾曲している上記押圧部材の押圧面の曲率半径は、該押圧面が上記印刷マスクの撓み形状に沿うように、該押圧部材の押し当て量及び上記印刷マスクのテンションに応じて設定されていることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかのクリーニング装置において、
上記押圧部材の押圧面は、上記クリーニング部材の移動方向と交差する方向について凸状に湾曲していることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項7】
請求項6のクリーニング装置において、
上記クリーニング部材の移動方向と交差する方向について凸状に湾曲している上記押圧部材の押圧面の曲率半径は、該押圧面が上記印刷マスクの撓み形状に沿うように、該押圧部材の押し当て量及び上記印刷マスクのテンションに応じて設定されていることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかのクリーニング装置において、
上記シート状のクリーニング部材は、クリーンルーム無塵服用の織物の布であることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかのクリーニング装置において、
上記押圧部材の上記押圧面を有する表面部は、剛性材で形成されていることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかのクリーニング装置において、
上記クリーニング部材及び上記押圧部材を上記印刷マスクの被クリーニング面に沿って移動させているときに、該クリーニング部材を回転させるように上記支持ローラを回転駆動する回転駆動手段を備えたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれかのクリーニング装置において、
上記クリーニング部材及び上記押圧部材を上記印刷マスクの被クリーニング面に沿って移動させていないクリーニング待機中に、該印刷マスクに該クリーニング部材の未使用表面が対向するまで該クリーニング部材を回転させるように上記支持ローラを回転駆動する回転駆動手段を備えたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかのクリーニング装置において、
上記クリーニング部材の移動方向と交差する方向に、上記印刷マスクの被クリーニング面に沿って該クリーニング部材を往復動させる手段を備えたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項13】
複数の開口部が形成された印刷マスクを印刷対象物上にセットし、該印刷マスクの開口部に印刷物質を充填した後、該印刷マスクと該印刷対象物とを離間させることにより、該印刷対象物の被印刷面に該印刷物質を印刷する印刷装置であって、
上記印刷マスクの上記印刷対象物と対向する面をクリーニングするクリーニング装置として、請求項1乃至12のいずれかのクリーニング装置を用いたことを特徴とする印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−12410(P2009−12410A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179248(P2007−179248)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(593128172)リコーマイクロエレクトロニクス株式会社 (52)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(593128172)リコーマイクロエレクトロニクス株式会社 (52)
【Fターム(参考)】
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