説明

印刷制御装置、印刷制御方法、印刷制御プログラムおよび印刷装置

【課題】印刷画質の更なる向上を図る。
【解決手段】印刷の副走査方向に沿って配列された複数のノズルからインクを吐出してドットを形成する印刷ヘッドを印刷の主走査方向に走査させることにより印刷を実行可能な印刷部に、主走査方向を向く各ラスターラインのうち少なくとも一部のラスターラインについて複数のノズルを用いてドットを形成するオーバーラップ印刷の実行を指示する印刷制御装置であって、上記印刷部に1ドットあたりのインク量が異なる複数のサイズのドットの形成を指示可能であり、オーバーラップ印刷される一つのラスターラインを構成する各ドットの形成に用いられる複数のノズル間の使用割合を、ドットのサイズ毎に異ならせることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷制御装置、印刷制御方法、印刷制御プログラムおよび印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷の副走査方向に沿って配列されたインク吐出用の複数のノズルを有する印刷ヘッドの主走査と、副走査方向への印刷媒体の移動(紙送り)とを繰り返すことにより、各ノズルからインク滴(ドット)を吐出して印刷媒体に画像を印刷するプリンターが知られている。印刷媒体上では、主走査方向を向くラスターラインが副走査方向に複数本並ぶことで、一つの画像が完成する。また、プリンターは、印刷品質向上のために、一つのラスターラインを複数のノズルを用いてドットを形成することで印刷するオーバーラップ印刷を実行可能である(特許文献1参照。)。
【0003】
上記文献1では、あるラスターラインについて、奇数画素位置のドットを一つのノズルを用いて形成し偶数画素位置のドットを別の一つのノズルを用いて形成したり、奇数画素位置のドットを二つのノズルを用いて交互に形成し偶数画素位置のドットを別の一つのノズルを用いて形成したりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002‐11859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、オーバーラップ印刷は、ラスターラインを一つのノズルで印刷する場合(ノンオーバーラップ印刷)と比較して、印刷ヘッドの一回の主走査(パスとも言う。)中における一つのノズルによるドットの形成頻度(ドットの吐出回数)は少なくなる。単純に、あるラスターラインを構成する全てのドットを一つのノズルで形成する場合と、当該全てのドットを二つのノズルで交互に形成する場合とを比較すると、後者における一つのノズルによるドットの形成頻度は、前者における一つのノズルによるドットの形成頻度に対して1/2である。このような形成頻度は、印刷ヘッドにおいて一つのノズルに対応して設けられた一つのピエゾ素子に供給される駆動信号内に表れるパルス波形の頻度に対応している。つまり、ノズルに対応するピエゾ素子へ供給する当該駆動信号におけるパルス波形の頻度(駆動信号の周波数と言い換えてもよい。)を変更することで、一回のパス内において当該ノズルから吐出されるドット数を調整できる。
【0006】
プリンターでは、各ノズルから、1ドットあたりのインク量が異なる複数のサイズのドット、例えば、大ドット、中ドット、小ドットと呼ばれるサイズの異なるドットを吐出可能である。1ドットあたりのインク量の大小関係は、大ドット>中ドット>小ドットである。このような各ドットサイズには、プリンターの設計上理想とされるインク量(基準値)というものが夫々存在する。
【0007】
しかしながら、上述したようなノズルによるドットの形成頻度の違いがドットあたりのインク量に影響を与えることがある。つまり、ドットの形成頻度の高低によらずノズルから吐出されるドットあたりのインク量は一定値(そのドットサイズにとっての基準値)であることが理想であるが、実際には、上記形成頻度が異なると、印刷ヘッド内の種々の要素(例えば、インクの流路形状、インク自体の特性、ノズル先端のインクが形成するメニスカスの状態、等の各要素)にも起因して、吐出されるドットあたりのインク量が微妙に変化し得る。さらに、このような形成頻度の違いによるインク量への影響度合いは、ドットサイズによっても異なる。そのため、例えば、オーバーラップ印刷とノンオーバーラップ印刷のように一つのノズルによる形成頻度が異なる各方法で印刷されたラスターラインが混在する印刷結果においては、各ラスターラインの印刷に採用されているドットサイズにもよるが、ラスターラインによって濃度にばらつきが発生し得る。このような濃度のばらつきは、印刷結果における色むら(主走査方向のスジ)等となって表れる。
【0008】
本発明は上記課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、オーバーラップ印刷をする場合に却って印刷結果が劣化してしまうことを防止し、良好な画質の印刷結果を実現することが可能な印刷制御装置、印刷制御方法、印刷制御プログラムおよび印刷装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様の一つは、印刷の副走査方向に沿って配列された複数のノズルからインクを吐出してドットを形成する印刷ヘッドを印刷の主走査方向に走査させることにより印刷を実行可能な印刷部に、主走査方向を向く各ラスターラインのうち少なくとも一部のラスターラインについて複数のノズルを用いてドットを形成するオーバーラップ印刷の実行を指示する印刷制御装置であって、上記印刷部に1ドットあたりのインク量が異なる複数のサイズのドットの形成を指示可能であり、オーバーラップ印刷される一つのラスターラインを構成する各ドットの形成に用いられる複数のノズル間の使用割合を、ドットのサイズ毎に異ならせる構成としてある。
【0010】
当該構成によれば、印刷制御装置は、オーバーラップ印刷されるラスターラインの各ドットの形成に用いられる各ノズルの使用割合を、ドットサイズ毎に異ならせるため、ドットの形成頻度(ノズルの使用頻度)の違いによるインク量への影響が異なる各ドットサイズそれぞれにとって最適な使用割合を用いて、ラスターラインを印刷することができる。そのため、オーバーラップ印刷をすることで却って上述したような色むらが発生してしまう、という事態を避けることができる。
【0011】
本発明の態様の一つとして、印刷制御装置は、オーバーラップ印刷されるラスターラインにおける画素位置とドットの形成に用いられるノズルとの対応関係を、上記使用割合を夫々異ならせて規定した上記サイズ毎のマスクを予め備え、上記サイズのうち何れか一つのサイズのドットの形成またはドットの非形成を画素毎に規定したオーバーラップ印刷されるラスターラインの印刷データに対し、上記サイズ毎の各マスクを適用することにより、当該ラスターラインを構成する各ドットの形成に用いられるノズルを決定し、当該決定に従って上記印刷部に各ノズルにより所定サイズのドットを形成させる、としてもよい。
当該構成によれば、ドットサイズ毎の上記マスクを予め用意し印刷データに適用することで、オーバーラップ印刷されるラスターラインのドット形成に用いられる複数のノズル間の使用割合を、容易にドットサイズに応じた最適な割合とすることができる。
【0012】
本発明の態様の一つとして、印刷制御装置は、上記サイズのうち印刷部の主走査におけるドットの形成頻度の違いに応じたインク量の変動が最も大きいサイズに対応する上記使用割合は、他のサイズに対応する上記使用割合と比較して、複数のノズルのうちの一のノズルについての割合が最も高い構成としてもよい。
当該構成によれば、上記形成頻度の違いに応じたインク量の変動が最も大きいドットサイズについては、複数のノズルのうちの一のノズルをより多く使用する(つまり、当該ドットサイズについては限りなくノンオーバーラップ印刷に近い印刷をする)ため、当該ドットサイズを含むラスターラインと周囲のラスターラインとの濃度のばらつきを抑制することができ、印刷結果の劣化を防止できる。
【0013】
本発明にかかる技術的思想は、印刷制御装置というカテゴリー以外にも、種々の形式で実現される。例えば、印刷制御装置が実行する処理工程を有する印刷制御方法の発明や、かかる処理工程を所定のハードウェア(コンピューター)に実行させる印刷制御プログラムの発明も把握することができる。また、印刷制御装置は、単体の装置によって実現されてもよいし複数の装置の組合せによって実現されてもよい。また、印刷ヘッド(印刷部)を備え、さらに上記印刷制御装置の構成を含む印刷装置の発明も把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】装置構成を概略的に示す図である。
【図2】印刷ヘッドにおけるノズルの配列を例示する図である。
【図3】印刷ヘッドにおけるノズルとピエゾ素子とを含む構造を例示する図である。
【図4】印刷制御処理を示すフローチャートである。
【図5】OLラスターラインに各マスクを適用する様子を説明する図である。
【図6】ノズルと印刷媒体に形成されるドットとの関係の一例を示す図である。
【図7】OLラスターラインに変形例にかかる各マスクを適用する様子を説明する図である。
【図8】変形例にかかるノズルと印刷媒体に形成される大ドットとの関係の一例を示す図である。
【図9】変形例にかかるノズルと印刷媒体に形成される中ドットとの関係の一例を示す図である。
【図10】変形例にかかるノズルと印刷媒体に形成される小ドットとの関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
1.装置の概略
図1は、本実施形態にかかる装置構成を概略的に示している。図1では、PCとしてのコンピューター10と、プリンター50とを示している。コンピューター10及び又はプリンター50は、印刷制御装置に該当する。また、コンピューター10及びプリンター50、またはプリンター50は、印刷装置にも該当する。コンピューター10においては、CPU11が、ハードディスクドライブ(HDD)20等に記憶されたプログラムデータ21をRAM12に展開してOSの下でプログラムデータ21に従った演算を行なうことにより、プリンター50を制御するためのプリンタードライバー13が実行される。プリンタードライバー13は、画像データ取得部13a、色変換処理部13b、ハーフトーン(HT)処理部13c、ラスタライズ処理部13d等の各機能をCPU11に実行させるためのプログラムである。これら各機能については後述する。
【0016】
コンピューター10には、表示部としてのディスプレー30が接続されており、ディスプレー30には各処理に必要なユーザーインターフェイス(UI)画面が表示される。また、コンピューター10には、例えばキーボードやマウス等の操作部40が接続されており、各処理に必要な指示がユーザーにより操作部40を介して入力される。また、コンピューター10には、プリンター50が接続されている。後述するように、コンピューター10においては、プリンタードライバー13の機能により、印刷対象画像を表現した画像データに基づいて駆動データが生成され、該駆動データがプリンター50に対して送信される。
【0017】
プリンター50においては、CPU51が、ROM53等のメモリーに記憶されたプログラムデータ54をRAM52に展開してOSの下でプログラムデータ54に従った演算を行なうことにより、自機を制御するためのファームウェアFWが実行される。ファームウェアFWは、コンピューター10から送信された駆動データをASIC56に送ることにより、駆動データに基づいた印刷を実行させることができる。
またファームウェアFWは、印刷対象画像を表現した画像データを、図示しない外部接続用のコネクタに装着されたメモリーカードや、外部装置(例えばコンピューター10)等から取得し、取得した画像データに基づいて駆動データを生成することもできる。このようにファームウェアFWの機能により駆動データを生成した場合も、駆動データはASIC56に送られる。
【0018】
ASIC56は駆動データを取得し、駆動データに基づいて、紙送り機構57やキャリッジモーター58や印刷ヘッド62を駆動するための駆動信号を生成する。プリンター50はキャリッジ60を備えており、キャリッジ60は複数種類のインク毎のインクカートリッジ61を搭載している。図1の例では、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各種インクに対応したインクカートリッジ61が搭載されている。キャリッジ60は、各インクカートリッジ61から供給されるインクを多数のノズルから吐出する印刷ヘッド62を備える。ただし、印刷ヘッド62から吐出するインクの具体的な種類や数は上述したものに限られず、例えば、ライトシアン、ライトマゼンダ、オレンジ、グリーン、グレー、ライトグレー…等、種々のインクを使用可能である。またインクカートリッジ61は、キャリッジ60に搭載されずに、プリンター50内の所定位置に設置されるとしてもよい。
【0019】
図2は、印刷ヘッド62の下面(印刷媒体と相対する面)におけるノズルの配列を例示している。印刷ヘッド62の下面には複数のノズル列が形成されており、図2の例では、Kインクを吐出するための複数のノズルNzからなるノズル列KN、Cインクを吐出するための複数のノズルNzからなるノズル列CN、Mインクを吐出するための複数のノズルNzからなるノズル列MN、Yインクを吐出するための複数のノズルNzからなるノズル列YNが形成されている。一つのノズル列を構成する複数のノズルは、副走査方向に沿って一定のノズルピッチで並んでいる。ノズルピッチは、プリンター50の副走査方向の印刷解像度によるドットピッチの整数倍である。なお、ノズル列を構成する各ノズルは、副走査方向に沿って一直線上に配列されている必要はなく、例えば、千鳥状に配列されていてもよい。印刷ヘッド62においては、各ノズルに対し、ノズルからドットを吐出させるための駆動素子としてのピエゾ素子が設けられている。
【0020】
図3は、一つのノズルNzと当該ノズルNzに対応して設けられたピエゾ素子PEとの構造を例示している。ピエゾ素子PEは、ノズルNzまでインクを導くインク通路25bに接する位置に設置される。ピエゾ素子PEに駆動信号DRVが印加されると、ピエゾ素子PEは、駆動信号DRVに含まれる所定の電圧波形(パルス波形P)に応じて伸張し、インク通路25bの一側壁を変形させる。この結果、インク通路25bの体積はピエゾ素子PEの伸張に応じて収縮し、この収縮分に相当するインクがインク滴Ip(ドット)となってノズルNzから吐出される。本実施形態では、ピエゾ素子PEに印加する駆動信号DRVの波形を異ならせる等することで、1ドットあたりのインク量が異なる複数のサイズのドット(大ドット、中ドット、小ドット)をノズルNzから吐出可能としている。
【0021】
紙送り機構57(図1)は、図示しない紙送りモーターや紙送りローラーを備え、ASIC56に駆動制御されることにより、副走査方向への印刷媒体の送りを実行する。また、ASIC56にキャリッジモーター58の駆動が制御されることにより、キャリッジ60(および印刷ヘッド62)が副走査方向に垂直な主走査方向に沿って移動(主走査)し、かつASIC56は主走査に伴って印刷ヘッド62に所定タイミングで各ノズルからインクを吐出させる。これにより、印刷媒体にドットが付着し、駆動データに対応する画像(印刷対象画像)が印刷媒体上に再現される。プリンター50は、さらに操作パネル59を備える。操作パネル59は、表示部(例えば液晶パネル)や、表示部内に形成されるタッチパネルや、各種ボタンやキーを含み、ユーザーからの入力を受け付けたり、必要なUI画面を表示部に表示したりする。なお、プリンター50、あるいはプリンター50内の少なくとも印刷ヘッド62を含む一部構成は、印刷部に該当する。
【0022】
本実施形態では上述した構成を前提とし、以下に、印刷対象画像をプリンター50で印刷する処理について説明する。当該印刷では、主走査方向を向く各ラスターラインのうち少なくとも一部のラスターラインについて複数のノズルを用いてドットを形成するオーバーラップ印刷を行なう。また、オーバーラップ印刷される一つのラスターラインを構成する各ドットの形成に用いられる複数のノズル間の使用割合を、ドットのサイズ毎に異ならせる。なお本実施形態におけるコンピューターやプリンターの基本的構成としては、特開2002‐11859号公報に開示された構成等を適宜採用するとしてもよい。
【0023】
2.印刷制御処理
図4は、印刷制御処理をフローチャートにより示している。ここでは、プリンタードライバー13(印刷制御プログラム)によりCPU11が当該フローチャートを実行するものとして説明をする。当該フローチャートを立ち上げる前提として、プリンタードライバー13は、操作部40を介してユーザーによる任意の印刷対象画像の選択を受け付けているものとする。
【0024】
ステップS100では、画像データ取得部13aが、印刷対象画像を表現した画像データを、HDD20や図示しない外部接続用のコネクタに装着されたメモリーカード等、所定の格納領域から取得する。ここでは、画像データは、画像を構成する各画素がレッド(R),グリーン(G),ブルー(B)毎の階調値(例えば、0〜255の256階調)を有するRGBデータであるとする。なお、当該画像データがPDL等他の形式で記述されたファイルである場合には、画像データ取得部13aは、当該ファイルを解析してRGBデータに展開する。さらに画像データ取得部13aは、RGBデータに対して、プリンター50における印刷解像度に合わせるための解像度変換処理を適宜実行する。
【0025】
ステップS110では、色変換処理部13bが、画像データ取得部13aにより取得されたRGBデータを、HDD20等に予め格納された色変換ルックアップテーブル(LUT)を用いて色変換する。色変換LUTは、入力表色系(RGB表色系)と出力表色系(プリンター50が使用するインク種類に対応したインク量空間)との対応関係を複数の入力格子点について規定している。本実施形態の場合、色変換LUTにおいては、各入力格子点に対応付けられた出力値として、C,M,Y,Kの各インクについてのインク量(階調値)が規定されている。色変換の際には、必要に応じて補間演算等が実行される。この結果、RGBデータが、画素毎にC,M,Y,K毎の階調値(例えば、0〜255の256階調)を有するインク量データに変換される。
【0026】
ステップS120では、HT処理部13cが、インク量データに対してハーフトーン処理を実行することにより、インク種類毎かつ画素毎にドットの形成/非形成を規定したハーフトーンデータ(印刷データ)を生成する。ハーフトーン処理は、ディザ法や誤差拡散法等によって実行される。なお本実施形態では、HT処理部13cは、インク種類毎かつ画素毎に、大ドットの形成/中ドットの形成/小ドットの形成/ドット非形成のいずれか一つを規定した4値のハーフトーンデータを生成する。
【0027】
ステップS130では、ラスタライズ処理部13dが、ハーフトーンデータのインク種類毎かつ画素毎の情報を印刷ヘッド62の各主走査(パス)および各ノズルに割り当てることにより、ハーフトーンデータをプリンター50に転送すべき順に並べ替えた駆動データを生成する(ラスタライズ処理)。つまり当該ラスタライズ処理によれば、ハーフトーンデータにおいて規定された各ドットは、その画素位置に応じて、何番目のパスで、どのノズルによって形成されるかが確定される。なお、本実施形態では、ハーフトーンデータを構成する各ラスターライン(主走査方向を向く画素列)のうち、オーバーラップ印刷の対象となるラスターライン(以下、OLラスターラインと呼ぶ。)については、予めHDD20等に記憶されたドットサイズ毎の各マスク(小ドット用OLマスクM1、中ドット用OLマスクM2、大ドット用OLマスクM3。以下、マスクM1,M2,M3と表記。)を適用することにより、各画素のドットをノズルに割り当てる。ハーフトーンデータを構成するラスターラインのうちいずれがOLラスターラインに該当するかは、プリンター50において採用される印刷方式に応じて決まる。ここで言う印刷方式とは、パスとパスとの間における紙送り機構57による印刷媒体の送り量やノズル列におけるノズルピッチ等の要素を含んでおり、本実施形態では採用される印刷方式が予め決められているものとする。
【0028】
図5は、ラスタライズ処理の中でOLラスターラインに対して各マスクM1,M2,M3を適用する様子を説明する図である。図5では、一例として、ハーフトーンデータを構成する一つのラスターライン(Cインクのドットの形成/非形成を規定したラスターライン)であってOLラスターラインに該当するものに対し、各マスクM1,M2,M3を適用する様子を示している。ここで、OLラスターライン(ハーフトンデータ)の各画素に記載した“11”は大ドットの形成を示し、“10”は中ドットの形成を示し、“01”は小ドットの形成を示し、“00”はドット非形成を示している。
【0029】
一方、各マスクM1,M2,M3は、OLラスターラインにおける画素位置(主走査方向の画素位置)とドットの形成に用いられるノズルとの対応関係をそれぞれに規定したマスクである。一例として、一つのOLラスターラインは二つのノズルにより印刷されるものとし、各マスクM1,M2,M3は、先行パスで当該OLラスターラインの印刷に使用されるノズルでドットが形成される画素位置に“1”を、後行パスで当該OLラスターラインの印刷に使用されるノズルでドットが形成される画素位置に“0”を規定している。ここでは一つのOLラスターラインを印刷するための複数のパスを比較したときに時間的に先に実行されるパスを先行パスと呼び、後に実行されるパスを後行パスと呼んでいる。さらに見易さを考慮して、図5では各マスクM1,M2,M3において“1”に対応する画素位置をグレー色で示し、“0”に対応する画素位置を白色で示している。
【0030】
さらに、各マスクM1,M2,M3は“1”と“0”との割合、すなわち複数(2つ)のノズル間の使用割合が異なっている。図5では一例として、マスクM1では“1”と“0”との割合を同じ(それぞれ50%)とし、マスクM2では“1”の割合をマスクM1よりも高くし(例えば、“1”を70%、“0”を30%)とし、マスクM3では“1”の割合をマスクM2よりも高く(例えば、“1”を90%、“0”を10%)している。そして、これらマスクM1,M2,M3を全てOLラスターラインに適用(重畳)すると、図5に示すように、OLラスターラインの画素のうち、大ドット“11”に該当する各画素については、重畳されたマスクM3によって割当先のノズル(“1”が示す先行パスのノズル又は“0”が示す後行パスのノズルのいずれか一方)が決定される。同様に、OLラスターラインの画素のうち中ドット“10”に該当する各画素については、重畳されたマスクM2によって割当先のノズルが決定され、OLラスターラインの画素のうち小ドット“01”に該当する各画素については、重畳されたマスクM1によって割当先のノズルが決定される。従って、この場合の例では、OLラスターラインにおける大ドット、中ドット、小ドットそれぞれを二つのノズルで形成するときの当該二つのノズル間の使用割合のうち、大ドットに関する使用割合が最も一つのノズルへの偏りが大きいものとなる。図5では見易さを顧慮して、マスクM1,M2,M3の適用後(ノズル割当て後)のOLラスターラインの大ドット、中ドット、小ドットの各画素のうち先行パスのノズルで形成されるドットはグレー色で示し、これら大ドット、中ドット、小ドットの各画素のうち後行パスのノズルで形成されるドットは白色で示している。
【0031】
図5では一つのインク(Cインク)の一つのOLラスターラインに各マスクM1,M2,M3を適用する例を示したが、むろん、各インク種類のハーフトーンデータに含まれる各OLラスターラインに対して各マスクM1,M2,M3が適用される。また、マスクM1,M2,M3の具体的内容は、適用対象のOLラスターライン毎に異なっていてもよい。このようなラスタライズ処理により生成された駆動データはプリンター50へ出力される(ステップ140)。この結果、プリンター50は送信された駆動データに基づいた印刷(印刷対象画像の印刷)を印刷媒体に対して実行する。
【0032】
図6は、本実施形態における印刷ヘッド62のノズルと印刷媒体に形成されるドットとの関係を一例により示している。図6では、左側にノズル列CNのパス(n回目のパス〜n+6回目のパス)毎の位置を示し、右側にノズル列CNの各ノズルから吐出された各ドットによる印刷画像を示している。むろん実際には、n回目よりも前のパスやn+6回目よりも後のパスも存在する。ここでは、複数の大ドットからなる主走査方向に一定幅を持ったベタ画像領域LAと、複数の中ドットからなる主走査方向に一定幅を持ったベタ画像領域MAと、複数の小ドットからなる主走査方向に一定幅を持ったベタ画像領域SAと、を主走査方向に並べた画像が印刷されている。図6では、ノズル列CNの位置がパス毎に副走査方向に変化しているが、実際には、印刷媒体が副走査方向に送られることでノズル列(印刷ヘッド62)と印刷媒体との副走査方向における相対位置が変化する。ここでは説明を簡易にするために、ノズル列CNは、副走査方向に沿って7個のノズル(ノズル♯1〜♯7)を備えているものとする。また図6の例では、ノズル列におけるノズルピッチは4ドットであり、パスとパスとの間における紙送り機構57による印刷媒体の送り量は5ドットである。
【0033】
このような構成例において、ノズル列の両端の2個ずつのノズル(ノズル♯1,♯2,♯6,♯7)は、オーバーラップ印刷に用いるノズルとされている。これは、ノズル列を構成する複数のノズルのうち、列の端近辺に位置するノズルは、列の中央側に位置するノズルよりも不具合(トッドの飛行曲がり等)が発生する率が高い傾向にあるからである。つまり、ドットの吐出に不具合が生じやすい端近辺のノズルについてはオーバーラップ印刷に用いるようにすることで、例えば一方向に飛行曲がりを発生させる一つのノズルだけで一つのラスターラインを形成するような事態を回避し、画質低下を防いでいる。一方、他のノズル(ノズル♯3,♯4,♯5)は、その一つのノズルで一つのラスターラインを印刷(ノンオーバーラップ印刷)するために用いられる。従って、図6の例によれば、印刷媒体上には、ノズル♯6とノズル♯1とによりオーバーラップ印刷されるラスターラインと、ノズル♯5によりノンオーバーラップ印刷されるラスターラインと、ノズル♯4によりノンオーバーラップ印刷されるラスターラインと、ノズル♯3によりノンオーバーラップ印刷されるラスターラインと、ノズル♯7とノズル♯2とによりオーバーラップ印刷されるラスターラインとが存在することになる。
【0034】
図6では、参考のためオーバーラップ印刷されたラスターライン(の一部)について“OL”と付し、ノンオーバーラップ印刷されたラスターライン(の一部)について“NOL”と付している。また図6では、○で示した各ドットの○の中の数字にて、ドットの形成に用いられたノズルの番号(1〜7)を示している。つまり、このような“OL”に対応する位置のハーフトーンデータにおけるラスターライン(OLラスターライン)が、上述したようなマスクM1,M2,M3の適用対象となっている。従って、ノズル♯6(先行パスのノズル)とノズル♯1(後行パスのノズル)で印刷されたOLラスターラインを参照すると、大ドットからなるベタ画像領域LAと、中ドットからなるベタ画像領域MAと、小ドットからなるベタ画像領域SAとでは、ノズル♯6,♯1の使用割合が互いに異なる。具体的には、ノズル♯6についての使用比率が、ベタ画像領域LAにおいて最も高く、ベタ画像領域SAにおいて最も低い。同様に、ノズル♯7(先行パスのノズル)とノズル♯2(後行パスのノズル)で印刷されたOLラスターラインもベタ画像領域LAとベタ画像領域MAとベタ画像領域SAとでは、ノズル♯7,♯2の使用割合が互いに異なる。図6では、簡素化のためにベタ画像領域LA,MA,SAのいずれも主走査方向の幅が4画素の小さな領域としているが、実際にはより多くの画素で各領域LA,MA,SAは構成されており、各領域LA,MA,SAにおける複数のノズルの使用割合は、対応する上記マスクM1,M2,M3が規定しているような割合となる。
【0035】
このような本実施形態による効果を説明する。上述したように、ドットの形成頻度の違いによるドットのインク量への影響度合いは、ドットサイズによって異なる。つまり、ドットの形成頻度を変えてもドットあたりのインク量が殆ど変化しないドットサイズについては、ノンオーバーラップ印刷をした場合とオーバーラップ印刷をした場合とでインク量が殆ど変わらないのであるから、画質改善のためにオーバーラップ印刷(各ノズルの使用割合を同程度にしたオーバーラップ印刷)を実行した方がよいと言える。一方、ドットの形成頻度の変化によるドットあたりのインク量の変化量が大きい傾向にあるドットサイズについては、ノンオーバーラップ印刷をした場合とオーバーラップ印刷をした場合とでインク量が大きく変わってしまうため、各ノズルの使用割合を同程度にしたオーバーラップ印刷をすることで却って印刷結果において色むら等を発生させてしまう可能性がある。そこで本実施形態は、これまで説明したように、オーバーラップ印刷の対象となるラスターラインを形成する際の複数のノズルの使用割合をドットサイズ毎に異ならせるとした。
【0036】
かかる構成とすることで、ドットの形成頻度の変化に対するドットあたりのインク量変化が小さいドットサイズについては複数のノズルの使用割合を同程度にしたオーバーラップ印刷を実行することでオーバーラップ印刷が本来意図する画質向上を図り、同時に、ドットの形成頻度の変化に対するドットあたりのインク量変化が大きいドットサイズについては複数のノズルの使用割合を一方のノズルに偏らせることで実質的にノンオーバーラップ印刷に近い印刷を実行し、周囲のノンオーバーラップ印刷されるラスターとの間(図6に示した“OL”のラスターと“NOL”のラスターとの間)に濃度差(むら)が発生することを防止する。この結果、サイズの異なる複数種類のドットにより形成された印刷画像の画質を全体的に向上させることができる。
【0037】
なお上記では、大ドット、中ドット、小ドットの中で、ドットの形成頻度の変化に対するドットあたりのインク量変化が最も大きいドットは大ドットであるとして説明を行なった。これは、ノズルからドットを吐出した後に印刷ヘッド62におけるインクの流路(ノズル等)内のインクに発生する振動(残留振動)の影響があると考えられるからである。つまり、大ドットはノズルから吐出されるドットあたりのインク量が最も多いことから、残留振動も比較的大きいと考えられ、このような大きな振動が残っていると次に吐出されるドットのインク量も不安定となる傾向がある。そして、このような不安定さは、ドットの形成頻度が変われば変わると考えられる。そのため、大ドットについては複数のノズルを用いてオーバーラップ印刷する場合であっても、ノズルの使用割合を一方のノズルに偏らせることでノンオーバーラップ印刷に近い印刷をして、ラスター毎にドットの形成頻度が大きく異なることを防止している。この意味で、複数のドットサイズの中でドットの形成頻度の変化に対するドットあたりのインク量変化が最も大きいドットについては、上記マスクが規定する複数のノズルの使用割合(第1のノズル:第2のノズルの使用割合)を、100%対0%としてもよい(下記変形例においても同様)。
【0038】
上記では印刷制御処理をコンピューター10が実行する場合を例に説明を行なったが、印刷制御処理(後述の変形例を含む。)はプリンター50内で行なわれるとしてもよい。つまり、プリンター50のCPU51がファームウェアFW(印刷制御プログラム)を実行することにより、画像データ取得部13a、色変換処理部13b、HT処理部13c、ラスタライズ処理部13dといった上述の各機能がプリンター50内で実現され、図4のフローチャートが実現されるとしてもよい。この場合、プリンター50内のROM53に各マスクM1,M2,M3が予め格納されている。また、CPU51は、印刷対象画像についての印刷指示など、印刷に必要な各種情報や指示を、操作パネル59を介してユーザーから受け付ける。この結果、上述したようにファームウェアFWの機能により駆動データが生成される。或いは、図4のフローチャートを、プリンタードライバー13とファームウェアFWとで分担して実現するとしてもよい。
【0039】
3.変形例
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば以下のような変形例も可能である。上述の実施形態や変形例を組み合わせた内容も、本発明の開示範囲である。
【0040】
図7は、ラスタライズ処理(ステップS130)の中でOLラスターラインに対して各マスクM1,M2,M3を適用する様子であって、図5とは異なる例(変形例)を説明する図である。図7でも一例として、ハーフトーンデータを構成するラスターライン(Cインクのドットの形成/非形成を規定したラスターライン)であってOLラスターラインに該当するものに対し、各マスクM1,M2,M3を適用する様子を示している。以下では、これまで説明した内容と異なる点について主に説明する。当該変形例では、一つのOLラスターラインは、基本的に三つのノズルにより印刷されるものとする。より具体的には、一画素おき(例えば偶数位置の各画素)に所定の一つのノズルが割り当てられるとともに、残りの一つおきの各画素(奇数位置の各画素)に対して、当該一つのノズルとは異なる二つのノズルがある比率で割り当てられる。図7では、マスクM1,M2,M3のいずれについても、偶数位置の画素は“‐”の符号を記している。そして、当該符号を記した位置以外の画素位置を対象として、先行パスのノズルの割当てを示す“1”又は後行パスのノズルの割当てを示す“0”を上述したような割合で規定している。
【0041】
これらマスクM1,M2,M3を全てOLラスターラインに適用(重畳)すると、図7に示すように、OLラスターライン上の奇数位置の画素のうち、大ドット“11”に該当する各画素については、重畳されたマスクM3によって割当先のノズルが決定される。同様に、OLラスターライン上の奇数位置の画素のうち中ドット“10”に該当する各画素については、重畳されたマスクM2によって割当先のノズルが決定され、OLラスターライン上の奇数位置の画素のうち小ドット“01”に該当する各画素については、重畳されたマスクM1によって割当先のノズルが決定される。なお、図7では、上記“‐”の符号の位置に対応する画素については、斜線によるハッチングを記している。
【0042】
図8,9,10は、変形例における印刷ヘッド62のノズルと印刷媒体に形成されるドットとの関係を一例により示している。なお変形例では、紙面のスペースの都合上、各ノズルと複数の大ドットからなる主走査方向に一定幅(8画素)を持ったベタ画像領域LAとの関係と、各ノズルと複数の中ドットからなる主走査方向に一定幅(8画素)を持ったベタ画像領域MAとの関係と、各ノズルと複数の小ドットからなる主走査方向に一定幅(8画素)を持ったベタ画像領域SAとの関係とを、図8,9,10に分けて示している。図8〜10では、左側にノズル列CNのパス(n回目のパス〜n+9回目のパス)毎の位置を示し、右側にノズル列CNの各ノズルから吐出された各ドットによる印刷画像を示している。図8〜10の例では、パスとパスとの間における紙送り機構57による印刷媒体の送り量は3ドットである。
【0043】
当該変形例では、全てのラスターラインをオーバーラップ印刷する。このように印刷対象画像を構成する全ラスターをオーバーラップ印刷する方法をフルオーバーラップ印刷と呼ぶ。一方、上記実施形態(図6)のように印刷対象画像を構成するラスターのうち一部のラスターについてのみオーバーラップ印刷する方法をパーシャル(部分)オーバーラップ印刷と呼ぶ。フルオーバーラップ印刷を行なう場合、各ラスターラインは、二つのノズルで印刷されるラスターラインと、上述したように(基本的に)三つのノズルで印刷されるラスターラインとに分かれる。二つのノズルで印刷されるラスターラインは、予め決まった二つのノズルにより一画素位置ずつ交互に印刷される。一方、三つのノズルで印刷されるラスターラインは、上記マスクM1,M2,M3で割当てが決められたノズルを含む各ノズルにより印刷される。当該変形例では、ノズル列の両端の1個ずつのノズル(ノズル♯1,♯7)および中央のノズル♯4は、上記三つのノズルによるオーバーラップ印刷に用いられるノズルに該当する。一方、他のノズル(ノズル♯2,♯3,♯5,♯6)は、上記二つのノズルによるオーバーラップ印刷に用いられるノズルに該当する。つまり、図8〜10の例によれば、印刷媒体上には、ノズル♯7,ノズル♯4およびノズル♯1による三つのノズルでオーバーラップ印刷されるラスターラインと、ノズル♯5およびノズル♯2により交互にオーバーラップ印刷されるラスターラインと、ノズル♯6およびノズル♯3により交互にオーバーラップ印刷されるラスターラインとが存在することになる。
【0044】
図8〜10では、参考のため上記三つのノズルによるオーバーラップ印刷の対象となるラスターライン(の一部)について“OL”と付し、上記二つのノズルによるオーバーラップ印刷の対象となるラスターライン(の一部)について“通常OL”と付している。“通常OL”と表現する理由は、二つのノズルを用いて交互に印刷するという最も標準的ななオーバーラップ印刷をするラスターだからである。このような“OL”に対応する位置のハーフトーンデータにおけるラスターライン(OLラスターライン)が、上述したようなマスクM1,M2,M3の適用対象となっている。従って、ノズル♯7(先行パスのノズル)とノズル♯1(後行パスのノズル)とノズル♯4とで印刷されたOLラスターラインを参照すると、大ドットからなるベタ画像領域LA(図8)と、中ドットからなるベタ画像領域MA(図9)と、小ドットからなるベタ画像領域SA(図10)とでは、ノズル♯7,♯1の使用割合が互いに異なる。具体的には、ノズル♯7についての使用比率が、ベタ画像領域LAにおいて最も高く、ベタ画像領域SAにおいて最も低い。ノズル♯4は、ノズル♯7,♯1の使用割合にかかわらず、(ドット非形成でない限り)一画素おきに使用される。図8〜10では、簡素化のためにベタ画像領域LA,MA,SAのいずれも主走査方向の幅が8画素の小さな領域としているが、実際にはより多くの画素で各領域LA,MA,SAは構成されており、各領域LA,MA,SAにおける複数のノズルの使用割合は、対応する上記マスクM1,M2,M3が規定しているような割合となる。
【0045】
このような変形例によれば、二つのノズルで交互に印刷されるラスターラインと、三つのノズルで印刷されるラスターラインとが混在するフルオーバーラップ印刷を行なう場合、三つのノズルで印刷されるラスターラインに関し、ドットの形成頻度の変化に対するドットあたりのインク量変化が大きいドットサイズについてはその内の二つのノズルの使用割合を一方のノズルに偏らせることで実質的に二つのノズルによる交互のオーバーラップ印刷に近い印刷を実行するようにした。その結果、周囲の“通常OL”に対応するラスターとの間(図8〜10に示した“OL”のラスターと“通常OL”のラスターとの間)に濃度差(むら)が発生することを防止する。この結果、サイズの異なる複数種類のドットにより形成された印刷画像の画質を全体的に向上させることができる。
【符号の説明】
【0046】
10…コンピューター、11…CPU、12…RAM、13…プリンタードライバー、13a…画像データ取得部、13b…色変換処理部、13c…HT処理部、13d…ラスタライズ処理部、20…HDD、30…ディスプレー、40…操作部、50…プリンター、51…CPU、52…RAM、53…ROM、59…操作パネル、61…インクカートリッジ、M1…小ドット用OLマスク、M2…中ドット用OLマスク、M3…大ドット用OLマスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷の副走査方向に沿って配列された複数のノズルからインクを吐出してドットを形成する印刷ヘッドを印刷の主走査方向に走査させることにより印刷を実行可能な印刷部に、主走査方向を向く各ラスターラインのうち少なくとも一部のラスターラインについて複数のノズルを用いてドットを形成するオーバーラップ印刷の実行を指示する印刷制御装置であって、
上記印刷部に1ドットあたりのインク量が異なる複数のサイズのドットの形成を指示可能であり、オーバーラップ印刷される一つのラスターラインを構成する各ドットの形成に用いられる複数のノズル間の使用割合を、ドットのサイズ毎に異ならせることを特徴とする印刷制御装置。
【請求項2】
オーバーラップ印刷されるラスターラインにおける画素位置とドットの形成に用いられるノズルとの対応関係を、上記使用割合を夫々異ならせて規定した上記サイズ毎のマスクを予め備え、
上記サイズのうち何れか一つのサイズのドットの形成またはドットの非形成を画素毎に規定したオーバーラップ印刷されるラスターラインの印刷データに対し、上記サイズ毎の各マスクを適用することにより、当該ラスターラインを構成する各ドットの形成に用いられるノズルを決定し、当該決定に従って上記印刷部に各ノズルにより所定サイズのドットを形成させることを特徴とする請求項1に記載の印刷制御装置。
【請求項3】
上記サイズのうち印刷部の主走査におけるドットの形成頻度の違いに応じたインク量の変動が最も大きいサイズに対応する上記使用割合は、他のサイズに対応する上記使用割合と比較して、複数のノズルのうちの一のノズルについての割合が最も高いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷制御装置。
【請求項4】
印刷の副走査方向に沿って配列された複数のノズルからインクを吐出してドットを形成する印刷ヘッドを印刷の主走査方向に走査させることにより印刷を実行可能な印刷部に、主走査方向を向く各ラスターラインのうち少なくとも一部のラスターラインについて複数のノズルを用いてドットを形成するオーバーラップ印刷を実行させる印刷制御方法であって、
上記印刷部に1ドットあたりのインク量が異なる複数のサイズのドットの形成を指示可能であり、オーバーラップ印刷される一つのラスターラインを構成する各ドットの形成に用いられる複数のノズル間の使用割合を、ドットのサイズ毎に異ならせることを特徴とする印刷制御方法。
【請求項5】
印刷の副走査方向に沿って配列された複数のノズルからインクを吐出してドットを形成する印刷ヘッドを印刷の主走査方向に走査させることにより印刷を実行可能な印刷部に、主走査方向を向く各ラスターラインのうち少なくとも一部のラスターラインについて複数のノズルを用いてドットを形成するオーバーラップ印刷を指示する処理をコンピューターに実行させる印刷制御プログラムであって、
上記印刷部に1ドットあたりのインク量が異なる複数のサイズのドットの形成を指示可能であり、オーバーラップ印刷される一つのラスターラインを構成する各ドットの形成に用いられる複数のノズル間の使用割合を、ドットのサイズ毎に異ならせることを特徴とする印刷制御プログラム。
【請求項6】
印刷の副走査方向に沿って配列された複数のノズルからインクを吐出してドットを形成する印刷ヘッドを印刷の主走査方向に走査させることにより印刷を実行可能であり、主走査方向を向く各ラスターラインのうち少なくとも一部のラスターラインについて複数のノズルを用いてドットを形成するオーバーラップ印刷を実行する印刷装置であって、
上記印刷ヘッドは1ドットあたりのインク量が異なる複数のサイズのドットを形成可能であり、
オーバーラップ印刷される一つのラスターラインを構成する各ドットの形成に用いられる複数のノズル間の使用割合を、ドットのサイズ毎に異ならせることを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−232509(P2012−232509A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102993(P2011−102993)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】