印刷方法および印刷装置
【課題】各主走査におけるインクの吐出位置の重なりを防止したカラー印刷において、印刷画像中に筋ムラが発生することを防止する。
【解決手段】各吐出口群が4色のインクを行方向に並ぶ描画位置81にそれぞれ吐出するヘッドの主走査および副走査を繰り返して、各描画位置81に対して4色のインクの吐出制御を順次行う印刷において、一の主走査時に列方向に関して1つの描画位置81おきに存在する描画位置の行に対してインクの吐出制御を行い、次の主走査時には吐出制御の対象となる行が前回の主走査時のものから変更され、さらに、一の主走査時に描画位置の各列に対して吐出されるインクの色が、直前のヘッドの副走査により、前回の主走査にてこの描画位置の列に対して吐出されたインクの色から異なる色へと変更される。これにより、印刷画像中に行または列方向に伸びる筋ムラが発生することを防止することができる。
【解決手段】各吐出口群が4色のインクを行方向に並ぶ描画位置81にそれぞれ吐出するヘッドの主走査および副走査を繰り返して、各描画位置81に対して4色のインクの吐出制御を順次行う印刷において、一の主走査時に列方向に関して1つの描画位置81おきに存在する描画位置の行に対してインクの吐出制御を行い、次の主走査時には吐出制御の対象となる行が前回の主走査時のものから変更され、さらに、一の主走査時に描画位置の各列に対して吐出されるインクの色が、直前のヘッドの副走査により、前回の主走査にてこの描画位置の列に対して吐出されたインクの色から異なる色へと変更される。これにより、印刷画像中に行または列方向に伸びる筋ムラが発生することを防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式にて印刷媒体上にカラー印刷を行う印刷方法および印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、それぞれがインクの微小な液滴を吐出する複数の吐出口が配列されたヘッドを印刷用紙等の印刷媒体に沿って移動することにより、印刷媒体上に印刷を行うインクジェット方式の印刷装置が用いられており、ヘッドに互いに異なる色のインクを吐出する複数のノズルユニット(マルチノズルとも呼ばれる。)を設けることにより、カラー印刷を行う印刷装置も実用化されている。一般的なカラー印刷装置では、印刷媒体上の各位置に対する複数の色のインクの重なり順序(正確には、複数の色のインクに係る吐出制御の順序)を一定にすることにより、印刷画像にインクの重なり順序に起因する色見の変化が生じることが防止される。
【0003】
また、近年、様々な印刷媒体にカラー印刷を行う要求があり、例えば、プラスチック等の撥液性を有する印刷媒体にカラー印刷を行う場合等には、紫外線硬化性を有するカラーのインクを用いるカラー印刷装置が利用される。このようなカラー印刷装置では、互いに異なる色のインクを吐出する複数のノズルユニット、および、印刷媒体上に紫外線を照射する光照射部を有するヘッドが設けられ、ヘッドを印刷媒体に対して相対的に主走査させることにより、複数のノズルユニットの吐出口から複数の色のインクを印刷媒体上の同一の位置に順次吐出した後に、後続する光照射部により印刷媒体上のインクに紫外線が照射される。一方、印刷媒体上の主走査方向の各位置において、ヘッドの一の主走査により、主走査方向に垂直な副走査方向に所定のピッチにて並ぶ複数の位置のそれぞれに複数の色のインクを吐出し、ヘッドの主走査が完了する毎に、ヘッドを印刷媒体に対して副走査方向に移動することにより、副走査方向に関して直前の主走査にてインクが吐出された位置の間を、次の主走査にて補間することも行われる(いわゆる、インターレース描画)。
【0004】
なお、特許文献1の段落0014および0015には、印刷用紙上の主走査方向に並ぶ複数の位置において1つおきに存在する位置に対して一の吐出口によりドットを形成し、残りの位置については他の吐出口によりドットを形成することにより、吐出口の特性のばらつきに起因して印刷画像上に主走査方向に伸びる筋ムラが発生することを防止する印刷技術(「シングリング方式」や「マルチスキャン方式」と呼ばれる。)が開示されている。
【特許文献1】特開2005−238484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記のように、ヘッドの一の主走査時に複数の色のインクを印刷媒体上の同一の位置に吐出する場合には、i)同一の位置に吐出された各色のインクの液滴が硬化する前にインク同士が混ざることにより所望の色彩を表現できない、ii)ヘッドの一の主走査にて各位置に吐出されるインクの量が多くなり多量の紫外線を照射する必要がある、iii)一の色のインクの液滴が硬化する前に他の色のインクの液滴が重ねられることによりインクが広がってしまい、特に画像のエッジ部分がぼやける、iv)ヘッドの主走査の往路と復路とで各位置に対する複数のノズルユニット(通常、主走査方向に並べられている。)の到達順序が異なり、各位置における複数の色のインクの重なり順序が相違するため、双方向印刷において片方向印刷よりも印刷画像の画質が低下する等の問題がある。
【0006】
そこで、ヘッドの一の主走査において印刷媒体上に吐出されるインクの吐出位置を副走査方向に色毎にずらした状態で主走査方向の各位置にインクを吐出し、ヘッドを副走査方向に移動した後、ヘッドの主走査を繰り返し、一の主走査にて一の色のインクが吐出された位置に次の主走査にて他の色のインクを吐出することにより(各色に着目すれば、この場合もインターレース描画となる。)、各主走査において複数の色のインクが同位置に吐出されることを防止して、上記i)ないしiv)の問題を解消することが考えられる。しかしながら、この場合、最終的な複数の色のインクの重なり順序が主走査方向に沿って同一となり、かつ、副走査方向の位置毎に異なるため、印刷画像において主走査方向に伸びる筋ムラが発生してしまう。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、各主走査におけるインクの吐出位置の重なりを防止したカラー印刷において、印刷画像中に筋ムラが発生することを防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、インクジェット方式にて印刷媒体上にカラー印刷を行う印刷方法であって、a)印刷媒体上において互いに直交する行方向および列方向に配列された描画位置である描画位置配列が設定されており、前記描画位置配列が、それぞれがM行N列(M、Nは2以上の整数)の描画位置である複数の描画ブロックに分割されており、P色(Pは2以上(M×N)以下の整数)のインクを吐出するヘッドを前記印刷媒体に対して前記列方向に相対的に主走査しつつ、前記ヘッドが通過する各描画ブロック内のP個の描画位置に対する吐出制御としてP色のインクのそれぞれの吐出制御を1回行う工程と、b)前記各描画ブロックにおける前記P色のインクに係る前記P個の描画位置の配置を変更しつつ前記a)工程を繰り返すことにより、前記各描画ブロック内の全ての描画位置のそれぞれに対して前記P色のインクに係るP回の吐出制御を行う工程とを備え、前記各描画ブロックの各行および各列において、互いに隣接するいずれか2つの描画位置における前記P色のインクに係る吐出制御の順序が異なる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の印刷方法であって、前記a)工程におけるインクの吐出制御の対象となる描画位置を吐出位置として、前記ヘッドの一の主走査の際の吐出位置の相互の位置関係が吐出位置配列として予め設定されており、前記吐出位置配列において前記各描画ブロックに含まれるP個の吐出位置の配置が、前記複数の描画ブロックにて互いに同様となり、前記b)工程において、前記ヘッドの主走査毎に前記吐出位置配列の位置がシフトされることにより、前記各描画ブロックにおける前記P色のインクに係る前記P個の描画位置の配置が変更される。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の印刷方法であって、前記Pと前記Nとが等しく、前記a)工程において前記P個の描画位置が前記行方向に並ぶ。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の印刷方法であって、前記b)工程において、前記a)工程が繰り返される毎に、前記各描画ブロック内の前記P個の描画位置が前記列方向に変更される。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項2ないし4のいずれかに記載の印刷方法であって、前記b)工程において、前記a)工程が繰り返される毎に、前記描画位置の前記行方向のピッチのN倍以上の距離だけ前記ヘッドが前記印刷媒体に対して前記行方向に相対的に移動する。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の印刷方法であって、前記印刷媒体が撥液性を有する。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の印刷方法であって、前記ヘッドが、前記印刷媒体上に吐出された直後のインクを硬化させるインク硬化部を備える。
【0015】
請求項8に記載の発明は、インクジェット方式にて印刷媒体上にカラー印刷を行う印刷方法であって、a)複数の吐出口群を所定の行方向に配列して備えて各吐出口群から複数の色のインクを吐出するヘッドを、印刷媒体に対して前記行方向に直交する列方向に相対的に主走査しつつ前記複数の吐出口群からのインクの吐出制御を行う工程と、b)主走査が終了する毎に前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記行方向へと相対的に移動する工程と、c)前記a)工程および前記b)工程を繰り返すことにより、前記印刷媒体上において前記行方向および前記列方向に配列された描画位置のそれぞれに対して前記複数の色のインクの吐出制御を順次行う工程とを備え、前記a)工程において、前記列方向に関して所定数の描画位置おきに存在する描画位置の行に対してインクの吐出制御が行われ、かつ、各a)工程において吐出制御の対象となる行が前回のa)工程におけるものから変更され、前記各a)工程において描画位置の各列に対して吐出されるインクの色が、直前のb)工程により、前記前回のa)工程おいて前記各列に対して吐出されたインクの色から異なる色へと変更される。
【0016】
請求項9に記載の発明は、インクジェット方式にて印刷媒体上にカラー印刷を行う印刷装置であって、互いに直交する行方向および列方向に配列された描画位置である描画位置配列が設定されており、かつ、前記描画位置配列が、それぞれがM行N列(M、Nは2以上の整数)の描画位置である複数の描画ブロックに分割されている印刷媒体を保持する保持部と、P色(Pは2以上(M×N)以下の整数)のインクを印刷媒体に向けて吐出するヘッドと、前記ヘッドを前記保持部に保持される印刷媒体に対して前記列方向および前記行方向に相対的に移動する走査機構と、前記走査機構による前記ヘッドの移動と前記ヘッドからのインクの吐出とを同期させつつ制御する制御部とを備え、前記制御部が、a)前記ヘッドを前記保持される印刷媒体に対して前記列方向に相対的に主走査しつつ、前記ヘッドが通過する各描画ブロック内のP個の描画位置に対する吐出制御としてP色のインクのそれぞれの吐出制御を1回行う工程と、b)前記各描画ブロックにおける前記P色のインクに係る前記P個の描画位置の配置を変更しつつ前記a)工程を繰り返すことにより、前記各描画ブロック内の全ての描画位置のそれぞれに対して前記P色のインクに係るP回の吐出制御を行う工程とを実行し、前記各描画ブロックの各行および各列において、互いに隣接するいずれか2つの描画位置における前記P色のインクに係る吐出制御の順序が異なる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、各主走査におけるインクの吐出位置の重なりを防止したカラー印刷において、印刷画像中に行方向または列方向に伸びる筋ムラが発生することを防止することができる。
【0018】
また、請求項2の発明では、各主走査におけるインクの吐出位置の重なりおよび印刷画像における筋ムラの発生を防止したカラー印刷を容易に行うことができ、請求項4の発明では列方向に並んで吐出されたインクが互いに繋がってしまうことを防止することができる。
【0019】
また、請求項5の発明では、吐出口の損傷またはばらつきに起因する印刷画像上の筋ムラの発生を防止することができ、請求項6の発明では、各主走査におけるインクの吐出位置の重なりを防止することにより撥液性を有する印刷媒体上に画像を適切に印刷することができ、請求項7の発明では、撥液性を有する印刷媒体上に適切な画像を確実に印刷することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明の一の実施の形態に係る印刷装置1の外観を示す斜視図である。印刷装置1は、例えばポリカーボネートやPET(ポリエチレン テレフタレート)等の撥液性を有するプラスチックにて形成される板状またはシート状の基材9上にインクジェット方式にてカラー印刷を行うものである。
【0021】
図1の印刷装置1は本体11および制御部4を備え、本体11は基材9を図1中の(+Z)側の面上に保持するステージ21、および、基台20上に設けられるステージ移動機構22を備える。ステージ21の基材9とは反対側の面には、ステージ移動機構22が有するボールネジ機構のナットが固定され、ボールネジ機構に接続されたモータが回転することにより、ステージ21が図1中のY方向(主走査方向)に滑らかに移動する。基台20上には、基台20に対するステージ21の位置を検出する位置検出モジュール23がさらに設けられる。
【0022】
ステージ21の上方には基材9に向けてインクの微小液滴を吐出するヘッド3が配置され、ヘッド3は、ボールネジ機構およびモータを有するヘッド移動機構24により主走査方向に垂直かつ基材9の主面に沿う副走査方向(図1中のX方向)に移動可能に支持される。また、基台20には、ステージ21を跨ぐようにしてフレーム25が設けられ、ヘッド移動機構24はフレーム25に固定される。フレーム25上には紫外線を出射する光源39が設けられ、複数の光ファイバ(実際には、複数の光ファイバは束状となっており、図1では符号391を付して1本の太線にて示している。)を介して光源39からの光がヘッド3の内部へと導入される。
【0023】
図2はヘッド3を示す底面図である。図2に示すように、ヘッド3はそれぞれが互いに異なる色のインクを吐出する複数の(図2では、4個の)ノズルユニット31を備え、複数のノズルユニット31はY方向に配列されてヘッド3の本体30に固定される。図2中の最も(+Y)側のノズルユニット31はK(ブラック)の色のインクを吐出し、Kのノズルユニット31の(−Y)側のノズルユニット31はC(シアン)の色のインクを吐出し、Cのノズルユニット31の(−Y)側のノズルユニット31はM(マゼンタ)の色のインクを吐出し、最も(−Y)側のノズルユニット31はY(イエロー)の色のインクを吐出する。なお、各色のインクは紫外線硬化剤を含んでいる。
【0024】
各ノズルユニット31では、図2中のX方向に複数の(例えば、300個の)吐出口311が一定のピッチV(例えば、150dpi(dot per inch)に相当する169マイクロメートル(μm)のピッチであり、以下、「吐出口ピッチV」という。)にて配列されており、X方向に注目すると、一のノズルユニット31の互いに隣接する2つの吐出口311の間には、他の3個のノズルユニット31のそれぞれの1つの吐出口311が配置される。例えば、図2中の最も(+Y)側のKのノズルユニット31において符号311aを付す吐出口と吐出口311aの(+X)側の吐出口311e(図2では、これらの吐出口のそれぞれに平行斜線を付している。)との間に着目すると、X方向に関して、(−X)側の吐出口311aから吐出口ピッチVの1/4倍だけ(+X)側に離れた位置にCのノズルユニット31の吐出口311bが配置され、吐出口311bから吐出口ピッチVの1/4倍だけ(+X)側に離れた位置にMのノズルユニット31の吐出口311cが配置され、吐出口311cから吐出口ピッチVの1/4倍だけ(+X)側に離れた位置にYのノズルユニット31の吐出口311dが配置される。このように、ヘッド3では、X方向に関して互いに隣接するとともにそれぞれが異なる色のインクを吐出する4個の吐出口311(例えば、吐出口311a〜311d)を1つの吐出口群32として、複数の吐出口群32がX方向に配列されており、ヘッド3の全体では、複数の吐出口311が吐出口ピッチVの1/4倍のピッチにてX方向に連続する。また、ヘッド3には、それぞれが光源39に接続される2つの光照射部38がY方向に関して複数のノズルユニット31を挟んで設けられる。各光照射部38では、複数の光ファイバがX方向に沿って配列されており、基材9上においてX方向に伸びる線状の領域に各光照射部38により紫外線が照射される。
【0025】
図3は制御部4の機能構成を示すブロック図である。図3に示すように制御部4は、ヘッド3の複数のノズルユニット31からのインクの吐出に係る制御を行う吐出制御部41、ステージ移動機構22およびヘッド移動機構24に対する移動制御を行う移動制御部42、並びに、基材9に印刷すべき画像データから吐出制御部41における吐出制御に用いられる描画データを生成する描画データ生成部43を備える。印刷装置1では、移動制御部42による移動制御に同期して吐出制御部41がヘッド3からのインクの吐出を制御することにより、基材9上に画像が印刷される。
【0026】
次に、ヘッド3の基材9に対する主走査時における基本的なインク吐出動作について説明する。図4は基材9の主面上に設定される描画位置配列80を示す図である。図4では、ヘッド3の複数のノズルユニット31も二点鎖線にて図示しており、Kのノズルユニット31の各吐出口311により基材9上に形成されるドットを内部に「K」と記す丸にて示し、Cのノズルユニット31の各吐出口311により基材9上に形成されるドットを内部に「C」と記す丸にて示し、Mのノズルユニット31の各吐出口311により基材9上に形成されるドットを内部に「M」と記す丸にて示し、Yのノズルユニット31の各吐出口311により基材9上に形成されるドットを内部に「Y」と記す丸にて示している(後述する図10.Aないし図10.D、図11並びに図12において同様)。図4では、描画データに合わせてインクの吐出が行われない場合も、ドットが仮想的に形成されるものとしている。
【0027】
描画位置配列80は、基材9の主面上において副走査方向に平行な行方向(図4中のX方向)および主走査方向に平行な列方向(図4中のY方向)に配列された複数の描画位置の集合であり、図4では各描画位置を符号81を付す矩形にて示している。本実施の形態では、描画位置81の行方向のピッチおよび列方向のピッチの双方(以下、「描画ピッチ」とも呼ぶ。)が、吐出口ピッチVの1/4倍とされ、既述のように吐出口ピッチVが150dpiに相当する場合には、描画ピッチは600dpiに相当する42μmとなる。印刷装置1では、ヘッド3が基材9に対して主走査方向に相対的に移動する(主走査する)際に、ヘッド3の複数の吐出口311のそれぞれが列方向に並ぶ描画位置81(以下、「描画位置の列」とも呼ぶ。)を通過し、各吐出口311において、対応する描画位置の列に含まれる所定の描画位置81に対するインクの吐出動作が行われる。
【0028】
印刷装置1における印刷時には、ヘッド3がY方向に一回主走査する際に、吐出制御部41の制御に基づいて各吐出口311により対応する描画位置の列において1つおきに存在する描画位置81に対してインクの吐出制御が行われてドットが(仮想的に)形成される。実際には、複数の吐出口311において列方向に関して同じ位置の描画位置81がインクの吐出制御の対象とされるため、行方向に並ぶ描画位置81を描画位置の行として、列方向に1つの描画位置81おきに存在する描画位置の行に対して複数の吐出口311からのインクの吐出制御が行われることとなる。インクの吐出制御の対象となる描画位置81を吐出位置として言い換えると、(−X)側から(+X)方向に向かってKの吐出位置、Cの吐出位置、Mの吐出位置、Yの吐出位置(Kのドット、Cのドット、Mのドット、Yのドットがそれぞれ形成される4個の描画位置81)が行方向に順に繰り返される吐出位置の行が、列方向に1つの描画位置81おきに並んでいるといえる。本実施の形態における印刷装置1ではヘッド3の一度の主走査の際のインクの吐出位置の相互の位置関係が吐出位置配列として予め設定されている。
【0029】
図4中の描画位置配列80において2行4列の描画位置81の集合(図4中にて符号82を付す太線の矩形にて囲む描画位置81の集合であり、以下、「描画ブロック82」という。)に着目すると、各描画ブロック82には、Kの吐出位置、Cの吐出位置、Mの吐出位置およびYの吐出位置がそれぞれ1つずつ含まれ、これらの4個の吐出位置の配置は複数の描画ブロック82にて互いに同様となっている。言い換えれば、描画位置配列80は、ヘッド3の一度の主走査により互いに異なる色のインクの吐出制御が行われる4個の描画位置81のそれぞれを1つのみ含む複数の描画ブロック82に分割されている。なお、描画ブロック82のX方向の幅は吐出口ピッチVに等しい。
【0030】
実際には、図4に示すように、複数のノズルユニット31のY方向の位置は互いに異なっており、各ノズルユニット31の吐出口311が、インクの吐出制御の対象となる描画位置81(吐出位置)に対向する位置に到達した際(正確には、到達する直前)にこの吐出口311におけるインクの吐出制御が行われるため、ヘッド3の一の主走査の際にヘッド3が通過する各描画ブロック82において、行方向に並ぶとともに吐出位置となる4個の描画位置81に対する吐出制御は、4色のインクのそれぞれの吐出制御を互いに異なる時刻に1回行うことにより実現される。
【0031】
次に、印刷装置1が基材9上に画像を印刷する動作について図5を参照しつつ説明を行う。印刷装置1では、まず、印刷対象となる基材9が印刷装置1内に搬送され、ステージ21上に載置されて保持される(ステップS11)。続いて、移動制御部42がステージ移動機構22およびヘッド移動機構24を制御することによりヘッド3が基材9の(−Y)側の所定の印刷開始位置に配置される。そして、ステージ21が(−Y)方向に移動を開始し、ヘッド3が基材9に対して(+Y)方向に相対的に主走査する(ステップS12)。
【0032】
図6は1つの描画ブロック82を示す図であり、各描画位置81の内部に「1」〜「8」の番号を記すことにより主走査毎に一の色の吐出位置が配置される順序を示している(後述の図9、図13.Aおよび図13.Bにおいて同様)。図7.Aないし図7.Hは描画ブロック82の各描画位置81に吐出される複数の色のインクの重なり順序を説明するための図である。図7.Aないし図7.Hでは丸の内部に「K」、「C」、「M」、「Y」のいずれかを記すことにより、各描画位置81に吐出される(正確には、各描画位置81に対する吐出制御の対象とされる)インクの色を示しており、図示の都合上、各描画位置81が縦方向に長い形状となっている。
【0033】
既述のように、吐出位置配列の各吐出位置の行ではK、C、M、Yの吐出位置が行方向に並んでおり(図4参照)、印刷装置1におけるヘッド3の最初の主走査の際には、ヘッド3が通過する各描画ブロック82の最も(−X)側かつ(+Y)側の描画位置81(すなわち、図6において内部に「1」と記された位置に相当する描画位置81であり、以下、「特定位置」という。)とKの吐出位置とが重ねられる。したがって、図7.Aに示すように、特定位置である描画位置81aに対して、Kのインクの吐出制御が行われ、特定位置から(+X)方向に向かって他の3つの描画位置81にそれぞれ、C、M、Yのインクの吐出制御が行われる(ステップS13)。このとき、ヘッド3の(−Y)側の光照射部38から基材9上に照射される紫外線により基材9上に吐出された直後のインクが硬化することにより、当該インクが後述するヘッド3の他の主走査時に同位置に吐出される他の色のインクと混ざったり、他の色のインクが重ねられることにより当該インクが広がったりすることが防止される。なお、図7.Aでは、現在の主走査において各描画位置81に対する吐出制御の対象とされるインクの色を破線の丸にて示している(図7.Bないし図7.Hにおいて同様)。
【0034】
このようにして、ヘッド3が通過する基材9上の各描画ブロック82において、下段((+Y)側の行)に並ぶ複数の描画位置81に対して互いに異なる色のインクの吐出制御が行われ、ヘッド3が基材9の(+Y)側の端部まで到達するとステージ21の移動(ヘッド3の主走査)が停止される(ステップS14)。
【0035】
続いて、ヘッド3の次の主走査が行われることが確認された後(ステップS15)、ヘッド3がX方向に移動(副走査)し、行方向に関してKのノズルユニット31の各吐出口311が、次のヘッド3の主走査にてヘッド3が通過する各描画ブロック82において、最も(−X)側の描画位置81から(+X)方向に描画ピッチだけ離れた描画位置81と同じ位置に配置される(ステップS16)。なお、ステップS16におけるヘッド3の行方向の移動量については後述する。
【0036】
ヘッド3の副走査が完了すると、ステージ21が(+Y)方向に移動を開始し(ステップS12)、ヘッド3の2回目の主走査に同期してインクの吐出制御が行われる(ステップS13)。このとき、ヘッド3が通過する各描画ブロック82において、最も(−X)側かつ(+Y)側の描画位置81から(+X)方向および(+Y)方向のそれぞれに描画ピッチだけ離れた描画位置81(すなわち、図6において内部に「2」と記された位置に相当する描画位置81)が特定位置とされ、Kの吐出位置と重ねられる。したがって、図7.Bに示すように、特定位置である描画位置81bに対してKのインクの吐出制御が行われ、特定位置から(+X)方向に描画ピッチだけ離れた描画位置81に対してCのインクの吐出制御が行われ、特定位置から(+X)方向に描画ピッチの2倍だけ離れた描画位置81に対してMのインクの吐出制御が行われる。また、特定位置の(−X)側の描画位置81に対してはYのインクの吐出制御が行われる。このように、ヘッド3の2回目の主走査の際には、ヘッド3が通過する描画位置81の各列に対して吐出されるインクの色が、直前の1回目の主走査の際に吐出されたインクの色から異なる色へと変更されるとともに、吐出制御の対象となる描画位置の行も直前の1回目の主走査時におけるものから変更される。なお、基材9上に吐出された直後のインクは、(+Y)側の光照射部38から照射される紫外線により硬化する。
【0037】
ヘッド3の主走査が完了すると(ステップS14)、ヘッド3がX方向に移動し、行方向に関してKのノズルユニット31の各吐出口311が、次のヘッド3の主走査にてヘッド3が通過する各描画ブロック82において、最も(−X)側の描画位置81から(+X)方向に描画ピッチの2倍だけ離れた描画位置81と同じ位置に配置される(ステップS15,S16)。そして、ヘッド3の主走査に同期してインクの吐出制御が行われ(ステップS12,S13)、ヘッド3が通過する各描画ブロック82において、最も(−X)側かつ(+Y)側の描画位置81から(+X)方向に描画ピッチの2倍だけ離れた描画位置81(すなわち、図6において内部に「3」と記された位置に相当する描画位置81)を特定位置とした描画が行われる。したがって、図7.Cに示すように、特定位置の描画位置81cに対してKのインクの吐出制御が行われ、特定位置の(+X)側の描画位置81に対してCのインクの吐出制御が行われ、特定位置から(−X)方向に描画ピッチの2倍だけ離れた描画位置81に対してMのインクの吐出制御が行われ、特定位置から(−X)方向に描画ピッチだけ離れた描画位置81に対してYのインクの吐出制御が行われる。そして、ヘッド3が基材9の(+Y)側の端部まで到達するとヘッド3の主走査が停止され(ステップS14)、ヘッド3が行方向に所定の距離だけ移動する(ステップS15,S16)。
【0038】
印刷装置1では、各主走査の際にヘッド3が通過する各描画ブロック82における特定位置を、図6に示す描画ブロック82の内部に「4」、「5」、「6」、「7」、「8」と記された位置に相当する描画位置81に順次切り換えつつ、上記動作が繰り返される(ステップS12〜S16)。したがって、ヘッド3の4回目の主走査では図7.Dに示すように(−Y)側の4個の描画位置81に対して(−X)側から順にC、M、Y、Kのインクの吐出制御がそれぞれ行われ、ヘッド3の5回目の主走査では図7.Eに示すように(+Y)側の4個の描画位置81に対して(−X)側から順にY、K、C、Mのインクの吐出制御がそれぞれ行われ、ヘッド3の6回目の主走査では図7.Fに示すように(−Y)側の4個の描画位置81に対して(−X)側から順にM、Y、K、Cのインクの吐出制御がそれぞれ行われる。また、ヘッド3の7回目の主走査では図7.Gに示すように(+Y)側の4個の描画位置81に対して(−X)側から順にC、M、Y、Kのインクの吐出制御がそれぞれ行われ、ヘッド3の8回目の主走査では図7.Hに示すように(−Y)側の4個の描画位置81に対して(−X)側から順にK,C、M、Yのインクの吐出制御がそれぞれ行われる。
【0039】
このように、印刷装置1では、ヘッド3の主走査毎に、ヘッド3が通過する各描画ブロック82におけるK、C、M、Yの4色のインクに係る4個の描画位置81の配置が列方向に変更され、ヘッド3の8回目の主走査の完了後における、図7.Hに示す描画ブロック82では、描画ブロック82内の全ての描画位置81のそれぞれに対して4色のインクに係る4回の吐出制御が完了することとなる。このとき、各描画ブロック82の各行では、全ての描画位置81において4色のインクに係る吐出制御の順序が相違し、各描画ブロック82の各列でも、全ての描画位置81において4色のインクに係る吐出制御の順序が相違する。
【0040】
後述するように、上記ステップS12〜S14,S16は、描画位置配列80の全ての描画位置81のそれぞれに対して4色のインクに係る4回の吐出制御が行われるまで繰り返され(ステップS15)、基材9の全体にカラーの画像が印刷される。基材9上の印刷画像において、描画位置配列80に含まれる全ての描画ブロック82では、各描画ブロック82内の互いに対応する描画位置81に対する4色のインクに係る吐出制御の順序は同じとなる(図7.H参照)。
【0041】
次に、ステップS16におけるヘッド3の行方向への移動量について説明する。図8はヘッド3の行方向への移動量を説明するための図である。図8の上段では、一の色のノズルユニット31に配列形成される複数の吐出口311を1つの矩形として示し、ヘッド3の1〜9回目の主走査時における複数の吐出口311をそれぞれ矩形331〜339にて表している。また、図8の下段はこのノズルユニット31から吐出されるインクの色と同じ色成分の画像を示している。以下の説明では、一の色のノズルユニット31にのみ着目するが、他の色のノズルユニット31においても同様である。
【0042】
既述のように、印刷装置1の各ノズルユニット31では300個の吐出口311が形成されており、ヘッド3の1回目の主走査では、基材9上において行方向に並ぶ300個の描画ブロック82に相当する範囲において、各描画ブロック82に対するインクの吐出制御が行われる。続いて、ヘッド3の1回目の主走査の終了後、ヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(37+(1/4))倍(図8中の矩形331と矩形332との間のX方向の距離)だけ移動する。すなわち1ヘッドの走査する幅は300・Vなので、8主走査で1ヘッド分だけ副走査方向に進むとすれば(300÷8=37あまり4)であるから、37・Vと描画ブロック内の描画位置のずらしに対応する1/4Vを加えただけ副走査方向に送る。
【0043】
このとき、ノズルユニット31の吐出口311の位置が吐出口ピッチVの整数倍に吐出口ピッチVの1/4倍を加えた距離だけ行方向に移動するため、X方向のみに着目すると、1回目の主走査にて一の色のノズルユニット31の吐出口311が通過した各描画ブロック82内の描画位置81から(+X)側に描画ピッチだけ離れた位置に、このノズルユニット31のいずれかの吐出口311が配置される(ただし、1回目の主走査にて(−X)側の37個の吐出口311が通過した描画ブロック82を除く。)。したがって、2回目の主走査において、ノズルユニット31が通過する各描画ブロック82(正確には、1回目および2回目の主走査においてノズルユニット31が通過する各描画ブロック82(以下同様))に対して、図6中の「1」の位置に相当する描画位置81から「2」の位置に相当する描画位置81に特定位置を切り換えてインクの吐出制御を行うことが可能となる。また、ヘッド3の副走査時の行方向への移動量が描画ブロック82の行方向の幅である描画ピッチの4倍(吐出口ピッチV)よりも大きいため、各描画ブロック82に対して1回目の主走査にて通過した吐出口311とは異なる吐出口311が2回目の主走査にて通過することとなる。
【0044】
同様に、2回目の主走査の終了後には、ヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(37+(1/4))倍(すなわち、図8中の矩形332と矩形333との間のX方向の距離)だけ移動することにより、3回目の主走査において、ノズルユニット31が通過する各描画ブロック82に対して、図6中の「2」の位置に相当する描画位置81から「3」の位置に相当する描画位置81に特定位置を切り換えてインクの吐出制御を行うことが可能となり、3回目の主走査の終了後には、ヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(37+(1/4))倍(すなわち、図8中の矩形333と矩形334との間のX方向の距離)だけ移動することにより、4回目の主走査において、ノズルユニット31が通過する各描画ブロック82に対して、図6中の「3」の位置に相当する描画位置81から「4」の位置に相当する描画位置81に特定位置を切り換えてインクの吐出制御を行うことが可能となる。
【0045】
印刷装置1では、ヘッド3の4回目の主走査の終了後におけるヘッド3の行方向の移動量は、吐出口ピッチVの(37+(2/4))倍(すなわち、図8中の矩形334と矩形335との間のX方向の距離)とされる。これにより、5回目の主走査において、ノズルユニット31が通過する各描画ブロック82に対して、図6中の「4」の位置に相当する描画位置81から行方向に描画ピッチの2倍だけ離れた「5」の位置に相当する描画位置81に特定位置を切り換えてインクの吐出制御を行うことが可能となる。そして、5ないし7回目の主走査の終了後におけるヘッド3のX方向の移動量は、1ないし3回目の主走査の終了後における移動量と同じ吐出口ピッチVの(37+(1/4))倍とされ、6ないし8回目の主走査において、ノズルユニット31が通過する各描画ブロック82に対して図6中の「6」、「7」、「8」の位置に相当する描画位置81をそれぞれ特定位置とするインクの吐出制御を行うことが可能となる。
【0046】
ここで、1〜7回目の主走査の終了後における移動量の総和は、吐出口ピッチVの261倍となるため、8回目の主走査の際におけるノズルユニット31の複数の吐出口311(矩形338)のうち最も(−X)側の吐出口311により、1回目の主走査において(+X)側から(−X)方向に向かって39番目の吐出口311が通過した各描画ブロック82に対するインクの吐出制御が行われることとなる。したがって、1回目の主走査にてノズルユニット31の(+X)側の39個の吐出口311が通過した各描画ブロック82内の全ての描画位置81のそれぞれに対して一の色のインクの吐出制御が1回実行されたこととなる。後述するように、8回目の主走査以降においても、ヘッド3は(+X)方向へと間欠的に移動するため、1回目の主走査にてノズルユニット31の(−X)側の261個の吐出口311が通過した各描画ブロック82においては、インクの吐出制御が行われない描画位置81が存在する。よって、図3の描画データ生成部43では、1回目の主走査にてノズルユニット31の(−X)側の261個の吐出口311が通過する各描画ブロック82の描画位置81に対してインクの吐出が行われないように、ダミーデータを元の画像データに予め挿入した後に、描画データが生成される。なお、図8の下段では、矩形K1,K2によりダミーデータに対応する画像と元の画像とをそれぞれ抽象的に示している。
【0047】
続いて、8回目の主走査の終了後には、ヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(39+(0/4))倍(すなわち、図8中の矩形338と矩形339との間のX方向の距離)だけ移動することにより、9回目の主走査において、ノズルユニット31が通過する各描画ブロック82に対して図6中の「1」の位置に相当する描画位置81を特定位置とするインクの吐出制御を行うことが可能となる。このとき、矩形339にて示す複数の吐出口311の(−X)側の37個の吐出口311が通過する各描画ブロック82では、2〜8回目の主走査により、図6中の「2」〜「8」の位置に相当する描画位置81を特定位置としたインクの吐出制御が既に完了しており、9回目の主走査によりこの描画ブロック82内の全ての描画位置81のそれぞれに対する1回のインクの吐出制御が完了することとなる。なお、9回目の主走査を行うときのヘッドの位置は、((37+1/4)・V+(37+1/4)・V+・・・+(39+0/4)・V=300・V)だけ副走査移動した位置になり、副走査方向の連続性が保たれる。
【0048】
ヘッド3の9回目以降の主走査および副走査の繰り返しでは、副走査時の移動距離が上記1〜8回目の主走査の終了後における副走査時のものに順に変更され、基材9上の各描画ブロック82(ただし、ダミーデータに基づくインクの吐出制御が行われるものを除く。)内の全ての描画位置81のそれぞれに対して、一の色のノズルユニット31におけるインクの吐出制御が1回行われる。このようにして、互いに異なる色を吐出する複数のノズルユニット31により、基材9上の各描画ブロック82内の全ての描画位置81のそれぞれに対して4色のインクに係る4回の吐出制御が行われ、基材9上にカラーの画像が印刷される。なお、カラー印刷時における実際の描画データは、各色成分の画像データに、図8を参照して説明した上記ダミーデータに加えてノズルユニット31毎の行方向のずれに応じたダミーデータを必要に応じて挿入し、さらに、ダミーデータが挿入された各色成分の画像データから、各主走査時にインクの吐出制御の対象とされる描画位置81に対応する画素の値を抽出することにより生成される。
【0049】
ここで、仮に上記ヘッド3により、一の主走査において列方向に並ぶ各描画位置に対してインクの吐出制御を行い、行方向に副走査した後、主走査を繰り返すことにより、各描画位置に4色のインクに係る4回の吐出制御を行う場合には、4色のインクに係る吐出制御の順序が描画位置の各列に含まれる全ての描画位置において同一となり、かつ、描画位置の列毎に異なるため、印刷画像において列方向に伸びる筋ムラが発生してしまう。
【0050】
これに対し、図1の印刷装置1では、ヘッド3の主走査および副走査を繰り返す動作において、一の主走査時に列方向に関して1つの描画位置81おきに存在する描画位置の行に対してインクの吐出制御を行い、次の主走査時には吐出制御の対象となる行が前回の主走査におけるものから変更され、さらに、一の主走査時に描画位置の各列に対して吐出されるインクの色が、直前のヘッド3の副走査により、前回の主走査においてこの描画位置の列に対して吐出されたインクの色から異なる色へと変更される(すなわち、行方向および列方向に関してインターレース描画が行われる。)。これにより、各描画ブロック82の各行および各列に含まれる描画位置81おいて、複数の色のインクに係る吐出制御の順序を相違させることができ、その結果、各主走査におけるインクの吐出位置の重なりを防止したカラー印刷において、印刷画像中に行方向または列方向に伸びる筋ムラが発生することを防止することができる。
【0051】
なお、各主走査におけるインクの吐出位置の重なりを防止したカラー印刷では、既述のように、ヘッドの一の主走査時に複数の色のインクを印刷媒体上の同一の位置に吐出するカラー印刷における、i)同一の位置に吐出された各色のインクの液滴が硬化する前にインク同士が混ざることにより所望の色彩を表現できない、ii)ヘッドの一の主走査にて各位置に吐出されるインクの量が多くなり多量の紫外線を照射する必要がある、iii)一の色のインクが硬化する前に他の色のインクが重ねられることによりインクが広がってしまい、特に画像のエッジ部分がぼやける、iv)ヘッドの主走査の往路と復路とで各位置に対する複数のノズルユニットの到達順序が異なり、各位置における複数の色のインクの吐出順序が相違するため、双方向印刷において片方向印刷よりも印刷画像の画質が低下する等の問題点が解消される。また、印刷装置1における上記印刷動作では、描画位置の各列を一の色のインクを吐出する吐出口311が2回通過することにより、この列に含まれる描画位置81に対する一の色のインクの吐出制御が完了するが、ノズルユニット31からのインクの吐出周期が一定である場合に、印刷装置1では、一の主走査にて列方向の各位置にインクを吐出する手法に比べて、ヘッド3の主走査の速度を2倍にすることが可能であるため、基材9全体への印刷に要する時間は当該手法とほぼ同等となる(詳細には、副走査方向への移動回数が増加するため、この分だけ若干時間がかかる。)。
【0052】
また、基材9上の印刷画像において、描画位置配列80に含まれる全ての描画ブロック82では、互いに対応する描画位置81に対する複数の色のインクに係る吐出制御の順序は同じとなるため、基材9上の局所領域である各描画ブロック82の色見は一定となり、印刷画像の全体で一様な色見とすることができる。なお、印刷画像では描画ブロック82における特定位置の切り換え順序に応じて各描画ブロック82の色見が変わるため、実際のカラー印刷の際には、描画ブロック82における特定位置の切り換え順序を複数通りに変更してテスト印刷を行い、所望の色見となる切り換え順序を決定して当該切り換え順序にてカラー印刷が行われる。この場合に、例えば、図9に示す描画ブロック82において、「1」および「2」の位置のように、一の描画位置81から行方向に描画ピッチの複数倍だけ離れた描画位置81に特定位置が切り換えられる等してもよい。
【0053】
印刷装置1では、ヘッド3の一の主走査の際の吐出位置の集合である吐出位置配列の位置をヘッド3の主走査毎に行方向および列方向にシフトすることにより、各主走査の際に、ヘッド3が通過する各描画ブロック82において、4色のインクの吐出制御の対象とされる4個の描画位置81の配置が変更され、各描画位置81に対して複数の色のインクの吐出制御が順次行われる。これにより、ヘッド3の主走査毎に複数のノズルユニット31に対する制御アルゴリズムを複雑に変更することなく、各主走査におけるインクの吐出位置の重なりおよび印刷画像における筋ムラの発生を防止したカラー印刷を容易に行うことができる。
【0054】
ここで、印刷装置1において、仮にある吐出口311が損傷していたり、吐出口311のインクの吐出特性(例えば、インクの吐出量や吐出口311からのインクの吐出方向)がばらついている場合等に、列方向に並ぶ描画ブロック82内の各描画位置81に対して同一の吐出口311からインクを吐出するときには、列方向に並ぶ描画ブロック82内の全ての描画位置81が吐出口311の損傷やインクの吐出特性のばらつきによる同様の影響を受けてしまい、印刷画像上に筋ムラが発生してしまう。しかしながら、印刷装置1では、ヘッド3の主走査が繰り返される毎に、描画ブロック82の行方向の幅よりも長い距離だけヘッド3が基材9に対して行方向に相対的に移動して、各描画ブロック82内の全ての描画位置81に対して異なる吐出口311が割り当てられることにより、吐出口311の損傷またはばらつきに起因する印刷画像上の筋ムラの発生を防止することができる。
【0055】
印刷装置1では、さらに、ヘッド3の主走査が繰り返される毎に、各描画ブロック82内において行方向に並ぶとともにインクの吐出制御の対象とされる4個の描画位置81の配置が列方向に変更される。これにより、ヘッド3の連続する2回の主走査(ヘッド3の基材9に対する列方向への相対的な往復移動)において、基材9上に列方向に並んで吐出されたインクが互いに繋がってしまうことを防止することができる。
【0056】
印刷装置1における上記の動作例では、描画位置配列80における描画位置81の行方向および列方向の双方のピッチが600dpiに相当する42μmとされるが、ヘッド3の主走査の速度やインクの吐出周期を変更することにより、描画位置81の列方向のピッチは自在に変更することが可能である。
【0057】
ここで、印刷装置1において、仮にヘッド3の主走査の速度やインクの吐出周期の変更ができない場合(例えば、このような変更を許容した際の制御が複雑となる場合等)には、吐出位置配列における吐出位置の行の列方向のピッチは300dpiに相当する84μmにて変更不能となるが、この場合であっても、例えば、図10.Aに示すように、互いに隣接する吐出位置の行が列方向に関して2つの描画位置81おきに存在するものとして(すなわち、描画位置81の行方向のピッチが28μmであるものとして)、列方向の解像度を900dpiとしたカラー印刷を行うことが可能である。このような条件の下では、列方向の解像度は300dpiの所定の整数α(ただし、αは2以上の整数)倍とすることができ、この場合、ヘッド3の一の主走査において、列方向に関して(α−1)個の描画位置おきに存在する描画位置の行に対して(すなわち、(α−1)個の行だけ飛び越して)インクの吐出制御が行われることとなる。なお、図10.Aでは、吐出位置配列の一部のみを図示し、上記動作例における描画ブロック82も破線にて示している(後述の図10.Bないし図10.Dにおいて同様)。
【0058】
また、図2に示すヘッド3(すなわち、複数の吐出口311が行方向に600dpiに相当する42μmのピッチにて配列されるヘッド)において副走査における移動距離を変更することにより、描画位置81の行方向のピッチを変更することもできる。例えば、上記動作例のステップS16におけるヘッド3の行方向への移動量を、吐出口ピッチVの整数倍に吐出口ピッチVのβ/8倍を加えた距離(ただし、0≦β≦7)として、図10.Bに示すように、行方向および列方向の解像度をそれぞれ1200dpiおよび1200dpiとした(この場合、描画位置81の行方向および列方向の双方のピッチが21μmとなる。)カラー印刷を行うこともできる。このように、図2のヘッド3では、行方向の解像度を600dpiの整数倍とすることができ、上記条件(吐出位置の行の列方向のピッチが84μm)の下において印刷装置1では、行方向および列方向の解像度をそれぞれ1200dpiおよび600dpi、あるいは、1200dpiおよび900dpi等としたカラー印刷が可能となる。
【0059】
印刷装置1のヘッド3では、K、C、M、Y以外の色のインクを吐出するノズルユニットが設けられてもよく、例えば、ライトシアンのインクを吐出するノズルユニット、および、ライトマゼンタのインクを吐出するノズルユニットがヘッドに追加され、図10.Cおよび図10.Dに示すような吐出位置配列が設定されてもよい。図10.Cおよび図10.Dでは、ライトシアンの吐出位置を内部に「LC」と記す丸にて示し、ライトマゼンタの吐出位置を内部に「LM」と記す丸にて示している。なお、この場合、行方向に関してCのインクを吐出するノズルユニットの吐出口とライトシアンのインクを吐出するノズルユニットの吐出口とが同じ位置に配置され、Mのインクを吐出するノズルユニットの吐出口とライトマゼンタのインクを吐出するノズルユニットの吐出口とが同じ位置に配置される。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0061】
上記動作例において、例えば図11に示すような吐出位置配列が用いられてもよく、また、基材9への印刷の前に行われるテスト印刷において、吐出位置配列が図4や図11に示すように複数通りに変更され、所望の色見となる切り換え順序と吐出位置配列との組合せが決定されてもよい。ただし、印刷装置1における複数のノズルユニット31の吐出タイミングの調整やインクの吐出に係る制御等を容易に行うという観点では、ヘッド3の一の主走査の際にインクの吐出制御の対象とされる描画位置81が行方向に並ぶような吐出位置配列が用いられることが好ましい。
【0062】
また、印刷装置1では、図12に示すように、描画ブロック82内の描画位置81の個数をヘッド3が吐出するインクの色数と一致させることもできる。この場合、ヘッド3の一の主走査にて2行2列の描画ブロック82内の全ての(4個の)描画位置81に対して4色のインクの吐出制御がそれぞれ行われる。そして、ヘッド3の主走査毎に吐出位置配列の位置をシフトすることにより、各描画ブロック82における4色のインクに係る4個の描画位置81の配置が変更され、各描画ブロック82内の全ての描画位置81のそれぞれに対して4色のインクに係る4回の吐出制御が行われる。
【0063】
以上の説明より、印刷装置1において行方向および列方向にインターレース描画を行うという観点では、制御部4により、主面上に設定される描画位置配列80が、それぞれがM行N列(M、Nは2以上の整数)の描画位置である複数の描画ブロックに分割されている基材9に対して、P色(Pは2以上(M×N)以下の整数)のインクを吐出するヘッドを列方向に相対的に主走査しつつ、ヘッドが通過する各描画ブロック内のP個の描画位置に対する吐出制御としてP色のインクのそれぞれの吐出制御を1回行う基本処理と、各描画ブロックにおけるP色のインクに係るP個の描画位置の配置を変更しつつ当該基本処理を繰り返すことにより、各描画ブロック内の全ての描画位置のそれぞれに対してP色のインクに係るP回の吐出制御を行う処理とが実行されることが重要となる。
【0064】
ところで、印刷画像中に行方向および列方向に伸びる筋ムラが発生することを防止するという観点では、各描画ブロック82の各行および各列において、互いに隣接するいずれか2つの描画位置81における複数のインクに係る吐出制御の順序が異なることが必要となるが、仮に、図1の印刷装置1における図5の印刷動作において、図13.Aに示すように、2行4列の描画ブロック82の(+Y)側の行の描画位置81を(−X)側から(+X)方向に向かって順に特定位置とし、続いて、描画ブロック82の(−Y)側の行の描画位置81を(−X)側から(+X)方向に向かって順に特定位置とした場合には、列方向に互いに隣接する2つの描画位置81における4色のインクに係る吐出制御の順序が同じになってしまう。また、図13.Bに示すように、描画ブロック82における行を交互に変更しつつ、各行において(−X)側から(+X)方向に向かって順に特定位置を切り換える場合も同様である。したがって、ヘッド3が吐出するインクの色数Pと描画ブロック82の列数Nとが等しく、ヘッド3の各主走査により吐出制御の対象とされるP個の描画位置81が行方向に並ぶ場合には、描画ブロック82内の各行のみに着目したX方向に沿う特定位置の切り換え順序が、描画ブロック82の複数の行のうち少なくとも1つの行において他の行と異なっていることが重要となる。
【0065】
上記実施の形態では、ヘッド3の主走査が繰り返される毎に、ヘッド3が行方向の描画ブロック82の幅よりも十分に長い距離だけ副走査するが、吐出口311の損傷またはばらつきに起因する印刷画像上の筋ムラの発生を防止するという観点では、ヘッド3の主走査が繰り返される毎に描画位置81の行方向のピッチのN(描画ブロック82の列数)倍以上の距離だけヘッド3が基材9に対して行方向に相対的に移動すればよい。
【0066】
また、印刷装置1では、各主走査におけるインクの吐出位置の重なりを防止しつつ、光照射部38により基材9上に吐出された直後のインクを硬化させることにより、撥液性を有する基材9上に画像を適切に印刷することができるが、基材9上に吐出されたインクが、後の主走査により他の色のインクが重ねられる前に自然に硬化する場合には、必ずしも光照射部38は設けられなくてもよい。ただし、基材9上に適切な画像を確実に印刷するには、基材9上に吐出された直後のインクを硬化させる光照射部38が設けられることが好ましい。また、基材9上に吐出された直後のインクを硬化させるインク硬化部は、光照射部38以外であってもよく、例えば、熱硬化性のインクが用いられる場合には基材9に熱風を付与する熱付与部がヘッド3に設けられてもよい。なお、上記実施の形態のように、ヘッド3の主走査が繰り返される毎に、各描画ブロック82内において行方向に並ぶ吐出位置が列方向に変更される場合には、ヘッド3の連続する2回の主走査において、インクが吐出される描画位置81が異なるため、ヘッド3の2つの光照射部38の一方を省略することも可能である。
【0067】
印刷装置1において印刷媒体を保持する保持部は、ステージ21以外のものであってもよく、例えば、印刷媒体がシート状である場合等には、ヘッド3に対向して配置されるとともに印刷媒体の印刷対象の面とは反対の面に当接するローラであってもよい。
【0068】
上記実施の形態では、ステージ21を列方向に移動するステージ移動機構22、および、ヘッド3を行方向に移動するヘッド移動機構24により、ヘッド3がステージ21に対して列方向および行方向に相対的に移動するが、印刷装置1ではヘッド3を列方向に移動する機構やステージ21を行方向に移動する機構が設けられてもよい。また、前述のように、印刷媒体を保持する保持部がローラである場合には、当該ローラを回転するモータによりヘッド3が印刷媒体に対して列方向に相対的に移動する。このように、ヘッド3を印刷媒体に対して列方向および行方向に相対的に移動する走査機構はいかなる構成であってもよい。
【0069】
印刷装置1は、撥液性を有する印刷媒体(プラスチック以外であってもよい。)上にカラー印刷を行う用途に特に適しているが、撥液性を有しない印刷媒体に対して用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】印刷装置の外観を示す斜視図である。
【図2】ヘッドを示す底面図である。
【図3】制御部の機能構成を示すブロック図である。
【図4】基材の主面上に設定される描画位置配列を示す図である。
【図5】印刷装置が基材上に画像を印刷する動作の流れを示す図である。
【図6】描画ブロック内における特定位置の切り換え順序を示す図である。
【図7.A】各描画位置におけるインクの重なり順序を説明するための図である。
【図7.B】各描画位置におけるインクの重なり順序を説明するための図である。
【図7.C】各描画位置におけるインクの重なり順序を説明するための図である。
【図7.D】各描画位置におけるインクの重なり順序を説明するための図である。
【図7.E】各描画位置におけるインクの重なり順序を説明するための図である。
【図7.F】各描画位置におけるインクの重なり順序を説明するための図である。
【図7.G】各描画位置におけるインクの重なり順序を説明するための図である。
【図7.H】各描画位置におけるインクの重なり順序を説明するための図である。
【図8】ヘッドの行方向への移動量を説明するための図である。
【図9】描画ブロック内における特定位置の切り換え順序の他の例を示す図である。
【図10.A】吐出位置配列の他の例を示す図である。
【図10.B】吐出位置配列のさらに他の例を示す図である。
【図10.C】吐出位置配列のさらに他の例を示す図である。
【図10.D】吐出位置配列のさらに他の例を示す図である。
【図11】吐出位置配列のさらに他の例を示す図である。
【図12】吐出位置配列のさらに他の例を示す図である。
【図13.A】描画ブロック内における特定位置の切り換え順序の比較例を示す図である。
【図13.B】描画ブロック内における特定位置の切り換え順序の比較例を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 印刷装置
3 ヘッド
4 制御部
9 基材
21 ステージ
22 ステージ移動機構
24 ヘッド移動機構
31 ノズルユニット
32 吐出口群
38 光照射部
80 描画位置配列
81,81a〜81c 描画位置
82 描画ブロック
311,311a〜311d 吐出口
S12〜S16 ステップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式にて印刷媒体上にカラー印刷を行う印刷方法および印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、それぞれがインクの微小な液滴を吐出する複数の吐出口が配列されたヘッドを印刷用紙等の印刷媒体に沿って移動することにより、印刷媒体上に印刷を行うインクジェット方式の印刷装置が用いられており、ヘッドに互いに異なる色のインクを吐出する複数のノズルユニット(マルチノズルとも呼ばれる。)を設けることにより、カラー印刷を行う印刷装置も実用化されている。一般的なカラー印刷装置では、印刷媒体上の各位置に対する複数の色のインクの重なり順序(正確には、複数の色のインクに係る吐出制御の順序)を一定にすることにより、印刷画像にインクの重なり順序に起因する色見の変化が生じることが防止される。
【0003】
また、近年、様々な印刷媒体にカラー印刷を行う要求があり、例えば、プラスチック等の撥液性を有する印刷媒体にカラー印刷を行う場合等には、紫外線硬化性を有するカラーのインクを用いるカラー印刷装置が利用される。このようなカラー印刷装置では、互いに異なる色のインクを吐出する複数のノズルユニット、および、印刷媒体上に紫外線を照射する光照射部を有するヘッドが設けられ、ヘッドを印刷媒体に対して相対的に主走査させることにより、複数のノズルユニットの吐出口から複数の色のインクを印刷媒体上の同一の位置に順次吐出した後に、後続する光照射部により印刷媒体上のインクに紫外線が照射される。一方、印刷媒体上の主走査方向の各位置において、ヘッドの一の主走査により、主走査方向に垂直な副走査方向に所定のピッチにて並ぶ複数の位置のそれぞれに複数の色のインクを吐出し、ヘッドの主走査が完了する毎に、ヘッドを印刷媒体に対して副走査方向に移動することにより、副走査方向に関して直前の主走査にてインクが吐出された位置の間を、次の主走査にて補間することも行われる(いわゆる、インターレース描画)。
【0004】
なお、特許文献1の段落0014および0015には、印刷用紙上の主走査方向に並ぶ複数の位置において1つおきに存在する位置に対して一の吐出口によりドットを形成し、残りの位置については他の吐出口によりドットを形成することにより、吐出口の特性のばらつきに起因して印刷画像上に主走査方向に伸びる筋ムラが発生することを防止する印刷技術(「シングリング方式」や「マルチスキャン方式」と呼ばれる。)が開示されている。
【特許文献1】特開2005−238484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記のように、ヘッドの一の主走査時に複数の色のインクを印刷媒体上の同一の位置に吐出する場合には、i)同一の位置に吐出された各色のインクの液滴が硬化する前にインク同士が混ざることにより所望の色彩を表現できない、ii)ヘッドの一の主走査にて各位置に吐出されるインクの量が多くなり多量の紫外線を照射する必要がある、iii)一の色のインクの液滴が硬化する前に他の色のインクの液滴が重ねられることによりインクが広がってしまい、特に画像のエッジ部分がぼやける、iv)ヘッドの主走査の往路と復路とで各位置に対する複数のノズルユニット(通常、主走査方向に並べられている。)の到達順序が異なり、各位置における複数の色のインクの重なり順序が相違するため、双方向印刷において片方向印刷よりも印刷画像の画質が低下する等の問題がある。
【0006】
そこで、ヘッドの一の主走査において印刷媒体上に吐出されるインクの吐出位置を副走査方向に色毎にずらした状態で主走査方向の各位置にインクを吐出し、ヘッドを副走査方向に移動した後、ヘッドの主走査を繰り返し、一の主走査にて一の色のインクが吐出された位置に次の主走査にて他の色のインクを吐出することにより(各色に着目すれば、この場合もインターレース描画となる。)、各主走査において複数の色のインクが同位置に吐出されることを防止して、上記i)ないしiv)の問題を解消することが考えられる。しかしながら、この場合、最終的な複数の色のインクの重なり順序が主走査方向に沿って同一となり、かつ、副走査方向の位置毎に異なるため、印刷画像において主走査方向に伸びる筋ムラが発生してしまう。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、各主走査におけるインクの吐出位置の重なりを防止したカラー印刷において、印刷画像中に筋ムラが発生することを防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、インクジェット方式にて印刷媒体上にカラー印刷を行う印刷方法であって、a)印刷媒体上において互いに直交する行方向および列方向に配列された描画位置である描画位置配列が設定されており、前記描画位置配列が、それぞれがM行N列(M、Nは2以上の整数)の描画位置である複数の描画ブロックに分割されており、P色(Pは2以上(M×N)以下の整数)のインクを吐出するヘッドを前記印刷媒体に対して前記列方向に相対的に主走査しつつ、前記ヘッドが通過する各描画ブロック内のP個の描画位置に対する吐出制御としてP色のインクのそれぞれの吐出制御を1回行う工程と、b)前記各描画ブロックにおける前記P色のインクに係る前記P個の描画位置の配置を変更しつつ前記a)工程を繰り返すことにより、前記各描画ブロック内の全ての描画位置のそれぞれに対して前記P色のインクに係るP回の吐出制御を行う工程とを備え、前記各描画ブロックの各行および各列において、互いに隣接するいずれか2つの描画位置における前記P色のインクに係る吐出制御の順序が異なる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の印刷方法であって、前記a)工程におけるインクの吐出制御の対象となる描画位置を吐出位置として、前記ヘッドの一の主走査の際の吐出位置の相互の位置関係が吐出位置配列として予め設定されており、前記吐出位置配列において前記各描画ブロックに含まれるP個の吐出位置の配置が、前記複数の描画ブロックにて互いに同様となり、前記b)工程において、前記ヘッドの主走査毎に前記吐出位置配列の位置がシフトされることにより、前記各描画ブロックにおける前記P色のインクに係る前記P個の描画位置の配置が変更される。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の印刷方法であって、前記Pと前記Nとが等しく、前記a)工程において前記P個の描画位置が前記行方向に並ぶ。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の印刷方法であって、前記b)工程において、前記a)工程が繰り返される毎に、前記各描画ブロック内の前記P個の描画位置が前記列方向に変更される。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項2ないし4のいずれかに記載の印刷方法であって、前記b)工程において、前記a)工程が繰り返される毎に、前記描画位置の前記行方向のピッチのN倍以上の距離だけ前記ヘッドが前記印刷媒体に対して前記行方向に相対的に移動する。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の印刷方法であって、前記印刷媒体が撥液性を有する。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の印刷方法であって、前記ヘッドが、前記印刷媒体上に吐出された直後のインクを硬化させるインク硬化部を備える。
【0015】
請求項8に記載の発明は、インクジェット方式にて印刷媒体上にカラー印刷を行う印刷方法であって、a)複数の吐出口群を所定の行方向に配列して備えて各吐出口群から複数の色のインクを吐出するヘッドを、印刷媒体に対して前記行方向に直交する列方向に相対的に主走査しつつ前記複数の吐出口群からのインクの吐出制御を行う工程と、b)主走査が終了する毎に前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記行方向へと相対的に移動する工程と、c)前記a)工程および前記b)工程を繰り返すことにより、前記印刷媒体上において前記行方向および前記列方向に配列された描画位置のそれぞれに対して前記複数の色のインクの吐出制御を順次行う工程とを備え、前記a)工程において、前記列方向に関して所定数の描画位置おきに存在する描画位置の行に対してインクの吐出制御が行われ、かつ、各a)工程において吐出制御の対象となる行が前回のa)工程におけるものから変更され、前記各a)工程において描画位置の各列に対して吐出されるインクの色が、直前のb)工程により、前記前回のa)工程おいて前記各列に対して吐出されたインクの色から異なる色へと変更される。
【0016】
請求項9に記載の発明は、インクジェット方式にて印刷媒体上にカラー印刷を行う印刷装置であって、互いに直交する行方向および列方向に配列された描画位置である描画位置配列が設定されており、かつ、前記描画位置配列が、それぞれがM行N列(M、Nは2以上の整数)の描画位置である複数の描画ブロックに分割されている印刷媒体を保持する保持部と、P色(Pは2以上(M×N)以下の整数)のインクを印刷媒体に向けて吐出するヘッドと、前記ヘッドを前記保持部に保持される印刷媒体に対して前記列方向および前記行方向に相対的に移動する走査機構と、前記走査機構による前記ヘッドの移動と前記ヘッドからのインクの吐出とを同期させつつ制御する制御部とを備え、前記制御部が、a)前記ヘッドを前記保持される印刷媒体に対して前記列方向に相対的に主走査しつつ、前記ヘッドが通過する各描画ブロック内のP個の描画位置に対する吐出制御としてP色のインクのそれぞれの吐出制御を1回行う工程と、b)前記各描画ブロックにおける前記P色のインクに係る前記P個の描画位置の配置を変更しつつ前記a)工程を繰り返すことにより、前記各描画ブロック内の全ての描画位置のそれぞれに対して前記P色のインクに係るP回の吐出制御を行う工程とを実行し、前記各描画ブロックの各行および各列において、互いに隣接するいずれか2つの描画位置における前記P色のインクに係る吐出制御の順序が異なる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、各主走査におけるインクの吐出位置の重なりを防止したカラー印刷において、印刷画像中に行方向または列方向に伸びる筋ムラが発生することを防止することができる。
【0018】
また、請求項2の発明では、各主走査におけるインクの吐出位置の重なりおよび印刷画像における筋ムラの発生を防止したカラー印刷を容易に行うことができ、請求項4の発明では列方向に並んで吐出されたインクが互いに繋がってしまうことを防止することができる。
【0019】
また、請求項5の発明では、吐出口の損傷またはばらつきに起因する印刷画像上の筋ムラの発生を防止することができ、請求項6の発明では、各主走査におけるインクの吐出位置の重なりを防止することにより撥液性を有する印刷媒体上に画像を適切に印刷することができ、請求項7の発明では、撥液性を有する印刷媒体上に適切な画像を確実に印刷することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明の一の実施の形態に係る印刷装置1の外観を示す斜視図である。印刷装置1は、例えばポリカーボネートやPET(ポリエチレン テレフタレート)等の撥液性を有するプラスチックにて形成される板状またはシート状の基材9上にインクジェット方式にてカラー印刷を行うものである。
【0021】
図1の印刷装置1は本体11および制御部4を備え、本体11は基材9を図1中の(+Z)側の面上に保持するステージ21、および、基台20上に設けられるステージ移動機構22を備える。ステージ21の基材9とは反対側の面には、ステージ移動機構22が有するボールネジ機構のナットが固定され、ボールネジ機構に接続されたモータが回転することにより、ステージ21が図1中のY方向(主走査方向)に滑らかに移動する。基台20上には、基台20に対するステージ21の位置を検出する位置検出モジュール23がさらに設けられる。
【0022】
ステージ21の上方には基材9に向けてインクの微小液滴を吐出するヘッド3が配置され、ヘッド3は、ボールネジ機構およびモータを有するヘッド移動機構24により主走査方向に垂直かつ基材9の主面に沿う副走査方向(図1中のX方向)に移動可能に支持される。また、基台20には、ステージ21を跨ぐようにしてフレーム25が設けられ、ヘッド移動機構24はフレーム25に固定される。フレーム25上には紫外線を出射する光源39が設けられ、複数の光ファイバ(実際には、複数の光ファイバは束状となっており、図1では符号391を付して1本の太線にて示している。)を介して光源39からの光がヘッド3の内部へと導入される。
【0023】
図2はヘッド3を示す底面図である。図2に示すように、ヘッド3はそれぞれが互いに異なる色のインクを吐出する複数の(図2では、4個の)ノズルユニット31を備え、複数のノズルユニット31はY方向に配列されてヘッド3の本体30に固定される。図2中の最も(+Y)側のノズルユニット31はK(ブラック)の色のインクを吐出し、Kのノズルユニット31の(−Y)側のノズルユニット31はC(シアン)の色のインクを吐出し、Cのノズルユニット31の(−Y)側のノズルユニット31はM(マゼンタ)の色のインクを吐出し、最も(−Y)側のノズルユニット31はY(イエロー)の色のインクを吐出する。なお、各色のインクは紫外線硬化剤を含んでいる。
【0024】
各ノズルユニット31では、図2中のX方向に複数の(例えば、300個の)吐出口311が一定のピッチV(例えば、150dpi(dot per inch)に相当する169マイクロメートル(μm)のピッチであり、以下、「吐出口ピッチV」という。)にて配列されており、X方向に注目すると、一のノズルユニット31の互いに隣接する2つの吐出口311の間には、他の3個のノズルユニット31のそれぞれの1つの吐出口311が配置される。例えば、図2中の最も(+Y)側のKのノズルユニット31において符号311aを付す吐出口と吐出口311aの(+X)側の吐出口311e(図2では、これらの吐出口のそれぞれに平行斜線を付している。)との間に着目すると、X方向に関して、(−X)側の吐出口311aから吐出口ピッチVの1/4倍だけ(+X)側に離れた位置にCのノズルユニット31の吐出口311bが配置され、吐出口311bから吐出口ピッチVの1/4倍だけ(+X)側に離れた位置にMのノズルユニット31の吐出口311cが配置され、吐出口311cから吐出口ピッチVの1/4倍だけ(+X)側に離れた位置にYのノズルユニット31の吐出口311dが配置される。このように、ヘッド3では、X方向に関して互いに隣接するとともにそれぞれが異なる色のインクを吐出する4個の吐出口311(例えば、吐出口311a〜311d)を1つの吐出口群32として、複数の吐出口群32がX方向に配列されており、ヘッド3の全体では、複数の吐出口311が吐出口ピッチVの1/4倍のピッチにてX方向に連続する。また、ヘッド3には、それぞれが光源39に接続される2つの光照射部38がY方向に関して複数のノズルユニット31を挟んで設けられる。各光照射部38では、複数の光ファイバがX方向に沿って配列されており、基材9上においてX方向に伸びる線状の領域に各光照射部38により紫外線が照射される。
【0025】
図3は制御部4の機能構成を示すブロック図である。図3に示すように制御部4は、ヘッド3の複数のノズルユニット31からのインクの吐出に係る制御を行う吐出制御部41、ステージ移動機構22およびヘッド移動機構24に対する移動制御を行う移動制御部42、並びに、基材9に印刷すべき画像データから吐出制御部41における吐出制御に用いられる描画データを生成する描画データ生成部43を備える。印刷装置1では、移動制御部42による移動制御に同期して吐出制御部41がヘッド3からのインクの吐出を制御することにより、基材9上に画像が印刷される。
【0026】
次に、ヘッド3の基材9に対する主走査時における基本的なインク吐出動作について説明する。図4は基材9の主面上に設定される描画位置配列80を示す図である。図4では、ヘッド3の複数のノズルユニット31も二点鎖線にて図示しており、Kのノズルユニット31の各吐出口311により基材9上に形成されるドットを内部に「K」と記す丸にて示し、Cのノズルユニット31の各吐出口311により基材9上に形成されるドットを内部に「C」と記す丸にて示し、Mのノズルユニット31の各吐出口311により基材9上に形成されるドットを内部に「M」と記す丸にて示し、Yのノズルユニット31の各吐出口311により基材9上に形成されるドットを内部に「Y」と記す丸にて示している(後述する図10.Aないし図10.D、図11並びに図12において同様)。図4では、描画データに合わせてインクの吐出が行われない場合も、ドットが仮想的に形成されるものとしている。
【0027】
描画位置配列80は、基材9の主面上において副走査方向に平行な行方向(図4中のX方向)および主走査方向に平行な列方向(図4中のY方向)に配列された複数の描画位置の集合であり、図4では各描画位置を符号81を付す矩形にて示している。本実施の形態では、描画位置81の行方向のピッチおよび列方向のピッチの双方(以下、「描画ピッチ」とも呼ぶ。)が、吐出口ピッチVの1/4倍とされ、既述のように吐出口ピッチVが150dpiに相当する場合には、描画ピッチは600dpiに相当する42μmとなる。印刷装置1では、ヘッド3が基材9に対して主走査方向に相対的に移動する(主走査する)際に、ヘッド3の複数の吐出口311のそれぞれが列方向に並ぶ描画位置81(以下、「描画位置の列」とも呼ぶ。)を通過し、各吐出口311において、対応する描画位置の列に含まれる所定の描画位置81に対するインクの吐出動作が行われる。
【0028】
印刷装置1における印刷時には、ヘッド3がY方向に一回主走査する際に、吐出制御部41の制御に基づいて各吐出口311により対応する描画位置の列において1つおきに存在する描画位置81に対してインクの吐出制御が行われてドットが(仮想的に)形成される。実際には、複数の吐出口311において列方向に関して同じ位置の描画位置81がインクの吐出制御の対象とされるため、行方向に並ぶ描画位置81を描画位置の行として、列方向に1つの描画位置81おきに存在する描画位置の行に対して複数の吐出口311からのインクの吐出制御が行われることとなる。インクの吐出制御の対象となる描画位置81を吐出位置として言い換えると、(−X)側から(+X)方向に向かってKの吐出位置、Cの吐出位置、Mの吐出位置、Yの吐出位置(Kのドット、Cのドット、Mのドット、Yのドットがそれぞれ形成される4個の描画位置81)が行方向に順に繰り返される吐出位置の行が、列方向に1つの描画位置81おきに並んでいるといえる。本実施の形態における印刷装置1ではヘッド3の一度の主走査の際のインクの吐出位置の相互の位置関係が吐出位置配列として予め設定されている。
【0029】
図4中の描画位置配列80において2行4列の描画位置81の集合(図4中にて符号82を付す太線の矩形にて囲む描画位置81の集合であり、以下、「描画ブロック82」という。)に着目すると、各描画ブロック82には、Kの吐出位置、Cの吐出位置、Mの吐出位置およびYの吐出位置がそれぞれ1つずつ含まれ、これらの4個の吐出位置の配置は複数の描画ブロック82にて互いに同様となっている。言い換えれば、描画位置配列80は、ヘッド3の一度の主走査により互いに異なる色のインクの吐出制御が行われる4個の描画位置81のそれぞれを1つのみ含む複数の描画ブロック82に分割されている。なお、描画ブロック82のX方向の幅は吐出口ピッチVに等しい。
【0030】
実際には、図4に示すように、複数のノズルユニット31のY方向の位置は互いに異なっており、各ノズルユニット31の吐出口311が、インクの吐出制御の対象となる描画位置81(吐出位置)に対向する位置に到達した際(正確には、到達する直前)にこの吐出口311におけるインクの吐出制御が行われるため、ヘッド3の一の主走査の際にヘッド3が通過する各描画ブロック82において、行方向に並ぶとともに吐出位置となる4個の描画位置81に対する吐出制御は、4色のインクのそれぞれの吐出制御を互いに異なる時刻に1回行うことにより実現される。
【0031】
次に、印刷装置1が基材9上に画像を印刷する動作について図5を参照しつつ説明を行う。印刷装置1では、まず、印刷対象となる基材9が印刷装置1内に搬送され、ステージ21上に載置されて保持される(ステップS11)。続いて、移動制御部42がステージ移動機構22およびヘッド移動機構24を制御することによりヘッド3が基材9の(−Y)側の所定の印刷開始位置に配置される。そして、ステージ21が(−Y)方向に移動を開始し、ヘッド3が基材9に対して(+Y)方向に相対的に主走査する(ステップS12)。
【0032】
図6は1つの描画ブロック82を示す図であり、各描画位置81の内部に「1」〜「8」の番号を記すことにより主走査毎に一の色の吐出位置が配置される順序を示している(後述の図9、図13.Aおよび図13.Bにおいて同様)。図7.Aないし図7.Hは描画ブロック82の各描画位置81に吐出される複数の色のインクの重なり順序を説明するための図である。図7.Aないし図7.Hでは丸の内部に「K」、「C」、「M」、「Y」のいずれかを記すことにより、各描画位置81に吐出される(正確には、各描画位置81に対する吐出制御の対象とされる)インクの色を示しており、図示の都合上、各描画位置81が縦方向に長い形状となっている。
【0033】
既述のように、吐出位置配列の各吐出位置の行ではK、C、M、Yの吐出位置が行方向に並んでおり(図4参照)、印刷装置1におけるヘッド3の最初の主走査の際には、ヘッド3が通過する各描画ブロック82の最も(−X)側かつ(+Y)側の描画位置81(すなわち、図6において内部に「1」と記された位置に相当する描画位置81であり、以下、「特定位置」という。)とKの吐出位置とが重ねられる。したがって、図7.Aに示すように、特定位置である描画位置81aに対して、Kのインクの吐出制御が行われ、特定位置から(+X)方向に向かって他の3つの描画位置81にそれぞれ、C、M、Yのインクの吐出制御が行われる(ステップS13)。このとき、ヘッド3の(−Y)側の光照射部38から基材9上に照射される紫外線により基材9上に吐出された直後のインクが硬化することにより、当該インクが後述するヘッド3の他の主走査時に同位置に吐出される他の色のインクと混ざったり、他の色のインクが重ねられることにより当該インクが広がったりすることが防止される。なお、図7.Aでは、現在の主走査において各描画位置81に対する吐出制御の対象とされるインクの色を破線の丸にて示している(図7.Bないし図7.Hにおいて同様)。
【0034】
このようにして、ヘッド3が通過する基材9上の各描画ブロック82において、下段((+Y)側の行)に並ぶ複数の描画位置81に対して互いに異なる色のインクの吐出制御が行われ、ヘッド3が基材9の(+Y)側の端部まで到達するとステージ21の移動(ヘッド3の主走査)が停止される(ステップS14)。
【0035】
続いて、ヘッド3の次の主走査が行われることが確認された後(ステップS15)、ヘッド3がX方向に移動(副走査)し、行方向に関してKのノズルユニット31の各吐出口311が、次のヘッド3の主走査にてヘッド3が通過する各描画ブロック82において、最も(−X)側の描画位置81から(+X)方向に描画ピッチだけ離れた描画位置81と同じ位置に配置される(ステップS16)。なお、ステップS16におけるヘッド3の行方向の移動量については後述する。
【0036】
ヘッド3の副走査が完了すると、ステージ21が(+Y)方向に移動を開始し(ステップS12)、ヘッド3の2回目の主走査に同期してインクの吐出制御が行われる(ステップS13)。このとき、ヘッド3が通過する各描画ブロック82において、最も(−X)側かつ(+Y)側の描画位置81から(+X)方向および(+Y)方向のそれぞれに描画ピッチだけ離れた描画位置81(すなわち、図6において内部に「2」と記された位置に相当する描画位置81)が特定位置とされ、Kの吐出位置と重ねられる。したがって、図7.Bに示すように、特定位置である描画位置81bに対してKのインクの吐出制御が行われ、特定位置から(+X)方向に描画ピッチだけ離れた描画位置81に対してCのインクの吐出制御が行われ、特定位置から(+X)方向に描画ピッチの2倍だけ離れた描画位置81に対してMのインクの吐出制御が行われる。また、特定位置の(−X)側の描画位置81に対してはYのインクの吐出制御が行われる。このように、ヘッド3の2回目の主走査の際には、ヘッド3が通過する描画位置81の各列に対して吐出されるインクの色が、直前の1回目の主走査の際に吐出されたインクの色から異なる色へと変更されるとともに、吐出制御の対象となる描画位置の行も直前の1回目の主走査時におけるものから変更される。なお、基材9上に吐出された直後のインクは、(+Y)側の光照射部38から照射される紫外線により硬化する。
【0037】
ヘッド3の主走査が完了すると(ステップS14)、ヘッド3がX方向に移動し、行方向に関してKのノズルユニット31の各吐出口311が、次のヘッド3の主走査にてヘッド3が通過する各描画ブロック82において、最も(−X)側の描画位置81から(+X)方向に描画ピッチの2倍だけ離れた描画位置81と同じ位置に配置される(ステップS15,S16)。そして、ヘッド3の主走査に同期してインクの吐出制御が行われ(ステップS12,S13)、ヘッド3が通過する各描画ブロック82において、最も(−X)側かつ(+Y)側の描画位置81から(+X)方向に描画ピッチの2倍だけ離れた描画位置81(すなわち、図6において内部に「3」と記された位置に相当する描画位置81)を特定位置とした描画が行われる。したがって、図7.Cに示すように、特定位置の描画位置81cに対してKのインクの吐出制御が行われ、特定位置の(+X)側の描画位置81に対してCのインクの吐出制御が行われ、特定位置から(−X)方向に描画ピッチの2倍だけ離れた描画位置81に対してMのインクの吐出制御が行われ、特定位置から(−X)方向に描画ピッチだけ離れた描画位置81に対してYのインクの吐出制御が行われる。そして、ヘッド3が基材9の(+Y)側の端部まで到達するとヘッド3の主走査が停止され(ステップS14)、ヘッド3が行方向に所定の距離だけ移動する(ステップS15,S16)。
【0038】
印刷装置1では、各主走査の際にヘッド3が通過する各描画ブロック82における特定位置を、図6に示す描画ブロック82の内部に「4」、「5」、「6」、「7」、「8」と記された位置に相当する描画位置81に順次切り換えつつ、上記動作が繰り返される(ステップS12〜S16)。したがって、ヘッド3の4回目の主走査では図7.Dに示すように(−Y)側の4個の描画位置81に対して(−X)側から順にC、M、Y、Kのインクの吐出制御がそれぞれ行われ、ヘッド3の5回目の主走査では図7.Eに示すように(+Y)側の4個の描画位置81に対して(−X)側から順にY、K、C、Mのインクの吐出制御がそれぞれ行われ、ヘッド3の6回目の主走査では図7.Fに示すように(−Y)側の4個の描画位置81に対して(−X)側から順にM、Y、K、Cのインクの吐出制御がそれぞれ行われる。また、ヘッド3の7回目の主走査では図7.Gに示すように(+Y)側の4個の描画位置81に対して(−X)側から順にC、M、Y、Kのインクの吐出制御がそれぞれ行われ、ヘッド3の8回目の主走査では図7.Hに示すように(−Y)側の4個の描画位置81に対して(−X)側から順にK,C、M、Yのインクの吐出制御がそれぞれ行われる。
【0039】
このように、印刷装置1では、ヘッド3の主走査毎に、ヘッド3が通過する各描画ブロック82におけるK、C、M、Yの4色のインクに係る4個の描画位置81の配置が列方向に変更され、ヘッド3の8回目の主走査の完了後における、図7.Hに示す描画ブロック82では、描画ブロック82内の全ての描画位置81のそれぞれに対して4色のインクに係る4回の吐出制御が完了することとなる。このとき、各描画ブロック82の各行では、全ての描画位置81において4色のインクに係る吐出制御の順序が相違し、各描画ブロック82の各列でも、全ての描画位置81において4色のインクに係る吐出制御の順序が相違する。
【0040】
後述するように、上記ステップS12〜S14,S16は、描画位置配列80の全ての描画位置81のそれぞれに対して4色のインクに係る4回の吐出制御が行われるまで繰り返され(ステップS15)、基材9の全体にカラーの画像が印刷される。基材9上の印刷画像において、描画位置配列80に含まれる全ての描画ブロック82では、各描画ブロック82内の互いに対応する描画位置81に対する4色のインクに係る吐出制御の順序は同じとなる(図7.H参照)。
【0041】
次に、ステップS16におけるヘッド3の行方向への移動量について説明する。図8はヘッド3の行方向への移動量を説明するための図である。図8の上段では、一の色のノズルユニット31に配列形成される複数の吐出口311を1つの矩形として示し、ヘッド3の1〜9回目の主走査時における複数の吐出口311をそれぞれ矩形331〜339にて表している。また、図8の下段はこのノズルユニット31から吐出されるインクの色と同じ色成分の画像を示している。以下の説明では、一の色のノズルユニット31にのみ着目するが、他の色のノズルユニット31においても同様である。
【0042】
既述のように、印刷装置1の各ノズルユニット31では300個の吐出口311が形成されており、ヘッド3の1回目の主走査では、基材9上において行方向に並ぶ300個の描画ブロック82に相当する範囲において、各描画ブロック82に対するインクの吐出制御が行われる。続いて、ヘッド3の1回目の主走査の終了後、ヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(37+(1/4))倍(図8中の矩形331と矩形332との間のX方向の距離)だけ移動する。すなわち1ヘッドの走査する幅は300・Vなので、8主走査で1ヘッド分だけ副走査方向に進むとすれば(300÷8=37あまり4)であるから、37・Vと描画ブロック内の描画位置のずらしに対応する1/4Vを加えただけ副走査方向に送る。
【0043】
このとき、ノズルユニット31の吐出口311の位置が吐出口ピッチVの整数倍に吐出口ピッチVの1/4倍を加えた距離だけ行方向に移動するため、X方向のみに着目すると、1回目の主走査にて一の色のノズルユニット31の吐出口311が通過した各描画ブロック82内の描画位置81から(+X)側に描画ピッチだけ離れた位置に、このノズルユニット31のいずれかの吐出口311が配置される(ただし、1回目の主走査にて(−X)側の37個の吐出口311が通過した描画ブロック82を除く。)。したがって、2回目の主走査において、ノズルユニット31が通過する各描画ブロック82(正確には、1回目および2回目の主走査においてノズルユニット31が通過する各描画ブロック82(以下同様))に対して、図6中の「1」の位置に相当する描画位置81から「2」の位置に相当する描画位置81に特定位置を切り換えてインクの吐出制御を行うことが可能となる。また、ヘッド3の副走査時の行方向への移動量が描画ブロック82の行方向の幅である描画ピッチの4倍(吐出口ピッチV)よりも大きいため、各描画ブロック82に対して1回目の主走査にて通過した吐出口311とは異なる吐出口311が2回目の主走査にて通過することとなる。
【0044】
同様に、2回目の主走査の終了後には、ヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(37+(1/4))倍(すなわち、図8中の矩形332と矩形333との間のX方向の距離)だけ移動することにより、3回目の主走査において、ノズルユニット31が通過する各描画ブロック82に対して、図6中の「2」の位置に相当する描画位置81から「3」の位置に相当する描画位置81に特定位置を切り換えてインクの吐出制御を行うことが可能となり、3回目の主走査の終了後には、ヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(37+(1/4))倍(すなわち、図8中の矩形333と矩形334との間のX方向の距離)だけ移動することにより、4回目の主走査において、ノズルユニット31が通過する各描画ブロック82に対して、図6中の「3」の位置に相当する描画位置81から「4」の位置に相当する描画位置81に特定位置を切り換えてインクの吐出制御を行うことが可能となる。
【0045】
印刷装置1では、ヘッド3の4回目の主走査の終了後におけるヘッド3の行方向の移動量は、吐出口ピッチVの(37+(2/4))倍(すなわち、図8中の矩形334と矩形335との間のX方向の距離)とされる。これにより、5回目の主走査において、ノズルユニット31が通過する各描画ブロック82に対して、図6中の「4」の位置に相当する描画位置81から行方向に描画ピッチの2倍だけ離れた「5」の位置に相当する描画位置81に特定位置を切り換えてインクの吐出制御を行うことが可能となる。そして、5ないし7回目の主走査の終了後におけるヘッド3のX方向の移動量は、1ないし3回目の主走査の終了後における移動量と同じ吐出口ピッチVの(37+(1/4))倍とされ、6ないし8回目の主走査において、ノズルユニット31が通過する各描画ブロック82に対して図6中の「6」、「7」、「8」の位置に相当する描画位置81をそれぞれ特定位置とするインクの吐出制御を行うことが可能となる。
【0046】
ここで、1〜7回目の主走査の終了後における移動量の総和は、吐出口ピッチVの261倍となるため、8回目の主走査の際におけるノズルユニット31の複数の吐出口311(矩形338)のうち最も(−X)側の吐出口311により、1回目の主走査において(+X)側から(−X)方向に向かって39番目の吐出口311が通過した各描画ブロック82に対するインクの吐出制御が行われることとなる。したがって、1回目の主走査にてノズルユニット31の(+X)側の39個の吐出口311が通過した各描画ブロック82内の全ての描画位置81のそれぞれに対して一の色のインクの吐出制御が1回実行されたこととなる。後述するように、8回目の主走査以降においても、ヘッド3は(+X)方向へと間欠的に移動するため、1回目の主走査にてノズルユニット31の(−X)側の261個の吐出口311が通過した各描画ブロック82においては、インクの吐出制御が行われない描画位置81が存在する。よって、図3の描画データ生成部43では、1回目の主走査にてノズルユニット31の(−X)側の261個の吐出口311が通過する各描画ブロック82の描画位置81に対してインクの吐出が行われないように、ダミーデータを元の画像データに予め挿入した後に、描画データが生成される。なお、図8の下段では、矩形K1,K2によりダミーデータに対応する画像と元の画像とをそれぞれ抽象的に示している。
【0047】
続いて、8回目の主走査の終了後には、ヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(39+(0/4))倍(すなわち、図8中の矩形338と矩形339との間のX方向の距離)だけ移動することにより、9回目の主走査において、ノズルユニット31が通過する各描画ブロック82に対して図6中の「1」の位置に相当する描画位置81を特定位置とするインクの吐出制御を行うことが可能となる。このとき、矩形339にて示す複数の吐出口311の(−X)側の37個の吐出口311が通過する各描画ブロック82では、2〜8回目の主走査により、図6中の「2」〜「8」の位置に相当する描画位置81を特定位置としたインクの吐出制御が既に完了しており、9回目の主走査によりこの描画ブロック82内の全ての描画位置81のそれぞれに対する1回のインクの吐出制御が完了することとなる。なお、9回目の主走査を行うときのヘッドの位置は、((37+1/4)・V+(37+1/4)・V+・・・+(39+0/4)・V=300・V)だけ副走査移動した位置になり、副走査方向の連続性が保たれる。
【0048】
ヘッド3の9回目以降の主走査および副走査の繰り返しでは、副走査時の移動距離が上記1〜8回目の主走査の終了後における副走査時のものに順に変更され、基材9上の各描画ブロック82(ただし、ダミーデータに基づくインクの吐出制御が行われるものを除く。)内の全ての描画位置81のそれぞれに対して、一の色のノズルユニット31におけるインクの吐出制御が1回行われる。このようにして、互いに異なる色を吐出する複数のノズルユニット31により、基材9上の各描画ブロック82内の全ての描画位置81のそれぞれに対して4色のインクに係る4回の吐出制御が行われ、基材9上にカラーの画像が印刷される。なお、カラー印刷時における実際の描画データは、各色成分の画像データに、図8を参照して説明した上記ダミーデータに加えてノズルユニット31毎の行方向のずれに応じたダミーデータを必要に応じて挿入し、さらに、ダミーデータが挿入された各色成分の画像データから、各主走査時にインクの吐出制御の対象とされる描画位置81に対応する画素の値を抽出することにより生成される。
【0049】
ここで、仮に上記ヘッド3により、一の主走査において列方向に並ぶ各描画位置に対してインクの吐出制御を行い、行方向に副走査した後、主走査を繰り返すことにより、各描画位置に4色のインクに係る4回の吐出制御を行う場合には、4色のインクに係る吐出制御の順序が描画位置の各列に含まれる全ての描画位置において同一となり、かつ、描画位置の列毎に異なるため、印刷画像において列方向に伸びる筋ムラが発生してしまう。
【0050】
これに対し、図1の印刷装置1では、ヘッド3の主走査および副走査を繰り返す動作において、一の主走査時に列方向に関して1つの描画位置81おきに存在する描画位置の行に対してインクの吐出制御を行い、次の主走査時には吐出制御の対象となる行が前回の主走査におけるものから変更され、さらに、一の主走査時に描画位置の各列に対して吐出されるインクの色が、直前のヘッド3の副走査により、前回の主走査においてこの描画位置の列に対して吐出されたインクの色から異なる色へと変更される(すなわち、行方向および列方向に関してインターレース描画が行われる。)。これにより、各描画ブロック82の各行および各列に含まれる描画位置81おいて、複数の色のインクに係る吐出制御の順序を相違させることができ、その結果、各主走査におけるインクの吐出位置の重なりを防止したカラー印刷において、印刷画像中に行方向または列方向に伸びる筋ムラが発生することを防止することができる。
【0051】
なお、各主走査におけるインクの吐出位置の重なりを防止したカラー印刷では、既述のように、ヘッドの一の主走査時に複数の色のインクを印刷媒体上の同一の位置に吐出するカラー印刷における、i)同一の位置に吐出された各色のインクの液滴が硬化する前にインク同士が混ざることにより所望の色彩を表現できない、ii)ヘッドの一の主走査にて各位置に吐出されるインクの量が多くなり多量の紫外線を照射する必要がある、iii)一の色のインクが硬化する前に他の色のインクが重ねられることによりインクが広がってしまい、特に画像のエッジ部分がぼやける、iv)ヘッドの主走査の往路と復路とで各位置に対する複数のノズルユニットの到達順序が異なり、各位置における複数の色のインクの吐出順序が相違するため、双方向印刷において片方向印刷よりも印刷画像の画質が低下する等の問題点が解消される。また、印刷装置1における上記印刷動作では、描画位置の各列を一の色のインクを吐出する吐出口311が2回通過することにより、この列に含まれる描画位置81に対する一の色のインクの吐出制御が完了するが、ノズルユニット31からのインクの吐出周期が一定である場合に、印刷装置1では、一の主走査にて列方向の各位置にインクを吐出する手法に比べて、ヘッド3の主走査の速度を2倍にすることが可能であるため、基材9全体への印刷に要する時間は当該手法とほぼ同等となる(詳細には、副走査方向への移動回数が増加するため、この分だけ若干時間がかかる。)。
【0052】
また、基材9上の印刷画像において、描画位置配列80に含まれる全ての描画ブロック82では、互いに対応する描画位置81に対する複数の色のインクに係る吐出制御の順序は同じとなるため、基材9上の局所領域である各描画ブロック82の色見は一定となり、印刷画像の全体で一様な色見とすることができる。なお、印刷画像では描画ブロック82における特定位置の切り換え順序に応じて各描画ブロック82の色見が変わるため、実際のカラー印刷の際には、描画ブロック82における特定位置の切り換え順序を複数通りに変更してテスト印刷を行い、所望の色見となる切り換え順序を決定して当該切り換え順序にてカラー印刷が行われる。この場合に、例えば、図9に示す描画ブロック82において、「1」および「2」の位置のように、一の描画位置81から行方向に描画ピッチの複数倍だけ離れた描画位置81に特定位置が切り換えられる等してもよい。
【0053】
印刷装置1では、ヘッド3の一の主走査の際の吐出位置の集合である吐出位置配列の位置をヘッド3の主走査毎に行方向および列方向にシフトすることにより、各主走査の際に、ヘッド3が通過する各描画ブロック82において、4色のインクの吐出制御の対象とされる4個の描画位置81の配置が変更され、各描画位置81に対して複数の色のインクの吐出制御が順次行われる。これにより、ヘッド3の主走査毎に複数のノズルユニット31に対する制御アルゴリズムを複雑に変更することなく、各主走査におけるインクの吐出位置の重なりおよび印刷画像における筋ムラの発生を防止したカラー印刷を容易に行うことができる。
【0054】
ここで、印刷装置1において、仮にある吐出口311が損傷していたり、吐出口311のインクの吐出特性(例えば、インクの吐出量や吐出口311からのインクの吐出方向)がばらついている場合等に、列方向に並ぶ描画ブロック82内の各描画位置81に対して同一の吐出口311からインクを吐出するときには、列方向に並ぶ描画ブロック82内の全ての描画位置81が吐出口311の損傷やインクの吐出特性のばらつきによる同様の影響を受けてしまい、印刷画像上に筋ムラが発生してしまう。しかしながら、印刷装置1では、ヘッド3の主走査が繰り返される毎に、描画ブロック82の行方向の幅よりも長い距離だけヘッド3が基材9に対して行方向に相対的に移動して、各描画ブロック82内の全ての描画位置81に対して異なる吐出口311が割り当てられることにより、吐出口311の損傷またはばらつきに起因する印刷画像上の筋ムラの発生を防止することができる。
【0055】
印刷装置1では、さらに、ヘッド3の主走査が繰り返される毎に、各描画ブロック82内において行方向に並ぶとともにインクの吐出制御の対象とされる4個の描画位置81の配置が列方向に変更される。これにより、ヘッド3の連続する2回の主走査(ヘッド3の基材9に対する列方向への相対的な往復移動)において、基材9上に列方向に並んで吐出されたインクが互いに繋がってしまうことを防止することができる。
【0056】
印刷装置1における上記の動作例では、描画位置配列80における描画位置81の行方向および列方向の双方のピッチが600dpiに相当する42μmとされるが、ヘッド3の主走査の速度やインクの吐出周期を変更することにより、描画位置81の列方向のピッチは自在に変更することが可能である。
【0057】
ここで、印刷装置1において、仮にヘッド3の主走査の速度やインクの吐出周期の変更ができない場合(例えば、このような変更を許容した際の制御が複雑となる場合等)には、吐出位置配列における吐出位置の行の列方向のピッチは300dpiに相当する84μmにて変更不能となるが、この場合であっても、例えば、図10.Aに示すように、互いに隣接する吐出位置の行が列方向に関して2つの描画位置81おきに存在するものとして(すなわち、描画位置81の行方向のピッチが28μmであるものとして)、列方向の解像度を900dpiとしたカラー印刷を行うことが可能である。このような条件の下では、列方向の解像度は300dpiの所定の整数α(ただし、αは2以上の整数)倍とすることができ、この場合、ヘッド3の一の主走査において、列方向に関して(α−1)個の描画位置おきに存在する描画位置の行に対して(すなわち、(α−1)個の行だけ飛び越して)インクの吐出制御が行われることとなる。なお、図10.Aでは、吐出位置配列の一部のみを図示し、上記動作例における描画ブロック82も破線にて示している(後述の図10.Bないし図10.Dにおいて同様)。
【0058】
また、図2に示すヘッド3(すなわち、複数の吐出口311が行方向に600dpiに相当する42μmのピッチにて配列されるヘッド)において副走査における移動距離を変更することにより、描画位置81の行方向のピッチを変更することもできる。例えば、上記動作例のステップS16におけるヘッド3の行方向への移動量を、吐出口ピッチVの整数倍に吐出口ピッチVのβ/8倍を加えた距離(ただし、0≦β≦7)として、図10.Bに示すように、行方向および列方向の解像度をそれぞれ1200dpiおよび1200dpiとした(この場合、描画位置81の行方向および列方向の双方のピッチが21μmとなる。)カラー印刷を行うこともできる。このように、図2のヘッド3では、行方向の解像度を600dpiの整数倍とすることができ、上記条件(吐出位置の行の列方向のピッチが84μm)の下において印刷装置1では、行方向および列方向の解像度をそれぞれ1200dpiおよび600dpi、あるいは、1200dpiおよび900dpi等としたカラー印刷が可能となる。
【0059】
印刷装置1のヘッド3では、K、C、M、Y以外の色のインクを吐出するノズルユニットが設けられてもよく、例えば、ライトシアンのインクを吐出するノズルユニット、および、ライトマゼンタのインクを吐出するノズルユニットがヘッドに追加され、図10.Cおよび図10.Dに示すような吐出位置配列が設定されてもよい。図10.Cおよび図10.Dでは、ライトシアンの吐出位置を内部に「LC」と記す丸にて示し、ライトマゼンタの吐出位置を内部に「LM」と記す丸にて示している。なお、この場合、行方向に関してCのインクを吐出するノズルユニットの吐出口とライトシアンのインクを吐出するノズルユニットの吐出口とが同じ位置に配置され、Mのインクを吐出するノズルユニットの吐出口とライトマゼンタのインクを吐出するノズルユニットの吐出口とが同じ位置に配置される。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0061】
上記動作例において、例えば図11に示すような吐出位置配列が用いられてもよく、また、基材9への印刷の前に行われるテスト印刷において、吐出位置配列が図4や図11に示すように複数通りに変更され、所望の色見となる切り換え順序と吐出位置配列との組合せが決定されてもよい。ただし、印刷装置1における複数のノズルユニット31の吐出タイミングの調整やインクの吐出に係る制御等を容易に行うという観点では、ヘッド3の一の主走査の際にインクの吐出制御の対象とされる描画位置81が行方向に並ぶような吐出位置配列が用いられることが好ましい。
【0062】
また、印刷装置1では、図12に示すように、描画ブロック82内の描画位置81の個数をヘッド3が吐出するインクの色数と一致させることもできる。この場合、ヘッド3の一の主走査にて2行2列の描画ブロック82内の全ての(4個の)描画位置81に対して4色のインクの吐出制御がそれぞれ行われる。そして、ヘッド3の主走査毎に吐出位置配列の位置をシフトすることにより、各描画ブロック82における4色のインクに係る4個の描画位置81の配置が変更され、各描画ブロック82内の全ての描画位置81のそれぞれに対して4色のインクに係る4回の吐出制御が行われる。
【0063】
以上の説明より、印刷装置1において行方向および列方向にインターレース描画を行うという観点では、制御部4により、主面上に設定される描画位置配列80が、それぞれがM行N列(M、Nは2以上の整数)の描画位置である複数の描画ブロックに分割されている基材9に対して、P色(Pは2以上(M×N)以下の整数)のインクを吐出するヘッドを列方向に相対的に主走査しつつ、ヘッドが通過する各描画ブロック内のP個の描画位置に対する吐出制御としてP色のインクのそれぞれの吐出制御を1回行う基本処理と、各描画ブロックにおけるP色のインクに係るP個の描画位置の配置を変更しつつ当該基本処理を繰り返すことにより、各描画ブロック内の全ての描画位置のそれぞれに対してP色のインクに係るP回の吐出制御を行う処理とが実行されることが重要となる。
【0064】
ところで、印刷画像中に行方向および列方向に伸びる筋ムラが発生することを防止するという観点では、各描画ブロック82の各行および各列において、互いに隣接するいずれか2つの描画位置81における複数のインクに係る吐出制御の順序が異なることが必要となるが、仮に、図1の印刷装置1における図5の印刷動作において、図13.Aに示すように、2行4列の描画ブロック82の(+Y)側の行の描画位置81を(−X)側から(+X)方向に向かって順に特定位置とし、続いて、描画ブロック82の(−Y)側の行の描画位置81を(−X)側から(+X)方向に向かって順に特定位置とした場合には、列方向に互いに隣接する2つの描画位置81における4色のインクに係る吐出制御の順序が同じになってしまう。また、図13.Bに示すように、描画ブロック82における行を交互に変更しつつ、各行において(−X)側から(+X)方向に向かって順に特定位置を切り換える場合も同様である。したがって、ヘッド3が吐出するインクの色数Pと描画ブロック82の列数Nとが等しく、ヘッド3の各主走査により吐出制御の対象とされるP個の描画位置81が行方向に並ぶ場合には、描画ブロック82内の各行のみに着目したX方向に沿う特定位置の切り換え順序が、描画ブロック82の複数の行のうち少なくとも1つの行において他の行と異なっていることが重要となる。
【0065】
上記実施の形態では、ヘッド3の主走査が繰り返される毎に、ヘッド3が行方向の描画ブロック82の幅よりも十分に長い距離だけ副走査するが、吐出口311の損傷またはばらつきに起因する印刷画像上の筋ムラの発生を防止するという観点では、ヘッド3の主走査が繰り返される毎に描画位置81の行方向のピッチのN(描画ブロック82の列数)倍以上の距離だけヘッド3が基材9に対して行方向に相対的に移動すればよい。
【0066】
また、印刷装置1では、各主走査におけるインクの吐出位置の重なりを防止しつつ、光照射部38により基材9上に吐出された直後のインクを硬化させることにより、撥液性を有する基材9上に画像を適切に印刷することができるが、基材9上に吐出されたインクが、後の主走査により他の色のインクが重ねられる前に自然に硬化する場合には、必ずしも光照射部38は設けられなくてもよい。ただし、基材9上に適切な画像を確実に印刷するには、基材9上に吐出された直後のインクを硬化させる光照射部38が設けられることが好ましい。また、基材9上に吐出された直後のインクを硬化させるインク硬化部は、光照射部38以外であってもよく、例えば、熱硬化性のインクが用いられる場合には基材9に熱風を付与する熱付与部がヘッド3に設けられてもよい。なお、上記実施の形態のように、ヘッド3の主走査が繰り返される毎に、各描画ブロック82内において行方向に並ぶ吐出位置が列方向に変更される場合には、ヘッド3の連続する2回の主走査において、インクが吐出される描画位置81が異なるため、ヘッド3の2つの光照射部38の一方を省略することも可能である。
【0067】
印刷装置1において印刷媒体を保持する保持部は、ステージ21以外のものであってもよく、例えば、印刷媒体がシート状である場合等には、ヘッド3に対向して配置されるとともに印刷媒体の印刷対象の面とは反対の面に当接するローラであってもよい。
【0068】
上記実施の形態では、ステージ21を列方向に移動するステージ移動機構22、および、ヘッド3を行方向に移動するヘッド移動機構24により、ヘッド3がステージ21に対して列方向および行方向に相対的に移動するが、印刷装置1ではヘッド3を列方向に移動する機構やステージ21を行方向に移動する機構が設けられてもよい。また、前述のように、印刷媒体を保持する保持部がローラである場合には、当該ローラを回転するモータによりヘッド3が印刷媒体に対して列方向に相対的に移動する。このように、ヘッド3を印刷媒体に対して列方向および行方向に相対的に移動する走査機構はいかなる構成であってもよい。
【0069】
印刷装置1は、撥液性を有する印刷媒体(プラスチック以外であってもよい。)上にカラー印刷を行う用途に特に適しているが、撥液性を有しない印刷媒体に対して用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】印刷装置の外観を示す斜視図である。
【図2】ヘッドを示す底面図である。
【図3】制御部の機能構成を示すブロック図である。
【図4】基材の主面上に設定される描画位置配列を示す図である。
【図5】印刷装置が基材上に画像を印刷する動作の流れを示す図である。
【図6】描画ブロック内における特定位置の切り換え順序を示す図である。
【図7.A】各描画位置におけるインクの重なり順序を説明するための図である。
【図7.B】各描画位置におけるインクの重なり順序を説明するための図である。
【図7.C】各描画位置におけるインクの重なり順序を説明するための図である。
【図7.D】各描画位置におけるインクの重なり順序を説明するための図である。
【図7.E】各描画位置におけるインクの重なり順序を説明するための図である。
【図7.F】各描画位置におけるインクの重なり順序を説明するための図である。
【図7.G】各描画位置におけるインクの重なり順序を説明するための図である。
【図7.H】各描画位置におけるインクの重なり順序を説明するための図である。
【図8】ヘッドの行方向への移動量を説明するための図である。
【図9】描画ブロック内における特定位置の切り換え順序の他の例を示す図である。
【図10.A】吐出位置配列の他の例を示す図である。
【図10.B】吐出位置配列のさらに他の例を示す図である。
【図10.C】吐出位置配列のさらに他の例を示す図である。
【図10.D】吐出位置配列のさらに他の例を示す図である。
【図11】吐出位置配列のさらに他の例を示す図である。
【図12】吐出位置配列のさらに他の例を示す図である。
【図13.A】描画ブロック内における特定位置の切り換え順序の比較例を示す図である。
【図13.B】描画ブロック内における特定位置の切り換え順序の比較例を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 印刷装置
3 ヘッド
4 制御部
9 基材
21 ステージ
22 ステージ移動機構
24 ヘッド移動機構
31 ノズルユニット
32 吐出口群
38 光照射部
80 描画位置配列
81,81a〜81c 描画位置
82 描画ブロック
311,311a〜311d 吐出口
S12〜S16 ステップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式にて印刷媒体上にカラー印刷を行う印刷方法であって、
a)印刷媒体上において互いに直交する行方向および列方向に配列された描画位置である描画位置配列が設定されており、前記描画位置配列が、それぞれがM行N列(M、Nは2以上の整数)の描画位置である複数の描画ブロックに分割されており、P色(Pは2以上(M×N)以下の整数)のインクを吐出するヘッドを前記印刷媒体に対して前記列方向に相対的に主走査しつつ、前記ヘッドが通過する各描画ブロック内のP個の描画位置に対する吐出制御としてP色のインクのそれぞれの吐出制御を1回行う工程と、
b)前記各描画ブロックにおける前記P色のインクに係る前記P個の描画位置の配置を変更しつつ前記a)工程を繰り返すことにより、前記各描画ブロック内の全ての描画位置のそれぞれに対して前記P色のインクに係るP回の吐出制御を行う工程と、
を備え、
前記各描画ブロックの各行および各列において、互いに隣接するいずれか2つの描画位置における前記P色のインクに係る吐出制御の順序が異なることを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷方法であって、
前記a)工程におけるインクの吐出制御の対象となる描画位置を吐出位置として、前記ヘッドの一の主走査の際の吐出位置の相互の位置関係が吐出位置配列として予め設定されており、前記吐出位置配列において前記各描画ブロックに含まれるP個の吐出位置の配置が、前記複数の描画ブロックにて互いに同様となり、
前記b)工程において、前記ヘッドの主走査毎に前記吐出位置配列の位置がシフトされることにより、前記各描画ブロックにおける前記P色のインクに係る前記P個の描画位置の配置が変更されることを特徴とする印刷方法。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷方法であって、
前記Pと前記Nとが等しく、前記a)工程において前記P個の描画位置が前記行方向に並ぶことを特徴とする印刷方法。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷方法であって、
前記b)工程において、前記a)工程が繰り返される毎に、前記各描画ブロック内の前記P個の描画位置が前記列方向に変更されることを特徴とする印刷方法。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれかに記載の印刷方法であって、
前記b)工程において、前記a)工程が繰り返される毎に、前記描画位置の前記行方向のピッチのN倍以上の距離だけ前記ヘッドが前記印刷媒体に対して前記行方向に相対的に移動することを特徴とする印刷方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の印刷方法であって、
前記印刷媒体が撥液性を有することを特徴とする印刷方法。
【請求項7】
請求項6に記載の印刷方法であって、
前記ヘッドが、前記印刷媒体上に吐出された直後のインクを硬化させるインク硬化部を備えることを特徴とする印刷方法。
【請求項8】
インクジェット方式にて印刷媒体上にカラー印刷を行う印刷方法であって、
a)複数の吐出口群を所定の行方向に配列して備えて各吐出口群から複数の色のインクを吐出するヘッドを、印刷媒体に対して前記行方向に直交する列方向に相対的に主走査しつつ前記複数の吐出口群からのインクの吐出制御を行う工程と、
b)主走査が終了する毎に前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記行方向へと相対的に移動する工程と、
c)前記a)工程および前記b)工程を繰り返すことにより、前記印刷媒体上において前記行方向および前記列方向に配列された描画位置のそれぞれに対して前記複数の色のインクの吐出制御を順次行う工程と、
を備え、
前記a)工程において、前記列方向に関して所定数の描画位置おきに存在する描画位置の行に対してインクの吐出制御が行われ、かつ、各a)工程において吐出制御の対象となる行が前回のa)工程におけるものから変更され、
前記各a)工程において描画位置の各列に対して吐出されるインクの色が、直前のb)工程により、前記前回のa)工程おいて前記各列に対して吐出されたインクの色から異なる色へと変更されることを特徴とする印刷方法。
【請求項9】
インクジェット方式にて印刷媒体上にカラー印刷を行う印刷装置であって、
互いに直交する行方向および列方向に配列された描画位置である描画位置配列が設定されており、かつ、前記描画位置配列が、それぞれがM行N列(M、Nは2以上の整数)の描画位置である複数の描画ブロックに分割されている印刷媒体を保持する保持部と、
P色(Pは2以上(M×N)以下の整数)のインクを印刷媒体に向けて吐出するヘッドと、
前記ヘッドを前記保持部に保持される印刷媒体に対して前記列方向および前記行方向に相対的に移動する走査機構と、
前記走査機構による前記ヘッドの移動と前記ヘッドからのインクの吐出とを同期させつつ制御する制御部と、
を備え、
前記制御部が、
a)前記ヘッドを前記保持される印刷媒体に対して前記列方向に相対的に主走査しつつ、前記ヘッドが通過する各描画ブロック内のP個の描画位置に対する吐出制御としてP色のインクのそれぞれの吐出制御を1回行う工程と、
b)前記各描画ブロックにおける前記P色のインクに係る前記P個の描画位置の配置を変更しつつ前記a)工程を繰り返すことにより、前記各描画ブロック内の全ての描画位置のそれぞれに対して前記P色のインクに係るP回の吐出制御を行う工程と、
を実行し、
前記各描画ブロックの各行および各列において、互いに隣接するいずれか2つの描画位置における前記P色のインクに係る吐出制御の順序が異なることを特徴とする印刷装置。
【請求項1】
インクジェット方式にて印刷媒体上にカラー印刷を行う印刷方法であって、
a)印刷媒体上において互いに直交する行方向および列方向に配列された描画位置である描画位置配列が設定されており、前記描画位置配列が、それぞれがM行N列(M、Nは2以上の整数)の描画位置である複数の描画ブロックに分割されており、P色(Pは2以上(M×N)以下の整数)のインクを吐出するヘッドを前記印刷媒体に対して前記列方向に相対的に主走査しつつ、前記ヘッドが通過する各描画ブロック内のP個の描画位置に対する吐出制御としてP色のインクのそれぞれの吐出制御を1回行う工程と、
b)前記各描画ブロックにおける前記P色のインクに係る前記P個の描画位置の配置を変更しつつ前記a)工程を繰り返すことにより、前記各描画ブロック内の全ての描画位置のそれぞれに対して前記P色のインクに係るP回の吐出制御を行う工程と、
を備え、
前記各描画ブロックの各行および各列において、互いに隣接するいずれか2つの描画位置における前記P色のインクに係る吐出制御の順序が異なることを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷方法であって、
前記a)工程におけるインクの吐出制御の対象となる描画位置を吐出位置として、前記ヘッドの一の主走査の際の吐出位置の相互の位置関係が吐出位置配列として予め設定されており、前記吐出位置配列において前記各描画ブロックに含まれるP個の吐出位置の配置が、前記複数の描画ブロックにて互いに同様となり、
前記b)工程において、前記ヘッドの主走査毎に前記吐出位置配列の位置がシフトされることにより、前記各描画ブロックにおける前記P色のインクに係る前記P個の描画位置の配置が変更されることを特徴とする印刷方法。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷方法であって、
前記Pと前記Nとが等しく、前記a)工程において前記P個の描画位置が前記行方向に並ぶことを特徴とする印刷方法。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷方法であって、
前記b)工程において、前記a)工程が繰り返される毎に、前記各描画ブロック内の前記P個の描画位置が前記列方向に変更されることを特徴とする印刷方法。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれかに記載の印刷方法であって、
前記b)工程において、前記a)工程が繰り返される毎に、前記描画位置の前記行方向のピッチのN倍以上の距離だけ前記ヘッドが前記印刷媒体に対して前記行方向に相対的に移動することを特徴とする印刷方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の印刷方法であって、
前記印刷媒体が撥液性を有することを特徴とする印刷方法。
【請求項7】
請求項6に記載の印刷方法であって、
前記ヘッドが、前記印刷媒体上に吐出された直後のインクを硬化させるインク硬化部を備えることを特徴とする印刷方法。
【請求項8】
インクジェット方式にて印刷媒体上にカラー印刷を行う印刷方法であって、
a)複数の吐出口群を所定の行方向に配列して備えて各吐出口群から複数の色のインクを吐出するヘッドを、印刷媒体に対して前記行方向に直交する列方向に相対的に主走査しつつ前記複数の吐出口群からのインクの吐出制御を行う工程と、
b)主走査が終了する毎に前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記行方向へと相対的に移動する工程と、
c)前記a)工程および前記b)工程を繰り返すことにより、前記印刷媒体上において前記行方向および前記列方向に配列された描画位置のそれぞれに対して前記複数の色のインクの吐出制御を順次行う工程と、
を備え、
前記a)工程において、前記列方向に関して所定数の描画位置おきに存在する描画位置の行に対してインクの吐出制御が行われ、かつ、各a)工程において吐出制御の対象となる行が前回のa)工程におけるものから変更され、
前記各a)工程において描画位置の各列に対して吐出されるインクの色が、直前のb)工程により、前記前回のa)工程おいて前記各列に対して吐出されたインクの色から異なる色へと変更されることを特徴とする印刷方法。
【請求項9】
インクジェット方式にて印刷媒体上にカラー印刷を行う印刷装置であって、
互いに直交する行方向および列方向に配列された描画位置である描画位置配列が設定されており、かつ、前記描画位置配列が、それぞれがM行N列(M、Nは2以上の整数)の描画位置である複数の描画ブロックに分割されている印刷媒体を保持する保持部と、
P色(Pは2以上(M×N)以下の整数)のインクを印刷媒体に向けて吐出するヘッドと、
前記ヘッドを前記保持部に保持される印刷媒体に対して前記列方向および前記行方向に相対的に移動する走査機構と、
前記走査機構による前記ヘッドの移動と前記ヘッドからのインクの吐出とを同期させつつ制御する制御部と、
を備え、
前記制御部が、
a)前記ヘッドを前記保持される印刷媒体に対して前記列方向に相対的に主走査しつつ、前記ヘッドが通過する各描画ブロック内のP個の描画位置に対する吐出制御としてP色のインクのそれぞれの吐出制御を1回行う工程と、
b)前記各描画ブロックにおける前記P色のインクに係る前記P個の描画位置の配置を変更しつつ前記a)工程を繰り返すことにより、前記各描画ブロック内の全ての描画位置のそれぞれに対して前記P色のインクに係るP回の吐出制御を行う工程と、
を実行し、
前記各描画ブロックの各行および各列において、互いに隣接するいずれか2つの描画位置における前記P色のインクに係る吐出制御の順序が異なることを特徴とする印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7.A】
【図7.B】
【図7.C】
【図7.D】
【図7.E】
【図7.F】
【図7.G】
【図7.H】
【図8】
【図9】
【図10.A】
【図10.B】
【図10.C】
【図10.D】
【図11】
【図12】
【図13.A】
【図13.B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7.A】
【図7.B】
【図7.C】
【図7.D】
【図7.E】
【図7.F】
【図7.G】
【図7.H】
【図8】
【図9】
【図10.A】
【図10.B】
【図10.C】
【図10.D】
【図11】
【図12】
【図13.A】
【図13.B】
【公開番号】特開2007−253348(P2007−253348A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76991(P2006−76991)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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