説明

印刷方法

本発明は、紫外線硬化性インクを基材へ塗布するステップと;インクをLED光源からの紫外線に露光することによってインクを部分硬化させるステップと;部分硬化したインクをフラッシュランプからの紫外線に露光するステップとを含む方法を提供する。フラッシュランプはキセノンまたはクリプトンフラッシュランプである。この方法を実施するための装置、およびこの方法での使用に適合したインクも提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを印刷する方法、特に紫外線硬化性インクを印刷する方法に関する。本発明は、印刷装置および本発明の方法での使用に適合させたインクにも関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷では、黒色インクまたはカラーインクの微小液滴が1つまたは複数の容器または印刷ヘッドから狭いノズルを通って、容器に対して移動している基材上へ制御された方法で噴出される。噴出したインクは基材上に画像を形成する。高速印刷では、インクは印刷ヘッドから迅速に流れる必要があり、これが確実に起きるようにするために、インクは噴出の段階で低粘度でなければならない。インクの粘度は典型的には噴出温度において25mPas未満である。
【0003】
あるタイプのインクは、照射によって(一般的には紫外線によって)光開始剤の存在下で重合する、不飽和有機モノマーまたはオリゴマーを含有する。このタイプのインクは、印刷物を乾燥させるのに液相を蒸発させる必要がないという利点を有し、代わりにインクを硬化または固めるために印刷物が照射線に露光され、穏やかな温度で溶媒を蒸発させるよりも迅速な方法である。
【0004】
紫外線硬化プロセスで使用できる2つの主な技術がある。第1の方法はアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルなどの反応性モノマーの重合を開始させるフリーラジカル種を使用し、第2の方法はエポキシド、アリルエーテル、およびビニルエーテルなどの反応性モノマーのカチオン重合を開始させる非常に強い酸の生成を含む。
【0005】
紫外線プリンターでは、強い紫外線源に露光することによって印刷直後にインクを硬化させる。インク、より具体的にはインク中に供給された光開始剤は、主に周囲の光での硬化を防ぐために、一般に紫外線源により放射される特定の波長(複数可)を有する照射線に応答するように合わせて調整されている。したがって照射線源はこのスペクトル領域で十分な出力強度を有するべきである。
【0006】
プリンターのインクを硬化させるのに使用される最も一般的な紫外線源は、水銀放電ランプである。これらのランプは石英の封入材に入れられた高圧水銀ガス中で2つの電極間にプラズマを作り出すことによって作動する。これらのランプはそれらの操作特性においていくつかの欠点を有するが、他の紫外線源で、紫外線出力性能に関してそれらの地位になんとか挑むものは未だにない。
【0007】
水銀は室温で液体なので、一貫した出力をもたらす安定した高圧水銀ガスを構築するために、水銀放電ランプは典型的には800℃に加熱される必要がある。したがって、ランプのサイズに応じて、それを使用できる前に2〜30分間ランプのスイッチを入れる必要があり、これは印刷の生産性に影響を及ぼす。
【0008】
水銀のスペクトルは254、365(I線)、405(H線)、436(G線)、546、および578nmに強い輝線(ピーク)を有するが、これらはランプ中の不純物の意図的な含有によって影響され得る。これらのピーク発光波長に応答する多くの市販の光開始剤が開発されてきており、水銀放電ランプに応答する紫外線硬化性インクの開発を商業的に有効なものにしている。残念ながら、254nmの発光は空気中のオゾンの効率的な生成に関与し、これは適切に扱われない場合、ヒトの健康に影響を及ぼす恐れがある。ランプ中に含有する水銀も、環境に配慮した廃棄を含めてその寿命全体にわたって適切に扱われない場合は、健康への脅威をもたらす。
【0009】
水銀放電ランプを通る電流を調整することによって、出力を制御することができ、それによって受け手の基材上のインクの流動特性が影響を受ける。インクの液滴をランプの高い出力にさらすと、液滴が広がりかつ融合できる前に液滴の硬化を引き起こすことになる。このことは、「サテン」と呼ばれることがあるマットな画像効果を与える拡散反射率を有する、非常に粗い表面をもたらす。反対に、低出力の入射紫外線は、硬化が達成される直前にインクの流動を可能にすることになり、仕上がった印刷表面粗さを低減させ、その結果「光沢」効果が得られる。水銀放電ランプのプラズマ消火を防ぐためには、最小限の電流を維持しなければならない。したがって、出力範囲は典型的には25〜100%においてのみ調整可能である。したがって、25%未満の出力に対するインクの応答を制御するために比例シャッター機構が必要とされ、光沢およびサテンの両方の仕上がり画像を印刷できるプリンターの材料コストを増大させる。
【0010】
水銀放電ランプの出力強度は使用と共に急激に低下することがあり、これはランプがプリンター内の消耗品と考えられることを意味し、およそ4〜6カ月毎に交換しなければならない。しかし、同じ度合いの印刷の仕上がり(マット/サテン/光沢)を維持するように出力を安定させるために、ランプの強度を定期的に測定し、ランプ効率の低下を補うように供給電力を調整しなければならない。これらのプロセスは時間がかかる場合があり、印刷の生産性に対して悪影響を与えることになる。
【0011】
LED(発光ダイオード)紫外光源は水銀ランプの魅力的な代替物である。それらに毒性がないだけでなく、LEDは水銀放電ランプを上回るいくつかの利点を有する。LEDの出力はウォームアップの時間を除けば即時のものであり、デバイスの駆動電流を調整することによって0〜100%で制御することができる。これは、プリンターで使用される場合、高価な駆動電子機器およびシャッターの必要性を緩和させる。LEDは5年を超える寿命を有して頑丈でもあり、これは出力の再較正を繰り返す必要なしに印刷の仕上がりの再現性が高くなるであろうことを意味する。LEDはまた狭いスペクトルの出力を有し、そのため生成される放射エネルギーは概して赤外線を含まず、このことがLEDを低温の紫外線源として歓迎されるものにする。
【0012】
水銀放電ランプと共に使用するために開発されてきた大部分のグラフィック用インクは、約365nmの光に対するピーク応答を有する。残念ながら、LEDの発光波長がおよそ450nm未満に減少すると、出力効率は急激に低下する。光に変換されない入力電力はいずれも、効率的に熱に変換される。さらに、現在のLED光源の紫外線出力は、水銀ランプと比較した場合に依然として相対的に低い。したがってLED光源は、現在入手可能なインクを完全に硬化させるのに必要な紫外線出力を得るために、過度に駆動させなければならない。これは熱の生成をもたらすが、この熱は過熱によるLEDの不具合を防ぐために除去しなければならない。冷却器具はプリンター設計の複雑さおよびコストを大幅に増大させる。
【0013】
1つの解決法は、LED硬化ユニットをより低い出力で作動させることである。しかしこれは、インク表面に隣接する大気中の酸素の存在に起因して、ラジカル重合によって硬化するインクの表面における不十分な硬化を引き起こす。この効果は、硬化プロセスの間に照射される領域を窒素などの不活性ガスで覆うことによって克服することができるが、やはりこれはプリンターの複雑さおよびコストを大幅に増大させる。印刷機の周辺で窒素が増加すると窒息の危険もある。
【0014】
LEDは紫外線硬化産業専用に作られてはいないので、照明産業向けに作られる大量生産のLEDと比較すると依然として相対的に高価である。このような理由で、LEDは現在紫外線LED硬化ヘッドの材料費の約60%を構成する。1.6m幅の印刷物をカバーする静止した硬化バーに必要とされることになる多数のLEDは、この完全なインクの硬化を実現する方法をひどく高コストなものにする。
【発明の概要】
【0015】
したがって、上記の欠点を克服する紫外線印刷方法が必要とされている。
【0016】
したがって本発明は、
紫外線硬化性インクを基材へ塗布するステップと;
インクをLED光源からの紫外線に露光することによってインクを部分硬化させるステップと;
部分硬化したインクをフラッシュランプからの紫外線に露光するステップと
を含む方法を提供する。
【0017】
LED光源を使用する第1の部分硬化ステップと、フラッシュランプ(例えばキセノンまたはクリプトン)を使用する第2の硬化ステップとの組合せは、驚くことに、基材への良好な接着および良好な表面硬化を実現しながら、印刷画像の制御(すなわちマット、サテン、または光沢)を可能にする。さらに、この方法は良好な表面硬化を得るために窒素環境を必要としない。本発明の方法はまた、例えば水銀放電ランプを使用する方法より信頼性も高く、電力消費もより少ない。
【0018】
理論に拘束されることを望まないが、LED光源に露光すると印刷された膜の表面より下のインクの部分硬化が引き起こされ、これはインクが基材上に「固定」されることを引き起こすと考えられる。このステップは「ピン止め(pinning)」としても知られている。LED光源はインク中に浸透することができる放射線を作り出す。こうして、印刷された膜の全体にわたってインクの部分硬化を実現することができる。マット、サテン、または光沢の効果をもたらすため、および/または色域を改善するために、LED光源からの紫外線の出力を変化させることによって、印刷画像の制御を実現することができる。したがってこの最初の硬化ステップは、画像の品質を規定する。しかし、印刷されたインク表面に隣接する大気中の酸素の阻害効果のために、部分硬化後の膜の表面は依然として粘着性である。フラッシュランプから放射される紫外線による露光を含む第2の硬化ステップは、優れた表面硬化をもたらすことが分かっている。フラッシュランプの高いピーク照射量は、インク表面の酸素の阻害効果を克服し、なぜならこれは短い持続時間(すなわち低線量)にもかかわらず高レベルのラジカル生成をもたらすからである。対照的に、LEDはより低いピーク照射量を有するが、露光時間はより長く、インクに浸透する高い線量をもたらす。全体としての効果は、優れた表面硬化および貫通硬化の組合せをもたらす、2つの照射線源間の特に良好な相補性である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるインクジェットプリンターの一部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
LEDは狭い波長の範囲(例えば15nmのバンド幅)にわたる紫外線を放射し、発光は波長分布におけるピークに相当する波長(例えば395nm)によって識別される。本発明に従って使用されるLEDは、好ましくは250〜450nm、例えば365nm、395nm、400nm、または405nmのピーク紫外線を放射する。
【0021】
LED光源は1つまたは複数のLEDを含む。LED光源はチップパッケージ内にLEDのアレイを含んでいてもよく、チップパッケージはそれ自体がアレイになっている。あるいは、1つのLEDを各チップパッケージ中に設けてもよい。LEDの精密な配置は変更することができる。例えば、基材への均一な露光を実現するために、LEDおよび/またはチップパッケージをジグザグの列に配置することができる。
【0022】
紫外線量は、単位面積あたりの表面に供給される総エネルギーであり、mJ/cmで測定される。部分的硬化ステップの間にインクに供給される紫外線量は、好ましくは10〜300mJ/cm、より好ましくは50〜250mJ/cm、最も好ましくは75〜200mJ/cmである。これらの線量は完全な硬化に必要な線量よりも低い。単位面積あたりの紫外線量は、LED光源の放射強度を変えることによって、および/またはインクを照射線に露光する時間の長さを変えることによって、制御することができる。好ましくは、LED光源は低出力で、例えば最大出力の90%以下、好ましくは65%以下、最も好ましくは50%以下で発光する。LEDが低出力で発光する場合、冷却の必要性が低減され、これはプリンターの設計がより単純になることを意味する。
【0023】
本発明での使用に適したLED光源の一例は、4W/cm Phoseon RX StarFire Max 150 395nmモデルである。硬化させようとする材料から光源を6mm離すことによって、かつ試料材料を1秒あたり15メートルのスピードで露光することによって、LEDの放射出力を最大出力の10〜90%で変化させることによりおよそ50mJ/cm〜およそ300mJ/cmの紫外線量を得ることができる。LED出力の電力をおよそ15%〜およそ50%で変化させることによって、最も好ましい紫外線量である75〜200mJ/cmを得ることができる。当業者であれば、他の紫外線LED光源によって供給される紫外線量を、類似する方法で変化させることが可能であろう。インクに供給される紫外線量は、Electronic Instrumentation&Technology,Incにより供給されるEIT PowermapモデルPWRDOB−H号などの、紫外放射計を用いて測定することができる。
【0024】
フラッシュランプは、好ましくはキセノンまたはクリプトンフラッシュランプであるが、キセノンフラッシュランプが好ましい。キセノンおよびクリプトンフラッシュランプは市販もされている。インクの表面を硬化させるために、部分硬化したインクをキセノンフラッシュランプから放射される紫外線に露光する。フラッシュランプは、高強度紫外線のパルスを発する。フラッシュランプによって供給される総紫外線量は、フラッシュの持続時間、フラッシュの回数、フラッシュの周波数および/または強度を変化させることによって制御できる。
【0025】
LED光源での露光によってインクが部分硬化した後、インクをキセノンフラッシュランプからの紫外線に露光するように、キセノンフラッシュランプを配置する。
【0026】
硬化の度合いは、爪によるスクラッチ試験を用いて評価できる。これは当技術分野で周知の試験である。膜を印刷し、次いで部分的または完全に硬化させる。スクラッチにより除去できるレベルを確認し、1〜5のスケールの値を適用することによって、インクの密着性を試験する。値は次のように決定される:
1=硬化していない、膜は完全に濡れている
2=一部硬化しているが、軟らかくべたついている
3=基材へ良好に密着しているが、インク表面は濡れている
4=基材へ良好に密着しているが、表面は粘着性がある
5=インクの膜は完全に硬化しており、基材へ良好に密着し、インク表面は粘着性がない
【0027】
本発明の方法では、LED照射は好ましくは爪によるスクラッチ試験で3または4の値を有する膜をもたらす。
【0028】
紫外線硬化性インクを基材へ塗布する任意の方法を本発明の方法において用いることができ、適切な方法およびインクは当業者に周知であろう。例えば、スクリーン印刷、フレキソ印刷、リソグラフ印刷、またはグラビア印刷によってインクを塗布してもよい。しかし、本発明の方法は好ましくはインクジェットプリンターを用いたインクジェット用インクの塗布を含むインクジェット印刷の方法である。
【0029】
インクジェットプリンターは一連のノズルを含むプリントヘッドを含み、このノズルを通してインクが基材上へ噴出される。プリントヘッドは印刷プロセスの間、印刷幅を横断する(基材を横切って行き来する)。好ましくは、LED光源がインクジェット印刷の間にプリントヘッドと共に動くようにLED光源を配置する。例えば、プリントヘッドおよびLED光源は、基材を横切って動くことができるプリンターキャリッジまたはシャトルに取り付けてもよい。この好ましい実施形態において、インクが基材上へ噴出された直後に、インクをLED光源から放射される紫外線に露光する。あるいは、プリントヘッドから噴出されるインク液滴がほぼ同時に部分的硬化を受けるようにLED光源を配置してもよく、その結果それらは基材上へ落下すると「固定」される。
【0030】
複数のLED光源を本発明に従って使用してもよいが、本発明の方法で使用される印刷装置は、好ましくはプリントヘッドに隣接して配置されている1つのLED光源、またはプリントヘッドキャリッジの両側に設置されている2つのLED光源を含む、インクジェットプリンターである。プリントヘッドは基材に対して移動するが、プリントヘッドまたは基材のいずれかが移動してもよく、その間他方が静止したままである。好ましくはプリントヘッドが移動し、基材は静止している。
【0031】
フラッシュランプは、インクジェット印刷の間にプリントヘッドと共に動くように配置してもよいが、これは好ましくなく、なぜならこの配置は高いフラッシュの周波数を必要とすることになるからである。フラッシュランプは好ましくは静止し、プリントヘッドの下流に位置している。1つを超えるフラッシュランプを使用してもよい。
【0032】
図1は本発明の好ましい実施形態によるインクジェットプリンターの一部を示す。プリンター1はプリントヘッド5の両側に位置するLED光源3aおよび3bを含む。プリントヘッド5およびLED光源3a、3bは、x軸に沿って行き来できるプリンターキャリッジ(図示せず)上に設けられている。プリンターは2つのフラッシュランプ7aおよび7bを備えている。基材9は供給ロール11上で供給され、回収ロール13上で回収される。使用の際、インクがプリントヘッド5の中のノズルから基材9の上へ噴出される間、プリンターキャリッジはx軸に沿って基材の幅にわたって行き来する。基材9の上に被着させたインクを、LED光源3aおよび/または3bから放射される紫外線に露光することによって部分硬化させる。インクが部分硬化されるとすぐ、基材は供給ロール11から回収ロール13の方へy方向に動く。y方向はx軸に垂直であり、x軸に沿ってプリンターキャリッジが動く。次いで、基材が回収ロール13で回収される前に、部分硬化したインクをフラッシュランプ7aおよび7bから放射される紫外線に露光する。
【0033】
本発明の方法で使用される紫外線硬化性インクは、紫外線硬化性モノマーまたはオリゴマーまたはそれらの混合物;光開始剤、および着色剤を含む。
【0034】
インクは好ましくはインクジェット用インクである。
【0035】
幅広い範囲の紫外線硬化性モノマーおよびオリゴマーが当技術分野で既知であり、本発明のインクにおいて使用するのに適しているであろう。
【0036】
本発明のインクは好ましくはラジカル重合によって硬化し、インクはラジカル付加重合によって重合可能なモノマー若しくはオリゴマー、またはそれらの混合物を含む。
【0037】
インクは好ましくは(メタ)アクリレートモノマーを含む。(メタ)アクリレートモノマーは、単官能性モノマー、多官能性モノマー、またはそれらの混合物であってもよい。
【0038】
単官能性(メタ)アクリレートモノマーは当技術分野で周知であり、好ましくはアクリル酸のエステルである。好ましい例としては、アクリル酸フェノキシエチル(PEA)、環状TMPアクリル酸ホルマール(CTFA)、アクリル酸イソボルニル(IBOA)、アクリル酸テトラヒドロフルフリル(THFA)、アクリル酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル、アクリル酸オクタデシル(ODA)、アクリル酸トリデシル(TDA)、アクリル酸イソデシル(IDA)、およびアクリル酸ラウリルが挙げられる。PEAが特に好ましい。
【0039】
単官能性(メタ)アクリレートモノマーは、インクの総重量を基準として1〜90重量%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは20〜60重量%、最も好ましくは30〜50重量%で含まれていてもよい。
【0040】
適切な単官能性(メタ)アクリレートモノマーの粘度は、典型的には25℃で20mPas未満であり、分子量は450未満である。二、三、および四官能性モノマーが好ましい。インクジェット用インクに含まれていてもよい多官能性アクリレートモノマーの例としては、ジアクリル酸ヘキサンジオール、トリアクリル酸トリメチロールプロパン、トリアクリル酸ペンタエリトリトール、ジアクリル酸ポリエチレングリコール(例えばジアクリル酸テトラエチレングリコール)、ジアクリル酸ジプロピレングリコール、トリアクリル酸トリ(プロピレングリコール)、ジアクリル酸ネオペンチルグリコール、ヘキサアクリル酸ビス(ペンタエリトリトール)、およびエトキシ化またはプロポキシ化グリコールおよびポリオールのアクリル酸エステル、例えばプロポキシ化ジアクリル酸ネオペンチルグリコール、エトキシ化トリアクリル酸トリメチロールプロパン、並びにそれらの混合物が挙げられる。特に好ましいのは、二、および三官能性アクリレートである。分子量が200を超えるものも好ましい。
【0041】
さらに、適切な多官能性アクリレートモノマーとしては、メタクリル酸のエステル(すなわちメタクリレート)、例えばジメタクリル酸ヘキサンジオール、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸1,4−ブタンジオールなどが挙げられる。(メタ)アクリレートの混合物も使用してもよい。
【0042】
多官能性(メタ)アクリレートモノマーは、インクの総重量を基準として1〜90重量%、好ましくは2〜30重量%、より好ましくは5〜20%の量で含まれていてもよい。
【0043】
(メタ)アクリレートは本明細書においてその標準的な意味を有することを意図する。すなわちアクリレートおよび/またはメタクリレートである。単官能性および多官能性はそれらの標準的な意味を有することを意味する。すなわち、硬化における重合反応に関与する、それぞれ1つ、および2つまたはそれを超える基である。
【0044】
好ましい実施形態のインクは、α,β−不飽和エーテルモノマー、例えばビニルエーテルなども含有してもよい。これらのモノマーは当技術分野において既知であり、インク処方物の粘度を低下させるのに使用してもよい。本発明のインクにおいて使用してもよい典型的なビニルエーテルモノマーは、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、およびエチレングリコールモノビニルエーテルである。ビニルエーテルモノマーの混合物も使用してもよい。本発明のインク中に存在する場合、ビニルエーテルモノマーは好ましくは、インクの総重量を基準として1〜20重量%、より好ましくは7〜15重量%の量で存在する。好ましい実施形態において、アクリレートモノマー対ビニルエーテルモノマーの比は4:1から15:1である。アクリレートモノマーと組み合わせてα,β−不飽和エーテルモノマーを含有する処方物のさらなる詳細については、WO02/061001を参照されたい。
【0045】
N−ビニルアミドおよびN−(メタ)アクリロイルアミンも本発明のインクに使用してもよい。N−ビニルアミドは当技術分野で周知のモノマーであり、したがって詳細の説明は不要である。N−ビニルアミドは、アミドの窒素原子に結合したビニル基を有し、アミドは(メタ)アクリレートモノマーと同様にさらに置換されていてもよい。好ましい例は、N−ビニルカプロラクタム(NVC)およびN−ビニルピロリドン(NVP)である。同様に、N−アクリロイルアミンも当技術分野で周知である。N−アクリロイルアミンもアミドに結合したビニル基を有するが、カルボニル炭素原子を介して結合したものであり、やはり(メタ)アクリレートモノマーと同様にさらに置換されていてもよい。命名に関して、用語「アクリロイル」はカルボニル基を包含するので、アミドは実際にはアミンとして命名される。好ましい例はN−アクリロイルモルホリン(ACMO)である。
【0046】
N−ビニルアミドおよび/またはN−アクリロイルアミンは、インクの総重量を基準として3〜50重量%、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%で含まれていてもよい。NVCが特に好ましい。
【0047】
インクは紫外線硬化性オリゴマーを含んでいてもよい。「紫外線硬化性オリゴマー」とは、重合可能な基を含み、したがって硬化反応に関与できるオリゴマーを意味する。オリゴマーの分子量は好ましくは450〜4,000、より好ましくは450〜2,000、最も好ましくは450〜1500である。オリゴマーの官能性の度合いは架橋の度合いを決定し、したがって硬化するインクの割合を決定する。オリゴマーは好ましくは多官能性であり、オリゴマーが1分子あたり平均して1つを超える反応性基を含有することを意味する。平均の官能性の度合いは好ましくは2〜6、最も好ましくは2である。このタイプの紫外線硬化性オリゴマーは当技術分野で周知である。オリゴマーは好ましくはビスフェノールA、ポリエステル、ポリエーテル、アミン修飾ポリエステル、アミン修飾ポリエーテル、またはウレタンに基づく。特に好ましいオリゴマーは、1つまたは複数の(メタ)アクリレート重合性基を含む。
【0048】
オリゴマーは、インクの総重量を基準として1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは3〜15重合%で含まれていてもよい。
【0049】
特に好ましい実施形態において、インクは単官能性(メタ)アクリレートモノマー(例えば上記で記載したものなど);N−ビニルアミドおよび/またはN−(メタ)アクリロイルアミン(例えば上記で記載したものなど);少なくとも1つの多官能性(メタ)アクリレート(例えば上記で記載したものなど);および紫外線硬化性オリゴマー(例えば上記で記載したものなど)を含む。最も好ましくは、インクは単官能性アクリレートモノマー、N−ビニルアミド、少なくとも1つの多官能性アクリレート、および紫外線硬化性オリゴマーを含む。
【0050】
好ましいモノマーの組合せは、少なくとも1つの多官能性アクリレートモノマー、好ましくはエトキシ化トリアクリル酸トリメチロールプロパン、プロポキシ化ジアクリル酸ネオペンチルグリコール、またはそれらの混合物と合わせた、THFA/NVC、IBOA/NVC、PEA/NVCCTFA/NVC、IBOA/ACMO、およびIBOA/NVPである。特に好ましい例としては、アクリル酸フェノキシエチル、NVC、および少なくとも1つの多官能性アクリレートモノマー;最も好ましくはアクリル酸フェノキシエチル、NVC、およびエトキシ化トリアクリル酸トリメチロールプロパン、および/またはプロポキシ化ジアクリル酸ネオペンチルグリコールが挙げられる。
【0051】
本発明の方法で使用されるインクは、インクの液体媒体に溶解または分散されてもよい着色剤も含む。着色剤は、当業者に既知と思われる幅広い範囲の適切な着色剤のうち、任意のものであってもよい。好ましくは着色剤は、当技術分野で既知のタイプの分散可能な顔料であり、例えばPaliotol(BASF plcより入手可能)、Cinquasia、Irgalite(共にCiba Speciality Chemicalsより入手可能)、およびHostaperm(Clariant UKより入手可能)などの商標名で市販されている。顔料は、例えばPigment Yellow 13、Pigment Yellow 83、Pigment Red 9、Pigment Red 184、Pigment Blue 15:3、Pigment Green 7、Pigment Violet 19、Pigment Black 7などの、任意の所望の色であってもよい。特に有用なのは、黒色、および三色プロセス印刷に必要な色である。顔料の混合物も使用してもよい。
【0052】
存在する顔料の全体の割合は、好ましくはインクの総重量を基準として0.5〜15重量%、より好ましくは1〜5重量%である。
【0053】
インクは、紫外線照射下で硬化性材料の重合を開始させる光開始剤も含む。好ましいのは、照射によってフリーラジカルを生成する光開始剤(フリーラジカル光開始剤)、例えばベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、またはそれらの混合物などである。そのような光開始剤は既知であり、例えばIrgacure、Darocur(Ciba製)、およびLucerin(BASF製)の商標名で市販されている。
【0054】
単独の光開始剤を使用できるが、異なる光開始剤の混合物に基づく系が好ましい。
【0055】
本発明の方法はインクを2段階で硬化させる:部分的硬化のステップはインクを基材に接着させドットの広がりを防ぎ、第2の硬化ステップは表面硬化をもたらす。部分的硬化はLED光源により生じる紫外線に露光することにより実現され、第2の硬化ステップはフラッシュランプに露光することにより実現される。したがって本発明のインクは好ましくは、LED光源の紫外線出力およびフラッシュランプの紫外線出力に応答するように特に合わせて調整されている光開始剤系を含み、この光開始剤系は硬化されるインク膜において貫通硬化および表面硬化の良好なバランスを確保する。
【0056】
LED光源の狭いスペクトル範囲は、光開始剤系のチューニングが中圧水銀ランプなどのより広い出力の光源におけるよりも重要となり得ることを意味する。市販の開始剤の大部分は、水銀のスペクトルの主要ラインで吸収するように設計されている。より広いスペクトルの発光極大ピークは、開始剤の吸収に重なることをはるかに容易にする。それに比べて、LED光源からの出力は極大周辺の非常に狭いバンド(典型的には15nm幅)に中心が置かれている。このことは、インクを硬化させるエネルギーが非常に狭い波長窓に収集されなければならず、したがって吸収の効率を最大化させることが好ましいことを意味する。吸収を最大化させるために、光開始剤の混合物を使用するのが好ましい。光開始剤を使用されるLED光源の波長に合わせて調整する。
【0057】
本発明の一実施形態において、部分的硬化は365nmでピークの紫外線を放射するLED光源での露光によって実現される。この実施形態での使用に適した光開始剤は、Norrish I型およびNorrish II型光開始剤から選択される。Norrish I型ラジカル光開始剤は、化学線に露光するとNorrish I型反応を受ける光開始剤であり、Norrish II型ラジカル光開始剤は、化学線に露光するとNorrish II型反応を受ける光開始剤である。Norrish I型反応は、アシル−アルキルラジカル対(非環式カルボニル化合物に由来)またはアシル−アルキルビラジカル(環状カルボニル化合物に由来)を一次光分解生成物として生じさせる、励起されたカルボニル化合物のα開裂として、IUPACにより定義される。Norrish II型反応は、1,4−ビラジカルを一次光分解生成物として生成させる、励起されたカルボニル化合物による光化学的なγ−水素の引き抜きとして、IUPACにより定義される。適切な開始剤の非制限的な例は以下の通りである:
I型:2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(Irgacure 907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1(Irgacure 369)、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、(Irgacure 379)。
II型 イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン。
【0058】
II型開始剤の場合、適切な共開始剤の添加が必要とされる場合がある。典型的にはこれはアミンであり、2−ジメチルアミノ−エチルベンゾエートがその例である。
【0059】
本発明の別の実施形態において、部分的硬化は395または400nmの紫外線を放射するLED光源での露光によって実現される。この実施形態での使用に適した光開始剤としては、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド、エチル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィネート、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、およびイソプロピルチオキサントンが挙げられる。
【0060】
本発明の別の実施形態において、部分的硬化は405nmの紫外線を放射するLED光源での露光によって実現される。この実施形態での使用に適した光開始剤としては、
I型 ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド
II型 カンファーキノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン
から選択される、Norrish I型およびNorrish II型光開始剤が挙げられる。
【0061】
前述の通り、II型開始剤の場合、2−ジメチルアミノ−エチルベンゾエートなどの適切な共開始剤の添加が必要とされる場合がある。
【0062】
キセノンフラッシュランプのスペクトル出力はかなり広く、300nmから可視範囲までにわたる。したがって300nmを超える波長に応答する光開始剤は、キセノンフラッシュランプから放射される紫外線への応答に適している。非制限的な例としては、Irgacure 369、Irgacure 379、ビス(2,6ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド、エチル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィネート、および1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(Irgacure 2959)が挙げられる。
【0063】
本発明の好ましいインクは、紫外線硬化性モノマー若しくはオリゴマー、またはそれらの混合物、着色剤、および以下のうち1つから選択される光開始剤系を含む。
a)2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントンまたは2−クロロチオキサントンのうち1つまたは複数;および
ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド、エチル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィネートまたは1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンのうちの1つ;
b)ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド、エチル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィネート、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドまたはイソプロピルチオキサントン;および1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンのうちの1つまたは複数;または
c)ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、カンホルキノンまたは1−フェニル−1,2−プロパンジオン;および1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンのうちの1つまたは複数。
【0064】
本発明の特に好ましいインクは、紫外線硬化性モノマー若しくはオリゴマー、またはそれらの混合物、着色剤、および以下のうちの1つから選択される光開始剤混合物を含む。
a)2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、または2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン;および1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンのうちの1つまたは複数;
b)ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドまたはイソプロピルチオキサントン;および1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンのうちの1つまたは複数:または
c)ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、カンホルキノンまたは1−フェニル−1,2−プロパンジオン;および1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンのうちの1つまたは複数。
【0065】
上記のa)のもとで挙げられる光開始剤系は、365nmのLED光源およびキセノンフラッシュランプにおける使用に合わせて調整されており、b)のもとでの系は395nmまたは400nmLED光源およびキセノンフラッシュランプにおける使用に合わせて調整されており、c)のもとでの系は405nmLED光源およびキセノンフラッシュランプにおける使用に合わせて調整されている。
【0066】
本発明の特に好ましいインクは、紫外線硬化性モノマー若しくはオリゴマー、またはそれらの混合物、着色剤、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、イソプロピルチオキサントン、および1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンを含み、395nmまたは400nmのLED光源およびキセノンフラッシュランプにおける使用に合わせて調整されている。
【0067】
本発明のインクは主に硬化によって、すなわち上記で論じたような存在するモノマーの重合によって乾燥し、したがって硬化性インクである。したがって、そのようなインクはインクの乾燥を行うのに水または揮発性有機溶媒の存在を必要としないが、そのような成分の存在を許容してもよい。したがって、本発明のインクは好ましくは実質的に水および揮発性有機溶媒を含まない。しかし、例えば市販の顔料分散物の一部として存在する微量の揮発性有機溶媒、または空気からの吸収により必然的に存在する微量の水は、それらが硬化速度に悪影響を及ぼさないのであれば、インク中で許容してもよい。
【0068】
特性または性能を改善するための、当技術分野で既知のタイプの他の成分がインク中に存在してもよい。これらの成分は、例えば界面活性剤、消泡剤、分散剤、光開始剤のための相乗作用物質、熱または光による劣化に対する安定化剤、付香剤(reodorant)、流動助剤またはスリップ助剤、殺生物剤、および同定トレーサー(identifying tracer)であってもよい。
【0069】
このインクは圧電型ドロップオンデマンドインクジェット印刷に特に適している。適切な基材としては、スチレン、PolyCarb(ポリカーボネート)、BannerPVC(PVC)、およびVIVAK(改質ポリエチレンテレフタレートグリコール(polyethylene terephthalate glycol modified))が挙げられる。インクはインクジェット印刷による塗布に適しているのが好ましい。
【0070】
本発明は、本発明の方法における使用に適合された印刷装置、および本発明の方法における使用に適合されたインクを提供する。本発明の印刷装置およびインクの特徴は、上記の議論において述べられている。
【0071】
本発明のインクジェット用インクは、望ましい低い粘度、すなわち25℃で100mPas以下、好ましくは50mPas以下、最も好ましくは25mPas以下を示す(ただしノズルを通って噴出された際、多くの場合約40℃まで噴出温度を上昇させる)。粘度は、サーモスタット制御のカップおよびスピンドル装置を取り付けたBrookfield粘度計、例えばULAスピンドルおよびカップ装置を取り付けたLDV1+モデルなどを用いて、25℃、20rpmのスピンドル速度にて測定することができる。
【0072】
本発明はさらに1セットのインクジェット用インクを提供し、ここでセット中の1つまたは複数のインクが本発明のインクジェット用インクである。好ましくはインクジェット用インクセット中のすべてのインクが本発明のインクである。本発明は、本明細書で定義されるインクジェット用インクを収容するカートリッジも提供する。カートリッジはインク容器と、インクジェットプリンターとの接続に適したインク送達ポートとを含む。
【0073】
本発明は、本発明のインクが印刷された基材も提供する。
【0074】
本発明のインクは、例えば高速水冷撹拌機による撹拌、または水平ビーズミルにおける粉砕などの、既知の方法によって調製してもよい。
【実施例】
【0075】
[実施例1]
以下の組成を有するシアン、イエロー、マゼンタ、および黒色のインクジェット用インク処方物を、所与の量(パーセンテージは重量により示され、インクの総重量を基準とする)で成分を混合することによって調製した。
【0076】
【表1】

【0077】
評価
220ミクロンの光沢PVC基材上にno.2Kバーを用いてインクを引き、12ミクロンのウェット膜を被着させた。次いでFusion UV systems incのコンベヤー乾燥機DVS99 OGEに取り付けられた4W/cm Phoseon RX Starfire Max 150 395nm LEDを用いて、インク膜を部分硬化させた。LEDと基材との間の間隔は6mmに設定した。乾燥機上の従来の水銀ランプのスイッチを切り、ベルトのスピードを毎分15メートルに設定した。それぞれの膜を、インク膜がちょうど基材へ接着される時点まで(耐スクラッチ性により評価される)部分硬化させる。硬化の度合いは、LEDデバイスの電力スループットの割合を0%から100%まで5%きざみで変化させることによって制御した。次いで部分硬化した印刷物をキセノンフラッシュランプ下に置き、粘着性のない膜に達するのに必要なフラッシュの回数を測定した(指をインク表面へ押しつけることによって評価される)。結果を表2に示す。
【0078】
【表2】

【0079】
上記のシアンインクを上記のように引き、キセノンフラッシュランプのみによって硬化させた(3回フラッシュ)。インク膜の表面は乾燥していたが、基材へのスクラッチ接着性は不十分であった。部分硬化した膜を、毎分15メートルに設定されたベルトスピード、および20%のLED電力スループットにおいて、次いで上記のLED光源を用いて硬化させた。露光に続いて接着性を再び評価した。膜は優れた耐スクラッチ性を有することが分かり、貫通硬化および接着性の実現においてはLED光源が鍵となり、表面硬化を実現するのにキセノンフラッシュが必要であることが裏付けられた。
【0080】
[実施例2]
表3は、実施例1で提供される黒色インク、および光開始剤系を変更させた第2の黒色インクの組成を示す(パーセンテージは重量により示され、インクの総重量を基準とする)。
【0081】
【表3】

【0082】
220ミクロンの光沢PVC上にno.2Kバー(12ミクロン)を用いてインクを引いた。1個の80W/cm中圧水銀ランプを備えたコンベヤー乾燥機について、硬化を評価した。貫通硬化および表面硬化を得るのに必要な紫外線量を記録した。表面硬化の度合いはインクの表面を指で押すことによって評価し、貫通硬化は爪によるスクラッチによって評価した。完全な表面硬化は表面の粘着性がない膜をもたらし、完全な貫通硬化は爪によってはがすことができない膜をもたらした。Fusion UV systems incのコンベヤー乾燥機DVS99 OGEに取り付けられた4W/cm Phoseon RX Starfire Max 150 395 nm LED光源を含むLED硬化装置についても、インクを評価した。LEDとインクとの間の間隔は6mmに設定した。乾燥機上の従来の水銀ランプのスイッチを切り、ベルトスピードを毎分15メートルに設定した。貫通硬化を得るのに必要なLED電力のパーセンテージを記録した。結果を表3に示す。
【0083】
【表4】

【0084】
上記の結果から分かるように、実施例1のインクはLEDランプ下での硬化効率がより高く、貫通硬化を得るのに実施例2の285ml/cmと比較して162mJ/cmしか必要としない。しかし水銀ランプによって乾燥させる場合、硬化効率においてわずかな差しか見られない。実際には、組成物1はわずかに効率が低いことが分かった。
【0085】
上記の結果は、光開始剤を慎重に選択することによって、LED光源からの紫外線の吸収を最大化させることができ、これはLED硬化ステップの効率を向上させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化性インクを基材へ塗布するステップと;
インクをLED光源からの紫外線に露光することによってインクを部分硬化させるステップと;
部分硬化したインクをフラッシュランプからの紫外線に露光するステップと
を含む方法。
【請求項2】
フラッシュランプがキセノンフラッシュランプまたはクリプトンフラッシュランプである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
LED光源が、250〜450nm、好ましくは365nm、395nm、400nm、または405nmのピーク照射線を放射する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
部分硬化ステップの間にインクに供給される紫外線量が、10〜300mJ/cm、好ましくは50〜250mJ/cm、より好ましくは75〜200mJ/cmである、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
LED光源が、最大出力の90%以下、好ましくは65%以下、最も好ましくは50%以下で紫外線を放射する、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
インクが、インクジェットプリンターを用いて基材へ塗布されるインクジェット用インクである、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
硬化ステップの間に不活性環境を提供しない、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
紫外線硬化性インクが、紫外線硬化性モノマー若しくはオリゴマー、またはそれらの混合物;光開始剤、および着色剤を含む、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
紫外線硬化性インクがインクジェット用インクである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
インクが、単官能性(メタ)アクリレートモノマー、多官能性(メタ)アクリレートモノマー、またはそれらの組合せを含む、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
インクが、インクの総重量を基準として1〜90重量%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは20〜60重量%、最も好ましくは30〜50重量%の単官能性(メタ)アクリレートモノマーを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
インクが、インクの総重量を基準として1〜90重量%、好ましくは2〜30重量%、より好ましくは5〜20%の多官能性(メタ)アクリレートモノマーを含む、請求項10または請求項11に記載の方法。
【請求項13】
インクがN−ビニルアミドおよび/またはN−アクリロイルアミンを含む、請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
インクが、インクの総重量を基準として3〜50重量%、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%のN−ビニルアミドおよび/またはN−アクリロイルアミンを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
インクが、インクの総重量を基準として1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは3〜15重量%のオリゴマーを含む、請求項8から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
インクが、単官能性(メタ)アクリレートモノマー、N−ビニルアミド、および/またはN−(メタ)アクリロイルアミン、少なくとも1つの多官能性(メタ)アクリレート、および紫外線硬化性オリゴマーを含む、請求項8から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
インクが、少なくとも1つの多官能性アクリレートモノマーと共にTHFA/NVC、IBOA/NVC、PEA/NVC、CTFA/NVC、IBOA/ACMO、またはIBOA/NVPを含む、請求項8から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
インクが、アクリル酸フェノキシエチル、NVC、および少なくとも1つの多官能性アクリレートモノマーを含む、請求項8から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
光開始剤が紫外線での照射によってフリーラジカルを生成する、請求項8から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
光開始剤が、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(Irgacure 907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1(Irgacure 369)、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1ブタノン、(Irgacure 379)、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド、エチル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィネート、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、カンファーキノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン、および1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(Irgacure 2959)のうちの1つまたは複数から選択される、請求項8から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
光開始剤が、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントンまたは2−クロロチオキサントンのうちの1つまたは複数、および
ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド、エチル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィネートまたは1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンのうちの1つを含み、LED光源の波長分布におけるピークが365nmである、請求項8から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
光開始剤が、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド、エチル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィネート、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドまたはイソプロピルチオキサントン;および1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンのうちの1つまたは複数を含み、LED光源の波長分布におけるピークが395nmまたは400nmである、請求項8から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
光開始剤が、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、カンホルキノンまたは1−フェニル−1,2−プロパンジオン;および1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンのうちの1つまたは複数を含み、LED光源の波長分布におけるピークが405nmである、請求項8から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
光開始剤が、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、イソプロピルチオキサントンおよび1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンを含み、LED光源の波長分布におけるピークが395nmまたは400nmである、請求項8から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
紫外線硬化性インクを基材へ塗布する手段と;
紫外線を放射することができるLED光源と;
フラッシュランプと
を含む印刷装置。
【請求項26】
フラッシュランプがキセノンフラッシュランプまたはクリプトンフラッシュランプである、請求項25に記載の印刷装置。
【請求項27】
基材へ塗布されたインクを、LED光源からの紫外線に露光した後、フラッシュランプからの紫外線に露光するようにフラッシュランプを配置する、請求項26に記載の印刷装置。
【請求項28】
紫外線硬化性インクを基材へ塗布する手段がインクジェットプリンターである、請求項26または請求項27に記載の印刷装置。
【請求項29】
インクジェットプリンターがプリントヘッドを含み、LED光源がインクジェット印刷の間にプリントヘッドと共に動くように配置されている、請求項28に記載の印刷装置。
【請求項30】
プリントヘッドおよびLED光源が、印刷の間に基材を横切って動くことができるプリンターキャリッジ上に配置されている、請求項28に記載の印刷装置。
【請求項31】
プリントヘッドに隣接して配置されている1つのLED光源、またはプリントヘッドの両側に設置されている2つのLED光源を含む、請求項29または請求項30に記載の印刷装置。
【請求項32】
フラッシュランプが静止しており、プリントヘッドの下流に配置されている、請求項29から31のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項33】
2つまたはそれを超えるフラッシュランプを含む、請求項26から32のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項34】
請求項1から25のいずれか一項に記載の方法における、請求項26から33のいずれか一項に記載の印刷装置の使用。
【請求項35】
請求項22から25のいずれか一項に記載の紫外線硬化性インク。
【請求項36】
インクジェット用インクである、請求項35に記載の紫外線硬化性インク。
【請求項37】
インク容器と、インク送達ポートと、請求項35または36に記載のインクジェット用インクとを含むカートリッジ。
【請求項38】
請求項35または36に記載のインクが印刷された基材。

【図1】
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【公表番号】特表2012−530632(P2012−530632A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516866(P2012−516866)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051053
【国際公開番号】WO2010/150023
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(500007897)セリコル リミテッド (15)
【Fターム(参考)】