説明

印刷構造

【課題】間欠印刷層を重ね印刷した際の位置ずれを吸収し、インクが不要な領域を確保できる印刷構造を提供すること。
【解決手段】波長透過特性の異なる複数の印刷層110〜150は、光通過範囲Hに対応する領域にインクがない部分を有することで間欠状のインクの配置となる間欠印刷層140,140aを複数有し、これらの複数の間欠印刷層140,140aを重ね印刷する印刷構造であって、所定回数以降に重ね印刷する間欠印刷層(2層目のシャドー層)140aは、光通過範囲Hよりも、インクがない部分の面積を拡大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクがない部分を有する間欠印刷層に、さらに間欠印刷層を重ね印刷する印刷構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、同一投光面に波長の異なる二つの光源の光を切り換えて投光し、異なる表示を切り換えて表示する可変表示において、透過特性の異なるインクや、透過特性が同一のインクを適宜の部分に重ね印刷する印刷構造を適用している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-256996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の印刷構造では、インクが不要な光通過範囲に対応する領域にインクがない部分を有することで間欠状のインクの配置となる間欠印刷層を複数有し、これらの複数の間欠印刷層を重ね印刷することで所望の形状を適宜発光表示させていた。
【0005】
しかしながら、間欠印刷層を重ね印刷する多層構造にすると、必然的に印刷回数が増加する。そして、印刷回数の増加に比例して印刷位置の精度が低下し、本来ではインクが不要な領域にインクがはみ出してしまう、いわゆる位置ずれが生じるといった問題が発生していた。
【0006】
そこで、この発明は、間欠印刷層を重ね印刷した際の位置ずれを吸収し、インクが不要な領域を確保できる印刷構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、この発明は、波長透過特性の異なる複数の印刷層を有する透光性のあるシートに、波長の異なる複数の光源の光を切り換えて投光し、同じ位置で異なる複数の表示を切り換えて行う可変表示において、
前記複数の印刷層は、光通過範囲に対応する領域にインクがない部分を有することで、間欠状のインクの配置となる間欠印刷層を複数有し、該複数の間欠印刷層を重ね印刷する印刷構造であって、
所定回数以降に重ね印刷する間欠印刷層は、前記インクがない部分の面積を、前記光通過範囲よりも拡大することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、所定回数以降に重ね印刷する間欠印刷層では、インクがない部分の面積が光通過範囲よりも拡大されるので、印刷回数の増加に伴って印刷位置の精度が低下しても、光通過範囲にインクがはみ出てしまうことを防止できる。
すなわち、インクがない部分の面積を光通過範囲より拡大することで、印刷位置がずれても、本来インクが不要な領域である光通過範囲にインクが印刷されにくくなる。このため、拡大したインクがない部分によって、インク部分の位置ずれを吸収でき、光通過範囲(インクが不要な領域)を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1の可変表示構造の正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】実施例1の各波長光の波長特性と青色インク層の光透過特性を示すグラフである。
【図4】実施例1の第1赤色インク層と第2赤色インク層の光透過特性を示すグラフである。
【図5】実施例1の調光層の光透過特性を示すグラフである。
【図6】実施例1の印刷構造において、2層目のシャドー層の印刷位置がずれた状態を示す説明図である。
【図7】実施例1の可変表示構造において、赤色LED点灯時の説明図である。
【図8】実施例1の可変表示構造において、青色LED点灯時の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の印刷構造を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の可変表示構造の正面図である。図2は、図1のA−A断面図である。図3は、実施例1の各波長光の波長特性と青色インク層の光透過特性を示すグラフである。図4は、実施例1の第1赤色インク層と第2赤色インク層の光透過特性を示すグラフである。
【0012】
実施例1の可変表示構造は、投光領域1に、文字「N」を表す第1の形状部10と、文字「F」を表す第2の形状部20と、第1の形状部10と第2形状部20の背景となる背景部30と、を備えている。第1の形状部10は、第2の形状部20と重なる部分である重複部40と、第2の形状部20と重ならない部分である第1単色部50と、を有している。第2の形状部20は、第1の形状部10と重なる部分である重複部40と、第1の形状部10と重ならない部分である第2単色部60と、を有している。
【0013】
可変表示構造の背面側には、第1の色として赤色に対応する波長光70(以下「赤色波長光70」という)を照射する赤色LED(第1光源)71と、第2の色として青色に対応する波長光80(以下「青色波長光80」という)を照射する青色LED(第2光源)81と、を設ける。ここで、赤色波長光70は、発光ピークを長波長領域(例えば603nm)に有する波長特性を有し、青色波長光80は、発光ピークを短波長領域(例えば470nm)に有する波長特性を有する(図3参照)。
【0014】
そして、この可変表示構造は、重複印刷層110、第1赤色インク層120、第2赤色インク層121、青色インク層130、シャドー層140,140a、調光層150、蛍光フィルタ層160の各印刷層を、透光性のあるPCシート100上に積層することで構成されている。
【0015】
重複調光層110は、赤色波長光70及び青色波長光80を透過する印刷層であり、重複部40に対応する領域にのみ印刷されている。これにより、この重複調光層110は、背景部30、第1単色部50、第2単色部60に対応する領域にインクがない部分を有する間欠印刷層となる。
【0016】
第1赤色インク層120は、赤色LED71からの赤色波長光70を透過し、青色LED81からの青色波長光80を減衰する印刷層であり、第1単色部50及び背景部30に対応する領域に印刷されている。これにより、この第1赤色インク層120は、重複部40、第2単色部60に対応する領域にインクがない部分を有する間欠印刷層となる。
【0017】
第2赤色インク層121は、赤色LED71からの赤色波長光70をし、青色LED81からの青色波長光80を減衰する印刷層であり、第1単色部50及び背景部30に対応する領域に印刷されている。これにより、この第1赤色インク層120は、重複部40、第2単色部60に対応する領域にインクがない部分を有する間欠印刷層となる。
【0018】
ここで、第1赤色インク層120は、図4に示すように、赤色LED71の発光ピークである606nm付近の波長領域に透過率ピーク(約100%)を有し、この透過率ピーク前後の波長領域では、透過率がほぼ0%となっている。また、第2赤色インク層121は、図4に示すように、赤色LED71の発光ピークである606nm付近の波長領域では、透過率は約85%となり、この606nm付近の波長領域から波長が長くなるに連れて、次第に透過率ピークが上昇する透過特性を有している。すなわち、この第2赤色インク層121は、赤色LED71の発光ピークよりも長い波長領域において透過率ピークを有している。
これにより、第2赤色インク層121は、第1赤色インク層120よりも比視感度が低いものとなっている。
【0019】
青色インク層130は、青色LED81からの青色波長光80を透過し、赤色LED71からの赤色波長光71を減衰する印刷層であり、第2単色部60及び背景部30に対応する領域に印刷されている。これにより、この青色インク層130は、重複部40、第1単色部50に対応する領域にインクがない部分を有する間欠印刷層となる。
なお、図3に青色インク層130の光透過特性を示す。この青色インク層130は、赤色波長光70の発光ピークである606nmの波長光をほぼ100%減衰すると共に、青色波長光80の発光ピークである470nmの波長光はほとんど透過することができる。
【0020】
シャドー層140,140aは、赤色波長光70及び青色波長光80を減衰してほとんど透過させない印刷層、いわゆる遮光層であり、背景部30に対応する位置に印刷されている。これにより、このシャドー層140,140aは、重複部40、第1単色部50、第2単色部60に対応する領域にインクがない部分を有する間欠印刷層となる。
【0021】
調光層150は、赤色LED71からの赤色波長光70を投光したときに、第1単色部50を透過する光の透過率を視認満足閾値以上の値に保持し、青色LED81からの青色波長光80を投光したときに、第1単色部50を透過する光の透過率を視認不可閾値以下の値に減衰する印刷層である。この調光層150は、投光領域1の全面、すなわち第1の形状部10と第2の形状部20と背景部30との全てに対応する位置に印刷されている。これにより、この調光層150は、インクが一面に有することで連続したインクの配置になるベタ印刷層となる。
なお、「視認満足閾値」とは、目視した際に、車載用の表示装置としての表示機能を満足する程度の視認性を確保できる限界値をいう。また、「視認不可閾値」とは、目視した際に、車載用の表示装置として視認できない程度の限界値をいう。なお、これらの値は任意に設定できる。図5に調光層150の光透過特性を示す。ここでは、調光層150の光透過特性は、赤色LED71の発光ピークである606nmの波長の透過率を約40%に設定し、青色LED81の発光ピークである470nmの波長の透過率を約95%に設定している。
【0022】
蛍光フィルタ層160は、YAGシートとも呼ばれるものであり、赤色LED71からの赤色波長光70を減衰すると共に、青色LED81からの青色波長光80を透過させる際に白色に変換する印刷層である。この蛍光フィルタ層160は、投光領域1の全面、すなわち第1の形状部10と第2の形状部20と背景部30との全てに対応する位置に印刷されている。これにより、この蛍光フィルタ層160は、インクが一面に有することで連続したインクの配置になるベタ印刷層となる。
【0023】
そして、各層110〜150は、熱転写印刷工法によってPETフィルム101へ順次重ねて印刷した上で、PCシート100に熱転写印刷工法で転写され、その後、最上層となったPETフィルム101上に蛍光フィルタ層160を印刷するようになっている。なお、この蛍光フィルタ層160の上面は、消灯時に外光によって印刷パターンが見えてしまうことを防ぐために全体的に透光性が低くされた図示しないスモークレンズにより覆われている。
【0024】
ここで、「熱転写印刷工法」とは、耐熱性フィルムに、インクリボンに塗布されたインクをサーマルヘッドで加熱圧着して印画する工法であり、各層110〜150はインクリボンに予め塗布されている。
すなわち、PETフィルム101に、予め決められた印刷順で各層110〜150が塗布されたインクリボンを印刷していく。このとき、PETフィルム101及びサーマルヘッドの位置は固定され、インクリボンが移動することで所定の層が順次印刷されるようになっている。そして、最終層が印刷されたら、この最終層にPCシート100を重ね合わせて加熱圧着することで、PCシート100に転写される。
【0025】
各層110〜150のPETフィルム101への印刷順は、重複調光層110→調光層150→青色インク層130→第2赤色インク層121→青色インク層130→第1赤色インク層120→シャドー層140(1層目)→シャドー層140a(2層目)となっている。したがって、2層目のシャドー層140aでは、8回目の印刷となる。
【0026】
そして、この8回目に印刷される2層目のシャドー層140aは、7回目に印刷される1層目のシャドー層140よりもインクがない部分の面積が拡大されている。つまり、この2層目のシャドー層140aは、図2に示すように、投光された光をそのまま通過させるためにインクが不要な領域である光通過範囲Hよりも、インクがない部分の面積が拡大し、この光通過範囲Hの外周にインクがない部分Nを設けている。なお、1層目のシャドー層140及び2層目のシャドー層140aにおける光通過範囲Hは、重複部40、第1単色部50、第2単色部60に対応する領域である。
【0027】
このインクがない部分Nは、ここでは、光通過範囲Hの外周縁から0.1mmの範囲に設けている。
【0028】
次に、作用を説明する。
[印刷ずれ防止作用]
実施例1の印刷構造では、PETフィルム101に各印刷層110〜150を順次重ねて印刷していく。
【0029】
このとき、8回目に印刷される2層目のシャドー層140aでは、重複部40、第1単色部50、第2単色部60に対応する光通過範囲Hの外周にインクがない部分Nを設けることで、光通過範囲Hよりもインクがない部分の面積を拡大している。
【0030】
これにより、例えば、図6に示すように、印刷回数の増加に伴って印刷位置精度が低下し、8回目に印刷された2層目のシャドー層140aの印刷位置がずれた場合であっても、本来インクが不要な領域である光通過範囲H(重複部40、第1単色部50、第2単色部60に対応する領域)にインクがはみ出てしまうことはない。
つまり、拡大したインクがない部分Nによってインクの位置ずれを吸収でき、インクが不要な部分へのインクのはみ出しを防止できる。
【0031】
また、実施例1の印刷構造では、インクがない部分の面積を拡大した2層目のシャドー層140aの前に、7回目の印刷によって1層目のシャドー層140を印刷している。この1層目のシャドー層140は、2層目のシャドー層140aと同等の光透過特性を有すると共に、インクがない部分の面積を光通過範囲Hに対応する領域に設定している。つまり、この1層目のシャドー層140では、元々インクが不要な領域だけにインクがない部分を設けている。
【0032】
このため、この1層目のシャドー層140の後に印刷される2層目のシャドー層140aが、光透過範囲Hよりもインクがない部分の面積を拡大していても、1層目のシャドー層140により必要な意匠を担保することができる。
【0033】
そして、実施例1の印刷構造では、インクがない部分の面積が拡大された2層目のシャドー層140aは、赤色LED71及び青色LED81の光を共に減衰(遮光)する遮光層である。
【0034】
このため、インクがない部分の面積を拡大することで、光透過範囲Hの意匠性が低下しても、第1,第2赤色フィルタ120,121や青色フィルタ130によって第1の形状部10や第2の形状部20の意匠は担保される。したがって、インクのはみ出しを防止しつつ、表示部分の形状変化を抑制することができる。つまり、インクがない部分の面積が拡大された2層目のシャドー層140aが遮光層であることで、表示される形状に与える影響を抑制することができる。
【0035】
[可変表示作用]
(a)非表示状態
赤色LED71及び青色LED81のどちらも点灯しない場合では、図示しないスモークレンズにより外から内側への入光も、反射光も輝度と紫外線を抑制されるため、可変表示構造が外部から見えることも、第1,第2の形状部10,20が見えることもない。
【0036】
(b)第1の形状部表示状態
図5は、実施例1の可変表示構造において、赤色LED点灯時の説明図である。図6は、実施例1における蛍光フィルムを通過する赤色波長光を示す説明図である。
【0037】
実施例1において、第1の形状部10を表示するには、赤色LED71を点灯し、青色LED81を消灯する。
このとき、第1単色部50では、赤色波長光70は赤色インク層120を透過した後、調光層150を透過するため、赤色に発光する。このとき、調光層150における透過率は、視認満足閾値以上の値に保持される。
第2単色部60では、赤色波長光70は青色インク層130によって減衰されるため、青色インク層130を透過せず、表示に寄与しない。
重複部40では、赤色波長光70は調光層150を透過した後、重複調光層110を透過することで輝度が調節され、第1単色部50とほぼ同じ輝度で赤色に発光する。
背景部30では、赤色波長光70は透過しないため、表示に寄与しない。
【0038】
さらに、第1単色部50及び重複部40を透過した赤色波長光70は、第1の形状部10を表示させつつ、蛍光フィルタ層160を透過する。このとき、蛍光フィルタ層160では、赤色波長光70の光量が、赤色LED70から投光された光量と比べて3分の1程度に低減するが、色は変換されずそのまま透過する。
【0039】
これにより、第1の形状部10、つまり図5に示す「N」が赤く表示されることとなる。
【0040】
(c) 第2の形状部表示状態
図7は、実施例1の可変表示構造において、青色LED点灯時の説明図である。図8は、実施例1における蛍光フィルムを通過する青色波長光を示す説明図である。
【0041】
実施例1において、第2の形状部20を表示するには、赤色LED71を消灯し、青色LED81を点灯する。
このとき、第1単色部50では、青色波長光80は赤色インク層120によって減衰された後、調光層150によってさらに減衰され、表示に寄与しない。このとき、調光層150における透過率は、視認不可閾値以下の値に減衰され、青色波長光80に含まれる僅かな長波長領域の光も視認できない程度に減衰される。
第2単色部60では、青色波長光80は青色インク層130を透過した後、調光層150を透過するため、青色に発光する。このとき、調光層150における透過率は、約95%であるのでほとんど減衰しないで透過する。
重複部40では、青色波長光80は調光層150を透過した後、重複調光層110を透過することで輝度が調節され、第2単色部60とほぼ同じ輝度で青色に発光する。
背景部30では、青色波長光80は透過しないため、表示に寄与しない。
【0042】
さらに、第2単色部60及び重複部40を透過した青色波長光80は、第2の形状部10を表示させつつ、蛍光フィルタ層160を透過する。このとき、蛍光フィルタ層160により、青色光と黄色光の混在したものとなって白色光となる。
【0043】
これにより、第2の形状部20、つまり図7に示す「F」が白く表示されることとなる。
[透け見え防止作用]
実施例1の印刷構造では、第1単色部50に対応する位置に、比視感度が比較的低い第2赤色インク層121と、比視感度が比較的高い第1赤色インク層120とを重ねて印刷している。
【0044】
このため、比視感度が比較的高い第1赤色インク層120を2層重ねた場合よりも、第1単色部50の比視感度を下げることができる。この結果、青色LED81を点灯した時に、第1単色部50を透過する光を見えにくくでき、透け見えを抑制することができる。
【0045】
次に、効果を説明する。
実施例1の印刷構造にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0046】
(1) 波長透過特性の異なる複数の印刷層110〜150を有する透光性のあるシート(PETフィルム)101に、波長の異なる複数の光源(赤色LED71,青色LED81)の光を切り換えて投光し、同じ位置で異なる複数の表示を切り換えて行う可変表示において、前記複数の印刷層110〜150は、光通過範囲に対応する領域にインクがない部分を有することで間欠状のインクの配置となる間欠印刷層140,140aを複数有し、該複数の間欠印刷層140,140aを重ね印刷する印刷構造であって、
所定回数以降に重ね印刷する間欠印刷層(2層目のシャドー層)140aは、前記インクがない部分の面積を、前記光通過範囲Hよりも拡大する構成とした。
これにより、間欠印刷層を重ね印刷した際の位置ずれを吸収し、インクが不要な領域を確保できる。
【0047】
(2) 前記インクがない部分の面積を拡大した間欠印刷層(2層目のシャドー層)140aは、同等の波長透過特性を有すると共に、前記インクがない部分を前記光通過範囲Hに対応する領域に設定した間欠印刷層(1層目のシャドー層)140よりも、後に印刷する構成とした。
これにより、インクがない部分を前記光通過範囲Hに対応する領域に設定した間欠印刷層(1層目のシャドー層)140で必要な意匠を担保することができ、表示形状の変形を抑制することができる。
【0048】
(3) 前記インクがない部分の面積を拡大した間欠印刷層(2層目のシャドー層)140aは、前記複数の光源(赤色LED71,青色LED81)の光を全て遮断する遮光層である構成とした。
これにより、インクのはみ出しを防止しつつ、表示部分の形状変化を抑制することができる。
【0049】
以上、本発明の印刷構造を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0050】
実施例1の印刷構造では、8回目に印刷される2層目のシャドー層140aにおいて、インクがない部分の面積を拡大したが、これに限らない。相対的な印刷位置ずれが、任意に定める範囲以上になる印刷回数以降の印刷層において、インクがない部分の面積を拡大すればよい。すなわち、7回目以降に印刷される印刷層において、インクがない部分の面積を拡大しても良い。
【0051】
なお、この位置ずれ範囲は、例えば相対的な位置ずれが±0.1mm以上の範囲であり、この場合には、拡大範囲も光通過範囲Hの外周縁から0.1mmの範囲となる。
【0052】
そして、例えば、総印刷回数が10回であり、8回目の印刷で相対的な位置ずれが±0.1mm以上となる場合では、8回目以降の印刷層全てにおいて、インクがない部分の面積を拡大する。これにより、印刷回数の増加に伴って印刷位置精度が低下しても、印刷位置ずれを吸収することができる。
【0053】
また、インクがない部分の面積の拡大割合を、印刷回数の増加に比例して増加しても良い。すなわち、総印刷回数が10回であり、8回目の印刷で相対的な位置ずれが±0.1mm以上となる場合では、8回目以降の印刷層全てにおいてインクがない部分の面積を拡大するが、8回目の印刷層では、拡大範囲を光通過範囲Hの外周縁から0.1mmの範囲とし、9回目の印刷層では、拡大範囲を光通過範囲Hの外周縁から0.12mmの範囲とし、10回目の印刷層では、拡大範囲を光通過範囲Hの外周縁から0.15mmの範囲としてもよい。
【0054】
この場合、印刷ずれ量に応じた拡大面積になり、表示形状の変形をさらに抑制することができる。
【0055】
さらに、実施例1の印刷構造では、比視感度の比較的低い第2赤色インク層121が、第1赤色インク層120よりも外側(光源から離れた側)に位置しているが、逆でもよい。印刷層の配置順に限らず、赤色LED71の光の比視感度を低下することができる。
【0056】
また、実施例1の印刷構造では、第1赤色インク層120が赤色LED71の発光ピークの波長領域付近に透過率ピークを有し、第2赤色インク層121が赤色LED71の発光ピークの波長領域よりも長い波長領域に透過率ピークを有している。これは、二つの印刷層において、同一の光源からの光を透過しつつ、一方の比視感度を下げることを目的にしている。
このようにするには、光源の発光ピークが560nm以上のときには、一方の印刷層の透過ピークを光源の発光ピークよりも長い波長の領域に設定し、他方の印刷層の透過ピークを光源の発光ピーク付近の波長領域に設定する。また、光源の発光ピークが560nm以下のときには、一方の透過ピークを光源の発光ピークよりも短い波長の領域に設定し、他方の印刷層の透過ピークを光源の発光ピーク付近の波長領域に設定する。
なお、何れの場合においても、光源の光が著しく減衰することを防止するために、透過ピークが光源の発光ピークと一致していない一方の印刷層は、光源の発光ピークにおける透過率は約85%程度保持する必要がある。
【符号の説明】
【0057】
1 投光領域
30 背景部
40 重複部
50 第1単色部
60 第2単色部
70 赤色波長光
71 赤色LED(第1の光源)
80 青色波長光
81 青色LED(第2の光源)
110 重複調光層(間欠印刷層)
120 第1赤色インク層(間欠印刷層)
121 第2赤色インク層(間欠印刷層)
130 青色インク層(間欠印刷層)
140 1層目のシャドー層(間欠印刷層)
140a 2層目のシャドー層(間欠印刷層)
H 光通過範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長透過特性の異なる複数の印刷層を有する透光性のあるシートに、波長の異なる複数の光源の光を切り換えて投光し、同じ位置で異なる複数の表示を切り換えて行う可変表示において、
前記複数の印刷層は、光通過範囲に対応する領域にインクがない部分を有することで、間欠状のインクの配置となる間欠印刷層を複数有し、該複数の間欠印刷層を重ね印刷する印刷構造であって、
所定回数以降に重ね印刷する間欠印刷層は、前記インクがない部分の面積を、前記光通過範囲よりも拡大することを特徴とする印刷構造。
【請求項2】
請求項1に記載された印刷構造において、
前記インクがない部分の面積を拡大した間欠印刷層は、同等の波長透過特性を有すると共に、インクがない部分を前記光通過範囲に対応する領域に設定した間欠印刷層よりも、後に印刷することを特徴とする印刷構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された印刷構造において、
前記インクがない部分の面積を拡大した間欠印刷層は、前記複数の光源の光を全て遮断する遮光層であることを特徴とする印刷構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−180200(P2011−180200A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41686(P2010−41686)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】