説明

印刷版の製造方法

【課題】剥離印刷で高精細像を位置精度よく提供するための、低段差で撥インキ性材料表面にざらつきがない、印刷版の製造法を提供する。
【解決手段】平滑な仮支持基板上に親インキ性材料で像を形成し、ついで、親インキ性材料を埋めるように、撥インキ性材料を積層し、支持基板を順次積層後、仮支持基板をエッチングにより除去し、仮支持基板と接していた面を版面として使用する印刷版の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面平滑性が良好で、かつ高精細なパターンの寸法精度及び形状を向上させることができる印刷版の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示デバイス、センサー、色分解デバイス等にカラーフィルターが多用されている。このカラーフィルターの製造法としては、染色可能な樹脂、例えば天然のゼラチンやカゼインをパターニングし、そこに主に染料を用いて染色し、画素を得るという方法が採られていた。しかし、この方法で得た画素は、材料からの制約で耐熱性及び耐光性が低いという問題があった。
【0003】
そこで、近年、耐熱性及び耐光性を改良する目的で顔料を分散した感光材料を用いる方法(顔料分散法)が注目され、多くの検討が行われている。この方法によればカラーフィルターの製造法が簡略化され、得られたカラーフィルターも安定で、寿命の長いものになる。しかしながら、近年基板の大型化に伴い、顔料分散法で作製されるカラーフィルターは大型の露光機、現像装置、ベーク炉やこれらを設置するクリーンルームが必要で、設備投資も巨額なものになっている。
【0004】
また、この顔料分散法において、1m角以上の基板ではスピンコ−タで塗布することが困難である。そのため、スリットコータなどの塗布装置が用いられているが、塗膜の均一性の確保が難しいという問題がある。特に樹脂ブラックマトリックスを使用した場合の1色目、2色目、3色目や、薄膜の金属ブラックマトリックスを使用した場合の2色目、3色目は、段差のある基板面にレジストを塗布することになるので、均一性の確保が難しい。
【0005】
一方、カラーフィルターのコストダウンが強く要求され、上記のような露光機などの高価な設備を使用するフォトリソ法以外のカラーフィルターの製造法が望まれており、電着法、印刷法が提案されている。これらの中で印刷法が安価な製造法として着目されているが、この印刷法では表面平滑性が良好で、かつ高精細なパターン寸法及び形状を持つカラーフィルターを製造することは困難であった。
【0006】
これに対し、新規なオフセット印刷法(反転印刷法)が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。この反転印刷法は、均一な塗膜面や高精細なパターンを得ることが可能だが、位置合わせ精度が低く、大判の基板上への印刷で不都合がある。
【0007】
さらに改良された新規な印刷法(剥離印刷法)が提案されている(例えば、特許文献3参照)。この剥離印刷法は、位置合わせ精度での大判の基板上への印刷で大きな課題をもたないとされている。しかし、印刷像の膜厚が期待した厚みより薄くしか得られない場合があったり、像パターンのテーパー角が小さいといった理由で技術的に用途が限定されている。
【0008】
【特許文献1】特開平11−058921号公報
【特許文献2】特開2000−289320号公報
【特許文献3】特開2004−249696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記のような状況から、改良された新規な印刷法である剥離印刷法の用途が限定される要因である、印刷像の膜厚が期待した厚みより薄くしか得られない場合があったり、像パターンのテーパー角が小さいといった現象を、解決する手段を提供するものである。すなわち、期待した厚みの像を得たり、大きなテーパー角を得る手段を、版を新規な方法で製造することで提供するものである。すなわち、本発明は、剥離印刷で高精細像を位置精度よく提供するための、低段差で撥インキ性材料表面にざらつきがない、印刷版の製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記のような課題を解決するために鋭意検討した結果、剥離印刷等に使用する印刷版の撥インキ性材料と親インキ性材料の像で構成される表面を平坦にすることにより、像の厚みが期待した値となり、テーパー角の大きなパターンを得られると考察の上、表面が平坦な版の製法を発明し、印刷結果が、考察に合致することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち本発明は、以下の剥離印刷等に使用される印刷版の製造方法に関する。
1. 平滑面である仮支持基板上に親インキ性材料で像を形成し、ついで、親インキ性材料を埋めるように、撥インキ性材料を積層し、支持基板を順次積層後、仮支持基板を除去し、仮支持基板と接していた面を版面として使用する印刷版の製造法。
2. 親インキ性材料の像が、樹脂材料または無機フィラーを含有する樹脂材料を、加熱硬化した像、あるいは、金属材料の像である項1に記載の印刷版の製造法。
3. 撥インキ性材料が、積層後にシリコーンゴム層となる材料である項1または2に記載の印刷版の製造法。
4. 仮支持基板が、平滑面を有する金属体で、親インキ材料の接する面が平滑面である項1〜3いずれかに記載の印刷版の製造法。
5. 仮支持基板が、離型PETと金属膜の積層体で、親インキ材料の接する平滑面が金属膜である項1〜3いずれかに記載の印刷版の製造法。
6. 仮支持基板が、ガラスと金属膜の積層体で、親インキ材料の接する平滑面が金属膜である項1〜3いずれかに記載の印刷版の製造法。
7. 支持基板が、接着性の粘接着材料が塗布された支持基板である項1〜6いずれかに記載の印刷版の製造法。
8. 支持基板が、接着性の粘接着材料が塗布され、シリコーンゴムが積層された支持基板である項1〜6いずれかに記載の印刷版の製造法。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、印刷版を、新規な方法で製造することで提供するものである。さらに、本発明による版を用いて反転印刷や剥離印刷することで、期待した厚みの印刷像を得たり、大きなテーパー角を得ることができる。よって、本発明により、剥離印刷で高精細像を位置精度よく提供するための、低段差で撥インキ性材料表面にざらつきがない、印刷版の製造法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳述する。
先ず、本発明の製造方法で提供される版は、一般的に、反転印刷や剥離印刷法などの1μm〜10μm以下の高精細像が必要とされる高精細印刷に使用されるものである。
本発明の版の製造に用いる仮支持基板としては、表面が平滑である。表面の平滑性は、算術平均粗さRaが0.2μm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.1μm以下である。平滑性がないと、仮支持基板を除去した後に、仮支持基板のレプリカ形状をシリコーン等の撥インキ性材料表面が備えるため、撥インキ性材料表面の平滑性が損なわれ、剥離印刷時のインキの離型性が損なわれる。このため、版として機能しなくなる。
【0014】
本発明の版の製造に用いる仮支持基板の構成材料は、支持基板を積層後、最終的にエッチングによって除去できれば、特に限定されるものではない。好ましくは、シリコーン等の撥インキ性材料やレジスト等の親インキ性材料と接する平滑面が、エッチングで除去可能な金属で構成されているとよい。金属としては、銅、アルミニウム、クロム、銀、金、ニッケル、チタンなどやこれらの合金が上げられる。仮支持基板の構成材の除去にフッ酸を用いる場合、フッ酸からの撥インキ性材料の保護を兼ねるクロムや金が好ましい。また、複数種の金属を積層して構成してもよい。
【0015】
仮支持基板の構成に金属だけを単独で使用する場合、後工程の作業を容易にするため、板状とすることで仮支持機能を備えさせてもよい。しかし、厚すぎると、エッチングに時間を要し、後工程の作業性を悪化させる。適度な厚みとして、金属材質にもよるが50μm〜1000μmが好ましい。
【0016】
一方、仮支持基板に金属以外の材料を金属と合わせて構成してもよい。金属以外の材料としては、特に限定されない。平滑なガラスと金属の積層体を用いる場合、仮支持体の除去工程において、例えばフッ酸や、リン酸や過酸化水素水を含むフッ酸などでガラスを除去したのち、金属を除去すればよい。樹脂と金属の積層体を用いる場合、例えばあらかじめ平滑なPETなどの樹脂に、離型材を塗布して金属膜を積層しておき、仮支持体の除去工程において、樹脂を離型材界面で剥離した後、金属を除去すればよい。
【0017】
特に高精細像を印刷する場合は、版の像の位置精度が厳密に求められる。位置精度の要求が、半導体や表示装置の製造で使用されるフォトマスクと同等の場合、仮支持基板としては、ガラスやシリコンウェハを構成材料とすることが好ましい。ガラスやシリコンを仮支持基板とすると、フッ酸によって撥インキ性材料がおかされる場合があるので、この場合、保護を目的に、金属膜を平滑面に挿入し構成するほうが好ましい。なお、仮支持基板の構成材料にガラスを使用する場合、ガラスの種類は、フッ酸エッチングが容易である観点で、ソーダガラスが好ましい。むろん、ガラスと金属の界面に離型性の層をあらかじめ作っておき、フッ酸などを使わずに、ガラスを除去してもかまわない。
【0018】
半導体や表示装置の製造で使用されるフォトマスク並みの位置精度が求められない場合は、コストを優先する。仮支持基板の構成としては、例えばあらかじめ平滑なPETなどの樹脂に、離型材を塗布して金属膜を積層したものを用いてもよい。離型材が塗布されたPETは、離型材がシリコーン系であったり非シリコーン系であったり、複数種市販されており、特に限定されない。離型PETと金属の積層体を用いることで、樹脂の除去が容易になる。
【0019】
上述の通り、ガラスや樹脂などの他の部材と金属を積層するなら、仮支持機能を他の部材に備えさせることができるので、適度な厚みとしては、0.05μm〜50μmが好ましい。金属は、ガラスや樹脂などの他の部材を除去する工程で、撥インキ性材料を保護する目的を主として備えさせる。したがって、金属の製造法としては、ガラスや樹脂などの他の部材への真空蒸着、スパッタ、めっきが好ましい。
【0020】
金属を除去する際に使用するエッチャントは、金属の種類や、撥インキ性材料と親インキ性材料の耐性を鑑み決定する。例えば、クロムをエッチングする場合、特に限定されないが、硝酸第二セリウムアンモン溶液などを用いる。水酸化ナトリウムとフェリシアン化カリウムの水溶液を用いてもよい。アルミニウムをエッチングする場合、特に限定されないが、例えばリン酸などの酸を用いる。水酸化ナトリウム水溶液を用いてもよい。銅をエッチングする場合、特に限定されないが、例えば硫酸を用いてもよいし、ペルオキソ2硫酸アンモニウムを用いてもよい。
【0021】
仮支持基板の除去の前に、支持基板と仮支持基板のエッジから、エッチャントが進入し、版をおかすことないよう、事前にレジストや保護テープで保護をしてもよい。保護によって、面内の周囲エッジ部分に仮支持基板の残渣が残る場合は、周囲を切り落とし版を使用すればよい。
【0022】
本発明の版の製造に用いる親インキ性材料としては、親インキ性を備えていれば特に限定されないが、仮支持基板上で所望の像を容易に得られる材料であることが好ましい。像を容易に得られる親インキ性材料の例としては、市販のポジレジストやネガレジスト等の感光性材料が挙げられる。また、感光性材料を用いて公知の方法で非感光の樹脂や金属材料などの像を得てもよい。
【0023】
親インキ性材料に求められる他の特性として、耐摩耗性がある。耐摩耗性を向上するために、無機フィラーを含有させてもよい。また、耐摩耗性を向上させるため金属を親インキ性材料として用いてもよい。むろん金属を親インキ性材料として用いる場合は、仮支持基板の構成材料を除去する工程に耐える材料を選択する注意が必要である。
【0024】
親インキ性材料に含有させるフィラーは必須ではないが、例えば、シリカなどの無機物が挙げられる。含有させる方法としては、市販のコロイダルシリカを市販のレジストと混ぜておくことで容易に可能である。
【0025】
親インキ性材料に求められるもう一つの他の特性として、シリコーン等の撥インキ性材料との接着性が上げられる。撥インキ性材料との接着性を向上する手段として、親インキ性材料を塗布し像を形成する前に、接着性の処方を施す方法がある。具体的な接着性処方として、親インキ性材料の表面を粗化面を押し当てることなどにより、粗面化し、その後所望の像を形成する方法がある。また他の、接着性処方として、親インキ性材料の表面に接着剤を塗布し、その後、像を形成する方法がある。粗面化と接着剤塗布の両方を施しても問題ない。なお、親インキ性材料の像を形成してから接着剤を塗布すると、仮支持基板表面にも接着剤が塗布され、仮支持体除去後の版の機能面に接着剤が残る。このため、版としての機能が著しく劣化する場合があるので、像を形成後の接着剤塗布は避けることが望ましい。
【0026】
本発明の版の製造に用いる撥インキ性材料としては、撥インキ性を備えていれば特に限定されないが、製法上、液状で塗布でき、塗布後に硬化する材料が好ましい。また、表面エネルギーが、6〜30mN/mとなる材料が好ましい。具体的な材料としては、特に限定されないが、シリコーンがあげられる。シリコーンは、縮合型と付加型、UV硬化型に分けられるが、特に限定されない。工程の安定を考えれば、付加型やUV硬化型を使うのが好ましい。必要に応じ、シリコーンに接着剤や無機フィラーが付与されていてもよい。
【0027】
本発明の版の製造に用いる支持基板としては、撥インキ性材料と接着すれば、特に限定されない。接着性を向上するため、表面を粗面化したり、撥インキ性材料が硬化する前に貼りあわせてもよい。材料としては、ガラス、PETフィルム、金属板などがあげられるが、これに限定されない。例えば、撥インキ性材料と接着性がよいシリコーンを塗布済みのシートであってもよく、これに該当するものとして、印刷に使用されるブランケットがあたる。
【0028】
以下では、本発明で製造される版の、剥離印刷における印刷を、図1を用いて説明する。
剥離印刷は、版にインキを塗布する塗布工程と、版にインキ塗膜を介しブランケットを押し当て版からブランケットへ必要なインキ塗膜を像的に剥がし採る剥離工程と、ブランケット上のインキ塗膜に所望の基板を押し当てブランケットから基板にインキ塗膜を転写する転写工程からなる。転写工程の結果、基板にインキ塗膜の像が与えられる。さらに各工程を詳細に説明する。
【0029】
塗布工程では、インキを版に均一に塗布する必要がある。さらに版には、インキを均一に置く機能が求められる。しかし、従来使用されている東レ製PS版のように、版に段差があると、インキは、段差に従い、高いところから低いところへ流れてしまう。均一に流れれば大きな問題とならないが、図2に示すとおり、高いところが太い像と細い像が混在する場合、太い像の中心部の流れは僅かであるのに対し、細い像の流れ出は、著しく、面内均一に同じ厚みのインキ塗膜像を得ることができにくい上、像テーパ部のインキ流れでテーパー角が浅い問題が生じる。そこで、版の段差は小さい必要がある。本発明の製法による版は、仮支持基板によって規制された結果、図3に示すとおり、撥インキ性材料と親インキ性材料が、同一面高さにあるため、塗布後のレベリングで、局所的な流れ出が生じにくい。したがって、面内均一な厚みのインキ塗膜を提供できるメリットがある。
【0030】
次の剥離工程では、版の撥インキ性材料上に乗っているインキ塗膜をブランケットにうつし出し、親インキ性材料上に乗っているインキ塗膜を版に保持する必要がある。撥インキ性材料の撥インキ性が劣ると、インキ塗膜をブランケットに移しだせない。すなわち、版の撥インキ性材料は、インキ塗膜を離し易い状態である必要がある。本発明の製法による版は、仮支持基板の平滑性のレプリカ面を備えるため、撥インキ性材料の表面は、極めて平滑であり、インキ塗膜を離し易い状態を提供できるメリットがある。また、像の提供は、市販される高精細像の取得が容易な親インキ性材料が行うため、撥インキ性材料の選択幅は広く、非現像型でよく、高精細像を得ながら表面エネルギの低いものやインキとの接着力の低いものを容易に選択できるメリットがある。
最後の転写工程では、ブランケット上のインキ塗膜に所望の基板を押し当てブランケットから基板にインキ塗膜を転写し、基板にインキ塗膜の像が与えられる。
【0031】
以上説明したように、本発明で製造される版は、剥離印刷の版に必要な機能を有しながら、東レ製のPS版にあるような、段差やシリコーンの表面ざらつきがない版の製造が可能である。これにより、高精細像を位置精度よく取得できるものである。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の好適な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
図4に従い、版を作製した。仮支持基板として、非シリコン系離型PETフィルム(東洋紡TN100)の離型面にアルミニウムを電子ビーム真空蒸着した基板を用意した。離型用PETフィルムの厚さは50μmである。アルミニウムの膜厚は、0.3μmである。次に、仮支持基板のアルミニウム薄膜側の面に、親インキ性材料としてAZエレクトロニックマテリアルズ製AZ−TFP210Kポジレジストをスピンコートした。スピンコート条件は、350rpmで15秒間後直ちに1000rpmで2秒間である。次いで、仮支持体上のポジレジストを90℃のホットプレートで4分間乾燥し、超高圧水銀灯の平行露光機で、フォトマスクを介して100mJ/cm露光した。次いで、0.6重量%の水酸化カリウム水溶液に20℃で約2分間浸し、現像した。次いで、150℃の熱風循環オーブンで60分間加熱し、親インキ性材料の像を得た。次いで、撥インキ性材料として、信越化学工業製シリコーンKR165(100重量部)に硬化剤D168(2重量部)とキシレン(100重量部)を添加し、5分攪拌後、脱泡の上、親インキ性材料を埋めるように、スピンコート積層した。スピンコート条件は、2500rpmで20秒間である。ついで、水平を保持したまま、20℃で自然乾燥を30分間行った。ついで、支持基板としての易接着PETフィルム(東洋紡A4100)を用意し、易接着PETフィルムの易接着面が、シリコーンに接するよう、ロールで押し当てながら積層した。次いで、150℃の熱風循環オーブンで60分間加熱し、仮支持体上に親インキ材料と撥インキ材料が像的に形成され、親インキ材料が撥インキ材料で覆われたさらに上に、支持基板が積層された版の前駆体を得た。ついで、仮支持基板の一部である剥離PETを手で剥離して除去し、アルミニウム薄膜上に親インキ材料と撥インキ材料が像的に形成され、親インキ材料が撥インキ材料で覆われたさらに上に、支持基板が積層された版の前駆体を得た。最後に残る仮支持基板のアルミニウムをリン酸を主成分とする公知のエッチャントでエッチングして除去し、所望の版(1)を作製した。版(1)の光学顕微鏡像を図5に示す。作製した版(1)と剥離印刷用エッチングレジストインキを用いて剥離印刷をガラス基板に対し行った結果、図5の通り、良好な印刷パターンを得た。版外観及び印刷結果を観察し、良好な場合を○とした。結果を表1に示す。
【0033】
実施例2
仮支持基板として、シリコン系離型PETフィルム(東洋紡E7006)の離型面にアルミニウムを電子ビーム真空蒸着した基板を用意した点と、仮支持基板のアルミニウム薄膜上に、親インキ性材料として日産化学工業製コロイダルシリカMEK−STを10重量%添加したAZエレクトロニックマテリアルズ製AZ−TFP210Kポジレジストをスピンコートし、乾燥し、現像し、次いで、200℃の熱風循環オーブンで30分間加熱し、親インキ性材料の像を得た点以外は、実施例1と同じように版(2)を作製した。作製した版(2)と剥離印刷用エッチングレジストインキを用いて剥離印刷をガラス基板に対し行った結果、良好な印刷パターンを得た。版外観及び印刷結果を観察し、良好な場合を○とした。結果を表1に示す。
【0034】
実施例3
仮支持基板として、表面を光沢処理した銅基板を用意した点と、仮支持基板である銅を硫酸を主成分とする公知のエッチャントでエッチングして除去した点以外は、実施例2と同じように版(3)を作製した。作製した版(3)と剥離印刷用エッチングレジストインキを用いて剥離印刷をガラス基板に対し行った結果、良好な印刷パターンを得た。版外観及び印刷結果を観察し、良好な場合を○とした。結果を表1に示す。
【0035】
実施例4
仮支持基板として、研磨したソーダガラスにクロムを電子ビーム真空蒸着した基板を用意した。ソーダガラスの厚さは550μmである。クロムの膜厚は、0.2μmである。次に、仮支持基板のクロム薄膜側の面に、親インキ性材料の像を得た点と、仮支持基板であるソーダガラスおよびクロムをそれぞれ、端部をレジストと保護テープで保護した上でフッ酸とリン酸を主成分とする公知のエッチャントおよび、硝酸第二セリウムアンモン溶液でエッチングして除去した点以外は、実施例2と同じように版(4)を作製した。作製した版(4)と剥離印刷用エッチングレジストインキを用いて剥離印刷をガラス基板に対し行った結果、良好な印刷パターンを得た。版外観及び印刷結果を観察し、良好な場合を○とした。結果を表1に示す。
【0036】
実施例5
図6に従い版を作製した。親インキ性材料としてγブチロラクトンで半分に希釈した日立化成工業株式会社製感光性ポリイミドHD−8820(ポリイミド)をスピンコートした。スピンコート条件は、1000rpmで30秒間である。次いで、仮支持体上のポリイミドを120℃のホットプレートで4分間乾燥し、超高圧水銀灯の平行露光機で、フォトマスクを介して120mJ/cm露光した。次いで、2.38重量%のTMAH水溶液に20℃で約20秒間浸し、現像した。次いで、300℃の熱風循環オーブンで窒素雰囲気下60分間加熱し、親インキ性材料の像を得た点以外は、実施例4と同じように版(5)を作製した。作製した版(5)と剥離印刷用エッチングレジストインキを用いて剥離印刷をガラス基板に対し行った結果、良好な印刷パターンを得た。版外観及び印刷結果を観察し、良好な場合を○とした。結果を表1に示す。
【0037】
実施例6
撥インキ性材料として、信越化学工業製シリコーンKE14(100重量部)に硬化剤CLC229(5重量部)を添加し、5分攪拌後、脱泡の上、親インキ性材料を埋めるように、アプリケータで積層し、直ちに支持基板としての粗化PETフィルムの粗化面が、シリコーンに接するよう、ロールで押し当てながら積層し24時間静置し、仮支持体上に親インキ材料と撥インキ材料が像的に形成され、親インキ材料が撥インキ材料で覆われたさらに上に、支持基板が積層された版の前駆体を得た点以外は、実施例2と同じように版(6)を作製した。作製した版(6)と剥離印刷用エッチングレジストインキを用いて剥離印刷をガラス基板に対し行った結果、良好な印刷パターンを得た。版外観及び印刷結果を観察し、良好な場合を○とした。結果を表1に示す。
【0038】
実施例7
支持基板としての藤倉ゴム工業製シリコーンブランケットゴム#900−STDの離型ゴム面が、シリコーンに接するよう、ロールで押し当てながら積層した点以外は、実施例4と同じように版(7)を作製した。作製した版(7)と剥離印刷用エッチングレジストインキを用いて剥離印刷をガラス基板に対し行った結果、良好な印刷パターンを得た。版外観及び印刷結果を観察し、良好な場合を○とした。結果を表1に示す。
【0039】
実施例8
撥インキ性材料として、信越化学工業製シリコーンKE14(100重量部)に硬化剤CLC229(5重量部)を添加し、5分攪拌後、脱泡の上、親インキ性材料を埋めるように、アプリケータで積層し、直ちに支持基板を積層し、24時間静置後に仮支持体上に親インキ材料と撥インキ材料が像的に形成され、親インキ材料が撥インキ材料で覆われたさらに上に、支持基板が積層された版の前駆体を得た点以外は、実施例7と同じように版(8)を作製した。作製した版(8)と剥離印刷用エッチングレジストインキを用いて剥離印刷をガラス基板に対し行った結果、良好な印刷パターンを得た。版外観及び印刷結果を観察し、良好な場合を○とした。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、印刷版を、新規な方法で製造することで提供するものである。さらに、本発明による版を用いて剥離印刷などの高精細印刷することで、期待した厚みの印刷像を得たり、大きなテーパー角を得ることができる。これにより、高精細像を位置精度よく取得できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】剥離印刷の説明図である。
【図2】PS版の課題を示す説明図である。
【図3】本発明の製法で作製した版の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の版の製法の一例(実施例1)である。
【図5】(a)は、実施例1の版の光学顕微鏡像の写真であり、(b)は(a)の部分拡大写真である。
【図6】本発明の版の製法の一例(実施例5)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平滑面である仮支持基板上に親インキ性材料で像を形成し、ついで、親インキ性材料を埋めるように、撥インキ性材料を積層し、支持基板を順次積層後、仮支持基板を除去し、仮支持基板と接していた面を版面として使用する印刷版の製造法。
【請求項2】
親インキ性材料の像が、樹脂材料または無機フィラーを含有する樹脂材料を、加熱硬化した像、あるいは、金属材料の像である請求項1に記載の印刷版の製造法。
【請求項3】
撥インキ性材料が、積層後にシリコーンゴム層となる材料である請求項1または2に記載の印刷版の製造法。
【請求項4】
仮支持基板が、平滑面を有する金属体で、親インキ材料の接する面が平滑面である請求項1〜3いずれかに記載の印刷版の製造法。
【請求項5】
仮支持基板が、離型PETと金属膜の積層体で、親インキ材料の接する平滑面が金属膜である請求項1〜3いずれかに記載の印刷版の製造法。
【請求項6】
仮支持基板が、ガラスと金属膜の積層体で、親インキ材料の接する平滑面が金属膜である請求項1〜3いずれかに記載の印刷版の製造法。
【請求項7】
支持基板が、接着性の粘接着材料が塗布された支持基板である請求項1〜6いずれかに記載の印刷版の製造法。
【請求項8】
支持基板が、接着性の粘接着材料が塗布され、シリコーンゴムが積層された支持基板である請求項1〜6いずれかに記載の印刷版の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−234062(P2009−234062A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83538(P2008−83538)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】