説明

印刷用又はコーティング用組成物中の分解可能なビヒクル

印刷用又はコーティング用組成物は、支持体上に付着されるべき導電性ポリマーを保有する不揮発性液体ビヒクルを有し、前記材料の分解を伴わずに、熱又は酸性化によって開裂可能であり、前記ビヒクルの開裂は、前記ビヒクルよりも揮発性が高く、そして、蒸発させてこの組成物を乾燥させることができる分解生成物を生成する。適切には、このビヒクルは、例えば式:
【化32】


(Rは、R−OHが揮発性アルコールであるような有機置換基であり;Rは、揮発性であるような、3超の炭素原子の脂肪族又は芳香族置換基であり;Rは、C1−3アルキルである)の炭酸ジエステル又はマロン酸ジエステルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体上へコーティング又は印刷するための組成物における縣濁剤又は溶剤として分解可能なビヒクルの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コーティング用組成物又は印刷用組成物は、液体状態で支持体へ適用され、そこからの液体ビヒクルの蒸発によって、又はこのビヒクルを固化する化学反応によって乾燥させられる。前者は、揮発性ビヒクルを必要とする。非常に望ましい溶剤特性を有し、そして、適切に揮発性であるいくつかの液体は、これらの毒性又は臭い又は環境への衝撃のいずれかに関して有害である。
【0003】
揮発性ビヒクルをベースとする組成物についての一般的な問題は、印刷スクリーン、又はアプリケーター、例えばブラシ上のビヒクルの時期尚早な乾燥の問題であり、これらは、洗浄するか又は廃棄しなければならなくなる。
【0004】
同様に、従来の溶剤は、コーティング用組成物又は印刷用組成物の限定された範囲の粘度のみを可能にし、載せることができる層の厚さを制限する。
【0005】
本発明は、支持体上に付着されるべき材料、及び前記材料が縣濁又は溶解される、前記材料のための不揮発性液体ビヒクルを含んでいる印刷用又はコーティング用組成物であって、この液体ビヒクルが、前記材料の分解を伴わずに開裂可能であり、前記ビヒクルの開裂は、前記ビヒクルよりも揮発性が高く、そして、蒸発してこの組成物を乾燥しうる分解生成物を生成する組成物を提供する。
【0006】
本発明の組成物において、このビヒクルは好ましくは、加熱及び/又は酸性化によって開裂可能である。好ましくはこのビヒクルは、単なる加熱によって開裂可能である。好ましくはこのビヒクルは、200℃未満、より好ましくは175℃未満、最も好ましくは150℃未満の温度で分解する。
【0007】
好ましくは前記ビヒクルの分解生成物のすべては、これらがすべて、加熱及び/又は真空の適用によって、付着されている材料から除去されうるように揮発性である。好ましくはこの揮発性分解生成物は、大気圧において200℃未満、より好ましくは175℃未満、最も好ましくは150℃未満の沸点を有する。好ましくはこれらは、付着されるべき材料と反応しない。
【0008】
好ましくはこのビヒクルは、100℃未満では分解せず、これはその分解温度未満では沸騰しないので、したがって不揮発性である。好ましくは前記ビヒクルは、炭酸ジエステル又はマロン酸ジエステルである。いくつかの新しいこのような化合物が、本明細書に開示されている。
【0009】
好ましくはこの組成物は印刷用インクである。前記印刷用インク中に含まれている本発明の組成物において、付着されるべき材料は、導電性ポリマー、光起電性ポリマー、又はエレクトロルミネセントポリマーを含んでいてもよい。適切には付着されるべき材料は、ポリ(フェニレンビニレン)(PPV)、ポリ(p−フェニレンエチニレン)(PPE)、又はポリ(アリーレン)型ポリマーである。付着されるべき材料は、ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキシルオキシ)−p−フェニレンビニレン](MEH−PPV)、ポリ[2−メトキシ−5−(3’,7’−ジメチルオクチル)−p−フェニレンビニレン](MDMO−PPV)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、ポリ(N−フェニルアミノ−1,4−フェニレン−1,2−エチレン−1,4−(2,5−ジオクトキシ)−フェニレン−1,2−エチレン−1,4−フェニレン)(PA−PPV)、又はポリ(9,9’−ジオクチルフルオレン−コ−ビチオフェン)(PDFTH)であってもよい。
【0010】
本発明の組成物は更に、25℃で固体であるが、ビヒクルのように、前記材料の分解を伴わずに開裂可能である充填剤又は粘度調整剤であって、前記ビヒクルの開裂が、前記ビヒクルよりも揮発性が高く、そして、蒸発してこの組成物を乾燥しうるものを含んでいてもよい。本明細書に記載されているビヒクルの好ましい特徴はまた、このような充填剤又は粘度調整剤へも適用される。このようにして例えば、この充填剤又は粘度調整剤は好ましくは、加熱及び/又は酸性化によって開裂可能である。
【0011】
熱分解可能な充填剤又は粘度調整剤を使用する1つの利点は、これが、より粘性の配合物が提供されることを可能にし、したがって、最終乾燥層がそれ相応に厚くなることなく、より厚い湿潤層として印刷されうるということである。非常に薄くて欠陥がない乾燥印刷層を生成することは難しいが、その理由は、湿潤印刷層が薄ければ、この薄さは、乾燥された時に欠陥を引起こす可能性があるからである。単により多くの溶剤を添加するだけであれば、より多くの材料が、乾燥プロセスにおいて除去されるであろう。したがって乾燥した時の厚さの減少は、より大きくなるであろうが、従来の溶剤系を用いた場合、溶剤含量の増加は、粘度を低下させるであろうし、このことは、印刷することができる湿潤層の厚さを低下させるであろう。粘度を増加させるために従来の添加剤を加えると、乾燥した時に、層の薄化度の低下を生じるであろう。
【0012】
本発明の熱開裂可能な充填剤又は粘度調整剤は、このジレンマから抜け出す1つの方法を可能にするであろうが、その理由は、粘度を上昇させ、より厚い湿潤層の印刷を可能にするために、これらを印刷用インク中に含めることができるが、乾燥プロセスの間に分解することによって、これらは最終乾燥層の厚さに寄与しないからである。このことは、より薄くて欠陥がない乾燥層の印刷を可能にする。
【0013】
本発明は、支持体への材料の適用方法であって、本明細書に記載された組成物を支持体へ適用する工程、この組成物を加熱及び/又は酸処理して、この組成物のビヒクル成分、及び存在するあらゆる分解可能な充填剤又は粘度調整剤を分解する工程、及びこの組成物を乾燥する工程を含む方法を含む。
【0014】
適切にはこの組成物は、印刷、スピンコーティング、ドロップキャスティング、キャスティング、又はペインティングによって支持体へ適用されるが、好ましくはこの組成物は、スクリーン印刷によって支持体へ適用される。
【0015】
本発明は、下式:
【0016】
【化5】

(式中、Rは、R−OHが、揮発性アルコールになるような有機置換基であり;Rは、
【0017】
【化6】

が揮発性を有するか、又は、それ自体が揮発性生成物へ分解可能であるような、3を超える炭素原子の脂肪族又は芳香族置換基であり;Rは、C1−3アルキルである)
によって表される熱分解可能な溶剤又は充填剤を含む。Rは、例えばフェニルであってもよい。基Rはまた、
【0018】
【化7】

(式中、nは、0〜3、例えば1又は2であり、Rは、R−OHが揮発性アルコールになるような有機置換基であり、Rと同一であってもよい)の形態を有してもよい。
【0019】
更には本発明は、下式:
【0020】
【化8】

(式中、Rは、
【0021】
【化9】

が揮発性を有するような、3を超える炭素原子の脂肪族又は芳香族置換基であり、例えばRは、フェニル又は置換フェニル、例えばアルキル(例えばC1−3アルキル)、又はハロゲンである)
によって表される熱分解可能な溶剤又は充填剤を含む。
【0022】
本発明の組成物は、支持体へ付着されるべき材料として、溶液における成分、縣濁液における成分、又はその両方を含んでいてもよい。
【0023】
本発明者らはここで、熱処理後、周囲条件、減圧のどちらかにおける蒸発によって、加熱によって、又はこれらの条件のいずれかの組み合わせで除去することができる小さい揮発性生成物を形成する溶剤/充填剤のいくつかの例を提示する。ほかの例は、水混和性の熱開裂可能な溶剤/充填剤を包含する。
【0024】
これらの化合物は、印刷(スクリーン印刷、スピンコーティング、ドロップキャスティング、キャスティング、又はペインティングなど)用のインクを溶解又は縣濁するための溶剤/充填剤として用いることができる。これらは、周囲温度で比較的不揮発性であるが、熱処理の間に特定の化学反応を受け、蒸発を通して容易に除去されうる、より揮発性の高い、より小さい成分を残すことを特徴とする。
【0025】
このことから来るいくつかの利点がある。不揮発性溶剤/充填剤は、これを用いて作業するのがはるかに容易であるが、その理由は、インク又はほかのコーティング用組成物が、適用操作の間乾ききらないであろうからである。フィルム厚さの制御及びより大きいフィルム厚さの獲得を可能にする、より広い範囲の粘度を得ることができる。不揮発性溶剤/充填剤は一般にまた、無臭であるか、又は臭いが少なく、揮発性溶剤よりもはるかに毒性が低く、刺激が低くなることもあり、したがって安全性及び取り扱い易さを高める。より厚いフィルムは、印刷技術、例えばスクリンーン印刷を用いて得ることができるが、その理由は、印刷フィルム中の熱開裂可能な溶剤又は充填剤の割合は、粘度を増加させるために様々に変えることができるからである。より均質なフィルムもまた、熱処理を通して得ることができる。
【0026】
溶剤/充填剤が熱開裂を受ける特定の温度範囲は、これらの詳細な化学的性質の選択によって制御することができる。次の実施例において、第二アルコール、及び好ましくは第三アルコールのあるいくつかのエステルが調製され、溶剤/充填剤としてのこれらの特性、及びこれらの分解温度について調査されている。分解温度のさらなる調整は、電子供与性基又は電子求引性基の導入によって得ることができる。
【0027】
別の重要な問題は、これらの溶剤/充填剤が、ほかの化合物、例えば着色料、皮膜形成ポリマー、電気活性及び光活性ポリマーを溶解する能力である。この特性は、選択された枝分かれ補助基及び置換基、例えばアルキル基、アリール基、及びエーテル基を組み込むことによって対処することができる。
【0028】
この発明は、次の分野の中に用途を見出す。すなわち、ポリマー太陽電池、有機電界効果トランジスター、有機発光ダイオード、及び有機電気活性材料である。
【0029】
本発明において有用な熱開裂可能な溶剤の1つの種類は、アルコールの炭酸エステルの種類である。第二又は第三アルコールのエステル、特に第三アルコールは、より低い温度で分解するので好ましい。炭酸のベンジルエステルもまた、容易に開裂する。これらのエステルは、次の一般式にしたがって、100℃以上で熱開裂を受けうる(例証のために第三エステルを示す):
【0030】
【化10】

(式中、R及びRは、いずれかのアルキル、アリール、又はエーテル基であってもよい)。
【0031】
これらは、一般的な合成図式にしたがって調製されうる:
【0032】
【化11】

【0033】
典型的な手順において、クロロホルミエートエステル(例えばフェニルクロロホルミエート0.14モル)が、温度が0℃を超えないように気をつけながら、ピリジン(20mL)とともに、塩化メチレン(250mL)中の第三アルコール(例えば2−フェニル−プロパン−2−オール、0.14モル)の溶液へ一滴ずつ添加される。反応混合物は、反応を完了するために一晩撹拌される。氷冷水が添加され、有機相が分離され、水でもう一度抽出され、水溶性副生物が除去される。この有機相は、硫酸マグネシウム上で乾燥され、濾過され、減圧下に蒸発して、生成物を油として生じる。
【0034】
有用な溶剤化合物のさらなる種類は、第二アルコール、より好ましくは第三アルコールのマロン酸ジエステルである。これらは、次の一般図式にしたがって、100℃以上で分解する;
【0035】
【化12】

【0036】
他の熱分解可能な溶剤が、J.D.Grilly(ジョージア工科大学(Georgia Institute of Technlogy)2005年12月−修士論文)によって記載されている。すなわち、酸化チイラン及びピペリレンスルホンである。しかしながらこれらは、熱分解の時に反応性及び/又は不揮発性副生物を生成し、したがって電気活性又は光活性ポリマーを含有する印刷用インクの製造において、本発明者らの目的に適さないであろう。
【0037】
適切な熱開裂可能な溶剤の例は、次のものを包含する:
1.炭酸第三ブチルエステルフェニルエステル(商業用サンプル、アルドリッチ)
【0038】
【化13】

【0039】
2.炭酸1−エチル−1,4−ジメチル−ペンチルエステルフェニルエステル
【0040】
【化14】

【0041】
3.炭酸1−エチル−1,4,8−トリメチル−ノニルエステルフェニルエステル
【0042】
【化15】

【0043】
4.炭酸1−エチル−1,4,8,12−テトラメチル−トリデシルエステルフェニルエステル
【0044】
【化16】

【0045】
5.炭酸2−フェノキシカルボニルオキシ−1,1,2−トリメチル−プロピルエステルフェニルエステル
【0046】
【化17】

【0047】
6.炭酸4−フェノキシカルボニルオキシ−1,1,4−トリメチル−ペンチルエステルフェニルエステル
【0048】
【化18】

【0049】
7.炭酸1−メチル−1−フェニル−エチルエステルフェニルエステル
【0050】
【化19】

【0051】
8.炭酸1−メチル−1−フェニル−プロピルエステルフェニルエステル
【0052】
【化20】

【0053】
9.炭酸3−{2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−1,1−ジメチル−プロピルエステルフェニルエステル
【0054】
【化21】

【0055】
10.マロン酸ビス−(1−メチル−1−フェニル−エチル)エステル
【0056】
【化22】

【0057】
11.マロン酸ビス−(1−メチル−1−p−トリル−エチル)エステル
【0058】
【化23】

【0059】
12.マロン酸ビス−[1−(4−クロロ−フェニル)−1−メチル−エチル]エステル
【0060】
【化24】

【0061】
13.マロン酸ビス−(1−フェニル−エチル)エステル(Moody,Christopher J.;Miah,Soyfur;Slawin,Alexandra M.Z.;Mansfield,Darren J.;Richards,Ian C;J.Chem.Soc.Perkin Trans.1;24;1998;4067−4076)
【0062】
【化25】

【0063】
化合物6及び12は、室温で固体であり、上記のような充填剤又は粘度調整剤としての使用に適している。
【0064】
化合物1及び10を例外として、これらは新規であると考えられ、したがって本発明は、これらの化合物の各々を包含する。
【0065】
実施例1:
炭酸1−メチル−1−フェニル−エチルエステルフェニルエステルの熱開裂
【0066】
【化26】

【0067】
2−フェニル−2−プロピルフェニルカーボネートの熱分解が、380K(107℃)で、ジューテロ化o−ジクロロベンゼンCCl中の溶液として実施された。分解の進行は、NMRによって追跡された。分解反応は、次のとおりである:
【0068】
【化27】

【0069】
結果が図1に示されている。炭酸1−メチル−1−フェニル−エチルエステルフェニルエステルの380ケルビンにおける熱分解は、5分間隔で取られた1H NMRスペクトルによって調査された。化合物それ自体のほぼ全部の分解は、約1時間にわたって発生する(黒い円)。フェノールの添加は、この速度を劇的に増加させる(白い三角形)が、一方、トリエチルアミンの添加は、分解を遅らせる(黒い正方形)。
【0070】
実施例2:
マロン酸ビス−(1−メチル−1−フェニル−エチル)エステルの調製及びこれの熱分解の調査
【0071】
【化28】

【0072】
2−フェニル−2−プロパノール(14g、0.1モル)及びマロン酸(5.5g、0.05モル)が、アセトニトリル(200mL)中に溶解され、ジシクロヘキシルカルボジイミド(20g、0.1モル)が添加された。温度を30℃未満に保持するために、氷浴中での冷却が必要であった。室温での撹拌が、反応を完了するために一晩続行された。翌日、ジシクロヘキシルウレアが濾過によって除去され、フィルターケーキが、アセトニトリル(約50mL)で洗浄された。溶剤が真空で除去され、わずかに黄色の油が生じた。収率:13.5g、79.4%。
【0073】
溶液における熱開裂データが図2に示されている。マロン酸ビス−(1−メチル−1−フェニル−エチル)エステルの熱分解は、1H NMRによって調査された。この場合、生成物(1−メチル−スチレン)中のメチルプロトンによるシグナルの強度の増加は、時間の関数として追跡された。
【0074】
実施例3:
マロン酸ビス−[1−(4−クロロ−フェニル)−1−メチル−エチル]エステルの調製及び熱分解
【0075】
【化29】

【0076】
マロン酸(10.5g、0.10モル)及び2−(4−クロロフェニル)−プロパン−2−オール(35g、(0.20モル))が、アセトニトリル(400mL)中に溶解され、氷浴中に冷却されるが、一方で、ジシクロヘキシルカルボジイミド(42g、0.2モル)が、ポーションに分けて10分にわたって添加された。反応混合物の撹拌は、反応を完了するために48時間続行された。反応混合物はついで濾過され、ジシクロヘキシルウレアが除去され、蒸発して、生成物を黄色い油として生じた。収率:43g、>100%。1H NMRは、存在するいくつかの出発アルコールを示した。ガソリンエチルアセテート(4:1)でのシリカ上のフラッシュカラムは、小さいサンプルを生じ、これは放置した時に結晶化した。粗生成物はついで、2容積のメタノールで粉砕され、結晶化を誘発するために播種された。白色生成物が濾去され、真空中に乾燥された。収率:24g。1H及び13C NMRはここで、少量のメタノールとともにこの生成物に合致していた。
【0077】
溶液における熱開裂データが、図3に示されている。20mgのマロン酸ビス−[1−(4−クロロフェニル)−1−メチル−エチル]エステルが、NMR管においてジューテロ化o−ジクロロベンゼン中に溶解された。分解は、サンプルを400ケルビン(127℃)の温度に維持しつつ、5分間隔で1H NMRスペクトルを得ることによって調査された。メチル基(1.47ppmにおいて)に由来するシグナルの強度は、図面に見られるようなS字形曲線に沿って減少した。分解は、次の化学反応によって説明することができる:
【0078】
【化30】

【0079】
図式1.マロン酸ビス−[1−(4−クロロフェニル)−1−メチル−エチル]エステルの熱分解
曲線の形から、この反応は、おそらく形成された酢酸によって自己触媒性であることが分かる。
【0080】
実施例4
マロン酸ビス−(1−フェニル−エチル)エステルの調製
【0081】
【化31】

【0082】
マロン酸(12g、0.11モル)が、1−フェニル−エタノール(26g、0.22モル)とともに、エーレンマイヤーフラスコ(1L)においてアセトニトリル(450mL)中に溶解された。
【0083】
ジシクロヘキシルカルボジイミド(45g)が、温度が30℃を超えないように、10分にわたって、冷却を伴って、ポーションに分けて添加された。ジシクロヘキシルウレアの沈殿物が、ほぼ即座に形成された。室温における撹拌が、反応を完了するために週末にわたって続行された。ジシクロヘキシルウレアが濾過によって除去され、フィルターケーキが、追加アセトニトリル(100mL)で洗浄された。組み合わされた溶液が真空蒸発して、粗生成物を無色油として生じた。収率:29g、93%。
【0084】
印刷用配合物の例
印刷用インクの調製は、揮発性溶剤中の所望のポリマー材料の溶液と炭酸エステルとの混合、ついで揮発性溶剤の蒸発によって実施され、その結果、印刷又はコーティングに適したインク/ペーストを生じる。
【0085】
実施例5:
クロロホルム中のポリ−3−ヘキシルチオフェンの10mg mL−1溶液2mLが、クロロホルム中のフェニル−C61−酪酸メチルエステルの10mg mL−1溶液2mLと混合され、炭酸1−エチル−1,4,8−トリメチル−ノニルエステルフェニルエステル2mLへ添加され、これによってこの混合物は紫色になった。完全混合及び回転蒸発後、印刷用インクが得られた。インジウム錫酸化物支持体上のこのインクのスクリーン印刷の後、200℃で9時間の熱開裂が続いた。アルミニウム電極のこれの上での蒸発は、10cmの活性面積を有するポリマー光起電性デバイスを生じた。開路電圧Voc、短絡電流Isc、充填比FF、及び効率ηは、模擬日光下(AM1.5、1000Wm−2)、それぞれ0.40V、−18mA、25%、及び0.18%であった。
【0086】
実施例6:
クロロホルム中に溶解されたポリ−3−ヘキシルチオフェン20mg mL−1溶液2mLが、クロロホルム中のフェニル−C61−酪酸メチルエステルの10mg mL−1溶液2mLと混合され、炭酸1−エチル−1,4,8−トリメチル−ノニルエステルフェニルエステル2mLへ添加され、これによってこの混合物は紫色になった。完全混合及び回転蒸発後、印刷用インクが得られた。インジウム錫酸化物支持体上のこのインクのスクリーン印刷の後、200℃で9時間の熱開裂が続いた。アルミニウム電極のこれの上での蒸発は、10cmの活性面積を有するポリマー光起電性デバイスを生じた。開路電圧Voc、短絡電流Isc、充填比FF、及び効率ηは、模擬日光下(AM1.5、1000Wm−2)、それぞれ0.45V、−12mA、25%、及び0.13%であった。
【0087】
この明細書において、明らかにほかの指摘がなければ、「又は(or)」という用語は、これらの条件の1つのみが満たされることを要求する、操作者の「排他的な、又は(exclusive or)」に対して、記載された条件のどちらか又は両方が満たされた時、真の値をもたらす操作者の意味において用いられている。「含んでいる(comprising)」という単語は、「〜からなる(consisting of)」ことを意味するのではなくてむしろ、「〜を包含する」という意味で用いられている。
【図面の簡単な説明】
【0088】
添付図面は、次のものを示している:
【図1】実施例1においてテストされた化合物の分解の間に測定されたプロトンNMRシグナルを示している。
【図2】実施例2においてテストされた化合物の分解の間に測定されたプロトンNMRシグナルを示している。
【図3】実施例3においてテストされた化合物の分解の間に測定されたプロトンNMRシグナルを示している。マロン酸ビス−[1−(4−クロロフェニル)−1−メチル−エチル]エステルの熱分解は、1H NMRによって調査された。メチルプロトンによるシグナルの積分は、時間の関数として追跡される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に付着されるべき材料と、前記材料のための不揮発性液体ビヒクルとを含む印刷用又はコーティング用組成物であって、前記液体ビヒクルが、前記材料の分解を伴わずに開裂可能であり、前記ビヒクルの開裂によって、分解生成物が生成され、前記分解生成物は、前記ビヒクルよりも揮発性が高く、そして、蒸発して前記組成物を乾燥させることが可能であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記ビヒクルは、加熱及び/又は酸性化によって開裂可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ビヒクルは、炭酸ジエステル又はマロン酸ジエステルである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ビヒクルの分解生成物のすべてが、大気圧において200℃未満の沸点を有する、請求項1から3のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項5】
前記ビヒクルは、200℃未満の温度で分解する、請求項1から4のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は印刷用インクであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項7】
付着されるべき前記材料が、導電性ポリマー、光起電性ポリマー、又はエレクトロルミネセントポリマーからなる、請求項1から6のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項8】
付着されるべき前記材料が、ポリ(フェニレンビニレン)(PPV)、ポリ(p−フェニレンエチニレン)(PPE)、又はポリ(アリーレン)型ポリマーのうちの1種又はそれ以上、及び/又は、フラーレンもしくはフラーレン化合物からなる、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
付着されるべき前記材料が、ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキシルオキシ)−p−フェニレンビニレン](MEH−PPV)、ポリ[2−メトキシ−5−(3’,7’−ジメチルオクチル)−p−フェニレンビニレン](MDMO−PPV)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、ポリ(N−フェニルアミノ−1,4−フェニレン−1,2−エチレン−1,4−(2,5−ジオクトキシ)−フェニレン−1,2−エチレン−1,4−フェニレン)(PA−PPV)、又はポリ(9,9’−ジオクチルフルオレン−コ−ビチオフェン)(PDFTH)である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
25℃で固体であり、そして、前記材料の分解を伴わずに開裂可能である充填剤又は粘度調整剤を更に含み、前記ビヒクルの開裂によって、分解生成物が生成され、前記分解生成物は、前記ビヒクルよりも揮発性が高く、そして、蒸発して前記組成物を乾燥させることが可能であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項11】
前記充填剤又は粘度調整剤は、加熱及び/又は酸性化によって開裂可能である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
支持体に材料を付着させる方法であって、請求項1から11のいずれか1つに記載の組成物を支持体に付着させる工程と、前記組成物を加熱して、前記組成物のビヒクル成分を分解する工程と、前記組成物を乾燥する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記組成物が、印刷、スピンコーティング、ドロップキャスティング、キャスティング、又はペインティングによって前記支持体に付着される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物を、スクリーン印刷によって前記支持体に付着させる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
下式:
【化1】

(式中、Rは、R−OHが揮発性アルコールになるような有機置換基であり;Rは、
【化2】

が揮発性を有するような、3を超える炭素原子の脂肪族又は芳香族置換基であり;Rは、C1−3アルキルである)
によって表される熱分解可能な溶剤又は充填剤。
【請求項16】
下式:
【化3】

(式中、Rは、
【化4】

が揮発性を有するか、又は、それ自体が熱分解可能であって、揮発性生成物を生成するような、3を超える炭素原子の脂肪族又は芳香族置換基である)
によって表される熱分解可能な溶剤又は充填剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−534491(P2009−534491A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505854(P2009−505854)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053614
【国際公開番号】WO2007/118850
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(507236155)ザ テクニカル ユニヴァーシティー オブ デンマーク (2)
【Fターム(参考)】