説明

印刷用塗工紙及びその製造方法

【課題】塗工層をフィルムトランスファー方式で塗工する印刷用塗工紙及びその製造方法に関するものであり、塗工速度1000m/min以上の操業条件であってもガムアップやリングパターンを発生することなく、白紙面質、印刷面質、白紙光沢、印刷光沢に優れた印刷用塗工紙及びその製造方法を提供する。
【解決手段】顔料および接着剤を主成分とする顔料塗工層を単層または複数層設けた印刷用塗工紙において、フィルムトランスファー方式で塗工するものであり、塗工層には下記(a)、(b)を含有せしめ、且つ、塗工量8〜35g/m2塗工する。(a)粒子径2μm以下のものが92質量%以上であるカオリンを全顔料の60〜100質量部(b)接着剤として重合度400〜1400のポリビニルアルコールを顔料100質量部に対して2〜6質量部。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工層をフィルムトランスファー方式で塗工する印刷用塗工紙及びその製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、塗工速度1000m/min以上の操業条件であってもガムアップやリングパターンを発生することなく塗工量を片面当たり8〜35g/m2塗工する事ができ、白紙面質、印刷面質、白紙光沢、印刷光沢に優れた印刷用塗工紙及びその製造方法である。
【背景技術】
【0002】
近年、チラシ、カタログ等の商業印刷分野への紙の需要がのびが顕著であり、また輸入紙の国内シェアの拡大から国内紙メーカーとしてはこれらの分野のコスト競争力をつけるべく従来のオフマシンのブレード塗工方式から一台のマシンでより効率的に抄紙と塗工とを同時に行うオンマシン塗工方式への切り替えが行われてきている。またA2塗工紙分野においても、面質、印刷光沢、インキ着肉性を向上させる目的から、下塗り、上塗りの片面ダブル塗工の手法が一般的となってきており、当然の事ながら塗工面質の良いブレード塗工方式で下塗り、上塗りを実施する事の方が品質的にはベターであるが設備の新設や改造を伴う事から、製造効率を考慮して下塗りをオンマシン塗工方式で実施する場合がある。
【0003】
オンマシン塗工方式のうち抄紙機のサイズプレス処理にも用いられるフィルムトランスファー方式の場合、塗工速度が1000m/min以上の高速条件においては塗液濃度が高かったり、塗液の機械的安定性が悪かったりするとアプリケーターロールやゲートロールコーターの場合はアプリケーターロール以外にインナーロールやアウターロールと呼ばれる各ロールにガムアップと呼ばれる塗液の固化現象が発生し塗工不能な状態に陥る。またアプリケーターロールのニップ出口で紙とアプリケーターロールの紙離れが不安定となりリングパターンと呼ばれる筋状の塗工ムラが発生する。
【0004】
これらの問題を解決する方法として、塗工濃度を低下させる方法が一般に知られているが、塗工濃度を希釈すると、塗液の原紙への浸み込みが多くなり塗工層の原紙被覆性が悪くなるし、塗工量10g/m2以上必要とするA2以上の塗工紙とするだけの目方をつけることができなくなってしまう。
【0005】
濃度58%以上でB型粘度を1500cps以下に調整する事によりフィルムトランスファー方式の塗工安定性を得る方法(例えば、特許文献1参照)があるが、現在生産効率の面から塗工速度は800m/min以上が一般的となっており本文献の実施例には600m/minの記載しかなく、速度アップした際には操業面の悪化が顕著になる傾向にあること、高剪断時の保水性低い澱粉を接着剤に使用することが必須条件になっていることからもこの手法でガムアップやリングパターンを抑制できない。また微粒の重質炭酸カルシウムを多く配合している事から印刷光沢の高い印刷用塗工紙は得られない。
【0006】
塗工速度1100m/minでもフィルムトランスファー方式の塗工安定性を得る方法(例えば、特許文献2参照)があるが、特許文献1同様重質炭酸カルシウムを全顔料の70〜100質量部と高い比率で配合する事から、やはり印刷光沢の高い印刷用塗工紙は得られない。またラテックスのゲル量を70〜90質量%と限定していることからオフセット輪転印刷の際にブリスター性が低下する。塗工量は2〜10g/m2が好ましいとあり、軽量塗工紙をターゲットとしていることがうかがえ、塗工量10g/m2以上の塗工安定性については対応しきれておらず、A2以上の塗工紙を製造するまでには至っていない。
【0007】
印刷後の品質を考慮し、カオリンを40〜70質量部配合する方法(例えば、特許文献3参照)もあるが、特許文献2の応用特許でありラテックスのゲル量を75〜90質量%と限定していることからオフセット輪転印刷の際にブリスター性が低下することと、塗工量は5〜10g/m2が好ましいとあり、やはりA2以上の塗工量を有する印刷用塗工紙を製造するまでには至っていない。
【0008】
また接着剤として澱粉誘導体を15〜30質量%含有し動的保水性を100〜150g/m2とするダブル塗工の下塗り塗工層配合(例えば、特許文献4参照)、ダブル塗工の下塗り塗工層配合中のスチレン・ブタジエン共重合ラテックスの平均粒子径を40〜70nmとする(例えば、特許文献5参照)知見も報告されているが下塗り塗工層に用途限定している事から塗工量が8g/m2となる場合にはフィルムトランスファー方式の塗工安定性は得られていない。
【0009】
フィルムトランスファー方式で原紙に単層塗工する製造方法で特許文献5に類似したスチレン・ブタジエン共重合ラテックスの平均粒子径を40〜70nmとする(例えば、特許文献6参照)知見も報告されているが、粒子径100nm以下のラテックスを使用した塗工層の最表層に使用した場合、印刷強度は強くなるが印刷後のインキのモットリング性が悪化する方向となる。軽量塗工紙の範疇でも塗工量が8g/m2より低いものであれば品質的に見劣りしないであろうが塗工量が8〜10g/m2レベルの軽量塗工紙になると印刷後のモットリングが問題となる。
【0010】
本発明に類似したポリビニルアルコールを接着剤に用いる技術(例えば、特許文献7参照)も知られているが、下塗り配合であるため、特許文献2の手法と同様全顔料の60質量%以上の炭酸カルシウムを配合することが前提である事から、単層配合にした場合の印刷光沢の高さや印刷面質の良さを得る事ができない。また下塗り配合に用いた場合は上塗り塗工後の印刷面の鏡面感が得られない。特許文献7では接着剤に澱粉が併用される事が記載してあるが、塗工速度1000m/min以上の高速条件で、A2塗工紙並に塗工量を付けようとした場合、高剪断がかかった際のガムアップを澱粉配合では抑制することが出来ない。
【特許文献1】特開平7−189188号公報
【特許文献2】特開平9−170195号公報
【特許文献3】特開平9−302596号公報
【特許文献4】特開平10−46496号公報
【特許文献5】特開平10−140499号公報
【特許文献6】特開平10−251996号公報
【特許文献7】特開平11−279991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、塗工層をフィルムトランスファー方式で塗工する印刷用塗工紙及びその製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、塗工速度1000m/min以上の操業条件であってもガムアップやリングパターンを発生することなく塗工量を片面当たり8〜35g/m2塗工する事ができ、白紙面質、印刷面質、白紙光沢、印刷光沢に優れた印刷用塗工紙及びその製造方法である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記の問題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明の印刷用塗工紙及びその製造方法を発明するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、顔料および接着剤を主成分とする顔料塗工層を単層または複数層設けた印刷用塗工紙において、原紙層の上に設ける塗工層をフィルムトランスファー方式で塗工するものであり、フィルムトランスファー方式で塗工される塗工層には下記(a)、(b)を含有し、塗工量8〜35g/m2塗工することを特徴とする印刷用塗工紙及びその製造方法に関するものである。
(a)粒子径2μm以下のものが92質量%以上であるカオリンを全顔料の60〜100質量部
(b)接着剤として重合度400〜1400のポリビニルアルコールを顔料100質量部に対して2〜6質量部
【0014】
フィルムトランスファー方式で塗工される塗工層に含まれる(a)以外の顔料が粒子径2μm以下のものが97質量%以上である重質炭酸カルシウムであることがより良好な白紙面質、印刷面質を得るためには好ましい。
【0015】
フィルムトランスファー方式で塗工される塗工層の白紙面質、印刷面質は、塗工速度が上がる事で塗液の原紙層への浸み込みが抑制され良化するが、更に好ましくは塗工液の塗工濃度を56質量%以上とする事で白紙面質、印刷面質を向上させることができる。また、接着剤としてポリビニルアルコールを使用している本発明では塗工濃度を56質量%以上に上げてもフィルムトランスファー塗工時にガムアップすることはない。
【0016】
片面当たりの塗工量を30g/m2以上付ける場合にはフィルムトランスファー方式の塗工方法の中でもウェット塗工液膜の転写回数が少なく、厚いウェット塗工液膜を形成できるロッドメタリング方式かまたはブレードメタリング方式である事が好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フィルムトランスファー方式で塗工される塗工層配合中に含まれる全顔料のうち60〜100質量部が粒子径2μm以下のものが92質量%以上であるカオリンであり、接着剤として重合度400〜1400のポリビニルアルコールを顔料100質量部に対して2〜6質量部配合した塗工液を、塗工量8〜35g/m2塗工することにより、フィルムトランスファー方式で高濃度、1000m/min以上の高速条件で塗工する際に起こりやすいガムアップやリングパターンといった操業上のトラブルを発生することなく、白紙面質、印刷面質、白紙光沢、印刷光沢に優れた印刷用塗工紙及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の印刷用塗工紙について、詳細に説明する。
【0019】
上記発明におけるフィルムトランスファー方式で塗工される塗工層配合中に含まれる顔料としては、粒子径2μm以下のものが92質量%以上であるカオリン、一般に一級カオリンから微粒カオリンと呼ばれる分野の粒子径の細かい部類のカオリンを必要とし、粒子径2μm以下のものが92質量%を下回るものになると、粒子の充填構造が不均一となり白紙面質の低下する、また印刷後のインキのマイグレーションも不均一となり印刷面質も低下する。配合比率が60質量%を下回っても同様な現象が発生する。粒子径2μm以下のものが92質量%以上であるカオリン以外の顔料は、前期以外のカオリン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、湿式粉砕重質炭酸カルシウムが好ましく、タルク、焼成カオリン、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、酸化チタン、シリカ、酸化亜鉛、活性白土、珪素土、レーキ、プラスチックピグメントなどを混合して使用しても良い。中でも粒子径2μm以下のものが97質量%以上である重質炭酸カルシウムを用いることでより緻密な塗工層を形成する事ができ白紙面質、印刷面質を向上させることができる。また単層の印刷用塗工紙の場合、白紙光沢も合わせて向上させる事ができる。
【0020】
塗工量は8〜35g/m2であり、8g/m2を下回ると原紙全面を完全にカバーリングすることが出来ず白紙面質、印刷面質が悪化する。塗工量が35g/m2を上回る場合は、調液に必要な分散水の使用量を切りつめて塗工濃度を仕込み可能な上限濃度に設定したとしてもウェット塗工液膜が厚くなりすぎてしまうことからアプリケーターロールと紙が剥離する際に発生するリングパターンを抑制出来なくなってしまう。
【0021】
フィルムトランスファー方式で塗工される塗工層配合中に含まれる接着剤として重合度400〜1400ポリビニルアルコールを顔料100質量部に対して2〜6質量部配合する事が必須条件である。併用可能な接着剤は、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、酢酸ビニル・アクリル系、ブタジエン・メチルメタクリル系などの各種共重合体ラテックスである。印刷用塗工紙に一般的に使用される酸化澱粉、エステル化澱粉、熱化学変性澱粉、酵素変性澱粉やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉は、塗工液を56質量%以上の高濃度に調整し塗工した場合、フィルムトランスファーロールの各ニップ箇所で塗工速度1000m/min以上の高剪断力がかかった時ガムアップをしてしまい好ましくない。これは本発明で使用する顔料配合が粒子径2μm以下のものが92質量%と細かいカオリンを60質量%以上と大量に含んでおり、炭酸カルシウムのようなガムアップしにくい顔料の割合が低い事に起因する。高濃度状態で高剪断力がかかった時の保水能力が、前述した各種澱粉よりポリビニルアルコールの方が優れているためと考えられ、本発明では接着剤は重合度400〜1400のポリビニルアルコールとスチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、酢酸ビニル・アクリル系、ブタジエン・メチルメタクリル系などの各種共重合体ラテックスとしている。
【0022】
本発明でフィルムトランスファー方式で塗工される塗工層配合中に使用されるポリビニルアルコールは酢酸ビニルを重合して得られたポリ酢酸ビニルを鹸化することにより製造されたものであり、更にカルボキシ変性、シラノール変性等の共重合変性したものや、末端アルキル変性等の連鎖移動によるポリマー変性したものを単独もしくは併用することができ、その重合度は400〜1400、好ましくは600〜1200である。また配合量は顔料100質量部に対し2〜6質量部が好ましい。重合度が400を下回ったり配合量が2質量部を下回った場合は高濃度状態で高剪断力がかかった時の保水能力が低下するためか、ガムアップを抑制できない。重合度が1400を越えた場合や配合量が6質量部を上回った場合は、塗工粘度の急激な上昇を招きアプリケーターロールからの紙離れが悪化しリングパターンが発生するので好ましくない。
【0023】
本発明で、原紙層直上に形成される塗工層はゲートロールコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、ブレードメタリングサイズプレスコーター等のフィルムトランスファー方式で塗工される。
【0024】
片面当たりの塗工量を30g/m2とする場合にはウェット塗工液フィルムの転写回数が少なくまたニップ数が少ない事から厚いウェット塗工液フィルムを形成できるロッドメタリングサイズプレスコーターまたはブレードメタリングサイズプレスコーターを用いることが好ましい。またウェット塗工液フィルムの転写回数、ニップ数が少ないロッドメタリングサイズプレスコーター、ブレードメタリングサイズプレスコーターの場合はより少ないポリビニルアルコールの添加量でガムアップの発生を抑制する事が可能である。
【0025】
本発明において、フィルムトランスファー方式での塗工速度は特に限定するものではないが1000m/min以上で塗工することによって塗液の原紙面へのしみ込みが抑制され、塗工液による原紙のカバーリングが良化し塗工後の表面に原紙層がむき出しになっている部分やむき出しではないが原紙の繊維の凹凸形状が残ってしまう事がない。カバーリングが悪いとカレンダー等で表面を仕上げた後でも白紙面質、印刷面質の悪さは残ってしまう場合がある。塗工液の固形分濃度を上げた時も、塗工速度を上げた時と同じように塗液の原紙面へのしみ込みが抑制され塗工液による原紙のカバーリングが良化する。塗液の固形分濃度は56質量%以上が好ましく、塗工速度が1000m/minを下回った場合でも固形分濃度を高くする事で白紙面質、印刷面質の低下を抑制することができる。
【0026】
本発明で下層と上層の二層の塗工層構造を構成する印刷用塗工紙において、原紙層上にフィルムトランスファー方式で塗工される下層の上に形成される上層の塗工層に使用される顔料としては、例えば、カオリン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、湿式粉砕重質炭酸カルシウムが好ましく、タルク、焼成カオリン、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、酸化チタン、シリカ、酸化亜鉛、活性白土、珪素土、レーキ、プラスチックピグメントなどを混合して使用しても良い。
【0027】
また、本発明で下層と上層の二層の塗工層構造を構成する印刷用塗工紙において、原紙層上にフィルムトランスファー方式で塗工される下層の上に形成される上層の塗工層に使用される接着剤としては、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、酢酸ビニル・アクリル系、ブタジエン・メチルメタクリル系などの各種共重合体ラテックスおよびポリビニルアルコールとの併用である。酸化澱粉、エステル化澱粉、熱化学変性澱粉、酵素変性澱粉やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、カゼイン、デキストリンなどから適宜選択して単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0028】
本発明に用いられる原紙は、LBKP、NBKPなどの化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、BCTMP、CMP、CGPなどの機械パルプ、DIPなど古紙パルプなどのパルプが用いられ、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリンなどの各種の填料、サイズ剤、定着剤、歩留まり剤、カチオン化剤、紙力増強剤などの各種添加剤を適宜含有し、酸性、中性、アルカリ性で抄造されるものである。
【0029】
本発明における単層または二層塗りの下層、上層の塗工液には、分散剤、消泡剤、耐水化剤、潤滑剤、保水剤、増粘剤等、通常の印刷用塗工紙の塗工層配合に用いる各種助剤を併用する事ができる。
【0030】
本発明で下層と上層の二層の塗工層構造を構成する印刷用塗工紙において、原紙層上にフィルムトランスファー方式で塗工される下層の上に形成される上層の塗工層の塗工方法については特に限定されるものではなく、エアーナイフコーター、ロッド(バー)コーター、カーテンコーター、リップコーター、ダイコーター等通常の塗工装置を用いることが可能である。
【0031】
塗工液を塗工、乾燥された塗工紙はスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダー、金属ロールとシューロールからなるロングニップカレンダー処理などで表面仕上げするのが好ましい。
【実施例】
【0032】
以下の実施例を用い、さらに詳細に本発明の効果を説明するが本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例中の質量部はそれぞれの原材料の固形分量を示す。
【0033】
実施例1〜9および比較例1〜6を以下の方法にて製造した。
<パルプ配合>
LBKP(濾水度 440mlcsf) 70質量部
NBKP(濾水度 490mlcsf) 30質量部
【0034】
<内填薬品>
炭酸カルシウム 6質量部
市販カチオン澱粉 2質量部
市販カチオン系ポリアクリルアミド歩留まり向上剤 0.02質量部
パルプ、内填薬品は上記で調整され、抄紙機により55g/m2の坪量の塗工用原紙を得た。
【0035】
<顔料塗工層配合(1)>
市販の粒子径2μm以下のものが92質量%以上であるカオリン 表1記載の質量部
市販の重質炭酸カルシウム 表1記載の質量部
市販ポリアクリル酸系分散剤 0.04質量部
市販スチレン・ブタジエンラテックス 12質量部
市販のポリビニルアルコール 表1記載の質量部
市販ポリアミドポリ尿素系樹脂耐水化剤 0.5質量部
市販ステアリン酸カルシウム 0.5質量部
【0036】
実施例1〜9、比較例1〜6の粒子径2μm以下のものが92質量%以上であるカオリン、重質炭酸カルシウムの銘柄名、添加部数、ポリビニルアルコールの銘柄名、添加部数、重合度、塗工液の固形分濃度、片面当たりの塗工量を表1に記載する。
【0037】
【表1】

【0038】
<顔料塗工層配合(1)>及び表1記載の顔料塗工液を調製し、<パルプ配合><内填薬品>記載の塗工用原紙にロールアプリケーターサイズプレスコーターを用いて塗工速度1000m/minで塗工、乾燥して、スーパーカレンダーを用いてカレンダリング処理を施し実施例1〜9、比較例1〜6の印刷用塗工紙を製造した。
【0039】
実施例10〜17、比較例7〜11の下塗り塗工層と上塗り塗工層を有する印刷用塗工紙を下記の方法で製造した。
【0040】
<顔料塗工層配合(2)>
市販の粒子径2μm以下のものが92質量%以上であるカオリン 表2記載の質量部
市販の重質炭酸カルシウム 表2記載の質量部
市販ポリアクリル酸系分散剤 0.04質量部
市販スチレン・ブタジエンラテックス 12質量部
市販のポリビニルアルコール 表2記載の質量部
市販ポリアミドポリ尿素系樹脂耐水化剤 0.5質量部
市販ステアリン酸カルシウム 0.5質量部
【0041】
実施例10〜17、比較例7〜11の粒子径2μm以下のものが92質量%以上であるカオリン、重質炭酸カルシウムの銘柄名、添加部数、ポリビニルアルコールの銘柄名、添加部数、重合度、塗工液の固形分濃度、片面当たりの塗工量を表2に記載する。
【0042】
【表2】

【0043】
<顔料塗工層配合(3)>
市販のカオリン 70質量部
市販の重質炭酸カルシウム 30質量部
市販ポリアクリル酸系分散剤 0.1質量部
市販スチレン・ブタジエンラテックス 12質量部
市販燐酸エステル化澱粉 1質量部
市販ポリアミドポリ尿素系樹脂耐水化剤 0.5質量部
市販ステアリン酸カルシウム 0.5質量部
市販合成保水剤 0.6質量部
【0044】
<顔料塗工層配合(2)>及び表2記載の顔料塗工液を調製し、<パルプ配合><内填薬品>記載の塗工用原紙にロールアプリケーターサイズプレスコーターを用いて塗工速度1000m/minで塗工、乾燥し下塗り塗工層とし、<顔料塗工層配合(3)>記載の顔料塗工液を調製し下塗り塗工層上にベントブレード方式の塗工装置を用いて、上塗り塗工量を片面当たり11g/m2塗工、乾燥して、スーパーカレンダーを用いてカレンダリング処理を施し実施例10〜17、比較例7〜11の印刷用塗工紙を製造した。
【0045】
<ガムアップ>
ロールアプリケーターサイズプレスコーター塗工時のガムアップ発生状況を目視評価した。
◎:全く発生しない
○:殆ど発生せず操業上問題なし
△:発生が見られロングラン操業では問題あり
×:発生が著しく操業不可能
【0046】
<リングパターン>
ロールアプリケーターサイズプレスコーター塗工時のアプリケーターロールと紙が剥離する際のリングパターン発生状況を目視評価した。
◎:全く発生しない
○:殆ど発生せず操業上問題なし
△:発生が見られロングラン操業では問題あり
×:発生が著しく操業不可能
【0047】
<白紙光沢>
JIS P−8142に従い角度75°で測定した。
【0048】
<印刷光沢>
三菱重工業製ダイヤ印刷機を用い、大日本インキ化学工業社製GEOS−Gの墨、藍、紅、黄の4色100%ベタを印刷し、村上式光沢度計を用いて60°−60°反射率で印刷光沢を測定した。
【0049】
<白紙面質>
白紙を斜光で観察し目視判定した。
◎:表面の凹凸、カバーリング不良による光沢ムラ等が全く見られない。
○:カバーリング不良による光沢ムラ等は見られないが、表面に凹凸感が見られる。
△:表面に凹凸感が見られないが、カバーリング不良による光沢ムラ等も見られる。
×:表面に凹凸感が見られ、カバーリング不良による光沢ムラ等も見られる。
【0050】
<印刷面質>
三菱重工業製ダイヤ印刷機を用い、大日本インキ化学工業社製GEOS−Gの墨、藍、紅、黄の4色100%ベタを印刷した箇所を斜光で観察し目視判定した。
◎:表面の凹凸、カバーリング不良による光沢ムラ等が全く見られない。
○:カバーリング不良による光沢ムラ等は見られないが、表面に凹凸感が見られる。
△:表面に凹凸感が見られないが、カバーリング不良による光沢ムラ等も見られる。
×:表面に凹凸感が見られ、カバーリング不良による光沢ムラ等も見られる。
【0051】
【表3】

【0052】
表3に示した結果から明らかなように、本発明の方法(実施例)により製造した印刷用塗工紙は、塗工速度1000m/min以上の操業条件であってもガムアップやリングパターンを発生することなく塗工量を片面当たり8〜35g/m2塗工する事ができ、且つ、白紙面質、印刷面質、白紙光沢、印刷光沢に優れていると判断できる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によって、フィルムトランスファー方式のオンマシン塗工装置を用いて高濃度で、安定した操業が可能となり、A3からA2クラスの比較的塗工量の多い印刷用塗工紙や二層塗工の下塗り塗工層を効率よく、且つ、白紙面質、印刷面質、白紙光沢、印刷光沢に優れたものを製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムトランスファー方式で原紙に塗工液を塗工する印刷用塗工紙の製造方法において、下記(a)、(b)を含有し、且つ、塗工量8〜35g/m2塗工することを特徴とする印刷用塗工紙の製造方法。
(a)粒子径2μm以下のものが92質量%以上であるカオリンを全顔料の60〜100質量部
(b)接着剤として重合度400〜1400のポリビニルアルコールを顔料100質量部に対して2〜6質量部
【請求項2】
請求項1で製造された塗工層上に、更に上塗り塗工層を設けることを特徴とする請求項1記載の印刷用塗工紙の製造方法。
【請求項3】
塗工液中の(a)以外の顔料が、粒子径2μm以下のものが97質量%以上である重質炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1または2記載の印刷用塗工紙の製造方法。
【請求項4】
フィルムトランスファー方式の塗工方法がロッドメタリングサイズプレスコーターまたはブレードメタリングサイズプレスコーターである事を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の印刷用塗工紙の製造方法。
【請求項5】
フィルムトランスファー方式で塗工する塗工液の濃度が56質量%以上である事を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の印刷用塗工紙の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法で製造された印刷用塗工紙。

【公開番号】特開2006−233371(P2006−233371A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−50574(P2005−50574)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】