説明

印刷用塗被紙およびその製造方法

【課題】本発明は、平滑性、塗料被覆性に優れた印刷用塗被紙を安価に提供するものである。
【解決手段】本発明は、原紙上の少なくとも片面に顔料と接着剤を主成分とする塗被層を2層以上設ける印刷用塗工紙において、該原紙に使用される漂白パルプの50%以上が、ユーカリ材もしくはアカシア材を原料とし、蒸解液を分割添加するクラフト蒸解法でパルプ化され、さらにオゾン漂白段を含む多段漂白処理工程で製造された漂白パルプであり、かつ該塗被層の最外層に、顔料として、クラフトパルプ製造時に生成される緑液を、生石灰または生石灰を水酸化ナトリウム含有液と反応させて得た消和液で苛性化し、生成する石灰スラッジを固液分離後水洗して粉砕処理を行って製造された軽質炭酸カルシウムを含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平滑性、塗料被覆性に優れた印刷用塗被紙およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に印刷用塗被紙は、原紙上に顔料と接着剤を主成分とする塗被液を塗工乾燥して製造され、塗被液の塗工量や塗工紙の仕上げ方法によって、キャストコート紙、アート紙、コート紙、微塗工紙等に分類される。これら塗被紙は、これに多色印刷または単色印刷を施して、チラシ、パンフレット、ポスター等の商業用印刷物として、あるいは書籍、雑誌等の出版物として広く使用されている。近年、印刷物のビジュアル化、カラー化の進展と共に、印刷用塗被紙の高品質化の要求が高まっており、白色度や平滑性等の外観が以前にも増して重要視されている。さらには、チラシ、パンフレット、ポスター等の商業用印刷向けのものは、宣伝媒体としての目的から、低コストで高品質なものが求められている。
【0003】
従来から、表面平滑性および塗被層の被覆性に優れた印刷用塗被紙を製造する手段として、原紙上に安価な顔料を含む下塗り塗被液を塗工して原紙の凹凸をあらまし均一化した後、品質を考慮した上塗り塗被液を塗工する多層塗工が知られている。この方法によれば、原紙上に上塗り塗被層を単層で設けた場合よりも、一般に平滑性および塗被層の被覆性に優れた印刷用塗被紙を得ることができる。
【0004】
印刷用塗被紙のさらなる品質向上のために、前記上塗り塗被層にエンジニアードカオリンや特定の平均粒子径を持つデラミネーテッドカオリンなどの顔料を使用して、表面平滑性および塗被層の被覆性のさらなる向上が図られているが、これらのカオリンは高価であり、印刷用塗被紙の製造コストが高くなるという問題があった(特許文献1、2、3参照)。
【0005】
また、印刷用塗被紙を低コストで製造するために、前記上塗り塗被層の顔料として安価な重質炭酸カルシウムを使用する場合があるが、さらに高い表面平滑性および塗被層の被覆性を得ることが困難であった。このため、パルプ製造工程の苛性化工程で生石灰を水または弱酸で消和後、緑液で苛性化反応させて製造された軽質炭酸カルシウムを使用した塗被紙が提供されているが、平滑性に十分な効果が得られていない(特許文献4、5参照)。
【0006】
このことから、低コストで表面平滑性などの外観に優れた印刷用塗被紙を得るためには、高い表面平滑性および塗被層の被覆性を付与できる安価な材料を探索する必要があり、加えて、原紙自体の平滑性も高める必要があった。
【0007】
【特許文献1】特開平10−237795号公報
【特許文献2】特開平11−302998号公報
【特許文献3】特開2000−199198号公報
【特許文献4】特開平10−226974号公報
【特許文献5】特開2000−136496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、平滑性、塗料被覆性に優れた印刷用塗被紙を安価に提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、原紙の少なくとも片面に顔料と接着剤を含有する塗被層を1層以上設けた印刷用塗工紙において、該原紙に使用される漂白パルプの50%以上が、ユーカリ材もしくはアカシア材を原料とし、蒸解液を分割添加するクラフト蒸解法でパルプ化され、さらにオゾン漂白段を含む多段漂白処理工程で製造された漂白パルプであって、かつ塗被層の最外層に、顔料としてクラフトパルプ製造時に生成される緑液を、生石灰または生石灰を水酸化ナトリウム含有液と反応させて得た消和液で苛性化し、生成する石灰スラッジを固液分離後水洗して粉砕処理を行って製造された軽質炭酸カルシウムを含有することを特徴とする印刷用塗被紙である。
【0010】
前記塗被層の最外層に含有する該軽質炭酸カルシウムの平均粒子径が0.3μmから3.5μmで、かつ顔料100質量部当たり5質量部以上含有することが好ましい。
【0011】
原紙の少なくとも片面に顔料と接着剤を含有する塗被層を1層以上設けた印刷用塗被紙において、該原紙に使用される漂白パルプの50%以上が、ユーカリ材もしくはアカシア材を原料とするものであり、該漂白パルプが蒸解液を分割添加するクラフト蒸解法でパルプ化され、さらにオゾン漂白段を含む多段漂白処理工程で製造されたパルプであって、該漂白パルプを含む紙料をヘッドボックスからループをなす2つのワイヤー間へ噴出しフォーミングロールで脱水して紙層を形成するギャップフォーマタイプのワイヤーパートで湿紙を形成する工程、プレスパートにおいて湿紙を搾水する工程、ドライヤーパートにおいて湿紙を乾燥する工程を経て該原紙が抄紙される工程、かつ該原紙上に塗被液をブレード方式で塗工する工程および金属ロールと弾性ロールの組み合わせからなるカレンダーで平坦化処理する工程を有し、最外塗被層が、顔料として、クラフトパルプ製造時に生成される緑液を、生石灰または生石灰を水酸化ナトリウム含有液と反応させて得た消和液で苛性化し、生成する石灰スラッジを固液分離後水洗して粉砕処理を行って製造された軽質炭酸カルシウムを含有する塗被液で塗工形成されることを特徴とする印刷用塗被紙の製造方法である。
【0012】
前記製造方法において、前記ブレード方式の塗工する工程における塗被液を供給する方法がジェットファウンテン方式であることが好ましい。
【0013】
前記製造方法において、前記の金属ロールと弾性ロールの組み合わせからなるカレンダーが、3本以上のロールと2つ以上のニップから構成されていることが好ましい。
【0014】
前記製造方法において、前記カレンダーのロールが傾斜配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本願発明により、平滑性、塗料被覆性に優れた印刷用塗被紙を安価に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の詳細について述べる。
本発明で使用されるパルプの原材料は、広葉樹材、針葉樹材、非木材のいずれでもよいが、紙に使用するパルプの50%以上は、必ずユーカリ材もしくはアカシア材を原料とする。ユーカリ材としては、E.camaldulensis、E.citriodora、E.deglupta、E.globulus、E.grandis、E.maculata、E.punctata、E.saligna、E.terelicornis、E.urophylla、E.camaldulensis等やこれらの交雑種が挙げられ、また、アカシア材としては、A.aulacocarpa、A.auriculiformis、A.catechu、A.crassicarpa、A.decurrens、A.holosericea、A.leptocarpa、A.maidenii、A.mangium、A.mearnsii、A.melanoxylon、A.neriifolia、A.silvestris、等やこれらの交雑種が挙げられる。ユーカリ材ないしアカシア材を原料としたパルプは、繊維幅が小さいため、紙シートを形成した場合、単位米坪当たりの繊維本数が多くなり、紙シートの平滑性が高くなる。
【0017】
本発明で使用されるパルプを得るための蒸解法としては、クラフト蒸解、ポリサルファイド蒸解、ソーダ蒸解、アルカリサルファイト蒸解等の公知の蒸解法を用いることができるが、必ず蒸解液を分割添加して蒸解する必要がある。蒸解液を分割添加することにより、蒸解全般でのアルカリ濃度を低く抑えることができ、材中のヘミセルロースの溶出が抑えられる。この結果として、ヘミセルロース含有率の高いパルプが得られるため、ヘミセルロース含有量の高いパルプを使用することも本発明の紙物性の発現に欠かせない事項の一つである。蒸解液を分割添加する蒸解法であれば、特に限定されるものではないが、Lo−solids法、Compact蒸解法、Kobudomari蒸解法等の蒸解法は、蒸解時に使用するエネルギー量が少ない、製造されるパルプの漂白性がよい、といった付帯的な効果の点で、好適に用いられる。
【0018】
例えば、クラフト蒸解法を用いる場合、蒸解液の硫化度は5〜75%、好ましくは15〜45%、有効アルカリ添加率は絶乾木材質量当たり5〜30質量%、好ましくは10〜25質量%、蒸解温度は130〜170℃で、蒸解方式は、連続蒸解法あるいはバッチ蒸解法のどちらでもよく、特に問わない。
【0019】
蒸解に際して、使用する蒸解液に蒸解助剤として公知の環状ケト化合物、例えばベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、アントロン、フェナントロキノン及び前記キノン系化合物のアルキル、アミノ等の核置換体、あるいは前記キノン系化合物の還元型であるアントラヒドロキノンのようなヒドロキノン系化合物、さらにはディールスアルダー法によるアントラキノン合成法の中間体として得られる安定な化合物である9,10−ジケトヒドロアントラセン化合物等から選ばれた1種あるいは2種以上が添加されてもよく、その添加率は材の絶乾質量当たり0.001〜1.0質量%である。
【0020】
本発明では、公知の蒸解法により得られた未漂白パルプは、洗浄、粗選及び精選工程を経て、公知のアルカリ酸素漂白法により脱リグニンされる。アルカリ酸素漂白法で脱リグニンすることで、その後の多段漂白工程での漂白薬品使用量を削減でき、パルプの品質の損傷を最小限に留められるためである。本発明に使用されるアルカリ酸素漂白法は、公知の中濃度法或いは高濃度法がそのまま適用できるが、現在、汎用的に用いられているパルプ濃度が8〜15%で行われる中濃度法が好ましい。
【0021】
前記中濃度法によるアルカリ酸素漂白法において、アルカリとしては苛性ソーダあるいは酸化されたクラフト白液を使用することができ、酸素ガスとしては、深冷分離法からの酸素、PSA(Pressure Swing Adsorption)からの酸素、VSA(Vacuum Swing Adsorption)からの酸素等が使用できる。前記酸素ガスとアルカリは中濃度ミキサーにおいて中濃度のパルプスラリーに添加され、混合が十分に行われた後、加圧下でパルプ、酸素及びアルカリの混合物を一定時間保持できる反応塔へ送られて、脱リグニンされる。
【0022】
酸素ガスの添加率は、絶乾パルプ質量当たり0.5〜3質量%、アルカリ添加率は0.5〜4質量%、反応温度は80〜120℃、反応時間は15〜100分、パルプ濃度は8〜15%であり、この他の条件は公知のものが適用できる。本発明では、アルカリ酸素漂白工程において、上記アルカリ酸素漂白を連続して複数回行い、できる限り脱リグニンを進めるのが好ましい実施形態である。
【0023】
アルカリ酸素漂白が施されたパルプは次いで洗浄工程へ送られる。パルプは洗浄後、多段漂白工程へ送られる。本発明の使用される漂白パルプを得るための多段漂白工程では、必ずオゾン漂白段(Z)が用いられる。オゾン漂白段を用いることで、ユーカリ材、アカシア材からのパルプ中に多く含まれるヘキセンウロン酸を分解でき、ヘキセンウロン酸に起因するパルプの色戻りを抑制できるためである。本発明のオゾン漂白段の処理条件は、特に限定されるものではないが、オゾンを過度に反応させた場合にはパルプ強度が損なわれるため、好ましくは、オゾンの添加率は絶乾パルプ質量当たり0.1%〜1.0%であり、さらに好適には0.3%〜0.7%である。処理温度は10℃〜100℃、好ましくは20℃〜70℃、処理時間は1秒〜60分、好ましくは10秒〜5分、処理pHは1.5〜7、好ましくは2〜4である。オゾン漂白段でのパルプ濃度は中濃度でも高濃度でもよく限定されるものではない。また、必要であれば、二酸化塩素、他の漂白薬品を併用することも可能である。
【0024】
本発明の多段漂白工程で使用できる漂白段は、オゾン漂白段を用いること以外は、特に限定されるものではなく、公知の漂白段を用いることができる。公知の漂白段として、二酸化塩素漂白段(D)、アルカリ抽出段(E)、酸素漂白段(O)、過酸化水素漂白段(P)、過酸漂白段(PA)、酸洗浄段(a)、酸処理段(A)等が挙げられる。多段漂白工程の一例を挙げると、Z-E-P-D、Z-E-D-P、Z-E-P-AP、A-Z-E-P-D、A-Z-E-D-P、A-Z-E-P-AP、a-Z-E-P-D、a-Z-E-D-P、a-Z-E-P-AP、Z/D-E-P-D、Z/D-E-D-P、Z/D-E-P-AP、A-Z/D-E-P-D、A-Z/D-E-D-PA-Z/D-E-P-AP、a-Z/D-E-P-D、a-Z/D-E-D-P、a-Z/D-E-P-AP、Z-EO-P-D、Z-EO-D-P、Z-EO-P-AP、A-Z-EO-P-D、A-Z-EO-D-P、A-Z-EO-P-AP、a-Z-EO-P-D、a-Z-EO-D-P、a-Z-EO-P-AP、Z/D-EO-P-D、Z/D-EO-D-P、Z/D-EO-P-AP、A-Z/D-EO-P-D、A-Z/D-EO-D-P、A-Z/D-EO-P-AP、a-Z/D-EO-P-D、a-Z/D-EO-D-P、a-Z/D-EO-P-AP、等が挙げられ、ハイホン部に洗浄段を設けることもできる。また、さらに漂白段を付け加えたり、別の漂白段を前記漂白段に組み込んで併用したりすることもでき、特に限定されるものではない。多段漂白後のパルプは、叩解工程、または抄紙工程へ送られる。
【0025】
また、前記パルプに対して、本発明の効果を損なわない範囲で、砕木パルプ、加圧式砕木パルプ、リファイナ砕木パルプ、サーモメカニカルパルプ等の機械パルプ、脱墨古紙パルプ、損紙などを適宜混合使用することができる。
【0026】
原紙に内添される填料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、石膏、タルク、クレー、焼成カオリン、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、デラミネーテッドカオリン、珪藻土、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の無機顔料や、尿素・ホルマリン樹脂微粒子、微小中空粒子等の有機顔料等が例示でき、古紙や損紙等に含まれる填料も再使用できる。填料は2種類以上の混合使用も可能である。填料の配合量は、一般に紙(原紙)灰分が3〜20質量%の範囲になるように添加される。
【0027】
原紙中にはパルプや填料の他に、内添サイズ剤、アニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤等の抄紙用内添助剤を、必要に応じて添加することができる。内添サイズ剤の具体例としては、例えば、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン−アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系、ロジン系などのサイズ剤が挙げられる。また、歩留向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤の具体例としては、例えば、アルミニウム等の多価金属化合物(具体的には硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性アルミニウム化合物等)、各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、ポリアミド・ポリアミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミイン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド等が例示できる。また、本発明の効果を妨げない範囲で、パルプ繊維間結合の阻害機能を有する嵩高剤、柔軟剤を使用することも可能である。嵩高剤、柔軟剤の具体例としては、例えば、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物、多価アルコールと脂肪酸エステル化合物のポリオキシアルキレン化合物、脂肪酸ポリアミドアミン、多価アルコール系界面活性剤、油脂系非イオン界面活性剤等が例示できる。かかる嵩高剤、柔軟剤の添加量は、一般に、パルプに対して0.05〜2.0質量%程度である。
【0028】
原紙の抄紙条件は、例えば、長網式抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、丸網式抄紙機、短網式抄紙機等の商業規模の抄紙機が、目的に応じて適宜選択して使用できるが、高速性、高操業性から、ギャップフォーマー型抄紙機が特に好ましい。抄紙方式としては、酸性抄紙、中性抄紙、弱アルカリ抄紙等のいずれの方式でも良いが、近年、紙の保存性が要求されることから、中性抄紙により抄紙された原紙が好ましい。原紙には、通常のサイズプレス処理やピグメントサイズプレス処理を施すこともでき、かかるサイズプレス処理の接着剤としては澱粉誘導体、ポリビニルアルコールあるいはポリアクリルアミド等が適宜使用される。これらの抄紙条件で抄紙された原紙の坪量としては、30〜150g/m2の範囲が好ましい。
【0029】
本発明では、原紙上の少なくとも片面に顔料と接着剤を主成分とする塗被層を1層以上設けるが、最外層に配される塗被層の顔料は、クラフトパルプ製造時に生成される緑液を、生石灰または生石灰を水酸化ナトリウム含有液と反応させて得た消和液で苛性化し、生成する石灰スラッジを固液分離後水洗して粉砕処理して製造される軽質炭酸カルシウムを含有するものであり、特開2004−26639号公報に準じて、安価に製造されるものが好適に使用される。この塗被層に使用される軽質炭酸カルシウムは、塗被紙に対して高い不透明度、高い白色度、高い平滑性、良好な通気性を付与するが、これらは以下の理由による。該軽質炭酸カルシウムは、それ自体の白色度が高く、塗工した場合、白色度の高い塗被紙が得られる。また、軽質炭酸カルシウムは粒径分布が比較的狭く、嵩高い顔料塗被層を形成するため、塗被層の光散乱が強く、高い不透明度と白色度を持った塗被紙が得られる。このとき、顔料塗被層はポーラスな構造をとるため、通気性に優れると同時に、印刷時にインキの溶剤成分を吸収しやすく、インキ受理性、インキセット性にも優れる。さらに、軽質炭酸カルシウムは塗被層の被覆性を高めるため、平滑性の高い塗被紙が得られる。
【0030】
ここで製造し使用される軽質炭酸カルシウムは、反応温度、添加速度、反応濃度などの反応条件を変更することにより粒子形状が、紡錘状、立方体状であるカルサイト系や、針状、柱状であるアラゴナイト系など形状の異なるものが得られる。特に針状、柱状のアラゴナイト系軽質炭酸カルシウムは、塗工時に配向しやすいため、さらに高い平滑性を得ることができる。
【0031】
また、前記のようにして製造された軽質炭酸カルシウムを、粉砕処理することで所望の平均粒径のものを得ることができる。粉砕方法としては、ロールミル、ジェットミル、乾式ボールミル、衝撃式粉砕機等の乾式粉砕機による粉砕、湿式ボールミル、振動ミル、撹拌槽型ミル、流通管型ミル、コボールミル等の湿式粉砕機による粉砕が挙げられ、これらの粉砕機を適宜組み合わせて使用する。
【0032】
本発明の最外層に配される塗被層に使用される軽質炭酸カルシウムの平均粒子径は、0.3μmから3.5μmまでの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.3μmから1.5μmまでの範囲である。軽質炭酸カルシウムの平均粒子径が0.3μm未満であると、軽質炭酸カルシウムを含有する塗工液の粘度が上昇して塗工しにくく、また、3.5μmを超えると粗大粒子成分が増加し、塗工層の平滑性が低下するため好ましくない。なお、本発明で記載される軽質炭酸カルシウムの平均粒径は、沈降方式による平均粒径であり、セディグラフ5100(マイクロメリティクス社製)で測定した50累積質量%相当の値である。
【0033】
また、最外層に配される塗被層に、顔料100質量部当たり5質量部以上の前記軽質炭酸カルシウムを含有することが好ましい。5質量部未満の含有量の場合、所望とする平滑性、光沢度、白色度、不透明度が得られ難い。より好ましくは5〜85質量部の範囲である。
【0034】
最外層に配される塗被層に使用される顔料のうち、前記の軽質炭酸カルシウムと併用される顔料は特に限定されるものでなく、本発明の効果を妨げない範囲において、例えば、カオリン、タルク、クレー、焼成カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、サチンホワイト、亜硫酸カルシウム、石膏、硫酸バリウム、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、カイソウ土、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ベントナイト、セリサイト等の無機顔料の他、尿素ホルマリン樹脂微粒子、微小中空粒子などの有機顔料等、一般の塗工用として知られている顔料を併用することができ、必要に応じて1種あるいは2種以上を適宜選択して併用する。2層以上の塗工層の場合、原紙に接する下塗り塗被層、および最外層の塗被層と下塗り塗被層との間にある中間塗被層に使用される顔料は、特に限定されるものでなく、上記顔料を使用することが可能である。
【0035】
さらに、最外層に配される塗被層、下塗り塗被層および中間塗被層用に使用される接着剤についても特に限定するものではなく、通常の塗被紙分野で使用される接着剤、例えば水溶性接着剤として、酸化澱粉、エステル化澱粉、冷水可溶性澱粉などの各種澱粉類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白などの蛋白質類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコールやその変性品などを、また分散液系の接着剤として、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのビニル系重合体ラテックスなどを使用することが可能であり、必要に応じてこれらの中から1種類あるいは2種類以上を適宜選択して使用する。接着剤の配合量については、特に限定されるものではないが、顔料100質量部あたり1〜50質量部配合するのが好ましい。
【0036】
また、最外層に配される塗被層、下塗り塗被層および中間塗被層用の顔料塗被液には、必要に応じて、青系統あるいは紫系統の染料や有色顔料、蛍光染料、増粘保水剤、酸化防止剤、老化防止剤、導電誘導剤、消泡剤、紫外線吸収剤、分散剤、pH調整剤、離型剤、耐水化剤、撥水剤等の各種助剤を適宜配合することができる。
【0037】
本発明に配される塗被層用の顔料塗被液の調製は、顔料を水に分散し顔料スラリーを作成する顔料分散工程、水溶性接着剤を水に溶解し接着剤溶液を作成する水溶性接着剤調製工程、塗料原材料をミキシングして塗工機に適した塗被液を調製する塗料ミキシング工程、スクリーンによって塗被液を精製する塗料スクリーニング工程に大きく分けられ、前記顔料分散工程、あるいは前記顔料分散工程と前記塗料ミキシング工程の両工程において、分散剤を添加する方法で調製されることが好ましい。後者の場合、上記軽質炭酸カルシウムを含有する最外層用の顔料塗被液においては、特に好ましい。
【0038】
特にブレードコーターの場合、アプリケートされた塗被液がブレードの刃先で高せん断応力を受けながら原紙上に塗工される形式であるために、使用する塗被液の性質が操業性と塗工面質とに多大な影響を与える。具体的には、操業中に塗被液がブレード刃先で増粘し、あるいは塗被液中に発生した2次凝集粒子が原因で、塗工面にストリーク、スクラッチ等と称される各種の塗工欠陥を生じる場合がある。こうした塗工欠陥の防止や、良好な塗工面質の形成のためには、高せん断下の塗被液の流動性を高め、塗被液中の凝集物の発生を抑える必要がある。
【0039】
このため、塗被液の流動性を向上させ、塗被液中の凝集物の発生を抑えるためには、顔料分散工程において、分散剤を添加して顔料の分散性を高めるのが有効である。このとき、顔料スラリーは粘度上昇が抑えられ、また、貯蔵タンクにストレージされたときの顔料の再凝集が抑制される。
【0040】
また、塗料ミキシング工程において分散剤を添加することでも、塗被液中の顔料成分の分散性を高め、再凝集を抑制することができる。本発明において、塗料ミキシング工程で添加される分散剤は、前述の顔料分散工程で添加される分散剤を使用することができる。このときの分散剤の添加量は顔料100質量部に対して0.01〜0.2質量部の範囲である。分散剤の添加量が0.01質量部未満は、再凝集を抑制する効果が不十分となり、0.2質量部を超えると、その効果が頭打ちとなり不経済である。
【0041】
本発明で使用される分散剤は、特に制限されるものでなく、公知の分散剤を用いることができる。例えば、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸ナトリウム、ポリカルボン酸アンモニウム、合成ポリカルボン酸塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム、スルホン化スチレン共重合体、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、縮合リン酸塩、リグニンスルホン酸ナトリウムおよびそれらの変性物から適宜選択して、単独または二種類以上混合して使用することができる。
【0042】
このときの分散剤の添加量は、顔料100質量部に対して0.1〜2.0質量部の範囲である。分散剤の添加量が0.1質量部未満だと、顔料に対して分散剤が不足して顔料の分散が不十分となり、2.0質量部を超えると、分散効果が頭打ちとなり不経済である。
【0043】
上記のような塗被液の流動性向上および凝集性抑制は、塗工時の操業性と塗工面質とを向上させるだけでなく、塗被液の高濃度化も可能にする。高濃度の塗被液を塗工することで、原紙への塗料液の染み込みが抑えられて、被覆性が高くなり、より均一な塗工層が得られる結果、印刷面の平滑性および印刷光沢が向上する。また、塗被液の高濃度化により乾燥負荷が低減され、より一層の塗工速度のアップも可能となる。
【0044】
本発明の最外層に配される塗被層、下塗り塗被層および中間塗被層用の顔料塗被液の顔料、接着剤、さらには必要に応じて使用される助剤を含む塗被液の固形分濃度としては、25〜70質量%の範囲で選択できる。塗工量の調整や操業性を考慮すると、50〜60質量%の範囲であることが望ましい。
【0045】
本発明の最外層に配される塗被層、下塗り塗被層および中間塗被層を形成するための塗工装置は、特に限定されるものでなく、当業界で一般的に使用されているトレーリング、フレキシブル、ロールアプリケーション、ファウンテンアプリケーション、ショートドゥエル等のベベルタイプやベントタイプのブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、2本ロールサイズプレスコーター、ゲートロールサイズプレスコーター、フィルムメタリングサイズプレスコーター、スプレーコーター等の塗工装置が適宜使用できるが、優れた表面平滑性が得られるブレードコーターの使用が最も好ましい。
【0046】
ブレードコーターにおいて原紙に塗工液を供給するアプリケーターの方式としては、ファウンテンタイプ、ロールタイプ、ショートドウェルタイプ、ジェットファウンテンタイプ等があるが、高速供給性、塗工面の均一性の観点から、ジェットファウンテンタイプのアプリケーターが好ましい。ジェットファウンテンタイプのアプリケーターには、アプリケーターとブレードの距離(以下ドウェル長)を可変できるバリドウェルタイプ、バッキングロールをアプリケーター部とブレード部のそれぞれに持ちドウェル長を長くしたタイプ、計量ブレードの前にプレブレードを取り付けたタイプ等があり、種々目的に応じ選択し使用することができる。
【0047】
また、これらの塗工装置はオンマシンでもよく、オフマシンであってもよい。2層以上の塗工層を形成した下塗り塗被層あるいは中間塗被層を設けた場合は、最外層の塗被層用顔料塗被液を塗工する前に、ソフトカレンダー等による平滑化処理を施すと、最外層の塗被層形成後も高い平滑性を得ることができ好ましい。
【0048】
また、最外層に配される塗被層および下塗り塗被層および中間塗被層を乾燥する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、蒸気乾燥、ガスヒーター乾燥、電気ヒーター乾燥、赤外線ヒーター乾燥等の各種方式が採用できる。
【0049】
本発明の最外層に配される塗被層の乾燥塗工量としては、片面あたり2〜20g/mである。因みに塗工量が2g/m未満の場合、光沢や平滑等、所望する品質が得がたい。また、20g/mを超えると、効果が頭打ちとなり不経済である。また、下塗り塗被層および中間塗被層を設ける場合の乾燥塗工量としては、片面あたり1〜15g/mである。
【0050】
本発明では、前記の顔料塗工層を形成した後、加熱した金属ロールと弾性ロールの組み合わせからなるカレンダー装置に通紙して平滑化仕上げ処理を行う。カレンダー装置は、少なくとも2本のロールを有し、1ニップ以上を形成できるものであればよく、好ましくは3本以上のロールと2つ以上のニップから構成されているカレンダー装置である。また、2本以上のロールの組み合わせを1スタックとし、これを2スタック以上直列配置して使用することも可能である。更に、該カレンダーが、単一若しくは複数の各スタックにおけるロール配置が弾性ロールと金属ロールの組み合わせからなるソフトニップカレンダー、マルチニップカレンダー等の熱カレンダーであることが好ましい。また単一若しくは複数の各スタックにおけるロールの組み合わせを垂直に配置させるのはもちろんのこと、ロール自重の影響を軽減するために傾斜配置や水平配置とすることも可能である。これらのカレンダー装置には、コーターと一体となっているオンタイプと、コーターと別になっているオフタイプとがあるが、どちらも使用することができる。また、金属ロールの表面温度として60〜500℃の範囲で適宜調整される。また、金蔵ロール表面が硬質クロムメッキ等で鏡面仕上げされたものを使用すると、より一層効果的である。またカレンダー装置の金属ロールと対をなして使用される弾性ロールの材質については特に限定されるものではないが、一般にウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリレート樹脂等の高温高圧で耐久性を示す樹脂ロールや、コットン、ナイロン、アスベスト、アラミド繊維等を成型したロールが利用される。さらに、カレンダー装置には、コーターと別となっているオフタイプと、コーターと一体となっているオンタイプがあるが、どちらも使用することができる。
【実施例】
【0051】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、もちろん、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の部および%はそれぞれ質量部、および質量%を示す。また、使用した薬剤の添加量は、固形分換算の質量部を示す。
【0052】
実施例1
(パルプの作製)
Lo−solids蒸解釜(アンドリッツ(株)製)を用い、アカシアマンギューム:ユーカリグランディス=30:70(質量比)からなる広葉樹チップをLo−solids蒸解法でクラフト蒸解した。なお、白液は硫化度28%のものを用意して、白液添加率は、活性アルカリとして、チップ供給系に対チップ絶乾重量当たり10%、蒸解ゾーンに8%、洗浄ゾーンに2%分割して添加し、蒸解温度は146℃で行なった。蒸解後のチップを解繊した後、洗浄工程、スクリーン工程、さらに再度洗浄工程を経て、未晒パルプを得た。
【0053】
前記未晒パルプに対し、絶乾パルプ重量当たり苛性ソーダを1.7%、酸素を1.8%添加し、パルプ濃度10%、98℃、50分の条件で二段アルカリ酸素漂白を行なった。なお、苛性ソーダは一段目に一括添加し、酸素ガスは一段目に1.0%、二段目に0.8%と分割添加した。アルカリ酸素漂白後のパルプは、洗浄工程で洗浄処理した。
【0054】
前記アルカリ酸素漂白後のパルプに対し、絶乾パルプ重量当たり硫酸を1.2%添加し、パルプ濃度10%、60℃、60分の条件で滞留させた後、洗浄工程で洗浄処理した。次いで、絶乾パルプ重量当たりオゾンを0.5%、二酸化塩素を0.5%添加し、パルプ濃度10%、58℃、60分の条件で中濃度オゾン/二酸化塩素漂白を行なった後、洗浄工程で洗浄処理した。次いで、絶乾パルプ重量当たり苛性ソーダを1.0%、過酸化水素を0.1%添加し、パルプ濃度10%、60℃、90分の条件でアルカリ抽出を行なった後、洗浄工程で洗浄処理した。最後に、絶乾パルプ重量当たり二酸化塩素を0.2%添加して、パルプ濃度10%、70℃、120分の条件で二酸化塩素漂白を行なった後、洗浄工程で洗浄処理し、漂白パルプAを得た。得られた漂白パルプAのISO白色度は90.1%、長さ加重平均繊維長は0.68mm、繊維幅は16.0μmであった。なお、漂白パルプAの長さ加重平均繊維長と繊維幅は、繊維長分布測定装置(機種名:ファイバーラボ、メッツォオートメーション社製)を用いて測定した。
【0055】
(原紙の作製)
前記漂白パルプAをCSF450mlまで叩解して得られた原料パルプからなるパルプスラリー100%に、填料として軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP−121、奥多摩工業社製)を原紙灰分が10%になるように添加した後、パルプスラリーの全固形分に対して硫酸アルミニウム0.5%、カチオン澱粉(商品名:エースK100、王子コーンスターチ社製)0.5%、アルキルケテンダイマーサイズ剤(商品名:サイズパインK−287、荒川化学工業社製)0.1%、ポリアクリルアミド(商品名:ポリストロン851、荒川化学工業社製)0.2%を順次添加して紙料を調製した。この紙料を運転抄速1500m/分でギャップフォーマーにより紙層を形成し、2基のシュープレスで搾水後、多筒式ドライヤーで乾燥し、53g/mの原紙を得た。
【0056】
(下塗り塗被層用顔料塗被液の調製)
重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ60、備北粉化工業社製)からなる顔料スラリーに、顔料100部に対して、接着剤として澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)4部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:OJ−2000、JSR社製)4部を添加し、さらに助剤として消泡剤および染料を順次加えて、最終的に固形分濃度63%の下塗り塗被層用の顔料塗被液を調製した。
【0057】
(軽質炭酸カルシウムの調製)
パルプ製造プロセスにおいて、濃縮黒液の燃焼によって得られるスメルトを弱液に溶解させた緑液(未清澄液)を、Xフィルター(アンドリッツ社製)で処理することにより、清澄化緑液を得た。当該フィルターによるろ過操作において使用したろ布は、200kPaにおける通気度が7m/m/分で規定されるポリプロピレン製ろ布(商品名:S51E06−K2、タムフェルト社製)を使用した。
【0058】
この清澄化緑液を104℃まで加温した後、CaO含量97.5%の生石灰を緑液1リットル当り70gの割合で緑液に混合し、104℃で2時間、消和・苛性化反応を行って石灰乳を得た。白液回収を目的として、この石灰乳をポリプロピレン製ろ布(商品名:PP201A、中尾フィルター社製)にて吸引ろ過して、ケーキ固形分濃度が75%の石灰スラッジを得た。続いて、アルカリ成分の回収を目的として、得られた石灰スラッジに水を添加して再分散することにより固形分濃度30%のスラリーとした後、同様にポリプロピレン製ろ布にて吸引ろ過して固形分濃度75%の脱水ケーキを得た。次いで得られた石灰スラッジの脱水ケーキに水を添加して固形分濃度30%のスラリーとした後、10mm径のアルミナボールを充填したアトライター(MAIS型、三井鉱山社製)で軽度の粉砕処理(小粒子化処理)を行い、スラリー中の分散粒子の平均粒子径を、14μmに調節した。次いでこのスラリーを、脱アルカリを目的としてフィルタープレス機(ISD型リーフテスト機/石垣社製)で、固形分濃度が85%となるまで脱水し、さらに40℃の温水を供給して置換洗浄を行った。
【0059】
上記で得た脱水ケーキに水を加えて固形分濃度75%のスラリーとし、さらに固形分換算で0.4%に相当する分散剤(商品名:アロンA−9、東亜合成社製)と硫酸0.15%を加えてアトライター(前出)で分散処理し、軽質炭酸カルシウムスラリー(平均粒子径5.6μm)を得た。次いで、このスラリーを、縦型サンドミル(アイメックス社製)に供給し、平均粒子径が1.0μmとなるまで粉砕して軽質炭酸カルシウムを得た。なお、上記の平均粒子径は、セディグラフ5100(マイクロメリティクス社製)で測定した50累積質量%相当の値である。
【0060】
(上塗り塗被層用顔料塗被液の調製)
分散剤としてポリアクリル酸ナトリウム(商品名:アロンT−50、東亜合成社製)を、分散するカオリンに対して0.1部添加した水溶液に、微粒カオリン(商品名ハイドラグロス90、ヒューバー社製)50部、上記の軽質炭酸カルシウム50部を添加し、コーレス分散機で分散して顔料スラリーを調製した。この顔料スラリーに、顔料100部に対して、酸化澱粉(商品名:王子エースA、前出)3部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:OJ−2000、JSR社製)7部、さらに助剤として消泡剤および染料を順次加えて、最終的に固形分濃度63%の上塗り塗被層用の顔料塗被液を調製した。
【0061】
(印刷用塗被紙の作成)
上記で得た原紙(坪量53g/m2)に、上記で得た下塗り塗被層用顔料塗被液を、ジェットファウンテン方式で供給するブレードコーターを使用して、片面あたりの乾燥塗布量が8g/m2となるように塗布、乾燥して両面に下塗り層を形成した。次いで、下塗り層の各々に上記で得た上塗り塗被層用塗被液を、ジェットファウンテン方式で供給するブレードコーターを使用して、片面あたりの乾燥塗布量が8g/m2となるよう塗布、乾燥して、両面に上塗り塗被層を設けた。このようにして得られた塗被紙を、100℃に加熱した金属ロールと樹脂ロールが傾斜配置されたマルチニップカレンダーに、線圧200kN/mの条件下で、片面が金属ロールと樹脂ロールにそれぞれ4回ずつ接触するように合計8ニップの通紙を行い、坪量85g/mの印刷用塗被紙を得た。
【0062】
実施例2
実施例1の上塗り塗被層用顔料塗被液の調製において、顔料スラリーに、酸化澱粉(商品名:王子エースA、前出)3部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:OJ−2000、JSR社製)7部を加える際に、分散剤としてポリアクリル酸ナトリウム(商品名:アロンT−50、東亜合成社製)0.1部を添加した以外は、実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
【0063】
実施例3
実施例1のパルプの作製において、広葉樹チップのアカシアマンギューム:ユーカリグランディス=50:30(質量比)およびバーチ=20に変更して、蒸解温度を157℃に変えて漂白パルプBを作成し、かつ、実施例1の原紙の作製において、漂白パルプAを漂白パルプBに変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。なお、得られた漂白パルプBのISO白色度は89.9%、長さ加重平均繊維長は0.69mm、繊維幅は16.8μmであった。
【0064】
比較例1
実施例1のパルプの作製において、広葉樹チップのアカシアマンギューム:ユーカリグランディス=30:70(質量比)をバーチ=100に変更して、蒸解温度を157℃に変えて漂白パルプCを作成した以外は、実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。なお、得られた漂白パルプCのISO白色度は89.2%、長さ加重平均繊維長は0.76mm、繊維幅は20.2μmであった。
【0065】
比較例2
比較例1において、実施例1の上塗り塗被層用顔料塗被液の調製において、苛性化軽質炭酸カルシウムAを重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、備北粉化工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
【0066】
比較例3
実施例1のパルプの作製において、広葉樹チップのアカシアマンギューム:ユーカリグランディス=10:30(質量比)およびバーチ=60に変更して、蒸解温度を157℃に変えて漂白パルプDを作成し、かつ、実施例1の原紙の作製において、漂白パルプAを漂白パルプDに変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。なお、得られた漂白パルプDのISO白色度は89.5%、長さ加重平均繊維長は0.72mm、繊維幅は18.5μmであった。
【0067】
実施例および比較例で得た印刷用塗被紙は、以下の方法で評価し、その結果を表1に示した。なお、以下の評価試験は、23℃、相対湿度50%の環境下で行った。
【0068】
(塗被紙の光沢度)
JIS P 8142:1993に準じて、光沢度計(GM−25、村上色彩研究所社製)を用いて75度光沢度を測定した。
【0069】
(塗被紙のPPS平滑度)
パーカープリントサーフ(PPS)表面平滑度試験機(機種名:MODEL M−569型、MESSMER BUCHEL社製、英国)を用い、バッキングディスク:ソフトラバー、クランプ圧力:0.98MPaで5回平滑度測定を行い、その平均値を求めた。なお、数値が小さいほど平滑性が高くなる。
【0070】
(印刷平滑性)
RI印刷試験機(明製作所製)で、印刷インキ(商品名:FUSION−G墨Sタイプ、大日本インキ社製)を0.6cc使用して印刷を行い、23℃、50%RHの雰囲気で48時間放置してインキを乾燥させ、印刷平滑性を目視評価した。評価は次の5段階評価で行った。5(優)−1(劣)である。
【0071】
【表1】

【0072】
表1から明らかなように、本発明により平滑性に優れた、適用が十分可能な印刷用塗被紙を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙の少なくとも片面に顔料と接着剤を含有する塗被層を1層以上設けた印刷用塗被紙において、該原紙に使用される漂白パルプの50%以上がユーカリ材もしくはアカシア材を原料とするものであり、該漂白パルプが蒸解液を分割添加するクラフト蒸解法でパルプ化され、さらにオゾン漂白段を含む多段漂白処理工程で製造されたパルプであって、かつ該塗被層の最外層に、顔料としてクラフトパルプ製造時に生成される緑液を、生石灰または生石灰を水酸化ナトリウム含有液と反応させて得た消和液で苛性化し、生成する石灰スラッジを固液分離後水洗して粉砕処理を行って製造された軽質炭酸カルシウムを含有することを特徴とする印刷用塗被紙。
【請求項2】
前記塗被層の最外層に含有する該軽質炭酸カルシウムの平均粒子径が0.3μmから3.5μmで、かつ顔料100質量部当たり5質量部以上含有することを特徴とする請求項1に記載の印刷用塗被紙。
【請求項3】
原紙の少なくとも片面に顔料と接着剤を含有する塗被層を1層以上設けた印刷用塗被紙において、該原紙に使用される漂白パルプの50%以上が、ユーカリ材もしくはアカシア材を原料とするものであり、該漂白パルプが蒸解液を分割添加するクラフト蒸解法でパルプ化され、さらにオゾン漂白段を含む多段漂白処理工程で製造されたパルプであって、該漂白パルプを含む紙料をヘッドボックスからループをなす2つのワイヤー間へ噴出しフォーミングロールで脱水して紙層を形成するギャップフォーマタイプのワイヤーパートで湿紙を形成する工程、 プレスパートにおいて湿紙を搾水する工程、ドライヤーパートにおいて湿紙を乾燥する工程を経て該原紙が抄紙される工程、かつ該原紙上に塗被液をブレード方式で塗工する工程および金属ロールと弾性ロールの組み合わせからなるカレンダーで平坦化処理する工程を有し、最外塗被層が、顔料として、クラフトパルプ製造時に生成される緑液を、生石灰または生石灰を水酸化ナトリウム含有液と反応させて得た消和液で苛性化し、生成する石灰スラッジを固液分離後水洗して粉砕処理を行って製造された軽質炭酸カルシウムを含有する塗被液で塗工形成されることを特徴とする印刷用塗被紙の製造方法。
【請求項4】
前記ブレード方式の塗工する工程における塗被液を供給する方法がジェットファウンテン方式である請求項3に記載の印刷用塗被紙の製造方法。
【請求項5】
前記の金属ロールと弾性ロールの組み合わせからなるカレンダーが、3本以上のロールと2つ以上のニップから構成されている請求項3または4に記載の印刷用塗被紙の製造方法。
【請求項6】
前記カレンダーのロールが傾斜配置されている請求項3〜5のいずれか1項に記載の印刷用塗被紙の製造方法。

【公開番号】特開2010−150717(P2010−150717A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331951(P2008−331951)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】