説明

印刷用多層塗工紙の製造方法

【課題】本発明の目的は、製造工程において塗工欠陥が無く、艶消し塗工紙で面感に優れる印刷用多層塗工紙を提供する。
【解決手段】本発明は、基紙上の片面あるいは両面に、主として顔料および接着剤を含有する塗工層を少なくとも2層以上設けてなる印刷用塗工紙において、該塗工層のうち最上層に設けられる塗工層にクロライトを全顔料固形分100質量部中70〜100質量部使用し、且つ最下層をブレードコーターによって塗設し、最上層をエアーナイフコーターによって塗設することを特徴とする印刷用多層塗工紙に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用多層塗工紙の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは塗工欠陥が無く、艶消し塗工紙で優れた面感である印刷用多層塗工紙の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、塗工紙は非塗工紙と比較して平滑性に優れ、インキの吸収性が均一であることから、印刷用紙として広く用いられている。近年、印刷物の視覚化、カラー化、高級化が進み、印刷用塗工紙への品質要求のレベルが益々高くなってきている。特に、雑誌類・写真集・書籍などの出版物や、カタログ・ポスター・カレンダーなどの商業印刷物においては写真画像が多く使われるため、網点再現性やインキ着肉性が印刷物の重要なポイントとなっている。それに伴って、印刷用塗工紙の平滑性、インキ受理性および印刷光沢の向上に対する要求がより一層高まっている。
【0003】
印刷光沢向上化の一方で、より上質感を訴えかけたい商品や雑誌などの用途で、白色度が高く光の正反射が少なく文字が読みやすいなどの理由から、光沢を抑えた艶消し塗工紙であるマットコート紙やマットアート紙の需要が近年増えてきている。
【0004】
塗工紙は、光沢塗工紙と艶消し塗工紙に大別される。光沢塗工紙は、従来高級印刷に用いられていたアート紙やスーパーアート紙、あるいはカタログやパンフレットなどに用いられるコート紙などがあり、印刷仕上がりは白紙光沢も印刷光沢も高いグロス調である。艶消し塗工紙は、ダル調、マット調があり、グロス調よりも白紙光沢や印刷光沢が低いものである。またマット調はダル調よりも白紙光沢が低いものである。
【0005】
これらの艶消し塗工紙の塗工層で使われる顔料には、板状で光沢の出やすいカオリンの配合比を減らして、立方形や紡錘形や柱状形をした炭酸カルシウムの配合比を増やしている。炭酸カルシウムの配合比が多いことで塗工紙は白くて光沢の出にくいものになるが、平滑性が低下しやすいことと、平滑性が低下することで印刷部分と白紙部分が擦れたりすると白紙部分にインキ汚れが付着してしまい美観を損ねてしまう。
【0006】
また、近年の印刷技術により、どこまでオリジナルの写真原稿に近づけるかという観点から、網点の大きさを小さくしていく高精細化の方法が実用化されている。従来の網点の発生の仕方で、濃淡を網点の大小で表現する場合を高精細印刷といい、網点密度を変えることで濃淡を表現する場合をFMスクリーンという。どちらも従来印刷での網点の大きさよりも小さな網点で印刷されるため、塗工紙の平滑性が劣ると正確に網点が印刷されず、印刷の仕上がりも綺麗ではなくなる。面感や平滑性の良い方が当然有利であり、面感や平滑性の良い光沢塗工紙では問題となる場合は少ないが、面感や平滑性のやや劣る艶消し塗工紙では、光沢塗工紙よりも網点再現性が劣る可能性があり、より上質感を訴えかけたいために高白色で低光沢な艶消し塗工紙を使用したくても、網点再現性の観点から使用をためらう場合もあった。
【0007】
これらの問題を解決するための方法の一つに、最表面塗工層の顔料にクロライトを使用し、塗工量やカレンダー条件を調整しベック平滑度、75°光沢値、白色度、最大摩擦係数を制御する方法が提案されている(例えば特許文献1、2、3参照)。これらの方法は、網点再現性も良好であるが、しかしさらに面感や平滑性を高めながらも低光沢で網点再現性の良好である塗工紙を製造するための方法において、塗工層に用いられる全顔料固形分100質量部中クロライトが70質量部を超える領域での安定操業は困難であるのが現状である。
【特許文献1】特開2005−133226号公報
【特許文献2】特開2005−139565号公報
【特許文献3】特開2005−154933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、製造工程において塗工欠陥が無く、艶消し塗工紙で優れた面感である印刷用多層塗工紙の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した問題点を解決するために、鋭意検討した結果、本発明の印刷用多層塗工紙の製造方法を発明するに至った。
【0010】
本発明者は、上記に鑑み鋭意研究した結果、基紙上の片面あるいは両面に、主として顔料および接着剤を含有する塗工層を少なくとも2層以上設けてなる印刷用塗工紙において、該塗工層のうち最上層に設けられる塗工層にクロライトを全顔料固形分100質量部中70〜100質量部使用し、且つ最下層をブレードコーターによって塗設し、最上層をエアーナイフコーターによって塗設することを特徴とする印刷用多層塗工紙の製造方法を発明するに至った。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、製造工程において塗工欠陥が無く、艶消し塗工紙で優れた面感である印刷用多層塗工紙が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の印刷用塗工紙について詳細に説明する。
【0013】
本発明は、基紙上の片面あるいは両面に、主として顔料および接着剤を含有する塗工層を少なくとも2層以上設けてなる印刷用多層塗工紙において、該塗工層のうち最上層に設けられる塗工層にクロライトを全顔料固形分100質量部中70〜100質量部使用し、且つ最下層をブレードコーターによって塗設し、最上層をエアーナイフコーターによって塗設することを特徴とする印刷用多層塗工紙の製造方法により、製造工程において塗工欠陥が無く、艶消し塗工紙で優れた面感である印刷用多層塗工紙が得られる。
【0014】
本発明の最上層を形成するための塗工液に用いられる顔料として、クロライトを含むことを特徴とする。クロライトは、緑泥石とも呼ばれ、マグネシウム、アルミニウムなどを主成分とする含水珪酸塩鉱物であり、化学組成はMg2Al(OH)6・Mg3(Si3Al)O10(OH)2である。
【0015】
このクロライトは、扁平でアスペクト比が大きいので塗工面の平滑性を改善し、基紙被覆性の向上に効果がある。また滑りやすい性質を有しているので、塗工面の動摩擦係数を小さくするので印刷後のインキ擦れ汚れの低減に効果がある。また同じく板状顔料で化学組成的にも類似しているタルクと比べて親水性が高く、塗工液を調製するときに高濃度にすることが可能になる。
【0016】
また、クロライトは白色度が90%以上と高白色度であるため、カオリンのように、塗工紙の白色度を大きく低下させるというようなことがない。
【0017】
本発明において、上記クロライト以外で最上層の塗工液に用いられる顔料は、特に限定されるものではなく、例えば、各種カオリン、タルク、粉砕炭酸カルシウムなどの精製した天然鉱物顔料、サチンホワイト、リトポンなどの複合合成顔料、二酸化チタン、沈降性炭酸カルシウム、水酸化アルミナなどの半合成顔料、プラスチック顔料などの合成顔料が挙げられ、印刷用多層塗工紙に顔料として一般に用いられるものは適宜自由に併用できる。
【0018】
本発明は、基紙上の片面あるいは両面に、主として顔料および接着剤を含有する塗工層を少なくとも2層以上設けてなる印刷用多層塗工紙において、該塗工層のうち最上層に設けられる塗工層にクロライトを全顔料固形分100質量部中70〜100質量部使用し、且つ最下層をブレードコーターによって塗設し、最上層をエアーナイフコーターによって塗設することを特徴とする。最上層の塗工液の固形分濃度は特に限定されるものではないが、好ましくは30〜50質量%にすることで、エアーナイフ塗工での操業性や被覆性が良好となる。最上層を設ける塗工装置が例えばブレードコーターであれば、該塗工層に用いられる全顔料固形分100質量部中クロライトが70質量部を超えると粘度の上昇により塗工液の流動性が悪化しブレード先端に塗工液の凝集物が付着しやすくなり、これによってストリークやスクラッチなどの塗工欠陥を引き起こしやすくなる。また、カーテンコーターのような輪郭塗工方式であるとストリークやスクラッチなどの塗工欠陥は無くなるが、塗工面の平滑性、特に印刷後の面感が劣る。
【0019】
また、本発明に係わる最下層を形成するための塗工液に用いられる顔料は、特に限定されるものではなく、例えば、各種カオリン、タルク、粉砕炭酸カルシウムなどの精製した天然鉱物顔料、サチンホワイト、リトポンなどの複合合成顔料、二酸化チタン、沈降性炭酸カルシウム、水酸化アルミナなどの半合成顔料、プラスチック顔料などの合成顔料が挙げられる。
【0020】
そして、本発明に係わる最下層を形成するための方法にはブレードコーターを用いる。ブレードコーターは、塗液濃度が高いことと塗工量の制御範囲が広いので、基紙の被覆性が良く、且つ平滑性の高い最下層を得ることができ、最上層に使用する顔料のクロライトとの相乗効果で優れた面感が得られる。塗工時の塗工液の固形分濃度は一般に40〜75質量%で、操業性を考慮すると45〜70質量%で調製され、塗工量としては乾燥質量で一般に片面あたり10g/m2以上に調整するのがよい。最下層を設ける塗工装置が、例えばゲートロール、シムサイザーなどのフィルムトランスファーコーターでは、塗工量の上限にある程度の制限があることから基紙の被覆性がブレードコーターよりも劣り、塗工面の平滑性もブレードコーターには及ばない。またエアーナイフコーターでは、塗液濃度がブレードコーター用よりも低いので基紙の被覆性がブレードコーターよりも劣り、塗工面の平滑性もブレードコーターには及ばない。
【0021】
本発明に用いられる基紙は、LBKP、NBKPなどの化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CGPなどの機械パルプ、および故紙パルプなどの各種パルプを含み、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリンなどの各種填料、サイズ剤、定着剤、歩留り剤、紙力増強剤などの各種配合剤を好適に配合して抄造され、酸性、中性、アルカリ性のいずれかでも抄造できる。
【0022】
本発明に用いられる基紙としては、ノーサイズプレス原紙、あるいはデンプン、ポリビニルアルコールなどでサイズプレスされた基紙などを挙げることができる。また本発明における基紙の抄紙方法における抄紙機は、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、コンビネーション抄紙機、円網抄紙機、ヤンキー抄紙機など製紙業界で公知の抄紙機が適宜使用できる。基紙のISO白色度に関しては何ら制限されるものではないが、84%以上であることが好ましい。
【0023】
本発明に用いられる塗工液に配合される接着剤には特に制限はなく、例えば、通常のデンプン、酸化デンプン、リン酸エステル化デンプン、酵素変性デンプンやそれらをフレッシュドライして得られる冷水可溶性デンプンなどのデンプン類、スチレン−ブタジエン系、アクリル系、酢酸ビニル系などの各種共重合ラテックス、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリアまたはメラミン/ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン/エピクロルヒドリンなどの水溶性合成物、ワックス、カゼイン、大豆蛋白などの天然物およびこれらをカチオン化したものなどが挙げられる。これを単独で用いても構わないし、これらのうち複数種を併用することは何ら制限されるものではない。
【0024】
本発明に用いられる塗工液には、一般的に塗工紙を製造する上で用いられるものは全て配合して構わない。例えば、増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ポリアクリル酸ソーダなどの水溶性高分子、ポリアクリル酸塩、スチレンマレイン酸無水共重合体などの合成重合体、珪酸塩などが挙げられる。その他、必要に応じて、分散剤、pH調整剤、潤滑剤、消泡剤、耐水化剤、界面活性剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤などの各種助剤、およびこれらの各種助剤をカチオン化したものが好適に用いられる。必要に応じて他の成分を配合して構わない。
【0025】
本発明における印刷用多層塗工紙は、最表層に用いる塗工液を塗工、乾燥後、スーパーカレンダーやソフトカレンダーで処理することが好ましい。
【実施例】
【0026】
以下に実施例により本発明をより具体的に説明するが、これら実施例に限定されるものではない。
【0027】
各実施例、比較例における印刷用多層塗工紙の物性評価は以下の方法で行った。
<評価方法>
1)塗工欠陥
印刷用多層塗工紙の塗工欠陥は、実際に各実施例の通りに印刷用多層塗工紙を製造し、塗工面の状態を目視で判断し、エアーナイフ塗工ではエアーナイフスジを、ブレード塗工ではストリーク、スクラッチを以下の四段階で評価した。ただし本発明においては、◎を発明の対象とした。
◎:塗工欠陥はほとんど確認されない。
○:塗工欠陥がわずかに観測される。
△:塗工欠陥が観測される。
×:塗工欠陥が明らかに観測され、問題である。
2)面感
印刷用多層塗工紙の面感は、枚葉オフセット印刷機(三菱重工社製DAIYA3H)を用い、得られた印刷物の画像部表面の光沢ムラ、ざらつき感などを目視で判断し、以下の四段階で評価した。ただし本発明においては、◎を発明の対象とした。
◎:光沢ムラ、ざらつき感などがほとんど確認できない。
○:光沢ムラ、ざらつき感などがわずかに確認できる。
△:光沢ムラ、ざらつき感などが確認できるが、実用上は問題ない。
×:光沢ムラ、ざらつき感などが確認でき、問題である。
【0028】
基紙は以下のような配合で調製し、坪量76g/m2の塗工用基紙を抄造した。ここでの質量部は、全パルプ固形分100質量部に対する各材料の固形分質量比率である。
<基紙配合>
ECF漂白されたLBKP(濾水度440mlcsf) 70質量部
ECF漂白されたNBKP(濾水度490mlcsf) 30質量部
<内添薬品>
軽質炭酸カルシウム(基紙中灰分で表示) 6.0質量部
市販カチオン化デンプン 1.0質量部
市販カチオン系ポリアクリルアミド歩留り向上剤 0.030質量部
【0029】
印刷用多層塗工紙は以下のようにして製造した。上記のようにして製造した基紙に、各実施例のようにして両面に最下層用塗工液を塗工し、乾燥して最下層塗工紙を得た。得られた最下層塗工紙にエアーナイフコーター方式の塗工装置を用いて両面に最上層を設け、乾燥した。得られた多層塗工紙にオフラインでスーパーカレンダー装置により仕上げ処理し、印刷用多層塗工紙を製造した。
【0030】
(実施例1)
最下層を設けるための塗工液は以下のようにして調製した。ここでの質量部は、塗工液中全顔料固形分100質量部に対する各材料の固形分質量比率である。市販高白1級カオリン(ヒューバー社製ハイドラファイン90)に、市販ポリアクリル酸系分散剤0.10質量部添加して、分散機で固形分濃度72質量%で分散しカオリンスラリーを得た。このカオリンスラリーと市販湿式重質炭酸カルシウムスラリー(ファイマテック社製FMT−90、固形分濃度75質量%)を顔料固形分質量比がカオリン:湿式重質炭酸カルシウム=25:75になるように攪拌混合して最下層用顔料スラリーを得た。この最下層用顔料スラリーに、接着剤として市販スチレン−ブタジエン共重合ラテックスを10質量部、市販リン酸エステル化デンプンを2質量部添加し、さらに市販ステアリン酸カルシウムを0.50質量部添加し、水酸化ナトリウムでpH9.6に調整し、さらに調整水で固形分濃度65質量%にし、最下層用塗工液を得た。このようにして調製した最下層用塗工液を、ブレードコーターを用いて片面当たりの塗工固形分質量10g/m2、両面で20g/m2の条件で塗工し、乾燥後、最下層塗工紙を得た。最上層を設けるための塗工液は以下のようにして調製した。市販クロライト(兼松ケミカル社製NK−CW)に、市販ポリアクリル酸系分散剤を0.50質量部添加して、分散機で固形分濃度60質量%で分散しクロライトスラリーを得た。このクロライトスラリーと市販湿式重質炭酸カルシウムスラリー(ファイマテック社製FMT−97、固形分濃度75質量%)を顔料固形分質量比がクロライト:湿式重質炭酸カルシウム=70:30になるように攪拌混合して最上層用顔料スラリーを得た。この最上層用顔料スラリーに、接着剤として市販スチレン−ブタジエン共重合ラテックスを11質量部、市販リン酸エステル化デンプンを2質量部添加し、さらに市販ステアリン酸カルシウムを0.70質量部添加し、水酸化ナトリウムでpH9.6に調整し、さらに調整水で固形分濃度45質量%にし、最上層用塗工液を得た。このようにして調製した最上層用塗工液を、エアーナイフコーターを用いて片面当たりの塗工固形分質量6g/m2、両面で12g/m2の条件で、最下層塗工紙の上に直接塗工した。乾燥後、上記のように仕上げ処理し、印刷用多層塗工紙を得た。得られた印刷用多層塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0031】
(実施例2)
実施例1において、最上層用顔料スラリーの顔料固形分質量比を、クロライト:湿式重質炭酸カルシウム=80:20にし、最上層用塗工液の固形分濃度を42質量%にした以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用多層塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0032】
(実施例3)
実施例1において、最上層用顔料スラリーの顔料固形分質量比を、クロライト:湿式重質炭酸カルシウム=90:10にし、最上層用塗工液の固形分濃度を38質量%にした以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用多層塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0033】
(実施例4)
実施例1において、最上層用顔料スラリーの顔料固形分質量比を、クロライト:湿式重質炭酸カルシウム=100:0にし、最上層用塗工液の固形分濃度を34質量%にした以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用多層塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0034】
(比較例1)
実施例1において、最上層用顔料スラリーの顔料固形分質量比を、クロライト:湿式重質炭酸カルシウム=60:40にし、最上層用塗工液の固形分濃度を45質量%にした以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用多層塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0035】
(比較例2)
実施例1において、最上層用顔料スラリーの顔料固形分質量比を、クロライト:湿式重質炭酸カルシウム=10:90にし、最上層用塗工液の固形分濃度を45質量%にした以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用多層塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0036】
(比較例3)
最下層を設けるための塗工液は以下のようにして調製した。ここでの質量部は、塗工液中全顔料固形分100質量部に対する各材料の固形分質量比率である。市販高白1級カオリン(ヒューバー社製ハイドラファイン90)に、市販ポリアクリル酸系分散剤を0.10質量部添加して、分散機で固形分濃度72質量%で分散しカオリンスラリーを得た。このカオリンスラリーと市販湿式重質炭酸カルシウムスラリー(ファイマテック社製FMT−90、固形分濃度75質量%)を顔料固形分質量比がカオリン:湿式重質炭酸カルシウム=25:75になるように攪拌混合して最下層用顔料スラリーを得た。この最下層用顔料スラリーに、接着剤として市販スチレン−ブタジエン共重合ラテックスを10質量部、市販リン酸エステル化デンプンを2質量部添加し、さらに市販ステアリン酸カルシウムを0.50質量部添加し、水酸化ナトリウムでpH9.6に調整し、さらに調整水で固形分濃度61質量%にし、最下層用塗工液を得た。このようにして調製した最下層用塗工液を、フィルムトランスコーターの一種であるゲートロールコーターを用いて片面当たりの塗工固形分質量6g/m2、両面で12g/m2を塗工し、乾燥後、最下層塗工紙を得た。最上層を設けるための塗工液は以下のようにして調製した。市販クロライト(兼松ケミカル社製NK−CW)に、市販ポリアクリル酸系分散剤を0.50質量部添加して、分散機で固形分濃度60質量%で分散しクロライトスラリーを得た。このクロライトスラリーと市販湿式重質炭酸カルシウムスラリー(ファイマテック社製FMT−97、固形分濃度75質量%)を顔料固形分質量比がクロライト:湿式重質炭酸カルシウム=70:30になるように攪拌混合して最上層用顔料スラリーを得た。この最上層用顔料スラリーに、接着剤として市販スチレン−ブタジエン共重合ラテックスを11質量部、市販リン酸エステル化デンプンを2質量部添加し、さらに市販ステアリン酸カルシウムを0.70質量部添加し、水酸化ナトリウムでpH9.6に調整し、さらに調整水で固形分濃度60質量%にし、最上層用塗工液を得た。このようにして調製した最上層用塗工液を、ブレードコーターを用いて片面当たりの塗工固形分質量10g/m2、両面で20g/m2の条件で、最下層塗工紙の上に直接塗工した。乾燥後、得られた多層塗工紙にオフラインでスーパーカレンダー装置により仕上げ処理し、印刷用多層塗工紙を得た。得られた印刷用多層塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0037】
(比較例4)
比較例3において、最上層用顔料スラリーの顔料固形分質量比を、クロライト:湿式重質炭酸カルシウム=100:0にし、最上層用塗工液の固形分濃度を57質量%にした以外は、全て比較例3と同様にして行った。得られた印刷用多層塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0038】
実施例1〜4、比較例1〜4の条件、評価結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1の結果から明らかな様に、基紙上の片面あるいは両面に、顔料と接着剤を主成分とする塗工液を用いて塗工層を少なくとも2層以上設けてなる印刷用多層塗工紙において、該塗工層のうち最上層に設けられる塗工層にクロライトを全顔料固形分100質量部中70〜100質量部使用し、且つ最下層をブレードコーターによって塗設し、最上層をエアーナイフコーターによって塗設することを特徴とすることにより、製造工程において塗工欠陥が無く、艶消し塗工紙で面感に優れる印刷用多層塗工紙が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙上の片面あるいは両面に、主として顔料および接着剤を含有する塗工層を少なくとも2層以上設けてなる印刷用多層塗工紙において、該塗工層のうち最上層に設けられる塗工層にクロライトを全顔料固形分100質量部中70〜100質量部使用し、且つ最下層をブレードコーターによって塗設し、最上層をエアーナイフコーターによって塗設することを特徴とする印刷用多層塗工紙の製造方法。

【公開番号】特開2009−191394(P2009−191394A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32195(P2008−32195)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】