説明

印刷画像処理装置、印刷装置、印刷画像処理方法および印刷画像処理プログラム

【課題】両面印刷が可能なプリンタで印刷する場合の裏映りの影響を軽減して読みやすい印刷結果を得ることを可能とする印刷画像処理装置等を提供する。
【解決手段】本発明に係る印刷画像処理装置は、アプリケーションソフトを実行して表面用および裏面用の画像データを出力するアプリケーション実行部101と、表面用および裏面用の画像データの各々の画素濃度と予め与えられた印刷用紙の透過率とから表面用および裏面用の印刷用画像データを作成する印刷用画像データ処理部102と、表面用および裏面用の印刷用画像データをプリンタに対して送信して各々同一の印刷用紙の表面および裏面に印刷させる印刷出力部103とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷画像処理装置、印刷装置、印刷画像処理方法および印刷画像処理プログラムに関し、特に両面印刷する場合の裏写りの影響を軽減しうる印刷画像処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスオートメーションの普及に伴い、コンピュータ装置からの出力を紙に印刷するプリンタが使用される機会も多くなっている。ネットワークに接続された複数のコンピュータに共有されるネットワークプリンタや、コピー機やファックスなどの機能を備えたコピーファクシミリ複合機なども、急速に普及している。印刷方式としては、熱転写方式、インクジェット方式、乾式電子写真方式(レーザープリンタ)などが主に使われている。
【0003】
そして、それらのプリンタや複合機などの中には、1枚の紙の両面に対して印刷を行うことが可能なものも多くなっている。紙資源の節約の必要性が叫ばれる近年は特に、両面印刷が使用される機会が一般のオフィスでも多くなっている。
【0004】
図8は、既存のコンピュータ801での両面印刷について示す説明図である。コンピュータ801には両面印刷が可能なプリンタ822が接続されている。コンピュータ801が備える主演算制御手段(CPU)811は、ソフトウェアの実行により、ワープロ、表計算、ウェブブラウザなどのアプリケーションソフトを実行するアプリケーション実行部901と、アプリケーション実行部901で作成された印刷データをプリンタ822に出力する印刷出力部902の各々として動作する。
【0005】
アプリケーション実行部901は、ユーザから印刷の操作を入力されると、これに応じて印刷用紙の表面および裏面に印刷すべき表面画像データ951および裏面画像データ952を生成して記憶手段812に記憶させて、その制御を印刷出力部902に渡す。印刷出力部902は、これら表面画像データ951および裏面画像データ952をプリンタ822に出力して、同一の用紙の表と裏に各々印刷させる。
【0006】
これに関連する技術として、次の各々がある。その中でも特許文献1には、両面印刷を行う際に、裏映りの影響を排除するために印刷画像のレイアウトを変更するという画像出力システムが記載されている。特許文献2には、表面用の画像データに媒体の透過率に相当する係数を乗算した透過画像データを裏面用の画像データから減算して印刷するという画像データ処理装置が記載されている。特許文献3には、裏映りした原稿からスキャンした画像からこの裏映りの影響を削減するという画像形成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−094666号公報
【特許文献2】特開2010−118808号公報
【特許文献3】特開平06−062216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図9は、図8に示したコンピュータ801がプリンタ822に出力する表面画像データ951および裏面画像データ952で両面印刷を行った場合に、実際に印刷される印刷後表面画像961および印刷後裏面画像962について示す説明図である。紙の上に印刷された印刷後表面画像961および印刷後裏面画像962は、実際には意図した側の面からだけでなく、その裏側の面からも見える。本明細書では、この現象を裏映りという。
【0009】
印刷用紙上のある地点での表面画像データ951の画素濃度をx、このxの地点の裏側から印刷される裏面画像データ952の画素濃度をy、そしてこの印刷用紙の透過率をaとすると、これら表面画像データ951および裏面画像データ952をそのままプリンタ822に出力して得られる印刷後表面画像961の画素濃度は、以下の数1で示される。
【数1】

【0010】
図9で示されているように、印刷後表面画像961は、望まれている画素濃度xに裏移りした裏面画像データ952の画素濃度a×yが加わって、その分濃い画素濃度となってしまう。印刷後裏面画像962についても同様である。
【0011】
この、印刷後表面画像961および印刷後裏面画像962における裏映りの影響を低減しうる技術は、前述の特許文献1〜3には記載されていない。特許文献1に記載の発明は、画像データの「レイアウト変更」を行って印刷後の画像を見やすくしているが、裏映り自体を低減するものではない。
【0012】
特許文献2に記載の発明は、表面の印刷データから裏面の印刷データを修正して裏映りの影響を低減しているが、表面の印刷データを修正していないので、裏面から見た裏映りを低減していない。特許文献3に記載の発明は、裏映りした原稿からスキャンした画像から裏映りの影響を低減するものではあるが、印刷時の裏映りの影響を低減するものではない。
【0013】
本発明の目的は、両面印刷が可能な印刷装置(プリンタ)で印刷する場合の裏映りの影響を軽減して読みやすい印刷結果を得ることを可能とする印刷画像処理装置、印刷装置、印刷画像処理方法および印刷画像処理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷画像処理装置は、両面印刷が可能なプリンタに対して表面用および裏面用の印刷用画像データを送信してこれらの印刷用画像データを各々同一の印刷用紙の表面および裏面に印刷させる印刷画像処理装置であって、予め与えられた印刷用紙の透過率に応じて、与えられた表面用および裏面用の画像データの各々の画素濃度を調整して表面用および裏面用の印刷用画像データを作成する印刷用画像データ処理部と、表面用および裏面用の印刷用画像データをプリンタに対して送信する印刷出力部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷装置は、請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の印刷画像処理装置と、印刷画像処理装置によって作成された表面用および裏面用の印刷用画像データを各々同一の印刷用紙の表面および裏面に印刷するプリントエンジンと、を備えたことを特徴とする。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷システムは、アプリケーションソフトを実行して表面用および裏面用の画像データを出力するアプリケーション実行部を備えるクライアント端末と、クライアント端末から表面用および裏面用の画像データを受信する請求項1または2に記載の印刷画像処理装置と、印刷画像処理装置によって作成された表面用および裏面用の印刷用画像データを各々同一の印刷用紙の表面および裏面に印刷するプリントエンジンと、を備えたことを特徴とする。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明に係るコピーファクシミリ複合機は、請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の印刷画像処理装置と、印刷画像処理装置によって作成された表面用および裏面用の印刷用画像データを各々同一の印刷用紙の表面および裏面に印刷するコピーファクシミリ複合機本体とを備えたことを特徴とする。
【0018】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷画像処理方法は、両面印刷が可能なプリンタに接続され、プリンタに対して表面用および裏面用の印刷用画像データを送信してこれらの印刷用画像データを各々同一の印刷用紙の表面および裏面に印刷させる印刷画像処理装置にあって、予め与えられた印刷用紙の透過率に応じて、与えられた表面用および裏面用の画像データの各々の画素濃度を印刷用画像データ処理部が調整して表面用および裏面用の印刷用画像データを作成し、印刷出力部が表面用および裏面用の印刷用画像データをプリンタに対して送信することを特徴とする。
【0019】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷画像処理プログラムは、両面印刷が可能なプリンタに接続され、プリンタに対して表面用および裏面用の印刷用画像データを送信してこれらの印刷用画像データを各々同一の印刷用紙の表面および裏面に印刷させる印刷画像処理装置にあって、印刷画像処理装置が備えるコンピュータに、予め与えられた印刷用紙の透過率に応じて、与えられた表面用および裏面用の画像データの各々の画素濃度を調整して表面用および裏面用の印刷用画像データを作成する手順、および表面用および裏面用の印刷用画像データをプリンタに対して送信する手順を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上述したように、表面用および裏面用の画像データの各々の画素濃度と透過率とから表面用および裏面用の印刷用画像データを作成してこれを同一の印刷用紙の表面および裏面に印刷させるように構成したので、両面印刷が可能な印刷装置(プリンタ)で印刷する場合の裏映りの影響を軽減して読みやすい印刷結果を得ることが可能であるという、優れた特徴を持つ印刷画像処理装置、印刷装置、印刷画像処理方法および印刷画像処理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図2に示したコンピュータで実行されるソフトウェアの構成についてより詳しく示す説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る印刷画像処理装置であるコンピュータの構成を示す説明図である。
【図3】図1〜2に示したコンピュータで、アプリケーション実行部から印刷用画像データ処理部が受信した印刷用紙の表面および裏面に印刷すべき画像データの例について示す説明図である。
【図4】図3に示した表面画像データおよび裏面画像データから求められた印刷用表面画像データおよび印刷用裏面画像データの例について示す説明図である。
【図5】図4に示した印刷用表面画像データおよび印刷用裏面画像データから同一の用紙に両面印刷された印刷後表面画像および印刷後裏面画像の例について示す説明図である。
【図6】図1で示した画像データ処理部が行う処理について示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る印刷装置であるプリンタの構成を示す説明図である。
【図8】既存のコンピュータでの両面印刷について示す説明図である。
【図9】図8に示したコンピュータがプリンタに出力する表面画像データおよび裏面画像データで両面印刷を行った場合に、実際に印刷される印刷後表面画像および印刷後裏面画像について示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態の構成について添付図1に基づいて説明する。
最初に、本実施形態の基本的な内容について説明し、その後でより具体的な内容について説明する。
本実施形態に係る印刷画像処理装置であるコンピュータ10は、両面印刷が可能なプリンタ22に対して表面用および裏面用の印刷用画像データを送信してこれらの印刷用画像データを各々同一の印刷用紙の表面および裏面に印刷させるコンピュータである。このコンピュータ10は、予め与えられた前記印刷用紙の透過率に応じて、与えられた表面用および裏面用の画像データの各々の画素濃度を調整して表面用および裏面用の印刷用画像データを作成する印刷用画像データ処理部102と、表面用および裏面用の印刷用画像データをプリンタに対して送信する印刷出力部103とを備える。
【0023】
また、印刷用画像データ処理部102は、表面用画像データにおける特定の点の画素濃度をx、印刷用紙上でxと同一の位置に裏面から印刷される裏面用画像データの画素濃度をy、透過率をaとし、xと同一位置の点における表面用および裏面用の印刷用画像データの画素濃度を各々x1およびy1とすると、x1=(x−a×y)/(1−a^2)、y1=(y−a×x)/(1−a^2)として表面用および裏面用の印刷用画像データを作成する(a^2はaの二乗)。さらに、アプリケーションソフトを実行して表面用および裏面用の画像データを出力するアプリケーション実行部101も備える。
【0024】
以上の構成を備えることにより、本実施形態のコンピュータ10は、裏映りの影響を軽減して読みやすい印刷結果を得ることが可能となる。
以下、これをより詳細に説明する。
【0025】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る印刷画像処理装置であるコンピュータ10の構成を示す説明図である。コンピュータ10は、コンピュータプログラムとして記述された各種処理を実行する主体である主演算制御手段(CPU: Central Processing Unit)11と、主演算制御手段11で実行されるプログラムおよび使用されるデータを格納する外部記憶手段12と、主演算制御手段11による作業中のデータを一時的に記憶する一時記憶手段13と、外部からの画像などのデータ入力を受け付けるデータ入力手段14と、主演算制御手段11によって処理されたデータを外部に出力するデータ出力手段15とが、これらの装置間でデータおよび制御信号を交換する内部バス16に接続されて構成される。
【0026】
ここで、外部記憶手段12は、ハードディスクドライブ、光学ディスクドライブ、フラッシュメモリなどのような大容量記憶装置であり、主演算制御手段11で実行されるOS(Operating System)、アプリケーション、印刷処理ソフトなどが記憶されている。また、一時記憶手段13は、いわゆるRAM(Random Access Memory)である。データ入力手段14には、スキャナやデジタルカメラなどのような画像入力装置21が接続されている。そして、データ出力手段15には、両面印刷が可能なプリンタ22が接続されている。
【0027】
図1は、図2に示したコンピュータ10で実行されるソフトウェアの構成についてより詳しく示す説明図である。コンピュータ10の主演算制御手段11は、後述するアプリケーション実行部101および印刷用画像データ処理部102と、印刷用画像データ処理部102で作成された印刷用画像データをデータ出力手段15を介してプリンタ22に出力する印刷出力部103の各々として動作する。
【0028】
アプリケーション実行部101は、ワープロ、表計算、ウェブブラウザなどのアプリケーションソフトを実行し、ユーザから印刷の操作を入力された際には印刷用紙の表面および裏面の画像データとこの印刷用紙の透過率とを一時記憶手段13に記憶させ、印刷用画像データ処理部102に処理を渡す。印刷用画像データ処理部102は、これらのデータに対して後述の印刷用画像データ処理を行って印刷用画像データを作成し、これを一時記憶手段13に記憶させて印刷出力部103に渡す。
【0029】
(印刷用画像データの作成処理)
図3は、図1〜2に示したコンピュータ10で、アプリケーション実行部101から印刷用画像データ処理部102が受信した印刷用紙の表面および裏面に印刷すべき画像データの例について示す説明図である。画像データ処理部102は、これと同時に印刷用紙の透過率203=aについてのデータも受信する。
【0030】
なお、表面画像データ201および裏面画像データ202の各画素には、1番から始まる通し番号が付けられている。言うまでもなく実際の印刷用画像データは数十万〜数百万、あるいはそれ以上の数の画素があるが、図3では本発明の概念を平易に説明するために、9画素についてのみの例を示している。この通し番号を、本明細書では画素選択変数iという。画素選択変数iで示される画素(以後単に画素iという)での表面画像データ201の画素濃度をx(i)、用紙上の同一地点における裏面画像データ202の画素濃度をy(i)と定義する。
【0031】
表面画像データ201では、左上隅の画素をi=1とし、そこから右方向に番号が1ずつ進み、右端に到達したら1つ下の列に進んで左→右方向へ番号が1ずつ進む。裏面画像データ202は、表面画像データ201とは逆に右上隅の画素をi=1とし、そこから左方向に番号が1ずつ進み、左端に到達したら1つ下の列に進んで右→左方向へ番号が1ずつ進む。
【0032】
表面画像データ201と裏面画像データ202とは、同一印刷用紙の表と裏に印刷されるものであるので、表面画像データ201と裏面画像データ202とで同一のiの値は印刷用紙上の同一地点における表側と裏側とを示す。以後、後述の図4で示す印刷用表面画像データ211および印刷用裏面画像データ212、および図5で示す印刷後表面画像221および印刷後裏面画像222についても、これと同様に示す。
【0033】
画像データ処理部102は、表面画像データ201の画素濃度x、この画素濃度xと用紙上の同一地点における裏面画像データ202の画素濃度y、そして印刷用紙の透過率203=aから、次のように印刷用表面画像データ211および印刷用裏面画像データ212を生成して一時記憶手段13に記憶させる。
【0034】
xと同一地点の印刷用表面画像データ211をx1、x1と同一の地点の裏側から印刷される印刷用裏面画像データ212の画素濃度をy1とする。これで、前述の数1で得られる印刷濃度が元の画素濃度xおよびyと等しくなるx1およびy1を求めると、x,y,aとx1,y1との間には以下の数2で示される関係が成立する。なお、数2および後述の数3では、同一の画素選択変数iにおける比較であるので、画素選択変数を示す(i)の記述は省略する。
【数2】

【0035】
これから、x1およびy1は以下の数3に示されるように導出される。
【数3】

【0036】
画像データ処理部102は、上記の数2〜3に示した関係を利用してx,y,aからx1およびy1を求め、このx1およびy1を画素濃度として有する印刷用表面画像データ211および印刷用裏面画像データ212を生成する。
【0037】
図4は、図3に示した表面画像データ201および裏面画像データ202から求められた印刷用表面画像データ211および印刷用裏面画像データ212の例について示す説明図である。
【0038】
そして、印刷用表面画像データ211および印刷用裏面画像データ212を受信した印刷出力部103は、プリンタ22を介してこれらの画像データを各々同一の用紙の表面および裏面に印刷させる。図5は、図4に示した印刷用表面画像データ211および印刷用裏面画像データ212から両面印刷された印刷後表面画像221および印刷後裏面画像222の例について示す説明図である。
【0039】
図5に示したように、この印刷後表面画像221および印刷後裏面画像222は、各々図3に示した表面画像データ201および裏面画像データ202と同一の画素濃度、即ち本来意図した画素濃度を得られている。即ち、以上に示した処理によって裏映りの影響が低減されていることがわかる。
【0040】
(フローチャート)
図6は、図1で示した画像データ処理部102が行う処理について示すフローチャートである。一時記憶手段13に格納された表面画像データ201、裏面画像データ202および透過率203=aのデータの処理をアプリケーション実行部101から渡された画像データ処理部102は、まず画素選択変数iの値を1として初期化する(ステップS301)。
【0041】
これに引き続いて画像データ処理部102は、表面画像データ201のi番目の画素濃度x(i)と、このx(i)の地点の裏側から印刷される裏面画像データ202の画素濃度y(i)を一時記憶手段13から読み込む(ステップS302)。
【0042】
これに引き続いて画像データ処理部102は、このx(i),y(i)と透過率aの値を前述の数3に適用して、印刷用表面画像データ211の画素濃度x1(i)および印刷用裏面画像データ212の画素濃度y1(i)を算出する(ステップS303)。
【0043】
これに引き続いて画像データ処理部102は、算出されたx1(i)およびy1(i)から、印刷用表面画像データ211および印刷用裏面画像データ212を生成して、一時記憶手段13に格納する(ステップS304)。
【0044】
以上のステップS302〜304の処理を、表面画像データ201および裏面画像データ202の全ての画素に対して行ったか否かを判断し(ステップS305)、全ての画素に対しての処理が完了したらこれを印刷出力部103に渡してプリンタ22に出力させて(ステップS306)、動作を終了する。全ての画素に対しての処理が完了していなければ、iの値を1つ増加させて(ステップS307)ステップS302からの処理を繰り返す。
【0045】
(第1の実施形態の全体的な動作)
次に、上記の実施形態の全体的な動作について説明する。本実施形態に係る印刷画像処理方法は、両面印刷が可能なプリンタ22に対して表面用および裏面用の印刷用画像データを送信してこれらの印刷用画像データを各々同一の印刷用紙の表面および裏面に印刷させる印刷画像処理装置(コンピュータ10)にあって、予め与えられた印刷用紙の透過率に応じて、与えられた表面用および裏面用の画像データの各々の画素濃度を印刷用画像データ処理部が調整して表面用および裏面用の印刷用画像データを作成し(図6・ステップS301〜305)、印刷出力部が表面用および裏面用の印刷用画像データをプリンタに対して送信する(図6・ステップS306)。
【0046】
ここで、上記各動作ステップについては、これをコンピュータで実行可能にプログラム化し、これらを前記各ステップを直接実行するコンピュータ10に実行させるようにしてもよい。本プログラムは、非一時的な記録媒体、例えば、DVD、CD、フラッシュメモリ等に記録されてもよい。その場合、本プログラムは、記録媒体からコンピュータによって読み出され、実行される。
この動作により、本実施形態は以下のような効果を奏する。
【0047】
本実施形態によれば、両面印刷が可能なプリンタで、裏映りの影響を低減して読みやすい印刷結果を得ることができる。同時に、これによって、印刷に使用されるインクやトナーの節減、もしくは印刷失敗として廃棄される紙資源の節約という効果も得られる。
【0048】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る印刷装置であるプリンタ420は、コンピュータから受信した表面用および裏面用の画像データを各々同一の印刷用紙の表面および裏面に印刷する印刷装置であって、コンピュータから表面用および裏面用の画像データを受信すると共にこれら表面用および裏面用の画像データの各々の画素濃度と予め与えられた印刷用紙の透過率とから表面用および裏面用の印刷用画像データを作成する印刷用画像データ処理部421と、表面用および裏面用の印刷用画像データを各々同一の印刷用紙の表面および裏面に印刷するプリントエンジン430とを備える構成とした。
【0049】
また、印刷用画像データ処理部421は、表面用画像データにおける特定の点の画素濃度をx、印刷用紙上でxと同一の位置に裏面から印刷される裏面用画像データの画素濃度をy、透過率をaとし、xと同一位置の点における表面用および裏面用の印刷用画像データの画素濃度を各々x1およびy1とすると、x1=(x−a×y)/(1−a^2)、y1=(y−a×x)/(1−a^2)として表面用および裏面用の印刷用画像データを作成する。(a^2はaの二乗)
【0050】
以上の構成によっても、前述した第1の実施形態と同一の効果を得ることが可能である。
以下、これをより詳細に説明する。
【0051】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る印刷装置であるプリンタ420の構成を示す説明図である。プリンタ420は、コンピュータ410に接続されている。コンピュータ410のハードウェア的な構成は、図2に示した第1の実施形態に係るコンピュータ10と同一である。図7には、その中から主演算制御手段11と一時記憶手段13を抜き出して示している。
【0052】
主演算制御手段11は、アプリケーション実行部101と印刷出力部103のみを備えている。これら各々の動作は、図1に示した第1の実施形態と同一である。ただし印刷出力部103は、アプリケーション実行部101が作成した表面画像データ201および裏面画像データ202をそのまま出力する。
【0053】
そして、プリンタ420の中に、印刷出力部103から受信した表面画像データ201および裏面画像データ202に対して第1の実施形態の画像データ処理部102と同一の処理を行って印刷用表面画像データ211および印刷用裏面画像データ212を生成する画像データ処理部421が備えられている。この画像データ処理部421は、プリンタ420に内蔵されたプロセッサで動作するソフトウェアであってもよいし、画像処理専用の回路などのようなハードウェアであってもよい。印刷用紙の透過率203は、あらかじめプリンタ420の中に記憶されているが、第1の実施形態と同様にコンピュータ410のアプリケーション実行部101から送信されるものとしてもよい。
【0054】
そして、プリンタ420は、生成された印刷用表面画像データ211および印刷用裏面画像データ212を同一印刷用紙の表と裏に印刷する印刷エンジン430を備えている。以上のような構成であっても、第1の実施形態と同一の効果を得ることができる。本実施形態では、プリンタ420の側に画像データ処理部421を備えているので、コンピュータのハードウェアもしくはソフトウェアを変更しなくてもその効果を得ることができるというメリットがある。
【0055】
(実施形態の拡張)
以上で説明した本発明の第1および第2の実施形態の拡張として、以下の各々が考えられる。たとえば、コンピュータとプリンタとの間の接続に使用するインタフェースはパラレルポート、イーサネット(登録商標)、USB(Universal Serial Bus)など、任意のものを選ぶことができる。このプリンタをネットワークに接続された複数のコンピュータが共有するいわゆるネットワークプリンタとしてもよいし、コピー機やファックスなどの機能を備えたいわゆるコピーファクシミリ複合機としてもよい。
【0056】
さらに、他のクライアント端末から受信した表面画像データ1および裏面画像データに対して、画像データ処理部102に相当する処理を専用のコンピュータである画像処理サーバが行って、印刷用表面画像データおよび印刷用裏面画像データをプリンタに出力するものとしてもよい。そして、各々のプリンタを動作させるためにコンピュータのOS(Operating System)に組み込まれるデバイスドライバが、本発明の第1および第2の実施形態における画像データ処理部102に相当する処理を行うものとしてもよい。これ以外にも、プリンタによる印刷が行われる環境に応じて、本実施形態を様々な形で拡張したものを適用することが可能である。
【0057】
これまで本発明について図面に示した特定の実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができる。
【0058】
上述した実施形態について、その新規な技術内容の要点をまとめると、以下のようになる。なお、上記実施形態の一部または全部は、新規な技術として以下のようにまとめられるが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。
【0059】
(付記1) 両面印刷が可能なプリンタに対して表面用および裏面用の印刷用画像データを送信してこれらの印刷用画像データを各々同一の印刷用紙の表面および裏面に印刷させる印刷画像処理装置であって、
予め与えられた前記印刷用紙の透過率に応じて、与えられた表面用および裏面用の画像データの各々の画素濃度を調整して表面用および裏面用の印刷用画像データを作成する印刷用画像データ処理部と、
前記表面用および裏面用の印刷用画像データを前記プリンタに対して送信する印刷出力部と、
を備えることを特徴とする印刷画像処理装置。
【0060】
(付記2) 前記印刷用画像データ処理部が、前記表面用画像データにおける特定の点の画素濃度をx、前記印刷用紙上で前記xと同一の位置に裏面から印刷される前記裏面用画像データの画素濃度をy、前記透過率をaとし、前記xと同一位置の点における前記表面用および裏面用の印刷用画像データの画素濃度を各々x1およびy1とすると、x1=(x−a×y)/(1−a^2)、y1=(y−a×x)/(1−a^2)として前記表面用および裏面用の印刷用画像データを作成することを特徴とする、付記1に記載の印刷画像処理装置(a^2はaの二乗)。
【0061】
(付記3) アプリケーションソフトを実行して前記表面用および裏面用の画像データを出力するアプリケーション実行部を備えることを特徴とする、付記1または2に記載の印刷画像処理装置。
【0062】
(付記4) 付記1ないし3のうちいずれか1項に記載の印刷画像処理装置と、
前記印刷画像処理装置によって作成された表面用および裏面用の印刷用画像データを各々同一の前記印刷用紙の表面および裏面に印刷するプリントエンジンと、
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【0063】
(付記5) アプリケーションソフトを実行して表面用および裏面用の画像データを出力するアプリケーション実行部を備えるクライアント端末と、
前記クライアント端末から前記表面用および裏面用の画像データを受信する付記1または2に記載の印刷画像処理装置と、
前記印刷画像処理装置によって作成された表面用および裏面用の印刷用画像データを各々同一の前記印刷用紙の表面および裏面に印刷するプリントエンジンと、
を備えたことを特徴とする印刷システム。
【0064】
(付記6) 付記1ないし3のうちいずれか1項に記載の印刷画像処理装置と、
前記印刷画像処理装置によって作成された表面用および裏面用の印刷用画像データを各々同一の前記印刷用紙の表面および裏面に印刷するコピーファクシミリ複合機本体と、
を備えたことを特徴とするコピーファクシミリ複合機。
【0065】
(付記7) 両面印刷が可能なプリンタに接続され、前記プリンタに対して表面用および裏面用の印刷用画像データを送信してこれらの印刷用画像データを各々同一の印刷用紙の表面および裏面に印刷させる印刷画像処理装置にあって、
予め与えられた前記印刷用紙の透過率に応じて、与えられた表面用および裏面用の画像データの各々の画素濃度を印刷用画像データ処理部が調整して表面用および裏面用の印刷用画像データを作成し、
印刷出力部が前記表面用および裏面用の印刷用画像データを前記プリンタに対して送信する
ことを特徴とする印刷画像処理方法。
【0066】
(付記8) 両面印刷が可能なプリンタに接続され、前記プリンタに対して表面用および裏面用の印刷用画像データを送信してこれらの印刷用画像データを各々同一の印刷用紙の表面および裏面に印刷させる印刷画像処理装置にあって、
前記印刷画像処理装置が備えるコンピュータに、
予め与えられた前記印刷用紙の透過率に応じて、与えられた表面用および裏面用の画像データの各々の画素濃度を調整して表面用および裏面用の印刷用画像データを作成する手順、
および前記表面用および裏面用の印刷用画像データを前記プリンタに対して送信する手順
を実行させることを特徴とする印刷画像処理プログラム。
【産業上の利用可能性】
【0067】
両面印刷が可能なプリンタ、あるいはそのようなプリンタが接続されたコンピュータ装置において利用可能である。それらの間の接続方式、あるいはプリンタの印刷方式などは特に問わない。
【符号の説明】
【0068】
10、410 コンピュータ
11 主演算制御手段
12 外部記憶手段
13 一時記憶手段
14 データ入力手段
15 データ出力手段
16 内部バス
21 画像入力装置
22、420 プリンタ
101 アプリケーション実行部
102、421 印刷用画像データ処理部
103 印刷出力部
201 表面画像データ
202 裏面画像データ
203 透過率
211 印刷用表面画像データ
212 印刷用裏面画像データ
221 印刷後表面画像
222 印刷後裏面画像
430 プリントエンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面印刷が可能なプリンタに対して表面用および裏面用の印刷用画像データを送信してこれらの印刷用画像データを各々同一の印刷用紙の表面および裏面に印刷させる印刷画像処理装置であって、
予め与えられた前記印刷用紙の透過率に応じて、与えられた表面用および裏面用の画像データの各々の画素濃度を調整して表面用および裏面用の印刷用画像データを作成する印刷用画像データ処理部と、
前記表面用および裏面用の印刷用画像データを前記プリンタに対して送信する印刷出力部と、
を備えることを特徴とする印刷画像処理装置。
【請求項2】
前記印刷用画像データ処理部が、前記表面用画像データにおける特定の点の画素濃度をx、前記印刷用紙上で前記xと同一の位置に裏面から印刷される前記裏面用画像データの画素濃度をy、前記透過率をaとし、前記xと同一位置の点における前記表面用および裏面用の印刷用画像データの画素濃度を各々x1およびy1とすると、x1=(x−a×y)/(1−a^2)、y1=(y−a×x)/(1−a^2)として前記表面用および裏面用の印刷用画像データを作成することを特徴とする、請求項1に記載の印刷画像処理装置(a^2はaの二乗)。
【請求項3】
アプリケーションソフトを実行して前記表面用および裏面用の画像データを出力するアプリケーション実行部を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の印刷画像処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の印刷画像処理装置と、
前記印刷画像処理装置によって作成された表面用および裏面用の印刷用画像データを各々同一の前記印刷用紙の表面および裏面に印刷するプリントエンジンと、
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
アプリケーションソフトを実行して表面用および裏面用の画像データを出力するアプリケーション実行部を備えるクライアント端末と、
前記クライアント端末から前記表面用および裏面用の画像データを受信する請求項1または2に記載の印刷画像処理装置と、
前記印刷画像処理装置によって作成された表面用および裏面用の印刷用画像データを各々同一の前記印刷用紙の表面および裏面に印刷するプリントエンジンと、
を備えたことを特徴とする印刷システム。
【請求項6】
請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の印刷画像処理装置と、
前記印刷画像処理装置によって作成された表面用および裏面用の印刷用画像データを各々同一の前記印刷用紙の表面および裏面に印刷するコピーファクシミリ複合機本体と、
を備えたことを特徴とするコピーファクシミリ複合機。
【請求項7】
両面印刷が可能なプリンタに接続され、前記プリンタに対して表面用および裏面用の印刷用画像データを送信してこれらの印刷用画像データを各々同一の印刷用紙の表面および裏面に印刷させる印刷画像処理装置にあって、
予め与えられた前記印刷用紙の透過率に応じて、与えられた表面用および裏面用の画像データの各々の画素濃度を印刷用画像データ処理部が調整して表面用および裏面用の印刷用画像データを作成し、
印刷出力部が前記表面用および裏面用の印刷用画像データを前記プリンタに対して送信する
ことを特徴とする印刷画像処理方法。
【請求項8】
両面印刷が可能なプリンタに接続され、前記プリンタに対して表面用および裏面用の印刷用画像データを送信してこれらの印刷用画像データを各々同一の印刷用紙の表面および裏面に印刷させる印刷画像処理装置にあって、
前記印刷画像処理装置が備えるコンピュータに、
予め与えられた前記印刷用紙の透過率に応じて、与えられた表面用および裏面用の画像データの各々の画素濃度を調整して表面用および裏面用の印刷用画像データを作成する手順、
および前記表面用および裏面用の印刷用画像データを前記プリンタに対して送信する手順
を実行させることを特徴とする印刷画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−231206(P2012−231206A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96772(P2011−96772)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】