説明

印刷装置、プリンタドライバ及び印刷システム

【課題】従来よりも画像補正機能の利便性を向上させつつ、補正必要データに対して画像補正をしないことによる悪影響を抑制することが可能な印刷装置等を提供する。
【解決手段】印刷装置1は、印刷データが補正必要データである場合に補正処理を実行させ、補正不要データである場合に補正処理を回避させるようにする制御部40と、補正回避するかどうかを設定可能な設定部40と、を備え、制御部40は、補正回避しないと設定されている場合には、補正必要データに対して補正処理を実行させ、補正回避すると設定されている場合には、補正必要データを、補正不要データに変換することにより補正処理を回避させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関し、特に画像補正機能を有する印刷装置、プリンタドライバ及び印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より印刷装置として、ベルトや用紙等にパターンを印刷して印刷画像の位置ずれや濃度の測定動作を行い、その結果に基づいて画像を補正する、レジストレーションやキャリブレーション等と呼ばれる機能を有するものが知られている。このような画像補正のための測定は、例えば、印刷ジョブの開始時や終了時、あるいは印刷を行っていない待機時など、様々なタイミングで行われる。
【0003】
ところが、画像補正のための測定を行っている間は印刷処理を行うことができないため、測定の実行タイミングによっては、ユーザが印刷処理を行えるようになるまで待たされてしまうことになる。そこで、測定の実行タイミングが到来した時に、印刷対象がカラー画像データの場合には、その印刷前に画像補正のための測定を行って画像補正を実行するが、印刷対象がモノクロ画像データの場合には、その印刷の前に画像補正のための測定を行わないようにした印刷装置がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−244829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、ユーザや使用状況によっては、カラー画像データのように画像補正が必要な印刷データに対しても、画像補正をせずに早期印刷を望む場合が少なくない。しかし、本来的に画像補正が必要な印刷データについて単に画像補正を行わないとすると、画像補正を行わないことによる悪影響(色ずれ、濃度ずれなど)が顕著に現れてしまうおそれがある。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、従来よりも画像補正機能の利便性を向上させつつ、補正必要データに対して画像補正をしないことによる悪影響を抑制することが可能な印刷装置、プリンタドライバ及び印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、第1発明に係る印刷装置は、印刷処理を実行する印刷部と、前記印刷部が印刷した測定用画像を測定し、その測定結果を参照して、前記印刷部が印刷データに基づき印刷する画像を補正する補正処理を実行する補正部と、前記印刷データが補正必要条件を満たす補正必要データである場合に、当該補正必要データに対して前記補正部に前記補正処理を実行させ、前記補正必要条件を満たさない補正不要データである場合に、当該補正不要データに対して前記補正部に前記補正処理を回避させるようにする制御部と、補正回避するかどうかを設定可能な設定部と、を備え、前記制御部は、前記設定部により前記補正回避しないと設定されている場合には、前記補正必要データに対して前記補正部に前記補正処理を実行させ、前記設定部により前記補正回避すると設定されている場合には、前記補正必要データを、前記補正不要データに変換することにより前記補正部に前記補正処理を回避させる。
【0008】
この発明によれば、たとえ補正必要データであっても、補正回避すると設定されている場合には、当該補正必要データを、補正必要条件を満たさない補正不要データに変換することにより、補正処理の実行を回避することができる。従って、補正必要データに対して常に補正処理を実行する従来構成に比べて利便性を向上させることができる。しかも、補正必要データを補正不要データに変換することにより補正を回避するため、補正不要データに変換せずに単に補正をしない場合に比べて、補正をしないことによる画質への悪影響(色ずれ、濃度ずれなど)を抑制することができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明の印刷装置であって、前記補正必要条件は、前記印刷対象画像に対するカラー画像の割合が基準割合以上であること、及び、前記印刷対象画像の解像度が基準値以上であることの少なくともいずれか一方を満たすことである。
【0010】
印刷対象画像に対するカラー画像の割合が基準割合以上であること、及び、印刷対象画像の解像度が基準値以上であることの少なくともいずれか一方を満たす印刷データは、補正をしないことによる悪影響が特に顕著に現れる。そこで、この発明によれば、そのような条件を満たす印刷データに限って補正必要データとして設定部による設定内容を反映させる。その一方で、上記条件を満たさない印刷データは補正をしないことによる悪影響が比較的に小さいので、補正不要データとすることにより早期印刷を優先させることにした。
【0011】
第3の発明は、第1の発明の印刷装置であって、前記制御部は、前記印刷データが、前記補正必要データであって、且つ、前記印刷対象画像に対するカラー画像の割合が基準割合未満であること、及び、前記印刷対象画像の解像度が基準値未満であることの少なくともいずれか一方を満たすことを条件に、前記設定部による設定内容を適用する。
【0012】
補正必要データであっても、印刷対象画像に対するカラー画像の割合が基準割合未満であること、及び、印刷対象画像の解像度が基準値未満であることの少なくともいずれか一方を満たす印刷データであれば、補正不要データに変換することによる影響が比較的に小さい場合がある。そこで、この発明によれば、このような条件を満たす補正必要データに限って設定部による設定内容を適用することにした。
【0013】
第4の発明は、第1から第3のいずれか一つの発明の印刷装置であって、前記補正回避をするかどうかのユーザによる選択情報を取得する第1取得部を備え、前記設定部は、前記第1取得部で取得した前記選択情報に基づき前記補正回避をするかどうかを設定する。
【0014】
この発明によれば、補正回避するかどうかについてユーザの意思を反映させることができる。
【0015】
第5の発明は、第1から第4のいずれか一つの発明の印刷装置であって、前記制御部により前記補正必要データを前記補正不要データに変換させるかどうかのユーザによる選択情報を取得する第2取得部を備え、前記制御部は、前記設定部により前記補正回避すると設定されている場合、前記第2取得部で取得した前記選択情報に基づき、前記補正必要データを前記補正不要データに変換するかどうかを決定する、印刷装置。
【0016】
この発明によれば、補正回避が設定されている場合に、補正必要データを補正不要データに変換させるかどうかについて、ユーザによる最終的な意思を確認することができる。
【0017】
第6の発明は、第5の発明の印刷装置であって、前記制御部は、前記補正必要データであっても、前記第2取得部が前記選択情報を所定時間取得しない場合には、前記補正必要データを前記補正不要データに変換せずに前記補正処理を実行する。
【0018】
補正必要データについて、ユーザによる選択が所定時間経過しても無い場合には、ユーザは印刷を急いでいない場合が多い。そこで、このような場合には、補正必要データを補正不要データに変換せずに補正処理を行って上記補正必要データに基づく画像を高品質で印刷することを優先させることが好ましい。
【0019】
第7の発明は、第1から第6のいずれか一つの発明の印刷装置であって、前記補正必要条件は、カラー画像を含むことであり、前記制御部は、前記補正必要データを、そのカラー画像部分をモノクロ画像に変換することにより前記補正不要データとする。
【0020】
カラー画像データでは、濃度ずれ、色ずれ(位置ずれ)による画質への悪影響が特に顕著に現れる。これに対し、モノクロ画像データでは、その悪影響が比較的に少ない。そこで、この発明のように、カラー画像データを含む印刷データを補正必要データとし、モノクロ画像データを補正不要データとすることが好ましい。
【0021】
第8の発明は、第1から第7のいずれか一つの発明の印刷装置であって、前記印刷処理に使用する着色剤の残量を検出する検出部を備え、前記設定部は、前記検出部で検出された残量が所定量以下である場合は、前記補正回避有りに設定する。
【0022】
着色剤の残量が少なくなった場合には、補正処理の実行よりも、着色剤の消費量を抑制することを優先することが好ましい。
【0023】
第9の発明に係るプリンタドライバは、印刷した測定用画像を測定し、その測定結果を参照して、印刷データに基づき印刷する印刷対象画像を補正する補正処理を実行可能な印刷装置と通信可能な情報処理装置のコンピュータに、補正回避するかどうかを設定可能な設定処理と、前記印刷データが補正必要条件を満たす補正必要データである場合であって、且つ、前記設定処理により前記補正回避すると設定されている場合には、前記補正必要データを、前記補正必要条件を満たさない補正不要データに変換することにより前記補正処理を回避させる制御処理と、を実行させる。
【0024】
この発明によれば、コンピュータから送信した印刷データに基づき印刷装置で印刷を行う、いわゆるPCプリントにおいてPCプリント要求時に補正処理を回避するかどうかを設定することができる。
【0025】
第10の発明に係る印刷システムは、印刷装置と、当該印刷装置と通信可能な情報処理装置とを備える印刷システムであって、前記印刷装置に備えられ、印刷処理を実行する印刷部と、前記印刷装置に備えられ、前記印刷部が印刷した測定用画像を測定し、その測定結果を参照して、前記印刷部が印刷データに基づき印刷する印刷対象画像を補正する補正処理を実行する補正部と、前記印刷装置または前記情報処理装置に備えられ、前記印刷データが補正必要条件を満たす補正必要データである場合に、当該補正必要データに対して前記補正部に前記補正処理を実行させ、前記補正必要条件を満たさない補正不要データである場合に、当該補正不要データに対して前記補正部に前記補正処理を回避させるようにする制御部と、前記印刷装置または前記情報処理装置に備えられ、補正回避するかどうかを設定可能な設定部と、を備え、前記制御部は、前記設定部により前記補正回避しないと設定されている場合には、前記補正必要データに対して前記補正部に前記補正処理を実行させ、前記設定部により前記補正回避すると設定されている場合には、前記補正必要データを、前記補正不要データに変換することにより前記補正部に前記補正処理を回避させる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、従来よりも画像補正機能の利便性を向上させつつ、補正必要データに対して画像補正をしないことによる悪影響を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態1におけるプリンタの概略構成を示す側断面図
【図2】印刷システムの電気的構成を簡略に示すブロック図
【図3】PC側補正要否処理を示すフローチャート
【図4】ユーザ選択画面を示す模式図
【図5】プリンタ側補正要否処理を示すフローチャート
【図6】実施形態のPC側補正要否処理を示すフローチャート
【図7】プリンタ側補正要否処理を示すフローチャート
【図8】変形例のユーザ選択画面を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0028】
<実施形態1>
本発明の実施形態1について図を参照しつつ説明する。
【0029】
(プリンタの全体構成)
図1は、本実施形態のプリンタ1(印刷装置の一例)の概略構成を示す側断面図である。このプリンタ1は、電子写真方式のカラーLEDプリンタである。なお、以下の説明では、同図における左側を前方とする。また、図1においては、各色間で同一の構成部品については一部符号を省略している。
【0030】
プリンタ1は、本体ケーシング2を備えており、この本体ケーシング2の底部には、複数の用紙(シート)3(被記録媒体の一例)を積載可能な供給トレイ4が装着されている。供給トレイ4に積載された用紙3は、供給トレイ4の前端部上方に設けられた供給ローラ5によって上方のレジストローラ6へ送り出される。レジストローラ6は、用紙3を印刷部10のベルトユニット11上に搬送する。
【0031】
印刷部10は、ベルトユニット11、露光部17K〜17C、プロセス部19K〜19C、定着器31を備えている。
【0032】
ベルトユニット11は、前後一対のベルト支持ローラ12A,12B間に環状のベルト13を張架した構成となっており、ベルト13が駆動されることによりベルト13上面に静電吸着された用紙3が後方に向けて搬送される。また、ベルト13の内側には、後述する各プロセス部19K〜19Cの感光ドラム28とベルト13を挟んで対向する位置にそれぞれ転写ローラ14が設けられている。
【0033】
露光部17K,17Y,17M,17Cは、それぞれブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色に対応しており、その下端部に複数のLEDが一列に並んで設けられたLEDヘッド18を備えている。露光部17K〜17Cは、それぞれに供給される印刷データに基づいてLEDヘッド18の各LEDを発光させ、対応する感光ドラム28の表面に一ライン毎に光を走査する。
【0034】
ベルト13の下方には、ベルト13表面に形成されるパターンの検出等に用いられるパターンセンサ15が設けられている。パターンセンサ15は、ベルト13表面に光を照射して、その反射光をフォトトランジスタ等で受光し、その受光量に応じたレベルの信号を出力する。さらに、ベルトユニット11の下方には、ベルト13表面に付着したトナーや紙粉等を回収するクリーナ16が設けられている。
【0035】
プロセス部19K,19Y,19M,19Cは、それぞれ、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色に対応しており、フレーム21と現像カートリッジ22とを備えている。各現像カートリッジ22は、トナー収容室23、供給ローラ24、現像ローラ25(現像手段の一例)を備えている。トナー収容室23には、対応する色のトナーが収容されている。トナー収容室23から放出されたトナーは、供給ローラ24の回転により現像ローラ25に供給され、供給ローラ24と現像ローラ25との間で正に摩擦帯電される。
【0036】
また、フレーム21の下部には、感光ドラム28と、スコロトロン型の帯電器29とが設けられている。感光ドラム28は、接地された円筒状のドラム本体の表面に正帯電性の感光層を形成してなる。感光ドラム28の表面は、その回転に伴い、帯電器29からの放電によって一様に正帯電(例えば+900V)される。そして、露光部17K〜17Cからの走査により露光されて、表面電位が照射された光の強度に応じて部分的に低くなる(例えば+100V)ことで用紙3に形成する画像に対応した静電潜像が形成される。
【0037】
そして、現像ローラ25上に正帯電した状態で担持されているトナーが、現像ローラ25に印加される現像バイアス電圧(例えば+450V)によって、感光ドラム28上の静電潜像に供給される。これにより、感光ドラム28上の静電潜像がトナー像として可視像化される。
【0038】
感光ドラム28上に担持されたトナー像は、ベルト13上の用紙3が感光ドラム28と転写ローラ14との間の各転写位置を通る間に、転写ローラ14に印加される転写バイアス電圧(例えば−700V)によって用紙3に順次重ねて転写される。トナー像が転写された用紙3は、本体ケーシング2内の後部に設けられた定着器31に送り込まれ、そこでトナー像が用紙3に対して熱定着される。用紙3はその後、上方に搬送され、排出ローラ32によって本体ケーシング2の上面に排出される。
【0039】
(印刷システムの電気的構成)
図2は、印刷システム100の電気的構成を簡略に示すブロック図である。印刷システム100は、上記プリンタ1及び複数のコンピュータ(PC)が通信回線70を介して通信可能に接続されている。同図では2台のコンピュータ60,60'が例示されており、両コンピュータは基本構成が略同一であるものとして、コンピュータ60'の内部構成は省略してある。
【0040】
(1)プリンタ
プリンタ1は、図2に示すように、CPU40、ROM41、RAM42、NVRAM(不揮発性メモリ)43、ネットワークインターフェイス44、トナー残量センサ50を備えている。ROM41には、後述する補正要否処理など、このプリンタ1の各種の動作を実行するためのプログラムが記憶されている。CPU40(補正部、制御部、設定部、変換部の一例)は、ROM41から読み出したプログラムに従って、その処理結果をRAM42またはNVRAM43に記憶させながら各部の制御を行う。ネットワークインターフェイス44は、LAN等の通信回線を介して外部のコンピュータ60,60'等に接続され、相互にデータ通信が可能となっている。
【0041】
また、プリンタ1は、既述の印刷部10、パターンセンサ15に加え、表示部47、操作部48及びトナー残量センサ50(検出部の一例)を備えている。印刷部10は、展開後の印刷データがRAM42またはNVRAM43から転送されてくると、転送されてきた印刷データに基づき、既述したようにトナーを用いて用紙3に画像を形成する。表示部47は、ディスプレイやランプ等を備え、各種の設定画面や装置の動作状態等を表示することが可能である。操作部48は、複数のボタンを備え、ユーザが各種の指示を入力することが可能である。トナー残量センサ50は、各現像カートリッジ22のトナー収容室23内のトナー残量に応じた検出信号を出力する。
【0042】
さらに、プリンタ1は、既述の転写ローラ14、現像ローラ25、帯電器29等に電圧を印加する高電圧印加回路49を備えている。CPU40は、高電圧印加回路49を制御して、各部に印加する電圧の大きさを調整することができる。
【0043】
(2)コンピュータ
コンピュータ60(情報処理装置の一例)は、CPU61(制御部、設定部、変換部の一例)、ROM62、RAM63、ハードディスクドライブ64、ネットワークインターフェイス65、キーボードやポインティングデバイスからなる操作部66、ディスプレイ等からなる表示部67等を備えている。ハードディスクドライブ64には、印刷データ(印刷用の画像データ)を作成するためのアプリケーションソフトや、プリンタ1を制御するためのプリンタドライバ(補正要否処理プログラムを含む)などの各種プログラムが記憶されている。ネットワークインターフェイス65は、通信回線70を介してプリンタ1に接続されている。
【0044】
(PCプリントの形態)
本印刷システムでは、外部のコンピュータ60,60'等から取り込んだ印刷データを印刷する、いわゆる「PCプリント」を次の2つの形態で実行することができる。
第1形態:コンピュータ60にてPCプリント要求(印刷要求の一例)がされたときの形態であり、コンピュータ60側で当該PCプリンタ要求に対応する印刷データ(PDLデータ)を展開処理し、その展開後の印刷データ(ビットマップデータ)を、プリンタ1に送信する形態。
第2形態:コンピュータ60'にてPCプリント要求がされたときの形態であり、コンピュータ60'側から、展開前の印刷データ(PDLデータ)をそのままプリンタ1に送信する形態。
【0045】
(画像補正)
本実施形態では、画像補正として濃度補正を例に挙げて説明し、また、その濃度補正は、モノクロ画像データのみを含む印刷データには行わないものとする。プリンタ1のCPU40は、所定の測定実行条件が成立するかを判断する。この測定実行条件とは、画像品質を確保するために濃度測定の実行が必要な状態(若しくは実行が望ましい状態)であるかを判断するための条件であって、具体的には、例えば、前回の濃度測定の実行からの経過時間、印刷枚数若しくはプリンタ1周囲の温度変化が基準以上であること等である。本実施形態では、測定実行条件が成立した場合、成立後の新たな印刷ジョブの実行前に濃度補正の実行タイミングが到来する。なお、本実施形態では、プリンタ1のCPU40は、印刷ジョブの実行中に測定実行条件が成立しても、画像形成部10に印刷処理を中断させることなく最後まで実行継続する。
【0046】
CPU40は、上記測定実行条件が成立し、且つ、PCプリント要求(印刷ジョブ)の対象である印刷データに基づく画像の少なくとも一部にカラー画像が含まれていることを前提条件として、まず濃度測定を行う。この濃度測定では、印刷部10によりベルト13上に、所定の濃度パターン(印刷部が印刷した画像の一例)を形成する。この濃度パターンは、ベルト13の移動方向に沿って並んだ複数のパッチから構成されている。より詳細には、濃度パターンは、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色について濃度が異なる5つのパッチを備えている。
【0047】
次に、パターンセンサ15により各パッチの濃度を測定する。そして、その測定結果に基づいて、濃度0%から100%までを256等分した各階調において、印刷部10により用紙3上に画像を形成した時の濃度が理想濃度となるような濃度調整データを各色毎に算出する。ここで得られる濃度調整データには、LEDヘッド18のLEDの発光強度を階調毎に調整するための調整値と、現像バイアス電圧を調整する(即ち全階調の濃度を調整する)ための調整値とが含まれる。
【0048】
上記第1形態では、コンピュータ60のCPU61が、濃度測定によって得られた濃度調整データをプリンタ1から取得し、ハードディスクドライブ64に記憶し、その濃度調整データを用いて印刷のための濃度調整を行う。即ち、CPU61は、濃度調整データに基づいて、LEDの発光強度を階調毎に調整した印刷データを生成する。なお、印刷データには、濃度調整データに基づいて、高電圧印加回路49に対し各現像ローラ25に印加する現像バイアス電圧を設定するための調整値を付加しても良い。また、コンピュータ60のCPU61が、ネットワークインターフェイス44を介してプリンタ1から送信されてきたパターンセンサ15の検出信号に基づいて濃度調整データを生成しても良い。
【0049】
上記第2形態では、プリンタ1のCPU40が、上記濃度調整データをNVRAM43に記憶し、コンピュータ60'から取得した印刷データを展開処理すると共に、その印刷データ中において、LEDの発光強度を濃度調整データに基づき階調毎に調整する。また、CPU40は、濃度調整データに基づいて、高電圧印加回路49に対し各現像ローラ25に印加する現像バイアス電圧を設定する。
【0050】
(PC側補正要否処理)
図3はPC側補正要否処理を示すフローチャートである。PCプリントを上記第1形態で行う場合に、コンピュータ60の操作部66でユーザによりPCプリント要求がされると、CPU61は、プリンタドライバを起動し、プリンタ1において上記濃度測定(補正のための測定)の実行タイミングが到来したかどうかを判断する。具体的には、CPU61は、プリンタ1に対して測定実行条件が成立したかどうかを問い合わせ、その返信結果に基づいて判断する。
【0051】
CPU61は、測定実行条件が成立していると判断した場合には、図3に示すPC側補正要否処理を実行する。なお、測定実行条件が成立していないと判断した場合には、PC側補正要否処理を実行することなく、PCプリント要求(カラー/モノクロ、解像度、印刷サイズなどの印刷条件を含む)に従って印刷データを展開処理すると共に、ハードディスクドライブ64に記憶済みの濃度調整データを用いて印刷データの濃度調整を行い、その展開後の印刷データをプリンタ1側に送信する。
【0052】
PC側補正要否処理では、CPU61は、まずPCプリント要求の対象である印刷データにカラー画像データが含まれるかどうかを、例えば当該印刷データのヘッダ情報或いは印刷データを一度展開処理した結果から判断する(S1)。印刷データにカラー画像データが含まれていなければ(S1:NO)、上述した実行タイミングが到来していない場合と同様、PCプリント要求に従って印刷データを展開処理すると共に、ハードディスクドライブ64に記憶済みの濃度調整データを用いて印刷データの濃度調整を行い(S17)、S15に進む。
【0053】
印刷データにカラー画像データが含まれていれば(S1:YES)、CPU61は、強制補正回避モードを設定するかどうかを判断する(S3)。本実施形態では、プリンタ1において4色の現像カートリッジ22のうち少なくとも1つのトナー残量が所定量(例えば印刷が可能な最低量よりもやや多い量)以下であること(以下、ニアエンプティという)を条件に、強制補正回避モードに設定する(設定処理の一例)。これにより濃度測定のためのトナー消費を抑制することができる。具体的には、コンピュータ60のCPU61は、ニアエンプティが発生しているかどうかをプリンタ1側に問い合わせる。これに対し、プリンタ1のCPU40は、上記トナー残量センサ50からの検出信号に基づきニアエンプティが発生しているかどうかを判定し、その判定結果をコンピュータ60側に返信する。
【0054】
プリンタ1のCPU40は、プリンタ1から返信された判定結果に基づき、ニアエンプティが発生していると判断した場合には、強制補正回避モードを設定する(S3:YES)。この強制補正回避モードが設定されると、ユーザの意思にかかわらず、強制的に濃度補正が回避される。即ち、カラー画像データを含む印刷データ(S1:YES)を、濃度補正が不要なモノクロ画像データに変換し、ビットマップデータへの展開処理を行うとともに、ハードディスクドライブ64に記憶済みの濃度調整データを用いて印刷データの濃度調整を行い(S11)、S15に進む。
【0055】
強制補正回避モードが設定されなければ(S3:NO)、濃度補正の要否は主としてユーザの意思に委ねられる。即ち、CPU61は、まず印刷データは、濃度補正が必要なデータ(以下、補正必要データという)であるかどうかを判断する(S5)。ここでは、例えば次の条件1〜3のうち全部または少なくとも1つを満たす場合(補正必要条件の一例)には、濃度補正をしないことによる印刷品質への悪影響が大きいとみなし、補正必要データであると判断する。
【0056】
条件1:印刷データのうち現在処理中のページデータに基づく全画像に対してカラー画像の占める割合が基準割合(例えば20%)以上であること。なお、このカラー画像の割合は、例えば印刷データを一度ビットマップデータに展開することにより把握することができる。
条件2:1つのPCプリント要求に含まれる複数のページデータについて全頁に対してカラーページの占める割合が基準割合(例えば10%)以上であること。なお、このカラーページ割合は、例えば印刷データのヘッダ情報或いは、ビットマップデータの展開結果から把握することができる。
条件3:印刷データの解像度が基準値(例えば1200dpi)以上であること。この解像度は、例えば印刷データのヘッダ情報から把握することができる。
【0057】
CPU61は、印刷データが、補正必要データでない、即ち補正不要データであると判断した場合には(S5:NO)、上述した印刷データがモノクロ画像データであった場合(S1:NO)と同様、PCプリント要求に従って印刷データを展開処理すると共に、ハードディスクドライブ64に記憶済みの濃度調整データを用いて印刷データの濃度調整を行い(S17)、S15に進む。
【0058】
CPU61は、印刷データが、補正必要データであると判断した場合には(S5:YES)、補正回避するかどうかを問うユーザ選択画面(図4参照)をコンピュータ60の表示部67に表示させる(S7)。ユーザが、補正必要データに対して、やはり印刷品質を優先したい場合には、操作部66(第2取得部の一例)を操作して「補正回避しない」を選択する(S9:NO)。
【0059】
すると、CPU61は、プリンタ1に濃度測定実行を要求する(S18)。プリンタ1では、上記濃度測定を実行し、その結果得られた最新の濃度調整データがコンピュータ60側に送信される。CPU61は、その最新の濃度調整データを取得すると(S19:YES)、当該最新の濃度調整データを、ハードディスクドライブ64に既に記憶されている旧濃度調整データに対して上書きして更新する(S20)。そして、PCプリント要求に従って印刷データを展開処理すると共に、上記最新の濃度調整データを用いて印刷データの濃度調整を行い(S17)、S15に進む。
【0060】
一方、ユーザが、補正必要データに対して、印刷品質よりも早期印刷を優先したい場合には、「補正回避する」を選択する(S9:YES)。すると、CPU61は、そのカラー画像データを含む補正必要データ(S1:YES、且つ、S5:YES)を、濃度補正が不要なモノクロ画像データに変換し、ビットマップデータへの展開処理を行うとともに、ハードディスクドライブ64に記憶済みの濃度調整データを用いて印刷データの濃度調整を行い(S11)、S15に進む(設定処理、制御処理の一例)。そして、CPU61は、プリンタ1側に送信し(S15)、本PC側補正要否処理を終了する。
【0061】
(プリンタ側補正要否処理)
図5は、プリンタ側補正要否処理を示すフローチャートである。プリンタ1のCPU40は、コンピュータ60,60'からPCプリント要求を受信し、且つ、濃度補正の実行タイミングが到来したと判断した場合には、プリンタ側補正要否判断処理を実行する。
【0062】
なお、PCプリント要求を受けたが、実行タイミングが到来していないと判断した場合には、プリンタ側補正要否処理を実行しない。即ち、そのPCプリント要求に含まれる印刷データが、コンピュータ60側から受信した展開済みデータであれば、そのまま印刷部10に転送する。印刷データが、コンピュータ60'から受信した未展開データであれば、PCプリント要求に従って印刷データを展開処理し、その展開後の印刷データを印刷部10に転送する。また、プリンタ1のCPU40が濃度補正の実行タイミングが到来したと判断し、且つ、コンピュータ60から濃度測定実行要求を受信した場合には、CPU40は、濃度測定を実行して濃度調整データを算出後、算出した濃度調整データをコンピュータ60に送信する。
【0063】
プリンタ側補正要否処理では、CPU40は、まず、受信したPCプリンタ要求に含まれる印刷データが展開済みかどうかを判断する(S21)。すなわち、上記第1形態では、PC側補正要否処理により既に印刷データが濃度調整データにより濃度調整され展開されているので、CPU40はコンピュータ60から受信した印刷データに対して(S21:YES)、S23以降のプリンタ側補正要否の判断を行うことなくS37に進む。
【0064】
上記第2形態では、コンピュータ60'は展開前の印刷データ(PDLデータ)をそのままプリンタ1に送信するので、CPU40は、コンピュータ60'から受信した印刷データに対して(S21:NO)、S23以降のプリンタ側補正要否の判断を行う。この場合、上記図3のS1と同様、まず受信したPCプリント要求に含まれる印刷データに、カラー画像データが含まれるかどうかを判断する(S23)。印刷データにカラー画像データが含まれていなければ(S23:NO)、上述した実行タイミングが到来していない場合と同様、PCプリント要求に従って印刷データを展開処理すると共に、NVRAM43に記憶済みの濃度調整データを用いて印刷データの濃度調整を行い(S39)、S37に進む。
【0065】
印刷データにカラー画像データが含まれていれば(S23:YES)、上記図3のS3と同様、強制補正回避モードを設定するかどうかを判断する(S25)。そして、トナー残量センサ50からの検出信号に基づきニアエンプティが発生していると判断した場合には、強制補正回避モードを設定する(S25:YES)。すると、ユーザの意思にかかわらず、強制的に濃度補正が回避される。即ち、カラー画像データを含む印刷データ(S23:YES)を、濃度補正が不要なモノクロ画像データに変換し、ビットマップデータへの展開処理を行うと共に、NVRAM43に記憶済みの濃度調整データを用いて印刷データの濃度調整を行い(S35)、S37に進む。このときCPU40は「設定部、変換部」として機能する。
【0066】
強制補正回避モードが設定されなければ(S25:NO)、CPU40は、上記図3のS5と同様、印刷データが補正必要データであるかどうかを判断する(S27)。なお、この補正必要データかどうかの判断条件を、PC側補正要否処理と異ならせてもよい。
【0067】
CPU40は、印刷データが補正不要データであると判断した場合には(S27:NO)、上述した印刷データがモノクロ画像データであった場合(S21:NO)と同様、PCプリント要求に従って印刷データを展開処理すると共に、NVRAM43に記憶済みの濃度調整データを用いて印刷データの濃度調整を行い(S39)、S37に進む。
【0068】
CPU40は、印刷データが、補正必要データであると判断した場合には(S27:YES)、補正回避するかどうかを問うユーザ選択画面(図4参照)をプリンタ1の表示部47に表示させる(S29)。ユーザが所定時間内に操作部48(第2取得部の一例)を操作して(S31:YES)、「補正回避しない」を選択すれば(S33:NO)、CPU40は、上記濃度測定を実行し(S41)、その結果得られた最新の濃度調整データを、NVRAM43に既に記憶されている旧濃度調整データに対して上書きして更新する(S43)。そして、PCプリント要求に従って印刷データを展開処理すると共に、上記最新の濃度調整データを用いて印刷データの濃度調整を行い(S39)、S37に進む。
【0069】
また、本実施形態では、ユーザ選択画面を表示してから所定時間内にユーザの選択入力がされないときには(S31:NO)、このユーザは早期印刷をそれほど望んでいないとみなし、CPU40は、上記濃度測定を実行し(S41)、その結果得られた最新の濃度調整データを、NVRAM43に既に記憶されている旧濃度調整データに対して上書きして更新する(S43)。そして、PCプリント要求に従って印刷データを展開処理すると共に、上記最新の濃度調整データを用いて印刷データの濃度調整を行い(S39)、S37に進む。このようにすればユーザが選択されていない状態が継続することにより、次の印刷ジョブの処理が遅れるなど、といった問題を回避することができ、また、プリンタ1の利便性の低下を抑制しつつ、濃度補正の実行によって印刷データの画質を確保することができる。
【0070】
一方、ユーザが所定時間内に操作部48を操作して(S31:YES)「補正回避する」を選択すれば(S33:YES)、CPU40は、「補正回避する」を設定する。このときCPU40は「設定部」として機能する。そして、そのカラー画像データを含む補正必要データ(S21:YES、且つ、S27:YES)を、濃度補正が不要なモノクロ画像データに変換し、ビットマップデータへの展開処理を行うと共に、NVRAM43に記憶済みの濃度調整データを用いて印刷データの濃度調整を行い(S35)、S37に進む。
【0071】
CPU40は、S37で展開後の印刷データを印刷部10に転送し(S37)、本プリンタ側補正要否処理を終了する。前述のPC側補正要否処理または本プリンタ側補正要否処理で、印刷データが補正不要データと判断された場合(図3のS5:NO、図5のS27:NO)、補正必要データについてユーザが「補正回避しない」を選択した場合(図3のS9:NO、図5のS31:NO或いはS33:NO)には、CPU40は、まず上記濃度測定を実行して最新の濃度調整データを取得し、その最新の濃度調整データに基づき印刷データについて濃度補正をしつつ(本発明でいう「補正処理」の一例であり、以下、濃度測定有り補正処理という)印刷部10に印刷をさせる。これにより、品質の高い印刷が可能になる。このときCPU40、印刷部10及びパターンセンサ15等は「補正部」として機能する。
【0072】
一方、強制補正回避モードが設定される場合(図3のS3:YES、図5のS25:YES)、印刷データが補正必要データと判断され(図3のS5:YES、図5のS27:YES)、且つ、ユーザが「補正回避する」を選択した場合(図3のS9:YES、図5のS33:YES)には、印刷データは補正不要データに変換されている(図3のS11、図5のS35)。従って、CPU40は、濃度測定を実行することなく、その印刷データについて前回以前の濃度測定で取得した濃度調整データに基づき印刷データについて濃度補正をしつつ(以下、濃度測定無し補正処理という)を用いて印刷部10に印刷をさせる。これにより、濃度測定有り補正処理を実行して最新の濃度調整データを取得する場合に比べて品質が低下する可能性はあるが、早期に印刷処理を開始することができる。
【0073】
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、たとえ補正必要データであっても、強制補正回避モードが設定されたり、ユーザが補正回避を選択した場合には、当該補正必要データを、補正必要条件を満たさない補正不要データに変換することにより、濃度測定有り補正処理を回避することができる。従って、補正必要データに対して常に濃度測定有り補正処理を実行する従来構成に比べて利便性を向上させることができる。
【0074】
しかも、補正必要データを補正不要データに変換することにより濃度測定有り補正処理を回避するため、補正不要データに変換せずに単に濃度測定有り補正処理をしない場合に比べて、濃度測定有り補正処理をしないことによる画質への悪影響(濃度ずれ)を抑制することができる。具体的には、本実施形態ではカラー画像データをモノクロ画像データに変換することにより、印刷結果においてカラー画像に比べて濃度ずれが目立ちにくくなる。
【0075】
また、上記条件1〜3の少なくとも1つを満たす印刷データは、濃度測定有り補正処理をしないことによる悪影響が特に顕著に現れるので、補正回避(濃度測定有り補正処理を回避)するかどうかについて特にユーザの意思を確認することが必要な場合がある。そこで、本実施形態によれば、そのような条件を満たす印刷データに限って補正必要データとしてユーザによる補正回避の選択結果を反映させるようにした(図3のS7、図5のS29)。その一方で、上記条件を満たさない印刷データは補正をしないことによる悪影響が比較的に小さいので、補正不要データとすることにより早期印刷を優先させることにした。
【0076】
また、補正必要データについて補正回避するかどうかを、ユーザの意思によって決定することができる。また、所定時間経過してもユーザが補正回避するかどうかを選択しない場合には、早期印刷を望んでいないとみなし、濃度補正を実行して高品質の印刷を実行することができる。
【0077】
また、カラー画像データでは、濃度ずれ、色ずれ(位置ずれ)による画質への悪影響が特に顕著に現れる。これに対し、モノクロ画像データでは、その悪影響が比較的に少ない。そこで、本実施形態のように、カラー画像データを含む印刷データを補正必要データとし、モノクロ画像データを補正不要データとすることが好ましい。
【0078】
<実施形態2>
図6,7は実施形態2を示す。前記実施形態1との相違は、補正回避するかどうかの設定内容を適用する印刷データの範囲の決め方にあり、その他の点は前記実施形態1と同様である。従って、実施形態1と同一符号を付して重複する説明を省略し、異なるところのみを次に説明する。
【0079】
(PC側補正要否処理)
図6はPC側補正要否処理を示すフローチャートである。コンピュータ60のCPU61は、印刷データにカラー画像データが含まれていると判断した場合には(S1:YES)、その印刷データが、例えば次の条件4〜6のうち全部または少なくとも1つを満たす場合には、濃度補正をしないことによる印刷品質への悪影響が比較的に小さいとみなし、濃度補正の必要性が低いデータであると判断する(S41)。
【0080】
条件4:印刷データのうち現在処理中のページデータに基づく全画像に対してカラー画像の占める割合が基準割合(例えば20%)未満であること。
条件5:1つのPCプリント要求に含まれる複数のページデータについて全頁に対してカラーページの占める割合が基準割合(例えば10%)未満であること。
条件6:印刷データの解像度が基準値(例えば1200dpi)未満であること。
【0081】
CPU61は、印刷データが濃度補正の必要性が低いデータでないと判断すれば(S41:NO)、その印刷データを、モノクロ画像データに変換することなく、PCプリント要求に従って展開処理を行うとともに、ハードディスクドライブ64に記憶済みの濃度調整データを用いて印刷データの濃度調整を行い(S17)、S15に進む。従って、この場合、濃度測定有り補正処理が実行される。
【0082】
一方、CPU61は、印刷データが濃度補正の必要性が低いデータであると判断すれば(S41:YES)、S3に進み、それ以降、S3、S9の設定内容に応じて、印刷データをモノクロ画像データに変換して補正を回避するかどうかが決定される。
【0083】
(プリンタ側補正要否処理)
図7は、プリンタ側補正要否処理を示すフローチャートである。プリンタ1のCPU40は、印刷データにカラー画像データが含まれている場合には(S23:YES)、上記図6のS41と同様、印刷データが濃度補正の必要性が低いデータでないと判断すれば(S51:NO)、その印刷データを、モノクロ画像データに変換することなく、PCプリント要求に従って展開処理を行うとともに、ハードディスクドライブ64に記憶済みの濃度調整データを用いて印刷データの濃度調整を行い(S39)、S37に進む。従って、この場合、濃度測定有り補正処理が実行される。
【0084】
一方、CPU40は、印刷データが濃度補正の必要性が低いデータであると判断すれば(S51:YES)、S25に進み、それ以降、S25、S31、S33の設定内容に応じて、印刷データをモノクロ画像データに変換して補正を回避するかどうかが決定される。
【0085】
(本実施形態の効果)
カラー画像データを含む印刷データであっても、印刷対象画像に対するカラー画像の割合が基準割合未満であること、及び、印刷対象画像の解像度が基準値未満であることの少なくともいずれか一方を満たす印刷データであれば、補正不要データに変換することによる影響が比較的に小さい場合がある。そこで、本実施形態によれば、このような補正の必要性が比較的に低い印刷データに限って、濃度測定有り補正処理をするかどうかの設定内容を適用することにした。逆に、上記条件を満たさない、補正の必要性が比較的に高い印刷データについては濃度測定有り補正処理の実行を徹底することができる。
【0086】
(参考例)
本発明に関連し、次のような構成にすることもできる。
「印刷処理を実行する印刷部と、
前記印刷部が印刷した測定用画像を測定し、その測定結果を参照して、前記印刷部が印刷データに基づき印刷する印刷対象画像を補正する補正処理を実行する補正部と、
前記印刷データに基づく画像に対してカラー画像の占める割合が基準割合未満かどうかを判断し、前記割合が前記基準割合以上である場合には前記補正部に前記補正処理を実行させ、前記割合が前記基準割合未満である場合には前記補正処理を実行させない、印刷装置。」
【0087】
具体的には、図1,2に示す印刷システムにおいて、印刷データが、補正必要データかどうかにかかわらず、上記条件3,4の少なくとも一方を満たさない場合には、濃度測定有り補正処理を実行し、満たす場合には変換処理も濃度測定有り補正処理もせずに(即ち、濃度測定無し補正処理を行って)印刷処理を行う。このような構成によれば、カラー画像の割合が小さい分だけ、濃度測定有り補正処理をしないことによる悪影響が小さいため、印刷品質の低下を抑制しつつ早期印刷を実現することができる。
【0088】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、電子写真方式で直接転写タイプのカラープリンタを示したが、本発明は、例えば、中間転写タイプや、4サイクルタイプなど、他のタイプの印刷装置にも適用でき、また、インクジェット方式など、他の方式の印刷装置にも適用できる。また、PCプリントに限らず、例えば、ファクシミリで受信したデータ(印刷データの一例)の印刷処理、スキャナで取り込んだデータ(印刷データの一例)の印刷処理(コピー)、外部または内部の記憶媒体から取得したデータ(印刷データの一例)の印刷処理(ダイレクトプリント)を実行する場合などにも本発明を適用することができる。
【0089】
(2)上記実施形態では、濃度測定によって得られた濃度調整データに基づいて、露光部の発光強度及び現像バイアス電圧を調整するものを示したが、本発明によれば、これらのうちいずれか一方のみを調整しても良く、あるいは、帯電器に印加する電圧や転写ローラに印加する電圧などを調整してもよい。また、インクジェット方式の画像形成装置の場合には、濃度測定によって得られた濃度調整データに基づいて、ヘッドからのインクの吐出量を調整しても良い。
【0090】
(3)上記実施形態では、画像補正として濃度補正を実行する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られず、例えば位置ずれ補正を実行する場合、或いは、位置ずれ補正及び濃度補正の両方を実行する場合にも本発明を適用することができる。
【0091】
位置ずれ補正(カラー印刷の場合は色ずれ)では、プリンタ1のCPU40は、まず位置ずれ測定を行う。即ち、CPU40は、印刷部10によってベルト13上に位置ずれ測定用のパターンを形成する。このパターンは、ベルト13の左右両側部に並んだ、主走査方向に細長い各色のマークから構成されている。パターンは、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの順に並んだ4つのマークを一組として、複数組のマークを副走査方向に間隔を開けて、例えばベルト13の全周にわたって配置したものである。隣り合うマークの間隔は、各マークが位置ずれのない理想位置に形成された場合に等しくなる。
【0092】
続いてCPU40は、各組のマークについて、各マークがパターンセンサ15の検出位置を通過するタイミングをパターンセンサ15からの信号により測定し、その測定した結果に基づいてブラックのマーク55Kを基準とする他の色(補正色という)のマーク55Y,55M,55Cの副走査方向の位置ずれ量を求める。そして、各補正色の位置ずれ量について、全組の平均値をそれぞれ算出し、この平均値の位置ずれを打ち消すための補正値を算出し、その補正値データをNVRAM43に記憶する。印刷処理時には、その補正値データに参照しつつ印刷データを展開処理して印刷部10に転送し、印刷部10では補正色について上記補正値に応じて露光タイミングやインク吐出タイミングを変更するなどして用紙3への画像形成を行う。その結果、位置ずれが抑制された画像を用紙3に印刷することができる。
【0093】
なお、位置ずれ測定用のパターンを形成して位置ずれ量を測定し、その測定結果に基づき最新の補正値データを取得し、その補正値データに基づき印刷データについて位置ずれ補正を行う処理が、上記実施形態でいう「濃度測定有り補正処理」に対応し、本発明の「補正処理」の一例である。位置ずれ測定用のパターンを形成せずに、前回以前の補正値データに基づき印刷データについて位置ずれ補正を行う処理が、上記実施形態でいう「補正濃度無し補正処理」に対応する。
【0094】
(4)上記実施形態では、PC側補正要否処理及びプリンタ側補正要否処理では、印刷データを補正必要データと判断するための必要条件(最低条件)は、少なくとも印刷データにカラー画像データが含まれることにしたが。本発明はこれに限られない。例えばカラー画像データが含まれるかどうかにかかわらず、少なくとも解像度が基準値以上であることを必要条件としてもよい。具体的には、図3及び図6のS1、図5及び図7のS21で印刷データの解像度が基準値以上かどうかを判断し、基準値未満であればS17、S39に進むようにする。そして、S11、S35では解像度が上記基準値よりも低いデータに変換する。低解像度にすれば位置ずれや濃度ずれが目立ちにくくなり得る。なお、印刷データがカラー画像データを含む場合には上記実施形態と同様の処理でもよい。この構成であれば、カラー印刷機能を備えていないモノクロ印刷専用の印刷装置にも適用することができる。
【0095】
(5)上記実施形態では、現像カートリッジ22のトナー残量が所定量以下である場合に、強制補正回避モードに設定したが、本発明はこれに限られない。例えば、予めPCプリント要求を行うユーザと、強制補正回避モードの設定の有無との対応関係情報をNVRAM43,ハードディスク64に記憶しておき、当該対応関係情報に基づき、現在PCプリンタ要求をしているユーザに対応する設定結果を反映させてもよい。また、1日における各時間帯や1週間における各曜日と、強制補正回避モードの設定の有無との対応関係情報をNVRAM43,ハードディスク64に記憶しておき、当該対応関係情報に基づき、現在の時間帯や曜日に対応する設定結果を反映させてもよい。例えば日中や営業日など、忙しい時間帯や曜日には「補正回避モード」を設定し、夜間や休日など、比較的に忙しくない時間帯等には「補正回避モード」を設定しないようにする。
【0096】
さらには、例えば図8に示すようなユーザ選択画面を、PC印刷要求時にプリンタ1の表示部47やコンピュータ60の表示部67に表示させて、ユーザに操作部48,66(第1取得部の一例)での操作により選択させる構成でもよい。例えば、カラー部分が少ない印刷データであっても、濃度測定有り補正処理を実行させてもよいユーザもいれば、濃度測定有り補正処理を回避して早期印刷を望むユーザもある。この構成によれば、本当に濃度測定有り補正処理を回避するか(補正必要データを補正不要データに変換するか)のユーザ選択を反映させて、利便性を向上させることができる。
【0097】
(6)上記実施形態ではPCプリントの第1形態、第2形態を例に挙げて説明したが、本発明はこれ以外の形態にも適用することができる。例えばコンピュータ60'側でPCプリント要求に従って印刷データを展開処理し、その展開後の印刷データをプリンタ1に送信する形態でもよい。この場合、補正不要データへの変換は、各色のビットマップデータを合成してモノクロ画像用のビットマップデータを生成したり、コンピュータ60'から展開前の印刷データを取得してモノクロ画像用のビットマップデータに展開処理したりすればよい。
【0098】
(7)上記実施形態では、補正必要データかどうかの判断、補正回避するかどうかの設定、補正不要データへの変換をいずれもコンピュータ60側或いはプリンタ1側でまとめて行う構成であったが、本発明の「印刷システム」はこれに限られない。例えば補正必要データかどうかの判断だけ、或いは、それに加えて補正回避するかどうかの設定をコンピュータ60側で行い、それ以外をプリンタ1側で行う構成でもよい。
【符号の説明】
【0099】
1...プリンタ
10...印刷部
40,61...CPU
60,60'...コンピュータ
48,66...操作部
50...トナー残量センサ
100...印刷システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷処理を実行する印刷部と、
前記印刷部が印刷した測定用画像を測定し、その測定結果を参照して、前記印刷部が印刷データに基づき印刷する印刷対象画像を補正する補正処理を実行する補正部と、
前記印刷データが補正必要条件を満たす補正必要データである場合に、当該補正必要データに対して前記補正部に前記補正処理を実行させ、前記補正必要条件を満たさない補正不要データである場合に、当該補正不要データに対して前記補正部に前記補正処理を回避させるようにする制御部と、
補正回避するかどうかを設定可能な設定部と、を備え、
前記制御部は、前記設定部により前記補正回避しないと設定されている場合には、前記補正必要データに対して前記補正部に前記補正処理を実行させ、前記設定部により前記補正回避すると設定されている場合には、前記補正必要データを、前記補正不要データに変換することにより前記補正部に前記補正処理を回避させる、印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記補正必要条件は、前記印刷対象画像に対するカラー画像の割合が基準割合以上であること、及び、前記印刷対象画像の解像度が基準値以上であることの少なくともいずれか一方を満たすことである、印刷装置。
【請求項3】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、前記印刷データが、前記補正必要データであって、且つ、前記印刷対象画像に対するカラー画像の割合が基準割合未満であること、及び、前記印刷対象画像の解像度が基準値未満であることの少なくともいずれか一方を満たすことを条件に、前記設定部による設定内容を適用する、印刷装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
前記補正回避をするかどうかのユーザによる選択情報を取得する第1取得部を備え、
前記設定部は、前記第1取得部で取得した前記選択情報に基づき前記補正回避をするかどうかを設定する、印刷装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
前記制御部により前記補正必要データを前記補正不要データに変換させるかどうかのユーザによる選択情報を取得する第2取得部を備え、
前記制御部は、前記設定部により前記補正回避すると設定されている場合、前記第2取得部で取得した前記選択情報に基づき、前記補正必要データを前記補正不要データに変換するかどうかを決定する、印刷装置。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、前記第2取得部が前記選択情報を所定時間取得しない場合には、前記補正必要データを前記補正不要データに変換せずに前記補正処理を実行する。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
前記補正必要条件は、カラー画像を含むことであり、
前記制御部は、前記補正必要データを、そのカラー画像部分をモノクロ画像に変換することにより前記補正不要データとする、印刷装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
前記印刷処理に使用する着色剤の残量を検出する検出部を備え、
前記設定部は、前記検出部で検出された残量が所定量以下である場合は、前記補正回避有りに設定する、印刷装置。
【請求項9】
印刷した測定用画像を測定し、その測定結果を参照して、印刷データに基づき印刷する印刷対象画像を補正する補正処理を実行可能な印刷装置と通信可能な情報処理装置のコンピュータに、
補正回避するかどうかを設定可能な設定処理と、
前記印刷データが補正必要条件を満たす補正必要データである場合であって、且つ、前記設定処理により前記補正回避すると設定されている場合には、前記補正必要データを、前記補正必要条件を満たさない補正不要データに変換することにより前記補正処理を回避させる制御処理と、を実行させるプリンタドライバ。
【請求項10】
印刷装置と、当該印刷装置と通信可能な情報処理装置とを備える印刷システムであって、
前記印刷装置に備えられ、印刷処理を実行する印刷部と、
前記印刷装置に備えられ、前記印刷部が印刷した測定用画像を測定し、その測定結果を参照して、前記印刷部が印刷データに基づき印刷する印刷対象画像を補正する補正処理を実行する補正部と、
前記印刷装置または前記情報処理装置に備えられ、前記印刷データが補正必要条件を満たす補正必要データである場合に、当該補正必要データに対して前記補正部に前記補正処理を実行させ、前記補正必要条件を満たさない補正不要データである場合に、当該補正不要データに対して前記補正部に前記補正処理を回避させるようにする制御部と、
前記印刷装置または前記情報処理装置に備えられ、補正回避するかどうかを設定可能な設定部と、を備え、
前記制御部は、前記設定部により前記補正回避しないと設定されている場合には、前記補正必要データに対して前記補正部に前記補正処理を実行させ、前記設定部により前記補正回避すると設定されている場合には、前記補正必要データを、前記補正不要データに変換することにより前記補正部に前記補正処理を回避させる、印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−161813(P2011−161813A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27746(P2010−27746)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】