説明

印刷装置、供給電流制御装置及びコンピュータプログラム

【課題】印刷解像度の高精細化と印刷速度の高速化に伴い、インクジェット方式の印刷装置に搭載する電源が大型化している。
【解決手段】インクジェット方式の印刷装置に、(a)画像データを処理して印刷ヘッドに供給する画像処理部と、(b)印刷ヘッドに電力を供給する電源と、(c)電源との直接通信を通じ、印刷ヘッドに対する電流の供給がオーバーカレント状態にあると判定されたとき、印刷ヘッドに対する電流の供給を印刷単位で低減する制御部とを搭載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
明細書で提案する発明は、インクジェット方式の印刷装置に搭載する電源の小容量化を実現する技術に関する。
なお、発明者が提案する発明は、印刷装置、供給電流制御装置及びコンピュータプログラムとしての側面を有する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット方式の印刷装置には、印刷解像度の高精細化と共に印刷速度の高速化が求められている。これに伴い、この種の印刷装置には、業務使用か個人使用かを問わず、大きな電源供給容量を有する電源が搭載されている。
なお、電源供給容量の大きさは、長時間にわたる高速連続印刷やベタ塗り印刷(全て又はほとんど全てのヘッド素子を使用する印刷)を前提に決定される。
【0003】
ところで、印刷装置は、不特定多数のユーザーによる多様な印刷態様が想定される製品である。このため、印刷装置の用途次第では、大容量の電源の搭載が過大であるだけでなく、装置本体の大型化、重量の増加、コストアップ等を招く欠点がある。
そこで、印刷時の電力消費に一定の制限を設け、電源の小容量化を実現する仕組みが検討されている。
【0004】
例えば特許文献1には、記録動作に必要な素子数をカウントし、カウント値が所定数を上回る場合には、実際に使用する素子数が所定数を上回らないように制限する仕組みが提案されている。
また例えば特許文献2には、省電力モードの入力により、印字ヘッドに入力される入力パルス信号の電力を通常時より低減する(具体的にはパルス幅を狭くする)仕組みが提案されている。
【0005】
また例えば特許文献3には、全のノズルについて印字データが非活性状態の場合、ノズル底部の電極に供給する電流量を制御する制御部の動作を無効化する仕組みが提案されている。
【特許文献1】特開平04−156348号公報
【特許文献2】特開平04−183167号公報
【特許文献3】特開平10−034929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、高解像度による高速印刷に対応した印刷装置における電源容量の小型化技術は確立されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(A)手段1
そこで、発明者らは、以下に示すデバイスを搭載する印刷装置を提案する。
(a)インクジェット方式の印刷ヘッド
(b)画像データを処理して印刷ヘッドに供給する画像処理部
(c)印刷ヘッドに電力を供給する電源
(d)電源との直接通信を通じ、印刷ヘッドに対する電流の供給がオーバーカレント状態にあると判定されたとき、印刷ヘッドに対する電流の供給を印刷単位で低減する制御部
【0008】
(B)手段2
また、発明者らは、以下に示すデバイスを搭載する印刷装置を提案する。
(a)インクジェット方式の印刷ヘッド
(b)画像データを処理して印刷ヘッドに供給する画像処理部
(c)印刷ヘッドに電力を供給する電源
(d)電源との直接通信を通じ、電源の内部温度が基準値以上になったと判定されたとき、印刷ヘッドに対する電流の供給を印刷単位で低減する制御部
【0009】
(C)手段3
また、発明者らは、以下に示すデバイスを搭載する印刷装置を提案する。
(a)インクジェット方式の印刷ヘッド
(b)画像データを処理して印刷ヘッドに供給する画像処理部
(c)印刷ヘッドに電力を供給する電源
(d)電源との直接通信を通じ、印刷ヘッドに対する電流の供給がオーバーカレント状態にあると判定されたとき、印刷単位で印刷動作を一時的に停止する制御部
【0010】
(D)手段4
また、発明者らは、以下に示すデバイスを搭載する印刷装置を提案する。
(a)インクジェット方式の印刷ヘッド
(b)画像データを処理して印刷ヘッドに供給する画像処理部
(c)印刷ヘッドに電力を供給する電源
(d)電源との直接通信を通じ、電源の内部温度が基準値以上になったと判定されたとき、印刷単位で印刷動作を一時的に停止する制御部
【発明の効果】
【0011】
発明者らの提案する制御技術の採用により、例えば高解像度による高速印刷時のように大きな電力を必要とする印刷実行時にも、電源から印刷ヘッドに供給される電流を一定値以内に制限できる。
また、電流の低減や印刷停止は、印刷単位で実行する。従って、印刷単位毎に印刷条件を同じにでき、印刷品質を一定に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、発明に係るインクジェット方式の印刷装置の形態例を説明する。
なお、本明細書で特に図示又は記載されない部分には、当該技術分野の周知又は公知技術を適用する。
また以下に説明する実施形態は、発明の一つの実施形態であって、これらに限定されるものではない。
【0013】
(A)システム例1
(A−1)全体構成
図1に、印刷装置100を用いた印刷システムの機能ブロック構成を示す。
なお、印刷装置100は、インクジェット方式の印刷装置である。また、印刷装置100は、シリアルバスやネットワーク経由でホストコンピュータ200と接続される。
【0014】
ホストコンピュータ200には、画像メモリ201が搭載され、画像ファイルが格納される。この他、印刷装置100は、外部記憶媒体から画像ファイルを読み出して印刷できる機能(ダイレクトプリント機能)にも対応する。図1では、外部記憶媒体の一例として、記憶媒体の外観がカード形状のメモリカード(半導体メモリ)300の場合を示す。
【0015】
(A−2)内部構成
印刷装置100は、主電源111、印刷ヘッド113、モーター駆動部115、モーター117、システム制御部119、センサー121、コンピュータI/F部123、メモリカードI/F部125、画像処理部127、印刷ヘッド制御部129で構成する。
【0016】
(a)電源
電源111は、商用電源のコンセントに電源ケーブル経由で接続される電源である。電源111は、印刷装置内の各部に電力を分配する。例えばヘッド電源より印刷ヘッド113に電力を供給する。また例えば、ロジック電源より装置内の各部に電力を供給する。また例えば、モーター電源よりモーター駆動部115に電力を供給する。
【0017】
電源111は、供給電流検出部1111と高温検出部1113の2つの検出部を内蔵する。
供給電流検出部1111は、印刷ヘッドに対する電流の供給を監視し、オーバーカレント状態の発生を検出する処理を実行する。この形態例の場合、オーバーカレント状態の発生は、電源111と印刷ヘッド113を接続する電源線に一定の電圧が印加された状態で一定値以上の電流(特許請求の範囲の「第1の電流値以上の電流」に対応する。)が基準時間以上連続して流れることで検出する。
【0018】
オーバーカレント状態の検出条件は、電源111に求める容量、各処理に要する時間、実際に消費される電流量等を参考に決定する。
図2に、オーバーカレント状態の検出条件例を示す。図2は、印刷像を高精細かつ高速度で形成するとき、9.9Vの定電圧下に26.3A以上の電流が流れる場合について表している。また、同条件下において、1頁の印刷には5.7秒、印刷用紙の給排紙等には1秒が必要になるものとする。
【0019】
この場合、オーバーカレント状態の検出条件は、例えば26.3A以上の電流が連続して5.7秒間流れた場合と定義する。この検出条件を満たされたとき、供給電流検出部1111は、システム制御部119に供給するオーバーカレント状態信号の論理レベルを反転する。すなわち、オーバーカレント状態の発生をシステム制御部119に通知する。
【0020】
一方、高温検出部1113は、温度センサーで逐次測定される電源内部の温度を監視し、オーバーカレント状態の発生を検出する処理を実行する。この形態例の場合、オーバーカレント状態の発生は、内部温度の測定値が基準値以上であることで検出する。例えば、内部温度の測定値が電源を構成する各々の部品の(定格温度−10℃)以上になった場合である。一例をあげると、電源内部で温度が高くなる部品がトランスやチョークコイルである場合は検出温度が80℃以上、トランジスタ等の半導体である場合は検出温度が60℃以上の場合に、オーバーカレント状態とする。
【0021】
この高温検出部1113の場合も、この検出条件が満たされるとき、システム制御部119に供給するオーバーカレント状態信号の論理レベルを反転する。すなわち、オーバーカレント状態の発生をシステム制御部119に通知する。
このように、2つの検出部の検出動作は独立であり、いずれか一方でも検出条件が満たされると、オーバーカレント状態の発生がシステム制御部119に直接通知される。
【0022】
(b)印刷ヘッド
印刷ヘッド113は、微細なインク滴をノズルから被印刷媒体に吐出する方式のヘッド構造を有する。印刷ヘッド113で採用するインク滴の吐出方式は任意である。例えば、ヒーターの加熱で発生した気泡の膨張力でインク滴を吐出する方式を用いても良いし、圧電素子の形状変化に伴う圧力でインク滴を吐出する方式を用いても良い。
また、印刷ヘッド113は、シリアルヘッドでもラインヘッドでも良い。
【0023】
因みに、シリアルヘッドは、印刷ヘッドを主走査方向に往復走査させる動作と印刷ヘッド又は被印刷媒体を副走査方向に移動させる動作を組み合わせることで印刷像を被印刷媒体上に形成する印刷ヘッドをいう。また、ラインヘッドは、印刷幅よりも長く配列された一列のノズル群を有し、ラインヘッド又は被印刷媒体を副走査方向に移動させることで印刷像を被印刷媒体上に形成する印刷ヘッドをいう。
【0024】
(c)モーター駆動部
モーター駆動部115は、印刷装置内に搭載されたモーター117の駆動動作を制御するデバイスである。なお、モーター117の駆動内容や駆動タイミング等は、システム制御部119を通じて制御される。
【0025】
(d)システム制御部
システム制御部119は、システム全体の動作を制御する処理ユニットである。システム制御部119は、コンピュータで構成される。すなわち、CPU、ROM、RAMを主要な構成要素とする。ROMには、処理プログラムが格納されている。CPUは、ROMから読み出した処理プログラムを実行し、システム全体の動作を制御する。RAMは、演算処理の作業領域である。
【0026】
システム制御部119は、電源111と直接接続されており、オーバーカレント状態信号の論理値によりオーバーカレント状態の発生を監視し、印刷ヘッド113に供給する電流の増減、給排紙その他の印刷動作を制御する。
例えばオーバーカレント状態の発生時、システム制御部119は、電源111に印刷ヘッド113に供給する電流量を減少させるように指示を出す。図2の場合、電流量は、オーバーカレント状態の発生前の約半分(特許請求の範囲の「第2の電流値」に対応する。)に減少される。すなわち、13.6A以下に制御される。
【0027】
ただし、頁の印刷中に電流量を変化させると、電流の変化部分を境に印刷品質が低下する可能性がある。そこで、少なくとも現在の印刷については大きな電流の供給を許容し、次頁の印刷時から供給量を低下する制御を実行する。従って、図2の例であれば、オーバーカレント状態の発生後も最大で1頁分(すなわち、5.7秒間)は、26.3A以上の電流が継続的に供給される。
【0028】
勿論、印刷ヘッド113に供給する電流量の低下に比例して印刷速度もほぼ半分に低下する。従って、システム制御部119は、モーター駆動部115、画像処理部127、印刷ヘッド制御部129を制御し、印刷速度に応じた給排紙やデータ処理を実現する。このように印刷単位である頁単位で印刷ヘッド113に供給する電流量と処理動作を切り替えることにより、各頁の印刷品質は一定に保たれる。
【0029】
なお、電流量の低減処理は、電源111の容量範囲を越える電力の供給を抑制するためである。従って、予想される電流量が電源の容量範囲内に戻れば、出来るだけ速やかに電流量の抑制を解除することが望ましい。
図2の場合、システム制御部119は、この期間を60秒に設定する。すなわち、オーバーカレント状態の発生から60秒経過すると、オーバーカレント状態を解除する。解除は、オーバーカレント状態信号の論理値を再反転することにより実行する。
【0030】
ただし、この場合も、頁の印刷中に電流量を変化させると、電流の変化部分を境に印刷品質が低下する可能性がある。そこで、少なくとも現在の印刷については半減された電流の供給を継続し、次頁の印刷時から供給量を元に戻す制御を実行する。従って、図2の例であれば、オーバーカレント状態の解除後も最大で1頁分は、13.6A以下の電流が継続的に供給される。
【0031】
この他、システム制御部119は、ホストコンピュータ200及びメモリカード300から入力される画像データ、処理コマンド、ステータス情報等に基づいて印刷処理も実行する。
なお、ホストコンピュータ200と印刷装置100との接続は、コンピュータインターフェース部123を通じて実行される。
【0032】
コンピュータインターフェース部123は、有線通信用のインターフェースや無線通信用のインターフェースを使用する。例えばUSB、イーサーネット(登録商標)、セントロニクス、IrDA、ブルートゥース、IEEE802.11a/b/gに準拠したインターフェースを使用する。
【0033】
また、メモリカード300と印刷装置100の接続は、メモリカードインターフェース部125を通じて実行される。メモリカードインターフェース部125には、各種のカード型記憶媒体に応じたインターフェースが使用される。
これらインターフェースとシステム制御部119の接続は、制御バス経由で実行される。
【0034】
(e)画像処理部
画像処理部127は、システム制御部119を通じて供給される画像データに各種の信号処理及び出力特性変換を加える処理デバイスである。
図3に、画像処理部127の構成例を示す。画像処理部127は、色分解処理部1271、黒摘出下色除去部1273、色及び階調修正部1275、シャープネス修正部1277、多値化ディザ処理部1279で構成される。
【0035】
色分解処理部1271は、読み込まれた画像データのRGB信号をインク色に対応したCMY信号に変換する処理デバイスである。
黒摘出下色除去部1273は、CMY信号から黒(K)成分を抽出してCMYK信号を生成する処理デバイスである。
色及び階調修正部1275は、必要に応じてCMYK信号に色調整と階調修正処理を実行する処理デバイスである。
【0036】
シャープネス修正部1277は、色調整等を経たCMYK信号に対して画像の鮮鋭化処理やノイズ除去処理を実行する処理デバイスである。
多値化ディザ処理部1279は、鮮鋭化処理等を経たCMYK信号に対して多値階調誤差拡散法等の多階調ディザ処理を実行し、印刷データ(ドットパターンデータ)を生成する処理デバイスである。
【0037】
(f)印刷ヘッド制御部
印刷ヘッド制御部129は、印刷データをヘッド駆動信号に変換し、印刷ヘッド113の吐出動作を制御する処理デバイスである。この印刷ヘッド制御部129の制御により、印刷ヘッド113を構成する個々のノズルは1発又は複数発のインク滴を被印刷媒体に向けて吐出する。
【0038】
(A−3)制御動作例
図4に、システム制御部119で実行される印刷制御動作を説明する。
前述したように、システム制御部119は、印刷装置内の全ての処理動作を制御している。
当初、システム制御部119は、規定電流値(例えば26.3A)以上の電流の供給が可能な状態での制御動作を実行する(S1)。
【0039】
この状態で、システム制御部119は、オーバーカレント状態信号が電源111から与えられたか否か判定する(S2)。オーバーカレント状態の発生が電源111から通知されていない間(否定結果が得られている間)、システム制御部119は、規定電流値以上の電流による印刷動作を実行する。
ただし、オーバーカレント状態の検出条件を満たす状態の発生が電源111を通じて通知されると、システム制御部119は、既にある頁の印刷が開始されているか否かを判定する(S3)。
【0040】
既にある頁の印刷が開始されていると判定された場合(肯定結果が得られた場合)、システム制御部119は、該当頁の印刷が終了されるまでの間、同じ供給条件による印刷動作を継続する(S4)。
処理S3で否定結果が得られた場合又は処理S4の終了後、システム制御部119は、印刷ヘッド113に供給される電流を規定電流値の半分(例えば13.6A)以下に制御した状態での制御動作を実行する(S5)。
【0041】
同時に、システム制御部119は、オーバーカレント状態の発生から規定時間(例えば60秒)が経過したか否かを判定する(S6)。否定結果が得られている間は、供給電流に変化は生じない。すなわち、制御動作は現状を維持する。
やがて、規定時間の経過が確認されると(処理S6で肯定結果が得られると)、システム制御部119は、オーバーカレント状態信号を解除する(S7)。
【0042】
ただし、オーバーカレント状態信号の解除と同時に印刷ヘッド113に供給される電流量を増加させると頁内で印刷品質が変化してしまう。このため、システム制御部119は、既にある頁の印刷が開始されているか否かを判定する(S8)。
ここで、既にある頁の印刷が開始されていると判定された場合(肯定結果が得られた場合)、システム制御部119は、該当頁の印刷が終了されるまでの間、同じ供給条件による印刷動作を継続する(S9)。
【0043】
一方、処理S8で否定結果が得られた場合又は処理S9の終了後、システム制御部119は、印刷ヘッド113に規定電流値(例えば26.3A)以上の電流を供給可能な状態に戻る(S1)。この後、前述した判定動作と制御動作を実行する。
【0044】
(A−4)効果
以上説明したように、オーバーカレント状態の検出時には、印刷ヘッド113に供給する電流量を半減して低速印刷に切り替えることにより、電源の容量範囲内で印刷動作を継続できる印刷装置を実現できる。この結果、電源の供給容量をこれらの仕組みを採用しない場合に比して半減することができる。
【0045】
また、供給電流の半減や復帰は頁の先頭で実行する。このため、1つの頁内で異なる印刷品質が混在する事態を確実に回避できる。
また、電源内部の過度の温度上昇の検出時にも、オーバーカレント状態と同じ制御を実行する。
【0046】
すなわち、印刷ヘッド113に供給する電流量を半減して低速印刷に切り替えて電源にかかる電流の供給負荷を低下させる。結果的に、電源が高温になる期間を短くでき、電源の小容量化に加えて長寿命化を実現できる。勿論、温度上昇に基づく供給電流の半減や復帰についても頁の先頭で実行するため、1つの頁内で異なる印刷品質が混在する事態を確実に回避できる。
【0047】
(B)システム例2
(B−1)全体構成及び内部構成
続いて、印刷装置の他のシステム例を説明する。ここでは、オーバーカレント状態や過度の温度上昇の検出時に、供給電流量をゼロに制御する場合について説明する。すなわち、印刷ヘッド113による印刷動作を一時的に停止制御する場合について説明する。
【0048】
従って、システム例2とシステム例1の違いはシステム制御部119の制御内容だけである。よって、ハードウェア構成(全体構成及び内部構成)は、システム例1と同じおものとして説明する。
【0049】
(B−2)制御動作例
図5に、システム制御部119で実行される印刷制御動作を説明する。
このシステム制御部119も、印刷装置内の全ての処理動作を制御している。
当初、システム制御部119は、規定電流値(例えば26.3A)以上の電流の供給が可能な状態での制御動作を実行する(S11)。
【0050】
この状態で、システム制御部119は、オーバーカレント状態信号が電源111から与えられたか否か判定する(S12)。オーバーカレント状態の発生が電源111から通知されていない間(否定結果が得られている間)、システム制御部119は、規定電流値以上の電流による印刷動作を実行する。
ただし、オーバーカレント状態の検出条件を満たす状態の発生が電源111を通じて通知されると、システム制御部119は、既にある頁の印刷が開始されているか否かを判定する(S13)。
【0051】
既にある頁の印刷が開始されていると判定された場合(肯定結果が得られた場合)、システム制御部119は、該当頁の印刷が終了されるまでの間、同じ供給条件による印刷動作を継続する(S14)。
処理S13で否定結果が得られた場合又は処理S14の終了後、システム制御部119は、印刷ヘッド113による印刷動作を一時的に停止制御する(S15)。
【0052】
この際、システム制御部119は、電源111に印刷ヘッド113に対する電流の供給停止を指示する。また、システム制御部119は、モータ駆動部115、画像処理部127、印刷ヘッド制御部129に印刷動作の停止を指示する。例えば給排紙の停止、画像処理の停止、印刷ヘッドに対する駆動信号の供給停止を指示する。
なお、画像処理部127については、画像処理を停止しない手法の選択も可能である。
【0053】
この場合は、印刷動作の停止時間を利用して、印刷再開後に備えた画像処理を事前に実行することができる。事前に画像処理を実行しておくことで、印刷動作の再開に要する時間を短縮できる。
次に、システム制御部119は、オーバーカレント状態の発生から規定時間(例えば30秒)が経過したか否かを判定する(S16)。
【0054】
否定結果が得られている間は、現在の印刷停止状態を維持する。
やがて、規定時間の経過が確認されると(処理S16で肯定結果が得られると)、システム制御部119は、オーバーカレント状態信号を解除する(S17)。すなわち、印刷ヘッド113に規定電流値(例えば26.3A)以上の電流を供給可能な状態に戻り、印刷動作を再開する(S11)。この後、前述した判定動作と制御動作を実行する。
【0055】
図6に、このシステム例での制御動作の概要を示す。オーバーカレント状態の検出条件及び検出時に既に印刷が開始されていた場合の動作は、システム例1と同じである。ただし、印刷頁の印刷終了と同時に印刷動作は一時停止状態になり、電流の供給も停止していることが分かる。また、規定時間の経過後は、給紙後即座に印刷動作が再開される様子が分かる。このように、印刷動作中は常に同じ大きさの規定電流が印刷ヘッドに流れる。
【0056】
(B−3)効果
以上説明したように、オーバーカレント状態の検出時には、印刷動作を一時的に停止する手法の採用により、電源の容量範囲内で印刷動作を継続できる印刷装置を実現できる。すなわち、電源の供給容量をこれらの仕組みを採用しない場合に比して半減することができる。
【0057】
また、このシステム例では、印刷動作の一時停止時間が発生するが、低速印刷の実行が不要になるので、結果的に総印刷時間の短縮も可能性である。
また、このシステム例では、印刷の実行と停止の2種類の制御で良いため、制御プログラム等を単純化できる効果も期待できる。勿論、このシステム例の場合も、印刷動作の停止や再開は頁単位で実行される。このため、1つの頁内で異なる印刷品質が混在する事態を確実に回避できる。
【0058】
また、このシステム例の場合も、電源内部の過度の温度上昇の検出時にも、オーバーカレント状態と同じ制御を実行する。結果的に、電源が高温になる期間を短くでき、電源の長寿命化を実現できる。勿論、印刷動作の停止や再開は頁単位で実行されるため、1つの頁内で異なる印刷品質が混在する事態を確実に回避できる。
【0059】
(C)他の形態例
(a)前述の形態例では、オーバーカレント状態の発生が電源111内で検知され、システム制御部119に通知される場合について説明した。
しかし、オーバーカレント状態の発生をシステム制御部119内で検知する場合にも適用できる。
【0060】
図7に、オーバーカレント状態の発生時に供給電流量を低減する場合に対応するシステム制御部119の処理動作例を示す。重複した説明を省略するため、図7には図4との対応部分に同一符号を付して示す。
この処理手法を採用する場合、システム制御部119は、供給電流検出部1111から印刷ヘッド113に対する供給電流値を入力し、オーバーカレント状態の検出条件を満たすか否かを判定する(S21)。
【0061】
また、システム制御部119は、高温検出部1113から電源111の内部温度を入力し、内部温度が基準値以上であるか否かを判定する(S22)。
いずれの判定でも否定結果が得られた場合、システム制御部119は、現在の印刷動作を継続する。
【0062】
一方、いずれか一方の判定で肯定結果が得られた場合、システム制御部119は、オーバーカレント状態の発生を判定し、オーバーカレント状態信号を発生する(S23)。
この後は、システム例1と同様、既に印刷が開始されているかの判定を経て、印刷ヘッドに供給する電流値を半減する。
【0063】
図8に、内部温度が基準値以上である場合に印刷動作を一時停止させる場合に対応するシステム制御部119の処理動作例を示す。重複した説明を省略するため、図8の場合も図5との対応部分に同一符号を付して示す。
この処理手法を採用する場合も、システム制御部119は、供給電流検出部1111から印刷ヘッド113に対する供給電流値を入力し、オーバーカレント状態の検出条件を満たすか否かを判定する(S21)。
【0064】
また、システム制御部119は、高温検出部1113から電源111の内部温度を入力し、内部温度が基準値以上であるか否かを判定する(S22)。
いずれの判定でも否定結果が得られた場合、システム制御部119は、現在の印刷動作を継続する。
一方、いずれか一方の判定で肯定結果が得られた場合、システム制御部119は、オーバーカレント状態の発生を判定し、オーバーカレント状態信号を発生する(S23)。
この後は、システム例1と同様、既に印刷が開始されているかの判定を経て、印刷動作を一時的に停止する。
【0065】
(b)前述の形態例では、オーバーカレント状態の検出条件を、9.9Vの一定電圧が供給される場合に、26.3A以上の電流が5.7秒間以上流れる場合と決定した。
しかし、設定電流や設定時間を少なく見積もることも可能である。例えば26.3A以上の電流が2.85秒以上連続して流れることをオーバーカレント状態の検出条件としても良い。また例えば、20A以上の電流が5秒以上連続して流れることをオーバーカレント状態の検出条件としても良い。
【0066】
また例えば、13.6A以上の電流が5.7秒以上連続して流れることをオーバーカレント状態の検出条件としても良い。
この他、規定電流値以上の電流が複数頁連続する場合をオーバーカレント状態の検出条件としても良い。
図9に、この場合の処理動作例を示す。なお、重複した説明を省略するため、図9には図7との対応部分に同一符号を付して示す。すなわち、図9は、オーバーカレント状態の発生時に供給電流量を減少させる場合について示す。
【0067】
この例の場合、システム制御部119は、例えば既定値以上の電流の供給が2頁連続した場合、オーバーカレント状態が発生したものと判定する(S31)。その他の動作は図6と同じであるので省略する。このように、印刷頁の数をカウントすることでも、同様の技術的効果を実現できる。
勿論、オーバーカレント状態の発生時に印刷動作を停止させるシステム例の場合にも、印刷頁数を検出条件に用いる方法を適用できる。
【0068】
(c)前述の形態例では、オーバーカレント状態の発生時の制御動作の一例として、印刷ヘッド113に供給する電流量を半減する場合について説明した。
しかし、電流量を減少量は1/2に限らない。例えば、電流量を1/3に減少させる仕組みとしても良い。
(d)前述の形態例では、電流量の減少期間を60秒後に解除する場合や印刷動作の停止30秒後に解除する場合について説明した。
しかし、これらの期間は、印刷装置の動作条件等に応じて最適な値を採用すれば良い。
【0069】
(e)前述した形態例では、オーバーカレント状態の検出機能と電源内温度の上昇検出機能の両方を印刷装置に搭載する場合について説明した。
しかし、同検出機能の一方だけを印刷装置に搭載しても良い。
【0070】
(f)前述した技術は、印刷装置が業務用か個人用かを問わずに適用できる。例えば、オフィス用印刷機、医療用印刷機、写真印刷機、複写機、ファックス機、汎用印刷機、ビデオ印刷機等にも適用できる。
なお、印刷装置は、印刷機能以外のデバイス、例えば表示デバイス、スキャナ等を搭載しても良い。
また、印刷装置は、画像データを格納する大容量記憶装置を搭載しても良い。大容量記憶装置には、例えばハードディスク駆動装置、半導体メモリ、光学式記憶媒体等を使用する。
【0071】
(g)前述した技術のうち、オーバーカレント状態が発生した場合や電源内部が高温状態になった場合に電流量を減少させる機能や印刷動作を一時的に停止制御する機能は、同等の機能をハードウェアとしてもソフトウェアとしても実現できる。
また、これらの処理機能の全てをハードウェア又はソフトウェアで実現するだけでなく、その一部はハードウェア又はソフトウェアを用いて実現しても良い。すなわち、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせ構成としても良い。
(h)前述の形態例には、発明の趣旨の範囲内で様々な変形例が考えられる。また、本明細書の記載に基づいて創作される各種の変形例及び応用例も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】印刷システム例を示す図である。
【図2】システム例1の制御動作を説明する図である。
【図3】画像処理部の構成例を示す図である。
【図4】システム例1の制御動作例を説明する図である。
【図5】システム例2の制御動作例を説明する図である。
【図6】システム例2の制御動作を説明する図である。
【図7】他の制御動作例を説明する図である。
【図8】他の制御動作例を説明する図である。
【図9】他の制御動作例を説明する図である。
【符号の説明】
【0073】
100 印刷装置
111 電源
1111 供給電流検出部
1113 高温検出部
119 システム制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式の印刷ヘッドと、
画像データを処理して前記印刷ヘッドに供給する画像処理部と、
前記印刷ヘッドに電力を供給する電源と、
前記電源との直接通信を通じ、印刷ヘッドに対する電流の供給がオーバーカレント状態にあると判定されたとき、印刷ヘッドに対する電流の供給を印刷単位で低減する制御部と
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置は、
第1の電流値以上の電流が基準時間以上連続した場合をオーバーカレント状態と判定する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1に記載の印刷装置は、
第1の電流値以上の電流が複数頁連続した場合をオーバーカレント状態と判定する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記制御部は、オーバーカレント状態の検出時、印刷ヘッドに対する電流の供給量が第2の電流値(第1の電流値より小さい電流値)以下になるように制御する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記制御部は、オーバーカレント状態の検出から一定時間経過後にオーバーカレント状態の判定を解除する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記制御部は、オーバーカレント状態の検出時に既に印刷動作が開始されている場合、少なくとも印刷動作中の頁については電流の供給を制限しない状態のまま印刷動作を継続する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記制御部は、オーバーカレント状態の解除時に既に印刷動作が開始されている場合、少なくとも印刷動作中の頁については電流の供給を制限した状態で印刷動作を継続する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
インクジェット方式の印刷ヘッドと、
画像データを処理して前記印刷ヘッドに供給する画像処理部と、
前記印刷ヘッドに電力を供給する電源と、
前記電源との直接通信を通じ、前記電源の内部温度が基準値以上になったと判定されたとき、印刷ヘッドに対する電流の供給を印刷単位で低減する制御部と
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
インクジェット方式の印刷ヘッドと、
画像データを処理して前記印刷ヘッドに供給する画像処理部と、
前記印刷ヘッドに電力を供給する電源と、
前記電源との直接通信を通じ、印刷ヘッドに対する電流の供給がオーバーカレント状態にあると判定されたとき、印刷単位で印刷動作を一時的に停止する制御部と
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項10】
請求項9に記載の印刷装置において、
前記制御部は、オーバーカレント状態の検出時に既に印刷動作が開始されている場合、少なくとも印刷動作中の頁については印刷動作を継続する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項11】
請求項9に記載の印刷装置において、
前記制御部は、印刷動作の一時停止から一定時間後にオーバーカレント状態を解除し、印刷動作を再開する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項12】
インクジェット方式の印刷ヘッドと、
画像データを処理して前記印刷ヘッドに供給する画像処理部と、
前記印刷ヘッドに電力を供給する電源と、
前記電源との直接通信を通じ、前記電源の内部温度が基準値以上になったと判定されたとき、印刷単位で印刷動作を一時的に停止する制御部と
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項13】
インクジェット方式の印刷ヘッドと、画像データを処理して前記印刷ヘッドに供給する画像処理部と、前記印刷ヘッドに電力を供給する電源とを搭載する印刷装置における供給電流制御装置であって、
前記電源との直接通信を通じ、印刷ヘッドに対する電流の供給がオーバーカレント状態にあると判定されたとき、印刷ヘッドに対する電流の供給を印刷単位で低減する制御部
を有することを特徴とする供給電流制御装置。
【請求項14】
インクジェット方式の印刷ヘッドと、画像データを処理して前記印刷ヘッドに供給する画像処理部と、前記印刷ヘッドに電力を供給する電源とを搭載する印刷装置における供給電流制御装置であって、
前記電源との直接通信を通じ、前記電源の内部温度が基準値以上になったと判定されたとき、印刷ヘッドに対する電流の供給を印刷単位で低減する制御部
を有することを特徴とする供給電流制御装置。
【請求項15】
インクジェット方式の印刷ヘッドと、画像データを処理して前記印刷ヘッドに供給する画像処理部と、前記印刷ヘッドに電力を供給する電源とを搭載する印刷装置における供給電流制御装置であって、
前記電源との直接通信を通じ、印刷ヘッドに対する電流の供給がオーバーカレント状態にあると判定されたとき、印刷単位で印刷動作を一時的に停止する制御部
を有することを特徴とする供給電流制御装置。
【請求項16】
インクジェット方式の印刷ヘッドと、画像データを処理して前記印刷ヘッドに供給する画像処理部と、前記印刷ヘッドに電力を供給する電源とを搭載する印刷装置における供給電流制御装置であって、
前記電源との直接通信を通じ、前記電源の内部温度が基準値以上になったと判定されたとき、印刷単位で印刷動作を一時的に停止する制御部
を有することを特徴とする供給電流制御装置。
【請求項17】
インクジェット方式の印刷ヘッドと、画像データを処理して前記印刷ヘッドに供給する画像処理部と、前記印刷ヘッドに電力を供給する電源とを搭載する印刷装置における供給電流を制御するコンピュータプログラムであって、
前記電源との直接通信を通じ、印刷ヘッドに対する電流の供給がオーバーカレント状態にあるか否か判定する処理と、
オーバーカレント状態にあると判定されたとき、印刷ヘッドに対する電流の供給を印刷単位で低減する処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項18】
インクジェット方式の印刷ヘッドと、画像データを処理して前記印刷ヘッドに供給する画像処理部と、前記印刷ヘッドに電力を供給する電源とを搭載する印刷装置における供給電流を制御するコンピュータプログラムであって、
前記電源との直接通信を通じ、前記電源の内部温度が基準値以上である否かを判定する処理と、
内部温度が基準値以上であると判定されたとき、印刷ヘッドに対する電流の供給を印刷単位で低減する処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項19】
インクジェット方式の印刷ヘッドと、画像データを処理して前記印刷ヘッドに供給する画像処理部と、前記印刷ヘッドに電力を供給する電源とを搭載する印刷装置における供給電流を制御するコンピュータプログラムであって、
前記電源との直接通信を通じ、印刷ヘッドに対する電流の供給がオーバーカレント状態にあるか否か判定する処理と、
オーバーカレント状態にあると判定されたとき、印刷単位で印刷動作を一時的に停止する処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項20】
インクジェット方式の印刷ヘッドと、画像データを処理して前記印刷ヘッドに供給する画像処理部と、前記印刷ヘッドに電力を供給する電源とを搭載する印刷装置における供給電流を制御するコンピュータプログラムであって、
前記電源との直接通信を通じ、前記電源の内部温度が基準値以上である否かを判定する処理と、
内部温度が基準値以上であると判定されたとき、印刷単位で印刷動作を一時的に停止する処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−245354(P2007−245354A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67654(P2006−67654)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】