説明

印刷装置、印刷システム及び印刷プログラム

【課題】印刷物の回収作業性を向上することができる、印刷装置、印刷システム及び印刷プログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】印刷装置は、認証印刷データ又は通常印刷データに基づいて記録媒体に画像を印刷する印刷手段と、認証情報が入力される入力手段と、入力手段に認証情報が入力されるまで、印刷手段による認証印刷データに基づく印刷を禁止する認証手段と、印刷手段により画像が印刷された記録媒体を排出トレイに排出する印刷物排出手段と、認証印刷物の排出トレイへの排出が完了し、その後に連続して通常印刷物が当該排出トレイに排出される際、認証印刷物の排出完了から所定時間T2、排出トレイに対する通常印刷物の排出が制限されるように印刷物排出手段及び印刷手段の少なくともいずれか1つを制御する制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置において印刷実行に関する情報が入力されたときに記録媒体に画像を印刷する、印刷装置、印刷システム及び印刷プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
機密性の高い画像を印刷するプリンタ装置の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されたプリンタ装置では、パスワードが付加された印刷ジョブ(以下、認証印刷ジョブ)がホストPCからプリンタ装置に与えられる。そして、ユーザがプリンタ装置において本人認証(パスワードの入力)を行ったとき、認証印刷ジョブが実行されて画像が印刷される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−66208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたプリンタ装置によれば、ユーザの目前で認証印刷ジョブが実行されるので、認証印刷に係る印刷物(以下、認証印刷物)を、他人に見られることなく排出トレイから回収することができる。しかし、本願の発明者は、認証印刷ジョブや複写印刷ジョブ(コピー)等のようにユーザの目前で印刷ジョブが実行される場合に、当該印刷ジョブの直後に他人の通常印刷(ユーザがプリンタの入力装置に印刷許可を直接入力しない印刷)ジョブが実行されると、印刷物を回収する時期に他人の印刷物が排出トレイに排出されるので、印刷物を回収する作業の作業性が悪くなる、という新たな知見を得た。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、印刷物の回収作業性を向上することができる、印刷装置、印刷システム及び印刷プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る印刷装置は、記録媒体に画像を印刷する印刷手段と、印刷実行に関する情報がユーザにより直接入力される入力手段と、前記印刷手段により画像が印刷された記録媒体を排出トレイに排出する印刷物排出手段と、前記入力手段への前記情報の入力を伴って前記印刷手段により印刷された印刷物である特定印刷物の前記排出トレイへの排出が完了し、その後に連続して前記入力手段への前記情報の入力を伴わずに前記印刷手段により印刷された印刷物である通常印刷物が当該排出トレイに排出される際、前記特定印刷物の排出完了から所定時間、前記排出トレイに対する前記通常印刷物の排出が制限されるように前記印刷物排出手段及び前記印刷手段の少なくともいずれか1つを制御する制御手段とを備える。
この構成では、特定印刷物の排出完了から所定時間、同じ排出トレイに対する通常印刷物の排出が制限される。例えば、この所定時間は、印刷物排出手段による通常印刷物の排出が禁止され、又は、印刷手段による通常印刷データに基づく印刷が禁止されることで、排出トレイへの通常印刷物の排出がなされない。或いは、この所定時間は、印刷物排出手段による通常印刷物の排出速度が通常よりも遅くされる。これにより、ユーザは、特定印刷物が排出トレイに排出されて間をおかずに、且つ、容易に特定印刷物を回収することができる。

【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る印刷装置は、認証情報に係るデータが付加された認証印刷データ又は前記認証情報に係るデータが付加されていない通常印刷データに基づいて記録媒体に画像を印刷する印刷手段と、前記認証情報が入力される入力手段と、前記入力手段に前記認証情報が入力されるまで、前記印刷手段による前記認証印刷データに基づく印刷を禁止する認証手段と、前記印刷手段により画像が印刷された記録媒体を排出トレイに排出する印刷物排出手段と、前記認証印刷データに基づいて記録媒体に画像が印刷された認証印刷物の前記排出トレイへの排出が完了し、その後に連続して前記通常印刷データに基づいて記録媒体に画像が印刷された通常印刷物が当該排出トレイに排出される際、前記認証印刷物の排出完了から所定時間、前記排出トレイに対する前記通常印刷物の排出が制限されるように前記印刷物排出手段及び前記印刷手段の少なくともいずれか1つを制御する制御手段とを備える。
【0008】
この構成では、認証印刷物の排出完了から所定時間、同じ排出トレイに対する通常印刷物の排出が制限される。例えば、この所定時間は、印刷物排出手段による通常印刷物の排出が禁止され、又は、印刷手段による通常印刷データに基づく印刷が禁止されることで、排出トレイへの通常印刷物の排出がなされない。或いは、この所定時間は、印刷物排出手段による通常印刷物の排出速度が通常よりも遅くされる。これにより、ユーザは、排出トレイへの排出が完了した認証印刷物を迅速且つ容易に回収することができる。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る印刷システムは、上記の印刷装置と、認証印刷データ及び通常印刷データを選択的に生成する印刷データ生成装置と、印刷装置と印刷データ生成装置とを通信可能に接続する通信手段とを備える。
【0010】
この構成は、上記印刷装置を用いた印刷システムであり、パーソナルコンピュータ等のような印刷データ生成装置が、ネットワークケーブル等の通信手段を介して印刷装置と接続される。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る印刷プログラムは、上記印刷装置における少なくとも制御手段としてコンピュータを機能させる。
【0012】
この構成は、印刷物排出手段及び印刷手段の少なくともいずれか1つに通常印刷物の排出制限に関する処理(排出制限処理)を実行させるためにコンピュータを機能させる印刷プログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上記の構成によって、排出トレイから印刷物を取り出すための時間的な余裕を確保することができるので、印刷物の回収作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係る印刷システムの構成を示すブロック図である。
【図2】印刷プログラムに従ったコンピュータによる印刷装置の制御動作(プリンタ機能)を示すフロー図(メインルーチン)である。
【図3】印刷プログラムに従ったコンピュータによる印刷装置の制御動作(プリンタ機能)を示すフロー図(サブルーチン)である。
【図4】印刷プログラムに従ったコンピュータによる印刷装置の制御動作(コピー機能)を示すフロー図である。
【図5】印刷プログラムに従ったコンピュータによる印刷装置の制御動作(ダイレクト印刷機能)を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る印刷装置、印刷システム及び印刷プログラムの好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
[印刷システムの構成]
図1は、実施形態に係る印刷システム10の構成を示すブロック図である。図1に示すように、印刷システム10は、複数のパーソナルコンピュータ(以下、「PC」という。)12と、印刷装置14と、これらを通信可能に接続する通信回線Lとを備えている。
【0017】
図1に示すように、PC12のそれぞれは、印刷装置14に送信される印刷データを生成する「印刷データ生成装置」として機能するものであり、CPU20、ROM22、RAM24、ハードディスク26、操作部28、表示部30及びネットワークインターフェイス32を備えている。ハードディスク26には、印刷データを生成するためのアプリケーションソフトが記憶されている。CPU20は、このアプリケーションソフトに基づいて印刷データを生成する。CPU20で生成された印刷データは、ネットワークインターフェイス32に接続された通信回線Lを介して印刷装置14に送信される。
【0018】
CPU20で生成される印刷データは、認証情報(パスワード等)に係るデータ(以下、「認証データ」という。)が付加された「認証印刷データ」及び認証データが付加されていない「通常印刷データ」のいずれかである。つまり、CPU20では、認証印刷データ及び通常印刷データのいずれかが選択的に生成される。認証情報は、本来ユーザだけが知り得る情報(パスワード等)であり、認証印刷データに基づいて画像を印刷する際には、印刷装置14において認証情報の入力が要求される。
【0019】
図1に示すように、通信回線Lは、複数のPC12と印刷装置14とを通信可能に接続する「通信手段」として機能するものであり、通信ケーブル16を有している。なお、「通信手段」としては、無線方式の通信回線(図示省略)が用いられてもよい。
【0020】
図1に示すように、印刷装置14は、PC12から送信されてきた印刷データ(認証印刷データ及び通常印刷データ)に基づいて記録媒体(紙、プラスチックフィルム等)に画像を印刷するプリンタ機能と、原稿から画像を読み取るスキャナ機能と、画像を複写するコピー機能と、電話回線網Q又は通信回線Lを通して送信されてきたファクシミリデータに基づいて画像を印刷するファクシミリ機能と、記憶メディアMから画像データを読み取って印刷するダイレクト印刷機能とを有する複合機である。
【0021】
図1に示すように、これらの各機能を発揮するために、印刷装置14は、CPU40、ROM42、RAM44、NVRAM46(不揮発性メモリ)、操作部48、表示部50、印刷部52、排出部54、スキャナ部56、ファクシミリ部58、ダイレクト印刷処理部60、ネットワークインターフェイス62等を備えている。そして、CPU40、ROM42、RAM44、NVRAM46、操作部48及び表示部50等によってコンピュータGが構成されており、このコンピュータGによって、印刷部52、排出部54、スキャナ部56、ファクシミリ部58及びダイレクト印刷処理部60が制御される。また、コンピュータGには、ネットワークインターフェイス62を介して通信回線Lが接続される。
【0022】
図1に示すように、CPU40は、コンピュータGの主要な構成要素であり、印刷プログラムに基づいて印刷に関する各種の処理を実行する機能を有している。ROM42は、印刷プログラム及びジョブ管理プログラム等を記憶する記憶装置であり、RAM44及びNVRAM46は、CPU40の処理結果を記憶する記憶装置である。操作部48は、複数のボタンを有しており、これらのボタンを押すことで、認証情報、記録媒体の種類に関する情報及び後述する排出制限処理に関する命令等を入力できるようになっている。つまり、操作部48は、認証情報等が入力される「入力手段」としての機能を有している。表示部50は、各種の設定画面及び動作状態等を表示するものであり、液晶ディスプレイ及び各種のランプ等を有している。
【0023】
印刷部52は、印刷データ(認証印刷データ及び通常印刷データ)に基づいて記録媒体に画像を印刷するものであり、画像記録ヘッド(図示省略)と、画像記録ヘッドに記録媒体を搬送する搬送装置(図示省略)とを有している。搬送装置は、駆動モータを有しており、この駆動モータによって画像記録ヘッドに対する記録媒体の搬送速度が調整される。排出部54は、記録媒体を排出トレイ(図示省略)に排出する排出装置(図示省略)を有している。排出装置は、駆動モータを有しており、この駆動モータによって排出トレイ(図示省略)に対する記録媒体の排出速度が調整される。スキャナ部56は、原稿台(図示省略)に載置された原稿から画像データを読み取るとともに、当該画像データから印刷データを生成するものであり、光学センサ(図示省略)等を有している。ファクシミリ部58は、外部のファクシミリ装置(図示省略)等から送信されてきたファクシミリデータを受信するとともに、当該ファクシミリデータから印刷データを生成するものである。ダイレクト印刷処理部60は、記憶メディアMから画像データを読み出すとともに、当該画像データから印刷データを生成するものである。本実施形態のダイレクト印刷処理部60は、複数種類の記憶メディアMに対応した記憶メディアドライブ(図示省略)を有している。
【0024】
そして、印刷部52とコンピュータGとによって、「印刷手段」が構成されており、排出部54とコンピュータGとによって、「印刷物排出手段」が構成されている。また、スキャナ部56とコンピュータGとによって、「スキャナ手段」が構成されており、スキャナ部56と印刷部52とコンピュータGとによって、「コピー手段」が構成されている。さらに、ファクシミリ部58と印刷部52とコンピュータGとによって、「ファクシミリ手段」が構成されており、ダイレクト印刷処理部60と印刷部52とコンピュータGとによって、「ダイレクト印刷手段」が構成されている。このように、コンピュータGは、「印刷手段」、「印刷物排出手段」、「スキャナ手段」、「コピー手段」、「ファクシミリ手段」及び「ダイレクト印刷手段」の一部となっており、これらの各手段を適正に制御する「制御手段」として機能する。
【0025】
[プリンタ機能について]
図1に示すように、印刷装置14のプリンタ機能は、各PC12から送信されてきた印刷データ(認証印刷データ及び通常印刷データ)に基づいて、上記「印刷手段」に画像を印刷させる機能であり、印刷プログラムに従ってコンピュータGによって実行される。プリンタ機能を実行する際には、まず、ユーザがPC12の操作部28によって印刷ジョブを実行する。すると、PC12のCPU20は、各種の印刷情報(画像データ、印刷枚数、用紙サイズ等)を含むデータ(以下、「印刷データ」という。)をネットワークインターフェイス32及び通信回線Lを通して印刷装置14に送信する。印刷装置14のコンピュータG(CPU40を含む。)は、PC12から送られてきた印刷データに基づいて「印刷手段」に画像を印刷させるための処理を実行する。
【0026】
PC12においては、ユーザの判断によって印刷データに認証データを付加するか否かを選択することができる。認証データを付加しない場合、その印刷データは機密性の低い通常印刷データであり、認証データを付加した場合、その印刷データは機密性の高い認証印刷データである。なお、認証データは、認証情報(パスワード等)そのものでもよいし、認証情報を所定のルールに従って変形したデータであってもよい。
【0027】
図2は、印刷プログラムに従ったコンピュータGによる印刷装置14の制御動作(プリンタ機能)を示すフロー図(メインルーチン)である。図2に示すように、待機状態にある印刷装置14(図1)が印刷データを受信すると、ステップS1において「YES」と判断され、次のステップS3において印刷データの内容が確認される。そして、ステップS5において、印刷データの内容が認証印刷データであるか否かが判断され、「NO」と判断されると、ステップS7において、機密性の低い通常印刷が実行される。一方、ステップS5において、「YES」と判断されると、ステップS9において、機密性の高い認証印刷が実行される。
【0028】
ステップS7の通常印刷では、「印刷手段」によって記録媒体に画像が印刷され、画像が印刷された記録媒体(印刷物)が、「印刷物排出手段」によって排出トレイ(図示省略)に排出される。通常印刷で印刷された通常印刷物は機密性が低いものである。そのため、排出トレイに排出された通常印刷物を他のユーザが見得る状況が生じたとしても、当該通常印刷物のユーザが不利益を被る心配はない。そこで、通常印刷では、通常印刷物を回収するための時間的な余裕は考慮されず、通常印刷の最中に他のユーザの通常印刷データが連続的に送られてきたときは、印刷効率向上等のために当該通常印刷データに基づく通常印刷が連続的に行われる。この場合、先の通常印刷物及び後の通常印刷物のいずれを先に回収するかは、特に考慮する必要はなく、後の通常印刷物を先に回収してもよい。
【0029】
ステップS9の認証印刷で印刷される認証印刷物は機密性の高いものである。そのため、認証印刷の最中に他のユーザの通常印刷データが連続的に送られてきたときは、当該通常印刷データに基づく通常印刷が実行される前に、既に排出された認証印刷物を速やかに回収する必要がある。そこで、認証印刷では、認証印刷物の回収作業性を向上するために、後続する通常印刷物の排出が制限される。以下に、認証印刷の動作を図3のフロー図に従って説明する。なお、認証印刷物を速やかに回収できるという回収時間に関する効果だけでなく、単純に認証印刷物の上に積層されるように排出される通常印刷物の排出を制限して印刷物の回収を容易にすることで、認証印刷を行うユーザへの利便性を向上するという効果も本発明は有している。
【0030】
図3は、印刷プログラムに従ったコンピュータGによる印刷装置14の制御動作(プリンタ機能)を示すフロー図(サブルーチン)である。図3に示すように、認証印刷では、まず、ステップS13において、印刷実行に関する認証情報(パスワード等)がユーザにより入力されたか否かが判断され、「YES」と判断されるまで、認証印刷データに基づく認証印刷物の印刷が禁止される。本実施形態では、操作部48(図1)が印刷実行に関する認証情報が入力される「入力手段」として機能し、コンピュータGが認証印刷物の印刷を禁止する「認証手段」として機能する。ステップS13において「YES」と判断されると、次のステップS15において、「印刷手段」によって認証印刷データに基づく印刷が実行されるとともに、「印刷物排出手段」によって認証印刷物が排出トレイに排出される。
【0031】
排出トレイに認証印刷物が排出されると、印刷装置14の直前で待機していたユーザがこれを直ちに回収するが、この回収時期に他のユーザの通常印刷が平常時と同様に行われると、排出トレイに排出される通常印刷物によって認証印刷物の回収作業性が損なわれる。そこで、続くステップS17〜S23では、認証印刷物の排出トレイへの排出が完了し、その後に連続して通常印刷物が当該排出トレイに排出される際に、通常印刷物の排出を制限する処理(以下、「排出制限処理」という。)が実行される。
【0032】
すなわち、ステップS17では、認証印刷物の排出完了から経過した経過時間T1が、CPU40のカウンタによってカウントされ、ステップS19では、経過時間T1が所定時間T2に達していないことが判断される。そして、ステップS19において「YES」と判断されると、ステップS21に進み、連続する通常印刷があるか否かが判断される。連続する通常印刷があるか否かの判断においては、例えば、コンピュータGが有するジョブ管理テーブルに通常印刷データが登録されたか否かを基準にすることができる。ステップS21において「YES」と判断されると、経過時間T1が所定時間T2に達するまでに通常印刷物が連続的に排出される状況にあるため、続くステップS23において、通常印刷物の排出制限処理がコンピュータGによって実行される。一方、ステップS21において「NO」と判断されると、通常印刷物が排出される状況にないため、ステップS17に戻る。一方、ステップS19において「NO」と判断されたときには、経過時間T1が既に所定時間T2に達しているので、認証印刷物を回収するのに十分な時間が既に確保されていると考えられる。そこで、この場合には、サブルーチン(図3)を脱してメインルーチン(図2)のステップS11に進む。図2に示すように、ステップS11では、プリンタ機能を終了するか否かが判断され、「YES」と判断されるとプリンタ機能が終了され、「NO」と判断されるとステップS1に戻る。
【0033】
[排出制限処理について]
以下に、ステップS23の排出制限処理について詳細に説明する。図3に示すように、ステップS23の排出制限処理では、「制御手段」として機能するコンピュータGによって、以下に示す排出禁止処理及び減速処理が選択的に実行される。なお、これらの処理のいずれを実行させるかは、ユーザが操作部48(図1)を操作することにより適宜選択可能である。
【0034】
排出禁止処理は、排出トレイに対する認証印刷物の排出完了から所定時間T2、排出トレイに対する通常印刷物の排出が禁止されるようにコンピュータGによって「印刷物排出手段」及び「印刷手段」の少なくともいずれか1つを制御する処理である。コンピュータGによって「印刷物排出手段」を制御する場合には、例えば、記録媒体を排出トレイに排出する排出装置(図示省略)が、経過時間T1が所定時間T2に達するまで停止される。また、コンピュータGによって「印刷手段」を制御する場合には、例えば、画像記録ヘッドに記録媒体を搬送する搬送装置(図示省略)が、経過時間T1が所定時間T2に達するまで停止される。そして、コンピュータGによって「印刷物排出手段」及び「印刷手段」の両方を制御する場合には、例えば、排出装置(図示省略)及び搬送装置(図示省略)の両方が、経過時間T1が所定時間T2に達するまで停止される。この排出禁止処理では、認証印刷物の排出完了後に排出される通常印刷物の排出開始時間を遅らせることができるので、通常印刷物の1枚目が排出トレイに排出されるまでに、認証印刷物を回収するための時間を十分に確保することができる。
【0035】
減速処理は、排出トレイに対する認証印刷物の排出完了から所定時間T2、排出トレイに対する通常印刷物の排出速度が遅くされるようにコンピュータGによって「印刷物排出手段」を制御する処理である。この減速処理では、例えば、記録媒体を排出トレイに排出する排出装置(図示省略)の排出速度が駆動モータによって減速される。減速処理における排出速度は、ユーザが操作部48(図1)を操作することにより適宜変更可能である。この減速処理では、認証印刷物の排出完了後に連続して排出される通常印刷物の排出速度を、通常よりも遅くすることができるので、通常印刷物が排出トレイに順次排出される合間を縫って、排出トレイに既に排出された認証印刷物を容易に回収することができる。
【0036】
[所定時間T2の設定について]
図3に示すように、ステップS19において判断基準となる所定時間T2は、認証印刷物を排出トレイから回収するのに要する時間に応じて設定される。つまり、認証印刷物の回収に要する時間が長くなるほど、所定時間Tは長く設定される。この所定時間T2は、コンピュータGが、認証印刷物の印刷枚数、先行する通常印刷物の存在、先行する通常印刷物の印刷形態、後続する通常印刷物の印刷形態及び後続する通常印刷物の種類の少なくともいずれか1つを認識することにより、「制御手段」として機能するコンピュータGで自動的に設定される。また、この所定時間T2は、ユーザがコンピュータGの操作部48(図1)を操作することにより、手動でも設定可能である。所定時間T2を手動で設定する場合には、コンピュータGの操作部48が「時間入力手段」として機能する。
【0037】
認証印刷物の印刷枚数に応じて所定時間T2を自動的に設定する構成は、認証印刷物の印刷枚数が多くなるほど、認証印刷物を回収するのに要する時間が長くなる点に着目したものである。この構成では、コンピュータGが、認証印刷物の印刷枚数を認識する「印刷枚数認識手段」としての機能を有する。そして、「制御手段」として機能するコンピュータGは、印刷枚数が多くなるほど所定時間T2を長く設定する。なお、認証印刷物の印刷枚数は、認証印刷データから読み取ることができる。
【0038】
先行する通常印刷物の存在に応じて所定時間T2を自動的に設定する構成は、他の通常印刷物の上に認証印刷物が重ねて排出されたときには、認証印刷物を回収するのに要する時間が長くなる点に着目したものである。この構成では、コンピュータGが、認証印刷物が排出トレイに排出されるときに、排出トレイに他の通常印刷物が存在することを検知する「印刷物検知手段」としての機能を有する。そして、「制御手段」として機能するコンピュータGは、「印刷物検知手段」が他の通常印刷物の存在を検知したとき、所定時間T2を長く設定する。本実施形態の「印刷物検知手段」は、具体的には、排出トレイに存在する通常印刷物を光学的又は機械的に検知するセンサである。なお、センサは、コンピュータGに付属する部品として構成されてもよい。
【0039】
認証印刷データ及び通常印刷データは、いずれもコンピュータGが有するジョブ管理テーブルに登録される。したがって、先行する認証印刷データがジョブ管理テーブルに登録される直前に、他の通常印刷データがジョブ管理テーブルに登録されていると、排出トレイに通常印刷物が残っている可能性が高いと考えられる。そこで、「制御手段」として機能するコンピュータGは、先行する通常印刷データの登録時点と後続する認証印刷データの登録時点との時間間隔が短いときに「通常印刷物が存在する」と判断して、所定時間T2を長く設定してもよい。この場合には、コンピュータGが「印刷物検知手段」として機能するので、光学的又は機械的なセンサは不要である。
【0040】
先行又は後続する通常印刷物の印刷形態に応じて所定時間T2を自動的に設定する構成は、認証印刷物とその前後に排出される通常印刷物とを外見上区別し難いときには、認証印刷物を回収するのに要する時間が長くなる点に着目したものである。この構成では、コンピュータGが、認証印刷物の印刷形態と、認証印刷物の前後に排出される通常印刷物の印刷形態とが類似するか否かを判断する「類似判断手段」としての機能を有する。そして、「制御手段」として機能するコンピュータGは、「類似判断手段」が「類似する」と判断したとき、所定時間T2を長く設定する。なお、「印刷形態」とは、印刷物の外見上の特徴となる要素であり、具体的には、用紙のサイズ、用紙の向き、用紙の材質、インクの色等である。印刷形態は、通常印刷データ及び認証印刷データから読み取ることができる。
【0041】
後続する通常印刷物の種類に応じて所定時間T2を自動的に設定する構成は、認証印刷物の後に排出トレイに排出される通常印刷物がOHPシートや厚紙等のような特殊媒体であれば、これらが高速で手に当たるのを避けたいとの要請がある点に着目したものである。この構成では、コンピュータGが、認証印刷物の後に排出トレイに排出される通常印刷物が特殊媒体であるか否かを判断する「媒体判断手段」としての機能を有する。そして、「制御手段」として機能するコンピュータGは、「媒体判断手段」が「特殊媒体である」と判断したとき、所定時間T2を長く設定する。なお、通常印刷物の種類は、印刷データから読み取ることができる。
【0042】
[他の機能について]
図1に示すように、印刷装置14の他の機能のうち、スキャナ機能は、原稿台(図示省略)に載置された原稿から画像データを読み取る機能である。ファクシミリ機能は、スキャナ機能で読み取った原稿の画像データを外部のファクシミリ装置に送信したり、外部のファクシミリ装置から送信されてきたファクシミリデータに基づいて画像を印刷したりする機能である。コピー機能は、スキャナ機能で読み取った原稿の画像データに基づいて画像を複写する機能である。ダイレクト印刷機能は、記憶メディアMから読み出した画像データに基づいて画像を印刷する機能である。
【0043】
図4は、印刷プログラムに従ったコンピュータGによる印刷装置14の制御動作(コピー機能)を示すフロー図である。コピー機能を用いるときには、複写を行ったユーザが排出トレイに排出された複写に係る印刷物を複写完了とほぼ同時に回収することが多い。しかし、複写に係る印刷物を回収する時期に他のユーザの通常印刷物が排出トレイに排出されると、当該印刷物を回収する作業の作業性が悪くなる。このような場合、複写に係る印刷物の回収を容易にするために、図4のフロー図に従ってコピー機能が実行される。すなわち、印刷装置14(図1)のコピー開始ボタン(操作部48に含まれる。)が押されると、ステップS31において「YES」と判断され、次のステップS33において複写に係る印刷物の印刷が実行される。排出トレイに複写に係る印刷物が排出されると、ユーザがこれを直ちに回収するが、この回収時期に他のユーザの通常印刷が平常時と同様に行われると、排出トレイに排出される通常印刷物によって複写に係る印刷物の回収作業性が損なわれる。そこで、続くステップS17〜S23では、上記認証印刷物の回収の場合(図3)と同様に、通常印刷物の排出を制限する「排出制限処理」が実行される。このコピー機能では、操作部48に含まれるコピー開始ボタンが、印刷実行に関する情報がユーザにより直接入力される「入力手段」として機能する。複写に係る印刷物は、「入力手段」への情報の入力を伴って「印刷手段」により印刷された「特定印刷物」である。
【0044】
ファクシミリ機能を用いてファクシミリデータを受信するときには、「ファクシミリ手段」で印刷された印刷物が排出トレイに排出されるが、当該印刷物の内容を他のユーザに見られたくない場合がある。その場合には、他のユーザの通常印刷物が排出トレイに排出されるより前に、ファクシミリ受信に係る印刷物を回収する必要がある。しかし、ファクシミリ受信に係る印刷物を回収する時期に他のユーザの通常印刷物が排出トレイに排出されると、当該印刷物を回収する作業の作業性が悪くなる。そこで、ファクシミリデータを送信する送信者は、外部のファクシミリ装置を操作することによって、ファクシミリ受信に係る印刷データに認証データを付加し、ファクシミリ受信に係る印刷データが認証印刷データとして取り扱われるようにすることができる。つまり、図3に示すフロー図に従って、ファクシミリ受信に係る認証印刷データに基づく認証印刷をコンピュータGに実行させることができる。
【0045】
図5は、印刷プログラムに従ったコンピュータGによる印刷装置14の制御動作(ダイレクト印刷機能)を示すフロー図である。ダイレクト印刷機能を用いて記憶メディアMに記憶された画像データから画像を直接印刷(ダイレクト印刷)するときには、ダイレクト印刷を行ったユーザが排出トレイに排出されたダイレクト印刷に係る印刷物を印刷完了とほぼ同時に回収することが多い。しかし、ダイレクト印刷に係る印刷物を回収する時期に他のユーザの通常印刷物が排出トレイに排出されると、当該印刷物を回収する作業の作業性が悪くなる。このような場合、ダイレクト印刷に係る印刷物の回収を容易にするために、図5のフロー図に従って、ダイレクト印刷機能が実行される。すなわち、印刷装置14(図1)のダイレクト印刷開始ボタン(操作部48に含まれる。)が押されると、ステップS41において「YES」と判断され、次のステップS43においてダイレクト印刷に係る印刷物の印刷が実行される。排出トレイにダイレクト印刷に係る印刷物が排出されると、ユーザがこれを直ちに回収するが、この回収時期に他のユーザの通常印刷が平常時と同様に行われると、排出トレイに排出される通常印刷物によってダイレクト印刷に係る印刷物の回収作業性が損なわれる。そこで、続くステップS17〜S23では、上記認証印刷物の回収の場合(図3)と同様に、通常印刷物の排出を制限する「排出制限処理」が実行される。このダイレクト印刷機能では、操作部48に含まれるダイレクト印刷開始ボタンが、印刷実行に関する情報がユーザにより直接入力される「入力手段」として機能する。ダイレクト印刷に係る印刷物は、「入力手段」への情報の入力を伴って「印刷手段」により印刷された「特定印刷物」である。
【符号の説明】
【0046】
G… コンピュータ(制御手段、認証手段、印刷物検知手段、類似判断手段、媒体判断手段)
L… 通信回線(通信手段)
Q… 電話回線網
10… 印刷システム
12… パーソナルコンピュータ(印刷データ生成装置)
14… 印刷装置
16… ケーブル
48… 操作部(入力手段、時間入力手段)
52… 印刷部(印刷手段)
54… 排出部(印刷物排出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を印刷する印刷手段と、
印刷実行に関する情報がユーザにより直接入力される入力手段と、
前記印刷手段により画像が印刷された記録媒体を排出トレイに排出する印刷物排出手段と、
前記入力手段への前記情報の入力を伴って前記印刷手段により印刷された印刷物である特定印刷物の前記排出トレイへの排出が完了し、その後に連続して前記入力手段への前記情報の入力を伴わずに前記印刷手段により印刷された印刷物である通常印刷物が当該排出トレイに排出される際、前記特定印刷物の排出完了から所定時間、前記排出トレイに対する前記通常印刷物の排出が制限されるように前記印刷物排出手段及び前記印刷手段の少なくともいずれか1つを制御する制御手段とを備える、印刷装置。
【請求項2】
認証情報に係るデータが付加された認証印刷データ又は前記認証情報に係るデータが付加されていない通常印刷データに基づいて記録媒体に画像を印刷する印刷手段と、
前記認証情報が入力される入力手段と、
前記入力手段に前記認証情報が入力されるまで、前記印刷手段による前記認証印刷データに基づく印刷を禁止する認証手段と、
前記印刷手段により画像が印刷された記録媒体を排出トレイに排出する印刷物排出手段と、
前記認証印刷データに基づいて記録媒体に画像が印刷された認証印刷物の前記排出トレイへの排出が完了し、その後に連続して前記通常印刷データに基づいて記録媒体に画像が印刷された通常印刷物が当該排出トレイに排出される際、前記認証印刷物の排出完了から所定時間、前記排出トレイに対する前記通常印刷物の排出が制限されるように前記印刷物排出手段及び前記印刷手段の少なくともいずれか1つを制御する制御手段とを備える、印刷装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記排出トレイに対する前記認証印刷物の排出完了から所定時間、前記排出トレイに対する前記通常印刷物の排出が禁止されるように前記印刷物排出手段及び前記印刷手段の少なくともいずれか1つを制御する、請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記排出トレイに対する前記認証印刷物の排出完了から所定時間、前記排出トレイに対する前記通常印刷物の排出速度が遅くされるように前記印刷物排出手段を制御する、請求項2に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記所定時間を入力する時間入力手段を有する、請求項2ないし4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記認証印刷物の印刷枚数が多くなるほど前記所定時間を長く設定する、請求項2ないし4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項7】
前記認証印刷物が前記排出トレイに排出されるときに、前記排出トレイに他の通常印刷物が存在することを検知する印刷物検知手段を備え、
前記制御手段は、前記印刷物検知手段が前記通常印刷物の存在を検知したとき、前記所定時間を長く設定する、請求項2ないし4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項8】
前記認証印刷物の印刷形態と、前記認証印刷物の前又は後に前記排出トレイに排出される通常印刷物の印刷形態とが類似するか否かを判断する類似判断手段を備え、
前記制御手段は、前記類似判断手段が「類似する」と判断したとき、前記所定時間を長く設定する、請求項2ないし4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項9】
前記認証印刷物の後に前記排出トレイに排出される前記通常印刷物が特殊媒体であるか否かを判断する媒体判断手段を備え、
前記制御手段は、前記媒体判断手段が「特殊媒体である」と判断したとき、前記所定時間を長く設定する、請求項2ないし4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項10】
請求項2ないし9のいずれかに記載の印刷装置と、
前記認証印刷データ及び前記通常印刷データを選択的に生成する印刷データ生成装置と、
前記印刷装置と前記印刷データ生成装置とを通信可能に接続する通信手段とを備える、印刷システム。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれかに記載の印刷装置における少なくとも前記制御手段としてコンピュータを機能させる、印刷プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−158077(P2012−158077A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19045(P2011−19045)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】