印刷装置、及び、印刷方法
【課題】主画像の裏移りを目立ち難くすることを目的とする。
【解決手段】透明性を有する媒体に有色インクを吐出するノズルを有する印刷装置であって、前記媒体に主画像と背景画像を重ねた画像を印刷する場合、前記背景画像において前記主画像が印刷される表面と反対側の裏面に、前記背景画像に対する前記主画像の印刷位置及び前記主画像の色に応じた補助画像を印刷することを特徴とする印刷装置である。
【解決手段】透明性を有する媒体に有色インクを吐出するノズルを有する印刷装置であって、前記媒体に主画像と背景画像を重ねた画像を印刷する場合、前記背景画像において前記主画像が印刷される表面と反対側の裏面に、前記背景画像に対する前記主画像の印刷位置及び前記主画像の色に応じた補助画像を印刷することを特徴とする印刷装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、及び、印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置の一つとして、媒体に対してノズルからインクを吐出するヘッドを有するインクジェットプリンター(以下、プリンター)が知られている。近年、紙媒体だけでなく透明フィルム等にも画像が印刷されるようになった。透明フィルムに主画像を印刷する場合、白インク等による背景画像上に主画像を印刷することで、主画像の発色性を良くすることができる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−200853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、主画像と背景画像を重ねた印刷物において、背景画像の遮蔽性が良くないと、印刷物を背景画像側から視認した際に、主画像が透けて見えてしまうため、見栄えが悪い。特に、主画像が有彩色であると裏移りが目立ち易い。
そこで、本発明は、主画像の裏移りを目立ち難くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する為の主たる発明は、透明性を有する媒体に有色インクを吐出するノズルを有する印刷装置であって、前記媒体に主画像と背景画像を重ねた画像を印刷する場合、前記背景画像において前記主画像が印刷される表面と反対側の裏面に、前記背景画像に対する前記主画像の印刷位置及び前記主画像の色に応じた補助画像を印刷する、ことを特徴とする印刷装置である。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】プリンターの全体構成ブロック図である。
【図2】プリンターの斜視図である。
【図3】ヘッドの下面に設けられるノズルの配列を示す図である。
【図4】図4Aは第1実施例の表刷りモードの印刷物を説明する図であり、図4Bは第1実施例の裏刷りモードの印刷物を説明する図である。
【図5】図5Aから図5Cは裏移り抑制画像の色を説明する図である。
【図6】複数の画像を重ねて印刷する印刷物の印刷方法例を示す図である。
【図7】複数の画像を重ねて印刷する印刷物の印刷方法例を示す図である。
【図8】複数の画像を重ねて印刷する印刷物の印刷方法例を示す図である。
【図9】第2実施例の印刷物を説明する図である。
【図10】第3実施例の印刷物を説明する図である。
【図11】図11A及び図11Bは裏移り抑制画像の色を説明する図である。
【図12】図12Aから図12Cは2色の画像から構成される主画像に対する裏移り抑制画像の印刷例を示す。
【図13】図13Aから図13Cは2色の画像から構成される主画像に対する裏移り抑制画像の印刷例を示す。
【図14】変形例のプリンターを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0008】
即ち、透明性を有する媒体に有色インクを吐出するノズルを有する印刷装置であって、前記媒体に主画像と背景画像を重ねた画像を印刷する場合、前記背景画像において前記主画像が印刷される表面と反対側の裏面に、前記背景画像に対する前記主画像の印刷位置及び前記主画像の色に応じた補助画像を印刷する、ことを特徴とする印刷装置である。
このような印刷装置によれば、背景画像の裏面における主画像の裏移りを目立ち難くすることができる。
また、前記背景画像の前記裏面から透けて視認される前記主画像の裏移り画像と前記補助画像とを協調させて、前記裏移り画像を目立ち難くする印刷装置である。
【0009】
かかる印刷装置であって、前記補助画像として、前記背景画像の前記裏面のうち、前記背景画像の前記表面において前記主画像が印刷される領域と対向する領域に、前記主画像の色相と反対の色相である第1の画像を印刷すること。
このような印刷装置によれば、背景画像の裏面から視認される画像を無彩色に近づけることができ、主画像の裏移りを目立ち難くすることができる。
【0010】
かかる印刷装置であって、前記第1の画像は、前記主画像の明度よりも高い明度である特性と、前記主画像の彩度よりも低い彩度である特性とのうちの少なくとも一方の特性を有すること。
このような印刷装置によれば、背景画像の裏面から視認される画像をより無彩色に近づけることができる。
【0011】
かかる印刷装置であって、前記補助画像として、前記背景画像の前記裏面のうち、前記背景画像の前記表面において前記主画像が印刷されない領域と対向する領域に、無彩色である第2の画像を印刷すること。
このような印刷装置によれば、背景画像の裏面に裏移りする主画像の形状を判別し難くすることができ、主画像の裏移りを目立ち難くすることができる。
【0012】
かかる印刷装置であって、前記背景画像の前記裏面のうち、前記背景画像の前記表面において前記主画像が印刷されない領域と対向する領域に、前記主画像の縁の色相と同一の色相である補助画像を印刷すること。
このような印刷装置によれば、背景画像の裏面に裏移りする主画像と補助画像を同化させることができ、主画像の裏移りを目立ち難くすることができる。
【0013】
かかる印刷装置であって、前記補助画像は、前記主画像の明度よりも高い明度である特性と、前記主画像の彩度よりも低い彩度である特性とのうちの少なくとも一方の特性を有すること。
このような印刷装置によれば、背景画像の裏面に裏移りする主画像と補助画像をより同化させることができる。
【0014】
また、透明性を有する媒体に主画像と背景画像を重ねた画像を印刷する印刷方法であって、前記媒体に背景画像を印刷することと、前記背景画像の表面に主画像を印刷することと、前記背景画像の裏面に、前記背景画像に対する前記主画像の印刷位置及び前記主画像の色に応じた補助画像を印刷することと、を有することを特徴とする印刷方法である。
このような印刷方法によれば、背景画像の裏面における主画像の裏移りが目立ち難い画像を印刷することができる。
【0015】
===印刷システムについて===
図1は、プリンター1の全体構成ブロック図である。図2は、プリンター1の斜視図である。印刷装置をインクジェットプリンター(以下、プリンター1)とし、プリンター1とコンピューター60が接続された印刷システムを例に挙げて実施形態を説明する。コンピューター60は、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるための印刷データをプリンター1に出力する。なお、コンピューター60には、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換するためのプログラム(プリンタードライバー)がインストールされている。プリンタードライバーは、CD−ROMなどの記録媒体(コンピューターが読み取り可能な記録媒体)に記録されていたり、インターネットを介してコンピューターにダウンロード可能であったりする。
【0016】
コントローラー10は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11はコンピューター60とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12はプリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13はCPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12はユニット制御回路14により各ユニットを制御する。なお、プリンター1内の状況を検出器群50が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
【0017】
搬送ユニット20は、媒体Sを印刷可能な位置に送り込み、印刷時には搬送方向に所定の搬送量で媒体Sを搬送させるものである。
キャリッジユニット30は、ヘッド41を搬送方向と交差する移動方向に移動させるためのものであり、キャリッジ31を有する。
ヘッドユニット40は、媒体Sにインクを吐出するためのものであり、ヘッド41を有する。ヘッド41はキャリッジ31によって移動方向に移動する。ヘッド41の下面には、インク吐出部であるノズルが複数設けられ、各ノズルには、インクが入ったインク室(不図示)が設けられている。
【0018】
図3は、ヘッド41の下面に設けられるノズルの配列を示す図である。なお、図はヘッド41の上面から仮想的にノズルを見た図である。ヘッド41の下面には、インク(有色インク)を吐出する180個のノズルが搬送方向に所定の間隔Dで並んだノズル列が5列形成されている。図示するように、ブラックインクを吐出するブラックノズル列K・シアンインクを吐出するシアンノズル列C・マゼンタインクを吐出するマゼンタノズル列M・イエローインクを吐出するイエローノズル列Y・白インクを吐出するホワイトノズル列Wが、移動方向に並んでいる。なお、各ノズル列が有する180個のノズルに対して、搬送方向の下流側のノズルから順に小さい番号を付す(#1〜#180)。
【0019】
このようなプリンター1では、移動方向に沿って移動するヘッド41からインク滴を断続的に吐出させて媒体上にドットを形成するドット形成処理と、媒体をヘッド41に対して搬送方向に搬送する搬送処理とが繰り返される。そうすることで、先のドット形成処理により形成されたドットの位置とは異なる媒体上の位置に、後のドット形成処理にてドットを形成することができ、媒体上に2次元の画像を印刷することができる。なお、ヘッド41がインク滴を吐出しながら移動方向に1回移動する動作(1回のドット形成処理)を「パス」と呼ぶ。また、移動方向に沿うドット列を「ラスターライン」と呼ぶ。
【0020】
===第1実施例===
図4Aは、第1実施例において表刷りモードで印刷される印刷物を説明する図であり、図4Bは、第1実施例において裏刷りモードで印刷される印刷物を説明する図である。本実施形態では、透明性を有する媒体に主画像と背景画像を重ねた印刷物を印刷する。透明性を有する媒体は、例えば、光を透過する透明フィルム等が挙げられる。完全に透明な媒体に限らず、半透明の媒体でもよい。主画像は4色のインク(YMCK)によって印刷されるカラー画像(モノクロ画像も含む)であり、背景画像は白インクによって印刷される白色の画像である。このように背景画像と主画像を重ねて印刷することで、主画像の発色性を向上し、且つ、主画像を視認する際に媒体の反対側が見えてしまうことを防止できる。
【0021】
なお、本明細書における「白色」とは、可視光線のすべての波長を100%反射する物体の表面色である厳密な意味での白色に限らず、所謂「白っぽい色」のように社会通念上、白色と呼ばれる色を含むものとする。「白色」とは、例えば、(1)x-rite社製の測色機eye-oneProを用いて、測色モード:スポット測色、光源:D50、バッキング:Black、印刷媒体:透明フィルムで測色した場合に、L*a*b*色空間での標記がa*b*平面上で半径20の円周及びその内側にあり、且つ、L*値が70以上で表される色相範囲内の色か、(2)ミノルタ製測色計CM2022を用いて、測定モード:D502°視野、SCFモード、白地バックで測色した場合に、L*a*b*色空間での標記がa*b*平面上で半径20の円周及びその内側にあり、且つ、L値が70以上で表される色相範囲内の色か、(3)特開2004−306591号公報に記載されているように画像の背景として用いられるインクの色かをいい、背景として用いられるのであれば純粋な白に限られない。
【0022】
また、白インクのみを使用して背景画像を印刷すると、その白インクの色そのものの色が背景画像となる。しかし、同じように白インクと呼ばれるインクであっても、インクの材料などによって白色の色味が若干異なる。そのため、使用する白インクによってユーザーが所望する色とは異なる色の背景画像が印刷されてしまう場合がある。また、単純な白色ではなく、若干の有彩色を有する背景画像が所望されることもある。そこで、本実施形態では、白インクと共に、少量の4色インク(YMCK)を適宜使用して、所望の白色の背景画像(調整された白色の背景画像)を印刷する。そうすることで、逆に、白インクが若干の色彩を有する場合、その色彩を打ち消すインクと共に背景画像を印刷し、背景画像を無彩色に近づけることもできる。
【0023】
所望の白色の背景画像をプリンター1に印刷させるための印刷データは、プリンター1が予め記憶するようにしても良いし、プリンタードライバーが作成するようにしても良い。プリンター1のモニターやコンピューターの画面をユーザーが見るなどして、所望の背景画像の色の選択が行われる場合には、選択された色に応じた背景画像の印刷データが生成されるようにするとよい。
【0024】
このように本実施形態では、主画像と背景画像を重ねて印刷するが、背景画像の遮蔽性が不十分であると、背景画像側から主画像が透けて見えてしまう。即ち、背景画像に主画像が裏移りしてしまう。そうすると、見栄えが悪い印刷物となってしまう。例えば、店舗のウィンドウに貼り付ける印刷物であり、店舗外から主画像を視認する印刷物の場合、背景画像側に主画像が裏移りしてしまうと、店舗内の人から主画像が透けて見えてしまうため見苦しい。
【0025】
背景画像を厚く印刷することで、主画像の裏移りを抑制することができるが、白インクの消費量が増えてしまう。また、媒体の単位面積あたりに吐出可能なインク量に制限がある場合、背景画像を厚く印刷すると、主画像を印刷するためのインク量が少なくなり、主画像の画質が低下してしまう。特に、白インクの色材として中空ポリマー微粒子を使用するインクでは、遮蔽性があまり良くなく、背景画像の遮蔽性に限界がある。一方、白インクの色材として、遮蔽性の良い二酸化チタンを使用することも可能であるが、沈降性が高い。そのため、沈降性の対策として、例えば、インク循環システムが必要となる。
【0026】
よって、本実施形態では、透明性の有る媒体に主画像と背景画像を重ねて印刷する場合に、背景画像側における主画像の裏移りを目立ち難くすることを目的とする。
【0027】
そこで、本実施形態では、背景画像において主画像が印刷される面(表面)と反対側の面(裏面)に、背景画像に対する主画像の印刷位置及び主画像の色に応じた「裏移り抑制画像(補助画像)」を印刷する。
【0028】
なお、本実施形態のプリンター1では、主画像を印刷面側から視認する「表刷りモード」と、媒体を介して印刷面と反対側から主画像を視認する「裏刷りモード」の何れかのモードによって、画像を印刷することが可能であるとする。
【0029】
表刷りモードの場合には、図4Aに示すように、媒体上に、まず、裏移り抑制画像(クロスハッチ部)が印刷され、その上に背景画像(白塗り部)が印刷され、更にその上に主画像(黒塗り部)が印刷される。表刷りモードでは、印刷面側が背景画像の表面側となり、印刷面と反対側が背景画像の裏面側となる。
裏刷りモードの場合には、図4Bに示すように、媒体上に、まず、主画像が印刷され、その上に背景画像が印刷され、更にその上に裏移り抑制画像が印刷される。裏刷りモードでは、印刷面側が背景画像の裏面側となり、印刷面と反対側が背景画像の表面側となる。
【0030】
<裏移り抑制画像について>
第1実施例では、図4Aや図4Bに示すように、背景画像の裏面のうち、背景画像の表面において主画像が印刷される領域と対向する領域に、裏移り抑制画像(第1の画像に相当)を印刷する。即ち、背景画像を介して主画像が印刷される位置と反対側の位置に裏移り抑制画像が印刷され、背景画像を介して主画像と裏移り抑制画像が重なるように裏移り抑制画像が印刷される。印刷物を裏面から視認すると、背景画像の裏面に裏移りする主画像(以下、裏移り画像とも呼ぶ)と裏移り抑制画像が重なって視認される。このように、裏移り抑制画像は、背景画像に対する主画像の印刷位置に応じた画像である。
【0031】
図5Aから図5Cは、裏移り抑制画像の色を説明する図である。図は、(CIE)L*a*b*色空間における主画像の色と裏移り抑制画像の色の位置を示す。L*a*b*色空間における主画像の色を点C1で示し、裏移り抑制画像の色を点C2で示す。L*a*b*色空間では、明度をL軸で示し、色相および彩度をa軸とb軸で示す。なお、図5A及び図5BはL*a*b*色空間におけるa*b*平面を示す図である。図5Cに示すL軸のプラス方向(+L*)ほど明度が高く白色を示し、L軸のマイナス方向(−L*)ほど明度が低く黒色を示す。また、a*b*平面における原点(a*,b*)=(0,0)は、L軸の位置に相当し、無彩色を示す。そして、a*b*平面の原点から遠ざかるほど、即ち、原点Oからの長さが長いほど、彩度が高い。そして、a*b*平面におけるa*値,b*値によって色相が変わる。即ち、a軸からの角度θで色相が示される。なお、a軸のプラス方向(+a*)は赤系を示し、マイナス方向(−a*)は緑系を示し、b軸のプラス方向(+b*)は黄系を示し、マイナス方向(−b*)は青系を示す。
【0032】
第1実施例では、図5Aに示すように、裏移り抑制画像の色相を、主画像の色相の反対の色相とする。主画像の色相の反対の色相とは、a*b*平面において原点Oと主画像の色を示す点C1を繋ぐ直線の延長線上の点であり、点C1とは反対側に原点Oを越えた点の位置に相当する色相である。即ち、主画像の色を示す点C1がa軸とプラス方向に成す角度θと裏移り抑制画像の色を示す点C2がa軸とマイナス方向に成す角度θが等しい。言い換えれば、a*b*平面において、主画像の色を示す点C1のa*値,b*値が共にプラスである場合、裏移り抑制画像の色を示す点C2のa*値,b*値は共にマイナスとなる。このように、裏移り抑制画像は主画像の色に応じた画像である。
【0033】
具体的には、主画像の色が緑色を帯びている場合、裏移り抑制画像の色はマゼンタとなり、主画像の色が青色を帯びている場合、裏移り抑制画像の色はイエローとなり、主画像の色が赤色を帯びている場合、裏移り抑制画像の色はシアンとなる。
【0034】
このように第1実施例では、裏移り抑制画像の色相を、主画像の色相の反対の色相とする。即ち、裏移り抑制画像の色と主画像の色を補色の関係とする。よって、主画像の色と裏移り抑制画像の色が重なると、無彩色(グレー)、又は、無彩色に近い色に視認される。そして、第1実施例では、印刷物を裏面から視認したときに、裏移り画像と裏移り抑制画像が重なって視認されるように、裏移り抑制画像を印刷する。ゆえに、第1実施例の印刷物を裏面から視認すると、主画像の形状をした無彩色の画像が視認される。仮に、裏移り抑制画像を印刷しないと、主画像の色が背景画像の裏面に裏移りするため、主画像の色が有彩色である場合に、主画像の裏移り画像が目立ち易い。
【0035】
つまり、背景画像の裏面に背景画像を介して主画像と重なる位置に、主画像の色相の反対の色相である裏移り抑制画像を印刷することで、背景画像の裏面から視認される画像(主画像の裏移り画像と裏移り抑制画像が重なった画像)を無彩色にすることができる、又は、無彩色に近づけることができる。その結果、背景画像の裏面における主画像の裏移りを目立ち難くすることができる。言い換えれば、背景画像の裏面にて裏移りする主画像の色を目立ち難くする。なお、a*b*平面において、主画像の色を示す点C1がa軸と成す角度θと裏移り抑制画像の色を示す点C2がa軸と成す角度θが多少ずれても良いとする。この場合であっても、背景画像の裏面から視認される画像を無彩色に近づけることができるため、主画像の裏移りを目立ち難くすることができる。
【0036】
図5Aでは、a*b*平面において、主画像の色を示す点C1の座標が(a1,b1)であり、裏移り抑制画像の色を示す点C2の座標が(−a1,−b1)であり、主画像の彩度と裏移り抑制画像の彩度が等しい(原点Oからの距離OC1=OC2である)。ただし、背景画像は透明でないため、主画像の色は背景画像を透して100%透過するわけではない(具体的には、背景画像に対する主画像の透過率は5%〜50%程度である)。そのため、背景画像の裏面から視認される主画像の裏移り画像は、主画像に比べて、低彩度であり、高明度である。
【0037】
そこで、図5Bに示すように、主画像の彩度よりも、裏移り抑制画像の彩度を低くしても良い。即ち、a*b*平面において、原点Oと主画像の色を示す点C1との距離(OC1)よりも、原点Oと裏移り抑制画像の色を示す点C2との距離(OC2)を短くする。そうすることで、裏移り抑制画像の彩度を、背景画像の裏面から視認される主画像の裏移り画像の彩度に近づけることができる。その結果、背景画像の裏面から視認される画像(主画像の裏移り画像と裏移り抑制画像が重なった画像)をより無彩色に近づけることができ、主画像の裏移り画像を目立ち難くすることができる。
【0038】
また、図5Cに示すように、主画像の明度よりも、裏移り抑制画像の明度を高くしてもよい。即ち、L*a*b*色空間において、主画像の色を示す点C1のL*値であるL1よりも、裏移り抑制画像の色を示す点C2のL*値であるL2を大きくする。そうすることで、裏移り抑制画像の明度を、背景画像の裏面から視認される主画像の裏移り画像の明度に近づけることができる。その結果、背景画像の裏面から視認される画像をより無彩色に近づけることができ、主画像の裏移り画像を目立ち難くすることができる。
【0039】
また、主画像の彩度よりも、裏移り抑制画像の彩度を低くし、且つ、主画像の明度よりも、裏移り抑制画像の明度を高くしてもよい。即ち、裏移り抑制画像は、主画像の明度よりも高い明度である特性と、主画像の彩度よりも低い彩度である特性とのうちの、少なくとも一方の特性を有するようにするとよい。その結果、背景画像の裏面から視認される画像をより無彩色に近づけることができ、主画像の裏移り画像を目立ち難くすることができる。
【0040】
このような裏移り抑制画像をプリンター1に印刷させるために、本実施形態の印刷システムでは、プリンタードライバーが裏移り抑制画像を印刷するための印刷データを作成する。プリンタードライバーは、主画像を印刷するための印刷データに基づいて裏移り抑制画像の印刷データを作成する。主画像を印刷するための印刷データは複数の画素データから構成され、各画素データは、その画素データに対応する媒体上の領域に4色インク(YMCK)をそれぞれどの程度吐出するかが示される。プリンタードライバーは、例えば、主画像用の印刷データにおいて、複数の画素データごとに4色インクの各吐出量を算出し、その複数の画素データによって印刷される主画像の一部の色相、彩度、明度を算出する。そして、プリンタードライバーは、その主画像の一部と対向する裏移り抑制画像の一部の色相、彩度、明度を決定し、その裏移り抑制画像の一部を印刷するためのYMCKの各階調値(インク吐出量)を決定する。そうすることで、プリンタードライバーは、裏移り抑制画像を印刷するための印刷データを作成することができる。
【0041】
なお、背景画像の遮蔽率(白インクの組成や単位面積あたりの白インク吐出量)に基づいて背景画像の裏面における主画像の裏移り画像の彩度,明度を算出し、裏移り抑制画像の彩度,明度を決定してもよい。また、主画像の彩度よりも裏移り抑制画像の彩度を低くするためには、各色インクの割合を調整したり、主画像とは異なる種類のインクを使用したりするとよい。また、主画像の明度よりも裏移り抑制画像の明度を高くするには、単位面積あたりのインク吐出量を小さくしたり、白インクを加えたりするとよい。また、裏移り抑制画像の印刷の有無をユーザーに選択させてもよい。
【0042】
また、図4に示す印刷物では主画像の色を1色としているが、主画像が複数の色から構成される画像でも良い。この場合、裏移り抑制画像も、対向する主画像の色に応じて、複数の色から構成される画像となる。例えば、主画像が緑の画像と赤の画像から構成される場合、主画像における緑の画像と対向する裏移り抑制画像の部分はマゼンタインクで印刷され、主画像における赤の画像と対向する裏移り抑制画像の部分はシアンインクで印刷される。
【0043】
<印刷方法>
図6から図8は、主画像、背景画像、裏移り抑制画像を重ねて印刷する印刷物(図4A)を表刷りモードで印刷する印刷方法例を示す図である。説明の簡略のため、ノズル列に属するノズル数を減らし、4色インクを吐出する各ノズル列(YMCK)を合わせてカラーノズル列Coと示す。ノズル列における搬送方向のノズル間隔を「D」とする。カラーノズル列Coのノズルを丸(○)で示し、ホワイトノズル列のノズルを三角(△)で示す。また、実際のプリンター1では、ノズル(ヘッド41)に対して媒体が搬送方向下流側に搬送されるが、図6から図8ではノズル(ヘッド41)を搬送方向上流側に遷移させて印刷方法を説明する。
【0044】
図6では、カラーノズル列Coに属するノズル#1〜#15のうち、搬送方向下流側の1/3のノズル群(#1〜#5)を、主画像を印刷するための使用ノズルとし、搬送方向中央の1/3のノズル群(#6〜#10)を、背景画像を印刷するための使用ノズルとし(背景画像の白色を調整するためのノズルとし)、搬送方向上流側の1/3のノズル群(#11〜#15)を、裏移り抑制画像を印刷するための使用ノズルとする。そして、ホワイトノズル列Wに属するノズル#1〜#15のうち、搬送方向中央の1/3のノズル群(#6〜#10)を、背景画像を印刷するための使用ノズルとし、他のノズル(#1〜#5,#11〜#15)を不使用ノズルとする。このように、ノズル列の1/3のノズル(5個)をそれぞれ用いて各画像が印刷される。
【0045】
そして、ヘッド41を移動方向に移動させながら印刷データに基づいて各使用ノズルからインクを吐出して画像を印刷する動作(パス)と、パスごとに形成される画像幅に相当する長さ「5D」だけ媒体を搬送する動作を繰り返す印刷方法を実施する。そうすると、例えば、図6に示す媒体上の領域Aは、パス1にて裏移り抑制画像用の使用ノズルと対向し、パス2にて背景画像用の使用ノズルと対向し、パス3にて主画像用の使用ノズルと対向する。その結果、媒体上には、まず、裏移り抑制画像が印刷され、その上に背景画像が印刷され、更にその上に主画像が印刷される。図6の印刷方法では、先のパスで形成されたラスターライン間に後のパスのラスターラインが形成されることがない。よって、図6の印刷方法によって形成される画像の搬送方向の印刷解像度はノズル列におけるノズルピッチに相当する。
【0046】
このように複数の画像を重ねて印刷する場合、媒体上の所定領域に先に印刷する画像の使用ノズル群を、後に印刷する画像の使用ノズル群よりも、搬送方向上流側のノズルに設定するとよい。そうすることで、媒体上の所定領域に対し3種類の画像をそれぞれ印刷するパスを異ならせることができる。その結果、媒体上の所定領域に対して先の画像を印刷してから後の画像を印刷するまでの乾燥時間を比較的に長くすることができ、画像の滲みを抑制することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、白インクと共に少量の4色インク(YMCKインク)を適宜使用して背景画像の白色の色味を調整する。そして、背景画像を印刷するホワイトノズル列Wの使用ノズルの搬送方向の位置と、背景画像を印刷するカラーノズル列Coの使用ノズルの搬送方向の位置を等しくする。そうすると、背景画像を印刷するための白インクとYMCKインクを同じパスにて媒体上の所定領域に吐出することができる。その結果、背景画像を印刷するための白インクと4色インクが混ざり、背景画像の粒状感を低減することができる。また、背景画像を構成するYMCKインクの割合は白インクの割合に比べて小さいが、背景画像を印刷するホワイトノズル列Wの使用ノズル数と背景画像を印刷するカラーノズル列Coの使用ノズル数を等しくする。そうすると、背景画像において、YMCKインクのドットをなるべく均一に分散させることができ、背景画像におけるYMCKインクの粒状感を低減することができる。
【0048】
また、図6に示す印刷方法に限らず、図7や図8に示す印刷方法でもよい。図7に示す印刷方法では、各画像を印刷する使用ノズルの設定の仕方は図6の印刷方法と同じであるが、図6の印刷方法に比べて媒体搬送量が短い(5D/3)。そのため、図7の印刷方法では、先のパスで印刷されたラスターライン間に後のパスのラスターラインが印刷される。その結果、図7に示す印刷方法による画像の方が、図6に示す印刷方法による画像よりも、搬送方向の印刷解像度が高くなる。
【0049】
また、裏移り抑制画像は、主画像ほど画質を良くする必要がなく、印刷解像度を低くしても良い。そのため、図8に示す印刷方法のように、裏移り抑制画像を印刷するための使用ノズル数(2個、#11〜#12)を、主画像を印刷するための使用ノズル数(5個、#1〜#5)よりも少なくしてもよい。また、裏移り抑制画像は、背景画像よりもインク吐出量が少ない(ベタ塗り印刷する必要がない)。特に、背景画像に対する主画像の透過率は低いため、例えば、主画像の明度よりも裏移り抑制画像の明度を高くする場合には、主画像を構成するインク量よりも裏移り抑制画像を構成するインク量を少なくする。即ち、裏移り抑制画像のドット密度は、主画像や背景画像のドット密度よりも小さくなる。そのため、図8に示す印刷方法のように、裏移り抑制画像を印刷するための使用ノズル数が主画像や背景画像を印刷するための使用ノズル数よりも少なくても問題はない。
【0050】
図8に示す印刷方法では、主画像用の使用ノズル及び背景画像用の使用ノズルは先のパスで形成されたラスターライン間に後のパスでラスターラインを形成するのに対して、裏移り抑制画像の使用ノズルは先のパスで形成されたラスターライン間に後のパスでラスターラインを形成しない。このように、裏移り抑制画像用の使用ノズル数を、主画像用の使用ノズル数及び背景画像用の使用ノズル数よりも少なくすることで、主画像や背景画像を印刷するための使用ノズル数を増やすことができて印刷時間を短縮したり、主画像等の印刷解像度を高めたりすることができる。
【0051】
なお、図6から図8に示す印刷方法は表刷りモードの印刷方法であるが、裏刷りモードで画像を印刷する場合には、搬送方向上流側のノズルを主画像用ノズルとし、搬送方向中央のノズルを背景画像用ノズルとし、搬送方向下流側のノズルを裏移り抑制画像用ノズルに設定するとよい。
【0052】
また、3つの画像を重ねて印刷する場合に、図6から図8に示すように、ノズル列W,Coを3分割して、各画像を印刷する使用ノズルに設定するに限らない。例えば、カラーノズル列Coの全ノズルを使用して裏移り抑制画像を印刷し、次に、媒体を搬送する事なく、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの全ノズルを使用して背景画像を印刷し、次に、媒体を搬送する事なく、カラーノズル列Coの全ノズルを使用して主画像を印刷してもよい。このように媒体を搬送することなく3回のパスに亘って画像を形成する動作と媒体搬送動作とを繰り返す印刷方法でもよい。
【0053】
===第2実施例===
図9は、第2実施例の印刷物を説明する図である。前述の第1実施例では、背景画像の裏面のうち、背景画像の表面において主画像が印刷される領域と対向する領域に、主画像の色相と反対の色相である裏移り抑制画像を印刷する。そうすることで、背景画像の裏面から視認される画像(主画像の裏移り画像と裏移り抑制画像が重なった画像)を無彩色にする、又は、無彩色に近づける。こうすることで、背景画像の裏面に裏移りする主画像の色味を目立ち難くすることはできるが、裏移りする主画像の形状(図9の印刷物では「A」という形状)は判別されてしまう。
【0054】
そこで、第2実施例では、背景画像の裏面の全域が同色、即ち、無彩色に視認されるように、裏移り抑制画像として、第1実施例で印刷する裏移り抑制画像に加え、背景画像の裏面のうち、背景画像の表面において主画像が印刷されない領域と対向する領域に無彩色の画像を印刷する。これらを区別するため、裏移り抑制画像のうち、主画像と対向する画像を「中心画像」と呼び、主画像と対向しない画像を「周辺画像(第2の画像に相当)」と呼ぶ。第1実施例で印刷する裏移り抑制画像が、第2実施例における中心画像に相当する。中心画像については第1実施例にて説明しているため、周辺画像について説明する。
【0055】
周辺画像の外側の形状及び大きさは、背景画像の外側の形状及び大きさと等しくする。図9の印刷物では、背景画像が略長方形であるため周辺画像も略長方形であり、背景画像の外周と周辺画像の外周が重なる。ただし、背景画像では略長方形内の全域にインクが吐出されるのに対して、周辺画像としては、主画像と対向する領域(中心画像が印刷される領域)にインクが吐出されない。即ち、中心画像と周辺画像を合わせた画像が背景画像の全域と重なる。
【0056】
そして、周辺画像の色は、主画像の裏移り画像と裏移り抑制画像が重なった画像の色である無彩色とする。無彩色の画像とは、図5に示すL*a*b*色空間のa*b*平面において原点O(a*値=0,b*値=0)に相当する色の画像である。即ち、L*a*b*色空間において、周辺画像の色を示す点はL軸上の点となる。また、周辺画像の明度(L*値)は、主画像の裏移り画像と裏移り抑制画像が重なった画像の明度と等しくする。例えば、主画像の裏移り画像と裏移り抑制画像が重なった画像が白に近いグレーであれば周辺画像の明度を高くし、主画像の裏移り画像と裏移り抑制画像が重なった画像が黒に近いグレーであれば周辺画像の明度を低くする。
【0057】
このように、周辺画像の色を、主画像の裏移り画像と裏移り抑制画像が重なった画像の色と等しくする。そうすることで、背景画像の裏面側から印刷物を視認した際に、無彩色であり背景画像と同じ形状である画像が視認される。その結果、主画像の裏移り画像の形状を判別することができなくなる。つまり、第2実施例では、主画像の裏移り画像と中心画像が重なった画像と、周辺画像とを、同化させることによって、主画像の裏移り画像をより目立ち難くする。特に、主画像に文字が含まれる場合、背景画像の裏面には反転した文字(鏡像文字)が裏移りして見栄えが悪いため、主画像の裏移り画像の形状を目立ち難くすることが好ましい。なお、第1実施例と同様に、プリンタードライバーが、主画像を印刷するための印刷データに基づいて、裏移り抑制画像(周辺画像および中心画像)の印刷データを作成する。
【0058】
また、主画像の裏移り画像と中心画像が重なった画像が完全な無彩色とならない場合がある。この場合にも、無彩色の周辺画像を印刷することで、周辺画像を印刷しないよりも、主画像の裏移り画像の形状を目立ち難くすることができる。また、主画像の裏移り画像と裏移り抑制画像が重なった画像が完全な無彩色でなく無彩色に近い色である場合に、周辺画像も同様に無彩色に近い色としてもよい。即ち、周辺画像の色相及び彩度を、主画像の裏移り画像と中心画像が重なった画像の色相及び彩度と等しくしてもよい。
【0059】
また、図9に示す印刷物では、周辺画像と背景画像の外側の形状及び大きさを等しくし、背景画像の外周と周辺画像の外周が重なるようにしているが、これに限らない。例えば、周辺画像の外周が背景画像の外周よりも一回り小さくなるように周辺画像を印刷してもよい。この場合にも、背景画像の裏面から印刷物を視認した際に、背景画像の縁以外の領域の全域が無彩色に視認され、背景画像の裏面に裏移りする主画像の形状を目立ち難くすることができる。また、背景画像の外側の形状と周辺画像の外側の形状を異ならせてもよい。例えば、背景画像の外形は略長方形であるのに対して、周辺画像の外形を楕円形としてもよい。この場合にも、背景画像の裏面に裏移りする主画像の形状(例えば、反転文字)などを目立ち難くすることができる。
【0060】
===第3実施例===
図10は、第3実施例の印刷物を説明する図である。第3実施例では、裏移り抑制画像として、背景画像の裏面のうち、背景画像の表面において主画像が印刷されない領域と対向する領域に画像を印刷する。そして、背景画像の裏面のうち、背景画像の表面において主画像が印刷される領域と対向する領域には画像を印刷しない。なお、裏移り抑制画像の外側の形状及び大きさは背景画像の外側の形状及び大きさと等しくし、裏移り抑制画像の外周と背景画像の外周が重なる。即ち、第3実施例の裏移り抑制画像は、第2実施例の周辺画像と同じ形状となる。
【0061】
そして、裏移り抑制画像の色相を、裏移り抑制画像と隣接する主画像の縁の色相と等しくする。図10に示す主画像は均一の色で印刷された文字「A」であるとする。この場合、主画像(文字A)の縁の色相と等しい裏移り抑制画像を印刷する。即ち、背景画像の裏面における主画像の裏移り画像の周囲に、主画像の色相と同じ色相である裏移り抑制画像を印刷する。そうすることで、主画像が1色から構成される画像である場合、背景画像の裏面側から印刷物を視認した際に、主画像の色相と同じ色相である略長方形の画像が視認され、主画像の裏移り画像の形状を判別することができなくなる。つまり、第3実施例では、背景画像の裏面において、主画像の裏移り画像と裏移り抑制画像を同化させることによって、主画像の裏移りを目立ち難くする。
【0062】
図11A及び図11Bは、裏移り抑制画像の色を説明する図である。図中のL*a*b*色空間において、主画像の色を点C1で示し、裏移り抑制画像の色を点C3で示す。第3実施例では、裏移り抑制画像の色相を、主画像の色相と同一の色相とする。そのため、図11Aに示すように、a*b*平面において、主画像の色を示す点C1のa*値,b*値が共にプラスである場合、裏移り抑制画像の色を示す点C3のa*値,b*値も共にプラスとなる。また、主画像の色を示す点C1がa軸とプラス方向に成す角度θと裏移り抑制画像の色を示す点C3がa軸とプラス方向に成す角度θは等しい。
【0063】
そして、裏移り抑制画像の彩度および明度を主画像の彩度および明度と等しくしてもよいが(即ち、裏移り抑制画像の色を示すa*値,b*値,L*値を主画像の色を示すa*値,b*値,L*値と等しくしてもよいが)、主画像の色は背景画像を透して100%透過するわけではない。そこで、裏移り抑制画像の彩度を主画像の彩度よりも低くしたり、裏移り抑制画像の明度を主画像の明度よりも高くしたりしてもよい。
【0064】
例えば、裏移り抑制画像の彩度を主画像の彩度よりも低くする場合、図11Aに示すように、a*b*平面において、原点Oと主画像の色を示す点C1との距離OC1よりも原点Oと裏移り抑制画像の色を示す点C3との距離OC3を短くする。そうすることで、裏移り抑制画像の彩度を、主画像の裏移り画像の彩度に近づけることができる。その結果、主画像の裏移り画像をより目立ち難くすることができる。
【0065】
また、裏移り抑制画像の明度を主画像の明度よりも高くする場合、図11Bに示すように、L*a*b*色空間において、主画像の色を示す点C1のL*値であるL1よりも裏移り抑制画像の色を示す点C3のL*値であるL3を高くする。そうすることで、裏移り抑制画像の明度を、主画像の裏移り画像の明度に近づけることができる。その結果、主画像の裏移り画像をより目立ち難くすることができる。
また、主画像の彩度よりも裏移り抑制画像の彩度を低くし、且つ、主画像の明度よりも裏移り抑制画像の明度を高くしてもよい。即ち、裏移り抑制画像は、主画像の明度よりも高い明度である特性と、主画像の彩度よりも低い彩度である特性とのうちの、少なくとも一方の特性を有するようにするとよい。
【0066】
このように、主画像の裏移り画像の色(色相、彩度、明度)と裏移り抑制画像の色(色相、彩度、明度)をより近づけることで、主画像の裏移り画像をより目立ち難くすることができる。なお、第1実施例と同様に、プリンタードライバーが、主画像を印刷するための印刷データに基づいて、裏移り抑制画像の印刷データを作成する。
【0067】
また、第3実施例では、主画像の縁の色相と同一の色相である裏移り抑制画像を印刷するため、主画像の縁が複数色から構成される場合、主画像の縁を構成する複数色のうちの1つの色に応じて裏移り抑制画像を印刷することになる。この場合、主画像の裏移り画像の一部は裏移り抑制画像と同化させることができるが、主画像の裏移り画像の別の一部は裏移り抑制画像と同化させることができない。そのため、第3実施例は、主画像が1色で構成される場合に有効である。
【0068】
また、図10に示す印刷物では、裏移り抑制画像と背景画像の外側の形状及び大きさを等しくしているが、これに限らない。例えば、裏移り抑制画像の外周が背景画像の外周よりも一回り小さくなるようにしたり、背景画像の形状は略長方形であるのに対して裏移り抑制画像の形状は楕円形にしたりしてもよい。
【0069】
図12Aから図12Cは、2色の画像から構成される主画像に対する裏移り抑制画像の印刷例を示す。図12Aは、背景画像の裏面における主画像の裏移り画像を示す。ここでは、主画像を円形画像内に文字画像が印刷された画像とし、円形画像の色と文字画像の色が異なるとする。第3実施例では、背景画像の裏面のうち、背景画像の表面において主画像が印刷されない領域と対向する領域に、主画像の縁と同一の色相である裏移り抑制画像を印刷する。図12Aの場合、主画像の縁の色相は円形画像の色相に相当し、図12Bに示すように、裏移り抑制画像の色相は円形画像の色相と同一の色相となる。その結果、文字画像の形状は判別することができるが、円形画像は裏移り抑制画像と同化し、円形画像の形状を判別することができなくなる。そのため、裏移り抑制画像を印刷しない図12Aに比べて、裏移り抑制画像を印刷する図12Bの方が、主画像の裏移り画像を目立ち難くすることができている。
【0070】
ここで仮に、裏移り抑制画像の色相を、主画像の縁の色相ではなく、主画像の中央の色相と同一の色相とする。即ち、図12Aの場合、裏移り抑制画像の色相は文字画像の色相と同一の色相となる。その結果、図12Cに示すように、文字画像の形状も円形画像の形状も判別することができてしまうため、主画像の裏移り画像を目立ち難くすることができない。ゆえに、第3実施例では、主画像の縁の色相と同一の色相である裏移り抑制画像を印刷する。言い換えれば、背景画像を介して裏移り抑制画像と隣接する主画像の縁の色相と、裏移り抑制画像の色相とを等しくする。
【0071】
図13Aから図13Cは、2色の画像から構成される主画像に対する裏移り抑制画像の印刷例を示す。図12では、円形画像内に、円形画像とは異なる色の文字画像が印刷された主画像を例に挙げている。これに対して、図13では、ある色の円形画像と別の色の文字画像が重ならずに印刷された主画像を例に挙げる。この場合、裏移り抑制画像と隣接する主画像の縁の色は2色となる。
【0072】
この場合、主画像を構成する色のうち、最も印刷面積が大きい色に応じて、裏移り抑制画像の色を決定してもよい。例えば、図13Aに示す主画像の裏移り画像の場合、文字画像に比べて円形画像の方が、印刷面積が大きい。よって、図13Bに示すように、円形画像の縁の色相と裏移り抑制画像の色相を等しくする。その結果、文字画像の形状は判別することができるが、円形画像は裏移り抑制画像と同化し、円形画像の形状を判別することができなくなる。そのため、裏移り抑制画像を印刷しない図13Aに比べて、裏移り抑制画像を印刷する図13Bの方が、主画像の裏移り画像を目立ち難くすることができている。
【0073】
また、文字の裏移り画像は文字が反転して視認されるため、主画像が裏移りしていることが目立ち易い。そこで、主画像が複数色から構成される場合、文字画像の色に応じて裏移り抑制画像の色を決定してもよい。即ち、文字画像の縁の色相と裏移り抑制画像の色相を等しくする。その結果、図13Cに示すように、文字画像は裏移り抑制画像と同化し、文字画像の形状を判別することができなくなり、背景画像の裏面に主画像が裏移りしていることを目立ち難くすることができる。
【0074】
===変形例===
図14は、変形例のプリンターを説明する図である。前述の実施形態では、図2に示すように、ヘッド41が移動方向に移動する際に画像を形成する動作と、媒体Sを搬送方向に搬送する動作とを交互に繰り返すプリンター1を例に挙げているが、これに限らない。例えば、図14に示すように、固定されたヘッド41の下に媒体Sを通して、ヘッド41と媒体Sが対向する際にヘッド41からインクを吐出して画像を形成するプリンターでもよい。図14のプリンターでは、4色インク(YMCK)をそれぞれ吐出する4つのヘッド41が搬送方向の上流側から順に並び、最下流側に白インクを吐出するヘッド41が位置する。このようなプリンターにおいて、例えば、図4Aに示す表刷りモードの印刷物を印刷する場合、まず、媒体Sを搬送方向下流側に搬送しつつ、4色インクの各ヘッド41によって裏移り抑制画像を印刷し、最下流側の白インクのヘッド41によって背景画像を印刷する。その後、媒体Sを搬送方向上流側へ逆送りし、再度、4色インクの各ヘッド41によって主画像を印刷する。
【0075】
また、前述の実施形態では、白インクに4色インク(YMCK)を加えて、白色の色味を調整した背景画像を印刷する例を挙げているが、これに限らない。白インクだけで背景画像を印刷しても良い。この場合、例えば、図6に示す印刷方法では、カラーノズル列Coのうち、搬送方向中央の1/3のノズルは不使用ノズルとなる。また、前述の実施形態では、4色インク(YMCK)だけでカラー画像を印刷しているが、これに限らず、4色インクに白インクを加えてカラー画像を印刷してもよい。この場合、例えば、図6に示す印刷方法では、ホワイトノズル列Wのうち、搬送方向下流側の1/3のノズルが使用ノズルとなる。また、白インク以外の色インクによって背景画像を印刷してもよい。ただし、白色の背景画像を印刷する方が他の色の背景画像を印刷する場合に比べて、背景画像の裏面に主画像が裏移りし易く、裏移り抑制画像を印刷する本発明の効果がより得られる。
【0076】
また、本発明では、裏移り抑制画像により主画像の裏移りが目立ち難くなる。そのため、裏移り抑制画像内に付加情報画像を印刷する場合に、付加情報画像を見易くすることができる。付加情報画像とは、例えば、主画像、印刷ジョブ、印刷装置、媒体に関する情報などを示す画像である。なお、裏移り抑制画像内に付加情報画像を印刷する場合、ノズル列を4分割して、媒体の所定領域に対して先に印刷する画像用の使用ノズルほど搬送方向上流側のノズルにするとよい。そうすることで、媒体の所定領域に対して各画像を印刷するパスを異ならせることができ、画像の滲みを抑制することができる。
【0077】
===その他の実施の形態===
上記の各実施形態は、主としてインクジェットプリンターを有する印刷システムについて記載されているが、裏移り抑制方法等の開示が含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0078】
<印刷装置について>
ノズルからのインク吐出方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけて、インク室を膨張・収縮させることによりインクを吐出するピエゾ方式でもよいし、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によってインクを吐出させるサーマル方式でもよい。
また、インクは水性のインクに限らず、例えば、紫外線硬化型インクでもよい。紫外線硬化型インクの場合には、媒体の吸収性やインクの浸透性の問題によって単位面積あたりのインク吐出量が制限されない。そのため、主画像と背景画像の他に裏移り抑制画像を印刷する本発明においても、主画像や背景画像のインク吐出量を低減させることなく画像を印刷することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 プリンター、10 コントローラー、11 インターフェース部、
12 CPU、13 メモリー、14 ユニット制御回路、
20 搬送ユニット、30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、50 検出器群、60 コンピューター
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、及び、印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置の一つとして、媒体に対してノズルからインクを吐出するヘッドを有するインクジェットプリンター(以下、プリンター)が知られている。近年、紙媒体だけでなく透明フィルム等にも画像が印刷されるようになった。透明フィルムに主画像を印刷する場合、白インク等による背景画像上に主画像を印刷することで、主画像の発色性を良くすることができる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−200853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、主画像と背景画像を重ねた印刷物において、背景画像の遮蔽性が良くないと、印刷物を背景画像側から視認した際に、主画像が透けて見えてしまうため、見栄えが悪い。特に、主画像が有彩色であると裏移りが目立ち易い。
そこで、本発明は、主画像の裏移りを目立ち難くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する為の主たる発明は、透明性を有する媒体に有色インクを吐出するノズルを有する印刷装置であって、前記媒体に主画像と背景画像を重ねた画像を印刷する場合、前記背景画像において前記主画像が印刷される表面と反対側の裏面に、前記背景画像に対する前記主画像の印刷位置及び前記主画像の色に応じた補助画像を印刷する、ことを特徴とする印刷装置である。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】プリンターの全体構成ブロック図である。
【図2】プリンターの斜視図である。
【図3】ヘッドの下面に設けられるノズルの配列を示す図である。
【図4】図4Aは第1実施例の表刷りモードの印刷物を説明する図であり、図4Bは第1実施例の裏刷りモードの印刷物を説明する図である。
【図5】図5Aから図5Cは裏移り抑制画像の色を説明する図である。
【図6】複数の画像を重ねて印刷する印刷物の印刷方法例を示す図である。
【図7】複数の画像を重ねて印刷する印刷物の印刷方法例を示す図である。
【図8】複数の画像を重ねて印刷する印刷物の印刷方法例を示す図である。
【図9】第2実施例の印刷物を説明する図である。
【図10】第3実施例の印刷物を説明する図である。
【図11】図11A及び図11Bは裏移り抑制画像の色を説明する図である。
【図12】図12Aから図12Cは2色の画像から構成される主画像に対する裏移り抑制画像の印刷例を示す。
【図13】図13Aから図13Cは2色の画像から構成される主画像に対する裏移り抑制画像の印刷例を示す。
【図14】変形例のプリンターを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0008】
即ち、透明性を有する媒体に有色インクを吐出するノズルを有する印刷装置であって、前記媒体に主画像と背景画像を重ねた画像を印刷する場合、前記背景画像において前記主画像が印刷される表面と反対側の裏面に、前記背景画像に対する前記主画像の印刷位置及び前記主画像の色に応じた補助画像を印刷する、ことを特徴とする印刷装置である。
このような印刷装置によれば、背景画像の裏面における主画像の裏移りを目立ち難くすることができる。
また、前記背景画像の前記裏面から透けて視認される前記主画像の裏移り画像と前記補助画像とを協調させて、前記裏移り画像を目立ち難くする印刷装置である。
【0009】
かかる印刷装置であって、前記補助画像として、前記背景画像の前記裏面のうち、前記背景画像の前記表面において前記主画像が印刷される領域と対向する領域に、前記主画像の色相と反対の色相である第1の画像を印刷すること。
このような印刷装置によれば、背景画像の裏面から視認される画像を無彩色に近づけることができ、主画像の裏移りを目立ち難くすることができる。
【0010】
かかる印刷装置であって、前記第1の画像は、前記主画像の明度よりも高い明度である特性と、前記主画像の彩度よりも低い彩度である特性とのうちの少なくとも一方の特性を有すること。
このような印刷装置によれば、背景画像の裏面から視認される画像をより無彩色に近づけることができる。
【0011】
かかる印刷装置であって、前記補助画像として、前記背景画像の前記裏面のうち、前記背景画像の前記表面において前記主画像が印刷されない領域と対向する領域に、無彩色である第2の画像を印刷すること。
このような印刷装置によれば、背景画像の裏面に裏移りする主画像の形状を判別し難くすることができ、主画像の裏移りを目立ち難くすることができる。
【0012】
かかる印刷装置であって、前記背景画像の前記裏面のうち、前記背景画像の前記表面において前記主画像が印刷されない領域と対向する領域に、前記主画像の縁の色相と同一の色相である補助画像を印刷すること。
このような印刷装置によれば、背景画像の裏面に裏移りする主画像と補助画像を同化させることができ、主画像の裏移りを目立ち難くすることができる。
【0013】
かかる印刷装置であって、前記補助画像は、前記主画像の明度よりも高い明度である特性と、前記主画像の彩度よりも低い彩度である特性とのうちの少なくとも一方の特性を有すること。
このような印刷装置によれば、背景画像の裏面に裏移りする主画像と補助画像をより同化させることができる。
【0014】
また、透明性を有する媒体に主画像と背景画像を重ねた画像を印刷する印刷方法であって、前記媒体に背景画像を印刷することと、前記背景画像の表面に主画像を印刷することと、前記背景画像の裏面に、前記背景画像に対する前記主画像の印刷位置及び前記主画像の色に応じた補助画像を印刷することと、を有することを特徴とする印刷方法である。
このような印刷方法によれば、背景画像の裏面における主画像の裏移りが目立ち難い画像を印刷することができる。
【0015】
===印刷システムについて===
図1は、プリンター1の全体構成ブロック図である。図2は、プリンター1の斜視図である。印刷装置をインクジェットプリンター(以下、プリンター1)とし、プリンター1とコンピューター60が接続された印刷システムを例に挙げて実施形態を説明する。コンピューター60は、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるための印刷データをプリンター1に出力する。なお、コンピューター60には、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換するためのプログラム(プリンタードライバー)がインストールされている。プリンタードライバーは、CD−ROMなどの記録媒体(コンピューターが読み取り可能な記録媒体)に記録されていたり、インターネットを介してコンピューターにダウンロード可能であったりする。
【0016】
コントローラー10は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11はコンピューター60とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12はプリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13はCPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12はユニット制御回路14により各ユニットを制御する。なお、プリンター1内の状況を検出器群50が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
【0017】
搬送ユニット20は、媒体Sを印刷可能な位置に送り込み、印刷時には搬送方向に所定の搬送量で媒体Sを搬送させるものである。
キャリッジユニット30は、ヘッド41を搬送方向と交差する移動方向に移動させるためのものであり、キャリッジ31を有する。
ヘッドユニット40は、媒体Sにインクを吐出するためのものであり、ヘッド41を有する。ヘッド41はキャリッジ31によって移動方向に移動する。ヘッド41の下面には、インク吐出部であるノズルが複数設けられ、各ノズルには、インクが入ったインク室(不図示)が設けられている。
【0018】
図3は、ヘッド41の下面に設けられるノズルの配列を示す図である。なお、図はヘッド41の上面から仮想的にノズルを見た図である。ヘッド41の下面には、インク(有色インク)を吐出する180個のノズルが搬送方向に所定の間隔Dで並んだノズル列が5列形成されている。図示するように、ブラックインクを吐出するブラックノズル列K・シアンインクを吐出するシアンノズル列C・マゼンタインクを吐出するマゼンタノズル列M・イエローインクを吐出するイエローノズル列Y・白インクを吐出するホワイトノズル列Wが、移動方向に並んでいる。なお、各ノズル列が有する180個のノズルに対して、搬送方向の下流側のノズルから順に小さい番号を付す(#1〜#180)。
【0019】
このようなプリンター1では、移動方向に沿って移動するヘッド41からインク滴を断続的に吐出させて媒体上にドットを形成するドット形成処理と、媒体をヘッド41に対して搬送方向に搬送する搬送処理とが繰り返される。そうすることで、先のドット形成処理により形成されたドットの位置とは異なる媒体上の位置に、後のドット形成処理にてドットを形成することができ、媒体上に2次元の画像を印刷することができる。なお、ヘッド41がインク滴を吐出しながら移動方向に1回移動する動作(1回のドット形成処理)を「パス」と呼ぶ。また、移動方向に沿うドット列を「ラスターライン」と呼ぶ。
【0020】
===第1実施例===
図4Aは、第1実施例において表刷りモードで印刷される印刷物を説明する図であり、図4Bは、第1実施例において裏刷りモードで印刷される印刷物を説明する図である。本実施形態では、透明性を有する媒体に主画像と背景画像を重ねた印刷物を印刷する。透明性を有する媒体は、例えば、光を透過する透明フィルム等が挙げられる。完全に透明な媒体に限らず、半透明の媒体でもよい。主画像は4色のインク(YMCK)によって印刷されるカラー画像(モノクロ画像も含む)であり、背景画像は白インクによって印刷される白色の画像である。このように背景画像と主画像を重ねて印刷することで、主画像の発色性を向上し、且つ、主画像を視認する際に媒体の反対側が見えてしまうことを防止できる。
【0021】
なお、本明細書における「白色」とは、可視光線のすべての波長を100%反射する物体の表面色である厳密な意味での白色に限らず、所謂「白っぽい色」のように社会通念上、白色と呼ばれる色を含むものとする。「白色」とは、例えば、(1)x-rite社製の測色機eye-oneProを用いて、測色モード:スポット測色、光源:D50、バッキング:Black、印刷媒体:透明フィルムで測色した場合に、L*a*b*色空間での標記がa*b*平面上で半径20の円周及びその内側にあり、且つ、L*値が70以上で表される色相範囲内の色か、(2)ミノルタ製測色計CM2022を用いて、測定モード:D502°視野、SCFモード、白地バックで測色した場合に、L*a*b*色空間での標記がa*b*平面上で半径20の円周及びその内側にあり、且つ、L値が70以上で表される色相範囲内の色か、(3)特開2004−306591号公報に記載されているように画像の背景として用いられるインクの色かをいい、背景として用いられるのであれば純粋な白に限られない。
【0022】
また、白インクのみを使用して背景画像を印刷すると、その白インクの色そのものの色が背景画像となる。しかし、同じように白インクと呼ばれるインクであっても、インクの材料などによって白色の色味が若干異なる。そのため、使用する白インクによってユーザーが所望する色とは異なる色の背景画像が印刷されてしまう場合がある。また、単純な白色ではなく、若干の有彩色を有する背景画像が所望されることもある。そこで、本実施形態では、白インクと共に、少量の4色インク(YMCK)を適宜使用して、所望の白色の背景画像(調整された白色の背景画像)を印刷する。そうすることで、逆に、白インクが若干の色彩を有する場合、その色彩を打ち消すインクと共に背景画像を印刷し、背景画像を無彩色に近づけることもできる。
【0023】
所望の白色の背景画像をプリンター1に印刷させるための印刷データは、プリンター1が予め記憶するようにしても良いし、プリンタードライバーが作成するようにしても良い。プリンター1のモニターやコンピューターの画面をユーザーが見るなどして、所望の背景画像の色の選択が行われる場合には、選択された色に応じた背景画像の印刷データが生成されるようにするとよい。
【0024】
このように本実施形態では、主画像と背景画像を重ねて印刷するが、背景画像の遮蔽性が不十分であると、背景画像側から主画像が透けて見えてしまう。即ち、背景画像に主画像が裏移りしてしまう。そうすると、見栄えが悪い印刷物となってしまう。例えば、店舗のウィンドウに貼り付ける印刷物であり、店舗外から主画像を視認する印刷物の場合、背景画像側に主画像が裏移りしてしまうと、店舗内の人から主画像が透けて見えてしまうため見苦しい。
【0025】
背景画像を厚く印刷することで、主画像の裏移りを抑制することができるが、白インクの消費量が増えてしまう。また、媒体の単位面積あたりに吐出可能なインク量に制限がある場合、背景画像を厚く印刷すると、主画像を印刷するためのインク量が少なくなり、主画像の画質が低下してしまう。特に、白インクの色材として中空ポリマー微粒子を使用するインクでは、遮蔽性があまり良くなく、背景画像の遮蔽性に限界がある。一方、白インクの色材として、遮蔽性の良い二酸化チタンを使用することも可能であるが、沈降性が高い。そのため、沈降性の対策として、例えば、インク循環システムが必要となる。
【0026】
よって、本実施形態では、透明性の有る媒体に主画像と背景画像を重ねて印刷する場合に、背景画像側における主画像の裏移りを目立ち難くすることを目的とする。
【0027】
そこで、本実施形態では、背景画像において主画像が印刷される面(表面)と反対側の面(裏面)に、背景画像に対する主画像の印刷位置及び主画像の色に応じた「裏移り抑制画像(補助画像)」を印刷する。
【0028】
なお、本実施形態のプリンター1では、主画像を印刷面側から視認する「表刷りモード」と、媒体を介して印刷面と反対側から主画像を視認する「裏刷りモード」の何れかのモードによって、画像を印刷することが可能であるとする。
【0029】
表刷りモードの場合には、図4Aに示すように、媒体上に、まず、裏移り抑制画像(クロスハッチ部)が印刷され、その上に背景画像(白塗り部)が印刷され、更にその上に主画像(黒塗り部)が印刷される。表刷りモードでは、印刷面側が背景画像の表面側となり、印刷面と反対側が背景画像の裏面側となる。
裏刷りモードの場合には、図4Bに示すように、媒体上に、まず、主画像が印刷され、その上に背景画像が印刷され、更にその上に裏移り抑制画像が印刷される。裏刷りモードでは、印刷面側が背景画像の裏面側となり、印刷面と反対側が背景画像の表面側となる。
【0030】
<裏移り抑制画像について>
第1実施例では、図4Aや図4Bに示すように、背景画像の裏面のうち、背景画像の表面において主画像が印刷される領域と対向する領域に、裏移り抑制画像(第1の画像に相当)を印刷する。即ち、背景画像を介して主画像が印刷される位置と反対側の位置に裏移り抑制画像が印刷され、背景画像を介して主画像と裏移り抑制画像が重なるように裏移り抑制画像が印刷される。印刷物を裏面から視認すると、背景画像の裏面に裏移りする主画像(以下、裏移り画像とも呼ぶ)と裏移り抑制画像が重なって視認される。このように、裏移り抑制画像は、背景画像に対する主画像の印刷位置に応じた画像である。
【0031】
図5Aから図5Cは、裏移り抑制画像の色を説明する図である。図は、(CIE)L*a*b*色空間における主画像の色と裏移り抑制画像の色の位置を示す。L*a*b*色空間における主画像の色を点C1で示し、裏移り抑制画像の色を点C2で示す。L*a*b*色空間では、明度をL軸で示し、色相および彩度をa軸とb軸で示す。なお、図5A及び図5BはL*a*b*色空間におけるa*b*平面を示す図である。図5Cに示すL軸のプラス方向(+L*)ほど明度が高く白色を示し、L軸のマイナス方向(−L*)ほど明度が低く黒色を示す。また、a*b*平面における原点(a*,b*)=(0,0)は、L軸の位置に相当し、無彩色を示す。そして、a*b*平面の原点から遠ざかるほど、即ち、原点Oからの長さが長いほど、彩度が高い。そして、a*b*平面におけるa*値,b*値によって色相が変わる。即ち、a軸からの角度θで色相が示される。なお、a軸のプラス方向(+a*)は赤系を示し、マイナス方向(−a*)は緑系を示し、b軸のプラス方向(+b*)は黄系を示し、マイナス方向(−b*)は青系を示す。
【0032】
第1実施例では、図5Aに示すように、裏移り抑制画像の色相を、主画像の色相の反対の色相とする。主画像の色相の反対の色相とは、a*b*平面において原点Oと主画像の色を示す点C1を繋ぐ直線の延長線上の点であり、点C1とは反対側に原点Oを越えた点の位置に相当する色相である。即ち、主画像の色を示す点C1がa軸とプラス方向に成す角度θと裏移り抑制画像の色を示す点C2がa軸とマイナス方向に成す角度θが等しい。言い換えれば、a*b*平面において、主画像の色を示す点C1のa*値,b*値が共にプラスである場合、裏移り抑制画像の色を示す点C2のa*値,b*値は共にマイナスとなる。このように、裏移り抑制画像は主画像の色に応じた画像である。
【0033】
具体的には、主画像の色が緑色を帯びている場合、裏移り抑制画像の色はマゼンタとなり、主画像の色が青色を帯びている場合、裏移り抑制画像の色はイエローとなり、主画像の色が赤色を帯びている場合、裏移り抑制画像の色はシアンとなる。
【0034】
このように第1実施例では、裏移り抑制画像の色相を、主画像の色相の反対の色相とする。即ち、裏移り抑制画像の色と主画像の色を補色の関係とする。よって、主画像の色と裏移り抑制画像の色が重なると、無彩色(グレー)、又は、無彩色に近い色に視認される。そして、第1実施例では、印刷物を裏面から視認したときに、裏移り画像と裏移り抑制画像が重なって視認されるように、裏移り抑制画像を印刷する。ゆえに、第1実施例の印刷物を裏面から視認すると、主画像の形状をした無彩色の画像が視認される。仮に、裏移り抑制画像を印刷しないと、主画像の色が背景画像の裏面に裏移りするため、主画像の色が有彩色である場合に、主画像の裏移り画像が目立ち易い。
【0035】
つまり、背景画像の裏面に背景画像を介して主画像と重なる位置に、主画像の色相の反対の色相である裏移り抑制画像を印刷することで、背景画像の裏面から視認される画像(主画像の裏移り画像と裏移り抑制画像が重なった画像)を無彩色にすることができる、又は、無彩色に近づけることができる。その結果、背景画像の裏面における主画像の裏移りを目立ち難くすることができる。言い換えれば、背景画像の裏面にて裏移りする主画像の色を目立ち難くする。なお、a*b*平面において、主画像の色を示す点C1がa軸と成す角度θと裏移り抑制画像の色を示す点C2がa軸と成す角度θが多少ずれても良いとする。この場合であっても、背景画像の裏面から視認される画像を無彩色に近づけることができるため、主画像の裏移りを目立ち難くすることができる。
【0036】
図5Aでは、a*b*平面において、主画像の色を示す点C1の座標が(a1,b1)であり、裏移り抑制画像の色を示す点C2の座標が(−a1,−b1)であり、主画像の彩度と裏移り抑制画像の彩度が等しい(原点Oからの距離OC1=OC2である)。ただし、背景画像は透明でないため、主画像の色は背景画像を透して100%透過するわけではない(具体的には、背景画像に対する主画像の透過率は5%〜50%程度である)。そのため、背景画像の裏面から視認される主画像の裏移り画像は、主画像に比べて、低彩度であり、高明度である。
【0037】
そこで、図5Bに示すように、主画像の彩度よりも、裏移り抑制画像の彩度を低くしても良い。即ち、a*b*平面において、原点Oと主画像の色を示す点C1との距離(OC1)よりも、原点Oと裏移り抑制画像の色を示す点C2との距離(OC2)を短くする。そうすることで、裏移り抑制画像の彩度を、背景画像の裏面から視認される主画像の裏移り画像の彩度に近づけることができる。その結果、背景画像の裏面から視認される画像(主画像の裏移り画像と裏移り抑制画像が重なった画像)をより無彩色に近づけることができ、主画像の裏移り画像を目立ち難くすることができる。
【0038】
また、図5Cに示すように、主画像の明度よりも、裏移り抑制画像の明度を高くしてもよい。即ち、L*a*b*色空間において、主画像の色を示す点C1のL*値であるL1よりも、裏移り抑制画像の色を示す点C2のL*値であるL2を大きくする。そうすることで、裏移り抑制画像の明度を、背景画像の裏面から視認される主画像の裏移り画像の明度に近づけることができる。その結果、背景画像の裏面から視認される画像をより無彩色に近づけることができ、主画像の裏移り画像を目立ち難くすることができる。
【0039】
また、主画像の彩度よりも、裏移り抑制画像の彩度を低くし、且つ、主画像の明度よりも、裏移り抑制画像の明度を高くしてもよい。即ち、裏移り抑制画像は、主画像の明度よりも高い明度である特性と、主画像の彩度よりも低い彩度である特性とのうちの、少なくとも一方の特性を有するようにするとよい。その結果、背景画像の裏面から視認される画像をより無彩色に近づけることができ、主画像の裏移り画像を目立ち難くすることができる。
【0040】
このような裏移り抑制画像をプリンター1に印刷させるために、本実施形態の印刷システムでは、プリンタードライバーが裏移り抑制画像を印刷するための印刷データを作成する。プリンタードライバーは、主画像を印刷するための印刷データに基づいて裏移り抑制画像の印刷データを作成する。主画像を印刷するための印刷データは複数の画素データから構成され、各画素データは、その画素データに対応する媒体上の領域に4色インク(YMCK)をそれぞれどの程度吐出するかが示される。プリンタードライバーは、例えば、主画像用の印刷データにおいて、複数の画素データごとに4色インクの各吐出量を算出し、その複数の画素データによって印刷される主画像の一部の色相、彩度、明度を算出する。そして、プリンタードライバーは、その主画像の一部と対向する裏移り抑制画像の一部の色相、彩度、明度を決定し、その裏移り抑制画像の一部を印刷するためのYMCKの各階調値(インク吐出量)を決定する。そうすることで、プリンタードライバーは、裏移り抑制画像を印刷するための印刷データを作成することができる。
【0041】
なお、背景画像の遮蔽率(白インクの組成や単位面積あたりの白インク吐出量)に基づいて背景画像の裏面における主画像の裏移り画像の彩度,明度を算出し、裏移り抑制画像の彩度,明度を決定してもよい。また、主画像の彩度よりも裏移り抑制画像の彩度を低くするためには、各色インクの割合を調整したり、主画像とは異なる種類のインクを使用したりするとよい。また、主画像の明度よりも裏移り抑制画像の明度を高くするには、単位面積あたりのインク吐出量を小さくしたり、白インクを加えたりするとよい。また、裏移り抑制画像の印刷の有無をユーザーに選択させてもよい。
【0042】
また、図4に示す印刷物では主画像の色を1色としているが、主画像が複数の色から構成される画像でも良い。この場合、裏移り抑制画像も、対向する主画像の色に応じて、複数の色から構成される画像となる。例えば、主画像が緑の画像と赤の画像から構成される場合、主画像における緑の画像と対向する裏移り抑制画像の部分はマゼンタインクで印刷され、主画像における赤の画像と対向する裏移り抑制画像の部分はシアンインクで印刷される。
【0043】
<印刷方法>
図6から図8は、主画像、背景画像、裏移り抑制画像を重ねて印刷する印刷物(図4A)を表刷りモードで印刷する印刷方法例を示す図である。説明の簡略のため、ノズル列に属するノズル数を減らし、4色インクを吐出する各ノズル列(YMCK)を合わせてカラーノズル列Coと示す。ノズル列における搬送方向のノズル間隔を「D」とする。カラーノズル列Coのノズルを丸(○)で示し、ホワイトノズル列のノズルを三角(△)で示す。また、実際のプリンター1では、ノズル(ヘッド41)に対して媒体が搬送方向下流側に搬送されるが、図6から図8ではノズル(ヘッド41)を搬送方向上流側に遷移させて印刷方法を説明する。
【0044】
図6では、カラーノズル列Coに属するノズル#1〜#15のうち、搬送方向下流側の1/3のノズル群(#1〜#5)を、主画像を印刷するための使用ノズルとし、搬送方向中央の1/3のノズル群(#6〜#10)を、背景画像を印刷するための使用ノズルとし(背景画像の白色を調整するためのノズルとし)、搬送方向上流側の1/3のノズル群(#11〜#15)を、裏移り抑制画像を印刷するための使用ノズルとする。そして、ホワイトノズル列Wに属するノズル#1〜#15のうち、搬送方向中央の1/3のノズル群(#6〜#10)を、背景画像を印刷するための使用ノズルとし、他のノズル(#1〜#5,#11〜#15)を不使用ノズルとする。このように、ノズル列の1/3のノズル(5個)をそれぞれ用いて各画像が印刷される。
【0045】
そして、ヘッド41を移動方向に移動させながら印刷データに基づいて各使用ノズルからインクを吐出して画像を印刷する動作(パス)と、パスごとに形成される画像幅に相当する長さ「5D」だけ媒体を搬送する動作を繰り返す印刷方法を実施する。そうすると、例えば、図6に示す媒体上の領域Aは、パス1にて裏移り抑制画像用の使用ノズルと対向し、パス2にて背景画像用の使用ノズルと対向し、パス3にて主画像用の使用ノズルと対向する。その結果、媒体上には、まず、裏移り抑制画像が印刷され、その上に背景画像が印刷され、更にその上に主画像が印刷される。図6の印刷方法では、先のパスで形成されたラスターライン間に後のパスのラスターラインが形成されることがない。よって、図6の印刷方法によって形成される画像の搬送方向の印刷解像度はノズル列におけるノズルピッチに相当する。
【0046】
このように複数の画像を重ねて印刷する場合、媒体上の所定領域に先に印刷する画像の使用ノズル群を、後に印刷する画像の使用ノズル群よりも、搬送方向上流側のノズルに設定するとよい。そうすることで、媒体上の所定領域に対し3種類の画像をそれぞれ印刷するパスを異ならせることができる。その結果、媒体上の所定領域に対して先の画像を印刷してから後の画像を印刷するまでの乾燥時間を比較的に長くすることができ、画像の滲みを抑制することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、白インクと共に少量の4色インク(YMCKインク)を適宜使用して背景画像の白色の色味を調整する。そして、背景画像を印刷するホワイトノズル列Wの使用ノズルの搬送方向の位置と、背景画像を印刷するカラーノズル列Coの使用ノズルの搬送方向の位置を等しくする。そうすると、背景画像を印刷するための白インクとYMCKインクを同じパスにて媒体上の所定領域に吐出することができる。その結果、背景画像を印刷するための白インクと4色インクが混ざり、背景画像の粒状感を低減することができる。また、背景画像を構成するYMCKインクの割合は白インクの割合に比べて小さいが、背景画像を印刷するホワイトノズル列Wの使用ノズル数と背景画像を印刷するカラーノズル列Coの使用ノズル数を等しくする。そうすると、背景画像において、YMCKインクのドットをなるべく均一に分散させることができ、背景画像におけるYMCKインクの粒状感を低減することができる。
【0048】
また、図6に示す印刷方法に限らず、図7や図8に示す印刷方法でもよい。図7に示す印刷方法では、各画像を印刷する使用ノズルの設定の仕方は図6の印刷方法と同じであるが、図6の印刷方法に比べて媒体搬送量が短い(5D/3)。そのため、図7の印刷方法では、先のパスで印刷されたラスターライン間に後のパスのラスターラインが印刷される。その結果、図7に示す印刷方法による画像の方が、図6に示す印刷方法による画像よりも、搬送方向の印刷解像度が高くなる。
【0049】
また、裏移り抑制画像は、主画像ほど画質を良くする必要がなく、印刷解像度を低くしても良い。そのため、図8に示す印刷方法のように、裏移り抑制画像を印刷するための使用ノズル数(2個、#11〜#12)を、主画像を印刷するための使用ノズル数(5個、#1〜#5)よりも少なくしてもよい。また、裏移り抑制画像は、背景画像よりもインク吐出量が少ない(ベタ塗り印刷する必要がない)。特に、背景画像に対する主画像の透過率は低いため、例えば、主画像の明度よりも裏移り抑制画像の明度を高くする場合には、主画像を構成するインク量よりも裏移り抑制画像を構成するインク量を少なくする。即ち、裏移り抑制画像のドット密度は、主画像や背景画像のドット密度よりも小さくなる。そのため、図8に示す印刷方法のように、裏移り抑制画像を印刷するための使用ノズル数が主画像や背景画像を印刷するための使用ノズル数よりも少なくても問題はない。
【0050】
図8に示す印刷方法では、主画像用の使用ノズル及び背景画像用の使用ノズルは先のパスで形成されたラスターライン間に後のパスでラスターラインを形成するのに対して、裏移り抑制画像の使用ノズルは先のパスで形成されたラスターライン間に後のパスでラスターラインを形成しない。このように、裏移り抑制画像用の使用ノズル数を、主画像用の使用ノズル数及び背景画像用の使用ノズル数よりも少なくすることで、主画像や背景画像を印刷するための使用ノズル数を増やすことができて印刷時間を短縮したり、主画像等の印刷解像度を高めたりすることができる。
【0051】
なお、図6から図8に示す印刷方法は表刷りモードの印刷方法であるが、裏刷りモードで画像を印刷する場合には、搬送方向上流側のノズルを主画像用ノズルとし、搬送方向中央のノズルを背景画像用ノズルとし、搬送方向下流側のノズルを裏移り抑制画像用ノズルに設定するとよい。
【0052】
また、3つの画像を重ねて印刷する場合に、図6から図8に示すように、ノズル列W,Coを3分割して、各画像を印刷する使用ノズルに設定するに限らない。例えば、カラーノズル列Coの全ノズルを使用して裏移り抑制画像を印刷し、次に、媒体を搬送する事なく、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの全ノズルを使用して背景画像を印刷し、次に、媒体を搬送する事なく、カラーノズル列Coの全ノズルを使用して主画像を印刷してもよい。このように媒体を搬送することなく3回のパスに亘って画像を形成する動作と媒体搬送動作とを繰り返す印刷方法でもよい。
【0053】
===第2実施例===
図9は、第2実施例の印刷物を説明する図である。前述の第1実施例では、背景画像の裏面のうち、背景画像の表面において主画像が印刷される領域と対向する領域に、主画像の色相と反対の色相である裏移り抑制画像を印刷する。そうすることで、背景画像の裏面から視認される画像(主画像の裏移り画像と裏移り抑制画像が重なった画像)を無彩色にする、又は、無彩色に近づける。こうすることで、背景画像の裏面に裏移りする主画像の色味を目立ち難くすることはできるが、裏移りする主画像の形状(図9の印刷物では「A」という形状)は判別されてしまう。
【0054】
そこで、第2実施例では、背景画像の裏面の全域が同色、即ち、無彩色に視認されるように、裏移り抑制画像として、第1実施例で印刷する裏移り抑制画像に加え、背景画像の裏面のうち、背景画像の表面において主画像が印刷されない領域と対向する領域に無彩色の画像を印刷する。これらを区別するため、裏移り抑制画像のうち、主画像と対向する画像を「中心画像」と呼び、主画像と対向しない画像を「周辺画像(第2の画像に相当)」と呼ぶ。第1実施例で印刷する裏移り抑制画像が、第2実施例における中心画像に相当する。中心画像については第1実施例にて説明しているため、周辺画像について説明する。
【0055】
周辺画像の外側の形状及び大きさは、背景画像の外側の形状及び大きさと等しくする。図9の印刷物では、背景画像が略長方形であるため周辺画像も略長方形であり、背景画像の外周と周辺画像の外周が重なる。ただし、背景画像では略長方形内の全域にインクが吐出されるのに対して、周辺画像としては、主画像と対向する領域(中心画像が印刷される領域)にインクが吐出されない。即ち、中心画像と周辺画像を合わせた画像が背景画像の全域と重なる。
【0056】
そして、周辺画像の色は、主画像の裏移り画像と裏移り抑制画像が重なった画像の色である無彩色とする。無彩色の画像とは、図5に示すL*a*b*色空間のa*b*平面において原点O(a*値=0,b*値=0)に相当する色の画像である。即ち、L*a*b*色空間において、周辺画像の色を示す点はL軸上の点となる。また、周辺画像の明度(L*値)は、主画像の裏移り画像と裏移り抑制画像が重なった画像の明度と等しくする。例えば、主画像の裏移り画像と裏移り抑制画像が重なった画像が白に近いグレーであれば周辺画像の明度を高くし、主画像の裏移り画像と裏移り抑制画像が重なった画像が黒に近いグレーであれば周辺画像の明度を低くする。
【0057】
このように、周辺画像の色を、主画像の裏移り画像と裏移り抑制画像が重なった画像の色と等しくする。そうすることで、背景画像の裏面側から印刷物を視認した際に、無彩色であり背景画像と同じ形状である画像が視認される。その結果、主画像の裏移り画像の形状を判別することができなくなる。つまり、第2実施例では、主画像の裏移り画像と中心画像が重なった画像と、周辺画像とを、同化させることによって、主画像の裏移り画像をより目立ち難くする。特に、主画像に文字が含まれる場合、背景画像の裏面には反転した文字(鏡像文字)が裏移りして見栄えが悪いため、主画像の裏移り画像の形状を目立ち難くすることが好ましい。なお、第1実施例と同様に、プリンタードライバーが、主画像を印刷するための印刷データに基づいて、裏移り抑制画像(周辺画像および中心画像)の印刷データを作成する。
【0058】
また、主画像の裏移り画像と中心画像が重なった画像が完全な無彩色とならない場合がある。この場合にも、無彩色の周辺画像を印刷することで、周辺画像を印刷しないよりも、主画像の裏移り画像の形状を目立ち難くすることができる。また、主画像の裏移り画像と裏移り抑制画像が重なった画像が完全な無彩色でなく無彩色に近い色である場合に、周辺画像も同様に無彩色に近い色としてもよい。即ち、周辺画像の色相及び彩度を、主画像の裏移り画像と中心画像が重なった画像の色相及び彩度と等しくしてもよい。
【0059】
また、図9に示す印刷物では、周辺画像と背景画像の外側の形状及び大きさを等しくし、背景画像の外周と周辺画像の外周が重なるようにしているが、これに限らない。例えば、周辺画像の外周が背景画像の外周よりも一回り小さくなるように周辺画像を印刷してもよい。この場合にも、背景画像の裏面から印刷物を視認した際に、背景画像の縁以外の領域の全域が無彩色に視認され、背景画像の裏面に裏移りする主画像の形状を目立ち難くすることができる。また、背景画像の外側の形状と周辺画像の外側の形状を異ならせてもよい。例えば、背景画像の外形は略長方形であるのに対して、周辺画像の外形を楕円形としてもよい。この場合にも、背景画像の裏面に裏移りする主画像の形状(例えば、反転文字)などを目立ち難くすることができる。
【0060】
===第3実施例===
図10は、第3実施例の印刷物を説明する図である。第3実施例では、裏移り抑制画像として、背景画像の裏面のうち、背景画像の表面において主画像が印刷されない領域と対向する領域に画像を印刷する。そして、背景画像の裏面のうち、背景画像の表面において主画像が印刷される領域と対向する領域には画像を印刷しない。なお、裏移り抑制画像の外側の形状及び大きさは背景画像の外側の形状及び大きさと等しくし、裏移り抑制画像の外周と背景画像の外周が重なる。即ち、第3実施例の裏移り抑制画像は、第2実施例の周辺画像と同じ形状となる。
【0061】
そして、裏移り抑制画像の色相を、裏移り抑制画像と隣接する主画像の縁の色相と等しくする。図10に示す主画像は均一の色で印刷された文字「A」であるとする。この場合、主画像(文字A)の縁の色相と等しい裏移り抑制画像を印刷する。即ち、背景画像の裏面における主画像の裏移り画像の周囲に、主画像の色相と同じ色相である裏移り抑制画像を印刷する。そうすることで、主画像が1色から構成される画像である場合、背景画像の裏面側から印刷物を視認した際に、主画像の色相と同じ色相である略長方形の画像が視認され、主画像の裏移り画像の形状を判別することができなくなる。つまり、第3実施例では、背景画像の裏面において、主画像の裏移り画像と裏移り抑制画像を同化させることによって、主画像の裏移りを目立ち難くする。
【0062】
図11A及び図11Bは、裏移り抑制画像の色を説明する図である。図中のL*a*b*色空間において、主画像の色を点C1で示し、裏移り抑制画像の色を点C3で示す。第3実施例では、裏移り抑制画像の色相を、主画像の色相と同一の色相とする。そのため、図11Aに示すように、a*b*平面において、主画像の色を示す点C1のa*値,b*値が共にプラスである場合、裏移り抑制画像の色を示す点C3のa*値,b*値も共にプラスとなる。また、主画像の色を示す点C1がa軸とプラス方向に成す角度θと裏移り抑制画像の色を示す点C3がa軸とプラス方向に成す角度θは等しい。
【0063】
そして、裏移り抑制画像の彩度および明度を主画像の彩度および明度と等しくしてもよいが(即ち、裏移り抑制画像の色を示すa*値,b*値,L*値を主画像の色を示すa*値,b*値,L*値と等しくしてもよいが)、主画像の色は背景画像を透して100%透過するわけではない。そこで、裏移り抑制画像の彩度を主画像の彩度よりも低くしたり、裏移り抑制画像の明度を主画像の明度よりも高くしたりしてもよい。
【0064】
例えば、裏移り抑制画像の彩度を主画像の彩度よりも低くする場合、図11Aに示すように、a*b*平面において、原点Oと主画像の色を示す点C1との距離OC1よりも原点Oと裏移り抑制画像の色を示す点C3との距離OC3を短くする。そうすることで、裏移り抑制画像の彩度を、主画像の裏移り画像の彩度に近づけることができる。その結果、主画像の裏移り画像をより目立ち難くすることができる。
【0065】
また、裏移り抑制画像の明度を主画像の明度よりも高くする場合、図11Bに示すように、L*a*b*色空間において、主画像の色を示す点C1のL*値であるL1よりも裏移り抑制画像の色を示す点C3のL*値であるL3を高くする。そうすることで、裏移り抑制画像の明度を、主画像の裏移り画像の明度に近づけることができる。その結果、主画像の裏移り画像をより目立ち難くすることができる。
また、主画像の彩度よりも裏移り抑制画像の彩度を低くし、且つ、主画像の明度よりも裏移り抑制画像の明度を高くしてもよい。即ち、裏移り抑制画像は、主画像の明度よりも高い明度である特性と、主画像の彩度よりも低い彩度である特性とのうちの、少なくとも一方の特性を有するようにするとよい。
【0066】
このように、主画像の裏移り画像の色(色相、彩度、明度)と裏移り抑制画像の色(色相、彩度、明度)をより近づけることで、主画像の裏移り画像をより目立ち難くすることができる。なお、第1実施例と同様に、プリンタードライバーが、主画像を印刷するための印刷データに基づいて、裏移り抑制画像の印刷データを作成する。
【0067】
また、第3実施例では、主画像の縁の色相と同一の色相である裏移り抑制画像を印刷するため、主画像の縁が複数色から構成される場合、主画像の縁を構成する複数色のうちの1つの色に応じて裏移り抑制画像を印刷することになる。この場合、主画像の裏移り画像の一部は裏移り抑制画像と同化させることができるが、主画像の裏移り画像の別の一部は裏移り抑制画像と同化させることができない。そのため、第3実施例は、主画像が1色で構成される場合に有効である。
【0068】
また、図10に示す印刷物では、裏移り抑制画像と背景画像の外側の形状及び大きさを等しくしているが、これに限らない。例えば、裏移り抑制画像の外周が背景画像の外周よりも一回り小さくなるようにしたり、背景画像の形状は略長方形であるのに対して裏移り抑制画像の形状は楕円形にしたりしてもよい。
【0069】
図12Aから図12Cは、2色の画像から構成される主画像に対する裏移り抑制画像の印刷例を示す。図12Aは、背景画像の裏面における主画像の裏移り画像を示す。ここでは、主画像を円形画像内に文字画像が印刷された画像とし、円形画像の色と文字画像の色が異なるとする。第3実施例では、背景画像の裏面のうち、背景画像の表面において主画像が印刷されない領域と対向する領域に、主画像の縁と同一の色相である裏移り抑制画像を印刷する。図12Aの場合、主画像の縁の色相は円形画像の色相に相当し、図12Bに示すように、裏移り抑制画像の色相は円形画像の色相と同一の色相となる。その結果、文字画像の形状は判別することができるが、円形画像は裏移り抑制画像と同化し、円形画像の形状を判別することができなくなる。そのため、裏移り抑制画像を印刷しない図12Aに比べて、裏移り抑制画像を印刷する図12Bの方が、主画像の裏移り画像を目立ち難くすることができている。
【0070】
ここで仮に、裏移り抑制画像の色相を、主画像の縁の色相ではなく、主画像の中央の色相と同一の色相とする。即ち、図12Aの場合、裏移り抑制画像の色相は文字画像の色相と同一の色相となる。その結果、図12Cに示すように、文字画像の形状も円形画像の形状も判別することができてしまうため、主画像の裏移り画像を目立ち難くすることができない。ゆえに、第3実施例では、主画像の縁の色相と同一の色相である裏移り抑制画像を印刷する。言い換えれば、背景画像を介して裏移り抑制画像と隣接する主画像の縁の色相と、裏移り抑制画像の色相とを等しくする。
【0071】
図13Aから図13Cは、2色の画像から構成される主画像に対する裏移り抑制画像の印刷例を示す。図12では、円形画像内に、円形画像とは異なる色の文字画像が印刷された主画像を例に挙げている。これに対して、図13では、ある色の円形画像と別の色の文字画像が重ならずに印刷された主画像を例に挙げる。この場合、裏移り抑制画像と隣接する主画像の縁の色は2色となる。
【0072】
この場合、主画像を構成する色のうち、最も印刷面積が大きい色に応じて、裏移り抑制画像の色を決定してもよい。例えば、図13Aに示す主画像の裏移り画像の場合、文字画像に比べて円形画像の方が、印刷面積が大きい。よって、図13Bに示すように、円形画像の縁の色相と裏移り抑制画像の色相を等しくする。その結果、文字画像の形状は判別することができるが、円形画像は裏移り抑制画像と同化し、円形画像の形状を判別することができなくなる。そのため、裏移り抑制画像を印刷しない図13Aに比べて、裏移り抑制画像を印刷する図13Bの方が、主画像の裏移り画像を目立ち難くすることができている。
【0073】
また、文字の裏移り画像は文字が反転して視認されるため、主画像が裏移りしていることが目立ち易い。そこで、主画像が複数色から構成される場合、文字画像の色に応じて裏移り抑制画像の色を決定してもよい。即ち、文字画像の縁の色相と裏移り抑制画像の色相を等しくする。その結果、図13Cに示すように、文字画像は裏移り抑制画像と同化し、文字画像の形状を判別することができなくなり、背景画像の裏面に主画像が裏移りしていることを目立ち難くすることができる。
【0074】
===変形例===
図14は、変形例のプリンターを説明する図である。前述の実施形態では、図2に示すように、ヘッド41が移動方向に移動する際に画像を形成する動作と、媒体Sを搬送方向に搬送する動作とを交互に繰り返すプリンター1を例に挙げているが、これに限らない。例えば、図14に示すように、固定されたヘッド41の下に媒体Sを通して、ヘッド41と媒体Sが対向する際にヘッド41からインクを吐出して画像を形成するプリンターでもよい。図14のプリンターでは、4色インク(YMCK)をそれぞれ吐出する4つのヘッド41が搬送方向の上流側から順に並び、最下流側に白インクを吐出するヘッド41が位置する。このようなプリンターにおいて、例えば、図4Aに示す表刷りモードの印刷物を印刷する場合、まず、媒体Sを搬送方向下流側に搬送しつつ、4色インクの各ヘッド41によって裏移り抑制画像を印刷し、最下流側の白インクのヘッド41によって背景画像を印刷する。その後、媒体Sを搬送方向上流側へ逆送りし、再度、4色インクの各ヘッド41によって主画像を印刷する。
【0075】
また、前述の実施形態では、白インクに4色インク(YMCK)を加えて、白色の色味を調整した背景画像を印刷する例を挙げているが、これに限らない。白インクだけで背景画像を印刷しても良い。この場合、例えば、図6に示す印刷方法では、カラーノズル列Coのうち、搬送方向中央の1/3のノズルは不使用ノズルとなる。また、前述の実施形態では、4色インク(YMCK)だけでカラー画像を印刷しているが、これに限らず、4色インクに白インクを加えてカラー画像を印刷してもよい。この場合、例えば、図6に示す印刷方法では、ホワイトノズル列Wのうち、搬送方向下流側の1/3のノズルが使用ノズルとなる。また、白インク以外の色インクによって背景画像を印刷してもよい。ただし、白色の背景画像を印刷する方が他の色の背景画像を印刷する場合に比べて、背景画像の裏面に主画像が裏移りし易く、裏移り抑制画像を印刷する本発明の効果がより得られる。
【0076】
また、本発明では、裏移り抑制画像により主画像の裏移りが目立ち難くなる。そのため、裏移り抑制画像内に付加情報画像を印刷する場合に、付加情報画像を見易くすることができる。付加情報画像とは、例えば、主画像、印刷ジョブ、印刷装置、媒体に関する情報などを示す画像である。なお、裏移り抑制画像内に付加情報画像を印刷する場合、ノズル列を4分割して、媒体の所定領域に対して先に印刷する画像用の使用ノズルほど搬送方向上流側のノズルにするとよい。そうすることで、媒体の所定領域に対して各画像を印刷するパスを異ならせることができ、画像の滲みを抑制することができる。
【0077】
===その他の実施の形態===
上記の各実施形態は、主としてインクジェットプリンターを有する印刷システムについて記載されているが、裏移り抑制方法等の開示が含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0078】
<印刷装置について>
ノズルからのインク吐出方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけて、インク室を膨張・収縮させることによりインクを吐出するピエゾ方式でもよいし、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によってインクを吐出させるサーマル方式でもよい。
また、インクは水性のインクに限らず、例えば、紫外線硬化型インクでもよい。紫外線硬化型インクの場合には、媒体の吸収性やインクの浸透性の問題によって単位面積あたりのインク吐出量が制限されない。そのため、主画像と背景画像の他に裏移り抑制画像を印刷する本発明においても、主画像や背景画像のインク吐出量を低減させることなく画像を印刷することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 プリンター、10 コントローラー、11 インターフェース部、
12 CPU、13 メモリー、14 ユニット制御回路、
20 搬送ユニット、30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、50 検出器群、60 コンピューター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性を有する媒体に有色インクを吐出するノズルを有する印刷装置であって、
前記媒体に主画像と背景画像を重ねた画像を印刷する場合、
前記背景画像において前記主画像が印刷される表面と反対側の裏面に、前記背景画像に対する前記主画像の印刷位置及び前記主画像の色に応じた補助画像を印刷する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記補助画像として、前記背景画像の前記裏面のうち、前記背景画像の前記表面において前記主画像が印刷される領域と対向する領域に、前記主画像の色相と反対の色相である第1の画像を印刷する、
印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置であって、
前記第1の画像は、前記主画像の明度よりも高い明度である特性と、前記主画像の彩度よりも低い彩度である特性とのうちの少なくとも一方の特性を有する、
印刷装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の印刷装置であって、
前記補助画像として、前記背景画像の前記裏面のうち、前記背景画像の前記表面において前記主画像が印刷されない領域と対向する領域に、無彩色である第2の画像を印刷する、
印刷装置。
【請求項5】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記背景画像の前記裏面のうち、前記背景画像の前記表面において前記主画像が印刷されない領域と対向する領域に、前記主画像の縁の色相と同一の色相である補助画像を印刷する、
印刷装置。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷装置であって、
前記補助画像は、前記主画像の明度よりも高い明度である特性と、前記主画像の彩度よりも低い彩度である特性とのうちの少なくとも一方の特性を有する、
印刷装置。
【請求項7】
透明性を有する媒体に主画像と背景画像を重ねた画像を印刷する印刷方法であって、
前記媒体に背景画像を印刷することと、
前記背景画像の表面に主画像を印刷することと、
前記背景画像の裏面に、前記背景画像に対する前記主画像の印刷位置及び前記主画像の色に応じた補助画像を印刷することと、
を有することを特徴とする印刷方法。
【請求項1】
透明性を有する媒体に有色インクを吐出するノズルを有する印刷装置であって、
前記媒体に主画像と背景画像を重ねた画像を印刷する場合、
前記背景画像において前記主画像が印刷される表面と反対側の裏面に、前記背景画像に対する前記主画像の印刷位置及び前記主画像の色に応じた補助画像を印刷する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記補助画像として、前記背景画像の前記裏面のうち、前記背景画像の前記表面において前記主画像が印刷される領域と対向する領域に、前記主画像の色相と反対の色相である第1の画像を印刷する、
印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置であって、
前記第1の画像は、前記主画像の明度よりも高い明度である特性と、前記主画像の彩度よりも低い彩度である特性とのうちの少なくとも一方の特性を有する、
印刷装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の印刷装置であって、
前記補助画像として、前記背景画像の前記裏面のうち、前記背景画像の前記表面において前記主画像が印刷されない領域と対向する領域に、無彩色である第2の画像を印刷する、
印刷装置。
【請求項5】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記背景画像の前記裏面のうち、前記背景画像の前記表面において前記主画像が印刷されない領域と対向する領域に、前記主画像の縁の色相と同一の色相である補助画像を印刷する、
印刷装置。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷装置であって、
前記補助画像は、前記主画像の明度よりも高い明度である特性と、前記主画像の彩度よりも低い彩度である特性とのうちの少なくとも一方の特性を有する、
印刷装置。
【請求項7】
透明性を有する媒体に主画像と背景画像を重ねた画像を印刷する印刷方法であって、
前記媒体に背景画像を印刷することと、
前記背景画像の表面に主画像を印刷することと、
前記背景画像の裏面に、前記背景画像に対する前記主画像の印刷位置及び前記主画像の色に応じた補助画像を印刷することと、
を有することを特徴とする印刷方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−76371(P2012−76371A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223871(P2010−223871)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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