説明

印刷装置、媒体伸縮検査方法、及び、媒体伸縮検査シート

【課題】印刷時に媒体がインクを吸収することによって膨張する場合でも、媒体の膨張量を評価して、膨張量に対応した印刷を行う印刷装置を提供する。また、該印刷装置を用いて、媒体の膨張量を評価するテストシートを印刷する。
【解決手段】媒体の搬送速度を制御し、第1と第2のヘッド部のうちから印刷に使用するヘッドを選択する制御部であって、前記制御部は、前記第1のドットが形成されてから前記第2のドットが形成されるまでの間に経過する時間における媒体の伸縮量を検査する媒体伸縮検査シートを印刷させ、前記媒体伸縮検査シートの検査結果に応じて、第1のドットが形成されてから第2のドットが形成されるまでの間に経過する時間を変更する制御部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、媒体伸縮検査方法、及び、媒体伸縮検査シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルからインクを噴出して媒体上にインクドットを着弾させることで画像等の印刷を行うインクジェット印刷装置において、着弾後にインクドットが媒体に染みこむことによって、媒体が膨張することがある。一方、インクの噴出位置やタイミングは、膨張していない通常時の状態の媒体を基準として制御されている。したがって、膨張した媒体にインクが噴出されると、インクドットは当初の着弾予定位置からずれた地点に着弾することになり、画像劣化を引き起こす一因となる。
【0003】
そこで、媒体の搬送中に、インクの噴出量が少ないノズルから順にインクを噴出するようにノズル配置を構成することで、搬送中(画像等の印刷中)に媒体が膨張するタイミングをなるべく遅らせて、インクドットの着弾位置のずれを少なくして良好な画像品質を保つ方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−079696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
媒体の膨張に起因するインクドットの着弾位置ずれに関する問題は、印刷時における媒体の膨張量等の膨張特性を把握することができれば、それに対応して媒体の搬送速度やインク噴出タイミングを変えて印刷を行うことで対処することもできる。
しかし、実際の印刷時において、インクを吸収することによる媒体の膨張量を評価することは困難である。そのため、従来の印刷装置ではあらかじめ媒体の膨張特性を考慮した印刷動作を行うことはできず、インクドットの着弾位置のずれによる画像劣化を効果的に抑制することは難しい。
【0006】
本発明では、印刷時に媒体がインクを吸収することによって膨張する場合でも、媒体の膨張量を評価して、膨張量に対応した印刷を行う印刷装置を提供する。また、該印刷装置を用いて、媒体の膨張量を評価するテストシートを印刷することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、(A)搬送方向の上流側から下流側に媒体を搬送する搬送部と、(B)搬送方向と直交する媒体幅方向に配置されたノズル列から、前記媒体にインクを噴出することで媒体上に第1のドットを形成する第1のヘッドと、前記第1のヘッドよりも搬送方向下流側に配置され、搬送方向と直交する媒体幅方向に配置されたノズル列から、前記媒体にインクを噴出することで媒体上に第2のドットを形成する第2のヘッドと、を有するヘッド部と、(C)前記媒体の搬送速度を制御し、前記ヘッド部のうちから印刷に使用するヘッドを選択する制御部であって、前記制御部は、前記第1のドットが形成されてから前記第2のドットが形成されるまでの間に経過する時間における媒体の伸縮量を検査する媒体伸縮検査シートを印刷させ、前記媒体伸縮検査シートの検査結果に応じて、前記第1のドットが形成されてから前記第2のドットが形成されるまでの間に経過する時間を変更する、ことを特徴とする制御部と、を備える印刷装置である。
【0008】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】印刷装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】プリンター1の印刷領域周辺の構成を示す概略図である。
【図3】図3Aは、ヘッドユニット40における複数のヘッドの配列を説明する図である。図3Bは、各ヘッドの下面に配置されるノズル列の様子を説明する図である。
【図4】図4Aは通常時の紙の構造を表した概念図である。図4Bは水分を含んだ場合の紙の構造を表した概念図である。
【図5】インクの吸収によって紙が膨張する様子を表した図である。
【図6】所定の画素データに基づいて、実際に媒体上に形成されるドットの配置を表した図である。
【図7】図6と同一の画素データによって、膨張した媒体上に形成されるドットの配置を表した図である。
【図8】図7の媒体が縮んだ状態におけるドットの配置を表した図である。
【図9】媒体の膨張量を測定するためのフローを示す図である
【図10】第1のドットが形成された媒体伸縮量検査シートaを表した図である。
【図11】第2のドットが形成された媒体伸縮量検査シートAを表した図である。
【図12】図12Aは原点変換前の各ドットについての座標を示す図である。図12Bは原点変換後の各ドットについての座標を示す図である。
【図13】実際に着弾したドットの位置と、基準ドットの理論着弾位置との関係を示す図である。
【図14】媒体伸縮量検査シートAに形成されたドットのずれ量を算出する方法を説明する図である。
【図15】媒体の膨張量を測定するためのフローの変形例である
【図16】第1のドットが形成された媒体伸縮量検査シートbを表した図である。
【図17】第2のドットが形成された媒体伸縮量検査シートBを表した図である。
【図18】図18Aは、インクの噴出による媒体の膨張と時間との関係を示す図である。図18Bは、各色インクを噴出するタイミングを説明する図である。
【図19】第2実施形態で用いられる印刷装置の例を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0011】
(A)搬送方向の上流側から下流側に媒体を搬送する搬送部と、(B)搬送方向と直交する媒体幅方向に配置されたノズル列から、前記媒体にインクを噴出することで媒体上に第1のドットを形成する第1のヘッドと、前記第1のヘッドよりも搬送方向下流側に配置され、搬送方向と直交する媒体幅方向に配置されたノズル列から、前記媒体にインクを噴出することで媒体上に第2のドットを形成する第2のヘッドと、を有するヘッド部と、(C)前記媒体の搬送速度を制御し、前記ヘッド部のうちから印刷に使用するヘッドを選択する制御部であって、前記制御部は、前記第1ドットが形成されてから前記第2のドットが形成されるまでの間に経過する時間における媒体の伸縮量を検査する媒体伸縮検査シートを印刷させ、前記媒体伸縮検査シートの検査結果に応じて、前記第1ドットが形成されてから前記第2のドットが形成されるまでの間に経過する時間を変更する、ことを特徴とする制御部と、を備える印刷装置。
このような印刷装置によれば、印刷時に媒体がインクを吸収することによって膨張する場合でも、媒体の膨張量を評価して、膨張量に対応した印刷を行うことができる。
【0012】
かかる印刷装置であって、前記制御部は、前記第1のドットが形成されてから前記第2のドットが形成されるまでの時間が異なる複数の媒体伸縮検査シートを印刷することが望ましい。
このような印刷装置によれば、媒体の伸縮とインク噴出後に経過した時間との関係が明らかになるため、媒体が膨張を開始する時間を特定することができる。
【0013】
かかる印刷装置であって、それぞれ異なる色のインクを噴出する複数のヘッドを有し、前記制御部は、印刷を開始してから前記媒体が膨張を開始する前に前記複数のヘッドからインクを噴出して画像を形成させるように、前記媒体の搬送速度を調節することが望ましい。
このような印刷装置によれば、媒体が膨張を開始する前に印刷を終了することができるので、印刷ずれによる画質の劣化を防止することができる。
【0014】
かかる印刷装置であって、前記制御部は、印刷を開始してから前記媒体が膨張を開始する前に画像を形成させるように、前記複数のヘッドのうちから印刷に使用するヘッドを選択することが望ましい。
このような印刷装置によれば、媒体が膨張を開始する前に印刷を終了することができるので、印刷ずれによる画質の劣化を防止することができる。
【0015】
また、搬送方向の上流側から下流側に搬送される媒体に、搬送方向と直交する媒体幅方向に配置されたノズル列により構成される第1のヘッドからインクを噴出して、複数の空白領域と、前記媒体上で前記空白領域以外の領域全体にインクが噴出されるベタ塗り領域と、を形成し、前記複数の空白領域のうち所定の領域内に第1のドットを形成し、媒体幅方向に配置されたノズル列により構成される第2のヘッドであり、前記第1のヘッドよりも搬送方向下流側に配置された第2のヘッドから前記媒体にインクを噴出して、前記第1のドットが形成された以外の前記空白領域の領域内に第2のドットを形成し、前記第1のドットの形成位置と前記第2のドットの形成位置とのずれ量を測定し、前記第1のドットが形成されてから前記第2のドットが形成されるまでの間の媒体の伸縮量を検出することを特徴とする、媒体伸縮検査方法が明らかとなる。
このような媒体伸縮検査方法によれば、媒体の膨張量を評価するテストシートを印刷して、印刷時に媒体がインクを吸収することによって膨張する場合における媒体膨張量を評価することができる。
【0016】
かかる媒体伸縮検査方法であって、前記第1のドット、及び、前記第2のドットが形成された媒体とは異なる媒体に、前記第1のヘッドからインクを噴出して、前記空白領域が形成されるべき領域に第3のドットを形成し、前記第2のヘッドからインクを噴出して、前記空白領域が形成されるべき領域であって前記第3のドットが形成された以外の領域に第4のドットを形成し、前記第3のドットの形成位置と前記第4のドットの形成位置とのずれ量を測定し、前記第1のドットの形成位置と前記第2のドットの形成位置とのずれ量から、前記第3のドットの形成位置と前記第4のドットの形成位置とのずれ量を減算することが望ましい。
このような媒体伸縮検査方法によれば、印刷装置の機械的な誤差によって生じる影響を排除して、媒体の伸縮によって生じるドットのずれ量のみを検出することができる。
【0017】
また、複数のヘッドから媒体上にインクを噴出することにより形成される媒体伸縮検査シートであって、媒体の所定の方向、及び、当該方向と直行する方向に所定の間隔で整列する複数の空白領域と、媒体上で前記空白領域以外の領域全体にインクが噴出されるベタ塗り領域と、第1のヘッドからインクを噴出することにより、前記空白領域の領域内に形成される第1のドットと、第2のヘッドからインクを噴出することにより、前記第1のドットが形成された以外の前記空白領域の領域内に形成される第2のドットと、を有する媒体伸縮検査シートが明らかとなる。
【0018】
===印刷装置の基本的構成===
発明を実施するための印刷装置の形態として、インクジェットプリンター(プリンター1)を例に挙げて説明する。
【0019】
<プリンターの構成>
図1は、プリンター1の全体構成を示すブロック図である。
プリンター1は、紙・布・フィルム等の媒体に文字や画像を記録(印刷)する液体噴出装置であり、外部装置であるコンピューター110と通信可能に接続されている。
【0020】
コンピューター110にはプリンタードライバーがインストールされている。プリンタードライバーは、表示装置(不図示)にユーザーインターフェースを表示させ、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換させるためのプログラムである。このプリンタードライバーは、フレキシブルディスクFDやCD−ROMなどの記録媒体(コンピューターが読み取り可能な記録媒体)に記録されている。また、プリンタードライバーはインターネットを介してコンピューター110にダウンロードすることも可能である。なお、このプログラムは、各種の機能を実現するためのコードから構成されている。
コンピューター110はプリンター1に画像を印刷させるため、印刷させる画像に応じた印刷データをプリンター1に出力する。
【0021】
プリンター1は、搬送ユニット20と、ヘッドユニット40と、検出器群50と、コントローラー60と、を有する。コントローラー60は、外部装置であるコンピューター110から受信した印刷データに基づいて各ユニットを制御し、媒体に画像を印刷する。プリンター1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は検出結果をコントローラー60に出力する。コントローラー60は検出器群50から出力された検出結果に基づいて搬送ユニット20等の各ユニットを制御する。
【0022】
<搬送ユニット>
図2は、プリンター1の印刷領域周辺の概略を示した側面図である。
搬送ユニット20は、媒体(例えば紙Sなど)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。この搬送ユニット20は、上流側搬送ローラー23A及び下流側搬送ローラー23Bと、ベルト24とを有する(図2)。不図示の搬送モータが回転すると、上流側搬送ローラー23A及び下流側搬送ローラー23Bが回転し、ベルト24が回転する。給紙ローラー(不図示)によって給紙された媒体は、ベルト24によって印刷可能な領域(ヘッドと対向する領域)まで搬送される。印刷可能な領域を通過して画像が印刷された紙Sは、ベルト24によって外部へ排紙される。なお、搬送中の紙Sはベルト24に静電吸着又はバキューム吸着されている。
【0023】
<ヘッドユニット40>
ヘッドユニット40は、媒体にインクを噴出するためのものである。ヘッドユニット40は、搬送中の媒体に対して各色インクを噴出することによってドットを形成し、媒体上に画像を印刷する。本実施形態のプリンター1はラインプリンターであり、ヘッドユニット40は搬送ユニット20のベルト24の上方に設けられ、各ヘッドは媒体幅分のドットを一度に形成することができる。
【0024】
本実施形態で、ヘッドユニット40は、後述の媒体伸縮検査シートを印刷するための上流側ヘッド群41と、上流側ヘッド群41よりも搬送下流側に位置する下流側ヘッド群42とを有する(図2参照)。上流側ヘッド群41は複数の短尺ヘッド411〜41nから構成され、下流側ヘッド群42は複数の短尺ヘッド421〜42nから構成される。
【0025】
図3Aは、ヘッドユニット40の上流側ヘッド群41、及び。下流側ヘッド群42における複数の短尺ヘッドの配列を説明する図である。図3Bは、各ヘッドの下面に配置されるノズル列の様子を説明する図である。なお、図3A及び図3Bはノズルを上面から仮想的に見た図である。
【0026】
上流側ヘッド群41では、紙幅方向に沿って複数の短尺ヘッド411〜41nが千鳥列状に並んでいる。同様に、下流側ヘッド群42では、紙幅方向に沿って複数の短尺ヘッド421〜42nが千鳥列状に並んでいる(図3A)。そして、各短尺ヘッドには、C(シアン)インクノズル列、M(マゼンタ)インクノズル列、Y(イエロー)インクノズル列、及び、K(ブラック)インクノズル列が形成されている(図3B)。各ノズル列は、インクを噴出するノズルをそれぞれ180個ずつ備えており、該ノズルは紙幅方向に沿って#1〜#180まで一定のノズルピッチ(例えば360dpi)で並んでいる。
【0027】
搬送中の媒体に対して各ノズルから断続的にインク滴が噴出されることによって、各ノズルは、媒体の搬送方向に沿ったドットライン(ラスタライン)を形成する。そして、上流側ヘッド41によって形成されたドット(第1のドットとする)と紙幅方向の同じ位置に、下流側ヘッド42の対応するノズルからインク滴を噴出することにより、第1のドットと同じラスタライン上に第2のドットを形成することができる。
【0028】
<検出器群50>
検出器群50には、ロータリー式エンコーダー(不図示)や、紙検出センサー(不図示)などが含まれる。ロータリー式エンコーダーは上流側搬送ローラー23Aや下流側搬送ローラー23Bの回転量を検出する。ロータリー式エンコーダーの検出結果に基づいて媒体の搬送量を検出することができる。紙検出センサーは給紙中の媒体の先端の位置を検出する。
【0029】
<コントローラー60>
コントローラー60は、プリンターの制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラー60は、インターフェース部61と、CPU62と、メモリー63と、ユニット制御回路64とを有する。
インターフェース部61は、外部装置であるコンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンター1の全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子によって構成される。そして、CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して搬送ユニット20等の各ユニットを制御する。
【0030】
<プリンターの印刷動作>
プリンター1の印刷動作について簡単に説明する。コントローラー60は、コンピューター110からインターフェース部61を介して印刷命令を受信し、各ユニットを制御することにより印刷を行う。
【0031】
プリンター1がコンピューター110から印刷データを受信すると、コントローラー60は、不図示の給紙ローラーを回転させ、印刷すべき紙Sをプリンター内に供給し、印刷すべき紙Sを搬送ベルト24まで送る。続いて、上下流の搬送ローラー23A及び23Bによりベルト24を回転させ、給紙ローラーから送られてきた紙Sを印刷開始位置まで搬送する。紙Sはベルト24上を一定速度で停まることなく搬送され、ヘッドユニット40の下を通過する。
【0032】
紙Sが搬送方向に沿って移動する間に、コントローラー60は、印刷データに基づいてヘッド41からインクを断続的に噴出させる。噴出されたインク滴が紙S上に着弾すると、紙S上にドットが形成され、紙S上には搬送方向に沿った複数のドットからなるドットライン(ラスタライン)が形成される。コントローラー60は、印刷すべきデータがなくなるまで、ヘッド41からインクを噴出させ、ドットラインにより構成される画像を徐々に紙Sに印刷する。そして、印刷すべきデータがなくなると、ベルト搬送によりその紙を排紙する。次の紙に印刷を行う場合は同処理を繰り返し、行わない場合は、印刷動作を終了する。
【0033】
===媒体(紙)の膨張について===
本実施形態における印刷装置では、画像を印刷する媒体として、主に「紙」を使用することを想定している。印刷時には、ヘッドから噴出されたインク滴が媒体である紙に着弾し、浸透・定着することで紙面上にドットを形成し、該ドットが集合することで画像が形成される。
【0034】
<紙の性質>
一般的に、「紙」はセルロース繊維によって構成されており、多数のセルロース繊維が絡まりあって密集することで平面形状の紙が形成される。セルロース繊維は炭水化物が直鎖状に重合した高分子化合物であり、紙の他にも衣料用繊維などに利用されている。
【0035】
図4Aは通常時の紙の構造を概念的に表した図である。また、図4Bは水を含んだ場合の紙の構造を概念的に表した図である。
前述のように、紙は直鎖上のセルロース繊維が複雑に絡まりあった構造をしており、1本1本のセルロース繊維は、互いに水素結合により結びついている(図4A)。通常の状態では、水素結合の結合力によって、紙はその形状(印刷媒体としての紙は平面形状)を保っている。
ここで、紙に水分を加えると、水分子が紙を構成するセルロース繊維間に分散し、セルロース繊維間の水素結合が切断される。水素結合による結合力を失った繊維同士では、お互いの結びつきが弱まるために、絡み合っていた繊維の間隔が広がって膨潤した状態となる。これにより、平面形状の紙が膨張することになる(図4B)。
その後、吸収した水分が乾燥することにより、再び図4Aのような状態となり、紙は元の大きさに戻る(膨張していたものが元の大きさに縮む)。なお、セルロース繊維間の水素結合は、完全に元と同じ結合状態に戻るわけではないため、きれいな平面状になるとは限らず、一度水分を吸収した後に乾燥した紙には「しわ」ができる場合がある。
【0036】
<紙の膨張の仕方>
紙の膨張が、セルロース繊維間の結合力の変化に起因することを説明したが、実際に、印刷媒体としての紙を構成する繊維間で、どの部分の結合がどの程度切断されるのかを把握することは不可能である。そこで、本実施形態では、インクを吸収した紙は一様に膨張するものと仮定して、単純化して説明を行う。
【0037】
図5は、本実施形態においてインクの吸収によって紙が膨張する様子を説明する図である。実線で描かれたものが通常状態の紙の輪郭を表し、破線で描かれたものが水分(インク)を吸収することにより膨張した紙の輪郭を表す。膨張は、紙の中央を基準点として、図5の横方向(X方向)と縦方向(Y方向)に均等に膨張するものとする。例えば紙の中央部にインク滴が1ドット分形成された場合、該インク滴に含まれる水分を吸収することによって、紙はX方向に±nマイクロメートル(μm)ずつ広がり、同様にY方向に±nマイクロメートル(μm)ずつ広がるものとする。
【0038】
===印刷時における媒体膨張の影響===
紙が膨張することによって、印刷される画像がどのような影響を受けるのかについて説明する。
【0039】
<紙が膨張しない場合のドット形成>
まず、媒体(紙)が全く膨張しない場合におけるインクドットの形成について説明する。図6は、ある印刷データを用いて媒体に印刷を行う場合に、実際に媒体上に形成されるドットの配置を表した図である。印刷に使用するデータは、3×3の格子状画素P1〜P9中の所定の画素(図6においてはP1・3・4・5・8・9の6画素)にドットを形成するための画素データとする。当該画素データに応じて媒体上の対応画素に向けてヘッドからインクが噴出されることで、画素データで指定された画素にドットが形成される。なお、当該画素データは便宜上、簡略化したデータであり、実際の印刷に用いられる画素データはこれよりも大きなものである。ここで、P5の画素に形成されるドットが媒体の(紙)中心位置に着弾するものとし、また、ヘッドユニットや搬送ユニットの動作誤差等によるドット着弾位置のずれは発生しないものとする。
【0040】
媒体(紙)が膨張していない状態であれば、画素データで表されるドットの位置と、それに対応して実際に媒体上に形成されるドットの位置とでずれを生じることなく、印刷データどおりの画像を印刷することができる。
【0041】
<紙が膨張した場合のドット形成>
続いて、水分を吸収することによって膨張した状態の媒体(紙)にインクが噴出された場合の、ドット形成の様子について説明する。図7は図6で使用した画素データと同一の画素データを用いて、膨張状態の媒体に印刷を行う場合に、実際に媒体上に形成されるドットの配置を表した図である。また、図8は図7でドットが形成された媒体が乾燥によって縮んだ状態を表す図である。なお、媒体の膨張は、前述のように、媒体の中心位置を基準として、X方向及びY方向に均等に膨張するものとする。
【0042】
膨張後の媒体上の画素P1′〜P9′は、それぞれ膨張前の画素P1〜P9よりも広くなり、また、膨張の基準位置となる中央部の画素P5′以外の画素は位置もずれる。元となる印刷データ通りの画像を印刷するためには、この膨張後の画素P1′〜P9′に合わせてドットを形成する必要がある。すなわち、ヘッドユニットから噴出されたインクドットはP1′〜P9′の各画素の中心位置にそれぞれ着弾しなければならず、本来であれば図7の○で表される位置にドットが形成されるべきである。しかし、媒体の膨張によって、画素データ上の画素(P1〜P9)と、実際の媒体上の画素(P1′〜P9′)とにずれが生じていることから、実際には図7の●で表される位置にドットが形成される。この、○と●との間に生じる相対位置のずれが印刷ずれとなる。
【0043】
所定の時間が経過することにより媒体が乾燥すると、媒体の大きさは元の状態(図6における媒体の大きさ)に戻る。媒体の縮小時は膨張時と同様に、媒体の中心(画素P5′)を基準として縮むものとすると、膨張していた画素(P1′〜P9′)も、(P1″〜P9″)となり、再び画素データ(P1〜P9)に対応する形状に戻る。そして、図7で形成されたインクドットも、媒体の縮小に伴って図8の●で表される位置に移動する。
【0044】
図6と図8とで印刷された画像を比較すると、同じ画素データを用いて印刷を行った場合でも、媒体の膨張後に形成されたインクドットは、媒体の膨張前に形成されたインクドットよりも全体的に内側(基準点寄り)にずれて形成される。
【0045】
===媒体膨張量の測定===
このように、印刷媒体として紙を使用する場合には、印刷の途中でインクを吸収することにより媒体のサイズが変化することから、予定通りの位置にインクドットを着弾させることは難しく、着弾位置にずれが生じることが多くなる。そこで、本実施形態では媒体の膨張量を測定することにより、媒体の膨張特性を調べる。そして、該膨張特性に応じて媒体の搬送速度等の印刷動作の設定を変更することで、なるべく画像の劣化が目立たない印刷を行う。
【0046】
図9に、本実施形態において媒体の膨張量を測定するためフローを示す。
本実施形態ではS101〜S105の工程を経ることで、インクドットずれ量の測定対象となる媒体伸縮量検査シートAを印刷し、該検査シートA上に形成された複数のインクドットの形成位置のずれ量を測定して、媒体上の各地点におけるずれ量から媒体の伸縮量(膨張量)を算出する。以下、各工程の詳細について説明する。
【0047】
<S101:第1のドット形成、及び、ベタ塗り領域形成>
本実施形態では、媒体膨張時におけるインクドットのずれ量から媒体の膨張量を算出する。そのために、まず、搬送方向上流側に位置する上流側ヘッド群41を用いて、着弾位置のずれ量を測定する基準となる第1のドットを形成しつつ、媒体全面にインクを噴出して該インクを吸収させることにより、媒体を膨張させる。
【0048】
図10に、S101において印刷される媒体伸縮量検査シートa(以後、検査シートaとも呼ぶ)を示す。検査シートaには、全体にインクが噴出されるベタ塗り領域と、複数の空白領域、及び、一部の空白領域内に第1のドットが形成される。そして、該検査シートa上に後述する第2のドットが形成されることで媒体伸縮量検査シートAが完成する。また、媒体の搬送方向をX方向とし、媒体の幅方向をY方向とする。
【0049】
空白領域は、媒体上でインクが噴出されない領域(ただし、第1のドットを形成するためのインクは噴出される)である。ベタ塗り領域の上に直接インクドットが形成されると、インクドットが視認しにくくなる場合があることから、インクドットが見やすくなるようにインクドットの周りに白地を残す目的で空白領域が設けられる。また、後述する座標計測時(S103)において、ドットを検出する範囲を探索する際に、該空白領域があることにより、探索作業を効率的に行うことができる。
【0050】
例えば、媒体の全領域中からドットを探索するのではなく、所定の空白領域を目安にして、該領域内のみを探索するようにすることで、形成されたドットを探索する時間を大幅に節減することができる。
【0051】
図10の例では、X方向に等間隔lxでm個の空白領域が形成され、Y方向に等間隔lyでn個の空白領域が形成され、合計でm×n個の空白領域が格子状に形成される。各領域には図10で示されるような番号が付され、一番左上に位置する領域を「11」とし、X方向に21,31,…,m1の順で並び、Y方向に12,13,…,1nの順に並んでいる。すなわち、X方向にm番目、Y方向にn番目の領域が「mn」で表される。空白領域の間隔lx、lyを小さくとるほどインクドットが多く形成されるため、媒体のずれ量の測定点が多くなり、全体としての測定精度を高くすることができる。
【0052】
また、前述のように、インクドットが見やすければ、空白領域の形状は任意であるが、説明の便宜上、図10では正方形としている。一方、個々の空白領域は必要以上に大きくならないようにする。媒体を均等に膨張させるためには、媒体になるべく多くのインクを均等に吸収させる必要があり、インクが噴出されるベタ塗り領域は偏りがない方が望ましいからである。図10の空白領域は1辺が1mmの正方形である。
【0053】
空白領域以外の領域には、全体にまんべんなくインクが噴出されるベタ塗り領域が形成される。ベタ塗り領域は、媒体にインクを吸収させ膨張させる目的で形成される。したがって、ベタ塗り領域は媒体を膨張させるために十分な量の水分を供給することができればよく、CMYKのいずれのインクを用いて形成されてもよい。
【0054】
前述の空白領域のうち、所定の領域内に第1のドットを形成する。本実施形態では、図10の黒丸で表されるように、X方向に1列おきの空白領域内(例えば、11〜1n,31〜3n,…)に第1のドットが1つずつ形成される。該ドットはベタ塗り領域の形成時に同時に形成される。したがって、第1のドットが媒体に着弾する時点では媒体はまだ伸縮(膨張)を開始していないため、媒体膨張の影響によって第1のドットの着弾位置が大きくずれることはない。
【0055】
ここで、第1のドットは、図10のように格子状に整列して形成されるのではなく、千鳥状に並んでもよいし、不規則な場所に形成されてもよい。後述する第2のドットとの位置関係からドットのずれ量、すなわち媒体の膨張量を算出することができればよいことから、形成されるインクドットの位置が印刷データ上で管理できるのであれば必ずしも整列している必要はない。空白領域の形成位置についても同様である。本実施形態では、媒体の膨張量と位置との関係を体系的に検査するために、図10のように整列したドットを形成している。
【0056】
<S102:第2のドット形成>
上流側ヘッド群41の搬送下流側に位置する下流側ヘッド群42を用いて、S101の検査シートaで第1のインクドットが形成されていなかった空白領域内に第2のインクドットを形成し、媒体伸縮量検査シートAを作成する。
【0057】
図11に、S102で印刷される媒体伸縮量検査シートA(以後、検査シートAとも呼ぶ)を示す。図11の白丸で表されるのが第2のドットであり、X方向に1列おきの空白領域内(図11では、21〜2n,41〜4n,…)にそれぞれ1つずつ形成される。
【0058】
S101においてベタ塗り領域が形成されたことで膨張した状態の媒体が下流側に搬送され、下流側ヘッド群42の下まで到達した時に下流側ヘッド群42からインクが噴出されて第2のドットが形成される。媒体膨張後に形成されるため、前述の図6〜図8で説明したように、第2のドットはもともとの着弾予定位置からずれた位置に着弾することになる。このずれ量を測定することで、媒体の伸縮量を検査することができる。
【0059】
また、媒体の伸縮量と時間の関係について、上流側ヘッド群41と下流側ヘッド群42との搬送方向(X方向)の間隔が一定であれば、上流側ヘッド群41により第1のドットが形成されてから下流側ヘッド群42により第2のドットが形成されるまでの経過時間は搬送速度で規定される。つまり、媒体の膨張時間は搬送速度によって規定されることになる。媒体の膨張と時間との関係は、後述の印刷設定の変更に用いられる。
【0060】
<S103:座標計測>
S102で印刷された検査シートAは、プリンター1から排出された後によく乾燥させ、第1のドット、及び、第2のドットの座標を計測する。ドットの座標はドットの重心位置で定義される。計測方法としては、検査シートAをスキャナで読み取って、インクドットを輝度として捉えて各点の座標を求める方法や、顕微鏡を用いて手動で検査シートAから測る方法等がある。計測された「mn」におけるドットの座標データは(Xmn,Ymn)としてメモリー63に記憶され、m×n個の座標データが得られる。
【0061】
ここで、スキャナで読み取る場合には、ドット以外のものをドットと認識して読み取ってしまう場合がある。例えば検査シートAにゴミが付着していた場合や、ベタ塗り領域が空白領域内にはみ出して印刷されてしまった場合には、測定されるべきではないものがノイズとして測定されてしまう。このような場合には、測定された座標データを確認して、ノイズと思われる箇所について手動で再測定したり、該当部分のデータを不採用にしたりして、座標データの修正を行うとよい。
【0062】
座標計測に際して、原点指定と水平補正を同時に行う。本実施形態では、媒体左上の領域「11」に形成されるドットの座標を原点(0,0)として、m×n個のドットの座標が測定される。そして、同じY座標位置に形成される第1のドットを2点抽出して、水平補正を行う。ここで、水平補正とは、搬送時に媒体が斜めにセットされていた等の理由により生じる水平方向(図11におけるX方向)の傾きを補正することを言う。例えば、図11の領域「11」に形成されている第1のドットのY方向座標(Y11)と、領域「31」に形成されている第1のドットのY方向座標(Y31)とを抽出して比較する。S101において第1のドットを形成する際には媒体膨張の影響はないので、初めから水平が保たれていれば、両ドット間のY方向座標は等しくなるはずである。一方、水平が保たれていない場合は両ドット間のY方向座標にずれが生じているので、このずれ分を補正することで、両ドット間の水平を確保する。
【0063】
<S104:原点変換>
S103では計測の便宜上、媒体の一番左上の領域「11」に形成されているドットの座標を原点座標(0,0)として各ドットの座標を計測したが、前述の図5で説明したように、媒体は中心から均等に膨張するものと考えて原点座標(0,0)を媒体の中心位置に変換する
図12Aは原点変換前のドット座標の一例を示す図である。この例ではX方向にlxの間隔で、Y方向にlyの間隔で5×5のドットが形成されており、一番左上の領域「11」に位置するドットの座標(X11,Y11)を原点(0,0)としている。この場合、媒体の中心位置である領域「33」に位置するドットの座標(X33,Y33)は(2lx,2ly)で表され、また、一番右下の領域「55」に位置するドットの座標(X55,Y55)は(4lx,4ly)で表される。
【0064】
次に、図12Bに原点変換後のドット座標を示す。媒体の中心位置である領域「33」に位置するドットの座標を(2lx,2ly)から(0,0)にするために、全てのドットの座標について(−2lx,−2ly)を加算する。例えば、元の原点であった領域「11」に位置するドットの座標(X11,Y11)は(0,0)から(−2lx,−2ly)に変換され、一番右下の領域「55」に位置するドットの座標(X55,Y55)は(4lx,4ly)から(2lx,2ly)に変換される。
【0065】
なお、原点変換時に中心位置として指定されるのは、前述の第2のドットではなく、第1のドットとなるようにする。第2のドットは媒体の膨張の影響を受けやすく、第1のドットよりも着弾位置のずれ量が大きくなる。そのため、第2のドットを原点として指定すると、全ての領域で基準ドットからのずれ量が大きくなり、後述のずれ量算出時に計算負荷が大きくなるおそれがあるからである。
【0066】
<S105:ずれ量の算出>
検査シートAで、座標が計測された領域「11」〜「mn」の各点に形成されたドットについて、各ドットの着弾予定位置と実際の着弾位置とのずれ量を算出する。
検査シートAがm=5、n=5である場合、図12Bで示した各点の座標が、ずれ量算出のための基準となるドット配置を表す基準パターンとなる。すなわち、図12Bの基準パターン上の各ドットの座標が、媒体が膨張しなかった場合に第1のドット、及び、第2のドットが着弾する予定であった理論着弾位置の座標を示すことになる。例えば、媒体中心の領域「33」に位置するドットの理論着弾位置の座標は原点である(0,0)であり、媒体左上の領域「11」に位置するドットの理論着弾位置の座標は(−2lx,−2ly)となる。
【0067】
図13に、実際に検査シートAに着弾したドットの位置と、ドットの理論着弾位置との関係を示す。検査シートAで領域「33」の位置に実際に形成された第1のドットに、図12Bの基準パターンの原点位置をあわせることで、領域「33」に位置する第1のドットの座標が原点(0,0)になる。そして、図13の破線部分の各頂点が、媒体が膨張しなかった場合に第1のドット、及び、第2のドットが着弾する予定であった理論着弾位置を示している。
【0068】
実際に着弾した第1のドット(図13において黒丸で表示)は、S101において媒体の膨張の影響をあまり受けずに形成されているため、理論着弾位置から大きくずれることなく形成されている(例えば領域「11」)。それに対して、媒体膨張後に形成された第2のドット(図13において白丸で表示)は理論着弾位置から大きくずれて形成されている(例えば領域「21」)。前述の図6〜8で説明したように、このドット形成位置のずれが媒体の膨張量を表すことになる。したがって、媒体上の領域「11」〜「55」の各点のずれ量を算出することで、媒体の膨張特性を知ることができる。
【0069】
図14は、検査シートAに形成されたドットのずれ量を算出する方法を説明する図である。S104の原点変換により、媒体中心となる領域「33」に位置する第1のドットが原点(0,0)となっているため、領域「33」のドットのずれ量はゼロである。そして、領域「mn」の位置に形成されている第1のドット(または第2のドット)の、理論着弾位置からのX方向のずれ量をdxmnで表し、Y方向のずれ量をdymnで表す。
【0070】
例えば、領域「32」の位置の基準ドットの理論着弾位置の座標は原点変換により(0,−ly)で表される。これに対して、実際に着弾した第1のドットは、理論着弾位置からX方向にdx32、Y方向にdy32だけずれた位置に形成されている。つまり、領域「32」に形成された第1のドットの座標(X32,Y32)は(dx32,−ly+dy32)で表される。
【0071】
一方、領域「42」の位置の基準ドットの理論着弾位置の座標は原点変換により(lx,−ly)で表され、実際に着弾した第2のドットは、理論着弾位置からX方向にdx42、Y方向にdy42だけずれた位置に形成される。つまり、領域「42」に形成された第2のドットの座標(X42,Y42)は(lx+dx42,−ly+dy42)で表される。第2のドットは媒体膨張後に形成されるため、基準位置からのずれ量dx42,dy42は第1のドットのずれ量dx32,dy32と比較して大きな値となる。
【0072】
なお、媒体上の各点について算出されたずれ量(dxmn,dymn)はメモリー63に記憶され、その後の印刷設定に反映される。
【0073】
本実施形態では、上流側ヘッドにより第1のドットが形成されてから、下流側ヘッドにより第2のドットが形成されるまでの間に生じるずれ量が、媒体の伸縮によるドットのずれ量(dx′mn,dy′mn)となる。
【0074】
例えば、上流側ヘッドからインクが噴出されて領域「32」に第1のドットが形成された後、媒体が搬送方向に搬送され、領域「42」が下流側ヘッドと対向する位置に到達した時に、下流側ヘッドからインクが噴出されて領域「42」に第2のドットが形成される。この間に媒体の伸縮が全く無ければ、領域「42」に形成される第2のドットの座標(X42,Y42)は、領域「32」に形成される第1のドットの座標(X32,Y32)からX方向(搬送方向)にlxだけずれた位置になるはずであり(図14)、
(X42,Y42)=(lx+X32,Y32)
で表される。これに前述の座標に置き換えると、
(lx+dx42,−ly+dy42)=(lx+dx32,−ly+dy32)
となる。
【0075】
しかし、実際には媒体の伸びによって、領域「42」に形成される第2のドットは第1のドットの形成位置から(dx′42,dy′42)だけずれる。そのずれ量は、
(dx′42,dy′42)=(lx+dx42,−ly+dy42)−(lx+dx32,−ly+dy32)=(dx42−dx32,dy42−dy32)
で表される。
【0076】
したがって、媒体の伸縮の影響によるドットのずれ量は、第2のドットの基準点からのずれ量から、第1のドットの基準点からのずれ量を減算することによって得られ、
(dx′mn,dy′mn)=(dxmn−dx(m−1)n,dymn−dy(m−1)n)
として算出される。
【0077】
このように、S103において測定され、S104において原点変換された検査シートA上の各ドットの位置座標と、基準パターンにおけるドットの理論着弾位置の座標とから領域「11」〜「mn」の各点についてのドット着弾位置のずれ量を算出することで、媒体上の各点における伸縮量、及び、伸縮方向を把握することが可能になる。
【0078】
===媒体膨張量の測定の変形例===
プリンター1で検査シートAを作成する場合、印刷時における機械振動やエンコーダー特性等の機械的な誤差により、インクドットの着弾位置がずれてしまう場合がある。一方、前述の測定方法では、このようにして発生したドットずれと、媒体の膨張に起因するドットずれとを判別することはできないため、媒体の正確な膨張量を算出することが難しくなる。
【0079】
そこで、媒体の膨張量を測定する方法の変形例として、前述の検査シートAの他に、ベタ塗り領域を形成しない検査シートBを印刷する。検査シートBにおいて発生するドットずれは、媒体膨張の影響を含まずに、前述のような機械的な誤差の影響のみを含んでいる。そこで、検査シートAにおけるドットずれ分から検査シートBにおけるドットずれ分を引くことで、機械的な誤差の影響を排除して、媒体膨張のみに起因するドットのずれ量を算出する。
【0080】
図15に、変形例における媒体膨張量の測定方法のフローを示す。
図15でS201〜S205の工程は、前述のS101〜S105と全く同様である。本実施形態ではS206〜S211の工程を加えることにより、機械的な誤差を排除した計測を行う。以下、相違点の詳細について説明する。
【0081】
<S206:第1のドットの形成>
S206では、検査シートAが形成されたものと同じ媒体を用いて、図10におけるベタ塗り領域、及び、空白領域を形成せずに、上流側ヘッド群41により第1のドットのみを形成する。
図16に、S206で印刷される媒体伸縮量検査シートb(以後、検査シートbとも呼ぶ)を示す。図16の黒丸で示されるのが、上流側ヘッド群41により形成される第1のドットである。そして、該検査シートb上に第2のドットが形成されることで媒体伸縮量検査シートBが完成する。検査シートbではベタ塗り領域が形成されず、媒体に吸収される水分がほとんどないため、媒体が膨張することはない。
【0082】
図16において破線で示される矩形領域は、図10における空白領域に相当し、この領域内に第1のドットが形成される。該矩形領域の枠線(図10の破線部)は、前述のようにドット探索時の目安となる位置を示す機能を有するため、実際に印刷しておくほうが良い。そして、座標計測時(S208)において該空白領域内を探索することで、各ドットの座標を計測する。
【0083】
検査シートbで第1のドットが形成される位置は、検査シートaで第1のドットが形成される位置と同一である。すなわち、X方向に等間隔2lxで、Y方向に等間隔lyで第1のドットが形成される。また、検査シートAと同様、各領域には図16で示されるような番号が付され、X方向にm番目、Y方向にn番目の領域が「mn」で表される。
【0084】
<S207:第2ドットの形成>
上流側ヘッド群41の搬送下流側に位置する下流側ヘッド群42を用いて、S206の検査シートbにおいて第1のインクドットが形成されていなかった空白領域内に第2のインクドットを形成し、媒体伸縮量検査シートBを作成する。
図17に、S207で印刷される媒体伸縮量検査シートB(以後、検査シートBとも呼ぶ)を示す。図17の白丸で表されるのが第2のドットであり、X方向に1列おきの空白領域内(図17では、21〜2n,41〜4n,…)にそれぞれ1つずつ形成される。媒体が膨張していないため、検査シートBで第2のドットが形成される位置は、検査シートAの場合のように大きくずれることはない。つまり、第2のドットは理論的には着弾予定の位置に着弾するはずであり、着弾位置にずれが生じた場合、それは媒体膨張の影響ではなく、前述の機械振動等による誤差である。換言すると、検査シートBは印刷装置固有の機械的な誤差の影響のみを含むデータである。
【0085】
<S208・S209:座標計測・原点変換>
S103(座標計測)で説明したものと同様の手順により、検査シートBに形成された第1のドット、及び、第2のドットについて、それぞれの座標を測定する。このとき媒体左上の領域「11」に位置するドットを基準として計測を行う(S208)。
その後、S104(原点変換)で説明したものと同様の手順により、原点座標が媒体中心部の第の1ドットの位置になるように、S208で測定された各ドットの座標を変換する(S209)。S209終了後の検査シートBは、S204終了後の検査シートAと同一形式のドット座標データとなる。
【0086】
<S210:ずれ量算出>
S105(ずれ量算出)と同様の手順により、検査シートBで形成された各ドットについて、基準となる理論着弾位置からのずれ量を算出する。前述のとおり、検査シートBには媒体膨張による影響は含まれないため、当該ずれ量は、本実施形態で使用するプリンター1の機械的な誤差に起因するプリンター固有の誤差であるといえる。プリンター固有の誤差はそのプリンターを使用して印刷を行う度に印刷結果に表れることから、検査シートAにも当該誤差が内包されていると考えられる。
そこで、検査シートBの測定結果から、領域「mn」に形成されるドットのずれ量を(dxmn,dymn)として算出することで、媒体上の各点において機械的な誤差のみにより発生するずれ量を検出する。検出された各点のずれ量(dxmn,dymn)はメモリー63に記憶される。
【0087】
<S211:座標データ差分>
S205によって得られた媒体上の各点についてのずれ量(dxmn,dymn)と、S209によって得られた媒体上の各点についての機械的誤差に起因するずれ量(dxmn,dymn)とを差分する。これにより、プリンター固有の機械的誤差によるドットずれの影響を排除したデータが得られ、媒体上の各点における伸縮量及び伸縮方向を、より正確に検出することができるようになる。
【0088】
===第1実施形態===
第1実施形態では、前述の方法により検出された媒体の膨張特性に応じてプリンターの印刷動作設定を変更することで、媒体膨張によって生じるドットずれの影響を目立ちにくくする。
具体的には、媒体の膨張媒体の搬送速度を変更する。搬送ユニット20により、媒体が一定速度で搬送される場合、第1のヘッドからインクが噴出されることにより第1のドットとベタ塗り領域とが形成されてから、下流側ヘッド群42からインクが噴出されることにより第2のドットが形成されるまでの時間も一定となる。すなわち、第1のドットが形成された後に媒体が膨張を開始してから第2のドットが形成されるまでに経過した時間tと、媒体上の各点「mn」における膨張量(dxmn,dymn)との関係が明らかになる。したがって、経過時間tを変更しながら複数種類の検査シートを印刷することで、経過時間tにおける媒体の膨張の様子を調べることができる。
【0089】
図18A及び図18Bに、インクを噴出することによる媒体の膨張量の時間変化の様子を示す。図18Aでは媒体として普通紙を使用する場合に、媒体全面にインクを噴出した場合(前述のベタ塗り領域が媒体全面に形成された場合)の時間経過に対する媒体の最大膨張量を表している。ここで、最大膨張量とは、媒体中心部から最も遠い点における膨張量のことであり、例えば図10においては媒体左上端の領域「11」における膨張量(dx1,dy1)を用いて算出される。
【0090】
図18Aに示されるように、時刻t1において媒体にインクが噴出された後も、しばらくの間媒体は膨張せず元の大きさを保つ。これは、媒体中のセルロース繊維間に水分が浸透するのにある程度の時間を要することから、前述の水素結合がすぐには破壊されないためと考えられる(図4A・B参照)。その後時刻t2を経過したあたりから媒体の膨張が急激に進行し、時刻t3において最大膨張量に達する。最大膨張量に達した後は、乾燥により再び水素結合が形成され媒体の収縮が開始される。
【0091】
以上のことから、媒体の全面に渡って最大量でインクが噴出された場合であっても、時刻t2が経過する以前であれば媒体の膨張量はわずかであることが確認できる。そこで、図18Bのように、時刻t1と時刻t2との間に、印刷に使用するインク(CMYK)を全て噴出してしまえば、媒体が膨張を開始する前にインクドットを形成することが可能になり、着弾位置のずれは生じない。これにより、媒体の膨張に起因する印刷画像の劣化を抑制することができる。
【0092】
つまり、図2に示されるようなヘッド配置を有するプリンターにおいて、媒体が時刻t1に搬送方向最上流側に位置するヘッド41の下を通過してYインクの噴出を開始してから、時刻t2が経過する前に搬送方向最下流側に位置するヘッド42の下を通過してKインクの噴出を完了するように媒体を搬送すれば、媒体の膨張が始まる前に印刷を終了することができる。
【0093】
一方で、ラインプリンターでは媒体の搬送速度が早すぎると印刷の精度が悪くなることがある。したがって、媒体の搬送速度は、時刻t1から時刻t2までの時間を最大限に使って印刷用ヘッド(CMYK)を通過するように制御される必要がある。
【0094】
本実施形態によれば、あらかじめ搬送速度を変えながら数種類の媒体伸縮検査シートを印刷して膨張量と時間の関係を調べておくことで、媒体膨張の影響を受けずに印刷を行うための最適な搬送速度を設定することが可能になる。
【0095】
===第2実施形態===
第2実施形態では、CMYKの各色ヘッドがそれぞれ複数ある場合に、印刷に使用するヘッドのヘッド間距離を調整して印刷を行う。
【0096】
図19は、本実施形態で用いられる複数のヘッドを有する印刷装置の一例である。本実施形態では図19に示すように、第1ヘッド群45〜第4ヘッド群48の4つのヘッド群が搬送方向に並んでいる。それぞれのヘッド群は、図3A及び図3Bに示した配置と同様のCMYKインクを噴出する複数の短尺ヘッドによって構成されている。
【0097】
通常の印刷では第1ヘッド群45の短尺ヘッド(451〜45n)から第4ヘッド群48の短尺ヘッド(481〜48n)までの全てのヘッドを用いて印刷が行われる。しかし、搬送方向最上流側の短尺ヘッド451からインクが噴出された後、搬送方向最下流側の短尺ヘッド451からインクが噴出されるまでに経過する時間が長いと、前述のように媒体が膨張することにより、ドットの着弾位置にずれが生じる場合がある。そこで、コントローラー60は、媒体の搬送速度に応じて印刷に使用するヘッドを適当に選択することで、最初にインクを噴出するヘッドから最後にインクを噴出するヘッドまでの距離を調整する。媒体の搬送速度が一定であれば、ヘッド間の距離が短い方が、最初にドットが形成されてから最後にドットが形成されるまでの時間も短くなり、媒体の膨張の影響を小さくすることができる。
【0098】
例えば、媒体の搬送速度にあわせて、第1ヘッド群45〜第3ヘッド群47までを選択して印刷を行ったり、第2ヘッド群46及び第3ヘッド群47のみを選択して印刷を行ったりすることで、最初にCインクが噴出されてから最後にKインクが噴出されるまでの時間が短くなるように調整する。これにより、図18Bにおける時刻t1から時刻t2の間に、全てのインクが噴出されるようになり、媒体が膨張を開始する前に印刷を終了することができるため、媒体膨張に起因する印刷のずれを抑制することができる。
【0099】
また、噴出するインクの色毎に選択するヘッドを変更したり、各色ヘッドを搬送方向に移動可能にしておき、検査シートによる結果に応じて、ヘッド位置を変更したりすることでヘッド間距離を調整する方法でも良い。さらに、第1実施形態で説明した搬送速度の変更と、本実施形態におけるヘッド間距離の調整を組み合わせることで、媒体膨張の影響をより低減しやすくなる。
【0100】
===まとめ===
本実施形態の印刷装置では、上流側のヘッドにより形成される第1のドットの座標と、下流側のヘッドにより形成される第2のドットの座標とのずれ量を検出することができる検査シートを印刷する。そして、該検査シートによって検出されたドットのずれ量から、媒体が膨張を開始してからの経過時間と媒体の膨張量との関係を明らかにして媒体の膨張特性を評価する。
これにより、第1のドットが形成されてから第2のドットが形成されるまでに要する時間がわかるので、その時間を変更して印刷を行うことで、媒体膨張によって生じるドットの着弾ずれを抑制し、印刷画像が劣化することを防止している。
【0101】
また、媒体が上流側ヘッドと対向する位置を通過してから、下流側ヘッドと対向する位置を通過するまでにかかる搬送時間tを変更しながら、複数種類の検査シートを印刷することで、複数種類の検査シートを印刷することで、経過時間tにおける媒体の膨張の様子を調べることができる。
これにより、上流側ヘッドにより第1のドットが形成されてから、下流側ヘッドにより第2のドットが形成されるまでに経過する時間と、媒体の膨張量との関係が明確なものとなり、媒体が膨張を開始するタイミングを調べることができる。
【0102】
そして、媒体が膨張を開始するタイミングを考慮してインクを噴出することにより、ずれのない印刷を実現する。つまり、媒体が時刻t1に上流側ヘッドの下を通過してインクの噴出を開始してから、媒体の膨張が始まる時刻t2の経過前に、下流側ヘッドの下を通過してインクの噴出を完了するような速度で媒体を搬送すれば、媒体膨張の影響を受けずに印刷をすることができる。
媒体が膨張を開始する前に全てのインクドットが形成され、印刷が完了するため、ドットの着弾位置にずれが生じにくく、印刷画像が劣化するのを防止することができる。
【0103】
また、各色インクを噴出するヘッドがそれぞれ複数ある場合には、複数のヘッドのうちから印刷に使用するヘッドを選択することにより、ヘッド間距離を調整して印刷を行う。つまり、媒体の搬送速度にあわせて、印刷に使用される最上流側のヘッドと最下流側のヘッドとの距離を長くしたり短くしたりすることで、媒体の膨張が始まる前に全てのインク噴出を完了できるような配置のヘッドを選択して印刷を行う。
これにより、前述の場合と同様、媒体が膨張を開始する前に印刷が完了するため、ドットの着弾位置にずれが生じにくく、印刷画像が劣化するのを防止することができる。
【0104】
媒体の伸縮(膨張)量を検出する方法は、上流側のヘッドにより形成される第1のドットの座標と、下流側のヘッドにより形成される第2のドットの座標とのずれ量を検査するための検査シートAを印刷することによって行われる。
具体的には、上流側ヘッドから所定の空白領域を残した媒体全面にインクを噴出(ベタ塗り領域を形成)して媒体を膨張させつつ、同じく上流側ヘッドから空白領域内にインクを噴出して第1のドットを形成する。次に、下流側ヘッドから第1のドットが形成されている以外の空白領域内にインクを噴出して第2のドットを形成する。第2のドットの形成位置は媒体が伸縮(膨張)した分だけ、第1のドットの形成位置からずれることになる。したがって、印刷された検査シートAを用いて、第1のドットと第2のドットとの形成位置のずれ量を算出することにより、媒体の膨張量が求められる。
【0105】
また、該検査シートAの他に、前述のベタ塗り領域を形成しない検査シートBを印刷して検査シートAの結果と比較することで、より精密な媒体膨張量を検出することができる。検査シートBはベタ塗り領域が形成されない以外は検査シートAと同様であり、各ドットの形成位置も検査シートAと同様である。すなわち、検査シートBにおいて生じるドット形成位置のずれは、プリンター1に固有の機械的な誤差(ノズル加工精度等)に起因するものであり、媒体の膨張による影響を含まない。したがって、検査シートAの結果から検査シートBの結果を差分することにより、機械的誤差の影響を排除することができる。
これにより、媒体の膨張のみに起因するドットずれ量を算出することが可能となり、媒体の膨張量をより精密に求めることができる。
【0106】
===その他の実施形態===
一実施形態としてのプリンターを説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0107】
<使用するインクについて>
前述の実施形態では、CMYKの4色のインクを使用して印刷する例が説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ、ホワイト、クリア(透明)等、CMYK以外の色のインクを用いて印刷を行ってもよい。
【0108】
<ノズル列の配置について>
ヘッド部のノズル列は搬送方向上流側からCMYKの配列順で並んでいたが、これに限られるものではない。例えば、ノズル列の順番が入れ替わっていてもよいし、Kインクのノズル列数が他のインクのノズル列数より多い構成などであってもよい。
【0109】
<プリンタードライバーについて>
プリンタードライバーの処理はプリンター側で行ってもよい。その場合、プリンターとドライバーをインストールしたPCとで印刷装置が構成される。
【符号の説明】
【0110】
1 プリンター、20 搬送ユニット、
23A 上流側搬送ローラー、23B 下流側搬送ローラー、
24 ベルト、40 ヘッドユニット、
41 上流側ヘッド群、411〜41n 短尺ヘッド、
41 下流側ヘッド群、421〜42n 短尺ヘッド、
45 第1ヘッド群、46 第2ヘッド群、
47 第3ヘッド群、48 第4ヘッド群、
50 検出器群、60 コントローラー、61 インターフェース部、
62 CPU、63 メモリー、64 ユニット制御回路、
110 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)搬送方向の上流側から下流側に媒体を搬送する搬送部と、
(B)搬送方向と直交する媒体幅方向に配置されたノズル列から、前記媒体にインクを噴出することで媒体上に第1のドットを形成する第1のヘッドと、
前記第1のヘッドよりも搬送方向下流側に配置され、搬送方向と直交する媒体幅方向に配置されたノズル列から、前記媒体にインクを噴出することで媒体上に第2のドットを形成する第2のヘッドと、
を有するヘッド部と、
(C)前記媒体の搬送速度を制御し、前記ヘッド部のうちから印刷に使用するヘッドを選択する制御部であって、
前記制御部は、前記第1のドットが形成されてから前記第2のドットが形成されるまでの間に経過する時間における媒体の伸縮量を検査する媒体伸縮検査シートを印刷させ、前記媒体伸縮検査シートの検査結果に応じて、前記第1のドットが形成されてから前記第2のドットが形成されるまでの間に経過する時間を変更する、ことを特徴とする制御部と、
を備える印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、前記第1のドットが形成されてから前記第2のドットが形成されるまでの時間が異なる複数の媒体伸縮検査シートを印刷することを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の印刷装置であって、
それぞれ異なる色のインクを噴出する複数のヘッドを有し、
前記制御部は、印刷を開始してから前記媒体が膨張を開始する前に前記複数のヘッドからインクを噴出して画像を形成させるように、前記媒体の搬送速度を調節することを特徴とする、印刷装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記制御部は、印刷を開始してから前記媒体が膨張を開始する前に画像を形成させるように、前記複数のヘッドのうちから印刷に使用するヘッドを選択することを特徴とする、印刷装置。
【請求項5】
搬送方向の上流側から下流側に搬送される媒体に、搬送方向と直交する媒体幅方向に配置されたノズル列により構成される第1のヘッドからインクを噴出して、
複数の空白領域と、前記媒体上で前記空白領域以外の領域全体にインクが噴出されるベタ塗り領域と、を形成し、
前記複数の空白領域のうち所定の領域内に第1のドットを形成し、
媒体幅方向に配置されたノズル列により構成される第2のヘッドであり、前記第1のヘッドよりも搬送方向下流側に配置された第2のヘッドから前記媒体にインクを噴出して、
前記第1のドットが形成された以外の前記空白領域の領域内に第2のドットを形成し、
前記第1のドットの形成位置と前記第2のドットの形成位置とのずれ量を測定し、
前記第1のドットが形成されてから前記第2のドットが形成されるまでの間の媒体の伸縮量を検出することを特徴とする、媒体伸縮検査方法。
【請求項6】
請求項5に記載の媒体伸縮検査方法であって、
前記第1のドット、及び、前記第2のドットが形成された媒体とは異なる媒体に、
前記第1のヘッドからインクを噴出して、前記空白領域が形成されるべき領域に第3のドットを形成し、
前記第2のヘッドからインクを噴出して、前記空白領域が形成されるべき領域であって前記第3のドットが形成された以外の領域に第4のドットを形成し、
前記第3のドットの形成位置と前記第4のドットの形成位置とのずれ量を測定し、
前記第1のドットの形成位置と前記第2のドットの形成位置とのずれ量から、前記第3のドットの形成位置と前記第4のドットの形成位置とのずれ量を減算することを特徴とする媒体伸縮検査方法。
【請求項7】
複数のヘッドから媒体上にインクを噴出することにより形成される媒体伸縮検査シートであって、
媒体の所定の方向、及び、当該方向と直行する方向に所定の間隔で整列する複数の空白領域と、
媒体上で前記空白領域以外の領域全体にインクが噴出されるベタ塗り領域と、
第1のヘッドからインクを噴出することにより、前記空白領域の領域内に形成される第1のドットと、
第2のヘッドからインクを噴出することにより、前記第1のドットが形成された以外の前記空白領域の領域内に形成される第2のドットと、
を有する媒体伸縮検査シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−183752(P2011−183752A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53591(P2010−53591)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】