説明

印刷装置および印刷装置による動画データ生成方法

【課題】印刷装置を用いて動画を容易に生成する。
【解決手段】印刷装置100は、メモリカードMC等から画像データを入力すると、その画像データの一覧と、これらの画像データに基づき動画を生成するための種々の設定を記入する設定記入欄とを配置したオーダシートSTを印刷する。ユーザは、このオーダシートST上に設けられた種々のマーキング欄を用いて、各画像データの表示時間や各画像データに施すエフェクトを指定する。印刷装置100は、記入済みのオーダシートSTをスキャナ110によって読み取ると、このオーダシートSTによって設定された内容に応じて動画データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置を用いて動画データを生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スキャナやメモリカードリーダを内蔵した複合機と呼ばれる印刷装置が普及しつつある(例えば、下記特許文献1参照)。このような印刷装置では、メモリカード等から入力した画像データの一覧をオーダシートとして印刷する機能を有するものがある。ユーザは、このオーダシートに設けられたマーキング欄を筆記具で塗りつぶして、スキャナに読み取らせることにより、所望の画像を印刷することができる。
【0003】
また、印刷装置の中には、メモリカード等から読み取った画像データを、USBインタフェース等によって接続された外部記憶装置に記録する機能を有するものもある。このように、近年の印刷装置は、画像データの取り扱いに関する様々な機能を備えつつある。
【0004】
ところで、近年では、デジタルカメラ等で撮影した静止画に種々のトランジションエフェクトを施したりBGMを付加したりすることで、画像データを連続的に表示する簡易的な動画(以下、「簡易動画」という)を生成することが行われている(例えば、下記特許文献2参照)。
【0005】
しかし、このような動画の生成はパーソナルコンピュータを用いて行うことが一般的であるため、コンピュータの操作に不慣れな者が、動画の生成や編集を行うことは、非常に困難であった。
【0006】
【特許文献1】特開2002−137499号公報
【特許文献2】特開2005−303907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような問題を考慮し、本発明が解決しようとする課題は、印刷装置を用いて動画を容易に生成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を踏まえ、本発明を次のように構成した。すなわち、
動画データを生成する印刷装置であって、
画像データを入力する入力手段と、
前記画像データの一覧と、前記動画データの生成に関する設定を記入する設定記入欄とを配置したオーダシートを印刷するオーダシート印刷手段と、
前記設定記入欄に記入がなされたオーダシートを読み取る読取手段と、
前記読み取ったオーダシートを解析し、前記画像データを連続的に表示する動画データを前記設定記入欄に記入された設定に基づき生成する動画データ生成手段と
を備えることを要旨とする。
【0009】
本発明の印刷装置によれば、画像データが連続的に表示される動画データの生成に関する種々の設定を、この画像データの一覧が印刷されたオーダシートを用いて行うことができる。従って、コンピュータの操作に不慣れな者であっても、印刷装置単体で容易に動画を生成することが可能になる。
【0010】
上記構成の印刷装置において、
前記オーダシート印刷手段は、前記設定記入欄として、前記動画データの生成元となる画像データを選択する欄を印刷し、
前記動画データ生成手段は、前記設定記入欄によって選択された画像データを用いて、前記動画データを生成するものとしてもよい。
【0011】
このような構成であれば、動画データの生成元となる画像データを、オーダシートを用いて容易に選択することが可能になる。
【0012】
上記構成の印刷装置において、
前記オーダシート印刷手段は、前記設定記入欄として、前記画像データの表示時間を指定する欄を印刷し、
前記動画データ生成手段は、前記動画データの再生時に前記画像データが表示される時間を、前記設定記入欄によって指定された時間に設定するものとしてもよい。
【0013】
このような構成であれば、オーダシートを用いて、容易に各画像の表示時間を設定することが可能になる。
【0014】
上記構成の印刷装置において、
前記オーダシート印刷手段は、前記設定記入欄として、前記画像データに施す画像処理の種別を指定する欄を印刷し、
前記動画データ生成手段は、前記設定記入欄によって指定された画像処理を前記画像データに施して前記動画データを生成するものとしてもよい。
【0015】
このような構成であれば、各画像データに施す画像処理を、オーダシートを用いて容易に指定することが可能になる。このような画像処理としては、例えば、カラー画像のモノクロ化やセピア調への変換といった色変換処理、矩形状の画像を円形状にするといった変形処理、その他、モザイク処理、トリミング処理、エンボス処理といった種々の処理がある。
【0016】
上記構成の印刷装置において、
前記画像処理とは、前記動画データの再生時において、2つの画像データを切り替えて表示する際の中間画像を生成する処理とすることができる。
【0017】
このような構成であれば、画像データの切替時に施されるトランジションエフェクトを、オーダシートを用いて容易に指定することが可能になる。トランジションエフェクトとしては、例えば、瞬時に画像を入れ替えるカット、境界線の動きに合わせて画像と画像とを入れ替えるワイプ、画像が徐々に消えたり現れたりするフェード、画像に別の画像を差し込んだり引き抜いたりするスライド、その他ディゾルブ、ストレッチ等のエフェクトがある。
【0018】
上記構成の印刷装置において、
前記設定記入欄は、前記画像データ全体に対する設定を行うための全体設定記入欄と、前記画像データ毎に用意され、個々の画像データに対する設定を行うための個別設定記入欄とからなり、
前記動画データ生成手段は、前記個別設定記入欄によって指定された設定を、前記全体設定記入欄によって指定された設定に優先して適用しつつ、前記設定記入欄に記入された設定に基づき前記動画データを生成するものとしてもよい。
【0019】
このような構成であれば、全体設定記入欄によって画像データ全体に対する設定を行っておけば、個々の画像データに対する設定を行わなくても、自動的に全画像データについて種々の設定を行うことができる。また、全体設定記入欄によって設定を行った場合であっても、個別設定記入欄に個々の画像データの設定がなされていれば、個別設定記入欄によって設定された内容が優先して適用されるため、ユーザは、柔軟に種々の設定を行うことが可能になる。
【0020】
上記構成の印刷装置において、
更に、前記各画像データの特徴を識別する特徴識別手段を備え、
前記オーダシート印刷手段は、前記設定記入欄に、前記画像データに施す画像処理を当該印刷装置に自動的に選択させるための自動選択欄を印刷し、
前記動画データ生成手段は、前記読み取ったオーダシートを解析して、前記自動選択欄が指定されていることを検出した場合には、前記識別した各画像データの特徴に応じた画像処理を該各画像データに施す手段を備えるものとしてもよい。
【0021】
このような構成であれば、ユーザは、画像データに施す画像処理を個別に指定しなくても、自動的にその特徴に応じた画像処理が画像データに施されるので、利便性を向上させることができる。このような構成によれば、例えば、画像データに人の顔が撮影されていれば、自動的に、その顔の部分をズームしたりトリミングしたりする画像処理を施すことができる。また、2つの画像データに共通して同一の動体が撮影されていれば、その動体の移動方向に応じて、ワイプやスライドの方向を設定するといった処理を行うこともできる。
【0022】
上記構成の印刷装置において、
前記オーダシート印刷手段は、前記設定記入欄として、前記動画データの表示時に再生される音声を指定する欄を印刷し、
前記動画データ生成手段は、前記設定記入欄によって指定された音声を前記動画データに一体的に記録する手段を備えるものとしてもよい。
【0023】
このような構成であれば、オーダシートを用いて、音声付きの動画を容易に生成することが可能になる。
【0024】
上記構成の印刷装置において、
前記動画データ生成手段は、前記指定された音声の再生時間に応じて前記各画像データの表示時間を調整する手段を備えるものとしてもよい。
【0025】
このような構成であれば、音声の再生時間と動画の再生時間とを同一の時間にすることができるので、好適な動画を生成することが可能になる。
【0026】
上記構成の印刷装置において、
更に、前記入力した画像データの中から、撮影に失敗した画像データを判別する判別手段を備え、
前記オーダシート印刷手段は、前記判別手段によって撮影に失敗したと判別された画像データ以外の画像データの一覧を前記オーダシートに印刷し、
前記動画データ生成手段は、前記撮影に失敗したと判別された画像データ以外の画像データを用いて前記動画データを生成するものとしてもよい。
【0027】
このような構成であれば、動画データの生成元となる画像データから、撮影に失敗した画像データを排除することができるので、生成される動画データの品質を高めることができる。撮影に失敗したか否かは、例えば、手ブレやボヤケ、露出不良の有無に基づき判断することができる。
【0028】
上記構成の印刷装置において、
前記オーダシート印刷手段は、前記設定記入欄として、前記動画データのデータ形式を指定する欄を印刷し、
前記動画データ生成手段は、前記設定記入欄によって指定されたデータ形式に従い、前記動画データを生成するものとしてもよい。
【0029】
このような構成であれば、生成される動画データのデータ形式を柔軟に設定することができる。動画データのデータ形式としては、例えば、AVI、MPEG1、MPEG2、MPEG4、アニメーションGIF、モーションJPEG、スクリーンセーバ(SCR)形式、シナリオファイル等がある。
【0030】
上記構成の印刷装置において、
更に、前記動画データ生成手段によって生成した動画データを、外部記憶装置に出力する出力手段を備えるものとしてもよい。
【0031】
このような構成であれば、生成した動画データを様々な装置に読み込ませて再生することが可能になる。外部記憶装置としては、例えば、ハードディスクドライブ、光ディスクドライブ、半導体メモリ装置等がある。
【0032】
上記構成の印刷装置において、
前記出力手段は、前記動画データに加えて、該動画データの生成元となった画像データを前記外部記憶装置に出力する手段を備えるものとしてもよい。
【0033】
このような構成であれば、鑑賞した動画データ中に気に入った画像があれば、その画像を容易に取得して印刷等を行うことができるので、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0034】
なお、本発明は、上述した印刷装置としての構成のほか、スキャナを備えた印刷装置が動画データを生成する方法や、印刷装置とスキャナとが接続されたコンピュータが動画データを生成するためのコンピュータプログラムとしても構成することができる。かかるコンピュータプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に記録されていてもよい。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスク、メモリカード、ハードディスク等の種々の媒体を利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、上述した本発明の作用・効果を一層明らかにするため、本発明の実施の形態を実施例に基づき次の順序で説明する。
A.印刷装置の構成:
B.動画生成処理:
C.変形例:
【0036】
A.印刷装置の構成:
図1は、実施例としての印刷装置100の外観を示す説明図である。印刷装置100は、いわゆる複合機タイプの印刷装置であり、光学的に画像を読み込むスキャナ110や、画像データの記録されたメモリカードMCを挿入するためのメモリカードスロット120、パーソナルコンピュータが接続される第1USBインタフェース130、外部記憶装置500が接続される第2USBインタフェース135等を備えている。印刷装置100は、スキャナ110によって取り込んだ画像や、メモリカードMCから読み取った画像、パーソナルコンピュータから印刷指示のあった画像等を印刷することができる。
【0037】
印刷装置100は、印刷に関する種々の操作を行うための操作パネル140を備えている。操作パネル140の中央部には、液晶モニタ145が備えられている。この液晶モニタ145には、メモリカードMC等から読み取った画像や、印刷装置100の各種機能を利用する際のGUI(グラフィカルユーザインタフェース)が表示される。
【0038】
本実施例の印刷装置100は、メモリカードMC等から画像データを入力し、その画像データを連続的に表示する簡易動画を生成する機能を有する。印刷装置100は、こうして生成した簡易動画の動画データを、第2USBインタフェース135を介して接続された外部記憶装置500に出力することができる。外部記憶装置500としては、例えば、CD−RやDVD−R等の光ディスク510にデータを書き込む光ディスク装置や、外付け型のハードディスク装置を接続することができる。
【0039】
図2は、印刷装置100の内部構成を示す説明図である。図示するように、印刷装置100は、印刷用紙Pに印刷を行う機構として、インクカートリッジ212を搭載したキャリッジ210や、キャリッジ210を主走査方向に駆動するキャリッジモータ220、印刷用紙Pを副走査方向に搬送する紙送りモータ230等を備えている。
【0040】
キャリッジ210は、シアン、マゼンタ、イエロ、ブラック、ライトシアン、ライトマゼンタの色を現す各インクに対応して、計6種類のインクヘッド211を備えている。キャリッジ210には、これらのインクが収容されたインクカートリッジ212が装着されている。インクカートリッジ212からインクヘッド211に供給されたインクは、図示しないピエゾ素子を駆動することで印刷用紙Pに吐出される。
【0041】
キャリッジ210は、プラテン270の軸方向と並行に設置された摺動軸280に移動自在に保持されている。キャリッジモータ220は、駆動ベルト260を回転させることで、プラテン270の軸方向と平行に、すなわち、主走査方向にキャリッジ210を往復運動させる。
【0042】
紙送りモータ230は、プラテン270を回転させることで、プラテン270の軸方向と垂直に印刷用紙Pを搬送する。つまり、紙送りモータ230は、キャリッジ210を相対的に副走査方向に移動させることができる。
【0043】
印刷装置100は、上述したインクヘッド211やキャリッジモータ220、紙送りモータ230の動作を制御するための制御ユニット150を備えている。制御ユニット150には、図1に示したスキャナ110やメモリカードスロット120、第1USBインタフェース130、第2USBインタフェース135、操作パネル140、液晶モニタ145等も接続されており、これらの動作の制御も行う。
【0044】
制御ユニット150は、CPU160とROM170とRAM180とハードディスク190とによって構成されている。ROM170には、印刷装置100の動作を制御するための制御プログラムが記憶されている。CPU160は、かかる制御プログラムをRAM180に展開して実行することで、後述する種々の処理を行う。CPU160は、本願の「入力手段」、「オーダシート印刷手段」、「読取手段」、「動画データ生成手段」に相当する。
【0045】
ハードディスク190には、後述する動画生成処理によって生成される動画データMDが記憶される。また、ハードディスク190には、メモリカードMCから読み込んだ画像データを記憶させることもできる。なお、本実施例では、動画データMDを記憶する装置としてハードディスクを備えるものとしたが、これに換えてフラッシュメモリ等の半導体メモリを備えるものとしてもよい。
【0046】
B.動画生成処理:
図3は、CPU160が制御プログラムに基づき実行する動画生成処理のフローチャートである。この動画生成処理は、液晶モニタ145に表示されたGUIの中から、簡易動画を生成するためのメニューがユーザによって選択された場合に実行される処理である。
【0047】
この処理が実行されると、まず、CPU160は、メモリカードMCから画像データを入力する(ステップS100)。ハードディスク190に画像データが記憶されている場合には、ハードディスク190から画像データを入力するものとしてもよい。
【0048】
画像データを入力すると、CPU160は、入力した画像データの中から、動画生成の対象となる画像の候補を自動的に選択する画像選択処理を実行する(ステップS110)。詳しくは、入力した各画像データを解析し、手ブレやボヤケ、露出不良の有無を判断し、撮影に失敗していると推測される画像データを動画生成の対象から排除することで、動画生成の対象となる画像の候補を自動的に選択する。
【0049】
この画像選択処理では、CPU160は、各画像データについて、周知の画像処理技術としてエッジ抽出処理を行い、エッジの幅が所定の基準を超えた場合に、手ブレやボヤケがあると判断して動画生成の対象から排除する。また、画像の白色領域や黒色領域の面積が所定の基準を超えた場合に、露出不良であると判断して動画生成の対象から排除する。このように、本実施例では、撮影に失敗していると推測される画像データを動画生成の対象から予め排除するため、生成される動画の品質を向上させることができるとともに、後述するオーダシートに配置する画像データの数を減ずることができるので、ユーザの負担を軽減することができる。
【0050】
次に、CPU160は、上述した画像選択処理によって選択された画像データの一覧と、動画を生成するための種々の設定をユーザが記入する設定記入欄とを配置したオーダシートを生成する(ステップS120)。そして、インクヘッド211や紙送りモータ230、キャリッジモータ220等の印刷機構を制御して、生成したオーダシートを印刷する(ステップS130)。
【0051】
図4は、こうして印刷されたオーダシートSTの一例を示す説明図である。図4に示したオーダシートSTには、設定記入欄として、全ての画像データに適用される設定を行うための全体設定記入欄CAと、画像毎に個別に設定を行うための個別設定記入欄CBとが設けられている。
【0052】
全体設定記入欄CAは、各画像データのデフォルトの表示時間を指定する時間設定欄CA1と、各画像に施すデフォルトのエフェクトを指定するエフェクト設定欄CA2と、最終的に生成される動画データのデータ形式を指定する形式指定欄CA3とから構成されている。
【0053】
時間設定欄CA1には、画像1枚当たりの表示時間を「1秒」、「2秒」、「3秒」のいずれかに設定するためのマーキング欄と、動画全体の再生時間を「3分」、「5分」、「10分」のいずれかに設定することで、その再生時間に応じて個々の画像データの表示時間を調整するマーキング欄と、動画の表示と同時に再生される音楽(BGM)を「A曲」、「B曲」、「C曲」、「選択」のいずれかに設定することで、そのBGMの再生時間に応じて個々の画像データの表示時間を調整するマーキング欄とが含まれる。ユーザは、こうして用意されたマーキング欄の中からいずれか1つのマーキング欄に筆記具でマーキングを施すことにより、画像データのデフォルトの表示時間(切替時間)を設定する。なお、BGMとして「選択」が指定された場合には、ユーザが操作パネル140を用いて所望の曲を選択する処理を、後述するステップS150の後に行う。
【0054】
エフェクト設定欄C2には、各画像データに適用されるエフェクトとして、「なし」、「ランダム」、「ワイプ」、「ズーム」、「おすすめ」のいずれかを設定するためのマーキング欄が含まれる。「なし」とは、特別なエフェクトを行わず、画像データを順番に表示させるモードを表す。「ランダム」とは、すべてのエフェクトの中から、CPU160が適用するエフェクトをランダムに選択するモードを表す。「ワイプ」とは、前の画像が上下左右のいずれかに移動しながら画面外に消え、次の画像が現れるように画像を表示させるモードを表す。「ズーム」とは、画像が徐々に拡大しながら表示させるモードを表す。「おすすめ」とは、予め定められた順番にエフェクトが施されるモードを表す。
【0055】
なお、エフェクトの種類としては、ここで挙げたもの以外にも、例えば、カラー画像のモノクロ化やセピア調への変換といった色変換処理、矩形状の画像を円形状にするといった変形処理、その他、モザイク処理、トリミング処理、エンボス処理などといった静止画に対する画像処理を指定可能とすることができる。また、瞬時に画像を入れ替えるカットや、画像が徐々に消えたり現れたりするフェード、画像に別の画像を差し込んだり引き抜いたりするスライド、その他ディゾルブ、ストレッチ等といった、2つの画像データを切り替えて表示する際の中間画像を生成するトランジションエフェクトを指定可能とすることができる。
【0056】
形式指定欄CA3には、生成する動画データのデータ形式として、「AVI」、「MPEG2」、「MPEG4」、「スクリーンセーバ」のいずれかを設定するためのマーキング欄が配置されている。なお、動画データのデータ形式としては、ここに挙げた形式以外にも、例えば、MPEG1形式や、アニメーションGIF形式、モーションJPEG形式、シナリオデータ形式など、様々なデータ形式を採用可能である。なお、シナリオデータ形式とは、画像データの表示順序や表示時間、表示させる際の効果などを定義したデータ形式である。
【0057】
画像毎に個別に設定を行うための個別設定記入欄CBは、画像データの一覧を表す縮小画像毎に設けられている。各個別設定記入欄CBには、その画像データの表示時間を設定するための個別時間設定欄CB1と、その画像データに施すエフェクトを設定するための個別エフェクト設定欄CB2と、その画像データに重畳して表示する文字を記入するための文字記入欄CB3と、その画像データを動画生成の対象から排除するための排除指定欄CB4とから構成されている。
【0058】
個別時間設定欄CB1は、3つのマーキング欄によって構成され、縮小画像の左側に配置されている。各マーキング欄は、図の右上部の凡例ENに示すように、表示時間として、「1秒」、「2秒」、「3秒」のいずれかを表す。この個別時間設定欄CB1によって表示時間が設定されると、その表示時間が、時間設定欄CA1によって指定されたデフォルトの表示時間に優先して適用される。
【0059】
個別エフェクト設定欄CB2は、4つのマーキング欄によって構成され、縮小画像の右側に配置されている。各マーキング欄は、図の右上部の凡例に示すように、エフェクトの種類として、「ワイプ」、「ズーム」、「スポット」、「クロップ」のいずれかを表す。「ワイプ」、「ズーム」の効果は前述の通りである。「スポット」は、画像全体から指定した領域に画像の表示領域が徐々に変更されるエフェクトである。一方、「クロップ」は、指定した領域のみを表示させるエフェクトである。個別エフェクト設定欄CB2によってエフェクトが設定されると、そのエフェクトが、エフェクト設定欄CA2によって指定されたデフォルトのエフェクトに優先して適用される。なお、個別エフェクト設定欄CB2には、エフェクトを施さないことを指定するためのマーキング欄を設けるものとしてもよい。かかるマーキング欄が選択された場合には、CPU160は、デフォルトのエフェクトも施さないものとする。
【0060】
「スポット」または「クロップ」を指定する場合には、ユーザは、凡例ENに示すように、スポットあるいはクロップを行う領域を縮小画像内に筆記具で記入する。こうすることで、ユーザは、容易に、これらのエフェクトを施す位置を指定することができる。かかる領域は、閉図形であればよく、矩形状でもよいし、曲線状でもよい。CPU160は、印刷した縮小画像とスキャンした縮小画像の色の差分を算出することにより縮小画像内に記入された領域を検出することができる。
【0061】
文字記入欄CB3は、縮小画像の下側に配置されている。ユーザは、その画像データに手書き文字を合成して表示したい場合に、かかる文字記入欄CB3に所望の文字を記入する。もちろん、この文字記入欄CB3には、文字だけではなく、記号やイラスト等を記入してもよい。なお、本実施例では、手書き文字を文字記入欄CB3に記入するものとしたが、スポットやクロップの領域指定と同様に、縮小画像に重畳して手書き文字を記入するものとしてもよい。
【0062】
排除指定欄CB4は、縮小画像の右下に配置されている。ユーザは、その画像データを動画生成の対象から排除したい場合には、かかる排除指定欄CB4に筆記具でチェックを行う。
【0063】
ここで、説明を図3に戻す。上記ステップS130によって、図4に示したオーダシートSTが印刷されると、ユーザは、このオーダシートSTの必要な欄に、筆記具を用いて記入を行う(ステップS140)。ユーザは、記入を終えると、記入済みのオーダシートSTをスキャナ110にセットし、操作パネル140を用いて、所定の読取操作を行う。
【0064】
ユーザによる読取操作を検出すると、CPU160は、スキャナ110を用いて、オーダシートSTの読み取りを行う(ステップS150)。この読み取り処理により、時間設定欄CA1の中の「選択」を示すマーキング欄が塗りつぶされていることを検出した場合には、CPU160は、印刷装置100が記憶しているBGMの一覧を液晶モニタ145に表示し、かかる一覧の中から所望のBGMをユーザに選択させる処理を行う。
【0065】
オーダシートSTを読み取ると、CPU160は、オーダシートSTによって設定された各項目に従い簡易動画の生成を行う(ステップS160)。すなわち、排除指定欄CB4にチェックがなされていない画像データに対して、全体設定記入欄CAや個別設定記入欄CBによって指定されたエフェクトを施し、その表示時間を全体設定記入欄CAや個別設定記入欄CBで指定された時間に設定する。そして、形式指定欄CA3で指定されたデータ形式で、各画像データを連続的に表示する簡易動画を生成し、制御ユニット150のハードディスク190に保存する。
【0066】
CPU160は、ハードディスク190に動画データを保存すると、次に、この動画データを外部記憶装置500に出力する(ステップS170)。外部記憶装置500への出力が完了すると、ハードディスク190に保存しておいた動画データを削除し、上述した一連の動画生成処理を終了する。
【0067】
以上で説明した本実施例の印刷装置100によれば、動画データの生成に関する種々の設定をオーダシートSTを用いて行うことができる。そのため、コンピュータの操作に不慣れな者であっても、印刷装置100単体で容易に動画を生成することが可能になる。また、このオーダシートSTを用いれば、動画生成の元となる画像の選択と、その画像に対して施すエフェクトの選択とを同時に行うことができるので、ユーザの利便性を向上させることができる。更に、オーダシートSTには、縮小画像の周囲に必要なマーキング欄を配置するものとしたため、ユーザは、各マーキング欄の設定内容を一旦把握すれば、直感的に種々の設定を施すことが可能になる。
【0068】
C.変形例:
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこのような実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。例えば、以下のような変形が可能である。
【0069】
(C1)変形例1:
上記実施例では、オーダシートSTの印刷に先立ち、図3のステップS110において画像選択処理を実行することで撮影に失敗した画像を事前に排除するものとしたが、かかる画像選択処理は省略するものとしてもよい。こうすることで、処理の高速化を図ることができる。
【0070】
(C2)変形例2:
上記実施例では、図3のステップS170において、外部記憶装置500に動画データを出力するものとしたが、動画データに加えて、その動画の生成元となった画像データも出力するものとしてもよい。こうすることで、ユーザは、再生した動画の中で気に入った画像を容易に取得して印刷等を行うことが可能になる。
【0071】
(C3)変形例3:
印刷装置100は、オーダシートSTを印刷するにあたり、画像データの一覧を表す縮小画像を、所定の薄い色で印刷するものとしてもよい。こうすることにより、「スポット」や「クロップ」を行う領域を明確に指定することができる。CPU160は、かかるオーダシートSTを読み取る際には、前述の薄い色以外の色を読み取るものとする。こうすることで、縮小画像に重畳して記入されたスポットやクロップの領域を容易に識別することができる。
【0072】
(C4)変形例4:
印刷装置100は、動画データの生成元となった画像データを用いて、光ディスク510のレーベルを生成する機能を備えていてもよい。こうすることにより、ユーザは、光ディスク510にどのような動画が記録されているかを容易に判別することが可能になる。
【0073】
(C5)変形例5:
上記実施例では、文字記入欄CB3に記入された手書き文字は、そのままの状態で画像に合成するものとして説明したが、周知のOCR技術によってテキスト形式に変換した上で合成するものとしてもよい。また、テキスト変換した情報を、画像データのヘッダ情報に記録するものとしてもよい。
【0074】
(C6)変形例6:
オーダシートSTには、上記実施例で説明した種々の欄以外にも、例えば、動画の始点や終点となる画像を指定するための欄や、画像の表示順序を指定するための記入欄、画像の回転角度を指定するための欄、手書き文字をテキストに変換して合成する場合に、そのテキストのフォントを指定するための欄等を設けてもよい。
【0075】
(C7)変形例7:
図4に示したオーダシートSTのエフェクト設定欄CA2において「おすすめ」が選択された場合には、CPU160は、各画像データの特徴を識別して、その特徴に応じて適用するエフェクトを自動的に選択するものとしてもよい。例えば、画像データに所定の面積以上の肌色領域が有れば、人の顔が撮影されていると識別し、このような画像データに対しては、その顔の部分に対して、ズームやトリミング等のエフェクトを行うものとすることができる。その他にも、例えば、連続する2つの画像データに周知の画像処理技術である勾配法を適用して、画像内に共通して撮影された動体の移動量を算出し、その移動量や移動方向に応じて、ワイプやスライドの方向や速度を設定するといった処理を行うことができる。
【0076】
(C8)変形例8:
上記実施例では、静止画から動画を生成する例を説明したが、複数の動画から1つの動画を生成するものとしてもよい。この場合、素材となる動画の1シーンを縮小画像としてオーダシートSTに印刷し、その動画に対して施すエフェクトや再生時間をマーキング欄によって指定する。このような構成であれば、簡易動画以外にも通常の動画を容易に編集することが可能になる。もちろん、動画と静止画とが混在した動画を生成するものとしてもよい。
【0077】
(C9)変形例9:
上記実施例の動画生成処理において動画データの生成を行った後に、CPU160は、液晶モニタ145上にその動画データを再生するものとしてもよい。こうすることで、ユーザは、オーダシートSTを用いて生成した動画を、外部記憶装置500に出力する前にプレビューすることができる。
【0078】
(C10)変形例10:
上記実施例の動画生成処理において、ステップS150でオーダシートを読み取った後に、CPU160は、オーダシートSTによって設定された設定内容の一覧を液晶モニタ145に表示し、ユーザからの所定の操作によって、その設定内容を修正することができるものとしてもよい。こうすることで、オーダシートSTを用いて一旦行った設定を柔軟に修正することが可能になる。
【0079】
(C11)変形例11:
上記実施例では、印刷装置100が単体で動画データの作成を行うものとして説明した。これに対して、例えば、印刷装置100とコンピュータとを接続し、コンピュータに所定のプログラムをインストールすることで、図3に示した動画生成処理と同様の処理を実行するものとしてもよい。このような構成であれば、コンピュータを用いて動画を生成する際にもオーダシートSTを利用することができるので、コンピュータの操作に不慣れな者でも容易に動画を生成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】印刷装置100の外観を示す説明図である。
【図2】印刷装置100の内部構成を示す説明図である。
【図3】動画生成処理のフローチャートである。
【図4】オーダシートSTの一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0081】
100…印刷装置
110…スキャナ
120…メモリカードスロット
130…第1USBインタフェース
135…第2USBインタフェース
140…操作パネル
145…液晶モニタ
150…制御ユニット
160…CPU
170…ROM
180…RAM
190…ハードディスク
210…キャリッジ
211…インクヘッド
212…インクカートリッジ
220…キャリッジモータ
230…紙送りモータ
260…駆動ベルト
270…プラテン
280…摺動軸
500…外部記憶装置
510…光ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画データを生成する印刷装置であって、
画像データを入力する入力手段と、
前記画像データの一覧と、前記動画データの生成に関する設定を記入する設定記入欄とを配置したオーダシートを印刷するオーダシート印刷手段と、
前記設定記入欄に記入がなされたオーダシートを読み取る読取手段と、
前記読み取ったオーダシートを解析し、前記画像データを連続的に表示する動画データを前記設定記入欄に記入された設定に基づき生成する動画データ生成手段と
を備える印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記オーダシート印刷手段は、前記設定記入欄として、前記動画データの生成元となる画像データを選択する欄を印刷し、
前記動画データ生成手段は、前記設定記入欄によって選択された画像データを用いて、前記動画データを生成する
印刷装置。
【請求項3】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記オーダシート印刷手段は、前記設定記入欄として、前記画像データの表示時間を指定する欄を印刷し、
前記動画データ生成手段は、前記動画データの再生時に前記画像データが表示される時間を、前記設定記入欄によって指定された時間に設定する
印刷装置。
【請求項4】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記オーダシート印刷手段は、前記設定記入欄として、前記画像データに施す画像処理の種別を指定する欄を印刷し、
前記動画データ生成手段は、前記設定記入欄によって指定された画像処理を前記画像データに施して前記動画データを生成する
印刷装置。
【請求項5】
請求項4に記載の印刷装置であって、
前記画像処理とは、前記動画データの再生時において、2つの画像データを切り替えて表示する際の中間画像を生成する処理である
印刷装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記設定記入欄は、前記画像データ全体に対する設定を行うための全体設定記入欄と、前記画像データ毎に用意され、個々の画像データに対する設定を行うための個別設定記入欄とからなり、
前記動画データ生成手段は、前記個別設定記入欄によって指定された設定を、前記全体設定記入欄によって指定された設定に優先して適用しつつ、前記設定記入欄に記入された設定に基づき前記動画データを生成する
印刷装置。
【請求項7】
請求項4または請求項5に記載の印刷装置であって、
更に、前記各画像データの特徴を識別する特徴識別手段を備え、
前記オーダシート印刷手段は、前記設定記入欄に、前記画像データに施す画像処理を当該印刷装置に自動的に選択させるための自動選択欄を印刷し、
前記動画データ生成手段は、前記読み取ったオーダシートを解析して、前記自動選択欄が指定されていることを検出した場合には、前記識別した各画像データの特徴に応じた画像処理を該各画像データに施す手段を備える
印刷装置。
【請求項8】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記オーダシート印刷手段は、前記設定記入欄として、前記動画データの表示時に再生される音声を指定する欄を印刷し、
前記動画データ生成手段は、前記設定記入欄によって指定された音声を前記動画データに一体的に記録する手段を備える
印刷装置。
【請求項9】
請求項8に記載の印刷装置であって、
前記動画データ生成手段は、前記指定された音声の再生時間に応じて前記各画像データの表示時間を調整する手段を備える
印刷装置。
【請求項10】
請求項1に記載の印刷装置であって、
更に、前記入力した画像データの中から、撮影に失敗した画像データを判別する判別手段を備え、
前記オーダシート印刷手段は、前記判別手段によって撮影に失敗したと判別された画像データ以外の画像データの一覧を前記オーダシートに印刷し、
前記動画データ生成手段は、前記撮影に失敗したと判別された画像データ以外の画像データを用いて前記動画データを生成する
印刷装置。
【請求項11】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記オーダシート印刷手段は、前記設定記入欄として、前記動画データのデータ形式を指定する欄を印刷し、
前記動画データ生成手段は、前記設定記入欄によって指定されたデータ形式に従い、前記動画データを生成する
印刷装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の印刷装置であって、
更に、前記動画データ生成手段によって生成した動画データを、外部記憶装置に出力する出力手段を備える
印刷装置。
【請求項13】
請求項12に記載の印刷装置であって、
前記出力手段は、前記動画データに加えて、該動画データの生成元となった画像データを前記外部記憶装置に出力する手段を備える
印刷装置。
【請求項14】
スキャナを備えた印刷装置が動画データを生成する方法であって、
画像データを入力し、
前記画像データの一覧と、前記動画データの生成に関する設定を記入する設定記入欄とを配置したオーダシートを印刷し、
前記設定記入欄に記入がなされたオーダシートを前記スキャナによって読み取り、
前記読み取ったオーダシートを解析し、前記画像データを連続的に表示する動画データを前記設定記入欄に記入された設定に基づき生成する
動画データ生成方法。
【請求項15】
印刷装置とスキャナとが接続されたコンピュータが動画データを生成するためのコンピュータプログラムであって、
画像データを入力する機能と、
前記画像データの一覧と、前記動画データの生成に関する設定を記入する設定記入欄とを配置したオーダシートを前記印刷装置によって印刷する機能と、
前記設定記入欄に記入がなされたオーダシートを前記スキャナによって読み取る機能と、
前記読み取ったオーダシートを解析し、前記画像データを連続的に表示する動画データを前記設定記入欄に記入された設定に基づき生成する機能と
をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラム。
【請求項16】
請求項15に記載のコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−241841(P2007−241841A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−65777(P2006−65777)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】