説明

印刷装置および該装置の制御方法

【課題】搬送される記録媒体に対しキャリッジを走査移動させて画像を印刷する印刷装置において、搬送時のジャムをより的確に検知することのできる技術を提供する。
【解決手段】用紙への印刷を実行する前に、用紙を所定のジャム検知位置まで搬送し(ステップS301)、この間における、用紙を搬送する搬送ローラーを駆動するモーターに対する負荷変動の負荷変動の有無からキャリッジと用紙との接触に起因するジャムの検知を行う(ステップS302)。負荷変動が検出されたときにはリア側(給紙トレイ側)に用紙を排出する一方(S311)、負荷変動が検出されなければ、用紙を印刷開始位置まで戻し(ステップS303)、通常の印刷動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定の搬送経路に沿って搬送される記録媒体に対し、走査移動するキャリッジから記録剤を付与することによって画像を印刷する印刷装置およびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
搬送経路に沿って搬送される記録媒体に画像を印刷する印刷装置においては、例えば記録媒体の反りや撓みなどに起因して、記録媒体が搬送経路を外れて装置内部に詰まってしまう、いわゆるジャムが発生することがあり、ジャムを早期に検知するための技術が種々提案されている。例えば特許文献1に記載の技術では、記録媒体の搬送方向に直交する主走査方向に往復移動する記録ヘッドを有するキャリッジと記録媒体との接触に起因するジャムを検知するのにキャリッジの負荷変動を利用している。具体的には、キャリッジの駆動電流値を監視し、その値が所定の閾値を超えるとジャムと判断するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−178268号公報(例えば、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の印刷装置では、使用すべき記録媒体のサイズや厚さが指定されているが、当該装置には適合しない記録媒体が誤って使用されることもあり、これに起因するジャムも問題となっている。例えば、特に小型化が図られている装置では、記録媒体の搬送経路を容易に露出可能な構造とすることが困難な場合があり、ジャムが発生すると装置内部に詰まった記録媒体の取り出しに手間がかかることがある。この点からも、ジャムの早期かつ的確な検知の必要性が高まっている。
【0005】
しかしながら、上記した従来のジャム検知技術においては、記録媒体に画像を印刷するためのキャリッジの走査移動における負荷変動を検出することでジャム検知を行っているため、実際に印刷を行うまでジャム検知を行うことができなかった。その結果、ジャムが検知された時点では既に記録媒体とキャリッジとの接触が発生しており、記録媒体を破損したりキャリッジにダメージを与えるなどの問題を回避することができない場合があった。また、ジャムが検知されるまでの印刷動作において消費された記録剤が無駄になってしまうという問題があった。
【0006】
この発明にかかるいくつかの態様は、搬送される記録媒体に対しキャリッジを走査移動させて画像を印刷する印刷装置において、上記課題を解決して、搬送時のジャムをより的確に検知することのできる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる印刷装置は、上記課題を解決するため、所定の搬送経路に沿って印刷位置に向けて記録媒体を送り込む搬送機構と、前記印刷位置に送り込まれる前記記録媒体に対向配置されたキャリッジと、該キャリッジを前記搬送経路に沿った前記記録媒体の搬送方向と異なる主走査方向に走査移動させる駆動部とを有し、前記キャリッジから前記記録媒体に記録剤を付与して前記記録媒体に画像を印刷する印刷手段と、前記印刷手段による印刷の実行前に、前記搬送機構により前記記録媒体を搬送させて前記搬送方向における前記記録媒体の先端部に前記印刷位置を越えさせ、該搬送の間の前記搬送経路における前記記録媒体のジャムを検知する印刷前ジャム検知動作を実行する制御手段とを備えることを特徴としている。
【0008】
また、この発明にかかる印刷装置の制御方法は、搬送機構により、所定の搬送経路に沿って印刷位置に向けて記録媒体を送り込み、前記印刷位置に送り込まれた前記記録媒体に対し、前記記録媒体の搬送方向と異なる主走査方向に走査移動するキャリッジから記録剤を付与して前記記録媒体に画像を印刷する印刷装置の制御方法であって、上記課題を解決するため、印刷実行前に、前記搬送機構により前記記録媒体を搬送して前記搬送方向における前記記録媒体の先端部に前記印刷位置を越えさせ、該搬送の間の前記搬送経路における前記記録媒体のジャムを検知する印刷前ジャム検知動作を実行することを特徴としている。
【0009】
これらの発明では、キャリッジの走査移動を伴う印刷の開始前にいったん記録媒体を搬送経路に送り込み、その搬送方向における先端部が印刷位置を通過するようにする。記録媒体がカールや折れ曲がり、厚さの違い等のジャム発生要因を有するものである場合、この時点で高い確率でジャムが発生する一方、ここでジャムが発生しなければ以後の印刷動作における搬送でも適正に行える確率が高い。したがって、予め記録媒体を印刷位置を越えて搬送し、この間のジャム発生の有無を検知することにより、後の印刷に生じうるジャムを予め検知することが可能となる。これにより、印刷時のジャム発生に起因する記録媒体や装置へのダメージ、記録剤の無駄な消費などの問題を未然に回避することが可能である。
【0010】
この発明では、印刷前ジャム検知動作においてジャムが検知されなかったとき、記録媒体を、該記録媒体に対して印刷を開始する位置まで移動させ、該記録媒体に対して画像を印刷することが望ましい。これにより、いったん印刷位置を越えるまで実際に搬送されてジャムを生じなかった記録媒体に対して印刷が行われるので、印刷時のジャム発生の確率を大きく低減することができる。
【0011】
また、当該印刷装置が、印刷位置を通過した記録媒体を搬送経路に沿って排出する排出機構を備える場合には、印刷前ジャム検知動作では、印刷位置からの記録媒体の先端部の搬送距離を印刷位置から排出機構までの搬送経路の長さ以上とするようにしてもよい。このようにすると、記録媒体が搬送経路に沿って適正に搬送されていればその先端部が排出機構に到達しているはずである。したがって、この間ジャムが発生しなければ、当該記録媒体は排出機構によって装置外部へ排出可能となる。印刷前ジャム検知動作においてこのように装置外部へ排出可能な位置まで記録媒体を予め搬送しておくことにより、印刷動作において記録媒体を適正に排出できるか否かを予測することが可能であり、特に装置内部に記録媒体が詰まって取り出せなくなるのを防止することができる。
【0012】
なお、上記効果を得るには、原理上は印刷前ジャム検知動作における印刷位置からの記録媒体の先端部の搬送距離を印刷位置から排出機構までの搬送経路の長さと等しくすればよいことになるが、実際の装置では搬送経路上で記録媒体の多少の撓みは反りは許容されるように構成されることが好ましく、このような場合に対応するには、記録媒体の搬送距離を、印刷位置から排出機構までの搬送経路の長さよりも若干長くすることが望ましい。
【0013】
また、ジャム検知動作においては、例えば記録媒体の搬送に伴って搬送機構に加わる負荷の大きさに基づいて記録媒体のジャムを検知することができる。搬送経路において記録媒体のジャムが発生すれば、正常時に比べて搬送機構に加わる負荷が大きく変化すると考えられる。したがって、搬送機構に加わる負荷の大きさからジャムの有無を検知することが可能である。このようなジャム検知技術では、搬送される記録媒体に大きなダメージを与えることなく印刷前ジャム検知動作を行うことが可能である。
【0014】
また、ジャム検知動作においては、例えば駆動部によるキャリッジの駆動に起因して変化する物理量に基づいて記録媒体のジャムを検知することも可能である。記録媒体が反りや撓みなどのジャム発生要因を有していれば、キャリッジの走査移動時にキャリッジに接触することになり、キャリッジの移動に伴う物理量の変化としてこれを検出することができる。
【0015】
例えば、駆動部によるキャリッジの駆動トルク、駆動部が消費するエネルギー量およびキャリッジの移動速度のうち少なくとも1つを上記した物理量として、その検出結果に基づいてジャムの有無を検知することができる。これらの物理量はいずれも、キャリッジが記録媒体に接触することなく移動した場合と、キャリッジが記録媒体との接触によってその移動が阻害された場合とで大きく異なる値を取り得る物理量である。したがって、これらの物理量を本発明におけるジャム検知に好適に用いることができる。
【0016】
また、例えば、複数枚の記録媒体に画像を印刷する連続印刷ジョブを実行する場合には、該連続印刷ジョブでは、複数枚のうち最初の1枚を含む一部の記録媒体への印刷前に、印刷前ジャム検知動作を実行するようにしてもよい。通常の使用態様では、印刷を行うべく用意された複数枚の記録媒体は同種のものであるから、1枚ごとにジャムの発生確率が大きく異なることは考え難い。したがって全ての記録媒体について印刷前ジャム検知動作を行う必要は必ずしもないと考えられる。また、用意された複数の記録媒体が例えばサイズ違いのようなジャム発生要因を有するものである場合、ジャムは1枚目から生じるはずである。この意味において、複数枚の記録媒体のうち少なくとも最初の1枚を含む一部のみについて印刷前ジャム検知動作を行うようにすれば、以後の記録媒体におけるジャム発生を防止しつつ、1枚ごとに印刷前ジャム検知動作を行う場合よりも印刷のスループットを向上させることができる。
【0017】
また、1枚の記録媒体に画像を印刷する単葉印刷ジョブを実行する場合には、該単葉印刷ジョブでは、印刷前ジャム検知動作を伴う印刷と、印刷前ジャム検知動作を伴わない印刷とを選択的に実行することができるようにしてもよい。記録媒体1枚だけに印刷を行うケースとして、正規の印刷を行う前に仕上がりやレイアウト等を確認するためのテスト印刷が考えられる。このようなケースでは、正規の記録媒体とは異なる種類の記録媒体が使用されることもあるため、印刷前ジャム検知動作を行うことが望ましい。一方で、正規の記録媒体に対して、1枚だけ印刷を行う場合もある。印刷前ジャム検知動作を伴う印刷と印刷前ジャム検知動作を伴わない印刷とを選択可能にすることで、これらの両方のケースに対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態としてのフォトプリンターの主要部を示す図。
【図2】図1のフォトプリンターの電気的構成を示すブロック図。
【図3】図1のフォトプリンターにおける印刷動作を示すフローチャート。
【図4】印刷動作における用紙搬送の様子を模式的に示す図。
【図5】紙ジャム排出動作を示すフローチャート。
【図6】印刷前ジャム検知動作の第1実施形態を示すフローチャート。
【図7】印刷前ジャム検知動作における搬送経路上の用紙位置を示す図。
【図8】搬送経路上における用紙の姿勢の例を示す図。
【図9】印刷前ジャム検知動作の第2実施形態を示すフローチャート。
【図10】このフォトプリンターにおける起動処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明にかかる印刷装置の一実施形態としてのフォトプリンターの主要部を示す図である。また、図2は図1のフォトプリンターの電気的構成を示すブロック図である。以下の説明の便宜のために、X、YおよびZ座標軸方向を図1のように定義する。
【0020】
このフォトプリンター1は、給紙トレイ90にセットされた記録媒体としてのシート状の用紙Pを1枚ずつ所定の搬送経路Fに沿って搬送する。そして、印刷データに対応して用紙の搬送方向Dpに直交する主走査方向に走査移動するキャリッジ10の下面中央部に設けられた印刷ヘッド11から記録剤としてのインクを用紙Pに吐出することで、用紙Pに印刷データに対応する画像を形成する。以下、各部の構成をより詳しく説明する。
【0021】
搬送経路Fに沿って、用紙搬送方向Dpの上流側から順に、給紙ローラー21、搬送ローラー31および排紙ローラー43が設けられており、これらが制御部80からの制御指令に応じて動作することによって用紙Pが搬送経路Fに沿って搬送される。具体的には、給紙ローラー21は円板の外周面の一部が切り欠かれた外形を有しており、給紙モーター25によって回転駆動される。制御部80からの制御指令に応じて給紙モーター25が回転すると、給紙ローラー21が回転して給紙トレイ90にセットされた用紙Pのうち最も上にある1枚の表面に当接し、これにより1枚の用紙Pが搬送経路Fに送り込まれる。
【0022】
給紙ローラー21によって搬送経路Fに送り込まれた用紙Pは、用紙搬送方向Dpにおいて給紙ローラー21の下流側に設けられた搬送機構30により印刷ヘッド11直下の印刷位置PPに送り込まれる。搬送機構30では、搬送経路Fを挟んで搬送ローラー31と従動ローラー32とが対向配置されており、搬送ローラー31は搬送モーター35によって回転駆動される。制御部80からの制御指令に応じて搬送モーター35が回転すると、搬送ローラー31と従動ローラー32とが当接してなる搬送ニップから印刷位置PPに向けて用紙Pが送られる。
【0023】
また、給紙ローラー21よりも下流側かつ搬送機構30よりも上流側位置で搬送経路F上における用紙Pの有無を検出する紙後端センサー51が設けられている。後に詳しく説明するが、紙後端センサー51はこの実施形態では主として搬送方向Dpにおける用紙Pの後端部が当該位置を通過したか否かを判断するために用いられる。紙後端センサー51としては例えば、反射型フォトセンサーあるいはフォトインタラプターのような光学的検出方法によるもの、マイクロスイッチのような機械的検出方法によるものなどを用いることができる。
【0024】
印刷位置PPでは、搬送経路Fを挟んでキャリッジ10と用紙ガイド91とが所定のギャップを隔てて対向配置されている。キャリッジ10は、制御部80により制御されるキャリッジ駆動機構15によって主走査方向(図1では紙面に垂直なY方向)に往復走査移動される。このとき、印刷データに対応して印刷ヘッド11からインクが吐出され、該インクが印刷位置PPを通過する用紙Pに付着することで印刷データに応じた画像が形成される。印刷位置PPでは、用紙ガイド91上面のうち印刷ヘッド11との対向位置に相当する部分が周囲よりもキャリッジ10側に若干盛り上がって、インクが着液する用紙Pをバックアップするバックアップ部位92となっている。印刷は公知のインクジェット方式によることができるがこれに限定されるものではない。図1では、キャリッジ10として一体的に走査移動する部位を、ドットパターンのハッチングを付すことにより他の部分と区別して示している。
【0025】
キャリッジ10の1回の走査移動によって、X方向における印刷ヘッド11の長さに対応する幅を有する帯状の画像が用紙Pに形成される。したがって、搬送機構30による印刷位置PPへの用紙Pの送り込みと、キャリッジ10の走査移動とを交互に実行することで、用紙P上に二次元画像を形成することができる。
【0026】
なお、この実施形態では、図2に示すように、主走査方向におけるキャリッジ10の位置を検出するためのエンコーダー14が設けられている。エンコーダー14としては例えば、装置内におけるキャリッジ10の位置情報を出力するリニアエンコーダーまたはキャリッジ駆動機構15に設けられたモーター(図示省略)の回転位相を出力することで間接的にキャリッジ10の位置を示すロータリーエンコーダーなどを用いることができる。制御部80は、エンコーダー14の出力からキャリッジ10の位置を把握することができるとともに、例えばエンコーダー14から出力されるキャリッジ10の移動に同期したパルスの出力間隔からキャリッジ10の移動速度を把握することができる。
【0027】
印刷位置PPを通過した用紙Pは搬送ローラー31によってさらに搬送され、用紙搬送方向Dpにおいて印刷位置PPの下流側に設けられた排出機構40に送り込まれる。排出機構40は、搬送経路Fに沿って配置されY方向に平行な回転軸周りに回転自在の第1ギザローラー41および第2ギザローラー42と、搬送経路Fを挟んで第2ギザローラー42と対向配置された排紙ローラー43とを備えている。排紙ローラー43は搬送モーター35により回転駆動される。したがって、搬送ローラー31と排紙ローラー43とは連動して回転する。第1および第2ギザローラーの表面には多数の突起が設けられており、これにより印刷直後の用紙Pの表面(印刷面)に対する接触面積を小さくして、画像の汚れを防止している。このように構成された排出機構40により、印刷位置PPを通過した用紙Pは図示を省略する排紙トレイに排出される。
【0028】
上記以外にも、図2に示すように、このフォトプリンター1は入力部71および表示部72を有するインターフェース部70を備えている。入力部71は、画像を記憶する記憶媒体や外部装置などからデータを受け付ける入力インターフェース、ユーザーによる操作入力を受け付けるキーボードや操作ボタン類などを備えており、これらの入力情報を制御部80に伝達する。また、表示部72は例えば液晶パネルからなるディスプレイを備えており、制御部80からの制御指令に応じて、印刷すべき画像に対応するプレビュー画像、操作説明やエラーメッセージなどユーザーに提供すべき種々の視覚情報がディスプレイに表示される。
【0029】
なお、図1においては、右方、つまり(+X)方向側の端面が本フォトプリンター1の前面(フロント面)に相当しており、左方、つまり(−X)方向側の端面が背面(リア面)に相当している。すなわち、このフォトプリンター1では、装置リア側上部に設けられた給紙トレイ90から用紙Pが装置内へ取り込まれて画像が印刷され、印刷後の用紙Pが装置フロント側の排紙トレイに排出される。
【0030】
次に、このように構成されたフォトプリンター1における印刷動作について説明する。このフォトプリンター1では、ユーザーまたは外部のホストコンピューターから印刷動作の実行が指示されると、制御部80がその指示内容に応じた印刷ジョブデータを生成するとともに装置各部を制御して以下に示す印刷動作を実行することで、指定された画像を用紙Pに印刷する。
【0031】
図3は図1のフォトプリンターにおける印刷動作を示すフローチャートである。また、図4は印刷動作における用紙搬送の様子を模式的に示す図である。図4においては、理解を容易にするために、実際には曲線で表される搬送経路Fを直線に展開して示すとともに、各部の形状を簡略化している。
【0032】
この印刷動作では、まず給紙トレイ90にセットされた1枚の用紙Pを印刷開始位置へ送り込む給紙処理を行う(ステップS101)。より具体的には、給紙ローラー21を回転させて給紙トレイ90から1枚の用紙Pをピックアップし、これを搬送機構30により印刷開始位置まで搬送する。この印刷開始位置は、搬送方向Dpにおける用紙Pの先端部Paがキャリッジ10の下方に僅かにさしかかるような位置である。
【0033】
図4に示すように、時刻T1において給紙ローラー21および搬送ローラー31が回転駆動され、用紙先端部Paが紙後端センサー51直下の検出位置に到達する時刻T2において紙後端センサー51の出力が紙有りを示すHレベルになる。そして、用紙先端部Paが、搬送ローラー31と従動ローラー32とが形成する搬送ニップNtに到達する時刻T3以後は、搬送ローラー31の回転によって用紙Pが搬送され、先端部Paがキャリッジ10下方の印刷開始位置に到達する時刻T4においてローラーの回転駆動がいったん停止される。
【0034】
続いて、用紙Pへの印刷を実行する前に、所定の判断基準に基づいて後述するジャム検知動作を行う必要があるか否かを判断し(ステップS102)、その必要がある場合には印刷前ジャム検知動作を実行する一方(ステップS103)、必要がなければこれをスキップする。後述するように、複数枚の用紙に画像を印刷する場合でも、この判断は用紙1枚ごとに行われる。印刷前ジャム検知動作の要否の判断基準および印刷前ジャム検知動作の内容については後に詳しく説明することとし、ここではまず用紙Pに画像を印刷するための動作について説明する。
【0035】
用紙Pの先端部Paが印刷開始位置に到達した後は、給紙ローラー21を動作させず、搬送モーター35の回転による搬送ローラー31および排紙ローラー43の回転により用紙Pを搬送経路Fに沿って搬送しながら、その都度キャリッジ10を動作させることで印刷を行う。このとき、搬送ローラー31による1回の用紙搬送量(紙送り量)は一定ではなく、印刷すべき画像の位置に応じて動的に設定される。具体的には、制御部80は、形成すべき画像の内容に対応する印刷データに基づいて、用紙Pを搬送経路F上における現在の位置から次に印刷を必要とする位置までの距離を算出し、そのために必要な紙送り量を設定する(ステップS104)。なお、紙送り量、すなわち搬送方向Fに沿った用紙Pの搬送距離については、例えば搬送ローラー31の回転量や搬送モーター35に与えられた駆動パルス数等に基づいて求めることができる。
【0036】
写真画像のように搬送方向Dpに沿って連続的な広がりを有する画像を印刷するときにはX方向における印刷ヘッド11の長さに対応する一定のピッチで用紙Pを搬送すればよい。一方、例えば字間または行間の広いテキスト画像のように搬送方向Dpに断続する画像では、このように紙送り量を動的に設定して印刷不要な領域については用紙Pを一気に進ませることにより、印刷に要する時間を短縮することができる。
【0037】
続いて、用紙Pを搬送方向Dpに沿って先に設定された紙送り量の分だけ進ませる紙送り処理を行う(ステップS105)。これにより、用紙Pのうち新たに画像を印刷すべき領域が印刷ヘッド11の直下位置に移動してくることになる。この状態で、キャリッジ10を主走査方向に走査移動させながら印刷データに応じて印刷ヘッド11からインクを吐出させる印刷処理を行う(ステップS106)。これにより、用紙Pに新たな帯状画像が印刷される。
【0038】
このとき、キャリッジ駆動機構15における負荷変動に基づいてジャム検知を行う(ステップS107)。具体的には、キャリッジ10の移動に同期してエンコーダー14から出力されるパルスの発生間隔が所定の閾値を超えたときに、負荷変動があったものと判断する。もしキャリッジ10と用紙ガイド91との間で紙詰まり(ジャム)が生じると、キャリッジ10と用紙Pとの接触に起因してキャリッジ駆動機構15からみた負荷が増大することになる。つまりキャリッジ駆動機構15からみた負荷が増大したことをもって、キャリッジ10と用紙ガイド91との間でジャムが発生したと判断することができる。この実施形態では、キャリッジ駆動機構15はキャリッジ10を一定速度で走査移動させるべく駆動するが、ジャムに起因して負荷が増大するとキャリッジ10の移動速度が低下することに鑑み、キャリッジ10の移動速度を示すエンコーダー14の出力パルスの間隔を用いてジャム検知を行う。なお、この明細書では、後に説明する「印刷前ジャム検知動作」と区別するために、印刷処理中のキャリッジ負荷変動を利用したジャム検知を「印刷時ジャム検知」と称する場合がある。
【0039】
この場合のジャム検知方法としては、上記以外にも、例えば本願出願人が先に開示した特開2005−178268号公報に記載の技術を適用することが可能である。つまり、この実施形態では、キャリッジ10の駆動によって変化する物理量のうちキャリッジ10の移動速度を表すエンコーダー14の出力パルス間隔に基づいて印刷処理中のジャム検知を行っているが、他の物理量、例えばキャリッジ駆動機構15が消費するエネルギー(より具体的には消費電流や消費電力)やキャリッジ10に対する駆動トルクの変化に基づいてジャム検知を行うようにしてもよい。
【0040】
また、キャリッジ駆動機構15からみた負荷変動に限らず、例えば搬送モーター35からみた負荷の変動からジャム検知を行うようにしてもよい。要するに、用紙Pがキャリッジ10と接触することなく搬送経路Fに沿って正常に搬送された場合に比べて、用紙Pがキャリッジ10に接触してキャリッジ10または用紙Pの移動が阻害された場合に大きく増大するような物理量を選択するとともに、正常な搬送において当該物理量が取り得る数値範囲よりも大きな値を閾値として設定しておき、当該物理量がこの閾値を超えたときにジャムありと判断することができる。逆に、ジャム発生時に大きく低下する物理量に対し正常な数値範囲より低い閾値を設定し、当該物理量が閾値を下回ったことをもってジャムありと判断してもよい。
【0041】
ジャムが検知された場合に実行される紙ジャム排出動作(ステップS111)については後に説明する。ジャムが検知されなければ、当該用紙Pに対応する印刷データの残りがあるか否かを判断し(ステップS108)、印刷データの残りがあれば上記したステップS104ないしS107の処理を繰り返す。この間、図4に示すように、搬送ローラー31および排紙ローラー43の作動による紙送り処理とキャリッジ10の作動による印刷処理とが交互に実行される。印刷データの残りがなければ当該用紙Pに対する印刷は問題なく完了したので、排紙ローラー43を回転させて印刷後の用紙Pを装置フロント側に設けた排紙トレイへ排出するフロント側排出処理を行う(ステップS109)。
【0042】
こうして1枚の用紙Pへの印刷が終了すると、次の用紙に印刷すべき画像があるか否かを判断する(ステップS110)。次の画像がある場合にはステップS101に戻り、給紙トレイ90にセットされている次の用紙Pに対して上記と同様にして画像を印刷する。このときも、印刷の実行前にはジャム検知動作の要否判断がなされ(ステップS102)、必要に応じて印刷前ジャム検知動作が実行される(ステップS103)。全ての画像がそれぞれ用紙Pに印刷されることで、印刷動作は正常に終了する。
【0043】
ここで、装置各部の位置関係は次の条件を満たすように定められている。大型のプリンターとは異なり、この種のフォトプリンター1では装置の小型化・軽量化に対する要請が強く、ジャム解消のために搬送経路を露出させることが可能な構造とすることが難しい。そこで、この実施形態では、第1に装置内部に用紙が詰まり取り出せなくなるようなジャムができるだけ発生することのないように、また第2にジャム発生時には可能な限り用紙を装置外へ排出することができるように、各部の構造および動作シーケンスが構成されている。
【0044】
まず、排紙ローラー43と第2ギザローラー42とが当接してなる排紙ニップNeに用紙先端部Paが到達する時刻T5よりも、用紙後端部Pbが搬送ニップNtを抜ける時刻T7の方が後になるように、つまり、用紙先端部Paが排紙ニップNeに到達した時点では、用紙Pの少なくとも一部が搬送ニップNtに残っているようにする。言い換えれば、搬送ニップNtから排紙ニップNeまでの搬送経路Fの長さL1が搬送方向Dpに沿った用紙長さLpよりも短くなるようにする。用紙先端部Paが排紙ニップNeに到達する前に後端部Pbが搬送ニップNtを抜けてしまうと、以後は用紙Pを排紙ニップNeに送り込むための搬送力を用紙Pに与えることができないからである。上記条件を満たすようにすることで、正常な紙搬送においては用紙Pが搬送ニップNtおよび排紙ニップNeの両方でニップされているタイミング(時刻T5からT7まで)が存在し、これにより用紙Pを確実に搬送することが可能となる。
【0045】
より好ましくは、用紙後端部Pbが紙後端センサー51による検出位置を通過する時刻T6が時刻T5よりも少し後になるように、検出位置から排紙ニップNeまでの搬送経路Fの長さL2が搬送方向Dpに沿った用紙長さLpよりも短くなるようにする。このようにすると、正常な紙搬送においては、紙後端センサー51の出力がHレベルからLレベルに変化する時刻T6には用紙先端部Paは既に排紙ニップNeに到達している。
【0046】
したがって、紙後端センサー51の出力がLレベルに変化するまでにジャムが発生しなければ、少なくとも用紙先端部Paは排紙ニップNeに到達していると考えられ、その後にジャムが発生したとしても、それが用紙先端部Paの搬送異常に起因するものである可能性は低い。例えば用紙後端部Pbが反っていたり折れ曲がっていた場合にこのようなジャムが発生しうる。一方、時刻T6よりも前にジャムが発生したとすれば、用紙先端部Paが正しく排紙ニップNeに到達していない可能性が高いと言うことができる。
【0047】
このように、紙後端センサー51の検出位置から排紙ニップNeまでの搬送経路Fの長さL2を搬送方向Dpに沿った用紙長さLpよりも短くすることで、ジャムの発生箇所をある程度推定することができる。この点に鑑み、この実施形態では印刷処理中にジャムが検知された時に実行する紙ジャム排出動作(ステップS111)の内容を以下の通りとしている。
【0048】
図5は紙ジャム排出動作を示すフローチャートである。キャリッジ10の負荷変動からジャムの発生が検知されると、まず直ちにキャリッジ10の退避処理を行う(ステップS201)。退避処理においては、キャリッジ10の走査移動を停止させるとともに、その時点までの移動方向とは反対方向にキャリッジ10を移動させて、用紙Pの上方にあるキャリッジ10を、用紙Pに干渉することのない側方のホームポジションに退避させる。これにより、ジャムによって用紙Pおよび装置が受けるダメージの悪化を防止することができる。
【0049】
そして、この時点で紙後端センサー51の出力をチェックする(ステップS202)。紙後端センサー51は搬送方向Dpにおいて搬送ニップNtよりも上流側(図1において左側)に配置されているので、紙後端センサー51が用紙有りを検知している限り、搬送ニップNtには用紙Pが存在している。このことから、用紙Pは少なくとも搬送機構30によって搬送することが可能な状態であると言える。したがって、紙後端センサー51の出力が用紙有り(Hレベル)である場合には、搬送ローラー機構30により用紙Pを本来の搬送方向Dpとは反対にリア側の給紙トレイ90に向けて排出する、リア側排出処理を実行する(ステップS203)。具体的には、搬送モーター35の回転方向を反転させることで、搬送ローラー31による用紙搬送方向を反転させる。
【0050】
続いて、リア側の給紙トレイ90に排出された用紙を取り除いて入力部71に設けられた確認ボタン(図示省略)を押下するよう、ユーザーに促すメッセージ(用紙排除メッセージ)を表示部72に表示させ(ステップS204)、確認ボタンの押下を待つ(ステップS205)。確認ボタンの押下が確認されると、ジャムの原因となった用紙は既に取り除かれたものとして、用紙排除メッセージの表示を解除し(ステップS206)、処理を終了するが、このときの終了状態は、動作が正常に終了した場合とは異なるエラー終了である(図3)。エラー終了の場合には、通常動作に戻る前に、後述する起動処理が実行される。
【0051】
一方、ステップS202において、紙後端センサー51の出力が用紙無し(Lレベル)であった場合、少なくとも用紙後端部Pbが紙後端センサー51による検出位置を通過するまではジャムは発生しなかったと言える。したがってジャムが発生するまでに用紙先端部Paは排紙ニップNeに到達している可能性が高い。一方で、この時点で搬送ニップNtに用紙Pが残っているか否かは一義的に判断できない。そこで、この場合には、排出機構40によって用紙Pを本来の搬送方向Dpに沿ってフロント側の排紙トレイに排出するフロント側排出処理を行う(ステップS211)。
【0052】
そして、フロント側に排出された用紙を取り除いて入力部71に設けられた確認ボタンを押下するよう、ユーザーに促す用紙排除メッセージを表示部72に表示させ、確認ボタンの押下を待つ(ステップS212)。確認ボタンが押下された後の動作は、用紙がリア側へ排出された場合と同じである。
【0053】
このように、この実施形態における印刷動作では、キャリッジ10の速度変動を検出することによってジャム検知を行うとともに、ジャムが発生したときには、搬送機構30の上流側に設けた紙後端センサー51の出力に応じて用紙Pの排出方向を決定するようにしている。すなわち、ジャム発生時点で紙後端センサー51が用紙有りを検出している場合には、搬送ローラー31を逆転させることにより、用紙Pを給紙トレイ90側に向けて本来の搬送方向Dpとは反対方向に排出する。一方、ジャム発生時点で紙後端センサー51が用紙無しを検出している場合には、排紙ローラー43を正転させて、用紙Pを本来の搬送方向Dpに沿って排紙トレイ側に排出する。
【0054】
例えば特開2002−068527号公報に記載の技術では、搬送経路上に設けた3つのセンサーの出力の組み合わせでジャム発生時の用紙排出方向を決定しているが、本実施形態では1つの紙後端センサー51の出力によって同様の機能を果たすことができる。
【0055】
図3に戻って、印刷前ジャム検知動作(ステップS103)について説明する。この実施形態の印刷動作ではキャリッジ10の速度変動によってジャム検知を行っているので、ジャム検知を行うためにはキャリッジ10を走査移動させる必要がある。しかしながら、印刷動作が途中でキャンセルされた場合や、印刷する画像の内容によっては、キャリッジ10の移動を伴わずに用紙Pを大きく進ませる場合もある。このような場合に例えば用紙Pの反りや撓みに起因するジャムが発生すると、それを直ちに検知することができず、用紙Pや装置に大きなダメージを与えるおそれがある。
【0056】
また、このフォトプリンター1では用紙Pとして写真用紙やはがきのような比較的厚手の定型サイズのものが想定されているが、より薄手の(坪量の小さい)用紙や寸法の異なる用紙のように本来この装置に適合していない用紙が給紙トレイ90にセットされることもあり得る。また正規の用紙であっても折り目や強いカールが付いているなどの理由で不適合となる場合もある。このような不適合用紙が使用されると搬送が適正に行えずジャムとなってしまう可能性がある。不適合用紙が使用された場合、ジャムによって用紙が装置内に詰まって取り出せなくなるおそれがあるほか、インクを無駄に消費してしまうことにもなる。
【0057】
そこで、このフォトプリンター1では、印刷の開始前に予め用紙Pを搬送経路Fに送り込んでジャム発生の有無を検知する「印刷前ジャム検知動作」を実行して、後の印刷動作で起こりうるジャムを早期にかつ的確に検知することができるようにしている。図3に示す印刷動作では、ステップS102において印刷前ジャム検知動作の要否判断を行い、必要と判断された場合に後述する印刷前ジャム検知動作が実行される。この発明にかかる印刷前ジャム検知動作の2つの実施形態について、以下に説明する。
【0058】
まず、ステップS102における印刷前ジャム検知動作の要否の判断基準は、例えば以下のようなものである。
(1)指示された印刷動作の内容が、複数枚の用紙Pに連続的に画像を印刷する連続印刷ジョブに対応するものであり、その1枚目の用紙に画像を印刷する場合には印刷前ジャム検知動作が必要である。2枚目以降は不要である。
(2)上記に関わらず、連続印刷ジョブが給紙トレイ90に用紙Pが存在しない用紙切れによって中断され、用紙の補充によって再開された場合の1枚目の印刷前には印刷前ジャム検知動作が必要である。
(3)指示された印刷動作の内容が、1枚の用紙Pのみに画像を印刷する単葉印刷ジョブに対応するものであり、しかも、本来の用紙Pに印刷する前に試験的に印刷を行うための「テスト印刷モード」に対応するものであれば、印刷前ジャム検知動作が必要である。
(4)指示された印刷動作の内容が、1枚の用紙Pのみに画像を印刷する単葉印刷ジョブに対応するものであって上記した「テスト印刷モード」ではない場合には、印刷前ジャム検知動作は不要である。
【0059】
上記基準(1)は、連続印刷ジョブのために給紙トレイ90に複数枚の用紙がセットされる場合、通常それらは同種かつ同サイズのものであるという前提に基づいている。すなわち、セットされた複数枚の用紙の全てが装置に適合しないものである可能性はあるが、そのうちの一部だけが不適合であるという状況は考えにくい。したがって最初の1枚については事前にジャム検知動作を行うことで、不適合な用紙が印刷に供されるのを未然に防止することができる。一方、用紙1枚ごとに印刷前ジャム検知動作を行うと印刷のスループットが低下するが、2枚目以降ではこれを省略することで、スループットの低下を抑えることができる。
【0060】
ここで、給紙トレイ90にセットされた用紙Pの枚数が連続印刷ジョブで設定された印刷枚数よりも少なかった場合、用紙がなくなった時点で印刷ジョブは中断されることになる。このとき、例えば表示部72に所定のメッセージを表示して、ユーザーに用紙補充を促すことができる。そして、用紙が補充されると印刷ジョブを再開するが、このとき装置に適合しない用紙が誤ってセットされる可能性もある。そこで、上記基準(2)を設けることで、このような用紙補充におけるミスにも対応することができる。
【0061】
また、上記基準(3)は、テスト印刷モードにおいては正規の用紙ではない用紙が使われる可能性が高いことに対応するものである。例えば厚手の写真用紙に写真を印刷する場合であっても、そのレイアウトや仕上がりを確認するためのテスト印刷モードでは、より薄手のコピー用紙などが使われることがある。この場合、そのサイズについても正規のものとは異なっている可能性もある。そこで、印刷枚数が1枚である単葉印刷ジョブがテスト印刷モードに対応するものであるときには、印刷前ジャム検知動作を事前に実行することで、印刷時のジャムを未然に防止し、無駄なインクの消費も抑えることができる。
【0062】
一方、同じように印刷枚数が1枚だけである単葉印刷ジョブには、正規の用紙に対して行われるものも当然に存在する。このような場合に印刷前ジャム検知動作を行うか否かは任意であるが、上記基準(4)では、積極的にテスト印刷モード以外のモードが選ばれていることから正規の用紙が使われているものとして、印刷前ジャム検知動作を省略している。これによりファーストプリントタイムの短縮を図ることができる。なお、印刷前ジャム検知動作を行うか否かをユーザーに設定入力させ、その設定状態に応じて印刷前ジャム検知動作の要否を判断するようにしてもよい。
【0063】
図6は印刷前ジャム検知動作の第1実施形態を示すフローチャートである。また、図7は印刷前ジャム検知動作における搬送経路上の用紙位置を示す図である。また、図8は搬送経路F上における用紙Pの姿勢の例を示す図である。印刷前ジャム検知動作においては、搬送ローラー31の回転により、用紙Pを所定のジャム検知位置まで搬送する給紙処理を行う(ステップS301)。
【0064】
図7に番号(1)で示すように、用紙Pの先端部Paが搬送ニップNtに到達し、搬送ローラー31による搬送が開始される位置を、便宜上ここでは「搬送開始位置」と定義し、以下で用いる「累積紙送り量」はこの位置を起点としたときの用紙Pの紙送り量の積算値を表す。印刷前ジャム検知動作の開始時点では、用紙Pの先端部Paは印刷開始位置まで搬送されており、図7に番号(2)で示すように、このとき用紙Pの先端部Paはキャリッジ10の下面のうち搬送方向Dpにおける上流側端部に対応する位置にある。このときまでの累積紙送り量、すなわち用紙Pを搬送開始位置から印刷開始位置まで移動させるのに要する紙送り量を符号Xpで表す。
【0065】
印刷前ジャム検知動作時の用紙Pの搬送量、つまり印刷前ジャム検知動作時に用紙Pを搬送経路F上のどの位置まで送り込めばよいかについて検討する。ジャムを発生させることなく用紙Pを確実に印刷位置PPに送り込むためには、印刷前ジャム検知動作において用紙Pの先端部Paが少なくとも印刷位置PPを越えているようにすることが望ましい。したがって、印刷前ジャム検知動作における最低条件は、用紙Pの先端部Paが印刷位置PPを越えるまで用紙Pを搬送経路Fに沿って搬送し、この間のジャム発生の有無を検知することである。
【0066】
一方、用紙Pを装置外へ排出するまでの間に亘ってジャム発生を予防する、という観点からは、少なくとも用紙Pの先端部Paが排出機構40に到達していることが望ましい。より具体的には、用紙先端部Paが排出機構40と当接する位置にまで到達することで排出機構40による用紙Pの搬送が可能な状態となっていることが望ましい。このフォトプリンター1におけるジャム検知位置は、この観点に基づいて設定されている。
【0067】
原理上のジャム検知位置は、図7に番号(3)で示すように、用紙Pの先端部Paが排出機構40、より具体的には排出機構40のうち搬送方向Dpにおいて最も上流側に位置する第1ギザローラー41との当接位置に来る位置である。この位置を「排出機構位置」と称し、このときの累積紙送り量を符号Xeにより表す。正常な搬送においては、図8(a)ないし(b)に示すように、用紙先端部Paが排出機構40に到達すると、この後の紙送りでは用紙Pは排出機構40によって排紙トレイに向け排出される。
【0068】
これに対して、図8(c)に例示するように用紙Pが反っていたり撓んでいると、用紙先端部Paが排出機構40に到達するのに十分な量の紙送りがなされたにも関わらず、実際には用紙先端部Paが排出機構40に到達していない場合があり得る。このような場合にこのまま紙送りを続けると、図8(d)に示すように、用紙Pが搬送経路Fを外れてジャムが発生するおそれがある。特に、印刷直後の用紙Pの表面にはガイド等を接触させることができないことから、搬送方向Dpにおけるキャリッジ10の下流側には比較的広いスペースSPが設けられるため、このスペースSPに用紙Pが入り込んでジャムとなる可能性がある。
【0069】
現実の搬送経路Fにおいては、ジャムを発生することなく用紙Pを搬送するのに、用紙Pの若干の反りや撓みは許容される。つまり、用紙Pの紙送り量を搬送開始位置から起算したとき、用紙の搬送不良があったとしても、紙送り量が搬送開始位置から排出機構40までの搬送経路Fの長さL3を超えた時点で直ちにジャムとなるとは限らない。ただし、搬送不良に起因する用紙の反りや撓みが許容量を超えたときには用紙Pがキャリッジ10と接触してジャムとなる。したがって、より現実的には、ジャム検知動作の開始タイミングを決める紙送り量は、搬送開始位置から排出機構位置までに相当する紙送り量Xeよりも若干長めとすることが好ましい。
【0070】
そこで、図7に番号(4)で示すように、用紙Pを搬送開始位置から排出機構40まで搬送するのに必要な累積紙送り量Xeに代えて、これに所定のマージン量Xmを加えた値Xthだけ紙送りを行ったときの用紙Pの位置を、実際のジャム検知位置とする。ただし、マージン量Xmについては、用紙Pの累積紙送り量が値Xthに達した時点では用紙後端部Pbが搬送ニップNtに到達しない大きさとする。つまり、搬送ニップNtから排出機構位置までの搬送経路Fの長さL3に上記マージン量Xmを加えた値L4が、搬送方向Dpに沿った用紙Pの長さLpよりも短くなるようにする。このようにすると、ジャム検知位置に位置決めされた用紙Pは少なくとも一部が搬送ニップNtにニップされており、搬送ローラー31による搬送が可能な状態が維持される。具体的なマージン量Xmの決め方については後に説明することとし、ここではまず印刷前ジャム検知動作の処理内容について、図6を参照しながら説明する。
【0071】
この実施形態の印刷前ジャム検知動作では、用紙Pの先端部Paが確実に排出機構40に達しているであろう位置まで用紙Pを予め送り込み、この搬送の間に用紙Pのジャム発生の有無を検知する。こうすることで、後のキャリッジ移動を伴う印刷動作におけるジャムを未然に回避する。これにより、ジャムによって用紙Pや装置が受けるダメージを最小限に抑えることができる。また、印刷中のジャムによるインクの無駄な消費を抑えることができる。また、使用された用紙Pが装置に適合していないものであった場合にはこの時点でそれを検知することができるので、例えば用紙の確認を使うようユーザーに促すなどの適切な措置を講じることができる。
【0072】
用紙搬送中におけるジャム検知は、具体的には、用紙Pを搬送経路Fに沿って搬送する搬送ローラー31を駆動する搬送モーター35からみた負荷の大きさに基づいて行う。すなわち、搬送モーター35の回転に同期して出力されるロータリーエンコーダー(図示省略)からの出力パルスの間隔、搬送モーター35に供給される電流の大きさなどを監視しておき、その値が適正範囲から外れたとき搬送モーター35に対する負荷変動が生じたものと考えることができ、これをもってジャム発生と判断することができる(図3のステップS302)。
【0073】
なお、搬送モーター35の負荷変動に基づくジャム検知は、用紙Pをジャム検知位置に送り込んだ後で行うのではなく、ジャム検知位置までの搬送の過程の全体において継続的に行われる。そして、負荷変動が検出されたときには、その時点で直ちに用紙Pの搬送が停止される。
【0074】
この過程で搬送モーター35の負荷変動が検出されたときにはジャムと判断する。この負荷変動は、用紙先端部Paが排出機構40に到達せず用紙Pが搬送経路F上で滞留していることに起因すると考えられるからである。この場合には、印刷処理中にジャムが検知された場合と同様に、リア側(給紙トレイ側)への排出処理および用紙排除メッセージの表示を行う(ステップS311、S312)。ここで、用紙の排出方向をリア側に固定しているのは、前記したように用紙Pの累積紙送り量が値Xthである時点では用紙Pは搬送ニップNtにニップされていることが保証されており、用紙Pを確実にリア方向へ排出することができるからである。
【0075】
この段階でジャムが検知されなければ、用紙Pとして適正なものが用いられ、以後の紙送りにおいてジャム発生の危険性は低いと言える。そこで、この場合には通常の印刷動作に戻るために、搬送ローラー31により用紙Pを印刷開始位置まで戻す紙戻し処理を実行する(ステップS303)。したがって、以後の印刷動作(図3のステップS104以降)では、印刷前ジャム検知動作を行わなかったときと同様、印刷開始位置から印刷を開始することができる。
【0076】
次に、マージン量Xmの決め方について説明する。マージン量Xmについては、搬送経路Fの長さや用紙Pの硬さ、キャリッジ10と用紙ガイド91とのギャップ等に基づいて計算により求めることも不可能ではないが、用紙の反りや撓みの状況はばらつきが大きいため、より現実的には実験によって求めることができる。
【0077】
本願発明者は、ジャム検知位置に対応する累積紙送り量の値Xthに与えるマージン量Xmを種々に変更設定して実際にジャム検知動作を行う実験を行った。その結果、マージン量が小さい領域ではジャム検知数(ジャムの発生が検知された回数)が少なく、マージン量の増加に伴ってジャム検知数も増加する。したがってジャムを確実に検知するにはマージン量を大きくするのが好ましい。ただし、マージン量がある程度大きくなるとジャム検知数はそれ以上増加せず、ほぼ一定となる。したがってこれ以上マージン量を増やしても無意味である。
【0078】
また、用紙Pをジャム検知位置まで送り込んだ状態では、搬送方向Dpにおける用紙Pの後端部Pbが搬送ニップNtを通過していない、つまり用紙Pが依然として搬送ニップNtにニップされた状態であることも必要である。用紙Pが搬送ニップNtを抜けてしまうと、印刷前ジャム検知動作の実行後に用紙Pを印刷開始位置まで戻すことができなくなってしまうからである。また、用紙後端部Pbが搬送ニップNtを通過した後にジャムが発生し用紙を取り出すことができなくなるのを防止する意味においても、この条件が必要である。
【0079】
本願発明者が行った実験結果によれば、搬送方向Dpにおけるキャリッジ10の下流側端部から排出機構40(第1ギザローラー41)までの距離を符号Xsで表したとき、マージン量Xmは該距離Xsの0.5倍以上が適当である。マージン量Xmがこれより小さいと、後の紙送りで起こりうるジャムを事前に検知する確率が低くなる。ただし、マージン量Xmをあまり大きくすると、ジャム検知動作開始時の紙送り量が多くなり、その分処理に時間がかかってしまい、また用紙先端部Paを排出機構40に向けて進めすぎることによるジャム等の新たな不具合が生じるおそれがある。この問題を防止するにはマージン量Xmは距離Xsの2倍以下に留めるのが好ましい。したがって、マージン量Xmとしては距離Xsの0.5倍ないし2倍程度が好ましく、距離Xsと同程度が最も好ましい。言い換えると、用紙先端部Paがキャリッジ10の下流側端部に到達してから規定ジャム検知動作が開始されるまでの用紙搬送距離が、キャリッジ10の下流側端部から排出機構40に到達するまでの用紙Pの搬送距離Xsの1.5倍ないし3倍、より望ましくは2倍程度となるように、累積紙送り量の閾値Xthを設定すればよい。
【0080】
これ以外にも、前記した通り、用紙Pの累積紙送り量が値Xthに達した時点で搬送ローラー31により用紙Pを給紙トレイ90側に排出可能な状態が維持されている、つまりこの時点で用紙Pの少なくとも一部が搬送ニップに残っていることも必要条件となる。
【0081】
図9は印刷前ジャム検知動作の第2実施形態を示すフローチャートである。印刷前ジャム検知動作の第1実施形態(図6)では、搬送モーター35の負荷変動を検出することでジャム検知を行っている。これに対して、本実施形態では、印刷動作におけるジャム検知と同様に、キャリッジ10の走査移動に起因して生じるキャリッジ駆動機構15の負荷変動に基づき、用紙搬送中のジャム検知を行う。
【0082】
具体的には、第1実施形態と同様にしてジャム検知位置まで用紙Pを搬送し(ステップS401)、この状態で、キャリッジ10を現在の位置からY方向の一方端側へ向けて走査移動させる(ステップS402)。そして、キャリッジ駆動機構15の負荷変動に基づくジャム検知を行う(ステップS403)。この場合、Y方向における現在のキャリッジ位置がその往復範囲の中央でないときには、現在の位置から遠い側の端部に向かってキャリッジ10を移動させることが望ましい。このようにキャリッジ10を大きく移動させることで、迅速なジャム検知を行うことが可能となる。この過程で負荷変動が検出されたときにはジャムと判断する。ジャムが発生した場合の処理は第1実施形態と同様であり、リア側(給紙トレイ側)への排出処理および用紙排除メッセージの表示を行う(ステップS411、S412)。
【0083】
この段階でジャムが検知されなかった場合、キャリッジ10を反対側の端部へ移動させて再度負荷変動の有無を検出する(ステップS404、S405)。ここで負荷変動が検出されたときにも、ジャムと判断しリア側(給紙トレイ側)への排出処理および用紙排除メッセージの表示を行う(ステップS411、S412)。一方、この時点でもジャムが検知されなければ、以後の紙送りにおいてジャム発生の危険性は低い。そこで、この場合には、第1実施形態と同様に、用紙Pを印刷開始位置まで戻す紙戻し処理を実行し(ステップS406)、印刷動作に戻る。
【0084】
このように、印刷前ジャム検知動作としては、キャリッジ10の移動を伴わないもの(第1実施形態)および移動を伴うもの(第2実施形態)のいずれもが考えられる。キャリッジ10の移動を伴わない印刷前ジャム検知動作では、搬送経路Fに送り込まれた用紙Pとキャリッジ10との接触が発生しないので、たとえジャム発生要因を有する用紙Pであってもこれを損傷することなく取り出すことが可能である。またキャリッジ10の損傷を確実に回避することができる。一方、キャリッジ10の移動を伴う印刷前ジャム検知動作では、用紙Pとキャリッジ10との接触のおそれはあるものの、印刷動作時と同様のキャリッジ移動を事前に行うことによって、後の印刷動作において生じうるジャムをより的確に検知することが可能である。いずれの場合もインクを使用しないので、ジャム発生に起因するインクの無駄を未然に回避することが可能である。
【0085】
ところで、この種のフォトプリンターの実使用状況においては、ジャム発生後、ジャムの原因となった用紙が正しく取り除かれないままに装置が再起動されることも多い。ここで、排紙トレイ側に排出された用紙については既に搬送経路Fから外れているので比較的問題は少ないが、給紙トレイ90側に排出された用紙については搬送経路Fから完全に除外されるものではないため、これが除去されないまま装置が再起動されると次のような不具合が生じる。
【0086】
装置の起動時には、搬送ローラー31等のローラー類をその動作確認も兼ねて空回転させる動作を含む初期化動作が一般的に行われる。このとき、用紙Pが給紙ローラー21から搬送ローラー31に至る搬送経路F上に残っていると、搬送ローラー31の回転によって該用紙が再び装置内に取り込まれてしまうこととなる。特に、ジャム発生により排出された用紙では屈曲や破損などのダメージを受けていることが多く、このような用紙が装置内に取り込まれると、用紙や装置にさらなるダメージを与えてしまうおそれがある。そこで、このフォトプリンター1では、装置起動時の処理を次のような内容としている。
【0087】
図10は図1のフォトプリンターにおける起動処理を示すフローチャートである。この起動処理は、例えば装置の電源が投入された直後に実行されるほか、印刷動作がエラー終了(図3、図6、図9)した場合にも実行される。この起動処理では、まず紙後端センサー51の出力状態をチェックし(ステップS501)、紙後端センサー51が紙無しを検出しているときにはそのまま通常の初期化動作(ステップS510)を行う。
【0088】
一方、この時点で紙後端センサー51が紙有りを検出しているとき、給紙トレイ90側に排出されたジャム後の用紙が搬送経路F上に残っていると考えられる。搬送ローラー31による排出動作では、搬送方向Dpにおける用紙先端部Paを紙後端センサー51による検出位置よりも上流側まで排出する作用はないからである。また原因の如何によらず搬送経路F上に用紙(または類似のシート状異物)の存在が検出された状態で初期化動作を実行すると、ジャムなどの不具合を生じる可能性が高い。
【0089】
そこで、起動時に紙後端センサー51が紙有りを検出した場合には、ジャムが検知された場合と同様に、リア(給紙トレイ90)側に用紙が残っていることを知らせる用紙排除メッセージを表示部72に表示させ(ステップS502)、ユーザーに用紙を取り除くよう促す。そして、確認ボタンが押されるのを待ち(ステップS503)、押下が確認されるとその時点で紙後端センサー51が紙無し状態であれば初期化動作に移行する一方(ステップS504)、依然として紙有り状態であれば、用紙が取り除かれるまで確認ボタンの押下を待つ。これにより、搬送経路Fから用紙またはシート状異物が確実に除かれた状態で初期化動作が実行されることとなり、上記のような不具合が生じることはない。
【0090】
以上説明したように、上記各実施形態においては、キャリッジ10およびキャリッジ駆動機構15がそれぞれ本発明の「キャリッジ」および「駆動部」として機能しており、これらが一体として本発明の「印刷手段」として機能している。また、本実施形態においては、制御部80が本発明の「制御手段」として機能している。
【0091】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、用紙先端部Paが搬送ニップNtにある位置を搬送開始位置として累積紙送り量を積算しているが、紙送り量、すなわち用紙Pの搬送距離の起点はこれに限定されず任意である。例えば、紙後端センサー51の検出位置や印刷開始位置などを起点として搬送距離を求めてもよい。
【0092】
また例えば、上記実施形態では、印刷前ジャム検知動作時にキャリッジ10を往復移動させて負荷変動の有無を検出することでジャム検知を行っているが、例えばキャリッジ10を1方向のみに移動させてジャム検知を行ってもよい。また、印刷前ジャム検知動作の第2実施形態では、ジャム検知時のキャリッジ10の移動速度については特に限定しないが、例えば印刷処理時と同じ速度とすることができる。また、印刷処理時よりも速い速度とすれば印刷前ジャム検知動作に要する時間を短縮することができる。一方、印刷処理時よりも遅い速度とすれば、ジャム発生時にキャリッジ10が停止するまでに用紙Pに与えるダメージを最小限に抑えることができる。
【0093】
また、上記実施形態では、連続印刷ジョブにおいては最初の1枚の印刷前のみ印刷前ジャム検知動作を実行するようにしているが、これに加えて、例えば印刷枚数が所定枚数に達する度に、次の印刷に先立って印刷前ジャム検知動作を実行するようにしてもよい。
【0094】
また、上記第2実施形態では印刷処理時と印刷前ジャム検知動作時との双方でキャリッジ負荷変動に基づくジャム検知を行っており、具体的にはキャリッジ10の移動速度を指標するエンコーダー14の出力パルス間隔が所定の閾値を超えた(つまりキャリッジ移動速度が所定値より低くなった)ことをもってジャムと判断している。この場合の閾値についても特に限定されず、それぞれの閾値を共通の値としてもよいし、個別の閾値を設定してもよい。例えばジャム検知動作時の閾値を印刷処理時より低くすれば、ジャム検知動作時は印刷処理時より厳しい条件で用紙Pが搬送されることとなるので、その後に起こりうるジャムをより高い確率で事前に検知することが可能となる。
【0095】
また、用紙Pとの接触に起因するキャリッジ10の移動速度の低下度合いは元の移動速度にも依存するので、例えばキャリッジ10の移動速度を複数段階に変更可能であるときには、その移動速度ごとにジャム検知の閾値を設定するようにしてもよい。
【0096】
また例えば、上記実施形態は印刷装置の一種であるインクジェット方式のフォトプリンターに本発明を適用したものであるが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、フォトプリンター以外の印刷装置や、インクジェット方式によらない(例えば感熱方式の)印刷装置であっても、搬送される記録媒体に対してキャリッジを走査移動させて印刷を行う各種の印刷装置に本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0097】
10…キャリッジ(印刷手段)、 11…印刷ヘッド、 15…キャリッジ駆動機構(駆動部、印刷手段)、 21…給紙ローラー、 30…搬送機構、 31…搬送ローラー、 35…搬送モーター、 40…排出機構、 41…第1ギザローラー、 42…第2ギザローラー、 43…排紙ローラー、 80…制御部(制御手段)、 Dp…用紙搬送方向、 F…搬送経路、 P…用紙(記録媒体)、 PP…印刷位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送経路に沿って印刷位置に向けて記録媒体を送り込む搬送機構と、
前記印刷位置に送り込まれる前記記録媒体に対向配置されたキャリッジと、該キャリッジを前記搬送経路に沿った前記記録媒体の搬送方向と異なる主走査方向に走査移動させる駆動部とを有し、前記キャリッジから前記記録媒体に記録剤を付与して前記記録媒体に画像を印刷する印刷手段と、
前記印刷手段による印刷の実行前に、前記搬送機構により前記記録媒体を搬送させて前記搬送方向における前記記録媒体の先端部に前記印刷位置を越えさせ、該搬送の間の前記搬送経路における前記記録媒体のジャムを検知する印刷前ジャム検知動作を実行する制御手段と
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記印刷前ジャム検知動作においてジャムが検知されなかったとき、前記搬送機構が、前記記録媒体を、該記録媒体に対して印刷を開始する位置まで移動させ、該記録媒体に対して前記印刷手段が画像を印刷する請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷位置を通過した前記記録媒体を前記搬送経路に沿って排出する排出機構を備え、
前記印刷前ジャム検知動作では、前記印刷位置からの前記記録媒体の前記先端部の搬送距離を前記印刷位置から前記排出機構までの前記搬送経路の長さ以上とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記ジャム検知動作において、前記制御手段は、前記記録媒体の搬送に伴って前記搬送機構に加わる負荷の大きさに基づいて前記記録媒体のジャムを検知する請求項1ないし3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記ジャム検知動作において、前記制御手段は、前記駆動部による前記キャリッジの駆動に起因して変化する物理量に基づいて前記記録媒体のジャムを検知する請求項1ないし3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項6】
複数枚の前記記録媒体に画像を印刷する連続印刷ジョブを実行し、該連続印刷ジョブでは、前記複数枚のうち最初の1枚を含む一部の前記記録媒体への印刷前に、前記印刷前ジャム検知動作を実行する請求項1ないし5のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項7】
1枚の前記記録媒体に画像を印刷する単葉印刷ジョブを実行し、該単葉印刷ジョブでは、前記印刷前ジャム検知動作を伴う印刷と、前記印刷前ジャム検知動作を伴わない印刷とを選択的に実行する請求項1ないし6のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項8】
搬送機構により、所定の搬送経路に沿って印刷位置に向けて記録媒体を送り込み、前記印刷位置に送り込まれた前記記録媒体に対し、前記記録媒体の搬送方向と異なる主走査方向に走査移動するキャリッジから記録剤を付与して前記記録媒体に画像を印刷する印刷装置の制御方法において、
印刷実行前に、前記搬送機構により前記記録媒体を搬送して前記搬送方向における前記記録媒体の先端部に前記印刷位置を越えさせ、該搬送の間の前記搬送経路における前記記録媒体のジャムを検知する印刷前ジャム検知動作を実行する
ことを特徴とする印刷装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−91361(P2012−91361A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239275(P2010−239275)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】