説明

印刷装置とプログラムとサーバ装置

【課題】 ページ記述言語のインストール又は更新後に装置全体の再起動を全く必要とせずにインストール又は更新後のページ記述言語を用いた機能を有効化する。
【解決手段】 インストール更新システム部は、プリンタシステム部が印刷中か否かを判断し(S1)、印刷中でなければ、プリンタシステム部を停止させ(S2)、プリンタシステム部に対してポストスクリプトパッケージのPSモジュールをコピーしてインストール又は更新し(S3)、プリンタシステム部を再起動させ(S4)、画像形成装置全体の再起動をさせなくても、ポストスクリプトに基づく画像データの生成機能を有効にさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ファクシミリ装置,プリンタ,複写機,複合機を含む印刷機能を備えた印刷装置とプログラムとサーバ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポストスクリプト(PostScript、登録商標)やPCL(登録商標)といったページ記述言語(PDL)を含むソフトウェアのインストールと更新の機構を持つファクシミリ装置,プリンタ,複写機,複合機(「MFP」とも略称する)を含む印刷装置では、プリンタシステムに、インストール又は更新したPDLを認識させるため、そのインストール又は更新の実行後に、印刷装置本体の再起動(電源のオフからオン)を必要とする。
それは、インストール又は更新後に印刷装置本体の再起動をしないと、新しく組み込まれたPDLを用いた機能を有効化できないからである。
【0003】
そのため、上述のようなインストール又は更新後には、ユーザに印刷装置本体の再起動を要求するか、もしくは印刷装置本体を自動的に再起動させる仕組みが必要だった。
しかし、再起動中は、ユーザは印刷装置における全ての機能が使えなくなる上に、PDLのインストール中に投入された印刷ジョブは再起動時に全て消去されてしまう。
従来、ソフトウェアの更新インストールを行うとき、ソフトウェアモジュールの上書きコピーができないために装置の再起動が必要となる場合、更新版ソフトウェアモジュールを更新対象のソフトウェアモジュールに上書きせず、所定の記憶領域にコピーし、その記憶領域の更新版ソフトウェアモジュールをロードして実行することにより、装置の再起動を行わないで更新されたソフトウェアモジュールの処理を実行できるようにした装置(例えば、特許文献1参照)があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の装置では、次のような問題があった。
1.更新前のソフトウェアモジュールを削除するためには、最終的にどこかのタイミングで装置の再起動が必要になる。
2.その再起動中は装置における一切の機能が使用できなくなる。
3.メモリ上のデータや設定が失われる可能性がある。
4.更新前のソフトウェアモジュールと更新版ソフトウェアモジュールが共に記憶領域に存在することになるので記憶領域を圧迫する。
この発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ページ記述言語のインストール又は更新後に装置全体の再起動を全く必要とせずにインストール又は更新後のページ記述言語を用いた機能を有効化できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上記の目的を達成するため、ページ記述言語に基づいて印刷ジョブから画像データを生成する画像データ生成手段と、上記画像データ生成手段によって生成された画像データに基づいて画像を印刷する印刷手段を備えた印刷装置において、上記画像データ生成手段に対する上記ページ記述言語のインストール又は更新時、上記画像データ生成手段の機能を停止し、上記ページ記述言語のインストール又は更新を実行し、その実行後に上記画像データ生成手段のみを再起動させ、上記画像データ生成手段でインストール又は更新後のページ記述言語に基づいて画像データを生成する機能を有効にさせる制御手段を設けた印刷装置を提供する。
また、上記制御手段が、上記画像データ生成手段に対する上記ページ記述言語のインストール又は更新時、上記画像データ生成手段が画像データの生成の動作中か否かを判断し、動作中と判断した場合はインストール又は更新を中止するようにするとよい。
【0006】
さらに、ネットワークを介して接続された装置から上記印刷ジョブを受信する受信手段を設け、上記ページ記述言語のインストール又は更新中でも、上記受信手段によって印刷ジョブを受信できるようにするとよい。
また、コンピュータに、上述のいずれかの印刷装置を構成する各手段としての機能を実現させるためのプログラムも提供する。
さらに、上述のプログラムを、ネットワークを介して上記ページ記述言語のインストール又は更新先の印刷装置へ送信して実行させるサーバ装置を提供する。
また、上記サーバ装置に、上記ページ記述言語のインストール又は更新先の印刷装置へ上述のプログラムを送信するタイミングを設定する手段を設けるとよい。
【発明の効果】
【0007】
この発明による印刷装置は、ページ記述言語のインストール又は更新後に装置全体の再起動を全く必要とせずにインストール又は更新後のページ記述言語を用いた機能を有効化することができる。
また、この発明によるプログラムは、コンピュータに、ページ記述言語のインストール又は更新後に装置全体の再起動を全く必要とせずにインストール又は更新後のページ記述言語を用いた機能を有効化できるようにするための機能を実現させることができる。
さらに、この発明のサーバ装置は、印刷装置に対してページ記述言語のインストール又は更新を実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の一実施例のシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】ポストスクリプトパッケージの構成例を示す説明図である。
【図3】図1に示す画像形成装置におけるページ記述言語のインストール又は更新の処理を示すフローチャート図である。
【図4】図1に示す画像形成装置中のページ記述言語のインストール又は更新に係る機能部のみを示すブロック図である。
【図5】同じく図1に示す画像形成装置中のページ記述言語のインストール又は更新に係る機能部のみを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。
〔実施例〕
図1は、この発明の一実施例のシステムの構成を示すブロック図である。
このシステムは、ファクシミリ装置,プリンタ,複写機,複合機を含む印刷機能を備えた印刷装置に相当する画像形成装置1と、画像形成装置1に対して画像形成装置1のページ記述言語のインストール及び更新を実施する更新サーバ装置2と、画像形成装置1に対して印刷ジョブを送る印刷サーバ装置3と、印刷サーバ装置3を介して画像形成装置1に印刷ジョブを送って印刷を実行させるコンピュータ(PC)4とが、インターネット,ローカルエリアネットワークを含むネットワークを介して互いに通信可能に接続されている。
【0010】
画像形成装置1は、CPU,ROM及びRAMを含むマイクロコンピュータによって実現される制御部10と、制御部10から送られる画像データに基づく印刷を行うプリント部11と、原稿の画像を読み取ってその画像データを制御部10へ送るスキャナ部12と、更新サーバ装置2と印刷サーバ装置3(又はPC4)との間のネットワークを介したデータ通信を行う通信部13を備えている。
制御部10は、各種の機能部から構成されており、後述するページ記述言語パッケージと呼ばれるソフトウェアに基づいてポストスクリプト(PostScript、登録商標)やPCL(登録商標)といったページ記述言語(PDL)のインストールとアンインストールと更新と有効化と無効化の処理を実行するインストール更新システム部20を有する。すなわち、このインストール更新システム部20は上記制御手段の機能を果たす。
【0011】
また、ネットワークシステム部25の機能によって印刷サーバ装置2から受信した印刷ジョブ(プリンタジョブ)を、プリント制御部26を介してPS,PCL,PJLを含むページ記述言語を使用して画像データを作成するプリンタシステム部21を有する。すなわち、このプリンタシステム部21は、上記画像データ生成手段の機能を果たす。
なお、図1では、プリンタシステム部21には、ページ記述言語のPCL27とPJL28が予めインストールされている場合を示している。
さらに、プリンタシステム部21以外にも、各アプリ機能を実現するシステムとして、スキャナ部12を用いて画像読み取り機能を実現するスキャナシステム部22と、スキャナ部12とプリント部11を用いてコピー機能を実現するコピーシステム部23と、プリント部11と通信部13又はスキャナ部12と通信部13を用いてファクシミリ送受信機能を実現するFAXシステム部24を有する。
【0012】
ネットワークシステム部25は、通信部13を用いて更新サーバ装置2,印刷サーバ装置3と通信を行う。
また、更新サーバ装置2も、CPU,ROM及びRAMを含むマイクロコンピュータによって実現される制御部と、入力装置及び表示装置を備えており、ポストスクリプトパッケージのプログラムを、ネットワークを介してページ記述言語のインストール又は更新先の印刷装置である画像形成装置1へ送信して実行させる機能と、そのプログラムを送信するタイミングを設定する手段の機能を備えている。
【0013】
図2は、ポストスクリプトパッケージの構成例を示す説明図である。
このポストスクリプトパッケージ30は、ページ記述言語パッケージの一種であり、
画像形成装置1に対してインストール(又は更新)する対象のポストスクリプトモジュール(PSモジュール)32と、画像形成装置1のインストール更新システム部20にポストスクリプトモジュール32をインストール(又は更新)させるための手順を含むインストールプログラム31とからなる。
同図では、ポストスクリプトを含んだPSモジュール32を示したが、このモジュールは、その他のページ記述言語にすることもできる。
【0014】
次に、この画像形成装置1に対するページ記述言語のインストール及び更新の処理について説明する。
ここでは、図2に示したポストスクリプトパッケージ30によるポストスクリプトのインストール及び更新の処理を説明する。
図3は、図1に示す画像形成装置におけるページ記述言語のインストール又は更新の処理を示すフローチャート図である。
図4及び図5は、図1に示す画像形成装置中のページ記述言語のインストール又は更新に係る機能部のみを示すブロック図である。
【0015】
ネットワーク上の更新サーバ装置2は、予めサーバの管理者によってポストスクリプトパッケージ30を送信するタイミングが設定されており、そのタイミングになると、画像形成装置1にポストスクリプトパッケージ30を送信し、インストール及び更新を実行させる。
このようにして、画像形成装置1に対して自動的にPDLをインストール又は更新することができる。
また、PDLの更新するタイミング(何日おき等)を設定して定期的に更新することも可能になる。
【0016】
画像形成装置1では、ネットワークシステム部25が通信部13によってポストスクリプトパッケージ30を受信すると、それをインストール更新システム部20へ送る。
インストール更新システム部20は、ポストスクリプトパッケージ30を受け取ると、それを実行する。
インストール更新システム部20は、ポストスクリプトパッケージ30のインストールプログラム31を実行すると、図3に示すように、ステップ(図中「S」で示す)1で、プリンタシステム部21が印刷中(印刷処理を実行中)か否かを判断し、印刷中ならば、プリンタ印刷中にプリンタシステム部21の動作を停止することはできないため、ステップ5へ進み、エラーメッセージ、例えば、「インストール実行時にプリンタ印刷中の場合にはプリンタ印刷中のためインストールできません」を表示し、ポストスクリプトパッケージ30の実行を中止してインストール又は更新処理を中止し、この処理を終了する。
【0017】
ステップ1の判断で、プリンタシステム部21が印刷中でなければ、ステップ2で、プリンタシステム部21の動作を停止し、ステップ3で、プリンタシステム部21に対するページ記述言語のインストール又は更新処理をし、プリンタシステム部21内にPSモジュール32をインストールの場合はコピーし、更新の場合は旧版のPSモジュールに上書きコピーする。
この状態では、図4に示すように、プリンタシステム部21内にPSモジュール32は存在する(図中、PS32内に斜線を施して示す)が、プリンタ制御部26はPSモジュール32の存在を認識していないので、PSモジュール32を用いた機能は無効の状態である。
【0018】
図3に戻り、ステップ4で、プリンタシステム部21の再起動を実行し、この処理を終了する。
プリンタシステム部21の再起動では、各プロセスの停止から起動と、メモリの初期化といった処理が行われ、プロセスの起動時にプリント制御部26がPSモジュール32の存在を認識することにより、図5に示すように、PSモジュール32を用いて、ポストスクリプトに基づいて印刷ジョブから画像データを生成する機能が有効化される(図中、プリント制御部26からPS32への矢印に斜線を施して示す)。
このようにして、PDLのインストール及び更新の際に画像形成装置1全体を再起動させるのではなく、一部のシステムのプリンタシステム部21のみの再起動で済む。
【0019】
したがって、人手による再起動の必要がないため、ユーザはPDLのインストール及び更新を意識せずに画像形成装置1を使用できる。
また、プリンタシステム部21の再起動中は、画像形成装置1全体の再起動と異なり、他のシステム部は動作しているため、例えば、この間にユーザから印刷ジョブが投入されてもネットワークシステム部25が受信してバッファにスプールすることができる。
プリンタシステム部21の再起動中に、PC4のユーザが画像形成装置1に対する印刷ジョブを投入した場合、印刷サーバ装置3はPC4からの印刷ジョブを画像形成装置1へ送信する。
【0020】
画像形成装置1では、プリンタシステム部21以外のシステム部は動作しているので、ネットワークシステム部25は通信部13に受信した印刷ジョブを認識すると、プリンタシステム部21の再起動中は印刷ジョブをバッファ内にスプールする。
したがって、PDLのインストール又は更新による印刷ジョブの損失を防ぐことができる。
また、プリンタシステム部21だけの再起動で済むので、制御部10のメモリ上のデータを失わずに済む。
そして、ネットワークシステム部25はプリンタシステム部21の再起動が終了すると、バッファにスプールした印刷ジョブをプリンタシステム部21へ送り、プリンタシステム部21はその印刷ジョブの印刷を開始する。
【0021】
このようにして、画像形成装置1でPDLのインストール又は更新中でも、PC4のユーザはそれを意識することなくいつでも画像形成装置1に対する印刷を依頼することができる。
したがって、PDLのインストール又は更新中にユーザが画像形成装置1を全く使用できないことがなくなる。
【0022】
上述の処理では、プリンタシステム部21が印刷中であると判断するとインストール及び更新を中止するようにしたが、印刷中の場合、所定時間待って再び印刷中か否かを判断する処理を繰り返し、印刷中ではなくなった場合にインストール及び更新を実行するようにしても良い。
また、SDカードを含む記録媒体にポストスクリプトパッケージ30を格納し、その記録媒体を画像形成装置1に設けた読取装置に装着し、その読取装置によって読み出されたポストスクリプトパッケージ30をインストール更新システム部20へ送って実行させることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
この発明による印刷装置とプログラムは、ファクシミリ装置,プリンタ,複写機,複合機を含む画像形成装置にも適用することができる。また、この発明によるサーバ装置は、上記画像形成装置とデスクトップパソコン,ノートブックパソコン等のパーソナルコンピュータにおいて適用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1:画像形成装置 2:更新サーバ装置 3:印刷サーバ装置 4:PC 10:制御部 11:プリント部 12:スキャナ部 13:通信部 20:インストール更新システム部 21:プリンタシステム部 22:スキャナシステム部 23:コピーシステム部 24:FAXシステム部 25:ネットワークシステム部 26:プリント制御部 27:PCL 28:PJL 30:ポストスクリプトパッケージ 31:インストールプログラム 32:PSモジュール
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開2007−66132号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ページ記述言語に基づいて印刷ジョブから画像データを生成する画像データ生成手段と、前記画像データ生成手段によって生成された画像データに基づいて画像を印刷する印刷手段とを備えた印刷装置において、
前記画像データ生成手段に対する前記ページ記述言語のインストール又は更新時、前記画像データ生成手段の機能を停止し、前記ページ記述言語のインストール又は更新を実行し、該実行後に前記画像データ生成手段のみを再起動させ、前記画像データ生成手段でインストール又は更新後のページ記述言語に基づいて画像データを生成する機能を有効にさせる制御手段を設けたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記画像データ生成手段に対する前記ページ記述言語のインストール又は更新時、前記画像データ生成手段が画像データの生成の動作中か否かを判断し、動作中と判断した場合はインストール又は更新を中止することを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
ネットワークを介して接続された装置から前記印刷ジョブを受信する受信手段を設け、前記ページ記述言語のインストール又は更新中でも、前記受信手段によって印刷ジョブを受信できるようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の印刷装置。
【請求項4】
コンピュータに、ページ記述言語に基づいて印刷ジョブから画像データを生成する画像データ生成手順と、前記画像データ生成手順によって生成された画像データに基づいて画像を印刷する印刷手順と、前記画像データ生成手順の処理に対する前記ページ記述言語のインストール又は更新時、前記画像データ生成手順の処理を停止し、前記ページ記述言語のインストール又は更新を実行し、該実行後に前記画像データ生成手順の処理のみを再起動させ、前記画像データ生成手順でインストール又は更新後のページ記述言語に基づいて画像データを生成する機能を有効にさせる制御手順とを実行させるためのプログラム。
【請求項5】
前記制御手順は、前記画像データ生成手順に対する前記ページ記述言語のインストール又は更新時、前記画像データ生成手順が画像データの生成の動作中か否かを判断し、動作中と判断した場合はインストール又は更新を中止する手順を含む請求項4記載のプログラム。
【請求項6】
ネットワークを介して接続された装置から前記印刷ジョブを受信する受信手順と、前記ページ記述言語のインストール又は更新中でも、前記受信手順によって印刷ジョブを受信できるようにした手順を含む請求項4又は5記載のプログラム。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか一項に記載のプログラムを、ネットワークを介して前記ページ記述言語のインストール又は更新先の印刷装置へ送信して実行させることを特徴とするサーバ装置。
【請求項8】
前記ページ記述言語のインストール又は更新先の印刷装置へ請求項4乃至6のいずれか一項に記載のプログラムを送信するタイミングを設定する手段を設けたことを特徴とする請求項7記載のサーバ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−98444(P2011−98444A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252760(P2009−252760)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】