説明

印刷装置

【課題】 電池や交流電源などを駆動電源とし、印刷媒体に印刷を行う印刷装置に関し、特に、乾電池が使用可能な状態である電池寿命を正確に判断し電池寿命を報知表示するとともに、ACアダプタを介して交流電源から電源をとった場合にも誤作動のない印刷装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 テープ印字装置1の印字動作において、印字データを構成する1ライン分の印字データを印字する際に、ヘッド印加電圧検出回路54によりサーマルヘッド33に印加される印加電圧を取得し、印加電圧のデータに基づき、サーマルヘッド33に配設された発熱素子に通電する通電時間を制御する。印字データを構成する各印字周期の通電時間と、通電時間に係る判断基準に基づいて、電池寿命の判断を行うことにより、交流電源使用時にも誤作動なく、正確な電池寿命を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電池や交流電源などを駆動電源とし、印刷媒体に印刷を行う印刷装置に関し、特に、乾電池が使用可能な状態である電池寿命を正確に判断し電池寿命を報知表示するとともに、ACアダプタを介して交流電源から電源をとった場合にも誤作動のない印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乾電池を使用して駆動する機器において、乾電池の使用状態を検知し、当該機器の駆動に際し、十分な電圧が得られない場合には、LCDやLED等により乾電池の交換を促す報知表示(いわゆる、電池寿命表示)や、正常な動作ができない可能性があることを報知する警告報知が行われている。
【0003】
このような電池寿命表示に関する技術として、例えば、特許文献1に記載された技術がある。
特許文献1には、乾電池を駆動源とし、電磁弁により開閉動作を行う止水栓において、当該乾電池の電池残量を警告報知する技術が開示されている。この止水栓では、フットスイッチにより電磁弁に電源供給がなされると、電圧検出回路により乾電池電圧を測定するとともに、タイマによる計時が実行される。
そして、乾電池電圧と所定の電圧値とを比較し、乾電池電圧が所定の電圧値より低い電圧値である場合に、その時点において、タイマの計時結果が所定時間を越えたか否かについての判断を行う。これにより、乾電池の電池残量が負荷を正常に動作させることができない状態を報知する交換モードと、乾電池の電池残量が残り少ない状況であることを報知する予告モードとを報知することができる。
【特許文献1】特開平10−106636号公報
【0004】
また、近年では、特許文献1に記載された止水栓のように、乾電池のみで駆動する機器のほかに、乾電池も使用可能であるが、ACアダプタを介し、交流電源を駆動源として使用することができる装置も種々開発されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された電池残量検出回路を、乾電池と、交流電源よりACアダプタを介して駆動する装置に適用した場合には、ACアダプタ使用時に電源電圧として安定した電力が供給されているにも関わらず、電池残量が残りわずかであるという予告表示や、電池の交換時期である交換表示がなされてしまう。
この現象は、ACアダプタに入力されるAC一時電源の電圧値が低下している場合に加えて、この電圧低下が一般的に許されている範囲内において、交流をACアダプタにより、直流に変換し、平滑化した電流を作り出す際に生じるリップルの影響が大きい。ここで、リップルとは、コンデンサなどで完全に平滑化することができずに残ってしまった、あるレベルの電圧を中心に三角波のような電圧変動のことをいう。
【0006】
即ち、上記特許文献1の電池残量検出回路を、乾電池と、交流電源のどちらも使用可能な装置に用いた場合には、低格出力電圧を供給している交流電源から供給される電圧値と、所定の電圧値とを比較することになるが、このとき、リップルの影響により、所定の電圧値以下と判断される場合が生じる。
例えば、当該装置に配設されているデバイスを使用した際に、前記所定の電圧近傍まで電圧値が低下するものとする。この時、リップルの影響により、電圧値が一時的に更に低下した場合には、前記電池残量検出回路では、所定の電圧値以下であると判断し、予告表示又は交換表示を行ってしまう。
従って、当該装置のユーザにとっては、乾電池を使用せず、電圧が安定供給される交流電源からACアダプタを利用して、当該装置を使用しているにも関わらず、前記交換表示や予告表示がなされることとなるため、当該装置が故障しているとの勘違い等の様々な不具合が生じてしまうという問題点があった。
【0007】
ここで、上記したACアダプタ使用時における電池残量表示の誤作動は、当該装置において、乾電池使用時と、ACアダプタ使用時とを判断する検出スイッチを配設し、ACアダプタ使用時には、電池残量検出回路を使用しないようにすることで、解消することができる。
しかし、この場合には、ACアダプタを使用していることを検出する検出スイッチを配設する必要が生じる。即ち、特許文献1に係る技術を、電池だけではなく、ACアダプタも使用可能な装置に適用した場合には、結果として部品点数の増加を招いてしまう。従って、特許文献1に記載した技術では、部品点数を削減した安価な装置には適当ではなく、部品点数に制限のある装置を含む、多様な装置に広くて起用可能な技術ではない。
【0008】
本発明は、上述した問題点を鑑みてなされたものであり、電池や交流電源などを駆動電源とし、印刷媒体に印刷を行う印刷装置に関し、特に、乾電池が使用可能な状態である電池寿命を正確に判断し電池寿命を報知表示するとともに、ACアダプタを介して交流電源から電源をとった場合にも誤作動のない印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために成された請求項1に係る発明は、電源供給手段と、通電することにより、印字データを被印刷媒体に印刷する印刷手段と、前記電源供給手段の使用状況を判定する判定データを格納した記憶手段と、前記印刷手段に通電する通電期間と、前記印刷手段への通電を中止する通電中止期間とからなる印刷周期毎に印刷制御を行う印刷制御手段と、前記電源供給手段の電源電圧を検出する電源電圧検出手段と、前記電源電圧検出手段の検出結果に基づいて、前記通電期間の終了を決定する通電終了決定手段と、前記印刷周期における通電期間を計測する通電期間計測手段と、前記通電期間計測手段の計測結果と、前記判定データに基づいて、前記電源供給手段の使用状態を判定する電源状態判定手段と、前記電源状態判定手段の判定結果を報知する報知手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、前記請求項1に記載の印刷装置において、前記記憶手段は、前記印刷手段により良好な印刷が可能な状態における標準通電時間より長い非常停止通電期間を示す第1判定データを格納し、前記通電期間計測手段で計測された通電期間が、前記非常停止通電期間を超過していると判断された場合に、前記印刷手段への通電を非常停止する非常停止手段を有することを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、前記請求項2に記載の印刷装置において、前記記憶手段は、前記標準通電時間よりも長く、前記非常停止通電期間よりも短い警告通電期間を示す第2判定データを格納し、前記通電期間計測手段で計測された通電期間が、前記警告通電期間を超過していると判断された場合に、前記報知手段により、警告報知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明に係る印刷装置では、電源供給手段から印刷手段に通電することで印字データを被印刷媒体に印刷する際に、印刷制御手段によって、前記印刷手段に通電する通電期間と、前記印刷手段への通電を中止する通電中止期間とからなる印刷周期毎に印刷制御を行う。
このとき、電源電圧検出手段により、前記電源供給手段の電源電圧を検出し、検出結果に基づいて、前記通電期間の終了を決定し、前記印刷周期における通電期間を計測する。そして、前記通電期間計測手段の計測結果と、前記記憶手段に記憶された判定データに基づいて、前記電源供給手段の使用状態を判定し、報知手段により判定結果を報知する
これにより、通電期間に基づいて、電源供給手段の使用状態が判定されるので、正確な使用状態を判断することができる。更に、電源電圧に基づいて、使用状況を判定せずに、印字周期毎に通電時間を介して、電源供給手段の使用状態を判定するので、交流から直流に変換する際に生じるリップルの影響をなくすことができる。
【0013】
そして、請求項2に記載の発明に係る印刷装置では、前記記憶手段は、前記印刷手段により良好な印刷が可能な状態における標準通電時間より長い非常停止通電期間を示す第1判定データを格納し、前記通電期間計測手段で計測された通電期間が、前記非常停止通電期間を超過していると判断された場合に、前記印刷手段への通電を非常停止する非常停止手段を有する。
電源供給手段から供給される電圧が高い場合には、印刷動作を実行する際に短期の通電期間で良いが、電圧が低い場合には、通電期間が長期化する。従って、印字が良好な通電期間よりも長い非常停止通電期間を示す第1判定データにより、非常停止通電期間を超過している場合には、電源供給手段から供給される電圧は低下している。従って、この場合には、非常停止手段で印刷動作を停止することにより、電圧低下の影響で発生する印刷不良を防止することができる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明に係る印刷装置では、前記請求項2に記載の印刷装置において、前記記憶手段は、前記標準通電時間よりも長く、前記非常停止通電期間よりも短い警告通電期間を示す第2判定データを格納し、前記通電期間計測手段で計測された通電期間が、前記警告通電期間を超過していると判断された場合に、前記報知手段により、警告報知する。
これにより、印刷動作が非常停止する前に、事前に措置を施すことができる。従って、常時、良好な印刷が可能な状態にしておくことができるので、快適な印刷操作を実行できると共に、良好な印刷結果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係るテープ印字装置について、本発明を具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係るテープ印字装置の概略構成について図1及び図2に基づき説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、テープ印字装置1は、合成樹脂製の本体2と、この本体2の背面部(テープ印字装置1を使用する際に使用者と対向する面と反対側の面)全体を覆うように着脱可能に取り付けられる合成樹脂製の背面カバー3とから構成されている。
また、本体2の長手方向のほぼ上半分側の部分は、水平視やや丸く形成され、この上側表面の略中央部には左右方向に横長の窓部5が穿設されている。
この窓部5の下側には、液晶ディスプレイ6が配設されており、文字入力キー12等を操作した入力結果等が表示される。そして、液晶ディスプレイ6の左側側面部には、カッターレバー7が設けられている。このカッターレバー7を親指などで内側に押すことにより、印字終了後に、テープ排出口8(図3参照)から排出された印字用テープ9(図3参照)を後述の切断刃10(図3参照)にて切断することができる。
【0017】
また、本体2の長手方向のほぼ下半分側の部分の左右幅寸法は、その上側部分の左右幅寸法よりも少し狭く形成されると共に、左右側面の角部も丸く形成され、把持部11を構成する。そして、背面カバー3の把持部11に対応する部分の左右側面の角部も丸く形成されている。
そして、本体2に取り付けられる背面カバー3は、テープカセット26に対向する部分から把持部11にかけて、テープ印字装置1の厚さ寸法がなだらかに小さくなるように形成されている。つまり、把持部11の厚さ寸法は、テープカセット26が収納されている部分の厚さ寸法よりも小さくなるように形成され、操作者の手に持ちやすいように把持部11が構成されている。
【0018】
ここで、把持部11の表面には、軟質ゴム製等で形成され、文書データからなるテキストを作成するための文字入力キー12と、スペースを入力するスペースキー13と、アルファベットの大文字と小文字とを押下する毎に切り替える切替キー14と、テキストの印字を指令する印字キー15と、液晶ディスプレイ6上に表示されるカーソルを左右に移動させるカーソルキー16と、電源をオン・オフする電源ボタン17と、文字選択等を指令するリターンキー18等を備えるキーボード19が配置されている。
【0019】
ここで、本実施形態に係るテープ印字装置1の各文字入力キー12は、複数の英数字を押下する毎に切り替えて入力できるように構成されている。例えば、文字入力キー12の上面部に「a、b、c、2」の文字が印刷されている場合には、この文字入力キー12を押下する毎に液晶ディスプレイ6上のカーソル位置に「a]、「b」、「c]、「2」の文字が順次表示され、リターンキー18を押下することによって入力文字が確定される。
また、切替キー14を押下する毎に液晶ディスプレイ6上のカーソル位置に表示される英小文字「a」と英大文字「A」、英小文字「b」と英大文字「B」、英小文字「c」と英大文字「C」が切り替えて表示され、リターンキー18を押下することによって確定される。
そして、把持部11の下方には、接続端子22が形成されている。この接続端子22は、外部の交流電源24(図5参照)から電源供給を受ける際に、ACアダプタ23(図5参照)を接続する接続端子である。ACアダプタ23を介することにより、交流電流は直流電流に変換される。これにより、外部の交流電源をテープ印字装置1の駆動電源とすることができる。
【0020】
また、図2に示すように、本体2の把持部11の内部には、キーボード19とともに、キーボード19の背面側に、基板20が配設されている。
更に、本体2の把持部11と液晶ディスプレイ6との間の内部には、制御回路部が構成される制御基板21が配設されている。
この制御基板21のサーマルヘッド33(図3参照)に対して反対側で本体2の長手方向上側には、印字用テープ9を搬送する駆動モータ25が配設されている。
【0021】
また、本体2の基板20、制御基板21、液晶ディスプレイ6、及び駆動モータ25等の背面側には、仕切部材30が各ネジ31によってネジ止めされている(図3参照)。
この仕切部材30には、印字用テープ9を収納したテープカセット26が収納されるカセット収納部27(図3参照)と、テープ印字装置1の駆動電源として使用可能な6本の乾電池28が2本ずつ直列に収納される電池収納部29(図3参照)が形成されている。
【0022】
次に、本実施形態に係るテープ印字装置1の内部構成について、図3に基づいて説明する。
図3に示すように、仕切部材30の長手方向上半分側の部分には、カセット収納部27が形成されている。カセット収納部27は、テープカセット26の外形とほぼ同じ水平断面略四角形状で、テープカセット26の厚さ寸法にほぼ等しい深さ寸法で裏側に膨出するように形成されている。
このカセット収納部27のカッターレバー7側の端縁部近傍の底面部には、サーマルヘッド33が取り付けられる薄板状のサーマルヘッド取付部34が、本体2の長手方向に沿うように立設されている。
サーマルヘッド33は、複数の発熱素子(本実施形態においては、64個の発熱素子を1列に配設している)を有し、各発熱素子(図示せず)を発熱することにより、印字用テープ9に文字等の印字を行う。
また、仕切部材30の裏面部には、プラテンホルダ35が、サーマルヘッド33に対向するように配設されている。このプラテンホルダ35は、下端部の回転軸40を中心に回動可能に設けられている。
さらに、カセット収納部27の底面部には、複数個の検出スイッチ49(図4参照)が配設されている。ここで、テープカセット26の底面には、そのテープカセットに内蔵されている印字用テープ9の種類に対応する複数個の凹凸部(図示せず)が形成されている。従って、テープカセット26をカセット収納部27にセットした際には、テープカセット26の底面に形成された複数個の凹凸部(図示せず)により、検出スイッチ49が選択的にオン・オフされる。これにより、カセット収納部27にセットされたテープカセット26の印字用テープ9の種類を判断することができる。
【0023】
前記テープカセット26には、接着層を介して文字が印字される受像紙と接着面を保護する剥離紙よりなる印字用テープ9が内蔵されている。本実施形態に係るテープ印字装置1においては、複数種類の印字用テープが内蔵されたテープカセット26を使用可能である。ここで、本実施形体においては、印字用テープ9の種類として、Aテープ、Bテープ、Cテープの3種類があるものとする。
前述したように、テープカセット26の底面には、テープカセット26に内蔵されている印字用テープ9の種類に対応する複数の凹凸部が選択的に形成されており、係る凹凸部は、テープカセット26をカセット収納部27にセットした際に、複数の検出スイッチ49を選択的にオン・オフする。これにより、検出スイッチ49からは、そのオン・オフのスイッチ信号を組み合わせたスイッチ信号パターンが得られる。
一方、後述するROM58には、テープカセット26に内蔵されている印字用テープ9の種類と、検出スイッチ49より得られるスイッチ信号パターンの組合せとを相互に対応させたテープ種類検出テーブルが格納されている。
従って、テープカセット26をカセット収納部27にセットした際には、検出スイッチ49から出力されるスイッチ信号パターンと、前記テープ種類検出テーブルとを相互に参照することにより、テープカセット26に内蔵されている印字用テープ9の種類を検出することができる。
【0024】
次に、本実施形態に係るテープ印字装置1の印刷機構PMと前記液晶ディスプレイ6とを駆動制御する制御ユニットCUを含む制御系について、図面を参照しつつ説明する。
図4に示すように、制御ユニットCUには、キーボード19と、印刷機構PMと、液晶ディスプレイ6と、検出スイッチ49が接続されている。
【0025】
制御ユニットCUは、バス70を介して相互に接続されたCPU56と、ROM58と、RAM60と、印刷用CG−ROM62と、液晶ディスプレイ6への表示の為の表示用CG−ROM64と、入力インタフェース66及び出力インタフェース68を有している。入力インタフェース66には、キーボード19、検出スイッチ49、温度サーミスタ52及びヘッド印加電圧検出回路54が夫々接続されている。
ここに、RAM60には、キーボード19を介して入力された入力データを記憶する入力バッファ82、印刷用データを記憶する印刷バッファ84、シフトレジスタ86、その他種々のカウンタやレジスタが設けられている。
また、印刷用CG−ROM62には、印刷対象となる多数の文字のドットパターンデータが記憶されている。そして、表示用CG−ROM64には、印刷対象となる多数の文字の表示用ドットパターンデータが記憶されている。
更に、出力インタフェース68には、印刷機構PMを構成するサーマルヘッド33を駆動するためのヘッド駆動回路72と、駆動モータ25を駆動するためのモータ駆動回路74と、前記液晶ディスプレイ6の表示を行うためのディスプレイ駆動回路76が接続されている。
【0026】
ROM58には、プログラムメモリ78と、数値テーブル81と、辞書メモリ80が形成されている。
プログラムメモリ78には、テープ印字装置1の制御上必要な各種の制御プログラムが格納されており、テープ印字装置1のメイン制御プログラムに加え、後述する通電非安定制御プログラムも格納されている。
又、数値テーブル81には、テープカセット検出用テーブルや、後述する通電非安定制御プログラム実行時に使用されるデータテーブル等が格納されている。
そして、辞書メモリ80には、キーボード19から入力されるテキストの仮名・漢字変換を行う際に使用される辞書データが格納されている。
【0027】
そして、温度サーミスタ52は、テープ印字装置1の使用環境の温度を測定するサーミスタである。温度サーミスタ52で温度を測定することにより、テープ印字装置1の使用条件(環境温度)に応じた処理を実行することができる。本実施形態においては、後述する通電非安定制御処理を行う際に用いられる。これにより、使用環境の温度に応じた通電非安定制御を実行することができる。
ヘッド印加電圧検出回路54は、印字用テープ9に対して印字する際に、サーマルヘッド33に印加される電圧値を検出する回路である。ヘッド印加電圧検出回路54では、サーマルヘッド33に印加される電圧を検出すると、CPU56に送り、CPU56では内部のA/D変換器でディジタル値に変換してRAM60に格納する。こうして、ヘッド印加電圧検出回路54により検出された電圧値は、RAM60に格納され、後述する通電非安定制御処理において用いられる。
タイマ51が配設されている。このタイマ51は、μsの単位までの時間を計時可能なタイマであり、印字用テープ9に対する印字を行う際に使用される。
【0028】
次に、本実施形態に係るテープ印字装置1の電源供給系統の構成について、図5を参照して説明する。
電源装置88は、乾電池28又は交流電源24からから所定の直流電圧を出力するものである。この所定の直流電圧は、スイッチ部94を介して電源供給回路96に供給される。
テープ印字装置1において、電池収納部29に乾電池28が直列状態で収納されている場合には、6本の乾電池28から直流電圧を出力し、スイッチ部94を介して電源供給回路96に供給される。
一方、電池収納部29に乾電池28が収納されていない場合において、接続端子22にACアダプタ23を接続することにより、外部の交流電源24(例えば、家庭用の交流電源)を駆動電源とすることができる。この時、交流電源24から供給される交流電圧は、ACアダプタ23により所定電圧の直流電圧に変換され、接続端子22、スイッチ部94を介して、電源供給回路96に供給される。
このように、本実施形態に係るテープ印字装置1においては、乾電池28と、外部の交流電源24のどちらからも、電源供給を受けることができる。
尚、乾電池28が電池収納部29に収納された状態において、接続端子22、ACアダプタ23を介して、交流電源24からの電源供給を受けた場合に、本実施形態に係るテープ印字装置1では、交流電源24からの電源供給が優先される。
【0029】
スイッチ部94は、メカニカルに作動するスイッチを備えており、制御ユニットCU内のCPU56からのON、OFF信号、即ち、電源ボタン17の押下に基づいて、よってスイッチを切り換える。従って、スイッチ部94は、CPU56からのON信号に基づいて、スイッチを短絡し、電源供給回路96に電源を供給する。
【0030】
電源供給回路96において、安定化回路100は、スイッチ部94が短絡し、電源供給回路96に電源供給がされている場合には、供給された電源電圧を、所定の電圧に降下させて、制御ユニットCUに供給する。
印刷機構PMでは、電源供給回路96から供給された電圧により、ヘッド駆動回路72、モータ駆動回路74を介して、サーマルヘッド33及び駆動モータ25が駆動される。
一方、制御ユニットCUは、安定化回路100により、降下された電圧が供給され、これにより、CPU56の動作が行われる。即ち、安定化回路100によって、降下された電圧により、本実施形態に係るテープ印字装置1の制御処理は実行される。
【0031】
ここで、本実施形態に係るテープ印字装置1には、ヘッド印加電圧検出回路54が配設されている。このヘッド印加電圧検出回路54は、サーマルヘッド33に印加された電圧を検出する回路である。ヘッド印加電圧検出回路54により検出されたサーマルヘッド33の印加電圧は、CPU56に送られる。
【0032】
次に、本実施形態に係るテープ印字装置1のメイン制御プログラムについて、図面を参照しつつ、詳細に説明する。図6は、テープ印字装置1のメイン制御プログラムのフローチャートである。
テープ印字装置1において、電源ボタン17が押下され、制御ユニットCUに電源供給がなされると、メイン制御プログラムの実行が開始される。メイン制御プログラムが実行されると、CPU56は、先ず、本体処理(S1)を実行する。
ここで、本体処理(S1)とは、電源投入直後の初期化処理や、印字用テープ9に印字する印字データの作成、編集処理、印字データの作成、編集処理に伴う液晶ディスプレイ6における表示処理等、各種処理が行われる。これらの処理は、既に周知の技術であるので、ここでの説明は省略する。
【0033】
本体処理(S1)の後、S2において、CPU56は、印字開始であるか否かについての判断を行う。つまり、CPU56は、印字キー15が入力されたか否かに基づく判断を行う。印字キー15が入力された場合には(S2:YES)、S3に移行する。一方、印字キー15が入力されていない場合には(S2:NO)、再び、本体処理(S1)に戻り、印字データの作成、編集を実行することができる。
S3では、温度サーミスタ52により、テープ印字装置1の環境温度を測定し、その測定結果をRAM60に格納する。ここで、取得した温度データは、後述する通電非安定制御処理(S10)において用いられる。温度サーミスタ52による温度データを取得し、RAM60に格納した後、S4に移行する。
そして、S4においては、CPU56は、テープカセット26に内蔵されている印字用テープ9の種類を示すテープ種データを取得する。即ち、CPU56は、検出スイッチ49から得られるスイッチ信号パターンと、前記テープ種類検出テーブルとを相互に参照することにより、テープカセット26に内蔵されている印字用テープ9の種類を検出し、テープ種データとして、RAM60に格納する。テープ種データをRAM60に格納した後、S5に移行する。
【0034】
テープ種データの取得(S4)後、駆動モータ25の駆動が開始される(S5)。駆動モータ25が駆動することにより、印字用テープ9が搬送される。このとき、サーマルヘッド33には通電されていないので、印字用テープ9には、何等の印字もなされない余白部分が形成される。
そして、S6では、余白送りが必要か否か、即ち、所定の余白量が形成されたか否かについての判断がなされる。CPU56は、駆動モータ25により、印字用テープ9が所定量分だけ搬送されたか否かについての判断を行う。余白分の印字用テープ9が搬送されておらず、余白送りが必要な場合には(S6:YES)、S5に戻り、所定量分の印字用テープ9を搬送するまで駆動モータ25を駆動する。そして、所定量分の印字用テープ9が搬送され、所定量の余白が形成された場合には、余白送りを必要としないので(S6:NO)、S7に移行する。
【0035】
ここで、本実施形態における印字データについて説明する。印字データは、複数の文字や記号からなるデータである。本実施形態においては、全角の場合における1つの文字や記号は、縦64ドット×横64ドットで構成されている。
上述したように、本実施形態においては、これらの文字を印字するサーマルヘッド33には、64個の発熱素子が1列に並んで配設されているので、サーマルヘッド33に対する1回の通電で印字される印字データは、縦64ドット×横1ドット分の印字データとなる。本実施形態においては、このデータを1ライン分印字データと称する。
そして、1ライン分印字データは、発熱素子に通電する通電時間と、発熱素子に通電しない非通電時間からなる一印字周期により、印字用テープ9に印字される。
尚、本実施形態に係るテープ印字装置1においては、1印字周期は、14.1msであるものとする。
上述したように、本実施形態においては、全角1文字の印字データは、64ライン分のデータで構成されているので、全角1文字を印字する際には、64印字周期(0.9s)を要し、サーマルヘッド33に64回の通電が行われることになる。そして、この1文字に対する処理を、印字データを構成する全ての文字に対して行うことで、入力された印字データが印字されたテープが作成されることとなる。
【0036】
S7では、本体処理(S1)で作成された印字データを構成する1ライン分印字データがセットされる。そして、この1ライン分印字データから、印字すべき部分と、印字すべきではない部分を判断し、サーマルヘッド33に配設された64個の発熱素子のそれぞれに対する通電の有無を規定した1ライン通電データを作成する(S8)。
そして、作成された1ライン通電データを、ヘッド駆動回路72を介して、サーマルヘッド33に送信する(S9)。
【0037】
そして、S10においては、CPU56は、通電非安定制御処理を実行する。この通電非安定制御処理(S10)は、S9において通信された1ライン通電データの印字を実行する際の1印字周期内の通電時間を決定する制御である。この通電時間の終了時点は、1印字周期内(14.1ms)において、ヘッド印加電圧検出回路54により、サーマルヘッド33への印加電圧を短い時間間隔で監視することで決定される。
この通電非安定制御処理(S10)については、後に図面を参照しつつ詳細に説明するので、ここでの説明は省略する。
通電非安定制御処理(S10)を実行することにより、印字用テープ9には、1ライン分印字データが印字されることになる。通電非安定制御処理(S10)を終了すると、CPU56は、S11に移行する。
【0038】
S11においては、通電非安定制御処理(S10)による電池弱エラーフラグがRAM60に格納されているか否かについての判断がなされる。ここで、電池弱エラーフラグとは、通電非安定制御処理(S10)の結果、電源装置88からの供給電圧が不足し、ラベルの印字を良好に実行することができない状態を示すフラグである。
RAM60に電池弱エラーフラグが格納されている場合には(S10:YES)、通電非安定制御処理(S10)により印字されたラインまでで印字データの印字を終了し、S1に戻る。これにより、不明瞭な印字が行われたラベルを作成してしまうことを防止することができる。一方、RAM60に電源弱エラーフラグが格納されていない場合には(S11:NO)、S12に移行する。
【0039】
そして、S12では、CPU56は、通電非安定制御処理(S10)による電源弱ワーニングフラグがRAM60に格納されているか否かについての判断を行う。電源弱ワーニングフラグとは、通電非安定制御処理(S10)の結果、電源装置からの供給電圧が一定の値を下回った状態を示すフラグであり、乾電池28の交換を推奨するワーニング表示を行う際に用いられる。
RAM60に電池弱ワーニングフラグが格納されている場合には(S12:YES)、S13に移行し、液晶ディスプレイ6に、「乾電池28の交換を促す旨」のワーニング表示を表示するワーニング表示処理が実行される。ワーニング表示処理(S13)を実行した後、S14に移行する。一方、RAM60に電源弱ワーニングフラグが格納されていない場合には(S12:NO)、そのまま、S14に移行する。
【0040】
S14では、本体処理(S1)で入力された印字データを構成する全ラインに対して処理を終了しているか否かについての判断がなされる。即ち、入力された印字データの印字用テープ9への印字が完了しているか否かが判断される。
印字データを構成する全ラインについて、処理を完了していない場合には(S14:NO)、S7に戻り、次の1ライン分のデータに対し処理を実行する。一方、全ラインについて処理を完了している場合には(S14:NO)、S15に移行する。
従って、1ライン分印字データ毎に行われるS7〜S13までの印字処理が、印字データを構成する全ラインについて実行されるまでは、S7〜S13の処理を繰り返され、S15に移行する時点では、印字用テープ9には、入力された印字データが印字されている状態となっている。
【0041】
S15においては、余白送りが必要か否か、即ち、所定の余白量が形成されたか否かについての判断がなされる。CPU56は、駆動モータ25により、印字用テープ9が所定量分だけ搬送されたか否かについての判断を行う。余白分の印字用テープ9が搬送されておらず、余白送りが必要な場合には(S15:YES)、S15に戻り、所定量分の印字用テープ9を搬送するまで駆動モータ25を駆動する。そして、所定量分の印字用テープ9が搬送され、所定の余白量が形成された場合には、余白送りを必要としないので(S15:NO)、S16に移行する。
この結果、印字用テープ9には、印字データが印字された印字部分の両側に、S5により形成される余白と、S15により形成される余白が形成されることとなり、見栄えの良いラベルを作成することができる。
【0042】
S16では、余白の形成を完了しているので(S15)、駆動モータ25の駆動を停止し、印字用テープ9の搬送を停止する。そして、この駆動モータ25の駆動停止により、入力された印字データの印字を終了し(S16)、S1に戻る。
そして、このS16の時点で、カッターレバー7を操作し、テープ排出口8から排出された印字済みの印字用テープ9を切断することで、所望のラベルを得ることができる。
【0043】
次に、テープ印字装置1のメイン制御プログラム中の通電非安定制御処理(S10)で実行される通電非安定制御処理プログラムについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。図7は、通電非安定制御処理プログラムのフローチャートである。
通電非安定処理(S10)に移行すると、CPU56は、S3で取得された温度データ、S4において判定され、RAM60に格納されている印字用テープ9の種類を示すテープ種データに基づいて、制御基本値CをROM58から読み出す(S20)。
例えば、図8(a)に示すように、RAM60に、Aテープを示すテープ種データと、テープ印字装置1の環境温度が25℃であることを示す温度データが格納されている場合には、制御基本値Cとして、「81300」という値が読み出され、RAM60に格納される(S20)。
【0044】
次に、S21では、RAM60に格納されているカウンタnの値を0に初期化する。ここで、このカウンタnの値は、S24〜S29までの処理の繰り返し実行回数を示し、1印字周期内における通電時間の長さを示す。カウンタnの値を0とした後、S22に移行する。
S22では、現在、通電非安定制御処理で処理されている1ライン分印字データ(以後、対象データと称す)が、全印字データにおける最初の1ライン分印字データであるか否かについての判断がなされる。対象データが、最初の1ライン分印字データである場合には(S22:YES)、S23に移行する。一方、対象データが最初の1ライン分印字データではない場合(S22:NO)、S24に移行する。
S24においては、RAM60に格納される電源状態を示すカウンタの値のリセットが行われる。ここで、本実施形態においては、電池弱ワーニングフラグの発生条件を規定する電源弱ワーニングカウンタmと、電池弱エラーフラグの発生条件を規定する電源弱エラーカウンタkとが存在する。
従って、印字データの印字を開始した時点においては、これらのカウンタの値、n、m、kの数値がリセットされ、0に設定される。カウンタ値のリセット終了後、S24に移行する。
尚、この電源弱エラーカウンタkと、電源弱ワーニングカウンタmの値は、1ライン分印字データごとにリセットされず、最初の1ライン分印字データの時のみリセットされる。従って、電源弱エラーカウンタk、電源弱ワーニングカウンタmの値は、後述するS32、S33により加算されると、1印字データの間が終了されるまで順次加算される。
【0045】
S24では、RAM60に格納されている制御基本値Cが0以下であるか否かについての判断がなされる。制御基本値Cが0以下である場合には(S24:YES)、S34に移行する。一方、制御基本値Cが0より大きい場合には(S24:NO)、S25に移行する。
そして、S25では、サーマルヘッド33に通電を開始する。この時、サーマルヘッド33配設されている64個の発熱素子は、1ライン通電データに基づいて通電され、1ライン分印字データの印字を行う。
サーマルヘッド33の発熱素子への通電が開始されると、S26に移行し、発熱素子への通電開始から、250μs経過したか否かの判断がなされる。ここで、CPU56は、サーマルヘッド33への通電開始から計時を開始するタイマ51の値を参照し、タイマ51の値に基づいて、250μs経過を判断する。
そして、CPU56は、発熱素子への通電開始から、250μs経過するまで、サーマルヘッド33への通電を継続し(S26:NO)、250μs経過した時点で(S26:YES)、S27に移行する。
【0046】
S27においては、CPU56は、ヘッド印加電圧検出回路54を用い、サーマルヘッド33に印加されている印加電圧データを取得し、取得した印加電圧データと、ROM58に格納されている制御変数C(v)と印加電圧との関係を示す制御変数テーブル(図8(b)参照)とに基づいて、制御変数C(v)を読み出す。
そして、S28では、CPU56は、制御基本値Cから、S27で読み出された制御変数C(v)を減算し、減算結果を新たな制御基本値Cとして、RAM60に格納する。
この点について、前述の具体例(図8(a)参照)において、サーマルヘッド33に対する印加電圧が8.63(V)であった場合を例として説明する。
図8(b)に示すように、印加電圧が8.63(V)の場合、制御変数C(v)の値は、2538となる。従って、S27においては、制御基本値C「81300」から制御変数C(v)の「2538」を減算した値が算出される。つまり、S28において、制御基本値Cは、「81300」から「78762」の値に更新され、RAM60に格納される。
その後、S29では、カウンタnに1を加算し、S30に移行する。
【0047】
このように、S24〜S29までの処理を一通り行うことで、サーマルヘッド33へは250μsの間、継続して通電されていることとなる。従って、カウンタnの値に250μsを乗じた値が、1ライン分印字データを印字する際に、サーマルヘッド33に通電されている時間となり、1印字周期中の33への通電時間を示すこととなる。
即ち、1印字周期中において、カウンタnの値が大きければ大きいほど、通電時間を多く要したこととなる。
又、図8(b)に示すように、制御基本値Cから減算される制御変数C(v)は、サーマルヘッド33の印加電圧が大きいほど、大きな値である。従って、印加電圧が大きいほど、カウンタnの値は小さな値を示し、逆に、印加電圧が小さな場合には、カウンタnの値は大きな値を示すこととなる。
言い換えると、電源装置88から供給される電圧が低い場合には、1印字周期内における通電時間が長期化し、電源装置88から供給される電圧が高い場合には、1印字周期内における通電時間を短期に終了することとなる。
【0048】
S30において、CPU56は、RAM60に格納されているカウンタnの数値が52以上であるか否かについての判断を行う。即ち、1印字周期(14.1ms)内の通電時間として、13ms以上の時間を要したか否かについての判断がなされる。
上述したように、供給される電圧が低い場合には、1印字周期における通電時間が長期化するのであるから、1印字周期内の通電時間の長さから電圧値を判断することができる。
カウンタnの値が52以上の数値を示している場合には(S30:YES)、供給される電圧が低下しており、印字用テープ9への印字にかすれ等の不具合が発生する蓋然性が高いと判断することができる。従って、この場合には、電源弱エラーカウンタkの値に1を加算する(S33)。電源弱エラーカウンタkの値に1を加算した後、S23に戻る。一方、カウンタnの値が51以下の場合(S30:NO)、S31に移行する。
【0049】
S31では、CPU56は、RAM60に格納されているカウンタnの数値が48以上であるか否かについての判断を行う。つまり、1印字周期(14.1ms)内の通電時間として、12ms以上の時間を要したか否かについての判断がなされる。カウンタnの数値が48以上である場合には(S31:YES)、電源弱ワーニングカウンタmの値に1を加算する(S32)。そして、電源弱ワーニングカウンタmの値に1を加算した後、S24に戻る。一方、カウンタnの値が47以下の場合には(S31:NO)、そのまま、S24に戻る。
【0050】
つまり、本実施形態においては、S30〜S33の処理より、1印字周期における通電時間は、3つの態様に類別される。3つの態様とは、通電時間が11.75ms以下の状態(S31:NO)と、通電時間が12ms以上であって、12.75msより長い状態(S31:YES)と、通電時間が13m以上の状態(S30:YES)とに類別される。
上述したように、通電時間は印加電圧に依存し、印加電圧が大きければ、通電時間は短縮化し、印加電圧が小さければ、通電時間は長期化する。従って、本実施形態においては、通電時間が11.75ms以下の場合には、テープ印字装置1の印字を行う上で十分な電圧が供給されていると判断する。一方、通電時間が13ms以上の場合には、テープ印字装置1の印字を実行に十分な電圧が供給することができていない。この場合に、テープ印字装置1により印字を継続すると、印字のかすれ等の印字不良が発生してしまう。つまり、乾電池28使用の場合に、乾電池28の状態を、印字を継続すると印字不良が発生してしまう要交換状態であると判断することができる。
又、通電時間が12ms以上であって、12.75msより長い場合には、印字不良が発生するほど乾電池28が弱っているわけではないが、テープ印字装置1の印字動作を継続すると近々、乾電池28の交換時期が到来する状態である。従って、この場合には、乾電池28の交換時期が来ることを警告する要警告状態と判断することができる。
即ち、本実施形態においては、電源装置88が要警告状態の場合には、電源弱ワーニングカウンタmに1を加算し、電源装置88が要交換状態の場合には、電源弱エラーカウンタkに1を加算する。
従って、電源弱ワーニングカウンタm、電源弱エラーカウンタkの数値を参照することにより、電源装置88の状態を正確に判断することができる。
【0051】
ここで、1ライン分印字データの印字を開始された時点で設定された制御基本値C「81300」は、S25〜S33までの処理を繰り返すことにより順次減算されていき、制御基本値が0以下になった時点で(S24:YES)、サーマルヘッド33への通電を停止する(S34)。そして、上述したように、制御基本値Cから減算される制御変数C(v)は、サーマルヘッド33に印加される印加電圧に基づいて決定されるので、電源装置88の状態に応じて、通電時間の長短が決定される。
【0052】
サーマルヘッド33への電源供給を停止した後(S34)、S35では、CPU56は、タイマ51を参照し、1印字周期(14.1ms)を経過したか否かを判断する。1印字周期(14.1ms)を経過するまで処理を待機し(S35:NO)、1印字周期(14.1ms)を経過した時点で(S35:YES)、S36に移行する。S34、S35の処理を実行することにより、1印字周期(14.1ms)における非通電時間が生成される。これにより、通電により、発熱していたサーマルヘッド33の発熱素子が冷却され、良好な印字を実行することが可能となる。
【0053】
S36では、CPU56は、RAM60に格納されている電源弱エラーカウンタkの数値が3以上であるか否かについての判断を行う。上述したように、電源弱エラーカウンタkは、1印字データにおいて、1印字周期中の通電時間が13.0ms以上となった場合に加算されるカウンタである。
即ち、S36では、1印字データの印字動作の現時点までの処理において、通電時間が13.0ms以上となった印字周期が3回以上存在するか否かについて判断する。
電源弱エラーカウンタkが3以上の数値を示している場合には(S36:YES)、1印字データ中に要交換状態と3回以上判断されているので、乾電池28の電池残量が、テープ印字装置1の印字に十分ではないと判断することができる。従って、この場合には、CPU56は、RAM60に電源弱エラーフラグをセットする(S37)。電源弱エラーフラグをセットした後、S38に移行する。一方、電源弱エラーカウンタkの数値が2以下の場合には(S36:NO)、そのままS38に移行する。
【0054】
S38では、CPU56は、RAM60に格納されている電源弱ワーニングカウンタmの数値が3以上であるか否かについての判断を行う。上述したように、電源弱ワーニングカウンタmは、1印字データにおいて、1印字周期中の通電時間が、12.0ms以上であって、12.75ms以下となった場合に加算されるカウンタである。
即ち、S38では、1印字データの印字動作の現時点までの処理において、通電時間が12.0ms以上であって、12.75ms以下となった印字周期が3回以上存在するか否かについて判断する。
電源弱ワーニングカウンタmが3以上の数値を示している場合には(S38:YES)、1印字データ中に要警告状態と3回以上判断されているので、乾電池28の電池残量が、テープ印字装置1の印字に支障はないものの、近々、要交換状態になるものと判断することができる。従って、この場合には、CPU56は、RAM60に電源弱ワーニングフラグをセットする(S39)。電源弱ワーニングフラグをセットした後、通電非安定制御処理(S10)を終了する。一方、電源弱ワーニングカウンタmの数値が2以下の場合には(S38:NO)、そのまま通電非安定制御処理(S10)を終了する。
【0055】
ここで、本実施形態において、通電非安定制御処理(S10)の実行と電圧との関係について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図9は、通電非安定制御処理と電圧に関する説明図である。
先ず、図9中において、「A」で示すように、印字周期の最初の状態の電圧から、250μs毎にサーマルヘッド33への通電を継続する(S25、S26)、電圧が低下していく。そして、この時、ヘッド印加電圧検出回路54により、サーマルヘッド33に印加されている電圧値が読み取られ、印加電圧に対応する制御変数C(v)が決定される。このC(v)を制御基本値Cより減算することにより、1印字周期内の通電時間が決定される。
図9に示す「A」の場合には、通電時間を示すカウンタnは、「47」を示しており、1印字周期(14.1ms)中において、時間にして「11.75ms」が通電時間に該当する。この場合には、通電時間が短いことから(S30:NO、S31:NO)、電源装置88から供給されている電圧は、テープ印字装置1の印字動作を実行するために十分な値であると判断できる。
一方、図9に示す「B」の場合には、通電時間を示すカウンタnは、「50」を示しており、1印字周期(14.1ms)中において、時間にして「12.50ms」が通電時間に該当する。ここで、図9に示すように、カウンタnの数値が48〜52の間にある、即ち、通電時間が12msから12.75msの範囲内であることから(S30:NO、S31:YES)、電源装置88から供給されている電圧は、要警告状態にあると判断できる。
そして、図9に示す「C」の場合は、通電時間を示すカウンタnは、「53」を示しているので、1印字周期中の「13.25ms」が通電時間になる。この時、カウンタnの数値「53」は、52以上であるので、1ライン分印字データを印字する為に、13ms以上の通電時間を要している。従って、「C」の場合には、このまま印字を継続した場合には電圧不足により、印字不良が発生する要交換状態であると判断される。
【0056】
上述したように、本実施形態に係るテープ印字装置1においては、一の印字データを印字する際に、要警告状態に3回以上なった場合は、液晶ディスプレイ6に、乾電池28の交換時期が近いことを報知するワーニング表示がなされる(S13)。これにより、ユーザは、乾電池28の交換を印字不良が発生する前に、乾電池28の交換を行うことができる。従って、電源装置88からの供給電圧不足による印字不良を発生することを事前に防止することができる。
又、液晶ディスプレイ6により、事前に乾電池28の交換を促されたにも関わらず、テープ印字装置1の乾電池28による使用を継続した場合においても、一の印字データを印字する際に要交換状態が3回以上発生したときに、その時点で印字動作が中断される(S11)。これにより、ユーザは、印字用テープ9を無駄に消費することなく、乾電池28の交換を行うことができる。
【0057】
ここで、本実施形態においては、乾電池28だけでなく、交流電源24を電源装置88として使用することができる。
この場合に、ACアダプタ23を介して、交流と直流に変換する際には、コンデンサなどで完全に平滑化することができずに残ってしまった、あるレベルの電圧を中心に三角波のような電圧変動であるリップルが生じる。
本実施形態においては、電圧値をそのまま電源残量として判定せず、ヘッド印加電圧検出回路54を介して、サーマルヘッド33の印加電圧を検出し、印加電圧に応じて変動する1印字周期中の通電時間の長さに基づいて、電源残量を判定する。
即ち、通電非安定制御処理(S10)を実行し、この通電非安定制御処理において、電源残量に係る判断を行うことにより、交流を直流に変換する際に生じるリップルの影響をなくし、正確な判断を行うことができる。
この結果、乾電池28を使用せずに、交流電源24からの電源供給を受けて使用している場合に、安定した電源供給を受けているにもかかわらず、リップルの影響により、上記警告表示をするといった誤作動が生じることがなくなる。
又、上記問題点の解決方法としては、例えば、乾電池28と、交流電源24とのどちらから電源供給を受けているかを判断するスイッチを配設することにより、交流電源24から電源供給を受けている場合には、電池残量に係る判定を実行しないようにするといった方法も存在する。しかし、本実施形態に係るテープ印字装置1では、上記スイッチを配設しなくとも、正確な判断をすることができる。従って、部品点数を削減した安価な製品に対しても適用することができ、広範な製品に適用することができる。
【0058】
ここで、本実施形態における電源装置88は、電源供給手段として機能し、印刷機構PMは、印刷手段として機能する。そして、制御ユニットCUは、印刷制御手段として機能するとともに、通電終了決定手段、電源状態判定手段、非常停止手段としても機能する。更に、制御ユニットCUを構成するROM58、RAM60は、記憶手段として機能する。
また、ヘッド印加電圧検出回路54は、電源電圧検出手段として機能し、タイマ51は、通電期間計測手段として機能する。そして、液晶ディスプレイ6は、報知手段として機能する。また、通電非安定制御処理(S10)におけるS30の判断を行う際に用いられる「カウンタnの値が52以上」という条件を示すデータが、第1判定データであり、S32の判断を行う際の「カウンタnの値が48以上」という条件を示すデータが第2判定データである。
【0059】
尚、本発明は、上記実施形態の記載に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、本実施形態においては、温度データと、テープ種データとに基づいて、制御変数C(v)を決定していたが、これに限定するものではない。例えば、サーマルヘッド33に64個列設された発熱素子の蓄熱状態や、直前の1ライン分印字データの発熱態様に応じて、制御変数C(v)の数値を補正することにより、より正確な電池寿命の判断をすることができる。
また、通電非安定制御処理(S10)におけるカウンタの処理(S30、S31、S36、S38)については、適用される製品に応じて、適宜設定変更することが可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施形態に係るテープ印字装置の外観斜視図である。
【図2】テープ印字装置の側面断面図である。
【図3】テープ印字装置の背面断面図である。
【図4】テープ印字装置の制御系ブロック図である。
【図5】テープ印字装置の電源供給系統のブロック図である。
【図6】テープ印字装置のメイン制御プログラムのフローチャートである。
【図7】テープ印字装置の通電非安定処理プログラムのフローチャートである。
【図8】テープ印字装置のデータ例である。(a)は、制御基本値Cに係るデータであり、(b)は、制御変数C(v)のデータテーブルである。
【図9】通電非安定処理に関する説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1 テープ印字装置
6 液晶ディスプレイ
22 接続端子
23 ACアダプタ
24 交流電源
28 乾電池
33 サーマルヘッド
51 タイマ
54 ヘッド印加電圧検出回路
56 CPU
58 ROM
60 RAM
88 電源装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源供給手段と、
通電することにより、印字データを被印刷媒体に印刷する印刷手段と、
前記電源供給手段の使用状況を判定する判定データを格納した記憶手段と、
前記印刷手段に通電する通電期間と、前記印刷手段への通電を中止する通電中止期間とからなる印刷周期毎に印刷制御を行う印刷制御手段と、
前記電源供給手段の電源電圧を検出する電源電圧検出手段と、
前記電源電圧検出手段の検出結果に基づいて、前記通電期間の終了を決定する通電終了決定手段と、
前記印刷周期における通電期間を計測する通電期間計測手段と、
前記通電期間計測手段の計測結果と、前記判定データに基づいて、前記電源供給手段の使用状態を判定する電源状態判定手段と、
前記電源状態判定手段の判定結果を報知する報知手段と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の印刷装置において、
前記記憶手段は、前記印刷手段により良好な印刷が可能な状態における標準通電時間より長い非常停止通電期間を示す第1判定データを格納し、
前記通電期間計測手段で計測された通電期間が、前記非常停止通電期間を超過していると判断された場合に、前記印刷手段への通電を非常停止する非常停止手段を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載の印刷装置において、
前記記憶手段は、前記標準通電時間よりも長く、前記非常停止通電期間よりも短い警告通電期間を示す第2判定データを格納し、
前記通電期間計測手段で計測された通電期間が、前記警告通電期間を超過していると判断された場合に、前記報知手段により、警告報知することを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−264100(P2006−264100A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85366(P2005−85366)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】