説明

印刷装置

【課題】出力を禁止すべき特定画像の複数部印刷が指示された場合に適切な処理を行う。
【解決手段】画像データが特定画像データを含むか否かの判定とその画像データに基づく印刷出力とを並行して行う判定・出力並行処理を実行し、ここで画像データに特定画像データが含まれると判定された場合には、判定時に印刷途中であった部については、少なくとも判定後に印刷される部分に無効化処理が施された画像を印刷し、それ以降に印刷される部については全面(印刷面全体)に無効化処理が施された画像を印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー複写機やカラープリンタ等の印刷装置においては、紙幣や有価証券等の偽造を阻止するための技術が各種提案されている。例えば、特許文献1に記載のものでは、原稿画像を読み取ることにより取得した画像データに基づく画像を用紙上に印刷する処理に並行して、その画像データに出力を禁止すべき特定画像データが含まれるか否かについての判定を行うように構成されている。そして、印刷中に画像データが特定画像データを含むと判定された場合には、白色トナーを用いて用紙上に既に印刷された画像を塗り潰す無効化処理を行った後、機械的な動作を停止させたり、あるいはその用紙を排出することで、印刷された特定画像が悪用されることを防ぐようになっている。
【特許文献1】特開平5−207261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような従来の印刷装置では、ある特定画像について複数部の印刷を行う指令を受けた際の適切な処理については、十分な検討がなされていなかった。即ち、例えば、複数のユーザによって使用される印刷装置において、一人のユーザがある特定画像について複数部の印刷を指示した場合に、機械的な動作を停止させると、特定画像を印刷しようとしていない他のユーザの処理までもが滞ってしまうなどの不都合がある。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、出力を禁止すべき特定画像の複数部印刷が指示された場合に適切な処理を行い得る印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明に係る印刷装置は、印刷指令が入力される指令入力手段と、画像データを取得する取得手段と、前記取得手段により取得される画像データに特定画像データが含まれるか否かを判定する判定手段と、被記録媒体上に画像を印刷する印刷手段と、前記印刷指令に基づき前記印刷手段に前記取得手段により取得された画像データに基づく画像を印刷させる制御手段と、を備え、前記制御手段は、複数部の印刷を行う印刷指令を受けたときに、前記判定手段による判定と並行して前記印刷手段に印刷を開始させ、前記判定手段により特定画像データが含まれると判定された場合には、印刷中の部には少なくともその判定後に印刷される部分に無効化処理を施した画像を印刷させ、それ以降に印刷する部には全面に無効化処理を施した画像を印刷させることで、当該印刷指令において指定された部数分の印刷を実行させ、続いて次の印刷指令を実行可能な状態となるところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明に係る印刷装置は、印刷指令が入力される指令入力手段と、画像データを取得する取得手段と、前記取得手段により取得される画像データに特定画像データが含まれるか否かを判定する判定手段と、被記録媒体上に画像を印刷可能な印刷手段と、前記印刷指令に基づき前記印刷手段に前記取得手段により取得された画像データに基づく画像を印刷させる制御手段と、を備え、前記制御手段は、複数部の印刷を行う印刷指令を受けたときに、前記判定手段による判定処理と並行して、前記印刷手段に印刷を開始させ、前記判定手段により特定画像データが含まれると判定された場合には、当該印刷指令に基づく印刷処理を中止し、続いて次の印刷指令を実行可能な状態となるところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、複数枚の被記録媒体を積載可能な積載部を備え、前記制御手段は、前記複数部の印刷を行う印刷指令に基づいて前記印刷手段に印刷を実行させるときに、前記判定手段により特定画像データが含まれると判定された場合には、前記積載部から前記印刷指令において指定された部数分の被記録媒体を取り出して排出するところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載のものにおいて、接続された情報処理装置から印刷指令及び画像データを受信する通信部を備え、前記指令入力手段は、印刷指令の入力操作が可能な操作部と、前記通信部とを備えて構成され、前記取得手段は、原稿画像を読み取ることで画像データを取得する原稿読取部と、前記通信部とを備えて構成され、前記制御手段は、前記操作部から入力される印刷指令と、前記通信部から入力される印刷指令とを、入力された順に実行するところに特徴を有する。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載のものにおいて、前記取得手段は、原稿画像を読み取ることで画像データを取得する原稿読取部を備え、前記制御手段は、複数部の印刷を行う印刷指令を受けたときに、前記印刷手段による各部の印刷ごとに前記原稿読取部に読み取り動作を行わせるとともに、前記判定手段により特定画像データが含まれると判定された場合には、前記原稿読取部による読み取り動作を停止させるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
<請求項1の発明>
複数部印刷の印刷指令を受けたときには、画像データの判定と並行して印刷を開始するため、判定の完了後に印刷を開始する場合のようにユーザが待ち時間を強いられることがない。
【0011】
また、少なくとも特定画像データが含まれると判定された後に印刷される部については、全面に無効化処理を施した画像を印刷するため、特定画像が一度に複数部印刷されることを防止でき、それにより印刷された特定画像の悪用を抑制できる。
【0012】
また、複数部印刷を実行する途中で特定画像データが含まれると判定された場合には、指定された部数分の印刷を実行した後、次の印刷指令を実行可能な状態になるため、他のユーザの処理が停滞することを回避できる。
【0013】
さらに、特定画像を印刷しようとするユーザは、被記録媒体として特殊な紙を印刷する部数分用意してそれらを装置にセットしていることが想定される。本構成では、特定画像データが含まれると判定された場合に、指定された部数分の印刷を行って同部数分の被記録媒体を消費させるために、次の印刷処理から通常の被記録媒体を用いての印刷が可能な状態になることが期待できる。
【0014】
<請求項2の発明>
複数部印刷の印刷指令を受けたときには、画像データの判定と並行して印刷を開始するため、判定の完了後に印刷を開始する場合のようにユーザが待ち時間を強いられることがない。
【0015】
また、印刷指令に基づいて複数部印刷を実行する際に、特定画像データが含まれると判定された場合には、その印刷指令に基づく印刷処理を中断するため、特定画像が一度に複数部印刷されることを防止でき、それにより印刷された特定画像の悪用を抑制できる。
【0016】
さらに、印刷処理の中断後は、次の印刷指令を実行可能な状態になるため、他のユーザの処理が停滞することを回避できる。
【0017】
<請求項3の発明>
特定画像を印刷しようとするユーザは、被記録媒体として特殊な紙を印刷する部数分用意してそれらを積載部にセットしていることが想定される。本構成では、特定画像データが含まれると判定された場合に、積載部から指定された部数分の被記録媒体を取り出して排出するために、次の印刷処理から通常の被記録媒体を用いての印刷が可能な状態になることが期待できる。
【0018】
<請求項4の発明>
印刷装置は、操作部から入力される印刷指令と、外部の情報処理装置から通信部を介して入力される印刷指令とを入力された順に実行する。これにより、例えば、一人のユーザが原稿読取部を用いて特定画像の印刷を図ったときに、他のユーザが外部の情報処理装置から通常の画像の印刷を実行させようとした場合などに、他のユーザの印刷処理が停滞することが防止される。
【0019】
<請求項5の発明>
複数部の印刷を行う際に、原稿読取部3による原稿画像の読み取り動作を各部の印刷ごとに行うため、画像データを記憶するために必要な記憶手段の容量が小さくて済む。このような印刷装置において、複数部の印刷中に画像データに特定画像データが含まれると判定された場合には、原稿読取部による読み取り動作を停止させる。これにより無駄な動作を省くことができ、また次の処理を早期に開始することも期待できる
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<実施形態1>
次に本発明の実施形態1を図1から図6を参照して説明する。
【0021】
1.全体構成
図1は、本発明の印刷装置の一例である複合機1の外観を示す斜視図であり、図2は、原稿カバー35を上げた状態を示す複合機1の斜視図である。この複合機1は、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能など各種の機能を備えた多機能周辺装置である。複合機1は、用紙5上に画像を形成する画像形成部10を収容する本体部2と、本体部2の上方に設けられ原稿画像を読み取る原稿読取部3とを備えている。
【0022】
(本体部)
図3は、本体部2の概略構成を示す断面図である。なお、以下の説明では、同図における左側を前方とする。
【0023】
本体部2は、略箱形の本体ケーシング4を備えており、この本体ケーシング4内の底部には、画像を形成するための用紙5(被記録媒体の一例)が複数枚積載される給紙トレイ6(積載部の一例)が前方へ引き出し可能に設けられている。給紙トレイ6の前端上方には、給紙ローラ7が設けられており、この給紙ローラ7の回転により給紙トレイ6内の最上位に積載された1枚の用紙5が、給紙ローラ7の上方に設けられたレジストローラ8に送り出される。レジストローラ8では、その用紙5を所定のタイミングで、後方のベルトユニット11上へ送り出す。
【0024】
本体ケーシング4内における給紙トレイ6の上方には、画像形成部10(印刷手段の一例)が設けられている。画像形成部10は、ベルトユニット11と、4つのプロセスユニット12M,12C,12Y,12Kと、4つの露光部13と、定着器14とから構成されている。
【0025】
ベルトユニット11は、前後一対の支持ローラ16,17間に搬送ベルト18を水平に架設してなり、後側の支持ローラ17が回転駆動されることにより循環移動し、その上面に載せた用紙5を後方へ搬送する。搬送ベルト18の内側には、後述のプロセスユニット12が有する各感光ドラム26と対向配置される4つの転写ローラ19が前後に並んで設けられている。
【0026】
露光部13は、それぞれ画像データの一色分に対応するレーザ光Lを光源から出射し、そのレーザ光Lをポリゴンモータ21により回転駆動されるポリゴンミラー等を介して、感光ドラム26の表面上に高速走査にて照射する。
【0027】
プロセスユニット12M,12C,12Y,12Kは、それぞれマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、及びブラック(K)のトナーを収容するトナー収容室23や、供給ローラ24、現像ローラ25、感光ドラム26、スコロトロン型帯電器27等を備えている。
【0028】
トナー収容室23から放出されたトナーは、供給ローラ24の回転により現像ローラ25に供給され、このとき、供給ローラ24と現像ローラ25との間で正に摩擦帯電される。感光ドラム26の表面は、その回転に伴って、まず、スコロトロン型帯電器27により一様に正帯電された後、露光部13からのレーザ光Lにより露光され、用紙5に形成すべき画像に対応した静電潜像が形成される。次いで、現像ローラ25の回転により、現像ローラ25上のトナーが感光ドラム26の表面に供給され、静電潜像が可視像化される。その後、感光ドラム26の表面上に担持されたトナー像は、用紙5が感光ドラム26と転写ローラ19との間を通過する間に、転写ローラ19に印加される転写バイアス電圧によって、用紙5に転写される。
【0029】
定着器14は、熱源を有する加熱ローラ28と、用紙5を加熱ローラ28側へ押圧する加圧ローラ29とを備えており、用紙5上に転写されたトナー像を紙面に熱定着させる。そして、定着器14により熱定着された用紙5は、上方へ搬送され、本体ケーシング4の上面に設けられた排出トレイ30上に排出される。
【0030】
(原稿読取部)
原稿読取部3(取得手段の一例)は、図1及び図2に示すように、透明なガラス板からなる原稿載置部33を備えている。この原稿載置部33には、いわゆるフラットベッド方式で原稿の読み取りを行う際に原稿が載置される。また、原稿載置部33の上面は、ADF34を備えた原稿カバー35により開閉可能に覆われている。ADF34は、複数枚の原稿を積載可能な原稿トレイ36を備えている。この原稿トレイ36には、原稿が載置されているか否かを検出するためのフォトセンサ等を利用した原稿検出センサ(図示せず)が設けられている。ADF34は、原稿トレイ36に載置された原稿を一枚ずつ搬送して、その原稿を次に述べるCCDイメージセンサ37により読み取らせた後に排出する。
【0031】
原稿載置部33の下側には、CCDイメージセンサ37(図4参照)が設けられている。このCCDイメージセンサ37は、前後方向に一列に並んで配置されたフォトダイオードを備えており、光源より原稿に強い光を当てたときの反射光を個々のフォトダイオードで受光し、原稿の画素毎に反射光の光強度(明度)を電気信号に変換する。原稿読取部3では、これをA/D変換器(図示せず)にてデジタルデータ化することで、原稿上に形成された画像を画像データとして読み取ることができる。
【0032】
原稿の読み取りは、原稿載置部33上に原稿を載置して行う場合と、ADF34を利用する場合とがある。前者の場合、原稿載置部33の板面に沿って左右方向にCCDイメージセンサ37が移動され、その際に1ラインずつ、原稿載置部33上の原稿の読み取りが行われる。また、後者の場合には、CCDイメージセンサ37が、原稿載置部33の左端位置に固定され、原稿がADF34によってCCDイメージセンサ37による読み取りが可能な位置に搬送されることで、原稿の読み取りが1ラインずつ行われる。
【0033】
また、原稿読取部3の前端部上面には、各種のボタン等からなる操作部39(指令入力手段の一例)が設けられている。この操作部39により、ユーザが原稿の印刷処理を実行させるための印刷指令など、複合機1を動作させるための各種の指令を入力することができるようになっている。
【0034】
2.電気的構成
次に、複合機1の電気的構成について説明する。図4は、複合機1の電気的構成を概念的に示すブロック図である。複合機1は、CPU51、ROM52、RAM53、不揮発性メモリ54、制御部55、ネットワークインターフェイス56等を備えて構成された制御装置50を備えている。
【0035】
ROM52には、複合機1を制御するための各種制御プログラムや各種設定、初期値等が記憶されている。RAM53は、各種制御プログラムが読み出される作業領域として、あるいは画像データを一時的に記憶する記憶領域として用いられる。さらに、RAM53には、後述するように、判定部61により画像データに特定画像データが含まれると判定されか否かについての情報や、入力された印刷指令の内容などが一時的に記憶される。
【0036】
CPU51は、ROM52から読み出した制御プログラムに従って、その処理結果をRAM53又は不揮発性メモリ54に記憶させながら、制御部55を介して複合機1の各構成要素を制御する。なお、CPU51は、本発明の制御手段としての機能を有する。
【0037】
ネットワークインターフェイス56(通信部、指令入力手段、取得手段の一例)には、外部のコンピュータ58(情報処理装置の一例)が接続され、相互のデータ通信が可能となっている。このネットワークインターフェイス56を介して外部のコンピュータ58からの印刷指令や画像データを受信することができる。
【0038】
制御部55は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)からなり、先に説明した原稿読取部3、画像形成部10、操作部39等の各部と電気的に接続されている。制御部55は、原稿読取部3に接続された読取補正部60と、この読取補正部60に接続された判定部61及び画像処理部62とを備えている。読取補正部60は、原稿読取部3による読み取り動作に並行して、その原稿読取部3が取得した画像データを受け取り、その画像データにガンマ補正、シェーディング補正等の補正処理を施す。
【0039】
判定部61(判定手段の一例)は、読取補正部60にて補正された画像データを受け取り、その画像データの画像内容に特定画像(紙幣や有価証券等)が含まれている否かを所定の判定条件に基づいて判定する。この判定条件の判定項目としては、例えば、画像データと予め記憶された参照用データとの合致率が用いられる。即ちこの場合、判定部61は、画像データと予め記憶された参照用データとの合致率を算出し、その合致率が所定の閾値以上であるときに、その画像データが特定画像データを含んでいると判定し、その閾値未満であるときに、その画像データは特定画像データを含んでいないと判定する。
【0040】
画像処理部62は、読取補正部60にて補正された画像データを受け取り、その画像データ(RGB画像データ)をマゼンタ、シアン、イエロー、及びブラックの各色に対応する画像データ(MCYK画像データ)に変換するなどの処理を行い、その変換処理後の画像データをRAM53に記憶させる。
【0041】
なお、上記判定部61及び画像処理部62は、ネットワークインターフェイス56を介して外部から受信した画像データ(展開処理後の画像データ)についても、原稿読取部3にて取得した画像データと同様に処理することができる。
【0042】
さらに、制御部55は、画像形成部10に接続される画像形成制御部64を備えている。この画像形成制御部64は、CPU51の制御により、RAM53に記憶された画像処理部62による変換済みの画像データを読み出し、画像形成部10を制御することにより用紙5上にその画像データに基づく画像を印刷し出力する。
【0043】
3.CPUの制御による動作
複合機1の電源が投入されると、CPU51は、操作部39またはネットワークインターフェイス56から入力される印刷指令を待機する状態となり、印刷指令が入力されるとその印刷指令の指示内容に従って印刷処理を実行する。一つの印刷指令に対する印刷処理の実行中に他の印刷指令を受けたときには、その他の印刷指令を処理待ち状態としてその指示内容をRAM53に記憶しておき、先の印刷指令に対する処理完了後に、後の印刷指令に対する処理を実行する。また、複数の印刷指令が処理待ち状態となった場合には、それらの印刷指令を入力された順に一つずつ実行する。
【0044】
次に、原稿載置部33に載置された原稿から読み取った画像を複数部印刷出力する場合の処理について説明する。図5及び図6は、CPU51によって実行される制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0045】
ユーザが原稿載置部33に原稿を載せた状態で、操作部39から原稿の複数部の印刷(コピー)を指示する印刷指令を入力すると、CPU51は、その印刷指令を受けて図5に示す印刷処理を開始する。CPU51は、まず判定部61により画像データに特定画像データが含まれると判定されたか否かを判断する(S11)。印刷処理の開始直後は、まだ判定部61による判定が行われていないので、ここでは必ず否と判断される(S11:No)。続いて、CPU51は、判定部61による判定と画像形成部10による印刷出力とを並行して行う判定・出力並行処理を実行する(S12)。
【0046】
この判定・出力並行処理においては、図6に示すように、CPU51は、まず原稿読取部3に原稿画像の読み取り動作を実行させ、それに並行して画像形成制御部64を印刷出力可能な状態とする(S21)。前述のように判定部61では、この読み取り動作に並行して、原稿読取部3により取得された画像データ(読取補正部60にて補正処理が施された画像データ)が特定画像データを含んでいるか含んでいないかの判定が行われる。また、これに並行して、画像処理部62では画像データ(補正処理が施された画像データ)の変換処理が行われ、変換処理済みの画像データが順次RAM53に記憶される。
【0047】
そして、RAM53に記憶される変換処理後の画像データが所定量になると画像形成部10による印刷出力が開始される。即ち、画像形成制御部64によりRAM53に記憶された変換処理済みの画像データが順次読み込まれ、画像形成部10によりその画像データに基づく画像が用紙5に印刷され出力される。なお、印刷出力が完了した画像データは、順次RAM53上から消去される。
【0048】
続いて、CPU51は、判定部61により画像データが特定画像データを含んでいると判定されたか否かを判断する(S22)。そこで、特定画像データを含んでいると判定されていない場合(S22:No)には、原稿読取部3により原稿画像の読み取り動作が完了したか否かを判断し(S23)、読み取り動作が完了していない場合(S23:No)には、S21に戻り、S21〜S23の処理を繰り返す。原稿画像の読み取り動作が完了した場合(S23:Yes)には、この判定・出力並行処理を抜ける。これにより、原稿から取得された画像データに基づく画像が印刷された用紙5が1部排出トレイ30上に排出される。
【0049】
また、判定部61により画像データが特定画像データを含むと判定された場合(S22:Yes)には、CPU51は、画像形成部10に無効化処理が施された画像データに基づく画像の印刷出力を実行させる(S24)。画像データに無効化処理を施すには、例えば、CCDイメージセンサ37の移動を停止させたり、CCDイメージセンサ37の光源をオフにすることなどにより原稿読取部3によって取得される画像データを異常とする方法がある。その他にも、画像処理部62にて変換処理を行う際に画像データに何らかの改変を加える方法、画像形成制御部64によりRAM53から画像データを読み出す際に画像データに何らかの改変を加える方法などがある。なお、判定部61により画像データが特定画像データを含むと判定された場合(S22:Yes)に、原稿読取部3の読み取り動作を停止するように構成しても良い。
【0050】
これにより、印刷中の部については、少なくとも判定後に印刷される部分に無効化処理が施された画像が印刷された状態で出力される。なお、無効化処理が施された画像データに基づく画像とは、例えば、元の画像の上に模様や文字等を重ねたものとしても良く、あるいは、元の画像と全く異なる画像としても良い(塗りつぶし等も含む)。こうして、この判定・出力並行処理を抜ける。
【0051】
判定・出力並行処理(S12)に続いて、CPU51は、指定部数の出力が完了したか否かを判断し(S13)、完了していない場合(S13:No)にはS11に戻る。S12の判定・出力並行処理において判定部61により画像データが特定画像データを含むと判定されていない場合には、S11〜S13の処理を指定部数と同じ回数繰り返し行い、指定部数の印刷出力が完了したところで(S13:Yes)、この印刷処理を終了する。
【0052】
また、S12の判定・出力並行処理において判定部61により画像データが特定画像データを含むと判定された場合には、S11において、判定部61により画像データに特定画像データが含まれると判定されたと判断される(S11:Yes)。この場合には、CPU51は、画像形成部10に無効化処理が施された画像データに基づく画像の印刷出力を1部実行させる(S14)。ここでの処理は前述のS24の処理と同様であるが、1部の印刷出力の開始時から無効化処理が施された画像データに基づいて印刷が行われるため、その1部の全面に無効化処理が施された画像が印刷される。
【0053】
続いて、S13にて、指定部数の出力が完了したかを判断し、完了するまでS11,S14,S13の処理を繰り返し行う。そして、指定部数の出力が完了したところ(S13:Yes)で、この印刷処理を終了する。
【0054】
印刷処理が終了すると、CPU51は、次の印刷指令を実行可能な状態となる。このため、次の印刷指令が既に入力されて処理待ちの状態になっていた場合には、その印刷指令が続けて実行される。また、次の印刷指令が入力されていない場合には、印刷指令の入力を待機する。
【0055】
4.本実施形態の効果
本実施形態によれば、複数部印刷の印刷指令を受けたときには、画像データの判定と並行して印刷を開始するため、判定の完了後に印刷を開始する場合のようにユーザが待ち時間を強いられることがない。
【0056】
また、少なくとも特定画像データが含まれると判定された後に印刷される部については、全面に無効化処理を施した画像を印刷するため、特定画像が一度に複数部印刷されることを防止でき、それにより印刷された特定画像の悪用を抑制できる。
【0057】
また、複数部印刷を実行する途中で特定画像データが含まれると判定された場合には、指定された部数分の印刷を実行した後、次の印刷指令を実行可能な状態になるため、他のユーザの処理が停滞することを回避できる。
【0058】
さらに、特定画像を印刷しようとするユーザは、被記録媒体として特殊な紙を印刷する部数分用意してそれらを装置にセットしていることが想定される。本構成では、特定画像データが含まれると判定された場合に、指定された部数分の印刷を行って同部数分の被記録媒体を消費させるために、次の印刷処理から通常の被記録媒体を用いての印刷が可能な状態になることが期待できる。
【0059】
また、複合機1は、操作部39から入力される印刷指令と、外部のコンピュータ58からネットワークインターフェイス56を介して入力される印刷指令とを入力された順に実行する。これにより、例えば、一人のユーザが原稿読取部3を用いて特定画像の印刷を図ったときに、他のユーザが外部のコンピュータ58から通常の画像の印刷を実行させようとした場合などに、他のユーザの印刷処理が停滞することが防止される。
【0060】
また、複合機1は、複数部の印刷を行う際に、原稿読取部3による原稿画像の読み取り動作を各部の印刷ごとに行うため、画像データを記憶するために必要な記憶手段の容量が小さくて済む。このような複合機1において、複数部の印刷中に画像データに特定画像データが含まれると判定された場合には、原稿読取部3による読み取り動作を停止させる。これにより無駄な動作を省くことができ、また次の処理を早期に開始することも期待できる。
【0061】
<実施形態2>
次に本発明の実施形態2について図7のフローチャートを参照して説明する。
本実施形態では、原稿載置部33または原稿トレイ36に載置された原稿から読み取った画像を複数部印刷出力する場合の処理について説明する。なお、複合機1の構成については実施形態1と同様である(以下の実施形態も同様)。
【0062】
ユーザが原稿載置部33または原稿トレイ36に原稿を載せて、操作部39から複数部の印刷(コピー)を指示する印刷指令を入力すると、CPU51は、その印刷指令を受けて図7に示す印刷処理を開始する。CPU51は、まず判定・出力並行処理(実施形態1と同様、図6参照)を実行する(S31)。これにより、原稿の読み取り動作と判定処理とが行われ、それに並行して最初の1部目が印刷出力される。このとき、画像読取部3によって取得された画像データ(画像処理部62による変換処理後の画像データ)は、RAM53上から消去されずに、原稿1枚分全ての画像データがRAM53に記憶される。
【0063】
続いて、CPU51は、判定部61により画像データに特定画像データが含まれると判定されたか否かを判断する(S32)。S31の判定・出力並行処理において、特定画像データが含まれると判断されていない場合(S32:No)には、画像形成部10によりRAM53に記憶された原稿1枚分の画像データに基づく画像を1枚の用紙5に印刷し出力する(S33)。そして、指定部数の出力が完了したか否かを判断し(S34)、完了していない場合(S34:No)にはS32に戻り、S32〜S34の処理を指定部数より1つ少ない回数行い、指定部数の印刷出力が完了したところで(S34:Yes)、この印刷処理を終了する。
【0064】
また、CPU51は、S31の判定・出力並行処理において、画像データに特定画像データが含まれると判定された場合(S32:Yes)には、画像形成部10に無効化処理が施された画像データに基づく画像の印刷出力を1部実行させる(S35)。続いて、S34にて、指定部数の出力が完了したかを判断し、完了するまでS32,S35,S34の処理を繰り返し行い、指定部数の出力が完了したところ(S34:Yes)で、この印刷処理を終了する。印刷処理が終了すると、CPU51は、次の印刷指令を実行可能な状態となる。
【0065】
以上の処理により、S31の判定・出力並行処理において画像データに特定画像データが含まれると判定された場合(S32:Yes)には、判定時に印刷途中であった部については、少なくとも判定後に印刷される部分に無効化処理が施された画像が印刷され、それ以降に印刷される部については全面(印刷面全体)に無効化処理が施された画像が印刷されることになる。
【0066】
<実施形態3>
次に本発明の実施形態3について図8のフローチャートを参照して説明する。
本実施形態では、実施形態1(図5参照)の無効化出力処理(S14)に代えて、用紙5を1枚排出する処理(S44)を行い、それ以外の処理(S41〜S43)は、実施形態1の処理(S11〜S13)と同様の処理を行う。
【0067】
本実施形態では、CPU51は、S42の判定・出力並行処理(図6参照)において、画像データに特定画像データが含まれると判定された場合には、判定時に印刷途中であった最初の1部目については、実施形態1と同様に、少なくとも判定後に印刷される部分に無効化処理が施された画像を印刷した状態で出力する。
【0068】
続いて、S43でNo、S41でYesに進み、S44にて用紙5を1枚排出する処理を行う。即ち、ここで、CPU51は、画像データを印刷する処理を中止(キャンセル)するとともに、給紙ローラ7、搬送ベルト18等を駆動させることにより給紙トレイ6から1枚の用紙5を取り出して搬送し、その用紙5を画像の印刷を行うことなく白紙のままの状態で排出トレイ30上に排出する。その後、指定部数の出力(排出)が完了したか否かを判断し(S43)、完了していない場合(S43:No)にはS41に戻り、S41,S44,S43の処理を繰り返す。そして、指定部数の出力が完了したところで(S43:Yes)、CPU51は、この印刷処理を終了し、次の印刷指令を実行可能な状態となる。
【0069】
本実施形態によれば、実施形態1と同様の効果に加え、トナー等の着色剤の消費を抑制できる。
【0070】
<実施形態4>
次に本発明の実施形態4について図9のフローチャートを参照して説明する。
本実施形態では、実施形態2(図7参照)の無効化出力処理(S35)に代えて、用紙5を1枚排出する処理(S55)を行い、それ以外の処理(S51〜S54)は、実施形態2の処理(S31〜S34)と同様の処理を行う。
【0071】
本実施形態でも、CPU51は、S51の判定・出力並行処理(図6参照)において、画像データに特定画像データが含まれると判定された場合には、判定時に印刷途中であった最初の1部目については、少なくとも判定後に印刷される部分に無効化処理が施された画像を印刷した状態で出力する。
【0072】
そして、S52でYesに進み、S55にて、印刷処理を中止(キャンセル)して、用紙5を1枚排出する処理を行う。その後、指定部数の出力(排出)が完了したか否かを判断し(S55)、完了していない場合(S54:No)にはS52に戻り、S52,S55,S54の処理を繰り返す。そして、指定部数の出力が完了したところで(S54:Yes)、CPU51は、この印刷処理を終了し、次の印刷指令を実行可能な状態となる。
本実施形態によれば、実施形態1と同様の効果に加え、トナー等の着色剤の消費を抑制できる。
【0073】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0074】
(1)上記実施形態では、原稿読取部3によって原稿画像を読み取ることで取得した画像データを用紙5に印刷出力する場合を示したが、本発明は、外部の情報処理装置から送信された画像データをネットワークインターフェイス56を介して取得して用紙5に印刷出力する場合にも適用することが可能である。この場合は、例えば、外部からの画像データの受信と並行して判定部61による判定や、画像処理部62による変換処理及び画像形成部10による印刷出力を実行するように構成すれば良い。
【0075】
(2)上記実施形態では、最初の1部目の印刷出力中に特定画像データを含むと判定されたときは、判定後に印刷される部分に無効化処理が施された画像を印刷するように構成したが、本発明によれば、例えば、印刷中の部を逆向きに搬送して、用紙上に既に印刷された画像を塗り潰したり、その画像を上に所定の模様や文字等を重ねて印刷するようにしても良い。
【0076】
(3)上記実施形態では、印刷装置として、いわゆる直接転写型タンデム方式のレーザプリンタを示したが、これに限らず本発明は、中間転写型タンデム方式や4サイクル方式などの他の方式のレーザプリンタにも適用でき、さらにインクジェット方式のプリンタなどにも適用することができる。
【0077】
(4)複数部の印刷を行う際に、実施形態1,3のように、原稿の読み取り動作を各部の印刷ごとに行う印刷処理と、実施形態2,4のように、原稿の読み取り動作を1回のみ行う印刷処理とを、印刷指令の指示内容等に応じて振り分けるようにしてもよい。即ち、例えば、解像度の高い(画像データのデータ量が大きい)高画質モードで印刷出力を行う場合には、記憶手段の使用量が少なくて済む前者の印刷処理を実行し、解像度の低い低画質モードで印刷出力を行う場合には後者の印刷処理するように構成してもよい。あるいは、原稿載置部上の原稿を読み取る場合には、原稿の複数回の読み取りが可能であるので、前者の印刷処理を実行し、複数回の読み取りができないADF34による読み取りを行う場合には、1回の読み取り動作で済む後者の印刷処理を実行するように構成しても良い。
【0078】
(5)上記実施形態では、RAMを画像データを記憶するデータ記憶手段として用いたが、画像データのみを専門に扱う画像メモリを別に設けても良い。
(6)画像データをRAM等の記憶手段に記憶させる際に画像データを圧縮して記憶させ、読み出す際に画像データを解凍させるように構成しても良い。
(7)上記実施形態3,4では、特定画像を含むと判定された場合に、印刷処理を中止(キャンセル)するとともに用紙の排出を行うものを示したが、用紙の排出を行わずに印刷処理の中止を行うだけでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の印刷装置の一例である複合機の外観を示す斜視図
【図2】原稿カバーを上げた状態を示す複合機の斜視図
【図3】本体部の概略構成を示す断面図
【図4】複合機の電気的構成を概念的に示すブロック図
【図5】実施形態1における印刷処理の流れを示すフローチャート
【図6】判定・出力並行処理の流れを示すフローチャート
【図7】実施形態2における印刷処理の流れを示すフローチャート
【図8】実施形態3における印刷処理の流れを示すフローチャート
【図9】実施形態4における印刷処理の流れを示すフローチャート
【符号の説明】
【0080】
1…複合機(印刷装置)
3…原稿読取部(取得手段)
5…用紙(被記録媒体)
6…給紙トレイ(積載部)
10…画像形成部(印刷手段)
39…操作部(指令入力手段)
51…CPU(制御手段)
56…ネットワークインターフェイス(通信部、指令入力手段、取得手段)
58…コンピュータ(情報処理装置)
61…判定部(判定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷指令が入力される指令入力手段と、
画像データを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得される画像データに特定画像データが含まれるか否かを判定する判定手段と、
被記録媒体上に画像を印刷する印刷手段と、
前記印刷指令に基づき前記印刷手段に前記取得手段により取得された画像データに基づく画像を印刷させる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、複数部の印刷を行う印刷指令を受けたときに、前記判定手段による判定と並行して前記印刷手段に印刷を開始させ、前記判定手段により特定画像データが含まれると判定された場合には、印刷中の部には少なくともその判定後に印刷される部分に無効化処理を施した画像を印刷させ、それ以降に印刷する部には全面に無効化処理を施した画像を印刷させることで、当該印刷指令において指定された部数分の印刷を実行させ、続いて次の印刷指令を実行可能な状態となることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
印刷指令が入力される指令入力手段と、
画像データを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得される画像データに特定画像データが含まれるか否かを判定する判定手段と、
被記録媒体上に画像を印刷可能な印刷手段と、
前記印刷指令に基づき前記印刷手段に前記取得手段により取得された画像データに基づく画像を印刷させる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、複数部の印刷を行う印刷指令を受けたときに、前記判定手段による判定処理と並行して、前記印刷手段に印刷を開始させ、前記判定手段により特定画像データが含まれると判定された場合には、当該印刷指令に基づく印刷処理を中止し、続いて次の印刷指令を実行可能な状態となることを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
複数枚の被記録媒体を積載可能な積載部を備え、
前記制御手段は、前記複数部の印刷を行う印刷指令に基づいて前記印刷手段に印刷を実行させるときに、前記判定手段により特定画像データが含まれると判定された場合には、前記積載部から前記印刷指令において指定された部数分の被記録媒体を取り出して排出することを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
接続された情報処理装置から印刷指令及び画像データを受信する通信部を備え、
前記指令入力手段は、印刷指令の入力操作が可能な操作部と、前記通信部とを備えて構成され、
前記取得手段は、原稿画像を読み取ることで画像データを取得する原稿読取部と、前記通信部とを備えて構成され、
前記制御手段は、前記操作部から入力される印刷指令と、前記通信部から入力される印刷指令とを、入力された順に実行することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記取得手段は、原稿画像を読み取ることで画像データを取得する原稿読取部を備え、
前記制御手段は、複数部の印刷を行う印刷指令を受けたときに、前記印刷手段による各部の印刷ごとに前記原稿読取部に読み取り動作を行わせるとともに、前記判定手段により特定画像データが含まれると判定された場合には、前記原稿読取部による読み取り動作を停止させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−235378(P2007−235378A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52673(P2006−52673)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】