説明

印刷装置

【課題】小型、かつ、印刷物の状態に合致した印刷プレビューを行うことが可能な印刷装置を提供すること。
【解決手段】印刷媒体Pに画像を印刷する印刷手段を備え、印刷媒体Pに画像を印刷した状態を示す印刷プレビューを表示する印刷装置であって、印刷手段を収容する筐体10と、該筐体10の内部に設けられ光を射出する光源装置21Rと、筐体10の内部に設けられ、光源装置21Rから射出された光を印刷媒体Pに向けて走査し、印刷プレビューを印刷媒体Pに投影させる走査手段30とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体に画像を印刷した状態を示す印刷プレビューを表示する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷時のプレビュー確認には、コンピュータのディスプレイ上で印刷プレビューを確認したり(例えば、特許文献1参照。)、プリンタ内蔵のディスプレイに表示させる方法(例えば、特許文献2参照。)等が用いられてきた。しかしながら、これらの方法による印刷時のプレビューは、ディスプレイ上での画像のサイズや、実際の印刷対象の質感の違い等の理由で、実際に印刷される印刷物の状態を正確に認識するには、不十分であった。また、既に枠等の印刷が施された(原稿用紙や記入用紙など)印刷用紙へのプリントアウトの際には、プレビューディスプレイ上での紙面レイアウトと、実際の紙面上のレイアウトが合致しないという問題がある。
【0003】
この問題を解決する手段として、実際に紙面上にプレビューを投影する投影装置が設けられた印刷プレビューシステムが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
この特許文献3に記載の印刷プレビューシステムは、パーソナルプリンタに接続されたプリンタと、ロール紙を保持する保持機構と、印刷プレビューを投写表示するためのプロジェクタとを備えている。そして、保持機構により、プロジェクタからの画像を投写可能な状態にロール紙を保持することにより、プロジェクタからロール紙上に印刷プレビューを実寸で投写することが可能となっている。
【特許文献1】特開平10−40045号公報
【特許文献2】特開2001−130115号公報
【特許文献3】特開2005−208792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術には以下のような課題が残されている。すなわち、上記特許文献3に記載の印刷プレビューシステムでは、プリンタの他にプロジェクタを用いて印刷プレビューを行っているため、プリンタとプロジェクタとを一体化するのが困難となる。したがって、システム全体が大型化してしまうという問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、小型、かつ、印刷物の状態に合致した印刷プレビューを行うことが可能な印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の印刷装置は、印刷媒体に画像を印刷する印刷手段を備え、前記印刷媒体に画像を印刷した状態を示す印刷プレビューを表示する印刷装置であって、前記印刷手段を収容する筐体と、該筐体の内部に設けられ光を射出する光源装置と、前記筐体の内部に設けられ、前記光源装置から射出された光を前記印刷媒体に向けて走査し、前記印刷プレビューを前記印刷媒体に投影させる走査手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る印刷装置では、光源装置から射出された光を走査手段により走査することで、画像を印刷した状態を示す印刷プレビューを印刷媒体に投影させる。したがって、従来のように印刷装置の他にプロジェクタを用いて印刷プレビューを行う場合に比べ、印刷媒体に投射される光の投射角度の制限が少なくなるため、筐体の内部に印刷手段を収めつつ、印刷プレビューの画像を形成する光源装置及び走査手段を収めることができる。これにより、装置全体の小型化を図ることが可能となる。
また、光を走査させることにより、印刷プレビューを表示させることができるので、実際に印刷される印刷媒体上で、実寸での印刷プレビューの表示が可能となる。これにより、実際の印刷物の状態に合致した画像を印刷媒体に投影することが可能となる。
【0008】
また、本発明の印刷装置は、一方の面側に前記印刷媒体を保持する保持部材を備え、
前記走査手段により、前記保持部材の一方の面側から前記印刷プレビューを前記印刷媒体に投影させることが好ましい。
【0009】
本発明に係る印刷装置では、光源装置から射出された光を走査手段により走査することにより、画像を印刷した状態を示す印刷プレビューを保持部材の一方の面に保持された印刷媒体に投影させる。このように、保持部材の一方の面に保持された印刷媒体に印刷プレビューを投影させることにより、筐体の内部に設けられた光源装置及び走査手段の配置の自由度が向上する。
【0010】
また、本発明の印刷装置は、前記光源装置より射出された光の光路を覆う保護部材を備えることが好ましい。
本発明に係る印刷装置では、保護部材が、光源装置より射出された光の光路を覆う。これにより、体の一部を光路上に入れたり、物を光路上に挿入させたりすることができないので、印刷媒体以外に光が照射されるのを防止することが可能となる。
【0011】
また、本発明の印刷装置は、一方の面側に前記印刷媒体を保持する保持部材を備え、前記走査手段により、前記保持部材の他方の面側から前記印刷プレビューを前記印刷媒体に投影させることが好ましい。
【0012】
本発明に係る印刷装置では、光源装置から射出された光を走査手段により走査することにより、画像を印刷した状態を示す印刷プレビューを保持部材の一方の面に保持された印刷媒体に保持部材の他方の面から投影させる。このように、保持部材の他方の面側から印刷プレビューを印刷媒体に投影させた場合、印刷媒体を介して外部に光が射出される。これにより、光源装置から射出された光が、筐体の外部に漏れ出ることをより確実に防止することができる。
【0013】
また、本発明の印刷装置は、前記筐体には、前記光源装置より射出された光の光路を覆う収納体が設けられ、該収納体の内部に前記走査手段が設けられていることが好ましい。
【0014】
本発明に係る印刷装置では、筐体に設けられた収納体により、光源装置から射出された光の光路を覆うことで、光源装置から射出された光が、所定の光路以外から筐体の外部に漏れ出ることをより確実に防止することができる。
【0015】
また、本発明の印刷装置は、前記筐体に開口部が形成され、前記光源装置から射出された光は、前記筐体内から前記開口部を通過して前記印刷媒体に投影されることが好ましい。
【0016】
本発明に係る印刷装置では、光源装置から射出された光は、走査手段により走査され、筐体に形成された開口部を通過する。これにより、画像を印刷した状態を示す印刷プレビューが印刷媒体に投影される。このように、筐体に開口部を形成することにより、開口部以外から筐体の外部に光が射出されることのない印刷装置を提供することが可能となる。
【0017】
また、本発明の印刷装置は、前記印刷媒体の有無を検知する検知手段と、該検知手段による前記印刷媒体の有無に応じて前記光源装置からの光の照射,非照射または光量を制御する制御手段とを備えることが好ましい。
【0018】
本発明に係る印刷装置では、検知手段により、印刷媒体の有無を検知し、検知手段による印刷媒体の有無に応じて、制御手段により、光源装置からの光の照射,非照射または光量を制御する。このため、例えば、印刷媒体が配置されていない場合は、光源装置の駆動を停止させる。これにより、筐体から印刷媒体以外に光が射出されることのない印刷装置を提供することが可能となる。
【0019】
また、本発明の印刷装置は、前記走査手段が、MEMSミラーであることが好ましい。
本発明に係る印刷装置では、光源装置から射出された光をMEMSミラーにより走査することにより、画像を印刷した状態を示す印刷プレビューを印刷媒体に投影させる。このように、MEMSミラーを用いることにより、筐体内の光学系を小型化することができ、さらには、他のミラーを用いた場合に比べ、装置全体の低消費電力化、静音、低振動等の効果を得ることが可能となる。
【0020】
また、本発明の印刷装置は、前記光源装置が、レーザダイオードであることが好ましい。
本発明に係る印刷装置では、光源装置としてレーザダイオードを用いることにより、光源装置を小型化することができるため、装置全体の小型化及び低消費電力化を図ることが可能になる。
【0021】
また、本発明の印刷装置は、前記光源装置が、単色の光を射出することが好ましい。
本発明に係る印刷装置では、光源装置が単色であるため、印刷媒体上でのレイアウトを確認する上では、必要最小限の印刷プレビューを印刷媒体に投影することができる。したがって、簡易な構成により、部品点数を抑えることができるので、コストの削減を図ることが可能となる。
【0022】
また、本発明の印刷装置は、前記光源装置が、複数の色の光を射出することが好ましい。
本発明に係る印刷装置では、複数の色からなる印刷プレビューが印刷媒体に投影される。特に、赤、緑、青、あるいは3色以上の色の光源装置を用いた場合、フルカラーの表示が可能となる。したがって、光の色再現性は、印刷装置の色再現性を十分に凌駕するため、実際に印刷される画像と同等の色味を有する画像を投影することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明に係る印刷装置の実施形態について説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0024】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る印刷装置の外観を示す斜視図であり、図2は、図1の印刷装置のA−A線における断面矢視図であり、図3は、印刷装置の内部の光学系を示す斜視図であり、図4は、用紙Pにおけるレーザ光の軌道を示す模式図である。
本実施形態に係る印刷装置は、カラー画像の出力が可能なインクジェット方式のプリンタ1であり、ホスト装置としてのパーソナルコンピュータ(以下PCと称す。)2から送信される印刷データに基づいて印刷を行う。なお、プリンタ1とPC2とは、例えば、USBケーブル3により接続されている。
【0025】
プリンタ1は、筐体10と、筐体10の背面10a側に設けられ、用紙(印刷媒体)Pが供給される用紙供給装置11とを備えている。なお、用紙Pとして、本実施形態ではA4サイズを想定している。
この筐体10の前面10bには、排紙口12が設けられている。また、筐体10の中央部に設けられたカバー13の下方には、プリンタ部(図示略:印刷手段)が設けられており、このプリンタ部の作動により印刷された用紙Pが、筐体10の前面10bの下部に設けられた排紙口12から排出されるようになっている。
また、筐体10の上面10cには、図2に示すように、用紙Pを筐体10の内部に挿入可能な幅M(2cm程度)の長方形状のスリット(開口部)15が形成されている。
【0026】
用紙供給装置11は、図2に示すように、表面(一方の面)17aに用紙(印刷媒体)Pを保持するフィーダ(保持部材)17と、用紙Pを筐体10の内部に送り込むローラ(図示略)とを備えている。
このフィーダ17は、筐体10の上面10cに形成されたスリット15から筐体10の内部に用紙Pを給紙することを可能にしている。
【0027】
また、筐体10の内部には、図3に示すような、光学系20が設けられている。この光学系20は、赤色のレーザ光を射出する赤色光源装置(光源装置)21Rと、赤色光源装置21Rから射出されたレーザ光を平行光に変換するコリメータレンズ22と、コリメータレンズ22から射出された平行光を走査するMEMSミラー(走査手段)30とを備えている。
さらに、光学系20は、図2に示すように、MEMSミラー30により走査されたレーザ光をフィーダ17に保持された用紙Pに反射させる反射ミラー24を備えている。これにより、赤色光源装置21Rから射出されたレーザ光は、反射ミラー24に反射された後の一部の光までは、筐体10の外部に射出されることがない構成となっている。
【0028】
赤色光源装置21Rは、中心波長が630nmである半導体レーザ(レーザダイオード)である。また、赤色光源装置21Rは、図1に示すように、当該赤色光源装置21Rから射出されコリメータレンズ22まで進行するレーザ光の光軸Oが、フィーダ17に保持された用紙Pの幅方向(短手方向)に平行となるように配置されている。
また、フィーダ17の水平方向に対する傾斜角度は約65°となっている。
【0029】
また、MEMSミラー30は、図3に示すように、ミラー部31と、梁32a,32bと、第1基板33と、梁34a,34bと、第2基板35とを備えている。
ミラー部31は、MEMSミラー30の中央部に設けられており、入射したレーザ光を用紙Pに反射させるものである。梁32a,32bは、ミラー部31の両側に外方に向かって伸びており、用紙Pにおける左右方向(x軸方向)に設けられている。
また、第1基板33は、ミラー部31を囲む額縁状であり、梁32a,32bに接続されている。梁34a,34bは、第1基板33の外方に向かって伸びており、用紙Pにおける上下方向(y軸方向)に設けられている。
また、第2基板35は、第1基板33を囲む額縁状であり、梁34a,34bに接続されている。
これらにより、第1基板33は、梁32a,32bを揺動軸として、揺動運動が可能となっており、第2基板35は、梁34a,34bを揺動軸として、揺動運動が可能となっている。したがって、ミラー部31は、x軸及びy軸の2軸揺動が可能、すなわち、用紙Pの水平方向及び垂直方向にレーザ光を走査することが可能となっている。
【0030】
また、MEMSミラー30は、図3に示すように、用紙Pをフィーダ17に保持させた状態における縦方向(垂直方向、上下方向)における縦走査は、34kHzの共振運動を行うようになっており、横方向(水平方向、左右方向)における横走査は、20Hzのフライバック動作を行うようになっている。これにより、A4サイズの用紙Pに180dpiの解像度で印刷プレビューが投影可能となっている。
【0031】
反射ミラー24は、図2に示すように、プリンタ1を所定の位置に載置した状態において、スリット15の下方に配置されており、MEMSミラー30において反射した光がスリット15を通過するように傾斜している。
また、反射ミラー24は、MEMSミラー30から射出されたレーザ光と用紙Pとのなす角度θ1(15°前後)が小さくなるように傾斜しており、具体的には、光軸Oに対する傾斜角θ2が略25°となっている。
また、MEMSミラー30と用紙Pとの間は、数cmの距離となっているため、反射ミラー24と用紙Pとは近接して配置されている。これにより、スリット15の大きさを小さくすることができるので、筐体10の内部のレーザ光及びスリット15から射出されたレーザ光を直接見ることは困難な構成となっている。
【0032】
また、プリンタ1には、図3に示すように、フィーダ17における用紙Pの有無を検知する用紙センサ(検知手段)37と、この用紙センサ37による用紙Pの有無に応じて赤色光源装置21Rを制御する制御部(制御手段)38とを備えている。具体的には、用紙センサ37により、フィーダ17に用紙Pが保持されていないことが検知された場合、制御部38により、赤色光源装置21Rの駆動を停止させる。一方、用紙センサ37により、フィーダ17に用紙Pが保持されていると検知された場合は、制御部38により赤色光源装置21Rからレーザ光が射出される。
なお、フィーダ17に用紙Pが保持されていないことが検知された場合、赤色光源装置21Rから射出されるレーザ光を減光させても良い。
【0033】
次に、以上の構成からなる本実施形態のプリンタ1を用いて、用紙Pに印刷プレビューを表示する方法について説明する。
まず、PC2からプリンタ1に印刷プレビューの信号が送られる。これにより、用紙センサ37においてフィーダ17に用紙Pが保持されているかの検知が行われ、フィーダ17に用紙Pが保持されている場合、赤色光源装置21Rが駆動される。そして、赤色光源装置21Rから射出されたレーザ光は、コリメータレンズ22により平行光に変換され、MEMSミラー30に入射する。MEMSミラー30がx軸方向及びy軸方向に揺動しているので、MEMSミラー30において反射した光は、反射ミラー24により反射され、用紙P上で走査される。このとき、MEMSミラー30で走査されたレーザ光は、スリット15を通過し、図4に示すように、フィーダ17上に保持された用紙P上に、用紙Pの長手方向(上下方向)に沿って、用紙Pの左側から右側へ円弧を描く軌道で走査される。これにより印刷プレビューが用紙Pに表示される。
具体的には、プリンタ1の制御回路上で、PC2から送られた印刷イメージデータから、この軌道に沿うようにピクセルデータが並び替えられる。そして、各走査点を通るタイミングで、各ピクセルの階調のデータに合わせた出力で赤色光源装置21Rを駆動することにより、フィーダ17に保持された用紙P上に実寸の印刷イメージと同一のプレビュー表示を行うことができる。
【0034】
本実施形態に係るプリンタ1では、赤色光源装置21Rから射出された光を走査して、用紙Pに画像を投影しているので、用紙Pに投射されるレーザ光の投射角度の制限が少なくなるため、筐体10の内部に、プリンタ部を収めつつ、光学系20を配置することができる。これにより、装置全体の小型化を図ることが可能となる。
また、赤色光源装置21Rから射出されたレーザ光をMEMSミラー30により走査することにより、印刷プレビューを表示させることができるので、実際に印刷される印刷媒体上で、実寸での印刷プレビューの表示が可能となる。これにより、実際の印刷物の状態に合致した画像を印刷媒体に投影することが可能となる。
さらに、用紙センサ37を備えているため、用紙Pが配置されていない場合は、筐体の内部から用紙P以外にレーザ光が射出されることのないプリンタを提供することが可能となる。
【0035】
なお、筐体10の上面10cに、図5に示すように、光透過性を有するアクリル板(保護部材)41を備えたプリンタ40であっても良い。アクリル板41は、筐体10の上面10cからフィーダ17の上部にかけて傾斜して配置されている。すなわち、このアクリル板41は、赤色光源装置21Rより射出され、MEMSミラー30を介して反射ミラー24において反射したレーザ光の光路を覆うように配置されている。この構成では、赤色光源装置21Rから射出されたレーザ光が、所定の光路、すなわち、反射ミラー24から用紙Pに向かう光路以外の光路に、射出されることを確実に防止することができる。したがって、予期せぬ要因で、用紙P以外にレーザ光が照射されるのを防ぐことが可能なプリンタ40を提供することが可能となる。
なお、このアクリル板41は、フィーダ17への用紙Pの供給を行い易くするために、筐体10から着脱可能な構成になっていても良く、また、用紙Pを供給可能に開閉自在な構成にしても良い。
この構成では、アクリル板41が、筐体から外されていた場合に赤色光源装置21Rが駆動されないように制御されていることが好ましい。
【0036】
また、フィーダ17に反射率の高い用紙(銀紙等)Pが供給された場合、用紙Pに投射されたレーザ光が反射して、筐体10の外部に散乱してしまうおそれがある。これを防ぐために、プリンタ1には、フィーダ17に保持されている用紙Pの反射率を測定する測定機構が設けられていることが好ましい。
この測定機構としては、例えば、筐体の内部に設けられた反射率センサと、反射率センサの値に基づいて用紙に印刷プレビューの表示が可能か否かを判断する判断部とが設けられている。この構成により、ローラにより、フィーダに供給された用紙が、一度プリンタの筐体の内部に送り込まれる。このときに、反射率センサにより反射率を測定し、反射率センサにより測定された反射率が所定値以下であれば、判断部により、用紙に印刷プレビューを表示可能と判断する。その後、用紙をフィーダに戻し、印刷プレビューを用紙に表示する。これにより、反射率が所定値より高い用紙が供給された場合は、印刷プレビューの表示を行わないようにすることが可能となる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本発明に係る第2実施形態について、図6を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態において、上述した第1実施形態に係るプリンタ1と構成を共通とする箇所には同一符号を付けて、説明を省略することにする。
第1実施形態では、単色の光源装置を用いたプリンタ1であったが、本実施形態に係るプリンタ(印刷装置)50では、3色の光源装置を用いている。
【0038】
本実施形態に係るプリンタ50は、図6に示すように、筐体10の内部に赤色のレーザ光を射出する赤色光源装置(光源装置)51Rと、緑色のレーザ光を射出する緑色光源装置(光源装置)51Gと、青色のレーザ光を射出する青色光源装置(光源装置)51Bと、第1ダイクロイックミラー52と、第2ダイクロイックミラー53と、MEMSミラー(走査手段)55とを備えている。
また、赤色光源装置51Rから射出されるレーザ光の光路に対して、緑色光源装置51Gから射出されるレーザ光及び青色光源装置51Bから射出されるレーザ光の光路は直交するようになっている。
【0039】
赤色光源装置51Rは、中心波長が630nmである半導体レーザ(LD)であり、青色光源装置51Bは、中心波長が430nmである半導体レーザ(LD)である。緑色光源装置51Gは、DPSS(Diode Pomping Solid State)レーザによって構成され、図示しない波長変換素子により、中心波長が530nmである緑色のレーザ光に変換される。
【0040】
第1ダイクロイックミラー52は、赤色光源装置51Rから射出されたレーザ光の光軸O上に配置されており、緑色光源装置51Gから射出されたレーザ光の光軸Qに対して略45度傾斜して配置されている。これにより、第1ダイクロイックミラー52は、赤色光源装置51Rから射出されたレーザ光を透過させ、緑色光源装置51Gから射出されたレーザ光を光軸O上に反射させている。
第2ダイクロイックミラー53は、赤色光源装置51Rから射出されたレーザ光の光軸O上に配置されており、青色光源装置51Bから射出されたレーザ光の光軸Rに対して略45度傾斜して配置されている。これにより、第2ダイクロイックミラー53は、第1ダイクロイックミラー52を透過したレーザ光を透過させ、青色光源装置51Bから射出されたレーザ光を光軸O上に反射させている。
【0041】
また、緑色光源装置51Gと第1ダイクロイックミラー52との間には、AOM(音響光学素子)54が設けられている。
このAOM54は、緑色光源装置51Gから射出されたレーザ光が透過するように配置されている。また、AOM54は、AOMドライバ(図示略)から高周波信号が入力されると、高周波信号に応じた超音波が伝播し、内部を透過するレーザ光に音響光学効果が作用する。この音響光学効果の作用により、回折が生じて入力された高周波信号に応じた光量(強度)のレーザ光が、AOM54から回折光として射出されるようになっている。
また、MEMSミラー55は、第1実施形態と同様の構成となっており、第2ダイクロイックミラー53から射出したレーザ光を用紙Pに向かって走査するようになっている。
【0042】
次に、以上の構成からなる本実施形態のプリンタ50を用いて、用紙Pに印刷プレビューを表示する方法について説明する。
各光源装置51R,51G,51Bからされた光は、MEMSミラー55に向かって射出される。そして、MEMSミラー55が用紙Pにおける左右方向及び用紙Pにおける上下方向に揺動し、MEMSミラー55において反射した光が、用紙Pの水平方向及び垂直方向に走査され、画像が用紙Pに投影される。
【0043】
本実施形態に係るプリンタ50では、赤色,緑色,青色光源装置51R,51G,51Bの3色の光源装置を用いているため、用紙Pにフルカラーの印刷プレビューを表示することが可能となる。したがって、実際に印刷される画像と合致した色味の画像を投影することが可能となる。
なお、本実施形態では、MEMSミラー55から射出された光を用紙Pに投影させたが、第1実施形態と同様に、反射ミラー24を用いて用紙Pに印刷プレビューを表示させても良い。
また、赤色,緑色,青色光源装置51R,51G,51Bの3色の光源装置を用いたが、光源装置の色の数は2色であっても、4色以上であっても良い。
【0044】
[第3実施形態]
次に、本発明に係る第3実施形態について、図7及び図8を参照して説明する。
第1実施形態では、MEMSミラー30を1つ用いたプリンタ1であったが、本実施形態に係るプリンタ(印刷装置)60では、2つの第1,第2MEMSミラー61,62を用いている。
第1MEMSミラー(走査手段)61及び第2MEMSミラー(走査手段)62は、図7に示すように、プリンタ60を所定の位置に載置した状態において、上下方向に配置されている。また、プリンタ60は、第1実施形態と同様の第1赤色光源装置65Rと、この第1赤色光源装置65Rと第1MEMSミラー61との間に配置された第1コリメータレンズ66とを備えており、第2MEMSミラー62側にも同様の第2赤色光源装置68Rと、第2コリメータレンズ69とが設けられている。
なお、第1MEMSミラー61及び第2MEMSミラー62の構成は、第1実施形態と同様であり、2軸方向の揺動が可能となっている。
【0045】
また、第1赤色光源装置65Rから射出されたレーザ光は、第1コリメータレンズ66において平行光に変換され、第1MEMSミラー61おいて反射される。そして、第1MEMSミラー61に入射したレーザ光は、第1MEMSミラー61の揺動により、用紙Pを走査する。これにより、用紙Pにおける第1MEMSミラー61によって走査される領域Sは、図8に示すように、用紙Pの上半分となる。
一方、第2赤色光源装置68Rから射出されたレーザ光は、第2コリメータレンズ69において平行光に変換され、第2MEMSミラー62おいて反射される。そして、第2MEMSミラー62に入射したレーザ光は、第2MEMSミラー62の揺動により、用紙Pを走査する。これにより、用紙Pにおける第2MEMSミラー62によって走査される領域Tは、図8に示すように、用紙Pの下半分となる。
【0046】
本実施形態に係るプリンタ60では、第1MEMSミラー61及び第2MEMSミラー62を用いて、用紙Pを走査する領域を分けることにより、一つのMEMSミラーが受け持つ走査線の数が少なくなる。したがって、2つのMEMSミラー61,62で走査領域を分担することで、第1実施形態のMEMSミラーの性能を向上させる場合ほど、各MEMSミラー61,62の性能を向上させなくても良いため、容易に高解像度な表示を行うことが可能となる。
なお、本実施形態では、第1,第2MEMSミラー61,62から射出された光を用紙Pに投影させたが、第1実施形態と同様に、反射ミラー24を用いて用紙Pに印刷プレビューを表示させても良い。
また、2つのMEMSミラー61,62を用いたが、3つ以上のMEMSミラーを用いても良い。この構成により、さらに1つのMEMSミラーが受け持つ走査線の数が少なくなるため、高解像度の印刷プレビューの画像を表示することが可能となる。
【0047】
[第4実施形態]
次に、本発明に係る第4実施形態について、図9を参照して説明する。
第1実施形態では、フィーダ17の表面17a側から印刷プレビューを投影したが、本実施形態に係るプリンタ(印刷装置)70では、フィーダ(保持部材)72の裏面72a側から印刷プレビューを用紙Pに投影する。
プリンタ70は、筐体73の内部に赤色光源装置71Rが配置されている。また、フィーダ72は、光透過性を有するプラスチック板である。
また、筐体73の背面73aには、断面がL字状の収納体75が設けられている。この収納体75の一方の面75aは、筐体73の底面と面一に配置され、他方の面75bは、筐体73の背面73aからフィーダ72の上部まで伸びた形状となっている。そして、一方の面75aと他方の面75bとで囲まれた空間には、MEMSミラー30が設けられている。このように、収納体75は、MEMSミラー30において、反射したレーザ光の光路を覆うようになっている。
【0048】
また、プリンタ70の筐体73の背面73aには、開口部76が形成されている。この開口部76により、筐体73の内部のレーザ光を筐体73の外部に射出することを可能にしている。すなわち、赤色光源装置71Rから射出されたレーザ光は、開口部76を通過し、収納体75に設けられたMEMSミラー30に向かって射出可能となっている。
そして、赤色光源装置71Rから射出され、開口部76を通過した光は、MEMSミラー30により、フィーダ72の裏面72a側からフィーダ72上を走査される。フィーダ72は、レーザ光を透過するため、フィーダ72の裏面72a側から用紙Pに投影された画像は、フィーダ72の表面72b側から認識することが可能となる。
【0049】
本実施形態に係るプリンタ70では、フィーダ72の裏面72a側から印刷プレビューを用紙Pに投影させた場合、用紙Pを介して外部に光が射出される。すなわち、赤色光源装置71Rから射出された光が、用紙Pを介さないで外部に射出されないので、所定の光路以外から筐体の外部にレーザ光が漏れ出ることをより確実に防止することができる。
また、収納体75により、赤色光源装置71Rから射出された光の光路を覆うことで、赤色光源装置71Rから射出された光が、筐体73の外部に漏れ出ることをより確実に防止することができる。
【0050】
また、第1実施形態のプリンタ1に比べ、本実施形態のプリンタ70は、用紙Pを介して印刷プレビューを認識するため、赤色光源装置71Rから射出された光が、筐体73の外部に漏れ出ることを確実に防止することができる。
また、フィーダ72の裏面72a側から印刷プレビューを投影したプリンタ70に比べ、フィーダ17の表面17a側から印刷プレビューを投影したプリンタ1の方が、赤色光源装置21R及びMEMSミラー30を一括して配置することができるため、小型化が容易となる。
【0051】
なお、プリンタ70の筐体と収納体75とを一体的に形成された筐体を用いても良い。また、プリンタ70には、第1実施形態と同様に、用紙Pの有無を検知する用紙センサを設けて、フィーダに用紙Pが保持されていないことが検知された場合、赤色光源装置21Rの駆動を停止させても良い。
【0052】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記各実施形態において、走査手段として、MEMSミラーを用いたが、これに限らず、例えば、高速走査軸に音響光学偏向素子(AOD)を用い、低速走査軸にポリゴンミラーを用いて走査を行っても、実際の印刷物の状態に合致した画像を用紙に表示することが可能となる。
また、上記各実施形態において、インクジェット方式のプリンタを例に挙げて説明したが、レーザプリンタやFAXのようなプリンタを備えた複合機においても適用でき、印刷媒体に印刷プレビューを表示させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1実施形態に係る印刷装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1の印刷装置のA−A線における断面図である。
【図3】図1の印刷装置の内部の光学系を示す斜視図である。
【図4】図1の印刷装置の印刷媒体に走査される光の軌道を模式的に示す平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る印刷装置の変形例を示す断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る印刷装置の光の光路を示す平面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る印刷装置の光の光路を示す平面図である。
【図8】図7の印刷装置の印刷媒体に走査される光の領域を模式的に示す平面図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係る印刷装置の全体構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1,40,50,60,70…印刷装置(プリンタ)、10,73…筐体、15…スリット(開口部)、17,72…フィーダ(保持部材)、17a…フィーダの表面(一方の面)、21R…赤色光源装置(光源装置)、30,55…MEMSミラー(走査手段)、37…用紙センサ(検知手段)、38…制御部(制御手段)、51R…赤色光源装置(光源装置)、51G…緑色光源装置(光源装置)、51B…青色光源装置(光源装置)、61…第1MEMSミラー(走査手段)、62…第2MEMSミラー(走査手段)、75…収納体、76…開口部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に画像を印刷する印刷手段を備え、前記印刷媒体に画像を印刷した状態を示す印刷プレビューを表示する印刷装置であって、
前記印刷手段を収容する筐体と、
該筐体の内部に設けられ光を射出する光源装置と、
前記筐体の内部に設けられ、前記光源装置から射出された光を前記印刷媒体に向けて走査し、前記印刷プレビューを前記印刷媒体に投影させる走査手段とを備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
一方の面側に前記印刷媒体を保持する保持部材を備え、
前記走査手段により、前記保持部材の一方の面側から前記印刷プレビューを前記印刷媒体に投影させることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記光源装置より射出された光の光路を覆う保護部材を備えることを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
一方の面側に前記印刷媒体を保持する保持部材を備え、
前記走査手段により、前記保持部材の他方の面側から前記印刷プレビューを前記印刷媒体に投影させることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記筐体には、前記光源装置より射出された光の光路を覆う収納体が設けられ、該収納体の内部に前記走査手段が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記筐体に開口部が形成され、
前記光源装置から射出された光は、前記筐体の内部から前記開口部を通過して前記印刷媒体に投影されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記印刷媒体の有無を検知する検知手段と、
該検知手段による前記印刷媒体の有無に応じて前記光源装置からの光の照射,非照射または光量を制御する制御手段とを備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記走査手段が、MEMSミラーであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記光源装置が、レーザダイオードであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記光源装置が、単色の光を射出することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記光源装置が、複数の色の光を射出することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−12795(P2008−12795A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−186600(P2006−186600)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】