説明

印刷装置

【課題】 エンボス印刷、レリーフ印刷等を行う際、領域の設定や浮き上がりや深さの程度を、ユーザ所望の仕様にして印刷処理できるようにする。
【解決手段】 凹凸のある立体的な印刷を行う印刷装置を、モニタ画面7上で第1の操作としてのマウス4、キーボード6あるいはタッチパネルによる描画操作に応じて、印刷対象画像のうち凹凸処理する領域または輪郭の指定を行なう指定手段8と、この指定手段の第2の操作としてのマウス、キーボードあるいはタッチパネルによる描画操作の押圧力の調整に応じて、凹凸の度合いを任意に調整する調整手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばエンボス印刷やレリーフ印刷などのような凹凸のある立体感のある印刷を行うために用いて好適な印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、型押し印刷やエンボス加工印刷、レリーフ印刷、金箔などの箔印刷、盛り上げ印刷などのように、画像に凹凸を持たせた立体的な印刷を行う印刷装置が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
すなわち、特許文献1には、印刷厚みをもつ硬化性インクあるいは発泡性インクを用いることにより、所要の印刷高さに応じてインクを積層印刷することが記載されている。
また、特許文献2には、膨張インクを用いることにより凹凸のある立体的な印刷物を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−301267号公報
【特許文献2】特開2001−225459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来装置のように、画像データから自動印刷するものでは、画一的な造形処理のため、エンボス印刷やレリーフ印刷をしても、得られた印刷物では、機械加工的なイメージ、単純加工のイメージが強くて、美術的、工芸的な美的付加価値が低いといった問題があった。
【0006】
また、最近では、細かな石膏粉末など上に接着材を印刷して順次積層する粉体式立体プリンタや、紫外線硬化樹脂液にレーザーなどで描画する紫外線硬化樹脂方式の立体プリンタなども実用化されているが、印刷に数時間と時間がかかる、機器が大型で高価な上、印刷料(製作料)も高額で、プロトタイプ作成などのビジネス用途以外では使用しにくかった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、型押し印刷やエンボス加工印刷、レリーフ印刷等を行う際、領域の設定や浮き上がりや深さの程度を、ユーザ所望の仕様にして印刷処理できるようにする印刷装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的に応えるために本発明(請求項1記載の発明)に係る印刷装置は、凹凸のある立体的な印刷を行う印刷装置であって、モニタ画面上で第1の操作に応じて、印刷対象画像のうち凹凸処理する領域または輪郭の指定を行なう指定手段と、この指定手段の第2の操作に応じて、凹凸の度合いを任意に調整する調整手段とを備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明(請求項2記載の発明)に係る印刷装置は、請求項1記載の印刷装置において、前記凹凸のある立体的な印刷は、エンボス印刷またはレリーフ印刷であることを特徴とする。
【0010】
本発明(請求項3記載の発明)に係る印刷装置は、請求項1記載の印刷装置において、前記第1の操作は、マウス、キーボードあるいはタッチパネルによる描画操作であることを特徴とする。
【0011】
本発明(請求項4記載の発明)に係る印刷装置は、請求項1記載の印刷装置において、前記第2の操作は、マウス、キーボードあるいはタッチパネルによる描画操作の押圧力の調整であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明に係る印刷装置によれば、型押し印刷やエンボス加工印刷、レリーフ印刷などを行う際に、領域の設定や浮き上がりや深さの程度を、ユーザ所望の仕様にして、立体的な印刷処理することができる。
【0013】
特に、本発明によれば、ユーザの筆加減や手彫りのような感覚で、直接的で簡易な操作により、浮き上がりや深さの程度やその断面形状を設定できるから、ユーザの腕やセンスに応じて、手工芸的な手作り感や味のあるエンボス印刷やレリーフ印刷が、簡単に行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る印刷装置の一実施形態を示し、凹凸エンボス印刷/レリーフ印刷を行う際の装置全体の概略構成図である。
【図2】本発明に係る印刷装置の印刷動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明における印刷データおよび凹凸加工データの編集処理を示す概略説明図である。
【図4】本発明に係る印刷装置においてフィルタ演算による画像のエッジ検出、鮮鋭化処理、および、疑似エンボス2次元画像(見かけ上のエンボス画像)の作成処理を説明するための概略説明図である。
【図5】実際(3次元)のエンボス/凹凸加工データの作成処理を説明するための概略説明図である。
【図6】エンボス/凹凸加工データの編集ツールを説明するための概略説明図である。
【図7】エンボス印刷/凹凸加工データの構成例を説明するための概略説明図である。
【図8】レーザー彫刻加工機、および、エンボス彫刻加工、または、エンボス押し型の作成を説明するための図である。
【図9】インクジェットプリンタ、および、UV硬化インクによるエンボス凹凸印刷を説明するための概略説明図である。
【図10】UV硬化樹脂と撥水性を利用したエンボス印刷加工例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1および図2は本発明に係る印刷装置の一実施形態を示す。
これらの図において、本発明に係る印刷装置は、印刷画像を入力、編集、生成するパーソナルコンピュータ等によるコンピュータ部1と、該コンピュータ部1で得られた画像の清書データに基づきエンボス(浮き出し)印刷、レリーフ印刷などを行なうプリンタ部2とを備えている。
【0016】
ここで、この実施形態では、プリンタ部2として、エンボス/レリーフ印刷用としてのUVインクジェットプリンタ、大判UVプリンタ、さらに凹凸彫刻加工/または押し型制作としてのレーザー自動彫刻機を用い、その後エンボス型押し加工を行う場合などを例示している。
【0017】
前記コンピュータ部1には、画像データの入力を行うデジタルカメラ等による画像入力部3、さらにマウス4、キーボード6等が付設され、またそのPCモニタ画面7は、タッチパネル機能付きとして構成され、指等で描画入力可能に構成されている。勿論、マウス4によるポインタ入力や、キーボード6によるキー入力も行えることはいうまでもない。
【0018】
前記PCモニタ画面7には、入力画像や凹凸加工イメージ画像を表示する表示部や、描画ツール等の操作表示部等が表示され、入力画像に対してエンボス処理やレリーフ処理等のような立体的な処理を施すことができるように構成されている。
【0019】
本発明によれば、エンボス(浮き出し)印刷、レリーフ印刷などを行なう際に、PCモニタ画面7上でのタッチパネル操作による描画、あるいはマウス4による描画操作、キーボード6による描画操作などといった第1の操作に応じて、対象画像のうち、エンボス処理やレリーフ処理する領域や線、輪郭の指定を行なう指定手段(たとえば描画ツール等の操作表示部8)を備えている。
【0020】
また、これに合わせて、マウス4描画時の左/右キー押しや、タッチパネルでのタッチの強さや接地面積、あるいはキーボード6の押圧力の調整などといった前記指定手段の第2の操作に応じて、エンボス処理やレリーフ処理の度合、浮き上がりや深さの程度を任意に調整できる調整手段(たとえばセンサ、電気回路等による制御部)を備えている。
【0021】
これにより、本発明によれば、描画や水彩画の筆操作のような感覚で、エンボス処理やレリーフ処理の設定や調節を、直接的な操作で簡単にしかも希望通りに行なえる。
【0022】
さらに、筆アイコンや彫刻刀アイコンなどといった複数のアイコンの中から所要のものを選択することによって、上記の位置指定や浮き上がりや深さの程度の設定操作における、指定領域の太さや幅、浮き上がりや深さの最大値、浮き上がりや深さの断面の形状などを必要に応じて選択できるように構成してもよい。
【0023】
また、上述したマウス4、キーボード6、あるいはタッチパネルでのタッチ操作等を用いた直接的な操作では、指操作による揺れやブレ、バラツキやはみ出しが生じるので、それらを、元の画像情報に基づいて、はみだしやバラツキを補正するとともに、揺れやブレ、バラツキを平均化や加算平均化してならす補正を行い、実際にエンボスやレリーフ印刷するための清書データを生成するように構成されている。
【0024】
上述した構成による印刷装置において、エンボス印刷やレリーフ印刷を行う際の印刷処理は、図2のようにして行う。
すなわち、印刷装置のコンピュータ部1に対し画像入力部3から印刷対象画像を入力する(S101)。そして、マウス4、キーボード6、タッチパネルによるタッチ操作等により印刷対象画像においてエンボス処理やレリーフ処理等を行う領域や線、輪郭の指定を行う(S102)。
【0025】
次に、マウス4描画時の左/右キー押しや、タッチパネルによるタッチの強さや接地面積などに応じて、エンボス処理やレリーフ処理の度合、浮き上がりや深さの程度を任意に調整している(S103)。
【0026】
さらに、筆アイコンや彫刻刀アイコンなどといった複数のアイコンの中から所要のものを選択することによって、上記の位置指定や浮き上がりや深さの程度の設定操作における、指定領域の太さや幅、浮き上がりや深さの最大値、浮き上がりや深さの断面の形状などを必要に応じて選択できるようにする(S104)。
【0027】
次に、指操作による揺れやブレ、バラツキやはみ出しを、印刷対象画像情報に基づいて、はみだしやバラツキを補正するとともに、揺れやブレ、バラツキを平均化や加算平均化してならす補正を行い、実際にエンボス印刷やレリーフ印刷するための清書データを生成する(S105)。
【0028】
そして、設定されたエンボス印刷やレリーフ印刷するための清書データに基づいて、実際に印刷処理された場合のシミュレーションイメージを擬似立体的に三次元表示する(S106)のが望ましい。
【0029】
上述したようにして、入力元画像と、エンボス処理やレリーフ処理の位置や度合を編集や設定した清書データに基づいて、エンボス印刷処理やレリーフ印刷処理を行ない、エンボス印刷やレリーフ印刷処理用のデータをプリンタに出力する(S107)。
【0030】
以上の構成によれば、型押し印刷やエンボス加工印刷、レリーフ印刷などを行う際に、領域の設定や浮き上がりや深さの程度を、ユーザ所望の仕様にして、印刷処理できる。換言すれば、印刷対象画像データを見ながらユーザがエンボス等の度合いなどを、直接的な操作で自由に調整、選択し、立体印刷のデータを作成することができる。
【0031】
また、ユーザの筆加減や手彫りのような感覚で、直接的で簡易な操作により、浮き上がりや深さの程度やその断面形状を設定できるので、ユーザの腕やセンスに応じて、手工芸的な手作り感や味のあるエンボス印刷やレリーフ印刷が、簡単に行なえる。
【0032】
図3は上述した構成による印刷装置において、本発明における印刷データおよび凹凸加工データの編集処理を示すものである。すなわち、同図において、所要の入力画像を入力し、これをPCモニタ画面7上の表示部に加工イメージとして表示される。
【0033】
すなわち、同図において、2次元画像データである入力画像は、エッジ検出され、エッジ画像に変換され、その輪郭を抽出することで、輪郭線による線画として構成される。その輪郭線に沿って、ツールに応じた修飾適応領域を設定し、輪郭線にフィッティング、はみ出し修正を行い、凹凸加工/彫刻領域、幅、深さの修正・編集を行い、その修正済みの凹凸量データにより、エンボス印刷/レリーフ印刷として、凹凸印刷、又は、UV硬化凹凸印刷、レーザー彫刻、押し型の作成を行う。
【0034】
また、2次元画像データである入力画像は、階調圧縮処理(2〜8階調化)し、さらに凹凸加工データ生成を行い、3次元凹凸加工用データを作成してから、凹凸加工/彫刻領域、幅、深さの修正・編集を行い、その修正済みの凹凸量データにより、エンボス印刷/レリーフ印刷として、凹凸印刷、又は、UV硬化凹凸印刷、レーザー彫刻、押し型の作成を行うようにしてもよい。
【0035】
また、2次元画像データである入力画像から、凹凸加工イメージの生成を行い、見かけ上の疑似エンボス画像を生成してから、タッチパネルまたはマウス等で描画入力を行い、筆、彫刻刀などのツールを選択、および、描画領域の検出を行う。その輪郭線に沿って、ツールに応じた修飾適応領域を設定し、輪郭線にフィッティング、はみ出し修正を行い、凹凸加工/彫刻領域、幅、深さの修正・編集を行い、その修正済みの凹凸量データにより、エンボス印刷/レリーフ印刷として、凹凸印刷、又は、UV硬化凹凸印刷、レーザー彫刻、押し型の作成を行う。
【0036】
また、2次元画像データを、RGB又はYCbCrからCMYKへ変換し、2次元印刷データを得て、平面画像印刷を行う。
【0037】
図4は本発明に係る印刷装置において、フィルタ演算による画像のエッジ検出、鮮鋭化処理、および、疑似エンボス2次元画像(見かけ上のエンボス画像)の作成処理を説明するためのものである。
同図において、標準の入力画像を入力し、これを所要の演算式で演算して出力画像を得るものである。
【0038】
ここで、同図中(1)はPrewittフィルタ(一次微分フィルター)でエッジ検出処理を行った場合の画像の変化を例示している。
また、(2)は原画像をLaplaciantフィルタ(二次微分フィルター)で鮮鋭化処理を行った場合の画像の変化を例示している。
【0039】
(3)はPrewittフィルタ(方向性フィルター)で疑似エンボス処理(1)を行った場合の画像の変化を例示している。
(4)は疑似エンボス処理(2)を行った場合の画像の変化を例示している。
【0040】
図5は実際(3次元)のエンボス/凹凸加工データの作成処理を説明するためのものであり、入力画像を、階調圧縮処理を行って、2階調化画像、4階調化画像、8階調化画像を得、これにより(1)凹凸加工(彫刻、切削式)、(2)凹凸加工(盛上げ式)等の凹凸加工データを生成するようにしている。
【0041】
図6はエンボス/凹凸加工データの編集ツールを説明するものであり、ブラシ(筆)ツールや彫刻刀ツールでの編集状態を示している。
【0042】
図7はエンボス印刷/凹凸加工データの構成例を説明するものであり、同図は入力画像をRed画像データ、Green画像データ、Blue画像データ、さらにエンボス/凹凸加工データに変換し、それぞれを(1)RGB形式+凹凸加工データ、(2)YCrCb(4:1:1)形式+凹凸加工データ、(3)CMYK形式+凹凸加工データを得て、Cyan画像などを形成するようにしている。
【0043】
図8はレーザー彫刻加工機と、凹凸加工/彫刻加工、さらに型押しエンボス加工を示すものである。
図9はUV硬化インク・インクジェット・プリンタとプリンタヘッドの構成例、さらに凹凸エンボス印刷/盛上げ印刷の例を示すものである。
【0044】
図10において(a)はUV硬化樹脂を利用したエンボス印刷加工の状態を、(b)は撥水性を利用したエンボス印刷加工の状態を示している。
【0045】
なお、本発明は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、印刷装置を構成する各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0046】
1 コンピュータ部
2 プリンタ部
3 画像入力部
4 マウス
6 キーボード
7 PCモニタ画面
8 操作表示部(指定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸のある立体的な印刷を行う印刷装置であって、
モニタ画面上で第1の操作に応じて、印刷対象画像のうち凹凸処理する領域または輪郭の指定を行なう指定手段と、
この指定手段の第2の操作に応じて、凹凸の度合いを任意に調整する調整手段とを備えていることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の印刷装置において、
前記凹凸のある立体的な印刷は、エンボス印刷またはレリーフ印刷であることを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1記載の印刷装置において、
前記第1の操作は、マウス、キーボードあるいはタッチパネルによる描画操作であることを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1記載の印刷装置において、
前記第2の操作は、マウス、キーボードあるいはタッチパネルによる描画操作の押圧力の調整であることを特徴とする印刷装置。

【図2】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−191925(P2010−191925A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40694(P2009−40694)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】