説明

印刷装置

【課題】製造費用の低減及び装置の小型化を実現すると共に、適切にステッピングモータの脱調の検出及び再起動を行うことができる。
【解決手段】搬送経路上で印刷用紙Wを搬送する搬送ローラ52a,53aと、搬送ローラを回転駆動させる第1,第2のステッピングモータ52c,53cと、固有周波数帯を記憶するメモリ87と、振動を検出する振動センサ18と、検出された振動をフーリエ変換するフーリエ変換部86aと、フーリエ変換された結果に基づいてピーク周波数を決定するピーク周波数決定部85bと、決定されたピーク周波数がメモリ87に記憶された固有周波数帯に含まれない場合に、第1,第2のステッピングモータ52c,53cが脱調したと判定する脱調判定部85cと、脱調したと判定された場合、第1,第2のステッピングモータ52c,53cの起動を制御して、搬送ローラ52a,53aを回転駆動させる駆動制御部86bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関し、装置本体の各所に設けられたローラの駆動源として、ステッピングモータを用いた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、複写機やプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置において、回転駆動系の駆動源として、DCサーボモータ等が用いられており、ギア及びクラッチ等の伝達機構を経由して、例えば、用紙搬送部に設けられた搬送ローラを駆動する構成がとられていた。
【0003】
また、近年では、画像形成装置の小型化及び画像形成速度の高速化が進んでおり、それに伴って、用紙搬送の高速化のニーズも高まっている。しかしながら、上述のようなDCサーボモータを駆動源として使用し、ギア及びクラッチ等の伝達機構により用紙搬送部に設けられた搬送ローラを駆動制御する方法では、反応速度が遅く、これが、用紙搬送の高速化のボトルネックになっていた。
【0004】
そこで、近年、上述したDCサーボモータに代わり、搬送ローラ等の回転体の駆動源として、ステッピングモータを使用した画像形成装置が普及している。このステッピングモータは、モータドライバに駆動パルス信号を入力することにより、駆動パルス信号のパルス数に対応した角度だけ回転するものである。
【0005】
また、ステッピングモータは、オープンループ制御が可能であり、フィールドバック系が必要な他のDCサーボモータに比べ、システムを大幅に簡素化することが可能であり、コストの面で有利となる。
【0006】
ここで、このステッピングモータにおいては、上述のごとく、制御が容易である反面、駆動パルスに同期して回転するため、上述したDCサーボモータと異なり、パルス信号の入力に対し、モータの回転子の回転が同期できなくなる現象、即ち、脱調が発生する場合がある。この脱調は、例えば、軸受部の変摩耗が発生した場合や、ステッピングモータの許容トルク値以上の大きなトルクがかかり、モータトルクに対し過負荷になった場合等に発生する。
【0007】
そこで、特許文献1には、モータ出力軸に設けたパルス板とフォトインタラプタ(エンコーダ)を用いてステッピングモータが脱調したか否かを判断する画像形成装置が提案されている。
【0008】
また、特許文献2には、出力電流の周波数成分に基づいてステッピングモータが脱調したか否かを判断する脱調検知装置が提案されており、また、特許文献3には、1相励磁期間での電流値変化の計測値に基づいてステッピングモータが脱調したか否か判断する脱調検知装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−331760号公報
【特許文献2】特開平11−98895号公報
【特許文献3】特開2001−158546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の画像形成装置では、モータ出力軸に設けたパルス板とフォトインタラプタ(エンコーダ)を用いてステッピングモータが脱調したか否かを判断するので、パルス板・フォトインタラプタ・取付ブラケットが必要であり、その分製造コストが高くなり、またこれらを収納するための大きなスペースを確保する必要があるので、装置全体が大型化するという課題があった。
【0011】
また、特許文献2及び特許文献3に記載の脱調検知装置では、1台の画像形成装置で複数のモータを用いる場合、一つのモータに対してそれぞれ検出回路が必要となるので、制御基板のサイズアップし、また部品点数が増加し、特許文献1に記載の画像形成装置と同様に、製造コストが高くなり、装置全体が大型化するという課題があった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、製造費用の低減及び装置の小型化を実現すると共に、適切にステッピングモータの脱調の検出及び再起動を行うことができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷装置の第1の特徴は、印刷用紙を挟みながら回転することにより搬送経路上で前記印刷用紙を搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラを回転駆動させるステッピングモータと、前記ステッピングモータ固有の共振周波数帯である固有周波数帯を記憶する固有周波数帯記憶手段と、前記ステッピングモータ近傍に設けられ、前記ステッピングモータが駆動中の振動を検出する振動検出手段と、前記検出された振動をフーリエ変換するフーリエ変換手段と、前記フーリエ変換手段によりフーリエ変換された結果に基づいてピーク周波数を決定するピーク周波数決定手段と、前記ピーク周波数決定手段により決定されたピーク周波数が前記固有周波数帯記憶手段に記憶された固有周波数帯に含まれない場合に、前記ステッピングモータが脱調したと判定する脱調判定手段と、前記脱調判定手段により脱調したと判定された場合、前記ステッピングモータの起動を制御して前記搬送ローラを回転駆動させる駆動制御手段とを備えることにある。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷装置の第2の特徴は、前記駆動制御手段は、前記脱調判定手段により脱調したと判定された場合、起動中の前記ステッピングモータを停止させた後、再起動させることで、前記搬送ローラを回転駆動させることにある。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷装置の第3の特徴は、前記ピーク周波数決定手段は、前記フーリエ変換手段によりフーリエ変換された振動レベルの値が、所定の閾値を越えた1以上の周波数をピーク周波数として決定することにある。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷装置の第4の特徴は、前記フーリエ変換手段は、前記ステッピングモータの回転速度が略一定の場合に、前記振動検出手段により検出された振動をフーリエ変換することにある。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷装置の第5の特徴は、前記フーリエ変換手段は、前記ステッピングモータの回転が加速中に、所定の時間間隔毎に、前記振動検出手段により検出された振動をフーリエ変換することにある。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷装置の第6の特徴は、前記ステッピングモータと前記振動検出手段とは、同一フレームに配置されたことにある。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る印刷装置によれば、製造費用の低減及び装置の小型化を実現すると共に、適切にステッピングモータの脱調の検出及び再起動を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1である印刷装置の全体構成を示す全体構成図である。
【図2】本発明の実施例1である印刷装置の反転部近傍の構成を示した構成図である。
【図3】本発明の実施例1である印刷装置の機能構成を示す機能構成図である。
【図4】本発明の実施例1である印刷装置が備えるメモリが記憶している固有周波数情報の一例を示した図である。
【図5】本発明の実施例1である印刷装置による固有周波数決定処理の処理手順を示したフローチャートである。
【図6】(a)は、本発明の実施例1である印刷装置が備えるDSPのフーリエ変換部が第1のステッピングモータの定常運転時における振動データに基づいて、フーリエ変換した振動レベルの一例を示した図であり、(b)は、本発明の実施例1である印刷装置が備えるDSPのフーリエ変換部が、第2のステッピングモータ定常運転時における振動データに基づいて、フーリエ変換した振動レベルの一例を示した図である。
【図7】本発明の実施例1である印刷装置の脱調監視処理の処理手順を示したフローチャートである。
【図8】本発明の実施例1である印刷装置の脱調監視処理の処理手順を示したフローチャートである。
【図9】(a)は、本発明の実施例1である印刷装置の脱調監視処理時における第1の用紙位置センサのセンサ出力を示しており、(b)は、本発明の実施例1である印刷装置の脱調監視処理時における第1のステッピングモータの回転速度を示しており、(c)は、本発明の実施例1である印刷装置の脱調監視処理時における第2の用紙位置センサのセンサ出力を示しており、(d)は、本発明の実施例1である印刷装置の脱調監視処理時における第2のステッピングモータの回転速度を示している。
【図10】本発明の実施例2である印刷装置の脱調監視処理の処理手順を示したフローチャートである。
【図11】本発明の実施例2である印刷装置の脱調監視処理の処理手順を示したフローチャートである。
【図12】本発明の実施例2である印刷装置が備えるメモリが記憶している固有周波数情報の一例を示した図である。
【図13】本発明の実施例2である印刷装置1が備える第1のステッピングモータの加速時における回転速度を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
<印刷装置の全体構成>
図1は、本発明の実施例1である印刷装置の全体構成を示す全体構成図である。
【0022】
図1に示すように印刷装置1は、サイド給紙部10と、内部給紙部20と、印刷部30と、排紙部40と、反転部50とを備えている。
【0023】
サイド給紙部10は、印刷用紙Wが積層される給紙台11と、この給紙台11から最上位置の印刷用紙Wのみを給紙系搬送経路FR上へ搬送させる1次給紙部12と、この1次給紙部12によって搬送された印刷用紙Wを印刷部30へ搬送する2次給紙部14とを備えている。1次給紙部12により給紙系搬送経路FR上を搬送された印刷用紙Wは2次給紙部14に突き当てられることにより、印刷用紙Wの先端の位置あわせと斜行修正がなされて所定のタイミングで印刷部30へ向かって循環系搬送路CR上を搬送される。
【0024】
内部給紙部20は、印刷用紙Wが積層される給紙台21aと、この給紙台21aから最上位置の印刷用紙Wのみを給紙系搬送経路FR上へ搬送させる1次給紙部22aと、印刷用紙Wが積層される給紙台21bと、この給紙台21bから最上位置の印刷用紙Wのみを給紙系搬送経路FR上へ搬送させる1次給紙部22bと、印刷用紙Wが積層される給紙台21cと、この給紙台21cから最上位置の印刷用紙Wのみを給紙系搬送経路FR上へ搬送させる1次給紙部22cと、印刷用紙Wが積層される給紙台21dと、この給紙台21dから最上位置の印刷用紙Wのみを給紙系搬送経路FR上へ搬送させる1次給紙部22dとを備えている。
【0025】
1次給紙部22a,22b,22c,22dによりそれぞれ給紙系搬送経路FR上へ搬送された印刷用紙Wは、給紙系搬送経路FR上に設置された搬送ローラ23等の複数の搬送ローラにより給紙系搬送経路FR上を搬送され、2次給紙部14に突き当てられることにより、印刷用紙Wの先端の位置あわせと斜行修正がなされて所定のタイミングで印刷部30へ向かって循環系搬送路CR上を搬送される。
【0026】
印刷部30は、複数の印字ヘッドが組み込まれたヘッドユニット31と、ヘッドユニット31の対向面に設けられた環状の搬送ベルト32とを備えており、2次給紙部14により給紙された印刷用紙Wは、環状の搬送ベルト32内に設置された図示しない吸引手段によって搬送ベルト32上に吸着され、印刷条件により定められる速度で搬送されながら、ヘッドユニット31から吐出されたインクによりライン単位で印刷用紙Wに印刷される。
【0027】
印刷部30により印刷された印刷用紙Wは、循環系搬送路CR上に配置された搬送ローラ等によって循環系搬送路CR上を搬送される。循環系搬送路CR上には、循環系搬送路CR上を搬送された印刷用紙Wを排紙部40へ誘導するか、又は循環系搬送路CR上を再循環させるかを切り替える切り替え機構43が備えられている。
【0028】
切り替え機構43は、利用者の操作に基づいて、印刷用紙Wの片面のみを印刷する印刷モードである片面印刷モードが選択されている場合、印刷用紙Wを排紙部40へ誘導する。
【0029】
排紙部40は、印刷装置1の筐体から突出したトレイ形状をした排紙台41と、排紙台41に印刷用紙Wを誘導する一対の排紙ローラ42とを有している。そして、印刷部30により印刷された印刷用紙Wは、排紙ローラ42により排紙台41に搬送され、排紙台41に印刷面を下にして積載される。
【0030】
また、印刷用紙Wの両面を印刷する印刷モードである両面印刷モードが選択されている場合、印刷用紙Wの表面(最初に印刷される面を「表面」、次に印刷される面を「裏面」とする)印刷終了時には、切り替え機構43は、印刷用紙Wを排紙部40に誘導せずに、反転部50に誘導する。
【0031】
反転部50は、印刷用紙Wを反転させる反転台51と、循環系搬送路CRから反転台51へ印刷用紙Wを搬送し、又は反転台51から循環系搬送路CR上へ印刷用紙Wを搬送する反転ローラ52と、反転ローラにより搬送された印刷用紙Wを搬送する搬送ローラ53とを備えている。
【0032】
切り替え機構43により反転部50に誘導された印刷用紙Wは、反転ローラ52により循環系搬送路CRから反転台51に搬送され、所定時間経過後、反転台51から循環系搬送路CRへ搬送されることにより、循環系搬送路CRに対して表裏が反転する。そして、表裏が反転された印刷用紙Wは、循環系搬送路CR上に設けられた搬送ローラ53等の複数のローラにより循環系搬送路CR上を搬送され、2次給紙部14に突き当てられることにより、印刷用紙Wの先端の位置あわせと斜行修正がなされて所定のタイミングで印刷部30へ向かって循環系搬送路CR上を搬送される。
【0033】
<反転部の構成>
図2は、本発明の実施例1である印刷装置1の反転部50近傍の構成を示した構成図である。
【0034】
図2に示すように、循環系搬送路CR上は、反転台51から印刷用紙Wを搬送する反転ローラ52と、反転ローラにより搬送された印刷用紙Wを搬送する搬送ローラ53とが配置されている。
【0035】
反転ローラ52は、回転軸P1を中心に回転する第1のステッピングモータ52cを有している。この第1のステッピングモータ52cは、後述する制御部80のドライバ88aから供給された駆動パルス信号のパルス数に対応した角度だけ回転軸P1を回転する。
【0036】
また、反転ローラ52は、この第1のステッピングモータ52cの回転軸P1に固定された第1のプーリ52dと、この第1のプーリ52dに一端が掛けられた第1のベルト52eと、この第1のベルト52eの他端が掛けられた第2のプーリ52fと、第2のプーリ52fと同軸に固定された第3のプーリ52gと、この第3のプーリ52gに一端が掛けられた第2のベルト52hと、この第2のベルト52hの他端が掛けられた第4のプーリ52jと、この第4のプーリ52jと同軸で回転するローラ52aとを備えている。
【0037】
そして、第1のステッピングモータ52cの回転軸P1がR1方向に駆動パルス信号のパルス数に対応した角度だけ回転すると、第1のベルト52eと第2のベルト52hとを介して、第4のプーリ52jが回転軸P2を中心にS1方向に回転する。これにより、第4のプーリ52jが固定されたローラ52aも回転軸P2を中心にS1方向に回転し、ローラ52aが回転しながら、ローラ52a,52bで印刷用紙Wを上下方向から挟み込むことにより、印刷用紙Wを循環系搬送路CRへ搬送する。
【0038】
また、搬送ローラ53も、反転ローラ52と同一の構成を有しており、図2に示すように、第2のステッピングモータ53cと、第5のプーリ53dと、第3のベルト53eと、第6のプーリ53fと、第7のプーリ53gと、第4のベルト53hと、第8のプーリ53jと、ローラ53a,53bとを備えている。
【0039】
そして、第2のステッピングモータ53cの回転軸P3がR2方向に駆動パルス信号のパルス数に対応した角度だけ回転すると、第3のベルト53eと第4のベルト53hとを介して、第8のプーリ53jが回転軸P4を中心にS2方向に回転する。これにより、第8のプーリ53jが固定されたローラ53aも回転軸P4を中心にS2方向に回転し、ローラ53aが回転しながら、ローラ53a,53bで印刷用紙Wを上下方向から挟み込むことにより、印刷用紙Wを循環系搬送路CRへ搬送する。
【0040】
また、反転ローラ52及び搬送ローラ53の近傍には、例えば加速度センサ等で構成された振動センサ18が設けられている。例えば、振動センサ18は、第1,第2のステッピングモータ52c,53cの回転軸P1,P3の軸受けを固定するフレーム(図示しない)に固定され、軸受けを介して第1,第2のステッピングモータ52c,53cから伝達されるx,y,z成分毎の振動(加速度)を検出する。
【0041】
さらに、循環系搬送路CR近傍には、第1,第2の用紙位置センサ61,62が設置されている。この第1,第2の用紙位置センサ61,62は、光透過型又は反射型のセンサであり、反転ローラ52又は搬送ローラ53により循環系搬送路CRを搬送された印刷用紙Wの先端及び後端を検出する。
【0042】
<印刷装置の機能構成>
図3は、本発明の実施例1である印刷装置1の機能構成を示す機能構成図である。
【0043】
図3に示すように印刷装置1は、制御部80と、振動センサ18と、操作部73と、第1のステッピングモータ52cと、第2のステッピングモータ53cとを備えている。このうち、振動センサ18と、第1,第2のステッピングモータ52c,53cとは上述したので、説明を省略する。
【0044】
操作部73は、操作キーや表示/入力パネル等を備えており、利用者によって操作キーが押下操作され、又は表示/入力パネルがタッチ操作されることによって、印刷開始を要求する操作信号等を生成し、生成した操作信号を制御部80へ供給する。
【0045】
制御部80は、印刷装置1の中枢的な制御を行う。また、制御部80は、振動センサ18からx,y,z成分毎の振動データがそれぞれ供給される信号入力端81a〜81cと、信号入力端81a〜81cから供給されたx,y,z成分毎の振動データからそれぞれ所定の高周波数帯の振動データをカットするLPF(Low-pass filter)82a〜82cと、LPF82a〜82cから供給されたアナログ信号をディジタル信号へ変換するADコンバータ84と、各種演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)85と、各種ディジタル信号処理を行うDSP(Digital Signal Processor)86と、各種データを記憶するメモリ87と、DSP86から供給された制御信号に基づいて、それぞれ第1,第2のステッピングモータ52c,53cを駆動するドライバ88a,88bとを備える。
【0046】
CPU85は、その機能上、固有周波数決定部85aと、ピーク周波数決定部85bと、脱調判定部85cとを備える。
【0047】
固有周波数決定部85aは、後述するフーリエ変換部86aによりフーリエ変換された結果に基づいて、第1,第2のステッピングモータ52c,53cの固有周波数を決定する。
【0048】
ピーク周波数決定部85bは、後述するフーリエ変換部86aによりフーリエ変換された結果に基づいて、第1,第2のステッピングモータ52c,53cのピーク周波数を決定する。
【0049】
脱調判定部85cは、ピーク周波数決定部85bにより決定されたピーク周波数がメモリ87に記憶された固有周波数に一致しない場合に、第1,第2のステッピングモータ52c,53cが脱調したと判定する。
【0050】
DSP86は、その機能上、フーリエ変換部86aと、駆動制御部86bとを備える。
【0051】
フーリエ変換部86aは、振動センサ18により検出された振動をフーリエ変換する。
【0052】
駆動制御部86bは、第1,第2のステッピングモータ52c,53cを制御する。また、駆動制御部86bは、脱調判定部85cにより脱調したと判定された場合、第1,第2のステッピングモータ52c,53cを再起動させる。具体的には、ドライバ88a,88bが、駆動制御部86bから供給された制御信号に基づいて、第1,第2のステッピングモータ52c,53cを再度動作させる。これにより、ベルトを介して駆動が伝達され、ローラ52a,53aが回転駆動される。
【0053】
メモリ87は、揮発性半導体等で構成され、CPU85及びDSP86が各種処理を実行する上で必要なデータ等を記憶する。また、メモリ87は、第1のステッピングモータ52c及び第2のステッピングモータ53c固有の共振周波数である固有周波数を固有周波数情報として記憶する。ここで、固有周波数とは、ステッピングモータ固有の共振周波数のことをいう。
【0054】
図4は、メモリ87が記憶している固有周波数情報の一例を示した説明図である。
【0055】
図4に示すように、第1のステッピングモータ52cの固有周波数101と、第2のステッピングモータ53cの固有周波数102とが記憶されている。
【0056】
<印刷装置1の作用>
次に、本発明の実施例1である印刷装置1の作用について説明する。
【0057】
本発明の実施例1である印刷装置1は、主に固有周波数決定処理、及び脱調監視処理を行う。そのため、各々の処理について以下に詳細に説明する。
【0058】
≪固有周波数決定処理≫
本発明の実施例1である印刷装置1による固有周波数決定処理の詳細について説明する。
【0059】
図5は、本発明の実施例1である印刷装置1による固有周波数決定処理の処理手順を示したフローチャートである。
【0060】
図5に示すように、CPU85は、電源が投入されたか否かを判定する(ステップS201)。具体的には、CPU85は、操作部73から電源投入を要求する操作信号が供給されたか否かを判定する。
【0061】
ステップS201において、電源が投入されたと判定された場合、DSP86の駆動制御部86bは、第1のステッピングモータ52cを起動する(ステップS202)。具体的には、ドライバ88aが、駆動制御部86bから供給された制御信号に基づいて、第1のステッピングモータ52cを、1600(Hz/相)で動作させる。
【0062】
次に、DSP86は、第1のステッピングモータ52cの加速が終了したか否かを判定する(ステップS203)。
【0063】
ステップS203において第1のステッピングモータ52cの加速が終了したと判定された場合、DSP86のフーリエ変換部86aは、定常運転時において振動センサ18により検出された振動データをフーリエ変換する(ステップS204)。具体的には、フーリエ変換部86aは、振動センサ18により検出されたx,y,z成分毎の振動データをフーリエ変換することにより、x,y,z成分毎の周波数に対する振動の強度を示す振動レベルを算出する。そして、フーリエ変換部86aは、この算出されたx,y,z成分毎の振動レベルを周波数毎に加算する。
【0064】
図6(a)は、本発明の実施例1である印刷装置1が備えるDSP86のフーリエ変換部86aが第1のステッピングモータ52cの定常運転時における振動データに基づいて、フーリエ変換した振動レベルの一例を示した図である。
【0065】
図6(a)に示した例では、第1のステッピングモータ52cを1600(Hz/相)で動作させた場合において、x軸に振動センサ18により検出された振動の周波数を示し、y軸に振動レベルを示している。
【0066】
図6(a)に示すように、第1のステッピングモータ52cの動作周波数である1600(Hz)で振動レベル201が最も高いピーク値となり、この1600(Hz)の3倍波である4800(Hz)で振動レベル201が2番目に高いピーク値となっている。
【0067】
そして、CPU85の固有周波数決定部85aは、第1のステッピングモータ52cの固有周波数を決定する(ステップS205)。例えば、フーリエ変換部86aにより図6(a)に示したフーリエ変換された結果が供給された場合、固有周波数決定部85aは、動作周波数である1600(Hz)以外で振動レベルが最も高い周波数、即ち2番目に高いピーク値となる周波数である4800(Hz)を、第1のステッピングモータ52cの固有周波数として決定する。
【0068】
次に、DSP86の駆動制御部86bは、第1のステッピングモータ52cを停止する(ステップS206)。具体的には、ドライバ88aが、駆動制御部86bから供給された制御信号に基づいて、第1のステッピングモータ52cを停止させる。
【0069】
次に、DSP86の駆動制御部86bは、第2のステッピングモータ53cを起動する(ステップS207)。具体的には、ドライバ88bが、駆動制御部86bから供給された制御信号に基づいて、第2のステッピングモータ53cを、1600(Hz/相)で動作させる。
【0070】
次に、DSP86は、第2のステッピングモータ53cの加速が終了したか否かを判定する(ステップS208)。
【0071】
ステップS208において第2のステッピングモータ53cの加速が終了したと判定された場合、DSP86のフーリエ変換部86aは、定常運転時において振動センサ18により検出された振動データをフーリエ変換する(ステップS209)。
【0072】
図6(b)は、本発明の実施例1である印刷装置1が備えるDSP86のフーリエ変換部86aが、第2のステッピングモータ53c定常運転時における振動データに基づいて、フーリエ変換した振動レベルの一例を示した図である。
【0073】
図6(b)に示した例では、第2のステッピングモータ53cを1600(Hz/相)で動作させた場合において、x軸に振動センサ18により検出された振動の周波数を示し、y軸に振動の強度を示す振動レベルを示している。
【0074】
図6(b)に示すように、第2のステッピングモータ53cの動作周波数である1600(Hz)で振動レベル202が最も高いピーク値となり、この1600(Hz)の1/2倍波である800(Hz)で振動レベル202が2番目に高いピーク値となっている。
【0075】
そして、CPU85の固有周波数決定部85aは、第2のステッピングモータ53cの固有周波数を決定する(ステップS210)。例えば、フーリエ変換部86aにより図6(b)に示したフーリエ変換された結果が供給された場合、固有周波数決定部85aは、動作周波数である1600(Hz)以外で振動レベルが最も高い周波数、即ち2番目に高いピーク値となる周波数である800(Hz)を、第2のステッピングモータ53cの固有周波数として決定する。
【0076】
次に、DSP86の駆動制御部86bは、第2のステッピングモータ53cを停止する(ステップS211)。具体的には、ドライバ88aが、駆動制御部86bから供給された制御信号に基づいて、第1のステッピングモータ52cを停止させる。
【0077】
次に、CPU85の固有周波数決定部85aは、ステップS205において決定された第1のステッピングモータ52cの固有周波数と、ステップS210において決定された第2のステッピングモータ53cの固有周波数とをメモリ87に記憶する(ステップS212)。
【0078】
このように、本発明の実施例1である印刷装置1は、電源が投入される度に、第1のステッピングモータ52cの固有周波数と第2のステッピングモータ53cの固有周波数とをメモリ87に記憶する。
【0079】
≪脱調監視処理≫
図7及び図8は、本発明の実施例1である印刷装置1の脱調監視処理の処理手順を示したフローチャートである。
【0080】
図7に示すように、印刷が開始されると、CPU85は、メモリ87から、第1のステッピングモータ52c及び第2のステッピングモータ53cそれぞれの設定速度に対応した固有周波数を抽出する(ステップS102)。
【0081】
次に、CPU85は、カウンタiの値に“1”を代入した後(ステップS103)、カウンタiの値が閾値Rを越えているか否かを判定する(ステップS104)。ここで、閾値Rは、脱調回数の上限を設定するための閾値であり、予め提供者等が実測に基づいた適正な値を予め算出し、提供者や利用者等が予め適正な値を設定しておく。
【0082】
ステップS104において、カウンタiの値が閾値R以下であると判定された場合(NOの場合)、DSP86の駆動制御部86bは、第1のステッピングモータ52cを起動する(ステップS105)。具体的には、ドライバ88aが、駆動制御部86bから供給された制御信号に基づいて、第1のステッピングモータ52cを、1600(Hz/相)で動作させることにより、ローラ52a,52bを回転駆動させる。
【0083】
次に、CPU85は、第1のステッピングモータ52cの加速が終了したか否かを判定する(ステップS106)。
【0084】
ステップS106において第1のステッピングモータ52cの加速が終了したと判定された場合、DSP86のフーリエ変換部86aは、DSP86のフーリエ変換部86aは、定常運転時において振動センサ18により検出された振動データをフーリエ変換する(ステップS107)。具体的には、フーリエ変換部86aは、振動センサ18により検出されたx,y,z成分毎の振動データをフーリエ変換することにより、x,y,z成分毎の周波数に対する振動の強度を示す振動レベルを算出する。そして、フーリエ変換部86aは、この算出されたx,y,z成分毎の振動レベルを周波数毎に加算する。
【0085】
次に、CPU85のピーク周波数決定部85bは、第1のステッピングモータ52cのピーク周波数を決定する(ステップS108)。例えば、フーリエ変換部86aにより図6(a)に示したフーリエ変換された結果が供給された場合、ピーク周波数決定部85bは、動作周波数である1600(Hz)以外で振動レベルが最も高い周波数、即ち2番目に高いピーク値となる周波数である4800(Hz)を、第1のステッピングモータ52cのピーク周波数として決定する。
【0086】
次に、CPU85の脱調判定部85cは、ステップS108において決定された第1のステッピングモータ52cのピーク周波数が、メモリ87に記憶された第1のステッピングモータ52cの固有周波数と一致するか否かを判定する(ステップS109)。
【0087】
ステップS109において、第1のステッピングモータ52cのピーク周波数が、第1のステッピングモータ52cの固有周波数に一致しないと判定された場合(NOの場合)、DSP86の駆動制御部86bは、第1のステッピングモータ52cが脱調したと判定し、第1のステッピングモータ52cを停止する(ステップS111)。具体的には、ドライバ88aが、駆動制御部86bから供給された制御信号に基づいて、第1のステッピングモータ52cを停止させる。
【0088】
次に、CPU85は、カウンタiの値を“1”だけ加算し(ステップS112)、処理をステップS104へ移行する。
【0089】
一方、ステップS109において、第1のステッピングモータ52cのピーク周波数が、第1のステッピングモータ52cの固有周波数に一致すると判定された場合(YESの場合)、循環系搬送路CR上において第1のステッピングモータ52cの下流に設置された第1の用紙位置センサ61が印刷用紙Wを検出したか否かを判定する(ステップS110)。
【0090】
ステップS110において、第1の用紙位置センサ61が印刷用紙Wを検出したと判定された場合(YESの場合)、DSP86の駆動制御部86bは、第2のステッピングモータ53cを起動する(ステップS113)。具体的には、ドライバ88bが、駆動制御部86bから供給された制御信号に基づいて、第2のステッピングモータ53cを、1600(Hz/相)で動作させることにより、ローラ53a,53bを回転駆動させる。
【0091】
次に、CPU85は、第2のステッピングモータ53cの加速が終了したか否かを判定する(ステップS114)。
【0092】
ステップS114において第2のステッピングモータ53cの加速が終了したと判定された場合、DSP86のフーリエ変換部86aは、DSP86のフーリエ変換部86aは、定常運転時において振動センサ18により検出された振動データをフーリエ変換する(ステップS115)。具体的には、フーリエ変換部86aは、振動センサ18により検出されたx,y,z成分毎の振動データをフーリエ変換することにより、x,y,z成分毎の周波数に対する振動の強度を示す振動レベルを算出する。そして、フーリエ変換部86aは、この算出されたx,y,z成分毎の振動レベルを周波数毎に加算する。
【0093】
次に、図8に示すように、CPU85のピーク周波数決定部85bは、第2のステッピングモータ53cのピーク周波数を決定する(ステップS116)。例えば、フーリエ変換部86aにより図6(b)に示したフーリエ変換された結果が供給された場合、ピーク周波数決定部85bは、動作周波数である1600(Hz)以外で振動レベルが最も高い周波数、即ち2番目に高いピーク値となる周波数である800(Hz)を、第2のステッピングモータ53cのピーク周波数として決定する。
【0094】
次に、CPU85の脱調判定部85cは、ステップS116において決定された第2のステッピングモータ53cのピーク周波数が、メモリ87に記憶された第2のステッピングモータ53cの固有周波数と一致するか否かを判定する(ステップS117)。
【0095】
ステップS117において、第2のステッピングモータ53cのピーク周波数が、第2のステッピングモータ53cの固有周波数に一致しないと判定された場合(NOの場合)、DSP86の駆動制御部86bは、第2のステッピングモータ53cが脱調したと判定し、第2のステッピングモータ53cを停止する(ステップS122)。
【0096】
さらに、DSP86の駆動制御部86bは、第1のステッピングモータ52cを停止する(ステップS123)。
【0097】
次に、CPU85は、カウンタiの値を“1”だけ加算し(ステップS124)、第1の用紙位置センサ61が印刷用紙Wを非検出、即ち印刷用紙Wが通過したか否かを判定する(ステップS125)。そして、ステップS125において、印刷用紙Wが通過したと判定された場合(YESの場合)、処理をステップS113へ移行し、印刷用紙Wが通過しなかったと判定された場合(NOの場合)、処理をステップS104へ移行する。
【0098】
一方、ステップS117において、第2のステッピングモータ53cのピーク周波数が、第2のステッピングモータ53cの固有周波数に一致すると判定された場合(YESの場合)、CPU85は、循環系搬送路CR上において第1のステッピングモータ52cの下流に設置された第1の用紙位置センサ61が印刷用紙Wを非検出、即ち印刷用紙Wが通過したか否かを判定する(ステップS118)。
【0099】
ステップS118において、印刷用紙Wが通過したと判定された場合(YESの場合)、駆動制御部86bは、第1のステッピングモータ52cを停止する(ステップS119)。
【0100】
次に、CPU85は、循環系搬送路CR上において第2のステッピングモータ53cの下流に設置された第2の用紙位置センサ62が印刷用紙Wを非検出、即ち印刷用紙Wが通過したか否かを判定する(ステップS120)。
【0101】
ステップS120において、印刷用紙Wが通過したと判定された場合(YESの場合)、駆動制御部86bは、第2のステッピングモータ53cを停止する(ステップS121)。
【0102】
図9は、本発明の実施例1である印刷装置1の脱調監視処理時における位置センサ出力及び回転速度の一例を示した図である。(a)は、第1の用紙位置センサ61のセンサ出力を示しており、(b)は、第1のステッピングモータ52cの回転速度を示しており、(c)は、第2の用紙位置センサ62のセンサ出力を示しており、(d)は、第2のステッピングモータ53cの回転速度を示している。
【0103】
図9(b)に示すように、T1時点において、DSP86の駆動制御部86bが、第1のステッピングモータ52cを起動する。そして、T2点において、第1のステッピングモータ52cの加速が終了し、T2時点以降、第1のステッピングモータ52cは定常運転となる。
【0104】
図9(d)に示すように、T3時点において、第1の用紙位置センサ61が印刷用紙Wを検出すると、DSP86の駆動制御部86bが第2のステッピングモータ53cを起動する。
【0105】
そして、T4点において、第2のステッピングモータ53cの加速が終了し、T4時点以降、第2のステッピングモータ53cは定常運転となる。
【0106】
図9(b),(d)に示すように、T6時点において、CPU85の脱調判定部85cが、第2のステッピングモータ53cのピーク周波数が固有周波数と一致せず、第2のステッピングモータ53cが脱調したと判定すると、DSP86の駆動制御部86bが第1のステッピングモータ52cと第2のステッピングモータ53cとを停止すると共に、第1のステッピングモータ52cを再起動する。
【0107】
そして、T7時点において、第1のステッピングモータ52cの加速が終了すると、DSP86の駆動制御部86bは、第2のステッピングモータ53cを再起動する。
【0108】
次に、T8時点において、第1の用紙位置センサ61が印刷用紙Wの通過を検出すると、DSP86の駆動制御部86bが第1のステッピングモータ52cを停止し、T9時点において、第2の用紙位置センサ62が印刷用紙Wの通過を検出すると、DSP86の駆動制御部86bが第2のステッピングモータ53cを停止する。
【0109】
以上のように、本発明の実施例1である印刷装置1によれば、第1のステッピングモータ52cのピーク周波数が、第1のステッピングモータ52cの固有周波数に一致しない場合、第1のステッピングモータ52cが脱調したと判定し、第1のステッピングモータ52cを停止した後、再度起動するので、適切に第1のステッピングモータ52cの脱調を検出することができると共に、第1のステッピングモータ52cの再起動を行うことができる。
【0110】
また、本発明の実施例1である印刷装置1によれば、第2のステッピングモータ53cについても、第1のステッピングモータ52cと同様に、適切に脱調を検出することができると共に、再起動を行うことができる。
【0111】
さらに、本発明の実施例1である印刷装置1によれば、振動センサ18により検出された振動に基づいて、第1のステッピングモータ52c又は第2のステッピングモータ53cが脱調したか否かを判定するので、新たにパルス板・フォトインタラプタ・取付ブラケット等のハードウェアを必要とせず、製造費用の低減及び装置の小型化を実現することができる。
【0112】
なお、本発明の実施例1である印刷装置1では、第1のステッピングモータ52cのピーク周波数が、第1のステッピングモータ52cの固有周波数に一致しないと判定された場合、第1のステッピングモータ52cが脱調したと判定し、第1のステッピングモータ52cを停止した後、再起動したが、これに限らない。
【0113】
例えば、固有周波数に幅を持たせて、固有周波数帯としてメモリ87に記憶し、第1のステッピングモータ52cのピーク周波数が、メモリ87に記憶された第1のステッピングモータ52cの固有周波数帯に含まれないと判定された場合、第1のステッピングモータ52cが脱調したと判定し、第1のステッピングモータ52cを停止した後、再起動するようににしてもよい。
【0114】
さらに、本発明の実施例1である印刷装置1では、CPU85のピーク周波数決定部85bが、動作周波数である以外で振動レベルが最も高い周波数、即ち2番目に高いピーク値となる周波数を、第1のステッピングモータ52cのピーク周波数として決定したがこれに限らない。例えば、ピーク周波数決定部85bが、フーリエ変換部86aによりフーリエ変換された振動レベルの値が、所定の閾値Sを越えた1以上の周波数、即ち周波数帯をピーク周波数帯として決定するようにしてもよい。
【0115】
ここで、この閾値Sは、大きすぎると、ピーク周波数を決定できなくなり、小さすぎると、複数の周波数帯をピーク周波数帯として決定してしまう場合がある。そこで、予め提供者等が実測に基づいた適正な値を予め算出し、提供者や利用者等が予め適正な値を設定しておく。
【0116】
また、本発明の実施例1である印刷装置1では、第1のステッピングモータ52cと第2のステッピングモータ53cとを備え、振動センサ18により検出された振動に基づいて、第1のステッピングモータ52c又は第2のステッピングモータ53cが脱調したか否かを判定するが、これに限らず、いずれか1つのステッピングモータを備える構成としてもよい。
【0117】
また、本発明の実施例1である印刷装置1では、振動センサ18により検出されたx,y,z成分毎の振動データをフーリエ変換することにより、x,y,z成分毎の周波数に対する振動の強度を示す振動レベルを算出し、この算出されたx,y,z成分毎の振動レベルを周波数毎に加算することにより周波数毎の振動レベルと算出したが、これに限らない。
【0118】
例えば、振動センサ18により検出されたx,y,z成分毎の振動データのうち、いずれか1つの成分の振動データをフーリエ変換するようにしてもよいし、xy,yz,zxのいずれかの成分の振動データをフーリエ変換するようにしてもよい。これにより、DSP86によるフーリエ変換の負荷を低減することができる。
【0119】
また、本発明の実施例1である印刷装置1では、電源が投入された際に、固有周波数を決定したが、これに限らず、本発明の実施例1である印刷装置1の工場出荷時に固有周波数を決定し、この決定された固有周波数を、例えば、不揮発性半導体等の記憶媒体に記憶するようにしてもよい。
【実施例2】
【0120】
本発明の実施例1では、第1のステッピングモータ52c又は第2のステッピングモータ53cの定常運転時における振動センサ18により検出された振動に基づいて、第1のステッピングモータ52c又は第2のステッピングモータ53cが脱調したか否かを判定する印刷装置1を例に挙げて説明した。
【0121】
本発明の実施例2では、第1のステッピングモータ52c又は第2のステッピングモータ53cの加速運転時における振動センサ18により検出された振動に基づいて、第1のステッピングモータ52c又は第2のステッピングモータ53cが脱調したか否かを判定する印刷装置1を例に挙げて説明する。
【0122】
図10及び図11は、本発明の実施例2である印刷装置1の脱調監視処理の処理手順を示したフローチャートである。
【0123】
ここで、本発明の実施例2である印刷装置1の脱調監視処理のフローチャートに示した各ステップうち、本発明の実施例1である印刷装置1の脱調監視処理のフローチャートと同一のステップ番号を付したステップは、同一の処理を実行するので、説明を省略する。
【0124】
図10に示すように、本発明の実施例2である印刷装置1が備えるDSP86の駆動制御部86bが、第1のステッピングモータ52cを起動する(ステップS105)と、DSP86のフーリエ変換部86aは、加速運転時において振動センサ18により検出された振動データをフーリエ変換する(ステップS306)。具体的には、フーリエ変換部86aは、第1のステッピングモータ52cの加速運転中、例えば、所定時間間隔(例えば0.5msec)毎に、振動センサ18により検出された振動データをフーリエ変換する。
【0125】
次に、CPU85のピーク周波数決定部85bは、所定時間間隔(例えば0.5msec)毎に、第1のステッピングモータ52cのピーク周波数を決定する(ステップS307)。
【0126】
そして、CPU85の脱調判定部85cは、ステップS307において決定された第1のステッピングモータ52cのピーク周波数が、メモリ87に記憶された第1のステッピングモータ52cの固有周波数と一致するか否かを判定する(ステップS308)。
【0127】
図12は、メモリ87が記憶している固有周波数情報の一例を示した図である。
【0128】
図12に示すように、カラム名“速度設定”(符号301)と、カラム名“固有周波数”(符号302)とが関連付けられて固有周波数帯情報として記憶されている。また、固有周波数302は、第1のステッピングモータ52cの固有周波数302aと、第2のステッピングモータ53cの固有周波数302bとを含んでいる。
【0129】
脱調判定部85cは、第1のステッピングモータ52cの加速運転中、設定されている速度設定に対応する第1のステッピングモータ52cの固有周波数を抽出し、ステップS307において決定された第1のステッピングモータ52cのピーク周波数が、抽出された第1のステッピングモータ52cの固有周波数と一致するか否かを判定する。
【0130】
図13は、本発明の実施例2である印刷装置1が備える第1のステッピングモータ52cの加速時における回転速度を示した図である。
【0131】
図13に示すように、脱調判定部85cは、第1のステッピングモータ52cの加速運転中、設定されている速度設定に対応する第1のステッピングモータ52cの固有周波数を抽出する。
【0132】
例えば、DSP86の駆動制御部86bが、T11時点において第1のステッピングモータ52cを起動した後、所定時間(例えば、0.5msec)が経過したT12時点において、第1のステッピングモータ52cの回転速度がV1に達したとすると、脱調判定部85cは、T12時点からさらに所定時間が経過したT13時点までの間、メモリ87から速度設定の値が“1”に対応する第1のステッピングモータ52cの固有周波数を抽出する。
【0133】
同様に、脱調判定部85cは、T13時点〜T14時点までの間、速度設定の値が“2”に対応する第1のステッピングモータ52cの固有周波数を抽出し、T14時点〜T15時点までの間、速度設定の値が“3”に対応する第1のステッピングモータ52cの固有周波数を抽出し、T15時点〜T16時点までの間、速度設定の値が“4”に対応する第1のステッピングモータ52cの固有周波数を抽出し、T16時点以降、速度設定の値が“5”に対応する第1のステッピングモータ52cの固有周波数を抽出する。
【0134】
このようにして、脱調判定部85cは、第1のステッピングモータ52cの加速運転中、所定時間間隔で、設定されている速度設定に対応する第1のステッピングモータ52cの固有周波数を抽出し、第1のステッピングモータ52cのピーク周波数が、抽出された第1のステッピングモータ52cの固有周波数と一致するか否かを判定する。
【0135】
そして、CPU85は、第1のステッピングモータ52cの加速が終了するまで(ステップS309)、ステップS306〜S309の処理を繰り返し実行することにより、第1のステッピングモータ52cの加速運転時における振動センサ18により検出された振動に基づいて、第1のステッピングモータ52cが脱調したか否かを判定する。
【0136】
次に、図9に示すように、DSP86の駆動制御部86bが、第2のステッピングモータ53cを起動する(ステップS113)と、DSP86のフーリエ変換部86aは、加速運転時において振動センサ18により検出された振動データをフーリエ変換する(ステップS314)。具体的には、フーリエ変換部86aは、第2のステッピングモータ53cの加速運転中、例えば、所定時間間隔(例えば0.5msec)毎に、振動センサ18により検出された振動データをフーリエ変換する。
【0137】
次に、図11に示すように、CPU85のピーク周波数決定部85bは、所定時間間隔(例えば0.5msec)毎に、第2のステッピングモータ53cのピーク周波数を決定する(ステップS315)。
【0138】
そして、CPU85の脱調判定部85cは、ステップS315において決定された第2のステッピングモータ53cのピーク周波数が、メモリ87に記憶された第2のステッピングモータ53cの固有周波数と一致するか否かを判定する(ステップS316)。具体的には、脱調判定部85cは、ステップS308の処理と同様に、第2のステッピングモータ53cの加速運転中、設定されている速度設定に対応する第2のステッピングモータ53cの固有周波数を抽出し、ステップS315において決定された第2のステッピングモータ53cのピーク周波数が、抽出された第2のステッピングモータ53cの固有周波数と一致するか否かを判定する。
【0139】
そして、CPU85は、第2のステッピングモータ53cの加速が終了するまで(ステップS317)、ステップS314〜S317の処理を繰り返し実行することにより、第2のステッピングモータ53cの加速運転時における振動センサ18により検出された振動に基づいて、第2のステッピングモータ53cが脱調したか否かを判定する。
【0140】
以上のように、本発明の実施例2では、第1のステッピングモータ52c又は第2のステッピングモータ53cの加速運転時における振動センサ18により検出された振動に基づいて、第1のステッピングモータ52c又は第2のステッピングモータ53cが脱調したか否かを判定するので、加速運転時においても脱調したか否かを判定することができる。
【符号の説明】
【0141】
1…印刷装置
10…サイド給紙部
11…給紙台
18…振動センサ
20…内部給紙部
30…印刷部
40…排紙部
50…反転部
52a,52b,53a,53b…ローラ
52c…第1のステッピングモータ
53c…第2のステッピングモータ
61…第1の用紙位置センサ
62…第2の用紙位置センサ
73…操作部
80…制御部
81a〜81c…信号入力端
82a〜82c…LPF
84…ADコンバータ
85…CPU
85a…固有周波数決定部
85b…ピーク周波数決定部
85c…脱調判定部
86…DSP
86a…フーリエ変換部
86b…駆動制御部
87…メモリ
88a,88b…ドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷用紙を挟みながら回転することにより搬送経路上で前記印刷用紙を搬送する搬送ローラと、
前記搬送ローラを回転駆動させるステッピングモータと、
前記ステッピングモータ固有の共振周波数帯である固有周波数帯を記憶する固有周波数帯記憶手段と、
前記ステッピングモータ近傍に設けられ、前記ステッピングモータが駆動中の振動を検出する振動検出手段と、
前記検出された振動をフーリエ変換するフーリエ変換手段と、
前記フーリエ変換手段によりフーリエ変換された結果に基づいてピーク周波数を決定するピーク周波数決定手段と、
前記ピーク周波数決定手段により決定されたピーク周波数が前記固有周波数帯記憶手段に記憶された固有周波数帯に含まれない場合に、前記ステッピングモータが脱調したと判定する脱調判定手段と、
前記脱調判定手段により脱調したと判定された場合、前記ステッピングモータの起動を制御して前記搬送ローラを回転駆動させる駆動制御手段と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記駆動制御手段は、
前記脱調判定手段により脱調したと判定された場合、起動中の前記ステッピングモータを停止させた後、再起動させることで、前記搬送ローラを回転駆動させる
ことを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記ピーク周波数決定手段は、
前記フーリエ変換手段によりフーリエ変換された振動レベルの値が、所定の閾値を越えた1以上の周波数をピーク周波数として決定する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記フーリエ変換手段は、
前記ステッピングモータの回転速度が略一定の場合に、前記振動検出手段により検出された振動をフーリエ変換する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の印刷装置。
【請求項5】
前記フーリエ変換手段は、
前記ステッピングモータの回転が加速中に、所定の時間間隔毎に、前記振動検出手段により検出された振動をフーリエ変換する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の印刷装置。
【請求項6】
前記ステッピングモータと前記振動検出手段とは、同一フレームに配置された
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−263746(P2010−263746A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114578(P2009−114578)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】