説明

印刷装置

【課題】ペーパーエンド監視の精度のバラツキを抑制する。
【解決手段】用紙を副走査方向に移動させる用紙搬送手段(改行モータ52)と、用紙に画像を印字する印字ヘッド51と、用紙の幅を検出する用紙幅センサ62と、印字ヘッド及び用紙幅センサを搭載するキャリッジユニット50と、キャリッジユニットを主走査方向に移動させるキャリッジ移動手段(スペースモータ53)と、用紙搬送手段及びキャリッジ移動手段の駆動を制御する制御部10とを有し、キャリッジユニットは、印字ヘッドのセンタ位置から用紙幅センサのセンタ位置までの距離が予め設定された副走査方向の印字不可能領域の幅よりも短くなるように、印字ヘッドよりも副走査方向の上流側の位置に用紙幅センサを搭載しており、制御部は、用紙搬送手段によって用紙の改行動作を実行させる毎に、用紙幅センサから出力される用紙の有無を表す検出信号に基づいて、印字が可能か否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙の有無を判定するシリアル型の印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリアル型の印刷装置としては、ドットプリンタやインクジェットプリンタ等がある(例えば、特許文献1参照)。シリアル型の印刷装置は、印字処理時に、空(から)印字を防止するために、例えば、以下のようにしてペーパーエンド監視を行っている。
【0003】
例えば、印刷装置は、レバー式のペーパーエンドセンサを内部に有している。ペーパーエンドセンサは、搬送される用紙の下端の位置を検出するセンサである。ペーパーエンドセンサは、センサレバーを備えており、印字処理時に、センサレバーを押下する用紙の有無に応じて、用紙の有無を表す検出信号を制御部に出力する。制御部は、ペーパーエンドセンサから出力された検出信号の状態に基づいて、「用紙有り」状態又は「用紙無し」状態を検出する。制御部は、「用紙無し」状態を検出すると、「用紙無し」状態を検出した時点から、改行動作(1行分の用紙の搬送動作)が行われる度に、副走査方向(用紙の搬送方向)に対する残りの印字可能量の値から実行改行量の値を減算する。そして、制御部は、残りの印字可能量の値が「0」になったときに、用紙がペーパーエンド状態になった、すなわち、用紙の印字不可能領域が印字ヘッドの位置に到達した、と見なす。このとき、制御部は、ペーパーエンド状態時の動作として、用紙の排出動作を行う。
このようにして、印刷装置は、ペーパーエンド監視を行い、これによって、空印字を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−285252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の印刷装置は、以下に説明するように、ペーパーエンド監視の精度にバラツキが発生するため、依然として、空印字を行う場合がある、という課題があった。
【0006】
以下、図15を参照して、従来の印刷装置の課題につき説明する。なお、図15は、ペーパーエンドセンサの構成を示す図である。図15(a)は、「用紙有り」時のペーパーエンドセンサの状態を示しており、また、図15(b)は、「用紙無し」時のペーパーエンドセンサの状態を示している。
【0007】
図15に示すように、レバー式のペーパーエンドセンサ61は、センサレバー61aと反射式の光学センサ部61bとを備えている。センサレバー61aは、センタ付近が図示せぬ支持軸によって回動自在に支持されており、用紙Pが搬送されることにより、支持軸を中心にして揺動する構成となっている。光学センサ部61bは、そのセンサレバー61aの揺動に応じて、「用紙有り」状態又は「用紙無し」状態を表す検出信号を制御部に出力する。
【0008】
例えば、用紙Pは、印字処理時に、センサレバー61aの上に搬送される。その際に、図15(a)に示すように、用紙Pは、センサレバー61aの一端を押下した状態となる。このとき、センサレバー61aは、一端が下降し、他端が上昇した状態となる。光学センサ部61bは、センサレバー61aの他端の位置に設けられており、センサレバー61aの他端が上昇することによって、遮断が解除された状態となる。その結果、ペーパーエンドセンサ61は、「用紙有り」状態を表す値の検出信号を制御部に出力する。
【0009】
この後、用紙Pは、さらに搬送されて、センサレバー61aの上を通過する。すると、図15(b)に示すように、用紙Pは、下端Pbがセンサレバー61aの一端の上から外れた状態となる。このとき、センサレバー61aは、一端が上昇し、他端が下降した状態となる。光学センサ部61bは、センサレバー61aの他端が下降することによって、遮断された状態となる。その結果、ペーパーエンドセンサ61は、「用紙無し」状態を表す値の検出信号を制御部に出力する。これにより、制御部は、用紙Pの下端の位置を認識する。
【0010】
このように、レバー式のペーパーエンドセンサ61は、用紙Pが搬送されることによって、センサレバー61aが揺動し、光学センサ部61bがそのセンサレバー61aの揺動に応じて「用紙有り」状態又は「用紙無し」状態を表す検出信号を制御部に出力する構成となっている。そのため、ペーパーエンドセンサ61によるペーパーエンド監視では、物理的に用紙Pの下端Pbがセンサレバー61aの一端を外れてから、実際にセンサレバー61aの他端が光学センサ部61bを遮断するまでの時間が、検出遅延時間として、発生する。
【0011】
この検出遅延時間は、用紙Pの状態(例えば、用紙Pの曲げ強度の違いや、下端Pbがカールしている等の用紙Pの形状の違い、その他)によって変化し易い。
また、この検出遅延時間内に、用紙Pが進む距離は、搬送速度の違いによって異なる。
そのため、ペーパーエンドセンサ61によるペーパーエンド監視では、検出精度にバラツキが発生していた。
【0012】
従来の印刷装置は、ペーパーエンド監視の精度にバラツキが発生することにより、空印字を行う場合があり、最悪の場合に、例えば、印刷装置がドットプリンタであれば、用紙Pの外に印字を行うことにより、印字ヘッドのピンに損傷を与えたり、又は、印刷装置がインクジェットプリンタであれば、用紙Pの外にインクの吐き出しを行うことにより、用紙Pの走行経路を汚したりする等の、弊害が発生していた。
【0013】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、ペーパーエンドの検出遅延時間を短縮することにより、ペーパーエンド監視の精度のバラツキを抑制する印刷装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するため、本発明は、シリアル型の印刷装置であって、用紙を副走査方向に移動させる用紙搬送手段と、前記用紙に画像を印字する印字ヘッドと、前記用紙の幅を検出する用紙幅センサと、前記印字ヘッド及び前記用紙幅センサを搭載するキャリッジユニットと、前記キャリッジユニットを主走査方向に移動させるキャリッジ移動手段と、前記用紙搬送手段及び前記キャリッジ移動手段の駆動を制御する制御部とを有し、前記キャリッジユニットは、前記印字ヘッドのセンタ位置から前記用紙幅センサのセンタ位置までの副走査方向の距離が予め設定された副走査方向の印字不可能領域の幅よりも短くなるように、前記印字ヘッドよりも副走査方向の上流側の位置に前記用紙幅センサを搭載しており、前記制御部は、前記用紙搬送手段によって前記用紙の改行動作を実行させる毎に、前記用紙幅センサから出力される前記用紙の有無を表す検出信号に基づいて、印字が可能か否かを判定する構成とする。
【0015】
この印刷装置の制御部は、用紙の改行動作を実行させる毎に、キャリッジユニットに搭載された用紙幅センサから出力される検出信号に基づいて、印字が可能か否かを判定することによって、ペーパーエンド監視を行う。用紙幅センサは、印字ヘッドとともにキャリッジユニットに搭載されている。そのため、この印刷装置は、検出遅延時間を極力短縮させた状態でペーパーエンド監視を行うことができ、もって、ペーパーエンド監視の精度のバラツキを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ペーパーエンドの検出遅延時間を短縮することができる。その結果、ペーパーエンド監視の精度のバラツキを抑制する印刷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態1に係る印刷装置の構成を示す図である。
【図2】実施形態1に係る印刷装置の動作を示すフローチャート(1)である。
【図3】実施形態1に係る印刷装置の動作を示すフローチャート(2)である。
【図4】実施形態1に係る印刷装置の要部の構成を示す図である。
【図5】実施形態1に係る印刷装置の動作を示す図(1)である。
【図6】実施形態1に係る印刷装置の動作を示す図(2)である。
【図7】実施形態1に係る印刷装置の用紙幅センサの位置を示す図(1)である。
【図8】実施形態1に係る印刷装置の用紙幅センサの位置を示す図(2)である。
【図9】実施形態2に係る印刷装置の構成を示す図である。
【図10A】実施形態2に係る印刷装置の動作を示すフローチャート(1)である。
【図10B】実施形態2に係る印刷装置の動作を示すフローチャート(2)である。
【図11】実施形態2に係る印刷装置の動作を示すフローチャート(3)である。
【図12】実施形態2に係る印刷装置の動作を示す図である。
【図13】実施形態2に係る印刷装置の検出可能範囲を示す図である。
【図14A】実施形態2に係る印刷装置の動作を示す図(1)である。
【図14B】実施形態2に係る印刷装置の動作を示す図(2)である。
【図14C】実施形態2に係る印刷装置の動作を示す図(3)である。
【図15】ペーパーエンドセンサの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0019】
[実施形態1]
<印刷装置の構成>
以下、図1を参照して、本実施形態1に係る印刷装置の構成につき説明する。なお、ここでは、「上流」及び「下流」とは、用紙の搬送方向における位置関係を表しているものとする。
【0020】
図1は、実施形態1に係る印刷装置の構成を示す図である。
図1に示すように、印刷装置1は、制御部10、記憶部20、データ送受信部30、操作パネル部40、キャリッジユニット50、印字ヘッド51、改行モータ52、スペースモータ53、ペーパーエンドセンサ61、及び、用紙幅センサ62を有している。
【0021】
制御部10は、印刷装置1の各部の動作を制御する制御手段である。制御部10は、CPUによって構成されている。そのCPUは、記憶部20を構成するROMに格納された制御プログラムを実行することにより、主制御部10a、給紙制御部10b、改行制御部10c、ペーパーエンド判定制御部10d、キャリッジ移動制御部10e、機構制御部10f、検出回路部10gとして機能する。
【0022】
主制御部10aは、印刷装置1の全体の動作をシーケンス制御する機能手段である。なお、ここでは、主制御部10aは、図示せぬ上位装置から受信された制御データや印字データ、制御信号等を解釈したり、印字データに基づくドットパターンを印字用バッファメモリ20aに展開したりする機能を有しているものとして説明する。ただし、これらの機能は、主制御部10aから専用の機能手段を分離させ、その分離された機能手段によって実行されるようにしてもよい。
【0023】
給紙制御部10bは、図示せぬ給紙機構による給紙動作を制御する機能手段である。なお、「給紙」とは、印字動作に先だって、印字用の記録媒体(以下、「用紙P(図4参照)」と称する)を、予め定められた位置まで搬送する動作を意味している。
【0024】
改行制御部10cは、改行モータ52による改行動作を制御する機能手段である。なお、「改行動作」とは、用紙Pを、副走査方向に1行分搬送する動作を意味している。改行制御部10cは、改行動作中に、ペーパーエンドセンサ61から出力された検出信号に基づいて「用紙無し」状態が検出されると、「用紙無し」状態が検出された時点からの用紙Pの実行改行量をカウントすることによって、用紙Pの下端位置を認識することができる。
【0025】
ペーパーエンド判定制御部10dは、用紙幅センサ62から出力される検出信号に基づいて、ペーパーエンド監視を行う機能手段である。
【0026】
キャリッジ移動制御部10eは、スペースモータ53によるキャリッジユニット50の主走査方向の移動動作を制御する機能手段である。
【0027】
機構制御部10fは、改行制御部10cやキャリッジ移動制御部10eからの指示に基づいて、印字ヘッド51や、改行モータ52、スペースモータ53の動作を制御する機能手段である。
【0028】
検出回路部10gは、用紙Pの端部の位置を表す情報(以下、「用紙端位置情報」と称する)を取得する機能手段である。検出回路部10gには、ペーパーエンドセンサ61と用紙幅センサ62とから検出信号が入力される。検出回路部10gは、検出信号が入力されると、検出信号に基づいて用紙Pの端部の位置を判定し、その判定結果に基づいて用紙端位置情報を生成して改行制御部10cに出力する。
【0029】
記憶部20は、印刷データ等の各種のデータや、印刷装置1の動作を規定する制御プログラムを記憶する記憶手段である。記憶部20は、ROMや、RAM等によって構成されている。記憶部20は、印字データを蓄積したり、印字データに基づくドットパターンを展開したりするためのバッファメモリ(以下、「印字用バッファメモリ20a」と称する)や、検出回路部10gによって生成された用紙端位置情報を記憶するためのメモリ(以下、「用紙端情報メモリ20b」と称する)、ユーザが操作パネル部40を操作することによって選択されたセットアップモード(メニュー設定)を記憶する不揮発性メモリ(以下、「メニュー設定情報メモリ20c」と称する)等を備えている。
【0030】
データ送受信部30は、図示せぬ上位装置との間で、各種のデータや制御信号の送受信を行う機能手段である。
【0031】
操作パネル部40は、動作モード情報等をセットアップしたりするための図示されない操作キー、及び、操作状況を表示するLCD表示パネルやLEDランプを有する。
【0032】
キャリッジユニット50は、印字ヘッド51及び用紙幅センサ62を搭載するユニットである。キャリッジユニット50は、スペースモータ53を搭載する構成となっていてもよい。キャリッジユニット50は、印字ヘッド51のセンタ位置C1(図7参照)から用紙幅センサ62のセンタ位置C2(図7参照)までの副走査方向の距離La(図7参照)が予め設定された副走査方向の印字不可能領域UP(図8参照)の幅よりも短くなるように、印字ヘッド51よりも副走査方向の上流側の位置に用紙幅センサ62を搭載している。
【0033】
印字ヘッド51は、主制御部10aによって生成されたドットパターンを用紙Pに印字する印字機構の搭載部である。印字ヘッド51は、印刷装置1がドットプリンタである場合に、印字機構として複数のドットピンを搭載する。また、印字ヘッド51は、印刷装置1がインクジェットプリンタである場合に、印字機構として複数のノズルを搭載する。また、印字ヘッド51は、印刷装置1がサーマルプリンタである場合に、印字機構として複数の発熱抵抗素子を搭載する。
【0034】
改行モータ52は、用紙Pを副走査方向(用紙Pの搬送方向)に移動させる用紙搬送手段である。
【0035】
スペースモータ53は、キャリッジユニット50を主走査方向(用紙Pの幅方向)に移動させるキャリッジ移動手段である。
【0036】
ペーパーエンドセンサ61は、図15に示すように、搬送される用紙Pの下端Pbの位置を検出するレバー式のセンサである。ペーパーエンドセンサ61は、センサレバー61aと反射式の光学センサ部61bとを備えている。センサレバー61aは、印字処理時に、センサレバー61aを押下する用紙Pの有無に応じて、用紙Pの有無を表す検出信号を制御部10に出力する。制御部10は、ペーパーエンドセンサ61から出力された検出信号の状態に基づいて、「用紙有り」状態又は「用紙無し」状態を検出する。これにより、制御部10は、用紙Pの下端Pbの位置を認識する。ただし、本実施形態1では、制御部10は、用紙幅センサ62から出力される検出信号に基づいてペーパーエンド監視制御を行う。そのため、制御部10は、ペーパーエンドセンサ61から出力される検出信号を、ペーパーエンド監視制御の制御自体には用いずに、ペーパーエンド監視制御を開始するためのトリガーとして用いる。
【0037】
用紙幅センサ62は、用紙Pの幅(以下、「用紙幅」と称する)方向の端部の位置を検出するセンサである。用紙幅センサ62は、反射式のセンサ構造となっている。用紙幅センサ62は、印字ヘッド51とともにキャリッジユニット50に搭載されており、キャリッジユニット50が主走査方向に移動することにより、印字ヘッド51とともに移動して、用紙Pの幅方向の端部の位置を検出する。なお、本実施形態1では、用紙幅センサ62は、用紙幅を検出しない。用紙幅センサ62は、用紙Pの上端Ptを検出したり、改行動作が終了する毎に、用紙Pの有無を検出したりするのみである。
【0038】
<印刷装置の動作>
本実施形態1では、制御部10は、図2及び図3に示す処理を実行することによって、用紙幅センサ62を利用したペーパーエンド監視制御(図5及び図6参照)を実現する。これにより、制御部10は、検出遅延時間を極力短縮させた状態でペーパーエンド監視を行い、もって、ペーパーエンド監視の精度のバラツキを抑制して、空印字を防止する。
【0039】
以下、図2及び図3を参照して、印刷装置1の動作につき説明する。図2及び図3は、それぞれ、実施形態1に係る印刷装置の動作を示すフローチャートである。図2は、給紙動作時の印刷装置1の動作を示しており、図3は、改行動作時の印刷装置1の動作を示している。印刷装置1の動作は、記憶部20に読み出し自在に予め格納された制御プログラムによって規定されており、制御部10によって実行される。その制御部10は、図示せぬタイマによって計測された時間に基づいて動作する。以下、これらの点については、情報処理では常套手段であるので、その詳細な説明を省略する。
【0040】
印刷装置1は、図示せぬ上位装置から印刷データを受信することによって、印刷動作を開始する。このとき、印刷装置1の主制御部10aは、印字データに基づいてドットパターンを生成するとともに、給紙制御部10bに給紙動作を行わせ、その後に、用紙Pを給紙動作によって搬送された位置から最初の印刷位置まで搬送する。なお、印刷装置1は、印刷データを受信する前に、給紙動作を行う場合もある。この場合に、印刷装置1の主制御部10aは、印刷データを受信した後に、用紙Pを給紙動作によって搬送された位置から最初の印刷位置まで搬送する。
【0041】
(給紙動作)
本実施形態1では、印刷装置1は、給紙動作の際に、用紙Pの上端Ptが検出できた位置を、ペーパーエンドをチェックする位置(以下、「ペーパーエンドチェック位置」と称する)とし、用紙Pの搬送量を監視しながら、ペーパーエンドチェック位置での用紙Pの有無をチェックすることにより、ペーパーエンド監視制御を行う。
【0042】
その給紙動作では、図2に示すように、まず、給紙制御部10bが、キャリッジ移動をキャリッジ移動制御部10eに指示し、これに応答して、キャリッジ移動制御部10eが、機構制御部10fに、キャリッジユニット50をセンタリング位置へ移動させる(S105)。以下、キャリッジユニット50をセンタリング位置へ移動させる動作を「センタリング動作」と称する場合がある。
【0043】
なお、「センタリング位置」とは、図4に示すように、用紙Pの上端Ptをプルアップローラ72とプルアップローラカバー73との間に導くために、キャリッジユニット50によって用紙Pを押さえつける位置である。ここでは、事前に、ユーザが、操作パネル部40を操作して、メニュー画面からセンタリング位置を指定しているものとして説明する。また、指定されたセンタリング位置を表す情報(以下、「センタリング位置情報」と称する)は、メニュー設定情報メモリ20c(図1参照)に登録されているものとする。
【0044】
なお、図4は、実施形態1に係る印刷装置の要部の構成を示す図である。図4に示すように、印刷装置1は、円柱状のプラテン71が設けられている。そのプラテン71の周囲に、キャリッジユニット50、プルアップローラ72、及び、プルアップローラカバー73が配置されている。プルアップローラ72は、用紙Pを引っ張り上げて、用紙Pを下流側に搬送するためのローラである。プルアップローラカバー73は、用紙Pをプルアップローラ72に導き、用紙Pをプルアップローラ72に接触させるための部材である。
【0045】
キャリッジユニット50は、プラテン71の周囲(図示例では、側方)に配置されており、プラテン71の軸方向に自在にスライド移動することができる構成となっている。プルアップローラ72は、キャリッジユニット50の下流側の位置(図示例では、プラテン71の上方の位置)に、プラテン71の軸方向と平行に配置されており、自在に回転することができる構成となっている。プルアップローラカバー73は、プルアップローラ72と接触するように、プルアップローラ72の上方に配置されている。
【0046】
なお、キャリッジユニット50の上流側には、ペーパーエンドセンサ61が設けられている。ペーパーエンドセンサ61は、キャリッジ50に搭載された用紙幅センサ62のセンタ位置C2から、距離L1だけ、上流側の位置に設けられている。ここでは、一例として、距離L1の具体的な値を約58mmとする。
【0047】
用紙Pは、図4に示す矢印B1方向に搬送されて、ペーパーエンドセンサ61の上、プラテン71の下、プラテン71とキャリッジユニット50との間、及び、プルアップローラ72とプルアップローラカバー73との間を通るように、導かれる。なお、矢印B1は、用紙Pの搬送方向を示している。以下、矢印B1方向を「副走査方向」と称する場合もある。
【0048】
印刷装置1は、キャリッジユニット50を「センタリング位置」に移動させることにより、用紙Pがプルアップローラ72とプルアップローラカバー73との間を通るように、キャリッジユニット50で用紙Pを押さえつけて、用紙Pをプルアップローラカバー73の内側に導く。そして、印刷装置1は、プルアップローラ72を回転させて、用紙Pの上端Ptを引っ張り上げて、用紙Pを下流側に搬送する。
【0049】
「センタリング位置」は、ユーザが、操作パネル部40を操作して、メニュー画面で、複数の位置(例えば、3種類の位置)の中から任意の位置を選択することによって、指定される。そのため、印刷装置1は、センタリング位置として、使用される用紙Pの用紙幅に応じて、適切な位置を選択することができる。ここでは、印刷装置1は、センタリング位置として、例えば、15文字目位置、40文字目位置、及び、60文字目位置の中から任意の位置を選択することができる構成になっているものとして説明する。なお、「文字目位置」とは、印字ヘッド51のセンタ位置C1(図4参照)が10CPI(1インチに10文字印字できる文字幅)における該当の文字数目の位置となるときの、キャリッジユニット50の位置を意味している。「文字目位置」は、印字データによって位置が変化しない、固定された位置である。
【0050】
印刷装置1は、センタリング位置が適切な位置に設定されていない場合に、用紙Pの左端側又は右端側が浮き上がる。そのため、この場合に、印刷装置1は、用紙Pの上端Ptがプルアップローラカバー73に到達すると、用紙Pの上端Ptの浮き上がった部分がプルアップローラカバー73の先端の淵と衝突する。その結果、用紙Pに破れやしわが発生し、これにより、用紙Pにジャムが発生するときがある。したがって、センタリング位置は、使用される用紙Pの用紙幅に対して中央付近に位置するように設定されることが好ましい。
【0051】
S105の後、給紙制御部10bは、予め定められた給紙位置への用紙Pの搬送を改行制御部10cに指示し、これに応答して、改行制御部10cが、副走査方向に対する搬送量を予め定められた規定量Aとし、機構制御部10fに、規定量Aでの用紙Pの搬送を開始させる(S110)。なお、規定量Aは、用紙Pの上端Ptをペーパーエンドセンサ61の位置に到達させるために予め設定された値である。ここでは、一例として、規定量Aの具体的な値を約127mm(5インチ)とする。
【0052】
S110の後、検出回路部10gが、ペーパーエンドセンサ61から出力される検出信号を監視する。検出回路部10gは、ペーパーエンドセンサ61からの検出信号に基づいて、ペーパーエンドセンサ61が用紙Pの上端Ptを検出したか否かを判定する(S115)。
【0053】
用紙Pが規定量Aだけ搬送されるまでの間に、S115の判定で、検出回路部10gによって、ペーパーエンドセンサ61が用紙Pの上端Ptを検出したと判定された場合(“Yes”の場合)に、改行制御部10cは、副走査方向に対する残りの搬送量(以下、「残搬送量」と称する)の値を規定量Bに変更して(S120)、機構制御部10fに、規定量Bでの用紙Pの搬送を継続させる(S125)。なお、規定量Bは、用紙Pの上端Ptがペーパーエンドセンサ61からプルアップローラカバー73に到達するまでの距離に相当する値である。ここでは、一例として、規定量Bの具体的な値を約72mmとする。
【0054】
一方、用紙Pが規定量Aだけ搬送されるまでの間に、S115の判定で、検出回路部10gによって、ペーパーエンドセンサ61が用紙Pの上端Ptを検出しなかったと判定された場合(“No”の場合)に、改行制御部10cは、規定量A分の搬送が終了したか否かを判定する(S130)。この判定は、検出回路部10gによってペーパーエンドセンサ61から出力された検出信号の中から「用紙有り」状態を表す値を検出した時点から、用紙Pを規定量A分だけ搬送させるための時間が経過したか否かを判定することによって、行われる。
【0055】
S130の判定で、規定量A分の搬送が終了したと判定された場合(“Yes”の場合)に、主制御部10aは、用紙Pにジャムが発生したと見なして、給紙ジャム処理を実行する(S131)。「給紙ジャム処理」は、用紙Pのジャムを取り除くための処理である。「給紙ジャム処理」は、運用に応じて様々な態様がある。ここでは、「給紙ジャム処理」として、例えば、アラーム音を発生してユーザにジャムの発生を通知するものとする。
【0056】
一方、S130の判定で、規定量A分の搬送が終了していないと判定された場合(“No”の場合)に、処理は、S115に戻る。その結果、印刷装置1は、S115以降の処理を繰り返す。
【0057】
S125の後、検出回路部10gが、用紙幅センサ62から出力される検出信号を監視する。検出回路部10gは、用紙幅センサ62からの検出信号に基づいて、用紙幅センサ62が用紙Pの上端Ptを検出したか否かを判定する(S135)。
【0058】
S135の判定で、検出回路部10gによって、用紙幅センサ62が用紙Pの上端Ptを検出したと判定された場合(“Yes”の場合)に、改行制御部10cは、用紙幅センサ62のセンタ位置C2(図4参照)から印字開始時の頭出し位置P1(図4参照)までの距離に相当する値に、残搬送量の値を変更して(S140)、機構制御部10fに、残搬送量の値が「0」になるまで用紙Pを搬送させる(S145)。すなわち、改行制御部10cは、用紙幅センサ62が用紙Pの上端Ptを検出すると、用紙Pの上端Ptの検出位置である用紙幅センサ62のセンタ位置C2から印字開始時の頭出し位置P1(図4参照)までの距離を、残搬送量として設定して、設定された残搬送量分だけ用紙Pを搬送する。これにより、印刷装置1は、用紙Pを頭出し位置P1まで搬送する。その結果、給紙動作が終了となる。ここでは、一例として、用紙幅センサ62のセンタ位置C2から印字開始時の頭出し位置P1までの距離の具体的な値を約18.38mmとする。
【0059】
一方、S135の判定で、検出回路部10gによって、用紙幅センサ62が用紙Pの上端Ptを検出しなかったと判定された場合(“No”の場合)に、改行制御部10cは、規定量B分の搬送が終了したか否かを判定する(S150)。この判定は、用紙Pを規定量B分だけ搬送させるための時間が経過したか否かを判定することによって、行われる。
【0060】
S150の判定で、規定量B分の搬送が終了したと判定された場合(“Yes”の場合)に、主制御部10aは、モードがリトライモードであるか否かを判定する(S155)。ここでは、「リトライモード」とは、用紙Pの搬送動作をリトライするモードを意味している。モードがリトライモードであるか否かは、モードがリトライモードであるか否かを表すフラグ(以下、「リトライモードフラグ」と称する)が記憶部20にセットされているか否かによって判定される。リトライモードフラグは、S160〜S170の処理(「用紙退避動作」〜「用紙再搬送開始」の処理)が実行された場合に、S175で、給紙制御部10bによって記憶部20にセットされる。
【0061】
一方、S150の判定で、規定量B分の搬送が終了していないと判定された場合(“No”の場合)に、処理は、S135に戻る。その結果、印刷装置1は、S135以降の処理を繰り返す。
【0062】
S155の判定で、モードがリトライモードであると判定された場合(“Yes”の場合)に、主制御部10aは、用紙Pにジャムが発生したと見なして、S131と同様に、給紙ジャム処理を実行する(S156)。
【0063】
一方、S155の判定で、モードがリトライモードでないと判定された場合(“No”の場合)に、主制御部10aは、用紙Pの退避動作を給紙制御部10bに指示する。これに応答して、給紙制御部10bが、予め定められた退避位置への用紙Pの搬送を改行制御部10cに指示し、その結果、改行制御部10cが、機構制御部10fに、用紙Pを退避位置へ搬送させる(S160)。
【0064】
S160の後、給紙制御部10bが、所定のセット位置へのキャリッジ移動をキャリッジ移動制御部10eに指示し、これに応答して、キャリッジ移動制御部10eが、機構制御部10fに、キャリッジユニット50を所定のセット位置へ移動させる(S165)。
【0065】
なお、「所定のセット位置」とは、用紙幅センサ62によって用紙Pの上端Ptを検出するために、キャリッジユニット50を配置する位置である。「所定のセット位置」は、使用が予定されているあらゆる幅の用紙Pの上端Ptを用紙幅センサ62によって必ず検出できる位置となっている。ここでは、「所定のセット位置」として、例えば、「5文字目位置」を適用するものとする。「5文字目位置」は、印字ヘッド51のセンタ位置C1(図4参照)が10CPI(1インチに10文字印字できる文字幅)における5文字目の位置となるときの、キャリッジユニット50の位置を意味している。ただし、「所定のセット位置」は、「5文字目」以外の位置に設定することもできる。
【0066】
S165の後、給紙制御部10bが、用紙Pの再搬送を改行制御部10cに指示し、これに応答して、改行制御部10cが、機構制御部10fに、用紙Pの再搬送を開始させる(S170)。この場合、モードがリトライモードとなる。そこで、給紙制御部10bは、リトライモードフラグを記憶部20にセットする(S175)。この後、処理は、S110に戻る。その結果、印刷装置1は、S110以降の処理を繰り返す。
このようにして、印刷装置1は、給紙動作を実行する。
【0067】
(用紙の上端検出時の印刷装置の動作の詳細)
印刷装置1は、用紙Pの上端Ptを検出するために、例えば、図5に示すように、動作する。図5は、実施形態1に係る印刷装置の動作を示す図である。以下、図5及び図2を参照して、用紙Pの上端Ptを検出する時の印刷装置1の動作の詳細につき説明する。
【0068】
印刷装置1は、図5(a)に示すように、S105で、キャリッジユニット50をメニュー画面で選択されているセンタリング位置に移動させて、その後に、図5(b)に示すように、S110で、用紙Pを搬送する。
【0069】
そして、印刷装置1は、図5(c1)に示すように、S135の判定で、用紙Pの上端Ptが検出できた場合(“Yes”の場合)に、図5(c2)に示すように、改行制御部10cは、S140で、用紙幅センサ62のセンタ位置C2(図4参照)から印字開始時の頭出し位置P1(図4参照)までの距離に相当する値に、残搬送量の値を変更して、S145で、機構制御部10fに、残搬送量の値が「0」になるまで用紙Pを搬送させる。これにより、印刷装置1は、用紙Pを頭出し位置P1まで搬送する。
【0070】
一方、印刷装置1は、図5(d1)に示すように、S135の判定で、用紙Pの上端Ptが検出できなかった場合(“No”の場合)に、用紙幅センサ62が用紙Pから外れた位置に配置されている。
【0071】
この場合に、印刷装置1は、給紙ジャム処理を実行することも可能であるが、本実施形態1では、センタリング位置を変更して、再給紙することができる。そこで、印刷装置1は、図5(d2)に示すように、S160で、用紙Pを一旦退避させた後、図5(d3)に示すように、S165で、キャリッジユニット50を所定のセット位置へ移動させる。すなわち、印刷装置1は、センタリング位置を変更する。
【0072】
変更後のセンタリング位置は、例えば、印字ヘッド51のセンタ位置が5文字目位置となる位置とする。5文字目位置は、前記した通り、印字ヘッド51のセンタ位置C1(図4参照)が10CPI(1インチに10文字印字できる文字幅)における5文字目の位置となるときの、キャリッジユニット50の位置を意味している。5文字目位置は、物理的に印字開始可能な1文字目位置から0.5インチ右側の位置となる。なお、「5文字目位置」は、用紙Pの中央位置から左側に外れた位置となっている。そのため、印字ヘッド51が5文字目位置で用紙Pを押さえた場合に、用紙Pの右側の浮き上がりが発生し易くなる。なお、印刷装置1は、給紙ルートを複数持つ場合に、各々のルートで適切なキャリッジユニット50のセンタリング位置を設定することが可能である。
【0073】
印刷装置1は、センタリング位置を変更した後、図5(d4)に示すように、S170で、用紙Pの搬送を再開して、S110以降の処理を繰り返す。これにより、印刷装置1は、用紙Pの上端Ptを検出する。なお、印刷装置1は、万が一、センタリング位置を変更した後も、用紙Pの上端Ptを検出できなかった場合に、用紙Pにジャムが発生したと見なして、給紙ジャム処理を実行する。
【0074】
また、印刷装置1は、センタリング位置を変更した場合に、モードがリトライモードとなるため、S175で、リトライモードフラグを記憶部20にセットする。記憶部20にセットされたリトライモードフラグは、S155の判定、又は、図3に示すS215の判定で、参照される。
【0075】
なお、印刷装置1は、好ましくは、ユーザが、センタリング位置の選択メニューとは別なメニュー設定により、S105でキャリッジユニット50を移動させる目標位置を、メニュー画面で選択されているセンタリング位置とするのか、又は、所定のセット位置(ここでは、「5文字目位置」)とするのかを、指定することができる構成になっているとよい。ただし、印刷装置1は、S105でキャリッジユニット50を移動させる目標位置を5文字目位置とした場合に、用紙Pがプルアップローラカバー73に到達したときに、キャリッジユニット50をメニュー画面で選択されているセンタリング位置へ移動させる必要がある。
【0076】
印刷装置1は、キャリッジユニット50をメニュー画面で選択されているセンタリング位置に移動させた状態で、用紙Pの上端Ptが検出できた場合に、キャリッジユニット50をそのセンタリング位置に配置したままの状態で、用紙Pをプルアップローラカバー73の内側に搬送することができるため、給紙時間にロスが発生しない。
【0077】
(改行動作)
印刷装置1は、給紙動作が終了すると、副走査方向への1行分の用紙Pの搬送動作(改行動作)と主走査方向へのキャリッジユニット50の搬送動作(スペーシング動作)とを繰り返して、ドットパターンを用紙Pに印字する。
【0078】
印刷装置1は、改行動作が終了したときに、用紙Pが印字ヘッド51のセンタ位置C1(図4参照)上に存在していれば、その位置で印字を行っても、空印字しない。そこで、印刷装置1は、図3に示すように、改行動作が終了する毎に、用紙幅センサ62を利用したペーパーエンド監視制御を行い、これによって、空印字を防止する。
【0079】
改行動作では、主制御部10aが、改行制御部10cに、用紙Pの搬送量を監視させるとともに、ペーパーエンド判定制御部10dに、ペーパーエンド監視制御を行わせる。これに応答して、図3に示すように、まず、改行制御部10cが、改行動作が終了したか否かを判定する(S205)。S205の判定は、改行動作が終了した(“Yes”)と判定されるまで、又は、主制御部10aによって図示せぬ割り込み処理が行われるまで、繰り返し行われる。
【0080】
S205の判定で、改行動作が終了したと判定された場合(“Yes”の場合)に、改行制御部10cは、ペーパーエンドセンサ61が「用紙無し」状態を検出してから、用紙Pを規定量C以上搬送したか否かを判定する(S210)。この判定は、検出回路部10gによってペーパーエンドセンサ61から出力された検出信号の中から「用紙無し」状態を表す値を検出した時点から、用紙Pを規定量C以上搬送させるための時間が経過したか否かを判定することによって、行われる。なお、規定量Cは、ペーパーエンドセンサ61が用紙Pの下端Pbを検出しなくなってから、用紙幅センサ62が用紙Pの上端Ptの有無のチェック動作を開始するまでに、用紙Pが移動する距離である。ここでは、一例として、規定量Cの具体的な値を約43mmとする。
【0081】
なお、S210の判定は、以下に説明するように、印刷処理時のスループットの低下を防止することを目的にしている。
すなわち、印刷装置1は、用紙幅センサ62のセンタ位置C2から距離L1分だけ上流側の位置にペーパーエンドセンサ61を配置している。ここでは、一例として、距離L1の具体的な値を約58mmとする。また、印刷装置1は、改行制御部10cにより、ペーパーエンドセンサ61が「用紙無し」状態を検出した時点から搬送された、用紙Pの下端Pbの位置を監視している。そのため、印刷装置1は、用紙Pの下端Pbの位置が用紙幅センサ62のセンタ位置C2から上流側に(L1−C)mm以内(具体的には、約15mm以内)の位置に有った場合にのみ、キャリッジユニット50を移動させて、用紙幅センサ62の状態を確認する。これにより、印刷装置1は、無駄な検出動作を減らし、もって、印刷処理時のスループットの低下を防止する。
【0082】
S210の判定で、用紙Pを規定量C以上搬送されていないと判定された場合(“No”の場合)に、印刷装置1は、次の印字動作、又は、次の1行分の改行動作が実行可能となる。そのため、この場合に、印刷装置1は、現在の改行動作を一旦終了させ、印字すべきドットパターンが主走査方向のライン上にあれば、そのドットパターンの印字動作を行い、その後に、再び、図3に示す改行動作を実行する。
【0083】
一方、S210の判定で、用紙Pを規定量C以上搬送したと判定された場合(“Yes”の場合)に、主制御部10aが、図2に示す給紙動作でリトライが発生していないかを判定する(S215)。この判定は、S175(図2参照)で記憶部20にリトライモードフラグがセットされていないかを判定することによって、行われる。
【0084】
ここで、記憶部20にリトライモードフラグがセットされていない場合に、図2に示す給紙動作でリトライが発生していない(“Yes”)と判定される。この場合に、キャリッジユニット50を移動させる目標位置は、メニュー画面で選択されているセンタリング位置となる。そのため、この場合に、印刷装置1は、キャリッジユニット50をメニュー画面で選択されているセンタリング位置へ移動させて、その位置で用紙幅センサ62によって用紙Pの上端Ptを検出する。
【0085】
したがって、S215の判定で、給紙動作でリトライが発生していないと判定された場合(“Yes”の場合)に、主制御部10aは、キャリッジ移動制御部10eに、センタリング位置へのキャリッジユニット50の移動を指示する。これに応答して、キャリッジ移動制御部10eは、メニュー画面で選択されているセンタリング位置にキャリッジユニット50を移動させる(S220)。なお、センタリング位置は、メニュー設定情報メモリ20cに登録されたセンタリング位置情報によって指定されている。
【0086】
一方、記憶部20にリトライモードフラグがセットされている場合に、図2に示す給紙動作でリトライが発生した(“No”)と判定される。この場合に、キャリッジユニット50を移動させる目標位置は、所定のセット位置(ここでは、5文字目位置)となる。そのため、この場合に、印刷装置1は、キャリッジユニット50を5文字目位置へ移動させて、その位置で用紙幅センサ62によって用紙Pの上端Ptを検出する。
【0087】
したがって、S215の判定で、給紙動作でリトライが発生したと判定された場合(“No”の場合)に、主制御部10aは、キャリッジ移動制御部10eに、所定のセット位置(ここでは、5文字目位置)へのキャリッジユニット50の移動を指示する。これに応答して、キャリッジ移動制御部10eは、所定のセット位置(ここでは、5文字目位置)にキャリッジユニット50を移動させる(S225)。
【0088】
S220又はS225の後、ペーパーエンド判定制御部10dは、用紙幅センサ62が「用紙有り」状態を検出したか否かを判定する(S230)。すなわち、印刷装置1は、用紙幅センサ62の状態を確認する。この判定は、検出回路部10gによって用紙幅センサ62から出力された検出信号の中から「用紙有り」状態を表す値を検出したか否かを判定することによって、行われる。
【0089】
S230の判定で、「用紙有り」状態を検出したと判定された場合(“Yes”の場合)に、印刷装置1は、次の印字動作、又は、次の1行分の改行動作が実行可能となる。そのため、この場合に、印刷装置1は、現在の改行動作を一旦終了させ、印字すべきドットパターンが主走査方向のライン上にあれば、そのドットパターンの印字動作を行い、その後に、再び、図3に示す改行動作を実行する。
【0090】
S230の判定で、「用紙有り」状態を検出しなかったと判定された場合(“No”の場合)に、印刷装置1は、印字動作を行うと、空印字を行う可能性がある。したがって、この場合に、印刷装置1は、それ以上の印字動作又は改行動作を中断する必要がある。そのため、印刷装置1は、この場合に、主制御部10aは、用紙Pの排出動作を改行制御部10cに指示する。これに応答して、改行制御部10cが、機構制御部10fに、用紙Pを図示せぬ排出位置に搬送させる。その結果、印刷装置1は、用紙Pを排出する(S235)。印刷装置1は、「用紙無し」状態を検出したと判定された場合(“No”の場合)に、排出動作を行う。
【0091】
(ペーパーエンド監視制御時の印刷装置の動作の詳細)
印刷装置1は、ペーパーエンド監視制御を行うために、例えば、図6に示すように、動作する。図6は、実施形態1に係る印刷装置の動作を示す図である。以下、図6及び図3を参照して、ペーパーエンド監視制御時の印刷装置1の動作の詳細につき説明する。ここでは、ペーパーエンドチェック位置は、メニュー画面で選択されているセンタリング位置、又は、所定のセット位置(ここでは、5文字目位置)となっているものとして説明する。
【0092】
印刷装置1は、図6(a)に示すように、S205で、改行動作が終了すると、S230で、用紙幅センサ62による用紙Pの有無をチェックする。
【0093】
その際に、印刷装置1は、図6(b1)に示すように、S215の判定で、給紙動作でリトライが発生していないと判定された場合(“Yes”の場合)に、S220で、メニュー画面で選択されているセンタリング位置にキャリッジユニット50を移動させる。
【0094】
一方、印刷装置1は、図6(b2)に示すように、S215の判定で、給紙動作でリトライが発生したと判定された場合(“No”の場合)に、S225で、所定のセット位置(5文字目位置)にキャリッジユニット50を移動させる。
【0095】
そして、印刷装置1は、S230で、用紙幅センサ62による用紙Pの有無をチェックする。
【0096】
このとき、印刷装置1は、図6(c1)に示すように、用紙幅センサ62によって「用紙有り」状態が検出された場合に、印字動作を継続する。すなわち、印刷装置1は、現在の改行動作を一旦終了させ、印字すべきドットパターンが主走査方向のライン上にあれば、そのドットパターンの印字動作を行い、その後に、次の1行分の改行動作を実行する。
【0097】
一方、印刷装置1は、図6(c2)に示すように、用紙幅センサ62によって「用紙無し」状態が検出された場合に、現在の改行動作を中断して、用紙Pを排出する。
【0098】
(用紙幅センサの位置)
ところで、用紙幅センサ62の位置は、印字ヘッド51のセンタ位置C1から用紙幅センサ62のセンタ位置C2までの距離を「La(図7及び図8参照)」とし、用紙Pの印字不可能領域を「UP(図8参照)」とする場合に、距離Laが用紙Pの印字不可能領域UPの幅の規定値以下にする必要がある。以下、図7及び図8を参照して、用紙幅センサ62の位置につき説明する。なお、図7及び図8は、それぞれ、実施形態1に係る印刷装置の用紙幅センサの位置を示す図である。
【0099】
図7に示すように、印刷装置1は、用紙幅センサ62が、印字ヘッド51のセンタ位置C1から距離La分だけ上流側の位置に配置されている。ここでは、一例として、距離Laの具体的な値を約4.9mmとする。また、印刷装置1は、用紙幅センサ62が、印字ヘッド51のセンタ位置から距離Lb分だけ右側の位置に配置されている。ここでは、一例として、距離Lbの具体的な値を約25mmとする。
【0100】
ここで、距離Laが用紙Pの印字不可能領域UPの幅の規定値以下になっている場合の例を図8(a)に示し、距離Laが用紙Pの印字不可能領域UPの幅の規定値を超えている場合の例を図8(b)に示す。
【0101】
図8(a)に示す例では、用紙Pの印字不可能領域UPの幅の規定値は約6.35mmとなっており、距離La(約4.9mm)が用紙Pの印字不可能領域UPの幅の規定値以下に設定されている。この場合に、印刷装置1は、用紙幅センサ62の下に用紙Pが無ければ、たとえ、印字ヘッド51の下に用紙Pが有っても、印字ヘッド51が既に印字不可能領域UP上に位置しているため、その位置での印字動作が不可能である、と判定することができる。そのため、この場合、印刷装置1は、用紙幅センサ62の下に用紙Pが無いときに、ペーパーエンドとして判定することにより、好適にペーパーエンド監視制御を行うことができる。
【0102】
一方、図8(b)に示す例では、印字不可能領域UPの幅の規格値が約2mmとなっており、距離La(約4.9mm)が用紙Pの印字不可能領域UPの幅の規定値を超えて設定されている。この場合に、印刷装置1は、用紙幅センサ62の下に用紙Pが無いときに、ペーパーエンドとして判定してしまうと、用紙Pに、印字可能領域であるにも関わらず、印字できなくなるエリアUAが発生してしまう。そのため、この場合に、印刷装置1は、好適なペーパーエンド監視制御を行うことができない。
【0103】
ところで、従来の印刷装置は、ペーパーエンドセンサ61によるペーパーエンド監視では、用紙Pの状態の違いや用紙Pの搬送速度等の違いにより、用紙Pの下端Pbの検出タイミングにズレが生じていた。これにより、従来の印刷装置は、ペーパーエンド監視の精度のバラツキが生じていた。したがって、従来の印刷装置は、印字不可能領域UPへの印字を完全に防止することができなかった。そのため、従来の印刷装置は、最悪の場合に、用紙Pの外に空印字することがあり、この空印字によって、印字ヘッド51のピンの損傷や用紙Pの走行経路の汚損が引き起こされる場合があった。
【0104】
これに対して、本実施形態1に係る印刷装置1は、改行動作が終了する毎に、用紙Pが用紙幅センサ62の下に有るか無いかを物理的に判断する。これにより、印刷装置1は、ペーパーエンド監視の精度のバラツキを抑制することができる。したがって、印刷装置1は、印字不可能領域UPへの印字を完全に防止することができる。そのため、印刷装置1は、空印字を確実に防止することができ、これにより、印字ヘッド51のピンの損傷や用紙Pの走行経路の汚損を防止することができる。
【0105】
以上の通り、本実施形態1に係る印刷装置1によれば、ペーパーエンド監視の精度のバラツキを抑制することができ、もって、空印字を確実に防止することができる。
【0106】
[実施形態2]
実施形態1に係る印刷装置1は、現在の用紙幅センサ62の位置に関わらず、給紙動作の際に、用紙Pの上端Ptが検出できた位置をペーパーエンドチェック位置とし、ペーパーエンドチェック位置をその位置に固定していた。
【0107】
これに対して、本実施形態2に係る印刷装置1aは、用紙幅情報に基づいてペーパーエンドチェック位置を決定することにより、ペーパーエンドチェック位置を現在の用紙幅センサ62の位置に応じた位置に変更する。
【0108】
以下、図9を参照して、本実施形態2に係る印刷装置1aの構成につき説明する。図9は、実施形態2に係る印刷装置の構成を示す図である。
【0109】
図9に示すように、本実施形態2に係る印刷装置1aは、実施形態1に係る印刷装置1(図1参照)と比較すると、用紙右端検出制御部10hが追加されている点で、相違している。
【0110】
用紙右端検出制御部10hは、給紙動作の際に、キャリッジユニット50を副走査方向へ移動させて、用紙幅センサ62による用紙Pの右端の検出動作を制御する機能手段である。
【0111】
以下、本実施形態2の印刷装置1aの動作について、実施形態1の印刷装置1と相違する動作を重点的に説明し、実施形態1の印刷装置1と同様の動作(図2及び図3参照)については、前記した実施形態1の印刷装置1の動作を本実施形態2の印刷装置1aの動作に読み替えるものとして、詳細な説明を省略する。なお、本実施形態2では、用紙幅センサ62は、用紙Pの上端Ptから約12.7mmの位置で用紙Pの右端位置を検出する。
【0112】
図10A及び図10B、並びに、図11は、それぞれ、実施形態2に係る印刷装置の動作を示すフローチャートである。図10A及び図10Bは、それぞれ、給紙動作時の印刷装置1aの動作を示しており、図11は、改行動作時の印刷装置1aの動作を示している。
【0113】
(給紙動作)
以下、図10A及び図10Bを参照して、本実施形態2の印刷装置1aの給紙動作につき説明する。図10A及び図10Bに示すように、本実施形態2の印刷装置1aの動作は、実施形態1の印刷装置1の動作(図2参照)と比較すると、S140及びS145の処理の代わりに、S605〜S635の処理を行う点で、相違している。
【0114】
図10Aに示すように、S135の判定で、検出回路部10gによって、用紙幅センサ62が用紙Pの上端Ptを検出したと判定された場合(“Yes”の場合)に、処理は、「A」を介して、図10Bに示すS605に進む。
【0115】
その結果、印刷装置1aは、改行制御部10cが、残搬送量の値を、副走査方向の用紙Pの右端検出位置までの距離に変更する(S605)。この処理は、用紙幅センサ62が用紙Pの上端Ptを検出した後に、改行制御部10cが、用紙Pの右端検出動作を行うために、プルアップローラカバー73の手前の、用紙Pの幅検出位置(右端検出位置)で、一旦、用紙Pの搬送量を変更することを意味している。この後、改行制御部10cは、機構制御部10fに、残搬送量の値が「0」になるまで用紙Pを搬送させる(S610)。
【0116】
S610の後、改行制御部10cは、搬送動作が終了したか否かを判定する(S615)。この判定は、残搬送量の値が「0」になるまで用紙Pを搬送させるための時間が経過したか否かを判定することによって、行われる。
【0117】
S615の判定で、搬送動作が終了したと判定された場合(“Yes”の場合)に、主制御部10aは、用紙Pの右端の検出動作の実行を用紙右端検出制御部10hに指示する(S620)。これに応じて、用紙右端検出制御部10hは、キャリッジ移動制御部10eに、キャリッジユニット50を主走査方向へ移動させる。また、このとき、用紙右端検出制御部10hは、検出回路部10gから出力される信号の状態を監視して、用紙幅センサ62が用紙Pの右端を検出したか否かを判定する(S625)。
【0118】
なお、「用紙Pの右端の検出動作」は、主走査方向に沿って左側から右側へキャリッジユニット50を移動させ、これに伴って、用紙幅センサ62から出力される用紙Pの有無を表す検出信号の値が「用紙有り」状態から「用紙無し」状態に変化した位置を「用紙Pの右端の位置」として認識することにより、行われる。用紙Pの右端検出動作は、一般的な制御動作であるため、ここでは詳述な説明を省略する。
【0119】
S625の判定で、用紙幅センサ62が用紙Pの右端を検出したと判定された場合(“Yes”の場合)に、用紙右端検出制御部10hは、キャリッジ移動制御部10eに、検出された用紙Pの右端位置情報に基づいて、用紙Pの中央位置へキャリッジユニット50を移動させる(S630)。そして、用紙右端検出制御部10h(又は、主制御部10a)は、用紙Pの右端の検出位置から頭出し位置P1(図4参照)まで用紙Pの搬送を再開する(S635)。これにより、給紙動作が終了する。
【0120】
一方、S625の判定で、用紙幅センサ62が用紙Pの右端を検出しなかったと判定された場合(“No”の場合)に、処理は、「B」を介して、図10Aに示すS156に進む。その結果、印刷装置1aは、用紙Pにジャムが発生したと見なして、給紙ジャム処理を実行する。
【0121】
なお、印刷装置1aは、図12(a)に示すように、構造上、用紙Pの左端を検出することができない。図12は、実施形態2に係る印刷装置の動作を示す図である。そのため、印刷装置1aは、図12(b)に示すように、キャリッジユニット50を左側から右側に移動させることによって、用紙幅センサ62を左側から右側に移動させ、これによって、用紙Pの右端のみを検出する。
【0122】
このとき、印刷装置1aは、図12(c1)に示すように、メニュー画面で選択されているセンタリング位置へキャリッジユニット50を移動させた後に、改行すると、図12(c2)に示すように、キャリッジユニット50が用紙Pの左端を押さえつていないため、用紙Pの左端が浮き上がり、これによって、用紙Pにジャムが発生する可能性がある。
【0123】
そこで、印刷装置1aは、図12(d1)に示すように、S620で、検出された用紙幅に基づくセンタリング位置へキャリッジユニット50を移動させた後に、改行する構成となっている。これにより、印刷装置1aは、図12(d2)に示すように、用紙Pにジャムが発生するのを抑制する。
【0124】
なお、印刷装置1aは、S625の判定で、用紙幅センサ62が用紙Pの右端を検出しなかった場合に、用紙Pにジャムが発生したと見なして、給紙ジャム処理を実行する。一方、印刷装置1aは、S625の判定で、用紙幅センサ62が用紙Pの右端を検出した場合に、S630で、検出された用紙Pの右端位置情報に基づいて、用紙Pの中央位置へキャリッジユニット50を移動させる。これにより、印刷装置1aは、用紙Pの浮きを押さえながら、用紙Pの搬送を行う。その後、印刷装置1aは、S635で、頭出し位置P1までの用紙Pの搬送を再開する。
以上のようにして、印刷装置1aは、給紙動作を行う。
【0125】
(改行動作)
なお、実施形態1の印刷装置1は、改行動作において、ペーパーエンドを判定する際に、ペーパーエンドチェック位置を、メニュー画面で選択されているセンタリング位置、又は、5文字目位置としている。
これに対して、実施形態2の印刷装置1aは、改行動作において、用紙Pの右端位置と現在のキャリッジ位置とを基にして、ペーパーエンドチェック位置を決定する。
図11は、その本実施形態2の印刷装置1aの改行動作時の処理の流れを示している。
【0126】
以下、図11を参照して、本実施形態2の印刷装置1aの改行動作につき説明する。図11に示すように、本実施形態2の印刷装置1aの動作は、実施形態1の印刷装置1の動作(図3参照)と比較すると、S215〜S225の処理の代わりに、S705〜S715の処理を行う点で、相違している。
【0127】
印刷装置1aは、S210の判定で、用紙Pを規定量C以上搬送したと判定された場合(“Yes”の場合)に、主制御部10aが、用紙Pの用紙幅情報からキャリッジユニット50の移動位置を算出する(S705)。
【0128】
S705の後、主制御部10aが、キャリッジユニット50に搭載された用紙幅センサ62の現在位置が用紙Pの検出可能範囲内であるか否かを判定する(S710)。
【0129】
ここで、図13を参照して、用紙Pの検出可能範囲につき説明する。図13は、実施形態2に係る印刷装置の検出可能範囲を示す図である。ここでは、図13に示すように、印刷装置1aは、用紙Pの左側の1文字目位置から15mm内側の範囲を、また、用紙Pの右端位置から15mm内側の範囲を、用紙幅センサ62によるペーパーエンドチェック可能範囲とする。この範囲は、用紙Pの有無を検出する場合に、用紙幅センサ62がこの範囲内に有れば良い範囲となっている。
【0130】
用紙Pが連帳用紙LPである場合に、図12(a)に示すように、連帳用紙LPは、左端の近傍及び右端の近傍にスプロケット孔H1,H2が設けられている。また、連帳用紙LPは、図12(b)に示すように、用紙の規格によって、左右のミシン目の距離が12.7mmに定められている。印刷装置1aは、ペーパーエンドチェックを行う場合に、用紙幅センサ62がスプロケット孔H1,H2の上に位置した場合に、用紙Pの状態を「用紙無し」状態として誤検出する可能性がある。
【0131】
そのため、印刷装置1aは、ペーパーエンドチェックを行う場合に、用紙幅センサ62がその位置を避けて連帳用紙LPを検出するように、位置検出可能範囲が連帳用紙LPのサイズにマージンを付加して設定されている。例えば、図13(a)に示す例では、位置検出可能範囲は、1文字目位置の15mm以上右側の位置から、用紙幅センサ62によって検出された連帳用紙LPの右端位置の15mm以上左側の位置までとなっている。
【0132】
なお、印刷装置1aは、連帳用紙LPの左端側の検出を行わないため、必ず、連帳用紙LPが存在する1文字目位置を、連帳用紙LPの左側の位置検出可能範囲としている。ただし、印刷装置1aは、連帳用紙LPの左端を検出することが可能な構成であれば、1文字目位置の15mm以上右側の位置よりも左側の位置を、連帳用紙LPの左側の位置検出可能範囲として設定することもできる。
【0133】
S710の判定で、例えば、図14Aに示すように、用紙幅センサ62の現在位置が用紙Pの検出可能範囲内であると判定された場合(“Yes”の場合)に、主制御部10aは、キャリッジユニット50を移動させることなく、キャリッジユニット50をそのままの位置に停止させた状態で、ペーパーエンド判定制御部10dに、用紙幅センサ62が「用紙有り」状態を検出したか否かを判定させる(S230)。
【0134】
一方、S710の判定で、例えば、図14B又は図14Cに示すように、用紙幅センサ62の現在位置が用紙Pの検出可能範囲内でないと判定された場合(“No”の場合)に、主制御部10aは、キャリッジ移動制御部10eに、検出可能範囲内へのキャリッジユニット50の移動を指示する。これに応答して、キャリッジ移動制御部10eは、検出可能範囲内にキャリッジユニット50を移動させる(S715)。そして、主制御部10aは、キャリッジユニット50を移動させた状態で、ペーパーエンド判定制御部10dに、用紙幅センサ62が「用紙有り」状態を検出したか否かを判定させる(S230)。
この後、印刷装置1aは、実施形態1の印刷装置1と同様の処理を行う。
【0135】
なお、図14A〜図14Cは、それぞれ、実施形態2に係る印刷装置の動作を示す図である。図14Aは、用紙幅センサ62の現在位置が用紙Pの検出可能範囲内にある場合を示している。図14B(a)は、用紙幅センサ62の現在位置が用紙Pの検出可能範囲から右側に外れている場合を示しており、図14B(b)は、その場合に、キャリッジユニット50を左側に移動させることを示している。図14C(a)は、用紙幅センサ62の現在位置が用紙Pの検出可能範囲から左側に外れている場合を示しており、図14C(b)は、その場合に、キャリッジユニット50を右側に移動させることを示している。
【0136】
なお、印刷装置1aは、図11に示すように、S205で、改行動作が終了した後に、S210で、ペーパーエンドセンサ61が「用紙無し」状態を検出してからの搬送量が規定値Cを超えていた場合に、S705で、ペーパーエンドチェック位置の計算を行う。この計算は、給紙動作中に、用紙Pの右端位置が検出されたタイミングで行っても良い。
【0137】
実施形態1の印刷装置1は、現在の用紙幅センサ62の位置に関わらず、給紙動作の際に、用紙Pの上端Ptが検出できた位置をペーパーエンドチェック位置とし、ペーパーエンドチェック位置をその位置に固定していた。
【0138】
これに対して、本実施形態2の印刷装置1aは、ペーパーエンドをチェックする前のキャリッジユニット50の位置と用紙Pの端位置とを考慮することで、用紙幅情報に基づいてペーパーエンドチェック位置を決定する。これにより、印刷装置1aは、ペーパーエンドチェック位置を現在の用紙幅センサ62の位置に応じた位置に変更することができる。
【0139】
本実施形態2に係る印刷装置1によれば、ペーパーエンドをチェックする前に、ペーパーエンドチェック位置を現在の用紙幅センサ62の位置に応じた位置に変更することができるため、無駄なキャリッジユニット50の移動を抑制することができる。
【0140】
本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
【0141】
例えば、実施形態1及び実施形態2は、用紙幅センサ62を備えたシリアル型の印刷装置での制御の実施形態であるが、従来のペーパーエンドセンサ61が印字ヘッド51の下流側に、本実施形態での印字ヘッド51のセンタ位置と用紙幅センサ62との間の距離と同等の位置関係にあれば、同様の制御も可能である。
また、例えば、実施形態1及び実施形態2で示した距離や長さの具体的な値は、本発明の趣旨に沿う限り、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0142】
1,1a 印刷装置(シリアルプリンタ)
10 制御部(CPU)
10a 主制御部
10b 給紙制御部
10c 改行制御部
10d ペーパーエンド判定制御部
10e キャリッジ移動制御部
10f 機構制御部
10g 検出回路部
10h 用紙右端検出制御部
20 記憶部
20a 印字用バッファメモリ
20b 用紙端情報メモリ
20c メニュー設定情報メモリ
30 データ送受信部
40 操作パネル部
50 キャリッジユニット
51 印字ヘッド
52 改行モータ
53 スペースモータ
61 ペーパーエンドセンサ
61a センサレバー
61b 光学式センサ部
62 用紙幅センサ
71 プラテン
72 プルアップローラ
73 プルアップローラカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を副走査方向に移動させる用紙搬送手段と、
前記用紙に画像を印字する印字ヘッドと、
前記用紙の幅を検出する用紙幅センサと、
前記印字ヘッド及び前記用紙幅センサを搭載するキャリッジユニットと、
前記キャリッジユニットを主走査方向に移動させるキャリッジ移動手段と、
前記用紙搬送手段及び前記キャリッジ移動手段の駆動を制御する制御部とを有し、
前記キャリッジユニットは、前記印字ヘッドのセンタ位置から前記用紙幅センサのセンタ位置までの副走査方向の距離が予め設定された副走査方向の印字不可能領域の幅よりも短くなるように、前記印字ヘッドよりも副走査方向の上流側の位置に前記用紙幅センサを搭載しており、
前記制御部は、前記用紙搬送手段によって前記用紙の改行動作を実行させる毎に、前記用紙幅センサから出力される前記用紙の有無を表す検出信号に基づいて、印字が可能か否かを判定する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記制御部は、
前記検出信号から前記用紙が有ることを表す値が検出された場合に、印字が可能であると判定する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の印刷装置において、
前記制御部は、
前記用紙の改行動作の前に、
前記用紙搬送手段を駆動させて前記用紙の給紙動作を実行させるとともに、前記キャリッジ移動手段を駆動させて前記キャリッジユニットを予め定められたセンタリング位置に移動させ、
前記用紙幅センサから出力される前記検出信号の値に基づいて前記用紙の有無を判定し、
前記検出信号から前記用紙が有ることを表す値が検出された場合に、前記用紙幅センサの検出位置を前記センタリング位置に定め、
一方、前記検出信号から前記用紙が有ることを表す値が検出されなかった場合に、前記用紙幅センサの検出位置を所定のセット位置に定め、
さらに、前記用紙の改行動作時に、
前記検出位置上で検出された前記検出信号の値に基づいて、印字が可能か否かを判定する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷装置において、
前記所定のセット位置は、前記印字ヘッドのセンタ位置が1インチにつき10文字印字する場合の5文字目位置となるときの、前記キャリッジユニットの位置である
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の印刷装置において、
前記制御部は、
前記用紙の改行動作の前に、
前記キャリッジユニットを左端位置に停止させた状態で、前記用紙搬送手段を駆動させて前記用紙の給紙動作を実行させるとともに、前記用紙幅センサから出力される前記検出信号の値に基づいて前記用紙の有無を判定し、
前記検出信号から前記用紙が有ることを表す値が検出されると、前記キャリッジ移動手段を駆動させて前記キャリッジユニットを主走査方向に移動させるとともに、前記用紙幅センサから出力される前記検出信号の値に基づいて前記用紙の幅を判定し、
判定された前記用紙の幅に基づいて、前記用紙のセンタリング位置を算出して、前記用紙幅センサの検出位置を前記センタリング位置に定め、
前記キャリッジ移動手段を駆動させて前記キャリッジユニットを前記センタリング位置に移動させ、
さらに、前記用紙の改行動作時に、
前記検出位置上で検出された前記検出信号の値に基づいて、印字が可能か否かを判定する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷装置において、
前記制御部は、
前記キャリッジユニットの前記センタリング位置への移動に前後して、予め入力された前記用紙幅情報に基づいて、前記用紙の検出可能範囲を設定し、
さらに、前記キャリッジユニットの現在位置が前記用紙の検出可能範囲内であるか否かを判定し、
前記キャリッジユニットの現在位置が前記用紙の検出可能範囲内である場合に、前記キャリッジユニットの現在位置を前記用紙幅センサの検出位置とし、前記キャリッジユニットを移動させることなく、前記用紙搬送手段を駆動させて前記用紙の改行動作を実行させるとともに、前記用紙幅センサから出力される前記検出位置上で検出された前記検出信号の値に基づいて、印字が可能か否かを判定し、
一方、前記キャリッジユニットの現在位置が前記用紙の検出可能範囲内でない場合に、前記キャリッジ移動手段を駆動させて前記キャリッジユニットを前記用紙の検出可能範囲内に移動させ、移動後の前記キャリッジユニットの位置を前記用紙幅センサの検出位置とし、前記用紙搬送手段を駆動させて前記用紙の改行動作を実行させるとともに、前記用紙幅センサから出力される前記検出位置上で検出された前記検出信号の値に基づいて、印字が可能か否かを判定する
ことを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−131073(P2012−131073A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283538(P2010−283538)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】