説明

印刷装置

【課題】従来の印刷装置では、小型化することが困難である。
【解決手段】搬送方向Xに搬送される印刷媒体2にエネルギーを付与することによって、印刷媒体2に表面処理を施すコロナ処理装置5と、コロナ処理装置5よりも搬送方向Xの下流側に設けられ、コロナ処理装置5から一連した状態で間欠搬送される印刷媒体2に印刷処理を行うインクジェットプリンター7と、コロナ処理装置5とインクジェットプリンター7との間に設けられ、コロナ処理装置5とインクジェットプリンター7との間で印刷媒体2をたるませることによって印刷媒体2を蓄えるバッファー部6と、コロナ処理装置5を制御する制御部11と、を有し、制御部11は、インクジェットプリンター7における前記印刷処理の速度に応じて、コロナ処理装置5における印刷媒体2の搬送速度と、コロナ処理装置5における前記エネルギーの出力強度とを変化させることを特徴とする印刷装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に記載されているように、複数の処理部の間にバッファー部が設けられた印刷システムが知られている。この印刷システムによれば、ウェブ状の印刷媒体に印刷を行うときに、複数の処理部での処理時間が各々異なっている場合においても、バッファー部に印刷媒体を貯留することができるため、連続的に印刷が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−1103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の処理部としては印刷処理のみならず、例えば、印刷の均一性を高めるための表面処理なども考えられる。印刷媒体の印刷面を均一に表面処理し、高い印刷品質を確保するためには、印刷媒体を常に一定の搬送速度で搬送することが好ましい。
また、印刷部においては、写真のような高精細な画像を印刷する場合には解像度が高くなるため、印刷時間が長くなる。一方、画質にこだわらないテキストなどを印刷する場合には低い解像度でも良いため、印刷時間を短くすることができる。
このような表面処理部と印刷部とを、特許文献1に記載された印刷システムに適用することができる。この場合、印刷部での最長の印刷時間を想定して、バッファー部での印刷媒体の貯留量を設定する必要がある。このため、バッファー部が大きくなりやすいので、印刷装置が大型化してしまいやすい。また、印刷部での印刷時間が短い場合には、バッファー部に余分なロール状媒体を貯留してしまうため、無駄が多くなり非効率であった。
つまり、従来の印刷装置では、小型化することが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用に係る印刷装置は、搬送方向に搬送される印刷媒体にエネルギーを付与することによって、前記印刷媒体に表面処理を施す表面処理部と、前記表面処理部よりも前記搬送方向の下流側に設けられ、前記表面処理部から一連した状態で間欠搬送される前記印刷媒体に印刷処理を行う印刷部と、前記表面処理部と前記印刷部との間に設けられ、前記表面処理部と前記印刷部との間で前記印刷媒体をたるませることによって前記印刷媒体を蓄えるバッファー部と、前記表面処理部を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記印刷部における前記印刷処理の速度に応じて、前記表面処理部における前記印刷媒体の搬送速度と、前記表面処理部における前記エネルギーの出力強度とを変化させることを特徴とする。
【0007】
本適用例の印刷装置では、バッファー部によって、例えば、表面処理部での印刷媒体の搬送速度と、印刷部での印刷媒体の搬送速度とに差があっても、一連した印刷媒体に表面処理と印刷処理とを施すことができる。
また、この印刷装置では、制御部は、印刷部における印刷処理の速度に応じて、表面処理部における印刷媒体の搬送速度と、表面処理部におけるエネルギーの出力強度とを変化させる。印刷部における印刷処理の速度に応じて、表面処理部における印刷媒体の搬送速度を変化させれば、バッファー部で蓄える印刷媒体の量を、印刷処理の速度によらずに一定に保ちやすくすることができる。この結果、バッファー部が大型化することを避けやすくすることができるので、印刷装置を小型化しやすくすることができる。
なお、表面処理部における印刷媒体の搬送速度を変化させると、搬送速度が速い場合と遅い場合とで表面処理の効果に差異が発生することがある。これに対し、この印刷装置では、印刷部における印刷処理の速度に応じて、表面処理部における印刷媒体の搬送速度と、表面処理部におけるエネルギーの出力強度とを変化させる。このため、印刷処理の速度によらずに、表面処理の効果を一定に保ちやすくすることができる。
【0008】
[適用例2]上記の印刷装置では、前記間欠搬送では、前記印刷媒体を前記搬送方向に搬送する期間である搬送期間と、前記印刷媒体の搬送を停止する期間である停止期間とが交互に設定されており、前記制御部は、前記搬送期間に搬送される前記印刷媒体の搬送量を前記搬送期間から次の前記搬送期間までの時間で除算することによって前記表面処理部における前記印刷媒体の前記搬送速度を算出し、且つ算出した前記搬送速度に前記印刷媒体の単位量当たりに必要とされる前記エネルギーの量を乗算することによって前記エネルギーの前記出力強度を算出することが好ましい。
【0009】
本適用によれば、制御部が、間欠搬送の搬送期間における印刷媒体の搬送量を、搬送期間から次の搬送期間までの時間で除算することによって、表面処理部における印刷媒体の搬送速度を算出する。これにより、バッファー部で蓄える印刷媒体の量を、印刷処理の速度によらずに一定に保ちやすくすることができる。
また、この印刷装置では、制御部は、算出した搬送速度に印刷媒体の単位量当たりに必要とされるエネルギーの量を乗算することによって、エネルギーの出力強度を算出する。これにより、印刷処理の速度によらずに、表面処理の効果を一定に保ちやすくすることができる。
【0010】
[適用例3]上記の印刷装置では、前記表面処理部は、前記印刷媒体に前記エネルギーとしてコロナ放電を照射することによって、前記印刷媒体に前記表面処理を施すことが好ましい。
【0011】
本適用例によれば、表面処理部が印刷媒体にエネルギーとしてコロナ放電を照射するので、印刷媒体に表面処理を施すことができる。
【0012】
[適用例4]上記の印刷装置では、前記表面処理部は、窒素及び酸素の少なくとも一方を含む環境下で励起されたプラズマを前記印刷媒体に前記エネルギーとして照射することによって、前記印刷媒体に前記表面処理を施すことが好ましい。
【0013】
本適用例によれば、表面処理部が窒素及び酸素の少なくとも一方を含む環境下で励起されたプラズマを印刷媒体にエネルギーとして照射するので、印刷媒体に表面処理を施すことができる。
【0014】
[適用例5]上記の印刷装置では、前記表面処理部は、前記印刷媒体に前記エネルギーとして紫外光を照射することによって、前記印刷媒体に前記表面処理を施すことが好ましい。
【0015】
本適用例によれば、表面処理部が印刷媒体にエネルギーとして紫外光を照射するので、印刷媒体に表面処理を施すことができる。
【0016】
[適用例6]上記の印刷装置では、前記印刷部は、前記印刷媒体にインク滴を吐出するインクジェットヘッドを有することが好ましい。
【0017】
本適用例によれば、印刷部が印刷媒体にインク滴を吐出するインクジェットヘッドを有しているので、印刷媒体にインクで印刷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る印刷装置を示す正面図。
【図2】コロナ処理装置の概略の構成を示す正面図。
【図3】バッファー部の概略の構成を示す正面図。
【図4】インクジェットプリンターの概略の構成を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の印刷装置の印刷部をラテラル方式のインクジェット式プリンターに具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の図面においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
【0020】
図1は、本実施形態に係る印刷装置を示す正面図である。
本実施形態に係る印刷装置1は、印刷媒体2がロール状に巻回された繰出ロール3を搬送方向Xに向けて繰出すための繰出機4と、印刷媒体2にエネルギーを付与し表面処理を行う表面処理部としてのコロナ処理装置5と、印刷媒体2を一時的に貯留するためのバッファー部6と、印刷媒体2に印刷を行う印刷部としてのインクジェットプリンター7と、印刷媒体2を巻取ロール8として巻き取るための巻取機9と、を有している。繰出機4、コロナ処理装置5、バッファー部6、インクジェットプリンター7、及び巻取機9は、搬送方向Xの上流側からこの順序で並んで配置されている。
なお、本実施形態では、印刷媒体2は、ポリプロピレン製のシートで構成されている。
【0021】
コロナ処理装置5は、印刷媒体2の搬送速度を略一定に保った状態で、印刷媒体2に表面処理を施す。
インクジェットプリンター7は、印刷媒体2を間欠搬送しながら、印刷媒体2に印刷を行う。間欠搬送では、印刷媒体2を搬送方向Xに搬送する期間である搬送期間と、印刷媒体2の搬送を停止する期間である停止期間とが設けられている。インクジェットプリンター7では、停止期間において、印刷媒体2に印刷が行われる。
上記のように、コロナ処理装置5とインクジェットプリンター7とでは、印刷媒体2の搬送速度が互いに異なっている。この搬送速度の差異は、コロナ処理装置5とインクジェットプリンター7との間に設けられたバッファー部6によって緩和される。このため、印刷装置1では、コロナ処理装置5での表面処理と、インクジェットプリンター7での印刷とを、ロールトゥロールの形態で一連して連続的に実施することができる。
【0022】
ここで、コロナ処理装置5は、制御部11を有している。
また、インクジェットプリンター7は、印刷制御部12を有している。
本実施形態では、制御部11は、印刷制御部12から、インクジェットプリンター7における印刷情報を取得する。制御部11は、取得した印刷情報に基づいて、コロナ処理装置5における印刷媒体2の搬送速度と、印刷媒体2に付与するエネルギー量とを制御する。
なお、インクジェットプリンター7における印刷情報としては、間欠搬送における停止期間や搬送期間の開始から次の搬送期間の開始までのサイクルタイム、1回の停止期間において印刷にかかる時間などの時間に関する情報などが挙げられる。印刷情報としては、これらに限定されず、搬送期間の開始から次の搬送期間の開始までのサイクルタイムが関連付けられた情報であれば、任意の情報を採用することができる。
【0023】
図2は、コロナ処理装置5の概略の構成を示す正面図である。
コロナ処理装置5は、図2に示すように、制御部11の他に、搬送装置14と、コロナ放電電極15と、アース電極16と、発振器17と、電極カバー18と、を有している。
搬送装置14は、搬送ローラー21と、ニップローラー22と、駆動モーター23と、を有している。駆動モーター23は、搬送ローラー21を回転駆動するための動力を発生する。搬送装置14は、搬送ローラー21とニップローラー22とで印刷媒体2を挟持した状態で、搬送ローラー21が駆動モーター23によって駆動されることによって、印刷媒体2を搬送方向Xに搬送する。
【0024】
コロナ放電電極15とアース電極16とは、それぞれ、搬送方向Xで搬送装置14よりも上流側に設けられている。コロナ放電電極15とアース電極16とは、印刷媒体2を挟んで互いに対向する位置に設けられている。
コロナ放電電極15は、筒状のアルミニウムの棒にセラミックがコーティングされているセラミック電極である。その下方にステンレス製の筒状のアース電極16が、コロナ放電電極15から0.5から2mmの隙間を空けて配置されている。そして、コロナ放電電極15とアース電極16との間に印刷媒体2が通ることによって、表面処理が行われる。アース電極16の形状は、電気を通す材質であれば平板状のものでも良いが、アース電極16と印刷媒体2との密着性を高め、表面処理効率を上げるためには、筒状の形状の方が好ましい。
【0025】
発振器17は、コロナ放電電極15に電力を供給する。コロナ放電電極15は、発振器17から電力の供給を受けると、アース電極16との間にコロナ放電を発生する。
電極カバー18は、コロナ放電電極15の外側に設けられており、コロナ放電電極15の外周を覆っている。電極カバー18は、図示しない排気設備と接続されており、コロナ放電により発生するオゾンを回収し、また人が放電時に電極に直接触れることができないようになっている。
制御部11は、発振器17と駆動モーター23のそれぞれに電気的に接続されている。
制御部11は、インクジェットプリンター7からの印刷情報に基づいて、発振器17からコロナ放電電極15に供給する電力量を制御する。つまり、インクジェットプリンター7からの印刷情報に基づいて、コロナ処理装置5におけるコロナ放電のエネルギー量が制御される。
また、制御部11は、インクジェットプリンター7からの印刷情報に基づいて、駆動モーター23の回転数を制御する。つまり、インクジェットプリンター7からの印刷情報に基づいて、コロナ処理装置5における印刷媒体2の搬送速度が制御される。
【0026】
図3は、バッファー部6の概略の構成を示す正面図である。
バッファー部6は、図3に示すように、3つのアイドルローラー25と、2つのダンサローラー26と、を有している。
3つのアイドルローラー25は、搬送方向Xに沿って並んでいる。搬送方向Xに隣り合う2つのアイドルローラー25の間に、1つのダンサローラー26が設けられている。
2つのダンサローラー26は、それぞれ、搬送方向Xとは交差するZ方向に昇降可能に構成されている。
なお、以下において3つのアイドルローラー25のそれぞれを識別する場合には、3つのアイドルローラー25は、それぞれ、アイドルローラー25a、アイドルローラー25b、及びアイドルローラー25cと表記される。また、2つのダンサローラー26のそれぞれを識別する場合には、2つのダンサローラー26は、それぞれ、ダンサローラー26a及びダンサローラー26bと表記される。
【0027】
バッファー部6では、搬送方向Xにおいて、アイドルローラー25aとダンサローラー26aとアイドルローラー25bとダンサローラー26bとアイドルローラー25cとが、この順に並んでいる。印刷媒体2は、アイドルローラー25aとダンサローラー26aとアイドルローラー25bとダンサローラー26bとアイドルローラー25cとをこの順に経由してインクジェットプリンター7へ搬送される。
上述したように2つのダンサローラー26は、それぞれ昇降可能なため、コロナ処理装置5側からから印刷媒体2がバッファー部6に供給されると、各ダンサローラー26は自重によって下方へ移動しバッファー部6に印刷媒体2が貯留される。また、印刷媒体2がインクジェットプリンター7へ供給される時は、各ダンサローラー26は、印刷媒体2の張力によって上方に移動し、貯留していた分が送り出される。
【0028】
図4は、インクジェットプリンター7の概略の構成を示す正面図である。
インクジェットプリンター7は、印刷制御部12の他に、搬送装置29と、プラテン31と、一対のガイドレール32と、キャリッジ33と、インクジェットヘッド34と、を有している。
搬送装置29は、搬送ローラー36と、ニップローラー37と、駆動モーター38と、を有している。駆動モーター38は、搬送ローラー36を回転駆動するための動力を発生する。搬送装置29は、搬送ローラー36とニップローラー37とで印刷媒体2を挟持した状態で、搬送ローラー36が駆動モーター38によって駆動されることによって、印刷媒体2を搬送方向Xに搬送する。
【0029】
プラテン31は、搬送方向Xで搬送装置29よりも上流側において、Z方向で印刷媒体2の下方に設けられている。プラテン31は、Z方向で印刷媒体2の下側において、印刷媒体2に対向する位置に設けられている。プラテン31は、Z方向で印刷媒体2の下側から印刷媒体2を支持する。
プラテン31には、印刷媒体2に対面する側に、図示しない複数の穴が形成されている。また、プラテン31は、内部に吸引ファン39を有している。プラテン31では、吸引ファン39により負圧を発生させることによって、間欠搬送の停止期間において印刷媒体2をプラテン31に吸着させることができる。
他方で、印刷媒体2を搬送させる時は、吸引ファン39の回転数を下げることにより、吸着力が弱められる。これにより、間欠搬送の搬送期間において、印刷媒体2をスムースに搬送することができる。
なお、プラテン31の上流端から下流端までの領域は、印刷領域Lとして設定されている。印刷領域Lは、インクジェットプリンター7で印刷媒体2に印刷を行うことができる領域である。
【0030】
一対のガイドレール32は、印刷媒体2を挟んでプラテン31に対向する位置に設けられている。一対のガイドレール32は、搬送方向Xに沿って延びており、平面視でX方向とは交差する方向に互いに隙間をあけた状態で並んでいる。一対のガイドレール32は、印刷領域Lにわたって延在している。
キャリッジ33は、一対のガイドレール32に支持されており、搬送方向Xに沿って印刷領域Lの上流側から下流側までの間を往復移動可能に構成されている。つまり、キャリッジ33は、一対のガイドレール32にガイドされることによって、印刷領域Lの上流側から下流側までの間を往復移動することができる。
インクジェットヘッド34は、印刷媒体2を挟んでプラテン31に対向した状態でキャリッジ33に保持されている。インクジェットヘッド34と印刷媒体2との間には、隙間が保たれている。このため、インクジェットヘッド34は、キャリッジ33の移動にともなって、搬送方向Xに沿って印刷領域Lの上流側から下流側までの間を往復移動することができる。
インクジェットヘッド34には、印刷媒体2側の面に、インクをインク滴として吐出する複数のノズル(図示せず)が設けられている。
【0031】
印刷制御部12は、駆動モーター38と、吸引ファン39と、キャリッジ33と、インクジェットヘッド34とに電気的に接続されている。
印刷制御部12は、駆動モーター38の駆動を制御する。インクジェットプリンター7では、印刷制御部12が駆動モーター38を間欠的に駆動させることによって、印刷媒体2の間欠搬送が行われる。
また、印刷制御部12は、吸引ファン39の駆動を制御する。これにより、印刷媒体2をプラテン31に吸着させたり、吸着を弱めたりすることができる。
また、印刷制御部12は、キャリッジ33の移動を制御する。これにより、印刷領域Lにおいてキャリッジ33を移動させることができる。
また、印刷制御部12は、インクジェットヘッド34の駆動を制御する。これにより、インクジェットヘッド34からインクをインク滴として吐出させることができる。
インクジェットプリンター7では、間欠搬送の停止期間において、印刷媒体2をプラテン31に吸着させた状態で、キャリッジ33を印刷領域Lで搬送方向Xに沿って移動させながらインクジェットヘッド34からインク滴を吐出させることによって、印刷媒体2への印刷処理が行われる。
【0032】
ここで、印刷媒体2に対する表面処理について説明する。
コロナ処理装置5では、コロナ放電によって印刷媒体2のインクに対する濡れ性を向上させることができる。以下において、印刷媒体2のインクに対する濡れ性を向上させることを、印刷媒体2の表面改質と呼ぶ。
印刷媒体2における濡れ性の程度は、印刷媒体2の表面張力を測定することにより知ることができる。例えば、ある特定の値S(mN/m)の表面張力を持つ試薬を印刷媒体2に薄く塗り広げた時、試薬が寄り集まると印刷媒体2の表面張力はS(mN/m)より小さく、逆に薄く広がったままであればS(mN/m)より大きいと判定することができる。インクジェットヘッド34から吐出されるインクの表面張力が試薬の表面張力よりも低ければ、インクは、印刷媒体2上においてきれいにぬれ広がる。
【0033】
本実施形態では、予備実験の結果、発振器17の出力を200W、コロナ処理装置5における印刷媒体2の搬送速度を2.5m/分とした時にS(mN/m)の表面張力を得られることが分かった。このため、印刷媒体2でS(mN/m)の表面張力を得るために、印刷媒体2の搬送方向Xにおける単位長さ当たり、80W・分/mのエネルギー量が必要となる。
【0034】
コロナ処理装置5での印刷媒体2の搬送速度とコロナ放電のエネルギー量との算出方法について説明する。なお、印刷媒体2の搬送速度とコロナ放電のエネルギー量との算出は、制御部11が有する図示しない演算部によって行われる。
インクジェットプリンター7では、キャリッジ33が10秒で印刷領域Lを2往復つまり4パスで1回の印刷を実施するノーマルモードと、キャリッジ33が40秒で印刷領域Lを8往復つまり16パスで1回の印刷を実施する高精細モードとが設定されている。
本実施形態では、コロナ処理装置5の制御部11は、印刷制御部12から印刷情報として、ノーマルモードであるか高精細モードであるかを示す情報を取得する。
【0035】
このとき、取得した印刷情報がノーマルモードを示すものであるとき、制御部11は、まず、下記の式(1)に基づいて、コロナ処理装置5での印刷媒体2の搬送速度vを算出する。
v[m/分]=L[m]/(10/60[分])=6×L…(1)
そして、制御部11は、80W・分/mとなるような発振器17の出力pを、式(2)に基づいて算出する。
p[W]=80[W・分/m]×v[m/分]=480×L…(2)
制御部11はこれらのvとpとに基づき発振器17と駆動モーター23を制御する。
【0036】
他方で、取得した印刷情報が高精細モードを示すものであるとき、制御部11は、まず、下記の式(3)に基づいて、コロナ処理装置5での印刷媒体2の搬送速度vを算出する。
v[m/分]=L[m]/(40/60[分])=1.5×L…(3)
そして、制御部11は、80W・分/mとなるような発振器17の出力pを、式(4)に基づいて算出する。
p[W]=80[W・分/m]×v[m/分]=120×L…(4)
制御部11はこれらのvとpとに基づき発振器17と駆動モーター23を制御する。
【0037】
このように印刷モードが異なりインクジェットプリンター7における印刷時間が長くなったり短くなったりする場合でも、バッファー部6はインクジェットプリンター7で印刷可能な最大長さの貯留量を確保すれば良い。従って、装置の小型化が可能で、かつ印刷媒体2の無駄を少なくすることができる。
なお、本実施形態において、コロナ処理装置5が表面処理部に対応し、インクジェットプリンター7が印刷部に対応している。
【0038】
本実施形態では、印刷部としてインクジェットプリンター7が採用されている。インクジェットプリンター7は、インクをインク滴として吐出するインクジェットヘッド34を有している。これにより、印刷媒体2にインクで印刷を行うことができる。
このようなインクジェットプリンター7では、製版が不要であるため、効率良く印刷を行うことができる。また、印刷媒体2に非接触で印刷が可能であるため、印刷媒体2の表面が凹凸形状をしていても印刷することが可能である。
【0039】
インクジェットプリンター7における印刷領域Lを、1回の印刷にかかる印刷時間で除算することにより、コロナ処理装置5での印刷媒体2の搬送速度vを算出している。また、予備実験で求められた表面改質をするのに必要な単位長さ当たりのエネルギー量を比例定数とし、これに搬送速度vをかけることにより発振器17の出力を求めている。
つまり、印刷媒体2の搬送速度vが遅ければ印刷媒体2に付与するエネルギーの出力強度を低く、印刷媒体2の搬送速度vが速ければ印刷媒体2に付与するエネルギーの出力強度を高く制御することにより、搬送速度に依らず印刷媒体2へ与える単位長さ当たりのエネルギー量を一定とすることができる。従って、インクジェットプリンター7での印刷時間の長短に関わらず、印刷媒体2に一定のエネルギーを付与し、表面処理を行うことができるので、安定した印刷画質を確保することができる。
【0040】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0041】
(変形例1)
上記実施形態では、印刷媒体2に施す表面処理としてコロナ処理を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、窒素もしくは酸素の少なくとも一方を含んだガスを用いた大気圧プラズマによる表面処理でも良い。窒素もしくは酸素の少なくとも一方を含んだガスを用いた大気圧プラズマによる表面処理では、コロナ放電によってダメージを受けてしまう材質の印刷媒体2に対しても表面処理を施すことが可能となる。
【0042】
(変形例2)
同様に、印刷媒体2に施す表面処理として紫外光(UV)照射による表面処理を用いても良い。UV照射による表面処理では、例えば金属のような導電性の材料で形成されている印刷媒体2に対しても表面処理を施すことが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1…印刷装置、2…印刷媒体、5…コロナ処理装置、6…バッファー部、7…インクジェットプリンター、11…制御部、12…印刷制御部、14…搬送装置、15…コロナ放電電極、16…アース電極、17…発振器、25…アイドルローラー、25a,25b,25c…アイドルローラー、26…ダンサローラー、26a,26b…ダンサローラー、29…搬送装置、31…プラテン、32…ガイドレール、33…キャリッジ、34…インクジェットヘッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に搬送される印刷媒体にエネルギーを付与することによって、前記印刷媒体に表面処理を施す表面処理部と、
前記表面処理部よりも前記搬送方向の下流側に設けられ、前記表面処理部から一連した状態で間欠搬送される前記印刷媒体に印刷処理を行う印刷部と、
前記表面処理部と前記印刷部との間に設けられ、前記表面処理部と前記印刷部との間で前記印刷媒体をたるませることによって前記印刷媒体を蓄えるバッファー部と、
前記表面処理部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記印刷部における前記印刷処理の速度に応じて、前記表面処理部における前記印刷媒体の搬送速度と、前記表面処理部における前記エネルギーの出力強度とを変化させることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記間欠搬送では、前記印刷媒体を前記搬送方向に搬送する期間である搬送期間と、前記印刷媒体の搬送を停止する期間である停止期間とが交互に設定されており、
前記制御部は、前記搬送期間に搬送される前記印刷媒体の搬送量を前記搬送期間から次の前記搬送期間までの時間で除算することによって前記表面処理部における前記印刷媒体の前記搬送速度を算出し、且つ算出した前記搬送速度に前記印刷媒体の単位量当たりに必要とされる前記エネルギーの量を乗算することによって前記エネルギーの前記出力強度を算出することを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の印刷装置において、
前記表面処理部は、前記印刷媒体に前記エネルギーとしてコロナ放電を照射することによって、前記印刷媒体に前記表面処理を施すことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の印刷装置において、
前記表面処理部は、窒素及び酸素の少なくとも一方を含む環境下で励起されたプラズマを前記印刷媒体に前記エネルギーとして照射することによって、前記印刷媒体に前記表面処理を施すことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の印刷装置において、
前記表面処理部は、前記印刷媒体に前記エネルギーとして紫外光を照射することによって、前記印刷媒体に前記表面処理を施すことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の印刷装置において、
前記印刷部は、前記印刷媒体にインク滴を吐出するインクジェットヘッドを有することを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−81608(P2012−81608A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228185(P2010−228185)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】