説明

印刷装置

【課題】基板に対して、塗布液のパターンを良好に印刷することができる印刷装置を提供する。
【解決手段】版胴10は、外周面14に印刷版12を装着可能とされており、同期して回転するインキングローラ23から印刷版12に塗布膜25の転写を受ける。印刷版12は、いわゆるストライプ版であり、複数の凸部と、複数の凹部と、を有している。インキングローラ23は、スリットノズル22から吐出された塗布液の供給を受けつつ回転することによって、外周面24に塗布膜25を形成する。そして、インキングローラ23は、印刷版12の各凸部と各凹部に、塗布膜25を転写する。これにより、基板Wの主面を、パターン13によって隙間なく完全に覆うことができる。また、転写直後に形成された基板W上の凹凸膜は、表面張力によって、速やかに平坦膜になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板、液晶表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板、および太陽電池用パネル等(以下、単に「基板」と称する)に対して、塗布液のパターンを印刷する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機エレクトロルミネッセンス(Organic Electro-Luminescence:以下、単に、「有機EL」と称する)の表示装置を製造する場合において、アニロックスローラを用いたフレキソ印刷により有機発光インキを有機発光層の形成領域に転写する技術が、知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−245777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そして、有機EL照明のような面発光デバイスの場合、さらに発光領域を増大させ、かつ、発光領域における輝度分布を均一にできる製造技術が、要求されている。
【0005】
そこで、本発明では、基板に対して、塗布液のパターンを良好に印刷することができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、一方向に延びる吐出口から塗布液を吐出するスリットノズルと、前記吐出口の形成方向と平行な第1回転軸を有しており、前記スリットノズルから吐出された前記塗布液の供給を受けつつ回転することによって、第1外周面に塗布膜を形成するインキングローラと、第1回転軸と平行な第2回転軸を有するとともに、第2外周面に印刷版を装着可能とされており、同期して回転する前記インキングローラから前記印刷版に前記塗布膜の転写を受ける版胴と、基板を載置する載置台と、前記版胴に装着された前記印刷版に対して前記載置台を相対的に移動させることによって、前記印刷版に前記塗布膜が転写されることにより形成された前記塗布液のパターンを、前記載置台に載置された前記基板に転写させる駆動制御部とを備え、前記印刷版は、一方向に延びる複数の凸部を有するとともに、前記印刷版は、前記印刷版の各凸部の延伸方向と、前記版胴の周方向と、が平行となるように、前記版胴に装着され、前記インキングローラは、前記複数の凸部と、各々が隣接する凸部の間に形成された溝状の複数の凹部と、に、前記塗布膜を転写することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の印刷装置において、前記塗布液は、溶媒としてキシレンを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1および請求項2に記載の発明によれば、インキングローラには、スリットノズルから吐出された塗布液が供給され、均一な膜厚の塗布膜が形成される。また、版胴に装着された印刷版には、インキングローラの第1外周面に形成された塗布膜が転写される。そして、印刷版の各凹部の溝に進入し、かつ、各凸部の先端および各凹部の開口を覆うように供給されることにより形成された塗布液のパターンが、基板に転写される。
【0009】
これにより、基板の主面を、パターンによって隙間なく完全に覆うことができる。また、転写直後に形成された基板上の凹凸膜は、表面張力によって、速やかに平坦膜になる。そのため、塗布液の粘度が高い場合や、常温における塗布液の溶媒の蒸気圧が高く、常温において塗布液が乾燥しやすい場合であっても、膜厚が均一な平坦膜を基板上に良好に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態における印刷装置の全体構成の一例を示す正面斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態における印刷装置の全体構成の一例を示す正面概略図である。
【図3】有機EL素子の一例を示す側面図である。
【図4】印刷版の構成の一例を示す平面図である。
【図5】印刷版の構成の一例を示す側面図である。
【図6】印刷版により塗布液のパターンを印刷する手法を説明するための側面図である。
【図7】印刷版により塗布液のパターンを印刷する手法を説明するための側面図である。
【図8】印刷版により塗布液のパターンを印刷する手法を説明するための側面図である。
【図9】印刷版により塗布液のパターンを印刷する手法を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
<1.印刷装置の全体構成>
図1および図2は、それぞれ本発明の実施の形態における印刷装置1の全体構成の一例を示す正面斜視図および正面概略図である。図3は、有機EL素子70の一例を示す側面図である。ここで、印刷装置1は、印刷版12に形成された塗布液のパターン13(図2参照)を、基板Wに転写する。図1および図2に示すように、印刷装置1は、主として、版胴10と、供給部20と、載置台30と、制御ユニット90と、を備えている。
【0013】
ここで、図1および以降の各図には、それらの方向関係を明確にすべく必要に応じて適宜、Z軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系が、付されている。
【0014】
また、印刷装置1は、有機EL素子70として、いわゆる有機EL照明を製造することができる。図3に示すように、有機EL素子70は、平面状の発光層71を有する面発光デバイスであり、陰極72、電子輸送層73、発光層71、正孔輸送層74、および陽極75を、上からこの順番に、基板W上に積層させたものである。
【0015】
版胴10は、円筒状または円柱状のローラであり、軸心10a(第2回転軸)を有している。これにより、版胴10は、軸心10aに連動接続されたモータ(図示省略)によって、矢印R1方向(時計回りの方向)および、矢印R1の逆方向(反時計回りの方向)に回転可能とされている。
【0016】
また、版胴10の外周面14(第2外周面)には、印刷版12が装着可能とされている。そして、版胴10は、同期して回転するインキングローラ23から印刷版12に塗布膜25の転写を受ける。なお、本実施の形態においてパターンの転写が実行される場合、版胴10は、矢印R1方向に回転させられる。
【0017】
供給部20は、版胴10に装着された印刷版12に対して、均一な膜厚とされた塗布膜25を転写することにより、印刷版12上に塗布液のパターン13を形成する。図2に示すように、供給部20は、主として、発光材料供給源21と、スリットノズル22と、インキングローラ23と、を有している。
【0018】
発光材料供給源21は、有機ELの高分子発光材料を、塗布液として供給する。図2に示すように、発光材料供給源21は、取付台26に固定されるとともに、スリットノズル22と連通接続されている。なお、発光材料供給源21から供給される塗布液には、有機溶剤としてトルエン、キシレン、アニソールなどの芳香族系の有機化合物が、溶媒として含まれている。
【0019】
スリットノズル22は、一方向(Y軸方向:図2参照)に延びる吐出口22aから塗布液を吐出する。図2に示すように、スリットノズル22は、インキングローラ23の直上に配置されており、スリットノズル22の吐出口22aは、インキングローラ23と対向する。したがって、スリットノズル22から吐出された有機ELの高分子発光材料は、インキングローラ23に供給される。
【0020】
ここで、スリットノズル22の吐出口22aは、版胴10の軸心10aおよびインキングローラ23の軸心23aと平行な方向(矢印AR2方向:Y軸方向)に沿って形成されている。
【0021】
したがって、スリットノズル22は、吐出口22aの形成方向に沿った細長い塗布液を吐出する。そして、インキングローラ23の外周面24に形成される塗布膜25の膜厚は、均一なものとなる。
【0022】
インキングローラ23は、スリットノズル22から吐出された塗布液の供給を受けつつ回転することによって、外周面24(第1外周面)に塗布膜25を形成する。そして、インキングローラ23は、外周面24に形成された塗布膜25を、回転接触により隣接する版胴10(より具体的には、版胴10に装着された印刷版12)に転写させる。
【0023】
図1および図2に示すように、インキングローラ23は、版胴10と同様に、円筒状または円柱状のローラであり、軸心10aと平行な軸心23a(第1回転軸)を有している。また、インキングローラ23は、軸心23aに連動接続されたモータ(図示省略)によって、矢印R2方向(時計回りの方向)および、矢印R2の逆方向(反時計回りの方向)に回転可能とされている。さらに、インキングローラ23は、パターン転写時における載置台30の進行方向(矢印AR1方向)から見て、版胴10の上流側に設けられている。
【0024】
載置台30は、版胴10および供給部20の下方に設けられた移動体であり、基板Wを載置する。これにより、載置台30に載置された基板Wは、矢印AR1方向(進行方向)および矢印AR1と逆方向に案内される。
【0025】
複数(本実施の形態では2本)のリニアガイド32は、図1および図2に示すように、定盤35上に取り付けられた案内部である。したがって、不図示のリニアモータから載置台30に駆動力が伝達されると、載置台30は、複数のリニアガイド32に沿って進退(水平移動)させられる。
【0026】
制御ユニット90は、印刷装置1の各構成要素の動作制御(例えば、載置台30の駆動制御や、版胴10およびインキングローラ23の回転制御等)、およびデータ演算を実現する。図2に示すように、制御ユニット90は、主として、ROM91と、RAM92と、CPU93と、を有している。
【0027】
ROM(Read Only Memory)91は、いわゆる不揮発性の記憶部であり、例えば、プログラム91aが格納されている。なお、ROM91としては、読み書き自在の不揮発性メモリであるフラッシュメモリが使用されてもよい。RAM(Random Access Memory)92は、揮発性の記憶部であり、例えば、CPU93の演算で使用されるデータが格納される。
【0028】
CPU(Central Processing Unit)93は、例えばROM91のプログラム91aに従った動作制御やデータ処理を実行する。ここで、図2中のCPU93内のブロック(ブロックには、符号93aが付与されている)に対応する演算機能は、CPU93によって実現される。
【0029】
駆動制御部93aは、少なくとも、載置台30を進退させるリニアモータ(図示省略)、および版胴10を回転させるモータ(図示省略)の動作を制御することによって、版胴10に装着された印刷版12に対して載置台30を移動させる。
【0030】
例えば、駆動制御部93aは、載置台30に載置された基板Wと、版胴10に装着された印刷版12と、が近接または当接した状態で、版胴10の回転に同期させつつ載置台30を矢印AR1方向(進行方向)に沿って移動させる。これにより、印刷版12に塗布膜25が転写されることによって形成された塗布液のパターン13を、載置台30に載置された基板Wに転写させることができる。
【0031】
<2.印刷版によるパターンの印刷手法>
<2.1.印刷版の構成>
図4および図5は、それぞれ印刷版12の構成の一例を示す平面図および側面図である。ここでは、図4および図5を参照しつつ、印刷版12の構成を説明する。
【0032】
印刷版12は、いわゆるストライプ版であり、例えば、樹脂や金属により形成されている。図4および図5に示すように、印刷版12は、複数の凸部15(15a、15b)と、複数の凹部16(16a)と、を有している。
【0033】
複数の凸部15(15a、15b)は、図4および図5に示すように、一方向に延びる突起部である。また、複数の凹部16のそれぞれは、隣接する凸部15の間に形成される。例えば、溝状の凹部16aは、隣接する凸部15a、15bの間に形成される。
【0034】
<2.2.パターンの印刷手法>
図6から図9のそれぞれは、印刷版12により塗布液のパターン13を印刷する手法を説明するための側面図である。ここでは、図6から図9を参照しつつ、印刷版12によりパターン13を印刷する手法について説明する。
【0035】
なお、パターン13の印刷が実行されるに先立って、印刷版12は、印刷版12の各凸部15の延伸方向(図4においてはX軸方向)と、版胴10の周方向(矢印R1方向:図2参照)と、が平行となるように、版胴10に装着されている。
【0036】
本手法では、まず、インキングローラ23に転写された塗布膜25が、版胴10の印刷版12に転写される。これにより、図6に示すように、印刷版12に形成された溝状の各凹部16には、塗布液が進入する。また、転写により供給された塗布液は、図6に示すように、各凸部15の先端17と、各凹部16の開口18と、を覆う。
【0037】
次に、図7に示すように、回転する版胴10に対して載置台30が矢印AR1方向に移動させられる。これにより、印刷版12に形成されたパターン13が基板Wに押し込まれ、塗布液が基板Wと接触する。
【0038】
続いて、版胴10がさらに回転させられ、載置台30がさらに移動させられることによって、印刷版12は、基板Wから離隔する(図8参照)。これにより、各凸部15の先端17、および各凹部16の開口18を覆う塗布液と、凹部16に進入した塗布液の一部(塗布液13a:図8参照)と、が基板Wに転写される。一方、塗布液13bは、凹部16内に留まる。
【0039】
これにより、基板Wの主面のうち、発光領域となる部分は、塗布液によって、隙間なく完全に覆われる。また、転写された直後は、パターン13の表面は、図8に示すように、凹凸状となる。なお、図8において基板Wの「主面」とは、XY平面と平行な面を言うものとする。
【0040】
そして、パターン13に表面張力が働くことによって、パターン13は、速やかに、凹凸膜から平坦膜(ベタ膜)になる。例えば、塗布液13aは、矢印AR3、AR4方向に移動し、隣接する凹みが消失する。
【0041】
<3.本実施の形態の印刷装置の利点>
以上のように、印刷装置1において、インキングローラ23には、スリットノズル22から吐出された塗布液が供給され、均一な膜厚の塗布膜25が形成される。また、版胴10に装着された印刷版12には、インキングローラ23の外周面24に形成された塗布膜25が転写される。
【0042】
そして、印刷版12の各凹部16の溝に進入し、かつ、各凸部15の先端17および各凹部16の開口18を覆うように供給されることにより形成された塗布液のパターン13が、基板Wに転写される。
【0043】
これにより、基板Wの主面を、パターン13によって隙間なく完全に覆うことができる。また、転写直後に形成された基板W上の凹凸膜は、表面張力によって、速やかに平坦膜になる。そのため、塗布液の粘度が高い場合や、常温における塗布液の溶媒(例えば、キシレン等)の蒸気圧が高く、常温において塗布液が乾燥しやすい場合であっても、基板W上に膜厚が均一なパターン13(平坦膜)を良好に形成することができる。
【0044】
その結果、有機EL照明のような面発光デバイスの場合であっても、さらに発光領域を増大させつつ、発光領域における輝度分布を均一にすることができる。
【0045】
<4.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0046】
本実施の形態において、駆動制御部93aは、版胴10を回転させつつ載置台30を水平移動させることによって、版胴10の印刷版12に対して載置台30を移動させるものとして説明したが、これに限定されるものでない。
【0047】
例えば、駆動制御部93aは、版胴10および載置台30のいずれか一方を駆動(回転または移動)させ、他方を停止させることによって、版胴10の印刷版12に対して載置台30を移動させても良い。
【符号の説明】
【0048】
1 印刷装置
10 版胴
10a 軸心(第2回転軸)
12 印刷版
13 パターン
14 外周面(第2外周面)
15(15a、15b) 凸部
16(16a) 凹部
20 供給部
21 発光材料供給源
22 スリットノズル
22a 吐出口
23 インキングローラ
23a 軸心(第1回転軸)
24 外周面(第1外周面)
25 塗布膜
30 載置台
70 有機EL素子
71 発光層
90 制御ユニット
93 CPU
93a 駆動制御部
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 一方向に延びる吐出口から塗布液を吐出するスリットノズルと、
(b) 前記吐出口の形成方向と平行な第1回転軸を有しており、前記スリットノズルから吐出された前記塗布液の供給を受けつつ回転することによって、第1外周面に塗布膜を形成するインキングローラと、
(c) 第1回転軸と平行な第2回転軸を有するとともに、第2外周面に印刷版を装着可能とされており、同期して回転する前記インキングローラから前記印刷版に前記塗布膜の転写を受ける版胴と、
(d) 基板を載置する載置台と、
(e) 前記版胴に装着された前記印刷版に対して前記載置台を相対的に移動させることによって、前記印刷版に前記塗布膜が転写されることにより形成された前記塗布液のパターンを、前記載置台に載置された前記基板に転写させる駆動制御部と、
を備え、
前記印刷版は、一方向に延びる複数の凸部を有するとともに、
前記印刷版は、前記印刷版の各凸部の延伸方向と、前記版胴の周方向と、が平行となるように、前記版胴に装着され、
前記インキングローラは、前記複数の凸部と、各々が隣接する凸部の間に形成された溝状の複数の凹部と、に、前記塗布膜を転写することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記塗布液は、溶媒としてキシレンを含むことを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−955(P2013−955A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133291(P2011−133291)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】