印字装置
【課題】印刷処理を一時停止した後に搬送を再開して印字を行う場合において搬送再開当初に発生する文字崩れを防止する。
【解決手段】印字装置の印刷処理が開始されると、1搬送ステップ毎に1ドットラインの印字が行われる。続けて、チューブが切断位置に搬送されると、チューブの搬送停止時の撓み等を考慮して、チューブが逆転搬送されると共に次の1ドットラインがチューブに印字される。逆転搬送が終了すると、チューブがハーフカットされる。ハーフカット処理が終了すると、印字を再開する前に、搬送再開時のチューブの撓みを考慮して、チューブの印字面が1ドットライン相当量搬送されるように、チューブを所定の搬送ステップ数分搬送させると共に、この間の搬送ステップでは印字を行わないようにする((E)点線部B)。送り搬送が終了したら、搬送モータへの電流の供給は継続しつつ、サーマルヘッドにより印字が再開される。
【解決手段】印字装置の印刷処理が開始されると、1搬送ステップ毎に1ドットラインの印字が行われる。続けて、チューブが切断位置に搬送されると、チューブの搬送停止時の撓み等を考慮して、チューブが逆転搬送されると共に次の1ドットラインがチューブに印字される。逆転搬送が終了すると、チューブがハーフカットされる。ハーフカット処理が終了すると、印字を再開する前に、搬送再開時のチューブの撓みを考慮して、チューブの印字面が1ドットライン相当量搬送されるように、チューブを所定の搬送ステップ数分搬送させると共に、この間の搬送ステップでは印字を行わないようにする((E)点線部B)。送り搬送が終了したら、搬送モータへの電流の供給は継続しつつ、サーマルヘッドにより印字が再開される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状のチューブ等の印字媒体に文字等を印字する印字装置に関する。詳しくは、印字媒体への印刷実行中に印字媒体の搬送を一時停止させた後に、印字媒体の搬送を再開させて印刷を行うにあたって、印字媒体の印字面が1ドットライン分搬送方向に移動するように印字媒体を所定の搬送ステップ数移動させた後、停止前に印字した印字データの次の印字データを印字媒体の印字面に印字するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、長尺状のチューブやテープ等の印字媒体に文字や数字等を印字するための印字装置が広く利用されている。この印字装置は、搬送ローラとプラテンローラとサーマルヘッドとカッタとを有しており、付加機能として、例えば印字途中に所定のピッチ毎にハーフカット等の切断処理を行う機能を備えている。
【0003】
このような機能を有する印字装置において印刷処理が開始されると、搬送ローラおよびプラテンローラにより印字媒体がサーマルヘッドの印字位置に搬送される。このとき、サーマルヘッドにより印字データに対応したエネルギーが印加されることでインクリボンが加熱され、印字媒体の印字面に所定の文字等が印字される。サーマルヘッドにより所定の文字等が印字されたチューブは、プラテンローラ等によって搬送方向の下流側に搬送される。そして、印字媒体が切断位置に搬送された段階で、搬送ローラおよびプラテンローラの回転が一時停止されると共にサーマルヘッドによる印字が一時停止され、印字媒体がカッタにより切断(フルカットまたはハーフカット)される。カッタによる切断が完了すると、再び搬送ローラおよびプラテンローラが回転され、サーマルヘッドによりインクリボンが加熱されて印字媒体の印字面に所定の文字等が印字される。
【0004】
しかしながら、上述したような印字媒体の搬送を一時停止して切断を行った後に、搬送を再び開始して印字を行う搬送制御では、印字媒体の材料等の特性によって、カット前後における印字の間が印字抜けする「白抜け」や、印字のつながりがくずれることによる「文字崩れ」が発生してしまうという問題があった。
【0005】
図10(A)および図10(B)は、印刷を一次停止したときに発生する「白抜け」および「文字崩れ」を説明するための図を示している。チューブ200は、印刷時においてサーマルヘッドに押圧されて潰れた形状となるが、伸縮性を有するチューブ200は、搬送方向とは逆の回転方向に伸びると共にその厚みにより搬送面200aと印字面200bの搬送量に撓みが生じる。通常、搬送中はその撓みが一定であるために、印字はチューブ200の撓みに関係なく正常に行われる。しかし、チューブ200の搬送停止時にはその撓み(エネルギー)が開放されるため、搬送方向下流側に回転させる力が生じる。これにより、チューブ200が搬送方向に移動することで、印字開始位置も搬送方向に移動してしまい、これに伴って印字位置がずれて「白抜け」現象が発生してしまうという問題がある。
【0006】
また、チューブの200の切断が終了して印字が再開されると、再開当初は、チューブ200の伸縮性により、プラテンローラ210側の搬送面はプラテンローラ210の回転に伴って搬送方向に移動するが、従動側の印字面200bはチューブ200の伸縮性に基づく撓みによって移動量が小さくなる。このような状態で印字を行うと、1ドットライン移動する前に印刷が実行されてしまうことになる。その結果、停止前に印字された前の1ドットラインとの間隔や印字再開時の1ドットラインと、その次の1ドットラインの間隔が詰まってしまい、「文字崩れ」が発生するという問題がある。
【0007】
上述したような「白抜け」の問題を解決する手法としては、例えば、印字媒体の切断等の処理に入る前に、印字媒体を搬送時の変形相当量逆方向に搬送したり、長尺印刷媒体の搬送の停止時から続く印字データの1以上のラインについて長尺印刷媒体の種類に対応して設定された回数ずつ印刷することにより、「白抜け」の防止を図った印字装置が提案、開発されている(特許文献1〜3参照)。これらの装置によれば、印字媒体を逆搬送したり、同一のドットラインを印字するので、「白抜け」を解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4310868号
【特許文献2】特許第3166206号
【特許文献3】特開2002−254757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1および2に開示される印字装置等では、「白抜け」を解消することを課題としているため、「文字崩れ」の問題までを解決するには至っていない。図11(A)〜図11(H)は、例えば特許文献1に開示される印字装置を用いて、印刷を一時停止して切断処理を行い、その後印刷を再開した場合の印刷ドットパターンを示している。1ドットラインを印字して(図11(A))、搬送モータを1ステップ正回転した後、チューブが切断位置にあると判断されると、次の1ドットラインの印字(図11(B))をしながら搬送モータが逆回転させる(図11(C))。これにより、チューブの撓みによる応力を解消するように逆回転するため、ドット間が抜けることなく印字が行われる。次に、切断動作により逆回転によって戻しすぎた分を含め、チューブの搬送方向下流側に移動する(図11(D))。そして、切断後の印刷開始時の1ドットラインを前のデータに重ねて印字することにより(図11(E))、印字抜けを防止している。
【0010】
しかし、印字動作の再開時において、チューブは再度撓みを形成するまでは搬送モータの1ステップに対して、1ステップ分の移動をしないため、さらに次の1ステップでは前のドットラインに対して詰まった状態で印字されてしまう(図11(F))。さらに、次のステップでも、チューブの撓みが解消していないため、前のドットラインに対して詰まった状態で印字されてしまう(図11(G))。そのため、最終的な印刷結果として、文字が崩れた状態となってしまい(図11(H))、文字崩れについては解消することができない。
【0011】
また、上記特許文献3に開示される印字装置では、「文字崩れ」の解消を課題の一つとしており、この解決手段としてチューブの撓みによる移動量に合わせて同一のラインを複数回印字している。図12(A)および図12(B)は、特許文献3に開示される印刷装置を用いて、印刷を一時停止して切断処理を行い、その後印刷を再開した場合の印刷ドットパターンを示している。この印刷装置によれば、印字されるドットの形状は一定の大きさであるため、印字ラインデータが同一の場合には「文字崩れ」は発生しないが(図12(A))、印字ラインデータが異なる場合には実際の印字結果は複数回印字した分だけ印字ドットラインが太くなってしまう(図12(B))。したがって、引用文献3についても、印字データによっては「文字崩れ」を完全に解決することができないという問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、印刷処理を一時停止した後に搬送を再開して印字を行う場合に、搬送再開当初に発生する文字崩れを防止することを可能とした印字装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る印字装置は、長尺状の印字媒体への印刷実行中に当該印字媒体の搬送を一時停止させ、その後に印字媒体の搬送を再開させて印刷を行う印刷機能を備えた印字装置であって、印字媒体を搬送する搬送部と、搬送部により搬送された印字媒体の印字面に印字データに基づくドットラインを印刷する印刷部と、搬送部および印刷部を制御する制御部とを備え、制御部は、印字媒体の搬送を再開させたとき、当該印字媒体の印字面が1ドットライン相当分搬送方向に移動するように印字媒体を所定の搬送ステップ数移動させた後、一時停止前に印字した印字データの次の印字データを印字媒体の印字面に印字するようにしたものである。
【0014】
また、本発明に係る印字装置は、印字媒体への印刷実行中に当該印字媒体の搬送を一時停止させ、その後に印字媒体の搬送を再開させて印刷を行う印刷機能を備えた印字装置であって、印字媒体を搬送する搬送部と、搬送部により搬送された印字媒体の印字面に印字データに基づくドットラインを印刷する印刷部と、印刷部の搬送方向の下流側に設けられ、印字媒体を切断する切断部と、搬送部および印刷部を制御する制御部とを備え、制御部は、印字媒体の切断部による切断処理に入る前に、印字媒体を搬送時の変形相当量逆方向に搬送しつつ、印字媒体に新規の印字データを印字し、その後に、印字媒体の搬送を停止して当該印字媒体を切断し、その後の印字媒体の搬送の再開において、当該印字媒体の印字面が1ドットライン分搬送方向に移動するように印字媒体を所定の搬送ステップ数移動させた後、停止前に印字した印字データの次の印字データを印字媒体の印字面に印字するようにしたものである。
【0015】
印字媒体への印刷実行中に当該印字媒体の搬送を一時停止させ、その後に印字媒体の搬送を再開させて印刷を行う場合、搬送再開当初は、印字媒体の搬送面については搬送部の移動に伴って搬送方向に移動するが、搬送面と反対側の印字面は印字媒体の撓み等の原因によって搬送方向にほとんど移動しない。そのため、搬送再開当初は、通常搬送時のように1搬送ステップで1ドットライン進まない。
【0016】
そこで、本発明に係る印字装置において制御部では、印字媒体の搬送の再開時に、印刷媒体の印字面を1ドットライン移動させるのに、印字媒体を通常の1搬送ステップではなく、1または複数の搬送ステップ数で移動させる。この搬送ステップ数は、印字媒体の種類や径(サイズ)毎に設定することができる。これは、印字媒体の種類や径に応じてその撓み量等の特性も異なるからである。これにより、搬送再開時における印字媒体の印字面は、1または複数の搬送ステップ数で1ドットライン進む。その結果、搬送の一時停止前に印字したドットライン位置から丁度1ドットライン進むことになるので、ドットライン間隔が詰まってしまうような印字崩れを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の印字装置によれば、印字媒体の再搬送時であって印字を再開する前に、印字媒体の印字面が1ドットライン移動するように、印字媒体を所定の搬送ステップ数搬送方向に移動させるので、印刷再開時の印字の文字崩れを確実に防止することができる。また、本発明の印字装置によれば、切断処理前に所定の搬送ステップ数分、印字媒体を逆転搬送するので、印字媒体の停止時に発生する印字の白抜けを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る印字装置の構成例を示す斜視図である。
【図2】印字装置の内部構成例を示す斜視図である。
【図3】印字装置の要部の構成例を示す図である。
【図4】ハーフカットされたチューブの状態を示す図である。
【図5】印字装置のブロック構成例を示す図である。
【図6】空送り搬送テーブルの構成例を示す図である。
【図7】印字装置の動作例のタイミングチャートを示す図である。
【図8】印字装置の動作例を示すフローチャートである。
【図9】(A)〜(J)は、本発明の印字装置により印字されるドットパターンを示す図である。
【図10】(A)および(B)は、印刷を一次停止したときに発生する「白抜け」および「文字崩れ」を説明するための図である。
【図11】(A)〜(H)は、従来の印字装置により印字されるドットラインパターンを示す図である(その1)。
【図12】(A)および(B)は、従来の印字装置により印字されるドットラインパターンを示す図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明する。
[印字装置の外観構成例]
本発明に係る印字装置100は、長尺状の印字媒体への印刷実行中に印字媒体の搬送を一時停止させた後に、印字媒体の搬送を再開させて印刷を行うにあたって、印字媒体の印字面が1ドットライン分搬送方向に移動するように印字媒体を所定の搬送ステップ数分移動させ、その後に停止前に印字した印字データの次の印字データを印字媒体の印字面に印字するものである。
【0020】
印字媒体としては、例えば、長尺状のチューブ80(図3参照)や、肉厚が厚く軟らかい長尺状のプラスチック板等が用いられる。本例では、印字媒体としてチューブ80を用いた例について説明し、プラテンローラ30側の面を搬送面80aと呼び、この搬送面80aと反対側の面を印字面80bと呼ぶ(図3参照)。使用されるチューブ80の種類としては、例えば、ポリ塩化ビニル性チューブや、熱収縮チューブ、非塩化ビニルチューブ等が用いられる。
【0021】
図1は、本発明に係る印字装置100の外観構成の一例を示している。印字装置100は、図1に示すように、印字装置本体10と入力部12と表示部14とを備えている。印字装置本体10は、所定の厚みを有した平面視矩形状をなす筐体であって、その内部には後述するプラテンローラ30やサーマルヘッド32、カッタ52、CPU70等が実装された回路基板が内蔵されている。印字装置本体10の左側面部には、所定の文字等が印字されたチューブ80等が排出される排出口16が設けられている。この排出口16よりも若干下方には、排出口16から排出されるチューブ80を完全に分離して切断するためのフルカットボタン18が設けられている。
【0022】
入力部12は、印字装置本体10の正面下部に配設され、文字ボタンや数字ボタン、印字開始ボタン、空送り搬送時の搬送ステップ数を設定するための空送り設定ボタン等の複数の操作ボタンにより構成されている。この入力部12は、チューブ80に印字する文字や数字等の入力を受け付けたり、後述する空送り搬送時の搬送ステップ数を設定するためのチューブ80の種類やチューブの径の入力を受け付ける。
【0023】
表示部14は、印字装置本体10の正面中央の右端部に設けられ、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等から構成されている。表示部14は、入力部12で入力されたチューブ80に印字される文字や数字等を表示したり、後述する空送り搬送時の搬送ステップ数を設定するためのチューブ80の種類やチューブの径を選択するための選択画面を表示する。
【0024】
[印字装置の内部構成例]
次に、印字装置100の内部構成の一例について説明する。図2は印字装置100の内部構成の一例を示しており、図3はその要部の構成の一例を示している。図2および図3に示すように、印字装置100は、プラテンローラ30とサーマルヘッド32とヘッド移動機構38とインクリボンカセット40と切断部50とカッタ駆動部60とを備えている。
【0025】
プラテンローラ30は、ロアプレート36に取り付けられた軸受部に回転可能に支持され、後述する搬送モータ34の駆動によって回転(正回転または逆回転)駆動する。これにより、通常搬送および空送り搬送時にはチューブ80を搬送方向に沿って搬送し、逆転搬送時にはチューブ80を搬送方向とは反対方向に逆転搬送する。なお、プラテンローラ30は、搬送部の一例を構成している。
【0026】
サーマルヘッド32は、プラテンローラ30に対向して配置され、図示しないサーマルヘッド駆動回路から供給される記録エネルギーをインクリボン46に印加してチューブ80の印字面80bに所定の文字等を印字する。このサーマルヘッド32には、ヘッド移動機構38に連結されている。このヘッド移動機構38を構成するレバーが操作されることにより、サーマルヘッド32がプラテンローラ30に対して近接または離反移動可能となっている。印刷(搬送)時には、サーマルヘッド32がプラテンローラ30に近接して、プラテンローラ30との間にインクリボン46およびチューブ80を挟持・押圧し、所定の文字等をチューブ80に印字する。なお、サーマルヘッド32は、印字部の一例を構成している。
【0027】
インクリボンカセット40は、サーマルヘッド32の下方のインクリボン収容部に着脱可能に取り付けられる。このインクリボンカセット40は、送り出しリール42と巻き取りリール44とインクリボン46とを有している。巻き取りリール44は、搬送モータ34の駆動力によってプラテンローラ30と同期して回転し、送り出しリール42に巻回されたインクリボン46を巻き取る。
【0028】
切断部50は、プラテンローラ30およびサーマルヘッド32の搬送方向の下流側に設けられ、カッタ52と受け台54とから構成されている。切断部50の下流側にはカッタ駆動部60が設けられている。カッタ駆動部60は、カットモータ62と切断部50に連結される複数のギア64とから構成されている。カッタ52は、このカッタ駆動部60の駆動により、受け台54に接近および離反移動してチューブ80をハーフカットまたはフルカットする。
【0029】
図4は、チューブ80をハーフカットした状態を示している。ハーフカットとは、図4に示すように、チューブ80の一部を残して切断して、印字が行われたチューブ80を繋げた状態で運搬等を行えるようにすると共に、使用時にははさみ等を用いることなく例えばユーザの手でチューブ80を引っ張ることで、容易に切断可能とする切断手法を意味している。切断されたチューブ80は、例えば、電気配線のコード等に装着されて、コード類の識別手段として使用される。
【0030】
[印字装置のブロック構成例]
図5は、印字装置100のブロック構成の一例を示している。図5に示すように、印字装置100は、CPU70とROM72とRAM74と入力部12と表示部14とサーマルヘッド32と搬送モータ34とカットモータ62とセンサ76とを備えている。なお、CPU70は、制御部の一例を構成している。
【0031】
CPU70は、ROM72から読み出したプログラムやデータをRAM74上に展開してプログラムを起動し、印字装置100の各部の動作を制御する。このCPU70は、チューブ80への印字中にチューブ80が切断位置に到達したときに所定の搬送ステップ数逆転搬送し、その後当該チューブ80の搬送を一時停止させて切断処理し、その後にチューブ80の搬送を再開させて印刷を行う印刷機能を備えている。このとき、CPU70は、通常の印刷時には1搬送ステップで1ドットライン印字するようにサーマルヘッド32に印字データに応じた記録エネルギーを供給し、印刷を一次停止して印刷を再開する場合には所定の搬送ステップ数の間だけサーマルヘッド32に記録エネルギーを印加しないように制御し、その後一時停止前に印字した印字データの次の印字データをチューブ80に印字するように、プラテンローラ30およびサーマルヘッド32等を制御する。
【0032】
ROM72には、サーマルヘッド32に記録エネルギーを印加するための記録制御プログラムや、印刷一時停止後の印刷再開時に所定の搬送ステップ分印字しないように制御する空送り搬送プログラム、チューブ80を所定量だけ搬送する搬送制御プログラム、その他の印字装置100の制御に必要な各種のプログラムや後述の空送り搬送テーブルTBが記憶されている。RAM74は、CPU70の制御処理に必要なデータの一時記憶等に用いられる。
【0033】
図6は、ROM72に記憶される空送り搬送テーブルTBの構成の一例を示している。空送り搬送テーブルTBには、チューブ80の種類と、チューブ毎の径と、空送り量とがそれぞれ対応付けて記憶されており、チューブ80の種類やチューブの径に応じて異なった空送り搬送ステップが設定されている。これは、チューブ80の種類や径毎に弾力性や伸縮性が異なり、印刷再開時におけるチューブ80の印字面80bの移動量も異なってくるからである。例えば、搬送テーブルTBには、チューブ80の種類として熱収縮製チューブ、塩化ビニル製チューブおよび非塩化ビニル製チューブの3種類が設定され、チューブ80の径として5.2mmと3.6mmの2サイズが設定され、それぞれのチューブ80の種類および径に応じて空送り搬送ステップ量(例えば、1,2,3)が設定されている。なお、空送り搬送テーブルTBの内容(情報)は、例えば、製品出荷時に記憶させ、製品出荷後において新しいチューブの種類や径が追加された場合に更新できるようにすることが好ましい。また、ROM72以外の不揮発性メモリを設け、この不揮発性メモリに空送り搬送テーブルTBを記憶させることもできる。
【0034】
入力部12は、ユーザにより押下された操作ボタンに対応した操作信号を生成してCPU70に供給する。表示部14は、入力部12の操作信号によりRAM74等のメモリから読み出された表示データに基づいて駆動回路を駆動して、画面上に文字や数字等を表示する。
【0035】
サーマルヘッド32は、図示しないサーマルヘッド駆動回路を有している。このサーマルヘッド駆動回路は、CPU70から供給される印字データに対応した駆動信号に基づいて駆動され、サーマルヘッド32に印字データに対応した記録エネルギーを印加する。サーマルヘッド32は、サーマルヘッド駆動回路により印加された記録エネルギーに基づいて所定の文字や数字等をチューブ80の印字面80bに印字する。
【0036】
搬送モータ34は、CPU70から供給される制御信号に基づいて回転制御され、プラテンローラ30や搬送ローラ等を回転駆動させる。例えば、通常搬送時および空送り搬送時においてはCPU70からの制御信号により正回転し、逆転搬送時においてはCPU70からの制御信号により逆回転し、チューブ80の切断時においては停止する。
【0037】
カットモータ62は、CPU70から供給される駆動信号に基づいて回転駆動してカッタ52を受け台54に対して近接または離反させる。この切断処理により、チューブ80がフルカットまたはハーフカットされる。
【0038】
センサ76は、例えばカットモータ62と切断部50に連結されるギア64の駆動を検出し、カット終了検出信号をCPU70に供給したり、インクリボン46の送り出しリール42の回転量を検出し、検出信号をCPU70に供給する。
【0039】
[印字装置の動作例(タイミングチャート)]
次に、印字装置100の動作の一例を示すタイミングチャートについて説明する。図7(A)〜図7(F)は、印字装置100の動作の一例を示すタイミングチャートである。以下では、搬送モータ34としてA相、B相、C相、D相のコイルを有するステッピングモータを用いた場合について説明する。
【0040】
印刷処理が開始されると、搬送モータ34には、CPU70の指示に基づいてコイルA相、B相、C相、D相の順番でパルスが供給される(図7(A)〜図7(D))。これにより、搬送モータ34が正回転すると、プラテンローラ30および搬送ローラが正回転し、プラテンローラ30によって押圧されているチューブ80が搬送方向に沿って搬送される(以下通常搬送という)。
【0041】
このとき、サーマルヘッド32には、CPU70の指示に基づいて印字データに基づく記録エネルギーが印加され(図7(E))、1搬送ステップ毎に1ドットラインの印字が行われる。本例では、通常搬送時において、4ドットライン分の記録エネルギーがサーマルヘッド32に印加され、4ドットラインがチューブ80の印字面80bに印字される。
【0042】
続けて、チューブ80が切断位置に搬送されると、搬送モータ34にはCPU70の指示によりコイルD相、C相、B相、A相の順番にパルスが供給される(図7(A)〜図7(D))。これにより、搬送モータ34の駆動が正回転から逆回転に切り替えられる。搬送モータ34が逆回転すると、これに伴ってプラテンローラ30および搬送ローラが逆転回転し、プラテンローラ30によって押圧されているチューブ80が搬送方向と反対方向に所定ステップ分だけ搬送される(以下逆転搬送という)。図7では、3搬送ステップ分、逆転搬送させた例を示している。この逆転搬送ステップ数は、チューブの種類や径毎の挙動特性に合わせて任意に設定することができる。
【0043】
また、この逆転搬送中においては、印字抜けを防止するために、CPU70の指示によりサーマルヘッド駆動回路から印字データに基づく記録エネルギーがサーマルヘッド32に印加される(図7(E))。本例では、逆転搬送時において、例えば1ドットラインがチューブ80の印字面80bに印字される。このように、逆転搬送を行い、この逆転搬送中において印字を行うのは、後述するチューブ80の停止時に、チューブ80の撓みによりチューブ80が搬送方向下流側に移動することによる、印字抜けを防止するためである。
【0044】
逆転搬送が終了すると、CPU70は、搬送モータ34のコイルA相、B相、C相、D相へのパルスの供給を停止して搬送モータ34の逆回転を停止させる(図7(A)〜図7(D))。その後、カットモータ62に駆動信号を供給する(図7(F))。これにより、カッタ52が駆動されて、切断位置に搬送されているチューブ80がハーフカットされる。なお、カット前後において同一の印字ラインデータが続く場合には、文字崩れや印字抜けを確実に防ぐために、カットモータ62の駆動中にサーマルヘッド32に通電し、印字を行うようにしても良い。
【0045】
カットモータ62への駆動信号の供給が停止されてハーフカット処理が終了すると、搬送モータ34には、CPU70の指示に基づいてA相、B相、C相、D相の順番にパルスが供給される(図7(A)〜図7(D))。これにより、搬送モータ34の駆動が逆回転から正回転に切り替えられる。搬送モータ34が正回転すると、プラテンローラ30および搬送ローラが正回転する。この搬送再開時においては、チューブ80の搬送面80aは搬送ステップに応じて移動するものの、チューブ80の印字面80bは搬送再開時の撓みによって移動量が小さくなる。そのため、本発明では、チューブ80の印字面80bがハーフカット処理前に印字したドットラインから1ドットライン分移動するまで空送り搬送を行う。空送り搬送とは、チューブ80の印字面80bが逆転搬送時に印字したドットライン位置から1ドットライン分移動するように、チューブ80を所定の搬送ステップ数分搬送させると共に、この間の搬送ステップでは印字を行わないようにする搬送制御である。本例では、CPU70は、搬送再開後にチューブ80を2搬送ステップ分移動させ、この間の2搬送ステップではサーマルヘッド32に記録エネルギーを印加させないように制御する(図7(E)点線部B)。この空送り搬送における搬送ステップ数は、チューブの種類や径等の挙動特性に合わせて任意に設定することができる。
【0046】
なお、上記説明において、空送り搬送では、文字等を印字しない搬送ステップ数を搬送再開時のチューブ80の撓み量のみを考慮して設定していたが、ハーフカット処理時に発生するチューブ80の搬送方向への移動量(引っ張り量)を考慮して、空送り搬送時の搬送ステップ数を設定することもできる。すなわち、空送り搬送においては、ハーフカット時のチューブ80の移動量と空送り搬送時の移動量との合計が、1ドットラインとなるように、空送り搬送時の搬送ステップ数を設定することもできる。
【0047】
例えば、搬送再開時に「3」搬送ステップ分移動させたときにチューブ80の印字面80bが、1ステップ目に0.2ドットライン、2ステップ目に0.3ドットライン、3ステップ目に0.5ドットライン進み、合計で1ドットライン進む場合を前提にすると、ハーフカット処理時にチューブ80が0.5ドットライン分搬送方向に引っ張られる場合には、空送り搬送では「2」搬送ステップ分空送り搬送させればさらに0.5ドットライン移動し、チューブ80の印字面80bが停止前に印字したドットライン位置から1ドットライン移動することになる。そのため、空送り搬送の搬送ステップ数を設定する場合には、搬送ステップ数として「2」に設定すれば良いことになる。これにより、ハーフカット処理時のチューブ80の引っ張り量も考慮できるので、より高精度に文字崩れを防止できる。なお、ハーフカット処理時のチューブ80の引っ張り量(移動量)は、チューブ80の種類や径毎に予め取得しているものとする。
【0048】
また、ハーフカット処理時の移動量を考慮する場合において、ハーフカットによるチューブ80の移動量が上記1ドットラインを超えてしまうときには、逆転搬送時における搬送ステップを増やして相対的にハーフカット時の移動量を減らし、ハーフカット時の移動量と空送り搬送の移動量とを合わせたチューブ80の合計移動量が1ドットライン相当の移動量になるように制御することで対応することも可能である。
【0049】
例えば、上述した設定を前提とすると、ハーフカット処理による移動量が2.5ドットライン分である場合には、逆転搬送時の搬送ステップ数を増加させ、ハーフカット処理時による移動量を相対的に例えば0.5ドットラインとなるように制御する。これにより、空送り搬送では「2」搬送ステップ分空送り搬送さえればさらに0.5ドットライン移動し、チューブ80の印字面80bが停止前に印字したドットライン位置から1ドットライン移動することになる。そのため、空送り搬送の搬送ステップ数を設定する場合には、搬送ステップ数として「2」に設定すれば良いことになる。
【0050】
空送り搬送の所定の搬送ステップ数分の搬送が終了したら(印字面80bが1ドットライン進んだら)、搬送モータ34へのパルスの供給は継続されつつ、サーマルヘッド32への記録エネルギーの印加が再開される(図7(E))。これにより、通常搬送が再開される。チューブ80の印字面80bの撓みは空送り搬送で解消されているので、前回印字したドットライン位置から1ドットライン進んだ位置に、逆転搬送時に印字した印字データの次の印字データに基づく1ドットラインを印字できる。1ステップ毎のドットラインの移動量は実施例の数値に限定されるものではなく、ハーフカット後のチューブ80の搬送再開時に印字面80bを1ドットライン相当移動させるために、チューブ80の材質や印字装置の機械的特性により適宜設定されるものである。1ドットライン相当移動させるには、逆転搬送と、空送り搬送を組み合わせて行っても良く、逆転搬送時に必要な所定の逆転搬送時の搬送ステップ数は、ROM72内に空送り搬送テーブルTBと同様な形式で記憶されるようにしても良い。当然ながら、1ステップ毎のドットラインの移動量を小さくすれば、ステップ数は増加するが、搬送の精度は向上する。
【0051】
[印字装置の動作例(フローチャート)]
次に、本発明に係る印字装置100の動作の一例について説明する。図8は印字装置100の動作例を示すフローチャートであり、図9(A)〜図9(J)はその各ステップで印字されるドットラインパターンを示している。
【0052】
図8に示すように、ステップS10でCPU70は、チューブ80がカット位置であるか否かを判断する。例えば、CPU70は、予め設定されているハーフカットのピッチ長になったか否かにより、チューブ80がカット位置であるか否かを判断する。CPU70は、チューブ80がカット位置であると判断した場合にはステップS50に進み、チューブ80がカット位置でないと判断した場合にはステップS20に進む。
【0053】
チューブ80がカット位置でないと判断した場合、ステップS20でCPU70は、チューブ80が前回のドットライン位置から1ドットライン分だけ搬送されるように搬送モータ34を1搬送ステップ正回転させる。これにより、図9(A)に示すように、チューブ80の1番目に印字を行うドットライン位置がサーマルヘッド32の印字位置に搬送される。
【0054】
そして、ステップS30でCPU70は、次の1ドットラインを印字する。具体的には、CPU70は、サーマルヘッド32に記録エネルギーを印加させてインクリボン46を加熱し、図9(A)に示すように、チューブ80の印字面80bに1ドットライン(左から1番目のドットライン)を印字する。
【0055】
ステップS40でCPU70は、全ての印刷が終了したか否かを判断する。全ての印字データ(ジョブ)の印刷が終了したと判断した場合には一連の印刷動作を終了する。一方、全ての印字データの印刷が終了していないと判断した場合にはステップS10に戻り、再度チューブ80がカット位置であるか否かを判断する。
【0056】
ステップS30で1ドットラインの印字が行われて次の1ステップ周期後に、ステップS10においてチューブ80のカット位置であると判断した場合、ステップS50でCPU70は、次の1ドットラインをチューブ80の印字面80bに印字する。続けて、ステップS60でCPU70は、搬送モータ34を1ステップ分逆回転させる。チューブ80への印字と逆回転は、例えば同時のタイミングで行い、チューブ80を逆転搬送させつつ印字を行う。この搬送モータ34の逆回転により、搬送されているチューブ80には、瞬間的に停止方向に力が働く。これにより、チューブにはその反発力と撓みを解消する応力が働くため、図9(B)および図9(C)に示すように、チューブ80の左から2番目のドットライン位置にドットラインが印字される。
【0057】
ステップS70でCPU70は、搬送モータ34の逆回転が1ステップ目であるか否かを判断する。CPU70は、搬送モータ34の逆回転が1ステップ目であると判断した場合にはステップS80に進み、搬送モータ34の逆回転が1ステップ目でないと判断した場合にはステップS90に進む。
【0058】
逆回転の1ステップ目であると判断した場合には、ステップS80でCPU70は、前のステップで印字した1ドットラインと同一の1ドットラインを重ねて印字する。これにより、確実に印字抜けを防止することができる。
【0059】
続けて、ステップS90でCPU70は、所定のステップ数分、逆回転が終了したか否かを判断する。これは、上述したチューブ80自身の撓みに加えて、後述するチューブ80の切断時においても搬送方向に引っ張る力が発生するので、このチューブ80の引っ張り方向の移動量に合わせて、所定の搬送ステップ数分だけ逆転方向にチューブ80を搬送する必要があるからである。そのため、この搬送ステップ数は、チューブの種類やチューブの径に応じて異なる搬送ステップ数が設定される。
【0060】
所定の搬送ステップ数分逆回転が終了したと判断すると、ステップS100でCPU70は搬送モータ34を停止させる。これにより、チューブ80の逆転方向への搬送も停止する。このとき、サーマルヘッド32の印字位置は、図9(C)に示すように、搬送モータ34の逆回転等によってチューブ80の1番目のドットラインと2番目のドットラインとの間に位置する。
【0061】
ステップS110でCPU70は、カットモータ62を駆動させてカッタ52を始動させる。これにより、チューブ80がハーフカットされる。ステップS120でCPU70は、チューブ80のハーフカット処理が終了したか否かを判断する。チューブ80のハーフカット処理が終了したと判断した場合にはステップS130に進む。一方、ハーフカット処理が終了していないと判断した場合にはチューブ80のハーフカットが終了するまでカット処理を継続する。
【0062】
ハーフカット処理が終了したと判断すると、ステップS130でCPU70は、カットモータ62の駆動を停止させてカッタ52を停止させる。このとき、サーマルヘッド32の印字位置は、図9(D)に示すように、ハーフカット処理によりチューブ80が搬送方向に引っ張られて移動するので、チューブ80の2番目のドットライン上に位置する。
【0063】
ハーフカット処理が終了して印刷動作が再開すると、ステップS140でCPU70は、搬送モータ34を1ステップ分正回転させる。続けて、ステップS150でCPU70は、予め設定した所定のステップ数分の正回転が終了したか否かを判断する。これは、上述したように、搬送再開時におけるチューブ80の撓みにより、チューブ80の印字面80bがプラテンローラ30の回転量(チューブ80の搬送面80a)と同期して移動しないからである。そのため、チューブ80の印字面80bがハーフカット処理前に印字した1ドットライン位置(図9(B))から1ドットライン相当量移動(図9(G))するまで、搬送モータ34を所定のステップ数分正回転させる。そして、この所定のステップ数の間は印字を行わない。この所定の搬送ステップ数分の移動により、図9(E)〜図9(G)に示すように、サーマルヘッド32の印字位置がチューブ80の2番目のドットライン上から3番目のドットライン上に位置する。すなわち、この空送り搬送での所定のステップ数分の搬送により、チューブ80の印字面80bが前回印字したドットライン位置から1ドットライン相当量移動する。
【0064】
CPU70は、ユーザにより入力されたチューブ80の種類や径から空送り搬送テーブルTBを参照して空送り搬送時の搬送ステップ数を取得し、搬送モータ34に供給しているパルス数がこの取得した空送り搬送ステップ数に達したか否かを判断する。CPU70は、所定のステップ数分の正回転が終了したと判断した場合にはステップS30に戻る。このステップS30では、運転再開時におけるチューブ80の撓みが解消して、チューブ80の印字面80bが搬送面80aに同期して移動するので、チューブ80の印字面80bが前回印字したドットライン位置から1ドットライン相当量移動している。そのため、文字崩れのない印字を行うことができる(図9(H))。続く、1ステップ周期後においても、搬送モータ34の1搬送ステップ正回転とチューブ80の印字面80bの移動量は同期しているので、正確に1ドットライン進み、チューブ80の第4番目のドットライン位置で1ドットラインが印字される(図9(I))。これにより、最終的に得られる印刷結果は、図9(J)に示すように、白抜けおよび文字崩れのない理想的な印字結果となる。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態によれば、チューブ80の搬送の再開時に、印刷媒体の印字面80bを1ドットライン移動させるのに、チューブ80を通常の1搬送ステップではなく、1搬送ステップ数以上の搬送ステップ数で移動させる。これにより、搬送再開時におけるチューブ80の印字面80bは、搬送の一時停止前に印字したドットライン位置から丁度1ドットライン進むことになるので、ドットライン間隔が詰まってしまうような印字崩れを防止でき、その結果として質の高い印字が可能となる。
【0066】
また、本実施の形態に係る印字装置100によれば、ハーフカット処理前に所定の搬送ステップ数分、チューブ80を逆転搬送するので、インクリボン46の撓みを抑制しつつ、チューブ80の搬送停止時に発生する印字の白抜けを防止することができる。
【0067】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。上述した実施の形態では、空送り搬送時の搬送ステップ数を、チューブ80の種類および径を入力部12で入力(選択)することにより設定していたが、これに限定されることはない。例えば、表示部14の画面上に空送り搬送時の搬送ステップ数の入力を促すメッセージを表示し、このメッセージに基づいてユーザが直接搬送ステップ数を操作ボタンで入力しても良い。さらに、センサを用いて空送り搬送時の搬送ステップ数を得ることもできる。具体的には、センサによりチューブ80を検出して検出信号をCPU70に供給する。CPU70では、センサから供給された検出信号に基づいてチューブ80のサイズ(径)等を判別し、この判別結果から、例えばチューブのサイズと搬送ステップ数とが対応付けられたテーブルを参照して、チューブのサイズに応じた搬送ステップ数を取得する。また、所定の演算式に基づいて搬送ステップ数を算出しても良い。なお、センサは、上述したセンサ76を用いることもできる。
【符号の説明】
【0068】
10・・・印字装置本体、12・・・入力部、30・・・プラテンローラ(搬送部)、32・・・サーマルヘッド(印字部)、50・・・カッタ(切断部)、70・・・CPU(制御部)、80・・・チューブ(印字媒体)、80b・・・印字面、100・・・印字装置、TB・・・空送り搬送テーブル
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状のチューブ等の印字媒体に文字等を印字する印字装置に関する。詳しくは、印字媒体への印刷実行中に印字媒体の搬送を一時停止させた後に、印字媒体の搬送を再開させて印刷を行うにあたって、印字媒体の印字面が1ドットライン分搬送方向に移動するように印字媒体を所定の搬送ステップ数移動させた後、停止前に印字した印字データの次の印字データを印字媒体の印字面に印字するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、長尺状のチューブやテープ等の印字媒体に文字や数字等を印字するための印字装置が広く利用されている。この印字装置は、搬送ローラとプラテンローラとサーマルヘッドとカッタとを有しており、付加機能として、例えば印字途中に所定のピッチ毎にハーフカット等の切断処理を行う機能を備えている。
【0003】
このような機能を有する印字装置において印刷処理が開始されると、搬送ローラおよびプラテンローラにより印字媒体がサーマルヘッドの印字位置に搬送される。このとき、サーマルヘッドにより印字データに対応したエネルギーが印加されることでインクリボンが加熱され、印字媒体の印字面に所定の文字等が印字される。サーマルヘッドにより所定の文字等が印字されたチューブは、プラテンローラ等によって搬送方向の下流側に搬送される。そして、印字媒体が切断位置に搬送された段階で、搬送ローラおよびプラテンローラの回転が一時停止されると共にサーマルヘッドによる印字が一時停止され、印字媒体がカッタにより切断(フルカットまたはハーフカット)される。カッタによる切断が完了すると、再び搬送ローラおよびプラテンローラが回転され、サーマルヘッドによりインクリボンが加熱されて印字媒体の印字面に所定の文字等が印字される。
【0004】
しかしながら、上述したような印字媒体の搬送を一時停止して切断を行った後に、搬送を再び開始して印字を行う搬送制御では、印字媒体の材料等の特性によって、カット前後における印字の間が印字抜けする「白抜け」や、印字のつながりがくずれることによる「文字崩れ」が発生してしまうという問題があった。
【0005】
図10(A)および図10(B)は、印刷を一次停止したときに発生する「白抜け」および「文字崩れ」を説明するための図を示している。チューブ200は、印刷時においてサーマルヘッドに押圧されて潰れた形状となるが、伸縮性を有するチューブ200は、搬送方向とは逆の回転方向に伸びると共にその厚みにより搬送面200aと印字面200bの搬送量に撓みが生じる。通常、搬送中はその撓みが一定であるために、印字はチューブ200の撓みに関係なく正常に行われる。しかし、チューブ200の搬送停止時にはその撓み(エネルギー)が開放されるため、搬送方向下流側に回転させる力が生じる。これにより、チューブ200が搬送方向に移動することで、印字開始位置も搬送方向に移動してしまい、これに伴って印字位置がずれて「白抜け」現象が発生してしまうという問題がある。
【0006】
また、チューブの200の切断が終了して印字が再開されると、再開当初は、チューブ200の伸縮性により、プラテンローラ210側の搬送面はプラテンローラ210の回転に伴って搬送方向に移動するが、従動側の印字面200bはチューブ200の伸縮性に基づく撓みによって移動量が小さくなる。このような状態で印字を行うと、1ドットライン移動する前に印刷が実行されてしまうことになる。その結果、停止前に印字された前の1ドットラインとの間隔や印字再開時の1ドットラインと、その次の1ドットラインの間隔が詰まってしまい、「文字崩れ」が発生するという問題がある。
【0007】
上述したような「白抜け」の問題を解決する手法としては、例えば、印字媒体の切断等の処理に入る前に、印字媒体を搬送時の変形相当量逆方向に搬送したり、長尺印刷媒体の搬送の停止時から続く印字データの1以上のラインについて長尺印刷媒体の種類に対応して設定された回数ずつ印刷することにより、「白抜け」の防止を図った印字装置が提案、開発されている(特許文献1〜3参照)。これらの装置によれば、印字媒体を逆搬送したり、同一のドットラインを印字するので、「白抜け」を解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4310868号
【特許文献2】特許第3166206号
【特許文献3】特開2002−254757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1および2に開示される印字装置等では、「白抜け」を解消することを課題としているため、「文字崩れ」の問題までを解決するには至っていない。図11(A)〜図11(H)は、例えば特許文献1に開示される印字装置を用いて、印刷を一時停止して切断処理を行い、その後印刷を再開した場合の印刷ドットパターンを示している。1ドットラインを印字して(図11(A))、搬送モータを1ステップ正回転した後、チューブが切断位置にあると判断されると、次の1ドットラインの印字(図11(B))をしながら搬送モータが逆回転させる(図11(C))。これにより、チューブの撓みによる応力を解消するように逆回転するため、ドット間が抜けることなく印字が行われる。次に、切断動作により逆回転によって戻しすぎた分を含め、チューブの搬送方向下流側に移動する(図11(D))。そして、切断後の印刷開始時の1ドットラインを前のデータに重ねて印字することにより(図11(E))、印字抜けを防止している。
【0010】
しかし、印字動作の再開時において、チューブは再度撓みを形成するまでは搬送モータの1ステップに対して、1ステップ分の移動をしないため、さらに次の1ステップでは前のドットラインに対して詰まった状態で印字されてしまう(図11(F))。さらに、次のステップでも、チューブの撓みが解消していないため、前のドットラインに対して詰まった状態で印字されてしまう(図11(G))。そのため、最終的な印刷結果として、文字が崩れた状態となってしまい(図11(H))、文字崩れについては解消することができない。
【0011】
また、上記特許文献3に開示される印字装置では、「文字崩れ」の解消を課題の一つとしており、この解決手段としてチューブの撓みによる移動量に合わせて同一のラインを複数回印字している。図12(A)および図12(B)は、特許文献3に開示される印刷装置を用いて、印刷を一時停止して切断処理を行い、その後印刷を再開した場合の印刷ドットパターンを示している。この印刷装置によれば、印字されるドットの形状は一定の大きさであるため、印字ラインデータが同一の場合には「文字崩れ」は発生しないが(図12(A))、印字ラインデータが異なる場合には実際の印字結果は複数回印字した分だけ印字ドットラインが太くなってしまう(図12(B))。したがって、引用文献3についても、印字データによっては「文字崩れ」を完全に解決することができないという問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、印刷処理を一時停止した後に搬送を再開して印字を行う場合に、搬送再開当初に発生する文字崩れを防止することを可能とした印字装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る印字装置は、長尺状の印字媒体への印刷実行中に当該印字媒体の搬送を一時停止させ、その後に印字媒体の搬送を再開させて印刷を行う印刷機能を備えた印字装置であって、印字媒体を搬送する搬送部と、搬送部により搬送された印字媒体の印字面に印字データに基づくドットラインを印刷する印刷部と、搬送部および印刷部を制御する制御部とを備え、制御部は、印字媒体の搬送を再開させたとき、当該印字媒体の印字面が1ドットライン相当分搬送方向に移動するように印字媒体を所定の搬送ステップ数移動させた後、一時停止前に印字した印字データの次の印字データを印字媒体の印字面に印字するようにしたものである。
【0014】
また、本発明に係る印字装置は、印字媒体への印刷実行中に当該印字媒体の搬送を一時停止させ、その後に印字媒体の搬送を再開させて印刷を行う印刷機能を備えた印字装置であって、印字媒体を搬送する搬送部と、搬送部により搬送された印字媒体の印字面に印字データに基づくドットラインを印刷する印刷部と、印刷部の搬送方向の下流側に設けられ、印字媒体を切断する切断部と、搬送部および印刷部を制御する制御部とを備え、制御部は、印字媒体の切断部による切断処理に入る前に、印字媒体を搬送時の変形相当量逆方向に搬送しつつ、印字媒体に新規の印字データを印字し、その後に、印字媒体の搬送を停止して当該印字媒体を切断し、その後の印字媒体の搬送の再開において、当該印字媒体の印字面が1ドットライン分搬送方向に移動するように印字媒体を所定の搬送ステップ数移動させた後、停止前に印字した印字データの次の印字データを印字媒体の印字面に印字するようにしたものである。
【0015】
印字媒体への印刷実行中に当該印字媒体の搬送を一時停止させ、その後に印字媒体の搬送を再開させて印刷を行う場合、搬送再開当初は、印字媒体の搬送面については搬送部の移動に伴って搬送方向に移動するが、搬送面と反対側の印字面は印字媒体の撓み等の原因によって搬送方向にほとんど移動しない。そのため、搬送再開当初は、通常搬送時のように1搬送ステップで1ドットライン進まない。
【0016】
そこで、本発明に係る印字装置において制御部では、印字媒体の搬送の再開時に、印刷媒体の印字面を1ドットライン移動させるのに、印字媒体を通常の1搬送ステップではなく、1または複数の搬送ステップ数で移動させる。この搬送ステップ数は、印字媒体の種類や径(サイズ)毎に設定することができる。これは、印字媒体の種類や径に応じてその撓み量等の特性も異なるからである。これにより、搬送再開時における印字媒体の印字面は、1または複数の搬送ステップ数で1ドットライン進む。その結果、搬送の一時停止前に印字したドットライン位置から丁度1ドットライン進むことになるので、ドットライン間隔が詰まってしまうような印字崩れを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の印字装置によれば、印字媒体の再搬送時であって印字を再開する前に、印字媒体の印字面が1ドットライン移動するように、印字媒体を所定の搬送ステップ数搬送方向に移動させるので、印刷再開時の印字の文字崩れを確実に防止することができる。また、本発明の印字装置によれば、切断処理前に所定の搬送ステップ数分、印字媒体を逆転搬送するので、印字媒体の停止時に発生する印字の白抜けを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る印字装置の構成例を示す斜視図である。
【図2】印字装置の内部構成例を示す斜視図である。
【図3】印字装置の要部の構成例を示す図である。
【図4】ハーフカットされたチューブの状態を示す図である。
【図5】印字装置のブロック構成例を示す図である。
【図6】空送り搬送テーブルの構成例を示す図である。
【図7】印字装置の動作例のタイミングチャートを示す図である。
【図8】印字装置の動作例を示すフローチャートである。
【図9】(A)〜(J)は、本発明の印字装置により印字されるドットパターンを示す図である。
【図10】(A)および(B)は、印刷を一次停止したときに発生する「白抜け」および「文字崩れ」を説明するための図である。
【図11】(A)〜(H)は、従来の印字装置により印字されるドットラインパターンを示す図である(その1)。
【図12】(A)および(B)は、従来の印字装置により印字されるドットラインパターンを示す図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明する。
[印字装置の外観構成例]
本発明に係る印字装置100は、長尺状の印字媒体への印刷実行中に印字媒体の搬送を一時停止させた後に、印字媒体の搬送を再開させて印刷を行うにあたって、印字媒体の印字面が1ドットライン分搬送方向に移動するように印字媒体を所定の搬送ステップ数分移動させ、その後に停止前に印字した印字データの次の印字データを印字媒体の印字面に印字するものである。
【0020】
印字媒体としては、例えば、長尺状のチューブ80(図3参照)や、肉厚が厚く軟らかい長尺状のプラスチック板等が用いられる。本例では、印字媒体としてチューブ80を用いた例について説明し、プラテンローラ30側の面を搬送面80aと呼び、この搬送面80aと反対側の面を印字面80bと呼ぶ(図3参照)。使用されるチューブ80の種類としては、例えば、ポリ塩化ビニル性チューブや、熱収縮チューブ、非塩化ビニルチューブ等が用いられる。
【0021】
図1は、本発明に係る印字装置100の外観構成の一例を示している。印字装置100は、図1に示すように、印字装置本体10と入力部12と表示部14とを備えている。印字装置本体10は、所定の厚みを有した平面視矩形状をなす筐体であって、その内部には後述するプラテンローラ30やサーマルヘッド32、カッタ52、CPU70等が実装された回路基板が内蔵されている。印字装置本体10の左側面部には、所定の文字等が印字されたチューブ80等が排出される排出口16が設けられている。この排出口16よりも若干下方には、排出口16から排出されるチューブ80を完全に分離して切断するためのフルカットボタン18が設けられている。
【0022】
入力部12は、印字装置本体10の正面下部に配設され、文字ボタンや数字ボタン、印字開始ボタン、空送り搬送時の搬送ステップ数を設定するための空送り設定ボタン等の複数の操作ボタンにより構成されている。この入力部12は、チューブ80に印字する文字や数字等の入力を受け付けたり、後述する空送り搬送時の搬送ステップ数を設定するためのチューブ80の種類やチューブの径の入力を受け付ける。
【0023】
表示部14は、印字装置本体10の正面中央の右端部に設けられ、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等から構成されている。表示部14は、入力部12で入力されたチューブ80に印字される文字や数字等を表示したり、後述する空送り搬送時の搬送ステップ数を設定するためのチューブ80の種類やチューブの径を選択するための選択画面を表示する。
【0024】
[印字装置の内部構成例]
次に、印字装置100の内部構成の一例について説明する。図2は印字装置100の内部構成の一例を示しており、図3はその要部の構成の一例を示している。図2および図3に示すように、印字装置100は、プラテンローラ30とサーマルヘッド32とヘッド移動機構38とインクリボンカセット40と切断部50とカッタ駆動部60とを備えている。
【0025】
プラテンローラ30は、ロアプレート36に取り付けられた軸受部に回転可能に支持され、後述する搬送モータ34の駆動によって回転(正回転または逆回転)駆動する。これにより、通常搬送および空送り搬送時にはチューブ80を搬送方向に沿って搬送し、逆転搬送時にはチューブ80を搬送方向とは反対方向に逆転搬送する。なお、プラテンローラ30は、搬送部の一例を構成している。
【0026】
サーマルヘッド32は、プラテンローラ30に対向して配置され、図示しないサーマルヘッド駆動回路から供給される記録エネルギーをインクリボン46に印加してチューブ80の印字面80bに所定の文字等を印字する。このサーマルヘッド32には、ヘッド移動機構38に連結されている。このヘッド移動機構38を構成するレバーが操作されることにより、サーマルヘッド32がプラテンローラ30に対して近接または離反移動可能となっている。印刷(搬送)時には、サーマルヘッド32がプラテンローラ30に近接して、プラテンローラ30との間にインクリボン46およびチューブ80を挟持・押圧し、所定の文字等をチューブ80に印字する。なお、サーマルヘッド32は、印字部の一例を構成している。
【0027】
インクリボンカセット40は、サーマルヘッド32の下方のインクリボン収容部に着脱可能に取り付けられる。このインクリボンカセット40は、送り出しリール42と巻き取りリール44とインクリボン46とを有している。巻き取りリール44は、搬送モータ34の駆動力によってプラテンローラ30と同期して回転し、送り出しリール42に巻回されたインクリボン46を巻き取る。
【0028】
切断部50は、プラテンローラ30およびサーマルヘッド32の搬送方向の下流側に設けられ、カッタ52と受け台54とから構成されている。切断部50の下流側にはカッタ駆動部60が設けられている。カッタ駆動部60は、カットモータ62と切断部50に連結される複数のギア64とから構成されている。カッタ52は、このカッタ駆動部60の駆動により、受け台54に接近および離反移動してチューブ80をハーフカットまたはフルカットする。
【0029】
図4は、チューブ80をハーフカットした状態を示している。ハーフカットとは、図4に示すように、チューブ80の一部を残して切断して、印字が行われたチューブ80を繋げた状態で運搬等を行えるようにすると共に、使用時にははさみ等を用いることなく例えばユーザの手でチューブ80を引っ張ることで、容易に切断可能とする切断手法を意味している。切断されたチューブ80は、例えば、電気配線のコード等に装着されて、コード類の識別手段として使用される。
【0030】
[印字装置のブロック構成例]
図5は、印字装置100のブロック構成の一例を示している。図5に示すように、印字装置100は、CPU70とROM72とRAM74と入力部12と表示部14とサーマルヘッド32と搬送モータ34とカットモータ62とセンサ76とを備えている。なお、CPU70は、制御部の一例を構成している。
【0031】
CPU70は、ROM72から読み出したプログラムやデータをRAM74上に展開してプログラムを起動し、印字装置100の各部の動作を制御する。このCPU70は、チューブ80への印字中にチューブ80が切断位置に到達したときに所定の搬送ステップ数逆転搬送し、その後当該チューブ80の搬送を一時停止させて切断処理し、その後にチューブ80の搬送を再開させて印刷を行う印刷機能を備えている。このとき、CPU70は、通常の印刷時には1搬送ステップで1ドットライン印字するようにサーマルヘッド32に印字データに応じた記録エネルギーを供給し、印刷を一次停止して印刷を再開する場合には所定の搬送ステップ数の間だけサーマルヘッド32に記録エネルギーを印加しないように制御し、その後一時停止前に印字した印字データの次の印字データをチューブ80に印字するように、プラテンローラ30およびサーマルヘッド32等を制御する。
【0032】
ROM72には、サーマルヘッド32に記録エネルギーを印加するための記録制御プログラムや、印刷一時停止後の印刷再開時に所定の搬送ステップ分印字しないように制御する空送り搬送プログラム、チューブ80を所定量だけ搬送する搬送制御プログラム、その他の印字装置100の制御に必要な各種のプログラムや後述の空送り搬送テーブルTBが記憶されている。RAM74は、CPU70の制御処理に必要なデータの一時記憶等に用いられる。
【0033】
図6は、ROM72に記憶される空送り搬送テーブルTBの構成の一例を示している。空送り搬送テーブルTBには、チューブ80の種類と、チューブ毎の径と、空送り量とがそれぞれ対応付けて記憶されており、チューブ80の種類やチューブの径に応じて異なった空送り搬送ステップが設定されている。これは、チューブ80の種類や径毎に弾力性や伸縮性が異なり、印刷再開時におけるチューブ80の印字面80bの移動量も異なってくるからである。例えば、搬送テーブルTBには、チューブ80の種類として熱収縮製チューブ、塩化ビニル製チューブおよび非塩化ビニル製チューブの3種類が設定され、チューブ80の径として5.2mmと3.6mmの2サイズが設定され、それぞれのチューブ80の種類および径に応じて空送り搬送ステップ量(例えば、1,2,3)が設定されている。なお、空送り搬送テーブルTBの内容(情報)は、例えば、製品出荷時に記憶させ、製品出荷後において新しいチューブの種類や径が追加された場合に更新できるようにすることが好ましい。また、ROM72以外の不揮発性メモリを設け、この不揮発性メモリに空送り搬送テーブルTBを記憶させることもできる。
【0034】
入力部12は、ユーザにより押下された操作ボタンに対応した操作信号を生成してCPU70に供給する。表示部14は、入力部12の操作信号によりRAM74等のメモリから読み出された表示データに基づいて駆動回路を駆動して、画面上に文字や数字等を表示する。
【0035】
サーマルヘッド32は、図示しないサーマルヘッド駆動回路を有している。このサーマルヘッド駆動回路は、CPU70から供給される印字データに対応した駆動信号に基づいて駆動され、サーマルヘッド32に印字データに対応した記録エネルギーを印加する。サーマルヘッド32は、サーマルヘッド駆動回路により印加された記録エネルギーに基づいて所定の文字や数字等をチューブ80の印字面80bに印字する。
【0036】
搬送モータ34は、CPU70から供給される制御信号に基づいて回転制御され、プラテンローラ30や搬送ローラ等を回転駆動させる。例えば、通常搬送時および空送り搬送時においてはCPU70からの制御信号により正回転し、逆転搬送時においてはCPU70からの制御信号により逆回転し、チューブ80の切断時においては停止する。
【0037】
カットモータ62は、CPU70から供給される駆動信号に基づいて回転駆動してカッタ52を受け台54に対して近接または離反させる。この切断処理により、チューブ80がフルカットまたはハーフカットされる。
【0038】
センサ76は、例えばカットモータ62と切断部50に連結されるギア64の駆動を検出し、カット終了検出信号をCPU70に供給したり、インクリボン46の送り出しリール42の回転量を検出し、検出信号をCPU70に供給する。
【0039】
[印字装置の動作例(タイミングチャート)]
次に、印字装置100の動作の一例を示すタイミングチャートについて説明する。図7(A)〜図7(F)は、印字装置100の動作の一例を示すタイミングチャートである。以下では、搬送モータ34としてA相、B相、C相、D相のコイルを有するステッピングモータを用いた場合について説明する。
【0040】
印刷処理が開始されると、搬送モータ34には、CPU70の指示に基づいてコイルA相、B相、C相、D相の順番でパルスが供給される(図7(A)〜図7(D))。これにより、搬送モータ34が正回転すると、プラテンローラ30および搬送ローラが正回転し、プラテンローラ30によって押圧されているチューブ80が搬送方向に沿って搬送される(以下通常搬送という)。
【0041】
このとき、サーマルヘッド32には、CPU70の指示に基づいて印字データに基づく記録エネルギーが印加され(図7(E))、1搬送ステップ毎に1ドットラインの印字が行われる。本例では、通常搬送時において、4ドットライン分の記録エネルギーがサーマルヘッド32に印加され、4ドットラインがチューブ80の印字面80bに印字される。
【0042】
続けて、チューブ80が切断位置に搬送されると、搬送モータ34にはCPU70の指示によりコイルD相、C相、B相、A相の順番にパルスが供給される(図7(A)〜図7(D))。これにより、搬送モータ34の駆動が正回転から逆回転に切り替えられる。搬送モータ34が逆回転すると、これに伴ってプラテンローラ30および搬送ローラが逆転回転し、プラテンローラ30によって押圧されているチューブ80が搬送方向と反対方向に所定ステップ分だけ搬送される(以下逆転搬送という)。図7では、3搬送ステップ分、逆転搬送させた例を示している。この逆転搬送ステップ数は、チューブの種類や径毎の挙動特性に合わせて任意に設定することができる。
【0043】
また、この逆転搬送中においては、印字抜けを防止するために、CPU70の指示によりサーマルヘッド駆動回路から印字データに基づく記録エネルギーがサーマルヘッド32に印加される(図7(E))。本例では、逆転搬送時において、例えば1ドットラインがチューブ80の印字面80bに印字される。このように、逆転搬送を行い、この逆転搬送中において印字を行うのは、後述するチューブ80の停止時に、チューブ80の撓みによりチューブ80が搬送方向下流側に移動することによる、印字抜けを防止するためである。
【0044】
逆転搬送が終了すると、CPU70は、搬送モータ34のコイルA相、B相、C相、D相へのパルスの供給を停止して搬送モータ34の逆回転を停止させる(図7(A)〜図7(D))。その後、カットモータ62に駆動信号を供給する(図7(F))。これにより、カッタ52が駆動されて、切断位置に搬送されているチューブ80がハーフカットされる。なお、カット前後において同一の印字ラインデータが続く場合には、文字崩れや印字抜けを確実に防ぐために、カットモータ62の駆動中にサーマルヘッド32に通電し、印字を行うようにしても良い。
【0045】
カットモータ62への駆動信号の供給が停止されてハーフカット処理が終了すると、搬送モータ34には、CPU70の指示に基づいてA相、B相、C相、D相の順番にパルスが供給される(図7(A)〜図7(D))。これにより、搬送モータ34の駆動が逆回転から正回転に切り替えられる。搬送モータ34が正回転すると、プラテンローラ30および搬送ローラが正回転する。この搬送再開時においては、チューブ80の搬送面80aは搬送ステップに応じて移動するものの、チューブ80の印字面80bは搬送再開時の撓みによって移動量が小さくなる。そのため、本発明では、チューブ80の印字面80bがハーフカット処理前に印字したドットラインから1ドットライン分移動するまで空送り搬送を行う。空送り搬送とは、チューブ80の印字面80bが逆転搬送時に印字したドットライン位置から1ドットライン分移動するように、チューブ80を所定の搬送ステップ数分搬送させると共に、この間の搬送ステップでは印字を行わないようにする搬送制御である。本例では、CPU70は、搬送再開後にチューブ80を2搬送ステップ分移動させ、この間の2搬送ステップではサーマルヘッド32に記録エネルギーを印加させないように制御する(図7(E)点線部B)。この空送り搬送における搬送ステップ数は、チューブの種類や径等の挙動特性に合わせて任意に設定することができる。
【0046】
なお、上記説明において、空送り搬送では、文字等を印字しない搬送ステップ数を搬送再開時のチューブ80の撓み量のみを考慮して設定していたが、ハーフカット処理時に発生するチューブ80の搬送方向への移動量(引っ張り量)を考慮して、空送り搬送時の搬送ステップ数を設定することもできる。すなわち、空送り搬送においては、ハーフカット時のチューブ80の移動量と空送り搬送時の移動量との合計が、1ドットラインとなるように、空送り搬送時の搬送ステップ数を設定することもできる。
【0047】
例えば、搬送再開時に「3」搬送ステップ分移動させたときにチューブ80の印字面80bが、1ステップ目に0.2ドットライン、2ステップ目に0.3ドットライン、3ステップ目に0.5ドットライン進み、合計で1ドットライン進む場合を前提にすると、ハーフカット処理時にチューブ80が0.5ドットライン分搬送方向に引っ張られる場合には、空送り搬送では「2」搬送ステップ分空送り搬送させればさらに0.5ドットライン移動し、チューブ80の印字面80bが停止前に印字したドットライン位置から1ドットライン移動することになる。そのため、空送り搬送の搬送ステップ数を設定する場合には、搬送ステップ数として「2」に設定すれば良いことになる。これにより、ハーフカット処理時のチューブ80の引っ張り量も考慮できるので、より高精度に文字崩れを防止できる。なお、ハーフカット処理時のチューブ80の引っ張り量(移動量)は、チューブ80の種類や径毎に予め取得しているものとする。
【0048】
また、ハーフカット処理時の移動量を考慮する場合において、ハーフカットによるチューブ80の移動量が上記1ドットラインを超えてしまうときには、逆転搬送時における搬送ステップを増やして相対的にハーフカット時の移動量を減らし、ハーフカット時の移動量と空送り搬送の移動量とを合わせたチューブ80の合計移動量が1ドットライン相当の移動量になるように制御することで対応することも可能である。
【0049】
例えば、上述した設定を前提とすると、ハーフカット処理による移動量が2.5ドットライン分である場合には、逆転搬送時の搬送ステップ数を増加させ、ハーフカット処理時による移動量を相対的に例えば0.5ドットラインとなるように制御する。これにより、空送り搬送では「2」搬送ステップ分空送り搬送さえればさらに0.5ドットライン移動し、チューブ80の印字面80bが停止前に印字したドットライン位置から1ドットライン移動することになる。そのため、空送り搬送の搬送ステップ数を設定する場合には、搬送ステップ数として「2」に設定すれば良いことになる。
【0050】
空送り搬送の所定の搬送ステップ数分の搬送が終了したら(印字面80bが1ドットライン進んだら)、搬送モータ34へのパルスの供給は継続されつつ、サーマルヘッド32への記録エネルギーの印加が再開される(図7(E))。これにより、通常搬送が再開される。チューブ80の印字面80bの撓みは空送り搬送で解消されているので、前回印字したドットライン位置から1ドットライン進んだ位置に、逆転搬送時に印字した印字データの次の印字データに基づく1ドットラインを印字できる。1ステップ毎のドットラインの移動量は実施例の数値に限定されるものではなく、ハーフカット後のチューブ80の搬送再開時に印字面80bを1ドットライン相当移動させるために、チューブ80の材質や印字装置の機械的特性により適宜設定されるものである。1ドットライン相当移動させるには、逆転搬送と、空送り搬送を組み合わせて行っても良く、逆転搬送時に必要な所定の逆転搬送時の搬送ステップ数は、ROM72内に空送り搬送テーブルTBと同様な形式で記憶されるようにしても良い。当然ながら、1ステップ毎のドットラインの移動量を小さくすれば、ステップ数は増加するが、搬送の精度は向上する。
【0051】
[印字装置の動作例(フローチャート)]
次に、本発明に係る印字装置100の動作の一例について説明する。図8は印字装置100の動作例を示すフローチャートであり、図9(A)〜図9(J)はその各ステップで印字されるドットラインパターンを示している。
【0052】
図8に示すように、ステップS10でCPU70は、チューブ80がカット位置であるか否かを判断する。例えば、CPU70は、予め設定されているハーフカットのピッチ長になったか否かにより、チューブ80がカット位置であるか否かを判断する。CPU70は、チューブ80がカット位置であると判断した場合にはステップS50に進み、チューブ80がカット位置でないと判断した場合にはステップS20に進む。
【0053】
チューブ80がカット位置でないと判断した場合、ステップS20でCPU70は、チューブ80が前回のドットライン位置から1ドットライン分だけ搬送されるように搬送モータ34を1搬送ステップ正回転させる。これにより、図9(A)に示すように、チューブ80の1番目に印字を行うドットライン位置がサーマルヘッド32の印字位置に搬送される。
【0054】
そして、ステップS30でCPU70は、次の1ドットラインを印字する。具体的には、CPU70は、サーマルヘッド32に記録エネルギーを印加させてインクリボン46を加熱し、図9(A)に示すように、チューブ80の印字面80bに1ドットライン(左から1番目のドットライン)を印字する。
【0055】
ステップS40でCPU70は、全ての印刷が終了したか否かを判断する。全ての印字データ(ジョブ)の印刷が終了したと判断した場合には一連の印刷動作を終了する。一方、全ての印字データの印刷が終了していないと判断した場合にはステップS10に戻り、再度チューブ80がカット位置であるか否かを判断する。
【0056】
ステップS30で1ドットラインの印字が行われて次の1ステップ周期後に、ステップS10においてチューブ80のカット位置であると判断した場合、ステップS50でCPU70は、次の1ドットラインをチューブ80の印字面80bに印字する。続けて、ステップS60でCPU70は、搬送モータ34を1ステップ分逆回転させる。チューブ80への印字と逆回転は、例えば同時のタイミングで行い、チューブ80を逆転搬送させつつ印字を行う。この搬送モータ34の逆回転により、搬送されているチューブ80には、瞬間的に停止方向に力が働く。これにより、チューブにはその反発力と撓みを解消する応力が働くため、図9(B)および図9(C)に示すように、チューブ80の左から2番目のドットライン位置にドットラインが印字される。
【0057】
ステップS70でCPU70は、搬送モータ34の逆回転が1ステップ目であるか否かを判断する。CPU70は、搬送モータ34の逆回転が1ステップ目であると判断した場合にはステップS80に進み、搬送モータ34の逆回転が1ステップ目でないと判断した場合にはステップS90に進む。
【0058】
逆回転の1ステップ目であると判断した場合には、ステップS80でCPU70は、前のステップで印字した1ドットラインと同一の1ドットラインを重ねて印字する。これにより、確実に印字抜けを防止することができる。
【0059】
続けて、ステップS90でCPU70は、所定のステップ数分、逆回転が終了したか否かを判断する。これは、上述したチューブ80自身の撓みに加えて、後述するチューブ80の切断時においても搬送方向に引っ張る力が発生するので、このチューブ80の引っ張り方向の移動量に合わせて、所定の搬送ステップ数分だけ逆転方向にチューブ80を搬送する必要があるからである。そのため、この搬送ステップ数は、チューブの種類やチューブの径に応じて異なる搬送ステップ数が設定される。
【0060】
所定の搬送ステップ数分逆回転が終了したと判断すると、ステップS100でCPU70は搬送モータ34を停止させる。これにより、チューブ80の逆転方向への搬送も停止する。このとき、サーマルヘッド32の印字位置は、図9(C)に示すように、搬送モータ34の逆回転等によってチューブ80の1番目のドットラインと2番目のドットラインとの間に位置する。
【0061】
ステップS110でCPU70は、カットモータ62を駆動させてカッタ52を始動させる。これにより、チューブ80がハーフカットされる。ステップS120でCPU70は、チューブ80のハーフカット処理が終了したか否かを判断する。チューブ80のハーフカット処理が終了したと判断した場合にはステップS130に進む。一方、ハーフカット処理が終了していないと判断した場合にはチューブ80のハーフカットが終了するまでカット処理を継続する。
【0062】
ハーフカット処理が終了したと判断すると、ステップS130でCPU70は、カットモータ62の駆動を停止させてカッタ52を停止させる。このとき、サーマルヘッド32の印字位置は、図9(D)に示すように、ハーフカット処理によりチューブ80が搬送方向に引っ張られて移動するので、チューブ80の2番目のドットライン上に位置する。
【0063】
ハーフカット処理が終了して印刷動作が再開すると、ステップS140でCPU70は、搬送モータ34を1ステップ分正回転させる。続けて、ステップS150でCPU70は、予め設定した所定のステップ数分の正回転が終了したか否かを判断する。これは、上述したように、搬送再開時におけるチューブ80の撓みにより、チューブ80の印字面80bがプラテンローラ30の回転量(チューブ80の搬送面80a)と同期して移動しないからである。そのため、チューブ80の印字面80bがハーフカット処理前に印字した1ドットライン位置(図9(B))から1ドットライン相当量移動(図9(G))するまで、搬送モータ34を所定のステップ数分正回転させる。そして、この所定のステップ数の間は印字を行わない。この所定の搬送ステップ数分の移動により、図9(E)〜図9(G)に示すように、サーマルヘッド32の印字位置がチューブ80の2番目のドットライン上から3番目のドットライン上に位置する。すなわち、この空送り搬送での所定のステップ数分の搬送により、チューブ80の印字面80bが前回印字したドットライン位置から1ドットライン相当量移動する。
【0064】
CPU70は、ユーザにより入力されたチューブ80の種類や径から空送り搬送テーブルTBを参照して空送り搬送時の搬送ステップ数を取得し、搬送モータ34に供給しているパルス数がこの取得した空送り搬送ステップ数に達したか否かを判断する。CPU70は、所定のステップ数分の正回転が終了したと判断した場合にはステップS30に戻る。このステップS30では、運転再開時におけるチューブ80の撓みが解消して、チューブ80の印字面80bが搬送面80aに同期して移動するので、チューブ80の印字面80bが前回印字したドットライン位置から1ドットライン相当量移動している。そのため、文字崩れのない印字を行うことができる(図9(H))。続く、1ステップ周期後においても、搬送モータ34の1搬送ステップ正回転とチューブ80の印字面80bの移動量は同期しているので、正確に1ドットライン進み、チューブ80の第4番目のドットライン位置で1ドットラインが印字される(図9(I))。これにより、最終的に得られる印刷結果は、図9(J)に示すように、白抜けおよび文字崩れのない理想的な印字結果となる。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態によれば、チューブ80の搬送の再開時に、印刷媒体の印字面80bを1ドットライン移動させるのに、チューブ80を通常の1搬送ステップではなく、1搬送ステップ数以上の搬送ステップ数で移動させる。これにより、搬送再開時におけるチューブ80の印字面80bは、搬送の一時停止前に印字したドットライン位置から丁度1ドットライン進むことになるので、ドットライン間隔が詰まってしまうような印字崩れを防止でき、その結果として質の高い印字が可能となる。
【0066】
また、本実施の形態に係る印字装置100によれば、ハーフカット処理前に所定の搬送ステップ数分、チューブ80を逆転搬送するので、インクリボン46の撓みを抑制しつつ、チューブ80の搬送停止時に発生する印字の白抜けを防止することができる。
【0067】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。上述した実施の形態では、空送り搬送時の搬送ステップ数を、チューブ80の種類および径を入力部12で入力(選択)することにより設定していたが、これに限定されることはない。例えば、表示部14の画面上に空送り搬送時の搬送ステップ数の入力を促すメッセージを表示し、このメッセージに基づいてユーザが直接搬送ステップ数を操作ボタンで入力しても良い。さらに、センサを用いて空送り搬送時の搬送ステップ数を得ることもできる。具体的には、センサによりチューブ80を検出して検出信号をCPU70に供給する。CPU70では、センサから供給された検出信号に基づいてチューブ80のサイズ(径)等を判別し、この判別結果から、例えばチューブのサイズと搬送ステップ数とが対応付けられたテーブルを参照して、チューブのサイズに応じた搬送ステップ数を取得する。また、所定の演算式に基づいて搬送ステップ数を算出しても良い。なお、センサは、上述したセンサ76を用いることもできる。
【符号の説明】
【0068】
10・・・印字装置本体、12・・・入力部、30・・・プラテンローラ(搬送部)、32・・・サーマルヘッド(印字部)、50・・・カッタ(切断部)、70・・・CPU(制御部)、80・・・チューブ(印字媒体)、80b・・・印字面、100・・・印字装置、TB・・・空送り搬送テーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の印字媒体への印刷実行中に当該印字媒体の搬送を一時停止させ、その後に前記印字媒体の搬送を再開させて印刷を行う印刷機能を備えた印字装置であって、
前記印字媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送された前記印字媒体の印字面に印字データに基づくドットラインを印刷する印刷部と、
前記搬送部および前記印刷部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記印字媒体の搬送を再開させたとき、当該印字媒体の前記印字面が1ドットライン相当分搬送方向に移動するように前記印字媒体を所定の搬送ステップ数移動させた後、前記一時停止前に印字した前記印字データの次の印字データを前記印字媒体の前記印字面に印字するようにした
ことを特徴とする印字装置。
【請求項2】
前記印刷部の搬送方向の下流側に設けられた前記印字媒体を切断する切断部をさらに備え、
前記制御部は、
前記切断部による前記印字媒体の切断時に生じる当該印字媒体の搬送方向への移動量と、前記印字媒体の搬送再開時の所定の搬送ステップ数によって搬送方向に移動する前記印字媒体の移動量とを合わせた前記印字媒体の移動量が前記1ドットライン相当となるように、前記印字媒体を前記所定の搬送ステップ数移動させるようにした
ことを特徴とする請求項1に記載の印字装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記切断部による前記印字媒体の切断の処理に入る前に、
前記切断部による前記印字媒体の切断時に生じる当該印字媒体の搬送方向への移動量と、前記印字媒体の搬送再開時の前記搬送ステップ数によって搬送方向に移動する前記印字媒体の移動量とを合わせた移動量が前記1ドットライン相当を超える場合に、当該移動量が前記1ドットラインとなるように、前記印字媒体を前記搬送方向とは反対方向に搬送するようにした
ことを特徴とする請求項2に記載の印字装置。
【請求項4】
前記印字媒体を前記搬送方向とは反対方向に搬送する際は、所定の搬送ステップ数移動させるようにした
ことを特徴とする請求項3に記載の印字装置。
【請求項5】
前記印字媒体の種類およびサイズの少なくとも何れか一方を入力して前記搬送ステップ数を設定するための入力部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の印字装置。
【請求項6】
印字媒体への印刷実行中に当該印字媒体の搬送を一時停止させ、その後に前記印字媒体の搬送を再開させて印刷を行う印刷機能を備えた印字装置であって、
前記印字媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送された前記印字媒体の印字面に印字データに基づくドットラインを印刷する印刷部と、
前記印刷部の搬送方向の下流側に設けられ、前記印字媒体を切断する切断部と、
前記搬送部および前記印刷部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記印字媒体の前記切断部による切断の処理に入る前に、前記印字媒体を搬送時の変形相当量逆方向に搬送しつつ、前記印字媒体に新規の印字データを印字し、その後に、前記印字媒体の搬送を停止して当該印字媒体を切断し、その後の前記印字媒体の搬送の再開において、当該印字媒体の前記印字面が1ドットライン分搬送方向に移動するように前記印字媒体を所定の搬送ステップ数移動させた後、前記停止前に印字した前記印字データの次の印字データを前記印字媒体の前記印字面に印字するようにした
ことを特徴とする印字装置。
【請求項1】
長尺状の印字媒体への印刷実行中に当該印字媒体の搬送を一時停止させ、その後に前記印字媒体の搬送を再開させて印刷を行う印刷機能を備えた印字装置であって、
前記印字媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送された前記印字媒体の印字面に印字データに基づくドットラインを印刷する印刷部と、
前記搬送部および前記印刷部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記印字媒体の搬送を再開させたとき、当該印字媒体の前記印字面が1ドットライン相当分搬送方向に移動するように前記印字媒体を所定の搬送ステップ数移動させた後、前記一時停止前に印字した前記印字データの次の印字データを前記印字媒体の前記印字面に印字するようにした
ことを特徴とする印字装置。
【請求項2】
前記印刷部の搬送方向の下流側に設けられた前記印字媒体を切断する切断部をさらに備え、
前記制御部は、
前記切断部による前記印字媒体の切断時に生じる当該印字媒体の搬送方向への移動量と、前記印字媒体の搬送再開時の所定の搬送ステップ数によって搬送方向に移動する前記印字媒体の移動量とを合わせた前記印字媒体の移動量が前記1ドットライン相当となるように、前記印字媒体を前記所定の搬送ステップ数移動させるようにした
ことを特徴とする請求項1に記載の印字装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記切断部による前記印字媒体の切断の処理に入る前に、
前記切断部による前記印字媒体の切断時に生じる当該印字媒体の搬送方向への移動量と、前記印字媒体の搬送再開時の前記搬送ステップ数によって搬送方向に移動する前記印字媒体の移動量とを合わせた移動量が前記1ドットライン相当を超える場合に、当該移動量が前記1ドットラインとなるように、前記印字媒体を前記搬送方向とは反対方向に搬送するようにした
ことを特徴とする請求項2に記載の印字装置。
【請求項4】
前記印字媒体を前記搬送方向とは反対方向に搬送する際は、所定の搬送ステップ数移動させるようにした
ことを特徴とする請求項3に記載の印字装置。
【請求項5】
前記印字媒体の種類およびサイズの少なくとも何れか一方を入力して前記搬送ステップ数を設定するための入力部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の印字装置。
【請求項6】
印字媒体への印刷実行中に当該印字媒体の搬送を一時停止させ、その後に前記印字媒体の搬送を再開させて印刷を行う印刷機能を備えた印字装置であって、
前記印字媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送された前記印字媒体の印字面に印字データに基づくドットラインを印刷する印刷部と、
前記印刷部の搬送方向の下流側に設けられ、前記印字媒体を切断する切断部と、
前記搬送部および前記印刷部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記印字媒体の前記切断部による切断の処理に入る前に、前記印字媒体を搬送時の変形相当量逆方向に搬送しつつ、前記印字媒体に新規の印字データを印字し、その後に、前記印字媒体の搬送を停止して当該印字媒体を切断し、その後の前記印字媒体の搬送の再開において、当該印字媒体の前記印字面が1ドットライン分搬送方向に移動するように前記印字媒体を所定の搬送ステップ数移動させた後、前記停止前に印字した前記印字データの次の印字データを前記印字媒体の前記印字面に印字するようにした
ことを特徴とする印字装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図9】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図9】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−230428(P2011−230428A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104516(P2010−104516)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【Fターム(参考)】
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