説明

印影登録プログラム、印影登録装置及び印影登録方法

【課題】金融機関等における印影登録の際に、登録対象の印影が登録印影として適さない印鑑による印影であるのか、登録印影として適する印鑑による印影であるのかを判断し、登録印影として適さない印鑑による印影の登録を抑止することが可能な印影登録プログラム、印影登録装置及び印影登録方法を提供すること。
【解決手段】画像読取装置で読み取った媒体上に押印された印鑑の印影を印影画像データとして入力する印影入力手段、前記印影入力手段によって入力した印影画像データの画像ムラが所定レベルを下回るか否かを判断する印影画像一様性判断手段、前記印影画像一様性判断手段によって前記画像ムラが前記所定レベルを下回らなかったと判断された場合、前記印影入力手段によって入力した印影画像データを登録印影として登録する印影登録手段として、印影登録装置のコンピュータを機能させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行等の金融機関又は行政機関における顧客等の印鑑の印影登録を行うための印影登録プログラム、印影登録装置及び印影登録方法に関し、特に、印影登録に適さない所謂スタンプ印の印影を排除し、印影登録に適した所謂三文判又は実印の印影を登録するための印影登録プログラム、印影登録装置及び印影登録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙文書の真正性を保証する手段として、印鑑の押印によって得られる印影(印章)が用いられている。例えば銀行において顧客が小切手などによる払い戻しを求める場合、小切手に押印されている印影がその登録印影と一致しているか否かを照合することにより、その小切手の真正性を確認する。近年、この照合には、コンピュータを利用した印影照合装置を使用している。
【0003】
このような印影照合装置は、一般に、登録印影を電子ファイル装置等のメモリに登録している。そして、例えば小切手に押印された被照合印影を登録印影と照合する場合に、登録印影を電子ファイルから呼び出して表示画面に表示すると共に、自動搬送される小切手などの被照合印影を画像センサ等の読み取り手段を用いて電磁気的に読み取って(例えば、特許文献1参照。)表示画面に表示する。銀行員等は、これらの表示された両印影を画面上で見比べたり、あるいは両印影を画面上で重ね合わせたりして、その一致度を見ることにより両印影の同一性を判断している。一致性の判断をコンピュータに実行させることも可能である。
【0004】
何れにしろ、印影登録に用いる印鑑は、押印の度に略同一形状の印影が形成されることが求められる。そのため、スタンプ印(例えば、特許文献2、3参照。)は、印影登録に用いる印鑑としては適していない。押印の際にスタンプ部のゴムが変形することにより印影が変形したり、ゴムの劣化により印影が変化したりするためである。
【0005】
印影を照合するためには、予め印影を登録しておく必要がある。印影の登録は、例えば、登録するための印影を押印した印影票を画像データとして読取り、印影登録装置に接続された2次記憶媒体に印影票全体を一時保存する。その後、2次記憶媒体から保存された画像データを読み出し、登録印影と対応付けるための口座番号の入力や、画像切り出し処理を行い、印影登録装置に接続された電子ファイル装置に切り出した印影を登録する(例えば、特許文献4参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−251072号公報
【特許文献2】特開2001−260509号公報
【特許文献3】特開2001−175241号公報
【特許文献4】特開平9−245170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述のような印影登録装置においては、画像データとして扱う印影が、スタンプ印等の登録印影として適さない印鑑による印影であるのか、三文判又は実印等の登録印影として適する印鑑の印影であるのか判断することができず、登録印影として適さない印影の登録を抑止することができない、という問題点があった。
【0008】
本発明は、前述のような実状に鑑みたものであり、金融機関等における印影登録の際に、登録対象の印影が登録印影として適さない印鑑による印影であるのか、登録印影として適する印鑑による印影であるのかを判断し、登録印影として適さない印鑑による印影の登録を抑止することが可能な印影登録プログラム、印影登録装置及び印影登録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、下記のような構成を採用した。
すなわち、本発明の一態様によれば、本発明の印影登録プログラムは、印影登録装置のコンピュータを、画像読取装置で読み取った媒体上に押印された印鑑の印影を印影画像データとして入力する印影入力手段、前記印影入力手段によって入力した印影画像データの画像ムラが所定レベルを下回るか否かを判断する印影画像一様性判断手段、前記印影画像一様性判断手段によって前記画像ムラが前記所定レベルを下回らなかったと判断された場合、前記印影入力手段によって入力した印影画像データを登録印影として登録する印影登録手段として機能させるための印影登録プログラムである。
【0010】
また、本発明の印影登録プログラムは、前記コンピュータを、前記印影入力手段によって入力した読取印画像データから円形状検出処理を用いて印鑑枠相当部分を抽出する印鑑枠抽出手段として更に機能させ、前記印影画像一様性判断手段が、前記印鑑枠抽出手段によって抽出した印鑑枠相当部分の所定範囲について直線検出処理を用いて一定の直線性を有するか否かを判断することにより、前記画像ムラが前記所定レベルを下回るか否かを判断することが望ましい。
【0011】
また、本発明の印影登録プログラムは、前記コンピュータを、前記印影入力手段によって入力した読取印画像データから円形状検出処理を用いて印鑑枠相当部分を抽出する印鑑枠抽出手段、前記印影入力手段によって入力した読取印画像データから前記印鑑枠抽出手段によって抽出された印鑑枠相当部分以外を文字相当部分として抽出する文字部分抽出手段として更に機能させ、前記印影画像一様性判断手段が、前記文字部分抽出手段によって抽出した文字相当部分について画素密度算出処理を用いて一定の高密度性を有するか否かを判断することにより、前記画像ムラが前記所定レベルを下回るか否かを判断することが望ましい。
【0012】
また、本発明の印影登録プログラムは、前記印影画像一様性判断手段によって前記画像ムラが前記所定レベルを下回ったと判断された場合、前記印影入力手段によって入力した印影画像データを登録印影として登録しないことを警告出力する警告出力手段として機能させることが望ましい。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、本発明の印影登録装置は、画像読取装置で読み取った媒体上に押印された印鑑の印影を印影画像データとして入力する印影入力手段と、前記印影入力手段によって入力した印影画像データの画像ムラが所定レベルを下回るか否かを判断する印影画像一様性判断手段と、前記印影画像一様性判断手段によって前記画像ムラが前記所定レベルを下回らなかったと判断された場合、前記印影入力手段によって入力した印影画像データを登録印影として登録する印影登録手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様によれば、本発明の印影登録方法は、印影登録装置のコンピュータによって実行される印鑑登録方法であって、画像読取装置で読み取った媒体上に押印された印鑑の印影を印影画像データとして入力し、前記入力した印影画像データの画像ムラが所定レベルを下回るか否かを判断し、前記画像ムラが前記所定レベルを下回らなかったと判断された場合、前記入力した印影画像データを登録印影として登録することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、登録印影として適さない印鑑による印影であるのか、登録印影として適する印鑑による印影であるのかを判断することにより、スタンプ印等の登録印影として適さない印鑑による印影の誤登録を防止することができ、銀行業務等のセキュリティの向上及び効率化を図ることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用した印影登録装置を備えるシステム構成図である。
【図2】本発明を適用した印鑑登録装置のハードウェア構成図である。
【図3】本発明を適用した印鑑登録装置の機能ブロック図である。
【図4】印鑑枠相当部分の直線性を説明するための図である。
【図5】文字相当部分の画素密度の高低を説明するための図である。
【図6】本発明を適用した印影登録処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】印影登録処理のサブルーチン「印鑑枠直線性判別処理」の流れを示すフローチャートである。
【図8】直線性判別の具体例を説明するための図である。
【図9】印影登録処理のサブルーチン「印鑑文字部画素密度判別処理」の流れを示すフローチャートである。
【図10】画素密度判別の具体例を説明するための図である。
【図11】印影登録処理のサブルーチン「スタンプ印総合判別処理」の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明は、印影登録に適さないスタンプ印等の印影の特徴、及び印影登録に適している三文判又は実印等の印影の特徴を解析し、スタンプ印等の印影であるか、三文判等の印影であるのかを判断することを特徴とする。
【0018】
例えば、以下の特徴を抽出し、各要素の結果をポイント換算(重み付け)して、スタンプ印等の印影であるか否かの判断を行う。
(特徴1)スタンプ印等は、印影の枠部分、特に枠の上下左右の部分が直線的に構成されている。三文判等は、直線的でない。
(特徴2)スタンプ印等は、印影の文字部分の画像ムラが少ない。三文判等は、画像ムラが多い。
【0019】
そして、各要素の解析結果をポイント換算して、一定以上の値が求まればスタンプ印等であるとしてみなし、印鑑登録を抑止する。具体的には、印影の枠部分の上下左右の所定領域を解析して、枠部分が直線で形成されていたならば、スタンプ印等であることを示すポイントを加算する。また、印影の枠部分の画像ムラを解析して、画像ムラが少なければ、スタンプ印等であることを示すポイントを加算する。
これは、スタンプ印等では、印影の画素密度が高い特徴があり、三文判等では、印影の画素密度が低い特徴があることを利用している。
【0020】
図1は、本発明を適用した印影登録装置を備えるシステム構成図である。
図1において、印影登録システム1は、印影登録装置10、印影登録装置10と接続された画像読取装置20及び登録印影データベース30を備える。ここで、本発明の印影登録システム1は、例えば金融機関の届印の登録などに用いられている。
【0021】
印影登録装置10は、例えば、ワークステーション、サーバ、パーソナルコンピュータ等のコンピュータの機能を備えており、本発明を適用した印影登録処理を実行する。印影登録処理については、詳細を後述する。画像読取装置20は、例えば、画像スキャナであり、印鑑の押印により印影が形成された印鑑票等を光学的に読み取り、読み取った画像データを印影登録装置10に出力する。登録印影データベース30は、例えば、ハードディスク装置であり、印影登録装置10の印影登録処理によって登録印影として処理された画像データを口座番号等と対応づけて格納する。
【0022】
図2は、本発明を適用した印鑑登録装置のハードウェア構成図である。
図2において、印鑑登録装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、入力装置12、出力装置13、ROM(Read Only Memory)14、RAM(Random Access Memory)15、インターフェース(I/F)16がバス17に接続されて構成されている。入力装置12は、例えば、キーボード、ジョイスティック、ライトペン、マウス、タッチパッド、タッチパネル、トラックボール等、各種のデータや信号等を入力する。出力装置13は、例えば、LCD(Liquid Cristal Display)等の各種ディスプレイ、プリンタ等、画像やその他の情報を出力する。ROM14は、印鑑登録装置10において実行する処理を実行するプログラムの他、印鑑登録装置10の各機能を制御し実行するための制御プログラム及びテーブルデータなどを収納する。RAM15は、出力装置13用のフレームバッファや一部のアプリケーションプログラム等を格納する。インターフェース16は、USB(Universal Serial Bus)等のシリアルインターフェースやイーサネット(登録商標)等のパラレルインターフェース等、外部機器と接続するためのユニットである。CPU11は、これらの各部を制御している。
【0023】
図3は、本発明を適用した印鑑登録装置の機能ブロック図である。図4は、印鑑枠相当部分の直線性を説明するための図である。図5は、文字相当部分の画素密度の高低を説明するための図である。
【0024】
図3において、印鑑登録装置10は、画像入力部101、印影抽出部102、印影出力部103、印鑑枠抽出部104、文字部分抽出部105、印影画像一様性判断部106、警告出力部107及び印影登録部108を備える。
【0025】
画像入力部101は、画像スキャナ等で読み取った画像データを印影登録装置10に入力する。印影抽出部102は、画像入力部101で入力された画像データから、印鑑票の押印枠等の印影以外の画像データを、公知の印影抽出処理を用いて除去し、印影のみの画像データを抽出する。これらの画像入力部101及び印影抽出部102が印影入力部として機能することで、画像読取装置20で読み取った媒体上に押印された印鑑の印影を、印影画像データとして印影登録装置10に入力する。なお、印影入力部は、既に押印枠等が除去され印影のみが抽出された画像データを、メモリから読み込んで印影登録装置10に入力するようにしてもよい。
【0026】
印影出力部103は、印影入力部によって入力した印影の画像データを、出力装置13に出力する。例えば、ディスプレイの画面に表示する。
印影画像一様性判断部106は、後述する印鑑枠抽出部104によって抽出された印鑑枠相当部分、及び文字部分抽出部105によって抽出された文字相当部分の夫々の画像ムラが、所定レベルを下回るか否か、すなわち、画像ムラが予め定めたレベルよりも少ないか多いかを判断する。通常、登録印影として適さない印鑑であるスタンプ印等は、画像ムラが少ない。これに対して、登録印影として適する印鑑である三文判又は実印等は、スタンプ印等に比べて画像ムラが多くなる。スタンプ印等の印影に画像ムラが少ないのは、スタンプ印等が、インクを吸蔵する無数の連続気孔を有した多孔性印材を使用し、捺印時の押圧変形により気孔からインクを一様に吐き出しているからである。
【0027】
印影登録部108は、前記印影画像一様性判断部106によって前記画像ムラが前記所定レベルを下回らなかったと判断された場合に、入力装置12により入力された口座番号等と対応づけて登録印影データベース30に登録印影として登録する。すなわち、前記印影入力部によって入力した印影画像データが、登録印影として適する印鑑である三文判又は実印等の印影であると判断された場合に、登録印影として登録する。
【0028】
印鑑枠抽出部104は、スキャナ等の画像読取装置20で読み取った画像データであって、帳票等の媒体に押印された読取印画像データから、前述のように押印枠を除去した画像データを対象にして、公知の円形状検出処理等の外枠検出処理を用いて印鑑枠相当部分を抽出する。すなわち、前記印影入力部によって入力した読取印画像データを対象にして、公知の円形状検出処理等の外枠検出処理を用いて印鑑枠相当部分を抽出する。抽出した印鑑枠相当部分の画像データは、RMA15に格納しておく。
【0029】
そして、前記印影画像一様性判断部106が、前記印鑑枠相当部分の画像データをRAM15から読み出し、印鑑枠相当部分の所定範囲について直線検出処理を用いて一定の直線性を有するか否かを判断する。例えば、図4中の破線で示したように、印鑑枠相当部分の上下左右4箇所の所定範囲について、直線性を有するか否かを判断してもよいし、更に斜めの4箇所を加えた8箇所の所定範囲について判断してもよい。直線性を有するか否かにより、前記画像ムラが前記所定レベルを下回るか否かを判断する。ここで、直線性を有するか否かは、二次元フィルタによって輪郭強調処理を行い、最小自乗近似によって直線を求めるアルゴリズムや、ハフ変換法により直線を求めるアルゴリズム等の公知のアルゴリズムを利用する。図4の(A)に示すように、印鑑枠相当部分の所定範囲が一定の直線性を有する場合は、画像ムラが所定レベルを下回る(画像ムラが少ない)と判断する。これに対して、図4の(B)に示すように、印鑑枠相当部分の所定範囲が一定の直線性を有しない場合は、画像ムラが所定レベルを下回らない(画像ムラが多い)と判断する。
【0030】
文字部分抽出部105は、前記印影入力部によって入力した読取印画像データから、前記印鑑枠抽出部104によって抽出された印鑑枠相当部分を除き、残った部分を文字相当部分として抽出する。抽出した文字相当部分の画像データは、RMA15に格納しておく。
【0031】
そして、前記印影画像一様性判断部106が、文字相当部分の画像データをRAM15から読み出し、文字相当部分について画素密度、すなわち、文字相当部分全体の画素に対する黒画素の割合を算出するための処理を実行する。そして、一定の高密度性を有するか否かを判断することにより、前記画像ムラが前記所定レベルを下回るか否かを判断する。図5の(A)に示すように、文字相当部分が一定の密度性を有する(高密度である)場合は、画像ムラが所定レベルを下回る(画像ムラが少ない)と判断する。これに対して、図5の(B)に示すように、文字相当部分が一定の密度性を有しない(低密度である)場合は、画像ムラが所定レベルを下回らない(画像ムラが多い)と判断する。
【0032】
警告出力部107は、前記印影画像一様性判断部106によって前記画像ムラが前記所定レベルを下回ったと判断された場合は、前記印影入力部によって入力した印影画像データを登録印影として登録しないことを警告するため、その旨を出力装置13に出力する。
【0033】
次に、前述のような構成の印影登録装置10のコンピュータが実行する印刷登録処理について説明する。
図6は、本発明を適用した印影登録処理の流れを示すフローチャートである。
【0034】
印影登録処理は、まず、前処理として、図3乃至図5を用いて説明したような処理、すなわち、画像入力部101、印影抽出部102、印鑑枠抽出部104及び文字部分抽出部105による処理を実行する。これにより、印影枠相当部分及び文字相当部分が抽出される。
【0035】
そして、ステップS601において、印影の画像ムラが所定レベルを下回るか否かを判断するため、印影の印鑑枠相当部分についての直線性を判断するサブルーチン「印鑑枠直線性判別処理」を実行する。サブルーチン「印鑑枠直線性判別処理」の詳細については、図7及び図8を用いて後述する。
【0036】
次に、ステップS602において、印影の画像ムラが所定レベルを下回るか否かを判断するため、印影の文字相当部分についての高密度性を判断するサブルーチン「印鑑文字部画素密度判別処理」を実行する。サブルーチン「印鑑文字部画素密度判別処理」の詳細については、図9及び図10を用いて後述する。
【0037】
そして、ステップS603において、ステップS601のサブルーチン「印鑑枠直線性判別処理」及びステップS602のサブルーチン「印鑑文字部画素密度判別処理」の結果に基づいて、印影登録に適さない印影を排除し、印影登録に適した印影のみを登録するサブルーチン「スタンプ印総合判別処理」を実行する。サブルーチン「スタンプ印総合判別処理」の詳細については、図11を用いて後述する。
【0038】
ここで、図6のステップS601のサブルーチン「印鑑枠直線性判別処理」について説明する。
図7は、印影登録処理のサブルーチン「印鑑枠直線性判別処理」の流れを示すフローチャートである。図8は、直線性判別の具体例を説明するための図である。
【0039】
まず、ステップS701において、前述の前処理で抽出した印影枠相当部分を対象にして、図8の(B)に示すように、印影枠の円形の中心を通る縦線71及び横線72を求める。そして、ステップS702において、図8の(B)に示すように、印影枠の円形の中心を通る斜め45度右上がり斜線73及び斜め45度右下がり斜線74を求める。
【0040】
次に、ステップS703において、ステップS701で求めた縦線71及び横線72と、ステップS702で求めた斜め45度右上がり斜線73及び斜め45度右下がり斜線74の4本の線が、印鑑枠の円周と接触する箇所(交点であるチェック点を含む所定領域)をチェック箇所(N箇所)とする。この場合、4本の線が円周と接触する8箇所をチェック箇所とする。具体的には、縦線71が円周と接触するチェック領域81及び82、横線72が円周と接触するチェック領域83及び84、斜め45度右上がり斜線73が円周と接触するチェック領域85及び86、斜め45度右下がり斜線74が円周と接触するチェック領域87及び88の8箇所である。
【0041】
そして、これらの8箇所のチェック箇所のそれぞれについて、順に以下のステップS704及びステップ705を実行する。
まず、ステップS704において、チェック点を中心に、チェック箇所に応じた進行方向(円周のチェック点における接線方向)に対し、印鑑枠相当部分の直径の10パーセント(%)のずつ(計20%)のドット範囲をチェック対象とする。
【0042】
そして、ステップS705において、ステップS704でチェック対象とした範囲について、直線性を判断し、直線性があると判断した場合には、登録印影として適さない印鑑であるスタンプ印等の印影である可能性が高いため、「スタンプ印直線性ポイント」を1加算する。直線性の判断は、前述したようにハフ変換法等を用いてもよいし、例えば、図8の(A)に示したように、チェック箇所の外延の各ドット位置の座標(チェック点831の場合、X座標。チェック領域81のチェック点であれば、Y座標。)が、チェック点の座標(チェック点831のX座標)と同一であった場合、直線性があるとみなしてもよい。
【0043】
全てのチェック領域についてステップS704及びステップS705を実行したら、サブルーチン「印鑑枠直線性判別処理」を終了する。
【0044】
次に、図6のステップS602のサブルーチン「印鑑文字部画素密度判別処理」について説明する。
図9は、印影登録処理のサブルーチン「印鑑文字部画素密度判別処理」の流れを示すフローチャートである。図10は、画素密度判別の具体例を説明するための図である。
【0045】
まず、ステップS901において、スキャナ等で読み取った画像データであって、帳票等の媒体に押印された読取印画像データ(図10の(A)参照)から、前述のように押印枠を除去した画像データを対象にして、太さやサイズに基づいて、印鑑枠に相当する部分を除去し、文字相当部分を残す(図10の(B)参照)。なお、このステップS901は、図6の印影登録処理において、ステップS601のサブルーチン「印鑑枠直線性判別処理」をスキップし、前述の前処理における印鑑枠抽出部104及び文字部分抽出部105による処理を実行しない場合のステップである。
【0046】
次に、ステップS902において、文字相当部分を対象にして、図10の(B)に示すように、文字を構成する画素の塊(文字構成塊)の数を求める。図10の(B)に示した例では、文字構成塊91、92、93、94、95の5つの文字構成塊が抽出される。文字構成塊の抽出は、例えば、入力された画像データを画素単位のマトリクス状のビットマップデータに変換し、黒画素の連結成分を1つの塊とするようなラベリングを行うことにより抽出する。
【0047】
そして、これらの5つの文字構成塊のそれぞれについて、順に以下のステップS903、ステップS904、ステップ905及びステップS906を実行する。
まず、ステップS903において、例えばラプラシアンフィルタ等の公知のエッジ処理によって、文字構成塊のエッジを検出する。
【0048】
そして、ステップS904において、ステップS903で検出されたエッジで囲まれた文字構成塊の面積を、白画素部分も含めて算出する。
次に、ステップS905において、ステップS903で検出されたエッジで囲まれた文字構成塊内の黒画素のドット数を求め、ステップS904で算出された面積に対する黒画素の割合、すなわち画素密度を算出する。
【0049】
そして、ステップS906において、文字構成塊についての画素密度が所定値、例えば75%以上であるか否かを判断し、所定値以上であれば、文字構成塊が高密度であると判断する。そして、高密度であると判断した場合には、登録印影として適さない印鑑であるスタンプ印等の印影である可能性が高いため、「スタンプ印画素密度ポイント」を1加算する。
【0050】
全ての文字構成塊についてステップS903乃至ステップS906を実行したら、サブルーチン「印鑑枠直線性判別処理」を終了する。
次に、ステップS603のサブルーチン「スタンプ印総合判別処理」について説明する。
【0051】
図11は、印影登録処理のサブルーチン「スタンプ印総合判別処理」の流れを示すフローチャートである。
まず、ステップS1101において、図7のステップS705で累積加算した「スタンプ印直線性ポイント」を参照し、ステップS1102において、累積加算された「スタンプ印直線性ポイント」が所定値以上であるか否かを判断する。ここで、「スタンプ印直線性ポイント」と比較する所定値は、例えば、図7のチェック箇所が4箇所であれば「3ポイント」とし、8箇所であれば「5ポイント」乃至「7ポイント」が望ましい。
【0052】
ステップS1102で所定値以上ではないと判断された場合は(ステップS1102:No)、ステップS1103において、図9のステップS906で累積加算された「スタンプ印画素密度ポイント」を参照し、ステップS1104において、文字構成塊に対する「スタンプ印画素密度ポイント」が所定割合以上の文字構成塊に存在するか否かを判断する。ここで、「スタンプ印画素密度ポイント」が存在するか否かを判断するための所定割合は、例えば、「50%」乃至「70%」が望ましい。
【0053】
ステップS1104で所定割合以上の文字構成塊には「スタンプ印画素密度ポイント」が存在しないと判断された場合は(ステップS1104:No)、印影登録に適した三文判又は実印等の印影であると判断し、ステップS1105において、口座番号等と対応づけて登録印影データベース30に登録印影として登録する。
【0054】
他方、ステップS1102で所定値以上であると判断された場合(ステップS1102:Yes)、又はステップS1104で所定割合以上の文字構成塊に「スタンプ印画素密度ポイント」が存在すると判断された場合は(ステップS1104:Yes)、印影登録に適さないスタンプ印等であると判断し、ステップS1106において、登録印影として登録しないことを警告するため、その旨を出力装置13に出力する。
【0055】
以上、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明してきたが、前述してきた本発明の実施の形態は、印影登録装置の一機能としてハードウェアまたはDSP(Digital Signal Processor)ボードやCPUボードでのファームウェアもしくはソフトウェアにより実現することができる。
【0056】
また、本発明が適用される印影登録装置は、その機能が実行されるのであれば、前述の実施の形態に限定されることなく、単体の装置であっても、複数の装置からなるシステムあるいは統合装置であっても、LAN、WAN等のネットワークを介して処理が行なわれるシステムであってもよいことは言うまでもない。
【0057】
また、バスに接続されたCPU、ROMやRAMのメモリ、入力装置、出力装置、外部記録装置、媒体駆動装置、ネットワーク接続装置で構成されるシステムでも実現できる。すなわち、前述してきた実施の形態のシステムを実現するソフトェアのプログラムを記録したROMやRAMのメモリ、外部記録装置、可搬記録媒体を、印影登録装置に供給し、その印影登録装置のコンピュータがプログラムを読み出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
【0058】
この場合、可搬記録媒体等から読み出されたプログラム自体が本発明の新規な機能を実現することになり、そのプログラムを記録した可搬記録媒体等は本発明を構成することになる。
【0059】
プログラムを供給するための可搬記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、DVD−ROM、DVD−RAM、磁気テープ、不揮発性のメモリーカード、ROMカード、電子メールやパソコン通信等のネットワーク接続装置(言い換えれば、通信回線)を介して記録した種々の記録媒体などを用いることができる。
【0060】
また、コンピュータ(情報処理装置)がメモリ上に読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施の形態の機能が実現される他、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によっても前述した実施の形態の機能が実現される。
【0061】
さらに、可搬型記録媒体から読み出されたプログラムやプログラム(データ)提供者から提供されたプログラム(データ)が、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によっても前述した実施の形態の機能が実現され得る。
【0062】
すなわち、本発明は、以上に述べた実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成または形状を取ることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 印影登録システム
10 印影登録装置
11 CPU(Central Processing Unit)
12 入力装置
13 出力装置
14 ROM(Read Only Memory)
15 RAM(Random Access Memory)
16 インターフェース(I/F)
17 バス
20 画像読取装置
30 登録印影データベース
71 縦線
72 横線
73 斜め45度右上がり斜線
74 斜め45度右下がり斜線
81、82、83、84、85、86、87、88 チェック領域
91、92、93、94、95 文字構成塊
101 画像入力部
102 印影抽出部
103 印影出力部
104 印鑑枠抽出部
105 文字部分抽出部
106 印影画像一様性判断部
107 警告出力部
108 印影登録部
831 チェック点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印影登録装置のコンピュータを、
画像読取装置で読み取った媒体上に押印された印鑑の印影を印影画像データとして入力する印影入力手段、
前記印影入力手段によって入力した印影画像データの画像ムラが所定レベルを下回るか否かを判断する印影画像一様性判断手段、
前記印影画像一様性判断手段によって前記画像ムラが前記所定レベルを下回らなかったと判断された場合、前記印影入力手段によって入力した印影画像データを登録印影として登録する印影登録手段、
として機能させるための印影登録プログラム。
【請求項2】
前記コンピュータを、
前記印影入力手段によって入力した読取印画像データから円形状検出処理を用いて印鑑枠相当部分を抽出する印鑑枠抽出手段、
として更に機能させ、
前記印影画像一様性判断手段が、前記印鑑枠抽出手段によって抽出した印鑑枠相当部分の所定範囲について直線検出処理を用いて一定の直線性を有するか否かを判断することにより、前記画像ムラが前記所定レベルを下回るか否かを判断する、
ことを特徴とする請求項1に記載の印影登録プログラム。
【請求項3】
前記コンピュータを、
前記印影入力手段によって入力した読取印画像データから円形状検出処理を用いて印鑑枠相当部分を抽出する印鑑枠抽出手段、
前記印影入力手段によって入力した読取印画像データから前記印鑑枠抽出手段によって抽出された印鑑枠相当部分以外を文字相当部分として抽出する文字部分抽出手段、
として更に機能させ、
前記印影画像一様性判断手段が、前記文字部分抽出手段によって抽出した文字相当部分について画素密度算出処理を用いて一定の高密度性を有するか否かを判断することにより、前記画像ムラが前記所定レベルを下回るか否かを判断する、
ことを特徴とする請求項1に記載の印影登録プログラム。
【請求項4】
前記印影画像一様性判断手段によって前記画像ムラが前記所定レベルを下回ったと判断された場合、前記印影入力手段によって入力した印影画像データを登録印影として登録しないことを警告出力する警告出力手段、
として機能させるための請求項1乃至3の何れか1項に記載の印影登録プログラム。
【請求項5】
画像読取装置で読み取った媒体上に押印された印鑑の印影を印影画像データとして入力する印影入力手段と、
前記印影入力手段によって入力した印影画像データの画像ムラが所定レベルを下回るか否かを判断する印影画像一様性判断手段と、
前記印影画像一様性判断手段によって前記画像ムラが前記所定レベルを下回らなかったと判断された場合、前記印影入力手段によって入力した印影画像データを登録印影として登録する印影登録手段と、
を備えることを特徴とする印影登録装置。
【請求項6】
印影登録装置のコンピュータによって実行される印鑑登録方法であって、
画像読取装置で読み取った媒体上に押印された印鑑の印影を印影画像データとして入力し、
前記入力した印影画像データの画像ムラが所定レベルを下回るか否かを判断し、
前記画像ムラが前記所定レベルを下回らなかったと判断された場合、前記入力した印影画像データを登録印影として登録する、
ことを特徴とする印影登録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図10】
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