説明

印鑑問合せシステム

【課題】顧客の顧客識別情報等が第三者に漏洩した場合であっても、該顧客の届印の偽造を防止して安全性を確保できるようにする。
【解決手段】携帯端末1の画像撮影手段11で撮影した印鑑画像および顧客識別情報入力手段12で入力された顧客識別情報を受信した照合手段4が、その印鑑画像と顧客識別情報に関連付けて顧客毎の届印の印影画像を予め記憶する登録印影画像データベース5に登録された届印の印影画像を照合し、その照合結果を携帯端末1へ送信して該携帯端末1の表示手段14に表示させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末装置で撮影した印鑑または印影の画像に基づいてその印鑑が登録された届印であるか否かを判定する印鑑問合せシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の印鑑問合せシステムは、照会端末で顧客を識別するための口座番号等の顧客識別情報および暗証番号を入力し、その顧客識別情報および暗証番号に基づいて本人確認を行い、本人確認が完了すると予め印鑑イメージデータベースに登録されている該顧客の届印である印鑑イメージデータの一部分を照会端末に表示するようにしているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−102390号公報(段落「0020」〜段落「0024」、図2、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来の技術においては、顧客の顧客識別情報および暗証番号が第三者に漏洩した場合、第三者はその顧客識別情報および暗証番号を使用して該顧客の届印である印鑑イメージデータの一部を取得することができ、その印鑑イメージデータから届印全体の刻印を推測して偽造することも可能になる場合があり、安全性が完全に確保できないという問題がある。
【0004】
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、顧客の顧客識別情報等が第三者に漏洩した場合であっても、該顧客の届印の偽造ができないようにして安全性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのため、本発明は、顧客の操作により印鑑画像を撮影する画像撮影手段と、顧客を識別する顧客識別情報の入力を受付ける入力手段と、前記画像撮影手段で撮影した印鑑画像とともに前記入力手段で入力された顧客識別情報を送信する通信手段とを備えた端末装置と、前記顧客識別情報に関連付けて顧客毎の届印の印影画像を予め記憶する登録印影画像データベースと、前記画像撮影手段で撮影した印鑑画像を顧客識別情報とともに前記端末装置から受信する画像受付手段と、前記画像受付手段が受信した印鑑画像を、受信した顧客識別情報に基づいて前記登録印影画像データベースを検索して抽出した印影画像と、照合する照合手段とを設け、前記照合手段が、前記画像撮影手段で撮影した印鑑画像と登録された届印の印影画像との照合結果を前記端末装置へ送信し、その照合結果を該端末装置の表示手段に表示させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
このようにした本発明は、顧客の顧客識別情報等が第三者に漏洩した場合であっても、該顧客の届印の偽造を防止することができるようになり、安全性を確保することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明による印鑑問合せシステムの実施例を説明する。
【実施例1】
【0008】
図1は第1の実施例における印鑑問合せシステムの構成を示すブロック図である。
図1において、1は端末装置としての顧客が所持する携帯端末であり、例えば携帯電話、PHS(Personal Handyphone System)、PDA(Personal Digital Assistant)、ノート型パーソナルコンピュータ等である。
【0009】
この携帯端末1は、顧客の操作により印影や印鑑の画像を撮影するデジタルカメラ等の画像撮影手段11、顧客を識別するための顧客識別情報や暗証番号を入力するための操作ボタン等の入力手段としての顧客識別情報入力手段12、金融機関に設置されたWEBサーバ等のWEBサイトとの間で撮影した印影や印鑑の画像データ、顧客識別情報および暗証番号を含み届印の問合せを依頼する情報やその問合せ結果等の情報の送受信を行う通信手段としてのWEBサイト通信手段13、届印の問合せ結果等の情報を表示するための液晶ディスプレイ等の表示手段14、携帯端末1全体を制御する制御プログラム(ソフトウェア)や情報を記憶するメモリ等の記憶部15、および記憶部15に記憶された制御プログラムに基づいて携帯端末1全体の動作を制御するCPU等の制御部16等を備えたものである。
【0010】
なお、本実施例では、端末装置を携帯端末として説明するが、それに限られるものでなく画像撮影手段11、顧客識別情報入力手段12、WEBサイト通信手段13、表示手段14、記憶部15、および制御部16等を備えるものであればデスクトップ型パーソナルコンピュータ等の据え置き型のコンピュータ等であってもよい。
2は画像受付手段としての問合せサービス処理手段であり、携帯端末1から届印の問合せ依頼を受付けるものである。この問合せサービス処理手段2は、携帯端末1から印鑑や印影の画像データとともに届印の問合せ依頼を受付ける受付処理、携帯端末1から送信された顧客識別情報および暗証番号により顧客が本人であること確認して問合せサービスを許可する本人確認処理、顧客の操作を誘導する画面を携帯端末1に表示させる処理、届印の問合せ結果を顧客が操作する携帯端末1へ通知する処理等を行うWEBサーバ等のコンピュータである。
【0011】
3は印影画像処理手段であり、問合せサービス処理手段2で受付けた印影の画像データを問合せサービス処理手段2から受信し、その印影の画像データをカラー画像データからモノクロ画像データへ変換する処理、変換したモノクロ画像データの縦横サイズを調整する処理、および調整した印影の画像データからゴミ等の画像データを除去する処理等を行うサーバ等のコンピュータである。
【0012】
4は照合手段であり、印影画像処理手段3で処理された印影の画像データを印影画像処理手段3から受信し、その印影の画像データおよび顧客識別情報に基づいてその印影の画像データと予め登録された届印の印影の画像データとを照合する処理を行うサーバ等のコンピュータである。
5は登録印影画像データベースであり、顧客を識別するための顧客識別情報に関連付けて該顧客の登録された届印の印影画像データを予め記憶する記憶手段としてのデータベースである。本実施例では、顧客識別情報を顧客毎に付与されている金融機関の口座番号とし、登録印影画像データベース5は、その口座番号に関連付けて顧客毎の届印の印影画像データを予め記憶するものとする。
【0013】
したがって、照合手段4は問合せサービス処理手段2から印影の画像データおよび顧客識別情報を受信し、その印影の画像データと受信した顧客識別情報に基づいて登録印影画像データベース5を検索して抽出した顧客の届印の画像データとを照合して一致するか否かを判定することができるようになっている。
6は有線または無線のインターネット等の通信回線であり、携帯端末1、問合せサービス処理手段2、印影画像処理手段3、照合手段4、および登録印影画像データベース5を通信可能に接続するものである。
【0014】
このように印鑑問合せシステムは、通信回線6を介して通信可能に接続された携帯端末1、問合せサービス処理手段2、印影画像処理手段3、照合手段4、および登録印影画像データベース5で構成され、携帯端末1は顧客が所持し、問合せサービス処理手段2、印影画像処理手段3、照合手段4、および登録印影画像データベース5は銀行等の金融機関に設置されるものとする。
【0015】
この印鑑問合せシステムにおいて、携帯端末1は顧客の操作により撮影した印影の画像データを入力された顧客識別情報とともに届印の問合せ依頼を問合せサービス処理手段2へ送信し、問合せサービス処理手段2は受信した印影の画像データと顧客識別情報を印影画像処理手段3および照合手段4へ送信し、その印影画像処理手段3および照合手段4により顧客識別情報に基づいて受信した印影の画像データと登録印影画像データベース5に登録された顧客の届印の印影データを照合し、受信した印影の画像データが登録された顧客の届印の印影データと一致するか否かを判定する。そして、問合せサービス処理手段2は、その判定結果を携帯端末1へ送信し、携帯端末1の表示手段に判定結果を表示させて撮影した印影が登録された届印の印影に一致するか否かを顧客に知らせる。このようにして印鑑問合せシステムは届印問合せ処理を行う。
【0016】
なお、問合せサービス処理手段2、印影画像処理手段3、照合手段4、および登録印影画像データベース5はそれぞれ別個の装置として構成してもよく、またひとつのサーバ等の装置として構成してもよい。
上述した構成の作用を図2の第1の実施例における印鑑問合せシステムの処理の流れを示す説明図の図中Sで表すステップにしたがって説明する。
【0017】
なお、以下に説明する各実施例における各手段の動作は、図示しないメモリや磁気ディスク等の記憶手段に格納されたプログラム(ソフトウェア)に基づいて図示しない中央処理装置等の制御手段により制御される。
S1:携帯端末1の画像撮影手段11は顧客の操作により白紙等の紙面21に押印された印鑑の印影22を撮影する。また、携帯端末1の顧客識別情報入力手段12は顧客の操作により顧客識別情報としての口座番号および暗証番号の入力を受付ける。
【0018】
携帯端末1の制御部16は、撮影した印影22の画像データを印影画像233として記憶部15に記憶させ、また入力された口座番号および暗証番号を口座番号231および暗証暗号232として記憶部15に記憶させる。
S2:口座番号231、暗証暗号232、および印影画像233を記憶部15に記憶させると制御部16のWEBサイト通信手段13は、記憶部15に記憶した口座番号231、暗証暗号232、および印影画像233とともにその印影画像233が届印であるか否かの問合せを依頼する情報23を問合せサービス処理手段2へ送信する。
【0019】
問合せサービス処理手段2は、受信した口座番号231に基づいて図示しない顧客情報データベースを検索して登録された暗証番号を抽出し、その暗証番号と受信した暗証番号232を照合して一致することを確認する本人確認を行う。その結果、暗証番号が一致し、顧客が本人であることが確認できると問合せサービス処理手段2は、受信した印影画像233を印影画像処理手段3へ送信し、印影画像処理手段3は受信した印影画像233をカラー画像データからモノクロ画像データへ変換する処理、印影画像233の縦横サイズを調整する処理、および印影画像233からゴミ等の画像データを除去する処理を行い、照合するための印影画像234を生成する。
【0020】
S3:印影画像234を生成すると印影画像処理手段3は、その印影画像234を照合手段4へ送信する。このとき照合手段4は、問合せサービス処理手段2から口座番号231を受信するものとする。なお、口座番号231は印影画像処理手段3を介して問合せサービス処理手段2から受信するようにしてもよい。
S4:照合手段4は、口座番号231に基づいて登録印影画像データベース5を検索して顧客の登録印影画像51を抽出し、その登録印影画像51と生成した照合用の印影画像234と照合し、一致するか否かを判定する。なお、登録印影画像51と照合用の印影画像234とを照合する処理は公知の照合処理を利用して照合するものとし、一致度合いが所定の閾値を超える場合、照合用の印影画像234は登録印影画像51に一致すると判定するものとする。
【0021】
S5:照合手段4は、判定した結果を判定結果通知24として問合せサービス処理手段2へ送信する。
S6:問合せサービス処理手段2は、受信した判定結果通知24に基づいて判定結果である撮影した印影22が登録された届印の印影に一致、または不一致であった旨を携帯端末1へ送信する。
【0022】
携帯端末1は、受信した判定結果を表示手段14に表示して顧客にその旨を知らせる。
このように顧客が所持する携帯端末で撮影した印影画像と金融機関の登録印影画像データベースに登録された届印の印影画像とを照合し、その照合結果だけを携帯端末に表示させて顧客へ知らせ、登録されている顧客の届印の印影画像を携帯端末に表示することがないので顧客の顧客識別情報および暗証番号が第三者に漏洩した場合であっても、該顧客の届印の偽造を防止することができるようになる。
【0023】
また、顧客の手元に印影がないと届印の問合せができないので安全性を確保することができる。
さらに、登録されている顧客の届印の印影画像を携帯端末に表示することがないので解像度の低い表示手段を備えた携帯端末でも本印鑑問合せシステムのサービスを受けることができるようになる。
【0024】
以上説明したように、第1の実施例では、顧客が所持する携帯端末で撮影した印影画像と金融機関の登録印影画像データベースに登録された届印の印影画像とを照合し、その照合結果だけを携帯端末に表示させて顧客へ知らせるようにしたことにより、顧客の顧客識別情報および暗証番号が第三者に漏洩した場合であっても、該顧客の届印の偽造を防止することができ安全性を確保することができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0025】
第2の実施例の構成は、第1の実施例の構成の印影画像処理手段を印鑑画像処理手段に替えたものである。その第2の実施例の構成を図3の第2の実施例における印鑑問合せシステムの構成を示すブロック図に基づいて説明する。なお、上述した第1の実施例と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
図3において、7は印鑑画像処理手段であり、問合せサービス処理手段2から受信した印鑑の押印面の画像データ(以下、「印鑑の画像データ」という。)の左右を反転する処理、反転した画像データから印鑑部分を切り出す処理、および切り出した印鑑の画像データのカラー信号成分である赤色信号成分(R信号成分)、緑色信号成分(G信号成分)、青色信号成分(B信号成分)から赤色信号成分(R信号成分)のみを抽出し、その印鑑の画像データから除去する処理等を行うサーバ等のコンピュータである。
【0026】
ここで、赤色信号成分(R信号成分)のみを抽出して印鑑の画像データから除去するのは、ドロップアウトの効果により印鑑の画像から朱肉が付着した部分を除去し、印鑑の刻印部分を残した画像にするためであり、このようにすることで登録された届印の印影画像データとの照合の精度を向上させることができる。
なお、印鑑画像処理手段7は必要に応じて印鑑部分を切り出した印鑑の画像データの縦横サイズを調整およびゴミ等の画像データを除去する処理等を行うものとする。
【0027】
このように印鑑問合せシステムは、通信回線6を介して通信可能に接続された携帯端末1、問合せサービス処理手段2、印鑑画像処理手段7、照合手段4、および登録印影画像データベース5で構成され、携帯端末1は顧客が所持し、問合せサービス処理手段2、印鑑画像処理手段7、照合手段4、および登録印影画像データベース5は銀行等の金融機関に設置されるものとする。
【0028】
この印鑑問合せシステムにおいて、携帯端末1は顧客の操作により撮影した印鑑の画像データを入力された顧客識別情報とともに届印の問合せ依頼を問合せサービス処理手段2へ送信し、問合せサービス処理手段2は受信した印鑑の画像データと顧客識別情報を印鑑画像処理手段7および照合手段4へ送信し、その印鑑画像処理手段7および照合手段4により顧客識別情報に基づいて受信した印鑑の画像データと登録印影画像データベース5に登録された顧客の届印の印影データを照合し、受信した印鑑の画像データが登録された顧客の届印の印影データと一致するか否かを判定する。そして、問合せサービス処理手段2は、その判定結果を携帯端末1へ送信し、携帯端末1の表示手段に判定結果を表示させて撮影した印鑑が登録された届印の印影に一致するか否かを顧客に知らせる。このようにして印鑑問合せシステムは届印問合せ処理を行う。
【0029】
なお、問合せサービス処理手段2、印鑑画像処理手段7、照合手段4、および登録印影画像データベース5はそれぞれ別個の装置として構成してもよく、またひとつのサーバ等の装置として構成してもよいのは第1の実施例と同様である。
上述した構成の作用を図4の第2の実施例における印鑑問合せシステムの処理の流れを示す説明図の図中Sで表すステップにしたがって説明する。
【0030】
S11:携帯端末1の画像撮影手段11は顧客の操作により印鑑31の押印面(刻印がされている面)を撮影する。また、携帯端末1の顧客識別情報入力手段12は顧客の操作により顧客識別情報としての口座番号および暗証番号の入力を受付ける。
携帯端末1の制御部16は、撮影した印鑑31の押印面の画像データを印鑑画像236として記憶部15に記憶させ、また入力された口座番号および暗証番号を口座番号231および暗証暗号232として記憶部15に記憶させる。
【0031】
S12:口座番号231、暗証暗号232、および印鑑画像236を記憶部15に記憶させると制御部16のWEBサイト通信手段13は、記憶部15に記憶した口座番号231、暗証暗号232、および印鑑画像236とともにその印鑑画像236が届印であるか否かの問合せを依頼する情報23を問合せサービス処理手段2へ送信する。
問合せサービス処理手段2は、受信した口座番号231に基づいて図示しない顧客情報データベースを検索して登録された暗証番号を抽出し、その暗証番号と受信した暗証番号232を照合して一致することを確認する本人確認を行う。その結果、暗証番号が一致し、顧客が本人であることが確認できると問合せサービス処理手段2は、受信した印鑑画像236を印鑑画像処理手段7へ送信し、印鑑画像処理手段7は受信した印鑑画像236の左右方向の中心線を対称として左右を反転する処理、左右を反転した印鑑画像から印鑑部分を切り出す処理を行い、印鑑画像237を生成する。
【0032】
S13:さらに、印鑑画像処理手段7は生成した印鑑画像237からカラー信号成分である赤色信号成分(R信号成分)、緑色信号成分(G信号成分)、青色信号成分(B信号成分)から赤色信号成分(R信号成分)のみを抽出して除去する処理を行い、照合するための印鑑画像238を生成する。
印鑑画像238を生成すると印鑑画像処理手段7は、その印鑑画像238を照合手段4へ送信する。このとき照合手段4は、問合せサービス処理手段2から口座番号231を受信するものとする。なお、口座番号231は印鑑画像処理手段7を介して問合せサービス処理手段2から受信するようにしてもよい。
【0033】
S14:照合手段4は、口座番号231に基づいて登録印影画像データベース5を検索して顧客の登録印影画像51を抽出し、その登録印影画像51と生成した照合用の印鑑画像238とを照合し、一致するか否かを判定する。なお、登録印影画像51と照合用の印鑑画像238とを照合する処理は公知の照合処理を利用して照合するものとし、一致度合いが所定の閾値を超える場合、照合用の印鑑画像238は登録印影画像51に一致すると判定するものとする。
【0034】
S15:照合手段4は、判定した結果を判定結果通知24として問合せサービス処理手段2へ送信する。
S16:問合せサービス処理手段2は、受信した判定結果通知24に基づいて判定結果である撮影した印鑑31が登録された届印の印影に一致、または不一致であった旨を携帯端末1へ送信する。
【0035】
携帯端末1は、受信した判定結果を表示手段14に表示して顧客にその旨を知らせる。
このように顧客が所持する携帯端末で撮影した印鑑画像と金融機関の登録印影画像データベースに登録された届印の印影画像とを照合し、その照合結果だけを携帯端末に表示させて顧客へ知らせ、登録されている顧客の届印の印影画像を携帯端末に表示することがないので顧客の顧客識別情報および暗証番号が第三者に漏洩した場合であっても、該顧客の届印の偽造を防止することができるようになる。
【0036】
また、顧客の手元に印鑑がないと届印の問合せができないので安全性を確保することができる。
さらに、登録されている顧客の届印の印影画像を携帯端末に表示することがないので解像度の低い表示手段を備えた携帯端末でも本印鑑問合せシステムのサービスを受けることができるようになる。
【0037】
また、印鑑の画像を使用するので印影の画像を用意する必要がなくなる。
以上説明したように、第2の実施例では、第1の実施例の効果に加え、印鑑の画像を撮影するようにしたことにより、印影の画像を用意する必要がなくなるという効果が得られる。
【実施例3】
【0038】
第3の実施例の構成は、印鑑画像処理手段7が行う携帯端末1で撮影した印鑑の画像データの処理が異なるものであり、その他の構成は第2の実施例の構成と同様であるので、同一の符号を付してその説明を省略する。
第3の実施例の画像処理手段7を図3および図5に基づいて説明する。
図3において、7は印鑑画像処理手段であり、問合せサービス処理手段2から受信した印鑑の画像データの印鑑以外の背景を除去する処理、背景を除去した画像データの左右を反転する処理等を行うサーバ等のコンピュータである。
【0039】
ここで、印鑑の画像データの印鑑以外の背景を除去する処理を図5の第3の実施例における印鑑画像抽出処理の説明図に基づいて説明する。
図5において、41、42、および43は携帯端末1の画像撮影手段11で撮影した印鑑の画像データである印鑑画像(図4における印鑑画像236)をRGB信号成分に分割した印鑑画像であり、印鑑画像41は赤色信号成分(R信号成分)の出力、印鑑画像42は緑色信号成分(G信号成分)の出力、印鑑画像43は青色信号成分(B信号成分)の出力を示している。
【0040】
この印鑑画像41、印鑑画像42、および印鑑画像43は図5に示すように印鑑および撮影者の手と背景で構成されている。なお、説明の都合上、印鑑画像の背景は灰色であるものとする。
図5の印鑑画像41に示すように、印鑑の朱肉が付着する刻印の周辺部分はドロップアウトの効果により赤色信号成分の出力は高くなり、明度が高くなる。また、撮影者の手の部分は印鑑の朱肉が付着する刻印の周辺部分より赤色信号成分の出力は低くなるがその他の灰色の背景の部分より赤色信号成分の出力は高くなる。
【0041】
一方、印鑑の朱肉が付着する刻印の周辺部分の緑色信号成分の出力および青色信号成分の出力は、緑色および青色は赤色の補色となるため印鑑画像42および印鑑画像43に示すように赤色信号成分の出力より低くなる。なお、撮影者の手の部分および背景の部分は、無彩色に近いので赤色信号成分とほぼ同レベルの出力となる。
このような特徴を利用して以下に説明する処理を行い、撮影者の手の部分および背景の部分を除去し、印鑑の朱肉が付着する刻印の周辺部分を抽出した印鑑画像を生成する。
【0042】
赤色信号成分の出力値(R)から、緑色信号成分の出力値(G)と青色信号成分の出力値(B)とを加算して2で除算した出力値を減算した出力値(R−((G+B)/2))の印鑑画像を生成する。
印鑑の朱肉が付着する刻印の周辺部分では、赤色信号成分の出力値(R)は緑色信号成分の出力値(G)および青色信号成分の出力値(B)より大きな出力値(R>>G,B)となり、また撮影者の手の部分および背景では、赤色信号成分の出力値(R)、緑色信号成分の出力値(G)、および青色信号成分の出力値(B)はほぼ同レベルの出力値(R≒G≒B)となる。
【0043】
したがって、赤色信号成分の出力値(R)から、緑色信号成分の出力値(G)と青色信号成分の出力値(B)とを加算して2で除算した出力値を減算した出力値(R−((G+B)/2))は、印鑑の朱肉が付着する刻印の周辺部分で大きくなり、また撮影者の手の部分および背景で小さく(ほぼ“0”に)なる。
このようにして図5に示すように印鑑の朱肉が付着する刻印の周辺部分で出力値が大きくなった印鑑画像44を生成する。
【0044】
さらに、生成した印鑑画像44の左右方向の中心線を対称として左右を反転し、印鑑画像44を生成する。
印鑑画像処理手段7は、上述した印鑑の画像データの印鑑以外の背景を除去する処理を行い登録された届印の印影画像データと照合するための印鑑画像44を生成する。
上述した構成の作用を図4の印鑑問合せシステムの処理の流れを示す説明図を利用し、図中Sで表すステップにしたがって説明する。
【0045】
S11:第2の実施例と同様なのでその説明を省略する。
S12:口座番号231、暗証暗号232、および印鑑画像236を記憶部15に記憶させると制御部16のWEBサイト通信手段13は、記憶部15に記憶した口座番号231、暗証暗号232、および印鑑画像236とともにその印鑑画像236が届印であるか否かの問合せを依頼する情報23を問合せサービス処理手段2へ送信する。
【0046】
問合せサービス処理手段2は、受信した口座番号231に基づいて図示しない顧客情報データベースを検索して登録された暗証番号を抽出し、その暗証番号と受信した暗証番号232を照合して一致することを確認する本人確認を行う。その結果、暗証番号が一致し、顧客が本人であることが確認できると問合せサービス処理手段2は、受信した印鑑画像236を印鑑画像処理手段7へ送信する。
【0047】
S13:印鑑画像処理手段7は受信した印鑑画像236の赤色信号成分の出力値(R)から、緑色信号成分の出力値(G)と青色信号成分の出力値(B)とを加算して2で除算した出力値を減算した出力値(R−((G+B)/2))の印鑑画像238を生成する。
印鑑画像238を生成すると印鑑画像処理手段7は、その印鑑画像238を照合手段4へ送信する。このとき照合手段4は、問合せサービス処理手段2から口座番号231を受信するものとする。なお、口座番号231は印鑑画像処理手段7を介して問合せサービス処理手段2から受信するようにしてもよい。
【0048】
S14〜S16:第2の実施例と同様なのでその説明を省略する。
以上説明したように、第3の実施例では、第2の実施例の効果に加え、携帯端末で撮影した印鑑の画像から背景の部分を除去するようにしたことにより、印鑑照合の精度を向上させることができるという効果が得られる。
【実施例4】
【0049】
第4の実施例は、第1の実施例、第2の実施例、および第3の実施例に対して携帯端末で撮影した印影または印鑑の画像に不備があった場合や登録された届印との照合が不一致であった場合、顧客へ再度撮影した画像の送信を要求する機能や顧客の利用を制限する機能を追加したものである。
第4の実施例の構成は、第1から第3の実施例の構成と同様なのでその説明を省略し、以下に第1の実施例の構成に上記した機能を追加した実施例を説明する。
【0050】
図6は第4の実施例における印鑑問合せシステムの処理の流れを示す説明図であり、図中Sで表すステップにしたがって説明する。
S21〜S24:図6におけるS1〜S4と同様の処理なのでその説明を省略する。
S251:照合手段4は、登録印影画像51と照合用の印影画像234とを照合した結果、一致すると判定するとその結果を判定結果通知24として問合せサービス処理手段2へ送信して処理をS26へ移行し、一致しないと判定すると処理をS252へ移行する。
【0051】
S252:一致しないと判定した照合手段4は、公知の技術を利用して照合用の印影画像234にかすれ、欠損、またはピンボケ等があり、画像の品質(画質)が低いものか否か、すなわち印影画像234が照合に必要な充分な画質を確保できているか否かを判定する。その結果、印影画像234の充分な画質が確保できていないものと判定すると処理をS253へ移行し、充分な画質が確保できていると判定すると処理をS254へ移行する。
【0052】
S253:印影画像234の充分な画質が確保できていないと判定した照合手段4は、再度撮影した印影画像の送信を要求する旨の通知を判定結果通知24として問合せサービス処理手段2へ送信して処理をS26へ移行する。
S254:印影画像234の充分な画質が確保できていると判定した照合手段4は、問合せ回数に1を加算し、その問合せ回数が閾値としての制限回数を超えたか否かを判定する。この問合せ回数は照合手段4の図示しない記憶手段に口座番号231で識別される顧客毎に記憶するものとし、また制限回数も前記記憶手段に予め記憶されているものとする。
【0053】
判定の結果、照合手段4は、制限回数を超えていると判定すると処理をS255へ移行し、制限回数を超えていないと判定すると処理をS256へ移行する。
S255:制限回数を超えていると判定した照合手段4は、制限回数を超えたことにより、届印問合せサービスの提供を中止する旨の通知を判定結果通知24として問合せサービス処理手段2へ送信して処理をS26へ移行する。
【0054】
S256:制限回数を超えていないと判定した照合手段4は、残りの届印問合せサービスの利用回数の通知を判定結果通知24として問合せサービス処理手段2へ送信して処理をS26へ移行する。
S26:問合せサービス処理手段2は、受信した判定結果通知24に基づいて撮影した印影22が登録された届印の印影に一致した旨、再度撮影した印影画像の送信を要求する旨、制限回数を超えたことにより届印問合せサービスの提供を中止する旨、または残りの届印問合せサービスの利用回数を示す通知を携帯端末1へ送信する。
【0055】
携帯端末1は受信した通知に基づいて撮影した印影22が登録された届印の印影に一致した旨、再度撮影した印影画像の送信を要求する旨、制限回数を超えたことにより届印問合せサービスの提供を中止する旨、または残りの届印問合せサービスの利用回数を表示手段14に表示して顧客にその旨を知らせる。
以上説明したように、第4の実施例では、第1の実施例の効果、第2の実施例の効果、または第3の実施例の効果に加え、携帯端末で撮影した印影または印鑑の画像の充分な画質が確保できていない場合、再度撮影した印影または印鑑の画像を送信することを要求するようにしたことにより、顧客の利便性を向上させることができるという効果が得られる。
【0056】
また、印鑑問合せシステムにおける照合不一致の制限回数を設け、その制限回数を超えて照合不一致が発生した顧客の利用を中止するようにしたことにより、顧客の悪用を防止することができるという効果が得られる。
なお、第1の実施例から第4の実施例で顧客の本人確認を行なうために暗証番号を使用するようにしたが、携帯端末で撮影した指紋、掌静脈パターン等の生体情報を使用することにより安全性をさらに高めることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1の実施例における印鑑問合せシステムの構成を示すブロック図
【図2】第1の実施例における印鑑問合せシステムの処理の流れを示す説明図
【図3】第2の実施例における印鑑問合せシステムの構成を示すブロック図
【図4】第2の実施例における印鑑問合せシステムの処理の流れを示す説明図
【図5】第3の実施例における印鑑画像抽出処理の説明図
【図6】第4の実施例における印鑑問合せシステムの処理の流れを示す説明図
【符号の説明】
【0058】
1 携帯端末
2 問合せサービス処理手段
3 印影画像処理手段
4 照合手段
5 登録印影画像データベース
6 通信回線
7 印鑑画像処理手段
11 画像撮影手段
12 顧客識別情報入力手段
13 WEBサイト通信手段
14 表示手段
15 記憶部
16 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客の操作により印鑑画像を撮影する画像撮影手段と、
顧客を識別する顧客識別情報の入力を受付ける入力手段と、
前記画像撮影手段で撮影した印鑑画像とともに前記入力手段で入力された顧客識別情報を送信する通信手段とを備えた端末装置と、
前記顧客識別情報に関連付けて顧客毎の届印の印影画像を予め記憶する登録印影画像データベースと、
前記画像撮影手段で撮影した印鑑画像を顧客識別情報とともに前記端末装置から受信する画像受付手段と、
前記画像受付手段が受信した印鑑画像を、受信した顧客識別情報に基づいて前記登録印影画像データベースを検索して抽出した印影画像と、照合する照合手段とを設け、
前記照合手段が、前記画像撮影手段で撮影した印鑑画像と登録された届印の印影画像との照合結果を前記端末装置へ送信し、その照合結果を該端末装置の表示手段に表示させるようにしたことを特徴とする印鑑問合せシステム。
【請求項2】
請求項1の印鑑問合せシステムにおいて、
前記印鑑画像を、印影の画像としたことを特徴とする印鑑問合せシステム。
【請求項3】
請求項1の印鑑問合せシステムにおいて、
前記印鑑画像を、印鑑の押印面の画像としたことを特徴とする印鑑問合せシステム。
【請求項4】
請求項3の印鑑問合せシステムにおいて、
前記画像受付手段が受信した印鑑画像から照合用の印鑑画像を生成する画像処理手段を設け、
前記画像処理手段が、前記印鑑画像から赤色信号成分を除去した照合用の印鑑画像を生成し、前記照合手段が該照合用の印鑑画像を前記登録印影画像データベースから抽出した印影画像と照合するようにしたことを特徴とする印鑑問合せシステム。
【請求項5】
請求項3の印鑑問合せシステムにおいて、
前記画像受付手段が受信した印鑑画像から照合用の印鑑画像を生成する画像処理手段を設け、
前記画像処理手段が、前記印鑑画像の緑色信号成分の出力値と青色信号成分の出力値の加算値を2で除算した出力値を前記印鑑画像の赤色信号成分の出力値から減算した照合用の印鑑画像を生成し、前記照合手段が該照合用の印鑑画像を前記登録印影画像データベースから抽出した印影画像と照合するようにしたことを特徴とする印鑑問合せシステム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項の印鑑問合せシステムにおいて、
前記照合手段が、前記端末装置から受信した印鑑画像が照合に必要な画質を確保できていないことを検知したとき、前記端末装置へ再度撮影した印鑑画像を要求する旨の通知を送信し、その旨を表示手段に表示させるようにしたことを特徴とする印鑑問合せシステム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項の印鑑問合せシステムにおいて、
前記照合手段が、照合に失敗した回数を顧客毎に計数し、その回数が閾値を超えたことを検知したとき、該顧客の前記端末装置へ届印問合せサービスの提供を中止する旨の通知を送信し、その旨を表示手段に表示させるようにしたことを特徴とする印鑑問合せシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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