説明

即席コンソメスープ調味料

【課 題】玉葱の好ましい風味と煮込み感をコンソメスープに付与することのできる、液状又は固状のコンソメスープ調味料を提供すること。
【解決手段】摩り下ろした生の玉葱と、動物エキス及び/又は酵母エキス液を含有することを特徴とする即席コンソメスープ調味料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即席コンソメスープの原料として用いる調味料に関し、詳しくは動物エキスや酵母エキス特有のエキス臭や加熱臭が殆どなく、生の玉葱の好ましい風味と煮込み感をコンソメスープに付与することのできる、液状又は固状の即席コンソメスープ調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
コンソメスープは、高級料理店でも一般家庭でも広く食されている洋風の透明なスープである。一般的なコンソメスープの製法としては、まず動物原料(肉、骨等)と植物原料(生野菜、スパイス等)に水を加えて火にかけ、2〜時間微沸騰状態においてブイヨンを抽出する。ブイヨンは、西洋料理においてスープ、ソース類又は各種料理のだし汁として使用されている。このブイヨンに、さらに動物原料(肉、骨等)と植物原料(生野菜、スパイス等)を加えて火にかけ、2〜数時間微沸騰状態において灰汁を丁寧に取り除きながらブイヨンを抽出したものを、濾布等で濾すことによりコンソメスープ作られる。このコンソメスープを冷却後、卵白を加え加熱し狭雑物又は灰汁を凝固する卵白に吸着させ、濾布等で濾過することにより、より清澄なコンソメスープを得ることができる。
【0003】
上記の方法により得られたコンソメスープは、原料中に含まれる、渋み、にがみ、えぐみ又は不快臭等がなく、動物原料や植物原料に由来する複雑なフレーバーと、じっくり煮込んだことで生じるまろやかなコク、いわゆる煮込み感を有する洋風の清澄で美味なスープである。しかし、この方法ではコンソメスープを作るのに多大な時間と手間を要し、かつ大量の廃棄物が生じるという欠点を有しており、即席コンソメスープとして大量生産には不適当な方法である。
【0004】
また、大量生産が必要な場合においては、動物エキス、植物エキス又は酵母エキス等の天然エキスに食塩や糖類等の調味料をブレンドした市販のコンソメスープの素を用いることが多いが、この場合、抽出の手間はかからないものの、エキス特有の不快な臭いを抑えるために加えられる不自然な香辛料や香料の香りが強く、かつ煮込み感が弱いため、上記コンソメスープに比べると品質が劣るという欠点を有している。
【0005】
上記したような欠点を改善するために、これまでにも様々な方法が工夫されており、例えば動物原料や植物原料を加熱して、スープにまろやかな風味を付与するという方法ある。特に玉葱においては、生のままでは刺激臭や辛味が強いため、玉葱を90〜100℃で5〜120分間蒸煮することによって玉葱に好ましい煮込み風味と素材感を付与できるという方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法では、玉葱は蒸煮により、甘みが強くなると同時に玉葱独特の加熱臭が発生し、すっきりした味を出したいコンソメスープには適切ではない。
また、動物エキスと植物エキスを混合して80〜100℃で15分以上加熱するブイヨンの製造法が知られている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この方法では、スープにまろやかさを付与する事はできるが、加熱臭が生じたり、風味がまとまりすぎて単調になってしまう等の欠点を有しており、コンソメスープの複雑な風味を完全に再現させるには至っていない。
【特許文献1】特開2004−81096号公報
【特許文献2】特開平2−245169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、動物エキス、植物エキス又は酵母エキス特有エキス臭や加熱臭を殆ど有することなく、玉葱の好ましい風味と煮込み感を有するコンソメスープのもととなる液状又は固状のコンソメスープ調味料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題の解決につき鋭意工夫を重ねた結果、動物エキス、酵母エキス、トマトエキス及び摩り下ろした生の玉葱を特定の比率で組み合わせることにより、上記課題を解決できることを見出した。この知見に基づきさらに研究を進め本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1) 摩り下ろした生の玉葱と、動物エキス及び/又は酵母エキス液とを含有することを特徴とする即席コンソメスープ調味料、
(2) 摩り下ろした生の玉葱の粒子径が5mm以下であることを特徴とする前記(1)に記載の即席コンソメスープ調味料
(3) 動物エキス及び/又は酵母エキスの固形分と摩り下ろした生の玉葱の固形分との質量比率が25:1〜0.5:1の範囲であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の即席コンソメスープ調味料、
(4) さらにトマトエキスが配合されていることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の即席コンソメスープ調味料、
(5) 動物エキス及び/又は酵母エキス及びトマトエキスの固形分と摩り下ろした生の玉葱の固形分との質量比率が30:1〜1:1の範囲である前記(4)に記載の即席コンソメスープ調味料、及び
(6) 動物エキス及び/又は酵母エキスの固形分とトマトエキスの固形分との質量比率が10:1〜1:1の範囲であることを特徴とする前記(5)に記載の即席コンソメスープ調味料、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、動物エキス、植物エキス又は酵母エキス特有のエキス臭や加熱臭が殆どなく、生の玉葱が有する好ましい風味を有する液状又は固状のコンソメスープ調味料を得る事ができる。
本発明のコンソメスープ調味料を用いることにより、風味品質の高いコンソメスープを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の最良の形態を説明する。
本発明は、摩り下ろした生の玉葱を含有することを特徴とする即席コンソメスープ調味料に関する。
【0011】
本発明の即席コンソメスープ調味料に用いる動物エキスの原料としては、鶏、鴨、牛又は豚等の動物の肉又は骨等から抽出したエキスが挙げられ、単独の原料から抽出したものでも、あるいは2種以上の原料から抽出したものでもよく、市販されている動物エキスを使用してもよい。公知の常法により製造されうる。また、酵母エキスとしてはビール酵母、パン酵母又はトルラ酵母等を原料として抽出されるエキスが挙げられる。また、市販されている酵母エキス、例えばVEGEMITE、アロマイルド(株式会社興人)、ミーストAP−530、ミーストB444(アサヒフードアンドヘルスケア)等を使用してもよい。公知の常法により製造されうる。さらに、動物エキスと酵母エキスの使用割合は任意であり、使用目的(味、風味等)から1種のみを用いるか、2種以上を適当な割合で混合するかを決定すれば良い。
【0012】
本発明に用いる玉葱の品種は、例えば、イエローダンバース、イエローグローブダンバース、スイートスパニッシュ、イエローバーミューダ、クリスタルホワイトワックス、イタリアンレッド又はアーリーグラノが挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。また、これらの品種に特に制限されるものでは無く使用することができる。
【0013】
摩り下ろした玉葱の粒子(以下、玉葱粒子と略記する。)の形状は、玉葱を摩り下ろすことにより生じる形状であれば特に制限されず、例えば、円形、楕円形、方形、繊維状などあらゆる形状が含まれる。また、玉葱粒子の大きさは、粒子の一番長い部分の長さを粒子径とした場合、その粒子径は特に制限されないが、約5mm以下が好ましく、約3mm以下がより好ましい。前記粒子径の下限は約0.1mm程度が好ましい。玉葱の粒子径が5mmよりも大きいと、コンソメスープを調製した時に玉葱粒子の沈殿が目立ち、清澄なコンソメスープを作ることが困難である。また、コンソメスープ中に玉葱の繊維が残存し、舌にザラツキ感が残りコンソメスープの舌触りが悪く、食感を損なうことになる。また0.1mm以下まで摩り下ろすのは、例えばマスコロイダーの様な特殊な装置が必要となり実際的ではない。
また、摩り下ろした玉葱を、例えば実体顕微鏡で観察したときに、全玉葱粒子数に対する約0.5〜2mmの粒子数の割合が約70〜80%の範囲内にあるのがよい。
玉葱粒子の測定は、例えば実体顕微鏡又はメッシュ法等により行うことができる。
【0014】
玉葱を摩り下ろす方法としては、特に制限はなく、摩り下ろした玉葱の粒子径を5mm以下に調製できるものであればいずれの器具も好ましく用いることができる。この様な器具としては、おろし金、チョッパー、ミキサー又はカッターミル等の公知の摩砕機等を挙げることができる。
また、本発明の摩り下ろした玉葱には、市販されている、摩り下ろした玉葱を使用してもよい。
【0015】
動物エキス及び/又は酵母エキスの固形分と摩り下ろした生の玉葱の固形分との配合比(質量比率)は25:1〜0.5:1の範囲が好ましい。生の玉葱には、ジアリルジサルファイド等の辛味成分が含まれるため、摩り下ろした生の玉葱が上記配合量を超えると刺激臭や辛味が強く発現して好ましくなく、上記配合量未満では、十分な玉葱の風味をコンソメスープに付与する事ができない。
上記固形分はいずれの場合も、原料を105℃常圧乾燥減量法にしたがって、水分を除去して乾燥した後の固形分をいう。以下において、固形分というときは同じである。
【0016】
本発明に用いるトマトエキスは、トマトを搾汁して製造されるエキスを使用してもよく、市販されているトマトエキスを使用してもよい。トマトには、グルタミン酸等のアミノ酸又はグルコース若しくはフラクトース等の糖類が多く含まれ、これらの成分が加熱により動物エキスや酵母エキス由来の成分と反応することで、スープに好ましいフレーバーや煮込み感を発現させる。さらにトマトには、例えばクエン酸等の有機酸も含まれ、この有機酸によりスープに適度な酸味が付与され、スープの風味が単調になるのを防ぐ事ができる。
【0017】
動物エキス及び/又は酵母エキス及びトマトエキスの固形分と摩り下ろした生の玉葱の固形分との質量比率は30:1〜1:1、好ましくは20:1〜5:1である。
【0018】
トマトエキスの配合量としては、動物エキス及び/又は酵母エキスの固形分と、トマトエキスの固形分との質量比率が10:1〜1:1、好ましくは5:1〜1:1とするのがよい。トマトエキスの割合が、上記比率未満であるとスープの風味が単調となり、上記比率の範囲を超えるとトマトの風味が強くなりすぎ好ましくない。
【0019】
本発明の即席コンソメスープ調味料の製造方法は、例えば動物エキス及び/又は酵母エキスの固形分が約30〜40質量%となるよう所望により動物エキス及び/又は酵母エキスに加水して調製した後、加熱処理を行う。この時の加熱処理は、加圧下約100〜130℃で約10〜90分間、好ましくは加圧下約100〜130℃で約30〜60分間で行われるのがよい。摩り下ろした玉葱は、前記加熱処理した動物エキス及び/又は酵母エキスを約0〜室温にまで冷却した後に加えるのがよい。摩り下ろした玉葱を動物エキス及び/又は酵母エキスに加え均一に混合した後、所望により調味料、例えば食塩、糖類又は香辛料等で味を調えることにより、本発明の即席コンソメスープ調味料を得ることができる。
【0020】
本発明の即席コンソメスープ調味料にトマトエキスを配合する場合は、動物エキス及び/又は酵母エキスの加熱処理前に、上記配合比率となるように動物エキス及び/又は酵母エキスにトマトエキスを加え混合するのがよい。
動物エキス及び/又は酵母エキス、あるいは前記エキスとトマトエキスの総固形分が40質量%を超える場合には、水を加えて該混合液の固形分を40質量%以下、好ましくは30〜40質量%に調製するのがよい。
【0021】
本発明の即席コンソメスープ調味料は液状でも固状(ペースト状、ペレット状、粉末状を含む)でもよく、好ましくは粉末乾燥品とすることもできる。固状とする場合は、上記で製造された液状の即席コンソメスープ調味料をそのまま、あるいは適宜、澱粉やデキストリン等のバインダーを加え、水分が10%以下、さらに好ましくは5%以下になるように乾燥すればよい。粉末乾燥品は、前記乾燥により調製された乾燥塊を粉砕すればよい。
【0022】
乾燥方法は、凍結乾燥、ドラム乾燥、スプレードライ又は減圧乾燥等、特に制限されないが、乾燥時にロースト感が付着しないような条件を選択するのがよい。選択される条件としては、例えば品温が80℃以下で乾燥させること等が挙げられる。
粉砕はピンミル等の公知の粉砕機を用いて行うことができる。
【0023】
このようにして得られた即席コンソメスープ調味料は、例えば液状の即席コンソメスープ調味料であれば熱水で約2〜5倍に希釈することにより、粉末乾燥品であれば、熱水を注水することにより、生の玉葱が有する好ましい風味と、強い煮込み感を有するコンソメスープが得られる。
【0024】
以下に好適な実施例を挙げて、本発明を詳細に説明する。なお、本発明の技術的範囲はこれら実施例によって制限されるものではない。
【実施例1】
【0025】
市販のチキンエキス(チキンエキスRT−1、丸善食品工業(株)製;固形分濃度50%)186gに市販のトマトエキス(トマトエキスST−60、日本デルモンテ(株)製;固形分濃度60%)80gを混合し、さらに市販の水134gを加えて得られる混合液の固形分を35.3%に調整した。該混合液をオートクレーブ(サクラ精機(株)製、ASV−2402)を用いて加圧下、120℃で30分間加熱処理を行った。加熱処理を行った該混合液を室温まで冷却後、市販の摩り下ろした生の玉葱(オニオンミンチ006、淡路農産食品(株)製;固形分濃度10%)80gを前記混合液に加え、軽く攪拌をして本発明による即席コンソメスープ調味料を得た。
【0026】
〔比較例1〕
摩り下ろした生の玉葱を添加しない以外は実施例1と全く同様に行った。
〔比較例2〕
摩り下ろした生の玉葱の代わりに、摩り下ろした生の玉葱を予めオートクレーブで120℃で30分間加熱したものを用いた以外は実施例1と全く同様に行った。
〔比較例3〕
チキンエキス、トマトエキス及び水の混合液を加熱処理し、混合液を室温まで冷却後、市販の摩り下ろした生の玉葱を混合液に加える代わりに、チキンエキス、トマトエキス及び水の混合液を加熱処理する際に、予め摩り下ろした生の玉葱を加えておく以外は実施例1と全く同様に行った。
【0027】
〔摩り下ろした生の玉葱粒子径の測定〕
市販の摩り下ろした生の玉葱10gに水200gを加えて撹拌し、0.5mm〜4.75mmのメッシュを通し、玉葱粒子径を測定した。
その結果を表1に示す。玉葱粒子径は全て5mm以下であった。また全玉葱粒子に対する粒子径0.5〜2.0mmの玉葱粒子の存在割合は、74質量%であった。
【0028】
【表1】

【0029】
〔即席コンソメスープ調味料の評価〕
(1)コンソメスープの作製
実施例1及び比較例1〜3により得た即席コンソメスープ調味料にグラニュー糖、食塩、香辛料及び熱水を加えてコンソメスープを作製した。コンソメスープ中の原料配合割合を表2に示した。ここで実施例1及び比較例1〜3により得た即席コンソメスープ調味料を用いて作製したコンソメスープをそれぞれ実施例スープ及び比較例スープ1〜3と称することとする。配合割合の数値の単位は質量%である。
【0030】
【表2】

(2)コンソメスープの評価
作製した上記コンソメスープを熟練した検査員からなる10名のパネルの官能評価に付した。評価結果を表3に示した。
【0031】
【表3】

【0032】
評価は下記基準に基づいて行った。
5点:強い
4点:やや強い
3点:普通
2点:やや弱い
1点:弱い
【0033】
実施例スープは、生の玉葱のフレーバーがチキンのエキス臭をマスキングし、風味のアクセントのあるコンソメスープであった。また、玉葱の爽やかな甘味と煮込み感のバランスが良く、複雑な野菜風味とコクを有していた。比較例スープ1はエキスの加熱臭が強く、非常に単調で風味のインパクトに欠けるコンソメスープであった。さらに、比較例スープ2は、玉葱の加熱臭が強く、まろやかであるが単調な風味であった。比較例スープ3は、玉葱の加熱臭が非常に強く、また、加熱による玉葱の甘味が強いため、煮込み感はあるものの単調でぼやけた風味であった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明による即席コンソメスープ調味料を用いることにより玉葱の好ましい風味と煮込み感を有するコンソメスープを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩り下ろした生の玉葱と、動物エキス及び/又は酵母エキス液とを含有することを特徴とする即席コンソメスープ調味料。
【請求項2】
摩り下ろした生の玉葱の粒子径が5mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の即席コンソメスープ調味料。
【請求項3】
動物エキス及び/又は酵母エキスの固形分と摩り下ろした生の玉葱の固形分との質量比率が25:1〜0.5:1の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の即席コンソメスープ調味料。
【請求項4】
さらにトマトエキスが配合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の即席コンソメスープ調味料。
【請求項5】
動物エキス及び/又は酵母エキス及びトマトエキスの固形分と摩り下ろした生の玉葱の固形分との質量比率が30:1〜1:1の範囲であることを特徴とする請求項4に記載の即席コンソメスープ調味料。
【請求項6】
動物エキス及び/又は酵母エキスの固形分とトマトエキスの固形分との質量比率が10:1〜1:1の範囲であることを特徴とする請求項5に記載の即席コンソメスープ調味料。

【公開番号】特開2006−87368(P2006−87368A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277846(P2004−277846)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(390010674)理研ビタミン株式会社 (236)
【Fターム(参考)】