説明

即時脱型コンクリート製品及びその製造方法

【課題】充填性が良好で緻密で、高強度を示し、成形性が良好な、即時脱型コンクリート製品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】即時脱型コンクリート製品は、(A)セメント、(B)二酸化珪素を主成分とし残部を酸化ジルコニウムとする特殊シリカ質微粉末、(C)硫酸カルシウム、(D)骨材及び水を含むコンクリート配合物を加圧振動成形してなる即時脱型コンクリート製品であって、前記(B)成分は、二酸化珪素を91〜95質量%とジルコニアを3〜5質量%含み、BET比表面積が8〜11m/gであり、かつ、前記コンクリート配合物において、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(B)成分の含有量が10〜40質量部であり、水/[(A)成分と(B)成分と(C)成分]質量比が、0.16以上0.3未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即時脱型コンクリート製品及びその製造方法に関し、特に充填性に優れ、緻密で高強度に優れた成形性の良好な即時脱型コンクリート製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
即時脱型コンクリート製品は、極めて少量の水で混練したコンクリートを、製品用型枠に投入し、振動締め固めの後、直ちに脱型して養生することにより製造されたコンクリート製品である。
かかる即時脱型コンクリート製品としては、積みブロック、空洞コンクリートブロック、歩道用コンクリート平板、インターロッキングブロック、無筋コンクリート管等があり、安価で大量生産される製品が例示できる。
【0003】
流し込み成形によりコンクリート製品を製造するには、流動性のあるコンクリートを型枠に投入後、蒸気養生が終了するまで脱型することができないが、即時脱型によるコンクリート製品の製造は、上記したように、製品型枠にコンクリートを投入して振動締め固め成形後にすぐに脱型して次のコンクリートを成形できるため、一つの型枠で大量生産が可能である。
【0004】
しかし、即時脱型コンクリート製品は、すぐに脱型するため、型崩れを防止するために、混練水量を極めて少なくすることから、充填性が悪く、一般に、緻密で高強度を示すコンクリート製品の製造は困難であった。
またさらに、高強度を得るために、水セメント比を小さくすると、充填性が低下し、強度だけでなく表面性状が悪化してしまっていた。
【0005】
また、コンクリートの流動性の改善及び高強度化のため、一般に各種セメントに混和材としてシリカフュームを混合することが行われている。
このシリカフュームは、金属シリコンやフェロシリコンの製造時に副生される非晶質二酸化珪素を主成分とする粒径約0.1〜0.3μmの球状超微粒子材料であり、モルタルやコンクリートに混和すると、その高いポゾラン活性やマイクロフィラー効果により硬化体が緻密化され、強度が増進することが知られている。
【0006】
しかしながら、シリカフュームの一次粒子は粒径約0.1〜0.3μmの超微粒子であり、通常凝集して数〜数十μmサイズの二次粒子を形成しているため、シリカフュ−ムのコンクリート中での分散性はよくない。
また、シリカフュ−ムは金属シリコンやフェロシリコン製造時の副生品であるため、品質が安定せず、未燃カーボンや三酸化硫黄、酸化マグネシウムなど種々の不純物を数%含有しており、これらの不純物は、シリカフュ−ムをセメント用混和材として用いるときに、高性能減水剤やAE剤などの化学混和剤の所要量をその都度調整する必要が生じてしまう。
【0007】
これに対し、微細なシリカフュームをバーナーの火炎中で溶融、球状化させて、平均粒径8μm未満の比較的粒径の大きな球状シリカ粒子を製造する方法が提案されている(特許文献1)。この球状シリカ粒子は、取扱い性がよく、コンクリート配合物の流動性を良好にする効果を有するものの、シリカフュームに混在する酸化マグネシウムなどの無機不純物は除去することができず、コンクリートの品質を安定させることが難しい。
【0008】
また、高強度のモルタル・コンクリート製品を得ることを目的として、特開2004−203733号公報(特許文献2)には、二酸化ケイ素(SiO)を主成分とし酸化ジルコニウムを一成分として含む微粒子からなる粉体を調合することを特徴とするモルタル・コンクリートの製造方法が開示されている。
【0009】
しかし、かかるコンクリートの製造方法は、流動性のあるコンクリートを得るものであり、硬練りのコンクリートではないため、即時脱型による成形品を製造することができない。
【0010】
そこで、充填性が良く緻密で、かつ高強度を有し、成形性が良好な即時脱型コンクリート製品及びその製造方法が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−97712号公報
【特許文献2】特開2004−203733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上記問題点を克服し、水・セメント比が小さくても、充填性が良好で緻密で、高強度を示し、成形性に優れる即時脱型コンクリート製品及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、二酸化珪素(SiO)を主成分とし酸化ジルコニウムを含む微粒子からなる粉体と、硫酸カルシウムの粉体とを、セメントに対して特定の割合で用いることにより、即時脱型によっても高強度かつ緻密な即時脱型コンクリート製品が得られることを見出したものである。
【0014】
即ち、本発明の即時脱型コンクリート製品は、(A)セメント、(B)二酸化珪素を主成分とし酸化ジルコニウムを含む特殊シリカ質微粉末、(C)硫酸カルシウム、(D)骨材及び水を含むコンクリート配合物を加圧振動成形してなる即時脱型コンクリート製品であって、前記(B)成分は、二酸化珪素を91〜95質量%とジルコニアを3〜5質量%含み、BET比表面積が8〜11m/gであり、かつ、前記コンクリート配合物において、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、(B)成分の含有量が10〜40質量部であり、水/[(A)成分と(B)成分と(C)成分]質量比が、0.16以上0.3未満であることを特徴とする、即時脱型コンクリート製品である。
【0015】
好適には、前記本発明の即時脱型コンクリート製品において、(C)成分はBET比表面積が3000〜8000cm/gでかつ、(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計100質量部に対し、(C)成分の含有量が5〜30質量部であることを特徴とする、即時脱型コンクリート製品である。
本発明の他の即時脱型コンクリート製品は、上記即時脱型コンクリート製品において、さらに(E)減水剤を含むことを特徴とする、即時脱型コンクリート製品である。
【0016】
本発明の即時脱型コンクリート製品の製造方法は、(A)セメント、(B)二酸化珪素を主成分とし酸化ジルコニウムを含む特殊シリカ質微粉末、(C)硫酸カルシウム、(D)骨材及び水を添加し、前記(B)成分は二酸化珪素を91〜95質量%とジルコニアを3〜5質量%含み、BET比表面積が8〜11m/gであり、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、(B)成分の含有量が10〜40質量部となるように配合し、また水を、水/[(A)成分と(B)成分と(C)成分]質量比が、0.16以上0.3未満となるように添加して、均一に混練することによりコンクリート配合物を調製し、調製した該コンクリート配合物を型枠に投入して、加圧振動により締め固めにより成形した後直ちに脱型して、養生処理を行うことを特徴とする、即時脱型コンクリート製品の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の即時脱型コンクリート製品は、充填性が良好で緻密で、高強度を示し、成形性に優れた、安価な即時脱型コンクリート製品とすることができる。
更に本発明の即時脱型コンクリート製品は、上記効果に加えて、耐摩耗性、即ち表面平滑性の向上を計ることができる。
また、本発明の即時脱型コンクリート製品の製造方法は、上記即時脱型コンクリート製品を安価に大量に効率よく生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】例示された即時脱型コンクリート成形体の充填率を示す図である。
【図2】例示された即時脱型コンクリート成形体の圧縮強度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態例を以下に説明する。
本発明の即時脱型コンクリート製品は、(A)セメント、(B)二酸化珪素を主成分とし酸化ジルコニウムを含む微粉末、(C)硫酸カルシウム、(D)骨材及び水を含むコンクリート配合物を加圧振動成形してなる即時脱型コンクリート製品であって、前記(B)成分は、二酸化珪素を91〜95質量%とジルコニアを3〜5質量%含み、BET比表面積が8〜11m/gであり、かつ、前記コンクリート配合物において、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、(B)成分の含有量が10〜40質量部であり、水/[(A)成分と(B)成分と(C)成分]質量比が、0.16以上0.3未満である、即時脱型コンクリート製品である。
【0020】
本発明の即時脱型コンクリート製品に用いられるコンクリート配合物中の(A)セメントとしては、特に制限はなく、従来のコンクリート製品に使用されているセメントの中から、コンクリート製品の用途に応じて、適宣選択することができる。
このようなセメントとしては、例えば、普通、中庸熱、低熱、早強、超早強、耐硫酸塩など各種ポルトランドセメント、高炉セメントやフライアッシュセメント及びシリカセメントなどの混合セメントなどから選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。
【0021】
また、当該コンクリート配合物において、(B)成分として用いられる特殊シリカ微粉末は、二酸化珪素(SiO)を主成分とし、ジルコニア(酸化ジルコニウム、ZrO)を含む微粒子からなる粉体である。
該特殊シリカ質微粉末中の二酸化珪素の含有量は91〜95質量%であり、ジルコニアの含有量は3〜5質量%である。かかる組成の特殊シリカ微粉末を用いることで、コンクリートの充填性が向上し、緻密になり高強度を得ることができる。また、該特殊シリカ微粉末の比表面積は8〜11m/gであり、これは1μmのオーダーの平均粒径に相当するものである。
ここで、BET比表面積は、「窒素吸着法」により測定したものである。
かかる特殊シリカ質部粉末としては、例えば、巴工業株式会社のSF−SILICAFUMEがある。
【0022】
このような特殊シリカ微粉末は、通常のシリカフュームと比較して、(1)粒径が大きいことから凝集の程度が低く分散性に優れており、低水/セメント比であっても多量に使用が可能であり、(2)球度が高いため流動性に優れ粘性が小さく、(3)不純物が少なく多量に使用した場合でもコンクリートの諸物性に悪影響を及ぼさないなどの特徴があり、即時脱型成形性に優れた高強度コンクリート製品を製造することができる。
【0023】
当該コンクリート配合物における、前記(B)成分の特殊シリカ質粉末の含有量は、即時脱型に要求されるワーカビリティ、締め固め性、表面仕上がり性及び強度などの観点から、前記(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対し、(B)成分の含有量が10〜40質量部、好ましくは20〜30質量部である。
【0024】
当該コンクリート配合物においては、(C)成分として硫酸カルシウムが配合される。
当該硫酸カルシウムは、例えば石膏等を用いることができ、この場合は無水石膏、二水石膏、半水石膏のいずれをも用いることができ、BET比表面積は上記方法で測定して、3000〜8000cm/gであるものが好適に用いられる。
【0025】
当該コンクリート配合物における前記(C)成分の硫酸カルシウムの含有量は、即時脱型に要求されるワーカビリティ、締め固め性、表面仕上がり性及び強度などの観点から、(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計100質量部に対し、(C)成分の含有量が5〜30質量部、好ましくは10〜20質量部であることが望ましい。
【0026】
当該コンクリート配合物において、(D)成分として用いられる骨材には、細骨材及び粗骨材があり、前記細骨材としては、例えば、通常のモルタルやコンクリートに使用されている山砂、陸砂、海砂、川砂、砕砂、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、銅スラグ細骨材や電気炉酸化スラグ等が挙げられる。
また、当該細骨材は、JIS A 1103「骨材の微粒分量試験方法」の方法により求められる微粒分量が5質量%以下であるものが好ましく、さらに、3質量%以下の細骨材が望ましく使用できる。
また、粗骨材としては、例えば、川砂利、山砂利、陸砂利、海砂利、砕石、高炉スラグ粗骨材、電気炉酸化スラグ等を使用することができる。
使用する上記細骨材及び粗骨材は、圧縮強度で150N/mmを満足できる品質を有するものを選定することが望ましい。
【0027】
更に、また、当該コンクリート配合物には、必要に応じて(E)成分として減水剤を含有させることができる。
該減水剤としては、高性能減水剤や、ポリカルボン酸塩系減水剤である高性能AE減水剤が例示され、リグニンスルホン酸塩等の一般的な減水率の小さい減水剤では流動性改善効果が得られにくい。
高性能減水剤とは、ポリアルキルアリルスルホン酸塩系やメラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系のいずれかを主成分とするものである。
【0028】
例えば、ポリアルキルアリルスルホン酸塩系高性能減水剤には、メチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、及びアントラセンスルホン酸ホルマリン縮合物等があり、市販品としては電気化学工業(株)社製商品名「FT−500」とそのシリーズ、花王(株)社製商品名「マイティ−100(粉末)」や「マイティ−150」とそのシリーズ、第一工業製薬(株)社製商品名「セルフロー110P(粉末)」、竹本油脂(株)社製商品名「ポールファイン510N」等、(株)フローリック社製商品名「サンフローPS」とそのシリーズ、(株)フローリック社製商品名「パリックFP200H」シリーズの芳香族アミノスルホン酸塩系高性能減水剤等が代表的である。
メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系高性能減水剤には、グレースケミカルズ(株)社製商品名「FT−3S」、昭和電工(株)社製商品名「モルマスターF−10(粉末)」及び「モルマスターF−20(粉末)」が挙げられる。
【0029】
また、ポリカルボン酸塩系高性能AE減水剤としては、BASFポゾリス(株)社製商品名「レオビルドSP8」シリーズ、(株)フローリック社製商品名「フローリックSF500」シリーズ、竹本油脂(株)社製商品名「チュポールHP8,11」シリーズ、グレースケミカルズ(株)社製商品名「ダーレックススーパー100,200,300,1000」シリーズ、及び花王(株)社製「マイティ21WH,3000S」等を市場で入手して使用することができる。
前記高性能減水剤や高性能AE減水剤の配合量は、前記(A)成分と、(B)成分と(C)成分との合計100質量部に対し、通常1.0〜2.5質量部程度であることが望ましい。
【0030】
また当該コンクリート配合物には、必要に応じて、更に、無機混和材を配合することができる。
無機混和材としては、高炉スラグ微粉末、石灰石微粉末、フライアッシュ、膨張材、高強度コンクリート用混和材等の任意の公知の無機混和材を使用することができ、その配合量は通常当業界で配合されている量で添加することができる。
【0031】
また、コンクリート配合物には水が配合されるが、水/[(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計]質量比が、0.16以上0.3未満となるように配合する。このように配合される水の量を少量とすることで、型崩れをせずに即時脱型することができ、且つ緻密で成形性の良い高強度なコンクリートを製造可能にする。
【0032】
次いで、上記各材料を配合して得られたコンクリート配合物を用いた、即時脱型コンクリート製品を製造する方法について説明する。
本発明の即時脱型コンクリート製品の製造方法は、(A)セメント、(B)二酸化珪素を主成分とし残部を酸化ジルコニウムとする特殊シリカ質微粉末、(C)硫酸カルシウム、(D)骨材及び水を添加し、前記(B)成分は二酸化珪素を91〜95質量%とジルコニアを3〜5質量%含み、BET比表面積が8〜11m/gであり、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、(B)成分の含有量が10〜40質量部となるように配合し、また水を、水/[(A)成分と(B)成分と(C)成分]質量比が、0.16以上0.3未満となるように添加して、均一に混練することによりコンクリート配合物を調製し、該調製したコンクリート配合物を型枠に投入して、加圧振動により締め固めにより成形した後直ちに脱型して、養生処理を行う方法である。
また、必要応じて、上記したように、減水剤や無機混和材等を、コンクリート配合物を調製する際に、添加することも可能である。
【0033】
即ち、本発明の即時脱型コンクリート製品の製造に使用するコンクリート配合物に用いる上記各材料成分を、上記所定の割合の配合で一軸式又は二軸式の強制練りパグミル型ミキサ、強制練りパン型ミキサ又は可傾式ミキサなどを用いて混練りすることにより、当該コンクリート配合物を調製する。
次いで、このコンクリート配合物を、所望する形状の型枠に投入し、成形する。
この成形時には、加圧振動成形処理を加えると、得られるコンクリート製品の充填性がより良好なものとなり緻密化され、効果的である。
加圧振動成形処理としては、使用する機械の出力、振動数によるが、加圧力が0.04〜0.49MPa、振動数が47〜108Hz、振幅が0.3〜2.5mm、振動時間が1〜60s、最大加速度が41〜442m/s程度行う。
【0034】
前記加圧振動成形処理をしたコンクリート配合物は、直ちに脱型される。
次いで、養生されることで、本発明の即時脱型コンクリート製品を得る。
養生方法は、特に限定されず、通常のコンクリートの養生方法であれば任意の方法を適用することができ、例えば、蒸気養生を適用することができる。具体的な養生条件としては、室温にて2〜6時間程度前養生した後、1時間当たり、10〜30℃程度の昇温速度で、60〜80℃程度に昇温して2〜6時間程度保持し、次いで、自然冷却する方法が例示できる。
【実施例】
【0035】
本発明を次の実施例及び比較例により説明するが、これらに限定されるものではない。
(使用材料)
・セメントNC:普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント株式会社製)
密度3.15g/cm
・細骨材S:山砂(静岡県掛川産)密度2.58g/cm
・粗骨材G:砕石(西多摩郡奥多摩産)密度2.64g/cm
・シリカフュームSF:マイクロシリカ920−D(エルケム社製)
密度2.2g/cm
・石膏:無水石膏(住友大阪セメント株式会社製)
・水W:水道水
・特殊シリカ質微粉末ZSF:商品名SF−SILICAFUME(巴工業株式会社)
密度2.25g/cm
なお、下記表1には、上記特殊シリカ質微粉末と上記シリカフュームについての組成と、BET比表面積を示す。
【0036】
【表1】

【0037】
上記表1中の、二酸化珪素の含有量はセメント協会法「けい酸質原料の化学分析方法」、SO(三酸化硫黄)及びMgOの含有量は、JIS R 5202「ポルトランドセメントの化学分析方法」にて、ZrOの含有量は、波長分散型蛍光X線装置を用いて(粉末法により半定量)それぞれ測定した。また、未燃炭素(未燃カーボン)量の指標として、メチレンブルー吸着量をセメント協会法の「メチレンブルー吸着量試験」に準じて測定した。BET法比表面積は、「窒素吸着法」によって測定した。
なお、FE−SEM(電界放出型走査電子顕微鏡)を用いて、倍率5千倍〜5万倍で観察すると、特殊シリカ質微粉末は粒径約0.2〜30μmの球状の一次粒子がほとんど凝集していないのに対し、シリカフュームは粒径約0.1〜0.3μmの球状もしくは非球状の一次粒子のほとんどが凝集し、粒径約10〜50μmの異形状の二次粒子を形成していた。
【0038】
上記表1より、特殊シリカ質微粉末は、シリカフュームより二酸化珪素含有量が同程度で、不純物であるSO含有量は少なく、MgOは含まない。また、特殊シリカ質微粉末はシリカフュームよりメチレンブルー吸着量が少なく、未燃炭素(未燃カーボン)が少ないと判断される。またBET法比表面積は、特殊シリカ質微粉末がシリカフュームよりに小さいことがわかる。
【0039】
(実施例1〜3、比較例1〜6)
上記各材料を用いて、表2に示す配合組成の各コンクリート配合物を調製した。
具体的には、セメント(C)、細骨材(S)、粗骨材(G)、シリカフューム(SF)、特殊シリカ質微粉末(ZSF)、石膏(硫酸カルシウム)を表2に示す割合で二軸強制練りミキサに投入し、30秒間攪拌したのち、水道水(混練水)を投入して更に3分間練り混ぜ、各コンクリート配合物を調製した。
【0040】
【表2】

【0041】
型枠として、内径10cm×高さ20cmのコンクリートの圧縮強度試験用供試体作製型枠を用い、上記各コンクリート配合物を該型枠内に投入した。投入する量は、理論上空隙率0%で10cmの高さになる質量を測定し、当該質量に該当する量を投入した。
次いで、特開2005−241371号公報に記載されているマーシャル試験用ランマに付随するものを採用して、該型枠内のコンクリ−ト配合物に、加圧振動を付加した。
具体的には、ランマは、重量4500gの円筒状の重量物が、該重量物に挿通された案内棒に対して上下に相対移動可能に取り付けられ、該案内棒の下端には、落下してきた重量物の衝撃をその下の硬練りコンクリートに伝達するための押圧板が備えられ、該案内棒の上部には重量物の上昇位置を制限するための固定具が備えられている。
該ランマの下端に備えられた押圧板の直径は、型枠の内径とほぼ同一であって、該型枠に投入されたコンクリート配合物の上に該押圧板を載せると該コンクリート配合物の表面全体が覆われるように構成されている。
【0042】
前記型枠に投入された硬練りコンクリートの上面をランマの押圧板で覆うようにランマを載置した。そして、ランマの案内棒が垂直になるように支持した状態で、重量物を上端まで引き上げ、上端から重量物を80秒間で40回自由落下させた。重量物が落下するとコンクリート配合物は押圧板を介して突き固められて表面が押し下げられるため、ランマを取り除いて型枠の上端から該コンクリートの上面までの距離Aを測定した。
このようにして、型枠の上端からコンクリート上面までの距離Aを測定すれば、型枠の高さから差し引くことによって型枠内のコンクリートの高さBを求めることができ、最大締め固め高さ10cmを高さBで除することにより、重量物を一定の回数で落下させた際のコンクリートの充填率(締め固め度)を求めた。
その結果を表3及び図1に示す。
【0043】
【表3】

【0044】
次いで、該型枠から各即時脱型コンクリート成形体を取り出し、各実施例1〜3及び比較例1〜6の即時脱型コンクリート成形体をそれぞれ下記の蒸気養生を実施して、各即時脱型コンクリート製品を得た。
蒸気養生:室温で気中養生(前養生)4時間後、昇温20℃/時で70℃として4時間保持後、自然放冷。
【0045】
(試験例)
得られた各即時脱型コンクリート製品の圧縮強度を測定した結果を、表4及び図2に示す。
圧縮強度は、JIS A 1108 に従って測定した値である。
【0046】
【表4】

【0047】
表3及び図1より、シリカフュームと添加するよりも特殊シリカ質微粉末を含有したほうが充填性が向上して緻密化され、また表4及び図2より、硫酸カルシウムの配合量が(A)成分と(B)成分と(C)の合計100質量部に対して10質量部含有した時が最も強度発現性が高くなったことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の即時脱型コンクリート製品は、積みブロック、空洞コンクリートブロック、歩道用コンクリート平板、インターロッキングブロック、無筋コンクリート管等に適用することができ、土木・建築用の安価な大量消費される製品に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)セメント、(B)二酸化珪素を主成分とし酸化ジルコニウムを含む特殊シリカ質微粉末、(C)硫酸カルシウム、(D)骨材及び水を含むコンクリート配合物を加圧振動成形してなる即時脱型コンクリート製品であって、前記(B)成分は、二酸化珪素を91〜95質量%とジルコニアを3〜5質量%含み、BET比表面積が8〜11m/gであり、かつ、前記コンクリート配合物において、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(B)成分の含有量が10〜40質量部であり、水/[(A)成分と(B)成分と(C)成分]質量比が、0.16以上0.3未満であることを特徴とする、即時脱型コンクリート製品。
【請求項2】
請求項1記載の即時脱型コンクリート製品において、(C)成分はBET比表面積が3000〜8000cm/gでかつ、(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計100質量部に対し、(C)成分の含有量が5〜30質量部であることを特徴とする、即時脱型コンクリート製品。
【請求項3】
請求項1又は2記載の即時脱型コンクリート製品において、さらに(E)減水剤を含むことを特徴とする、即時脱型コンクリート製品。
【請求項4】
(A)セメント、(B)二酸化珪素を主成分とし酸化ジルコニウムを含む特殊シリカ質微粉末、(C)硫酸カルシウム、(D)骨材及び水を添加し、前記(B)成分は二酸化珪素を91〜95質量%とジルコニアを3〜5質量%含み、BET比表面積が8〜11m/gであり、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(B)成分の含有量が10〜40質量部となるように配合し、また水を、水/[(A)成分と(B)成分と(C)成分]質量比が、0.16以上0.3未満となるように添加して、均一に混練することによりコンクリート配合物を調製し、該調製したコンクリート配合物を型枠に投入して、加圧振動により締め固めにより成形した後直ちに脱型して、養生処理を行うことを特徴とする、即時脱型コンクリート製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−42518(P2011−42518A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190652(P2009−190652)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】