説明

即湯ユニット

【課題】無駄なエネルギーを消費することなく、予約時刻に給湯栓から設定された温度の湯水を供給することができる即湯ユニットを提供する。
【解決手段】即湯ユニットは、予約運転の指示がなされると雰囲気温度と循環回路8内の水温を検出し、指示された即湯設定水温を読み出す。加熱時間データベース19には、これらの条件に応じた加熱必要時間が記憶されている。加熱必要時間は、即湯ユニットによって循環回路8内の水温を即湯設定水温に上昇させるために必要な時間である。予約プログラム18は、実際に予約加熱運転が行われているときに、予約加熱運転開始時から終了までの時間を実測し、実測された加熱必要時間を加熱時間データベース19内の所定の領域に記憶させる。次に同一条件で予約運転が指示されたときは、実測値に基づいて予約加熱運転をすることができるので、電気ヒータ14等により消費されるエネルギーを必要最小限にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯器と給湯栓とを接続した給湯管内に滞留する湯水を保温して、給湯栓を開いた際に直ちに湯が供給されるようにした即湯ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給湯栓を開いた際直ちに湯が出る即湯ユニットとしては、図10に示すように、給湯器21と給湯栓22とを結ぶ給湯管23と、下流側接続部24及び上流側接続部25で接続された戻り管26と、戻り管26に設けられた電気ヒータ27、循環ポンプ28、及び水温センサ29とからなるものが知られている(例えば特許文献1参照)。かかる即湯ユニットにおいては、下流側接続部24と上流側接続部25との間の給湯管23と戻り管26とからなる循環回路30内の湯水が使用者により予め定められた即湯設定水温となるように、循環ポンプ28により戻り管26内の湯水を下流側接続部24から上流側接続部25に向かって循環させると共に電気ヒータ27を作動させる即湯運転を行って循環回路30内の湯水を加熱している。
【0003】
即ち、かかる即湯ユニットにおいては、水温センサ29で監視されている戻り管26内の湯水の温度が即湯設定水温よりも下がったときに前記即湯運転を開始し、水温センサ29の検出水温が即湯設定水温まで上昇したときに循環ポンプ28を停止させると共に電気ヒータ27をオフにして即湯運転を終了する。従って、循環回路30には、常に即湯設定水温付近の湯水が存在する状態となる。そのため、給湯栓22が開かれると、まず給湯管23内の即湯設定水温付近の湯水が給湯栓22から出湯され、次いで給湯器21で加熱された給湯設定温度の湯水が給湯栓22から出湯される。
【0004】
また、かかる即湯ユニットは長時間出湯を行わない場合には通常使用者により前記即湯運転がオフにされるものであるが、例えば朝や特定の時刻に給湯栓22から即湯設定水温の湯が出湯されるように予約する予約機能を有するものも知られている。ところが、即湯ユニットは、設置場所によって給湯管23或いは戻り管26の長さや径、その周囲に設けられる断熱材の断熱性能が異なり、また、即湯運転時の外気温等の要因も様々である。従って、即湯運転開始時から循環回路30内の水温が即湯設定水温に達するまでの時間も様々となる。
【0005】
従って、外気温が低い場合などには、予約時刻になっても循環回路30内の水温が即湯設定水温に達しない事態も生じうる。このような場合は、使用者は自らの経験によって予約時刻を本来の予約時刻よりも早い時刻に設定する必要がある等使い勝手が悪い。また、このような事態が生じないように、ユニット側で運転開始時刻を予約時刻よりも大幅に早い時刻に設定することも考えられるが、この場合は不要に長い時間即湯運転が行われるため、電力の浪費となりランニングコストがかさむという不都合がある。
【特許文献1】特開平4−260731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、即湯ユニットの改良を目的とし、さらに詳しくは前記不都合を解消するために、無駄なエネルギーを消費することなく、予約時刻に給湯栓から設定された温度の湯水を供給することができる即湯ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の即湯ユニットは、給湯器と給湯栓とを接続した給湯管と、前記給湯管の下流側の第1接続部と上流側の第2接続部とに接続された戻り管と、前記第1及び第2接続部間の給湯管の部分と前記戻り管とからなる循環回路と、前記循環回路内に滞留した湯水を前記給湯管の前記第2接続部から前記第1接続部の方向に循環させる循環手段と、前記戻り管に設けられて前記循環回路内の湯水を加熱する加熱手段と、前記循環回路内の水温を検出する水温検出手段と、前記循環回路内の水温が所定の設定温度となるように前記水温検出手段の検出水温に基づき前記循環手段と前記加熱手段の作動を制御する制御手段とを備え、前記給湯栓が開栓されたときに、前記給湯管の前記第1及び第2接続部間に滞留した湯水が、前記第2接続部から前記第1接続部の方向に送出されて前記給湯栓から供給される即湯ユニットにおいて、以下の構成を備えていることを特徴とする。
【0008】
まず、雰囲気温度を検出する雰囲気温度検出手段と、雰囲気温度と循環回路内の水温と設定温度とによって定まる加熱必要時間を記憶する記憶手段と、予約時刻に前記循環回路内の水温が前記設定温度となるように前記制御手段を作動させる予約運転を行う予約運転手段とを有する。
【0009】
そして、前記予約運転手段は、予約時刻と設定温度とが指定されて予約運転の指示がなされた後、現在時刻から予約時刻までの残り時間を算出し、前記雰囲気温度検出手段により検出された現在時刻の雰囲気温度と前記水温検出手段により検出された現在時刻の検出水温と前記指定された設定温度とを基にして該当する加熱必要時間を前記記憶手段から読み出し、前記残り時間が前記加熱必要時間以下となったときは前記制御手段により前記加熱手段と前記循環手段とを作動させて予約加熱運転を行うと共に、前記予約加熱運転開始時から前記循環回路内の水温が前記指定された設定温度に達するまでの実測時間を計測し、前記読み出された加熱必要時間を前記実測時間に変更して前記記憶手段に記憶させる。
【0010】
本発明の即湯ユニットによれば、前記予約運転手段が雰囲気温度と前記循環回路内の水温と前記設定温度とにより定まる加熱必要時間を用いて予約加熱運転を行う。このため、単に長時間予約加熱運転を行う場合に比べて雰囲気温度や循環回路内の水温に見合った運転を行うことができるので、前記加熱手段によって無駄なエネルギーを消費することがない。また、前記予約運転手段は、予約加熱運転を行っている際にその所要時間を実測し、前記加熱必要時間の記憶領域に実測時間を記憶させている。従って、次に同様の条件で予約加熱運転を行う場合には、実測された加熱必要時間が前記記憶手段から呼び出され、その実測時間を基準として予約加熱運転が行われる。このため、その即湯ユニットの設置状況に合致した加熱必要時間により予約加熱運転が行われることになるので、当該予約加熱運転により確実に前記循環回路内の水温を設定温度にすることができると共に、無駄なエネルギーの消費が防止される。
【0011】
また、本発明の即湯ユニットにおいて、前記記憶手段に記憶されている設定温度のうち、前記予約加熱運転開始時における雰囲気温度に相当する雰囲気温度において前記予約加熱運転開始時における前記検出水温よりも高く前記指定された設定温度よりも低い温度範囲にあるものを他の設定温度としたときに、前記予約運転手段は、前記予約加熱運転の際に前記検出水温が前記他の設定温度に達したときは、前記予約加熱運転開始時から前記検出水温が前記他の設定温度に達するまでの時間を他の実測時間として計測し、前記他の設定温度における加熱必要時間を前記他の実測時間に変更して前記記憶手段に記憶させることが好ましい。
【0012】
前記予約運転手段は、前記予約加熱運転開始時から前記検出水温が前記他の設定温度に達するまでの時間を他の実測時間として計測し、該当する条件の加熱必要時間を前記他の実測時間に変更して前記記憶手段に記憶させている。即ち、前記実測時間を計測する予約加熱運転時において他の実測時間についても計測することができるため、一度の予約加熱運転で複数の実測時間を計測することができる。従って、実測が行われた予約運転とは別の機会に使用者が当該他の設定温度を指定して予約運転を指示した場合、予約加熱運転開始時の雰囲気温度と前記検出水温とが以前の実測時と同様であれば、前記記憶手段から読み出される加熱必要時間は既に実測された値となる。このため、当該予約加熱運転により確実に前記循環回路内の水温を設定温度にすることができると共に、無駄なエネルギーの消費が防止される。
【0013】
また、本発明の即湯ユニットにおいては、前記記憶手段に記憶された加熱必要時間のうち、前記予約加熱運転開始時における雰囲気温度に相当する雰囲気温度と、前記予約加熱運転開始時の前記検出水温を超える水温と、前記指定された設定温度とを条件として定められた加熱必要時間が前記実測時間を超えているときは、前記予約運転手段は前記加熱必要時間を前記実測時間に変更して前記記憶手段に記憶させることが好ましい。
【0014】
前記循環回路内の水温を前記予約加熱運転開始時の前記検出水温を超える水温から前記指定された設定温度に加熱するときは、前記予約加熱運転時の前記検出水温から前記指定された設定温度に加熱する場合に比べて加熱時間は必然的に短くなる。従って、このような条件下で前記実測時間よりも長い加熱必要時間が前記記憶手段に記憶されているときは、当該加熱必要時間を前記実測時間に変更することにより、少なくとも前記実測時間以内で予約加熱運転が終了できるので、エネルギーの無駄を防止することができる。
【0015】
また、本発明の即湯ユニットにおいて、前記記憶手段に記憶された加熱必要時間のうち、前記予約加熱運転開始時における雰囲気温度に相当する雰囲気温度と、前記予約加熱運転開始時の前記検出水温を超える水温と、前記他の設定温度とを条件として定められた加熱必要時間が前記他の実測時間を超えているときは、前記予約運転手段は前記加熱必要時間を前記他の実測時間に変更して前記記憶手段に記憶させてもよい。このように、前記実測時間のみならず、前記他の実測時間についても、当該他の実測時間よりも必然的に短い時間となる加熱必要時間については、少なくとも前記他の実測時間とすることにより、少なくとも前記他の実測時間以内で予約加熱運転が終了できるので、エネルギーの無駄を防止することができる。
【0016】
また、本発明の即湯ユニットにおいて、前記予約運転手段は、前記設定温度が指定されて前記制御手段が手動で操作された際に、手動操作開始時の前記雰囲気温度と前記循環回路内の水温とを検出すると共に、前記手動操作開始時から前記循環回路内の水温が前記指定された設定温度に達するまでの実測時間を計測し、前記記憶手段に記憶された加熱必要時間のうち、前記手動操作開始時における雰囲気温度に相当する雰囲気温度と、前記手動操作開始時の前記検出水温に相当する水温と、前記指定された設定温度とを条件として定められた加熱必要時間を、前記実測時間に変更して前記記憶手段に記憶させることが好ましい。
【0017】
即湯ユニットにおいて予約運転が行われない場合であっても、手動操作で即湯ユニットが操作されたときには、前記予約加熱運転と同じように前記加熱手段により循環回路内の湯水が加熱される。従って、このような手動操作がなされたときに、前記循環回路内の水温が前記指定された設定温度となるまでの実測時間を求め、手動操作開始時の条件と合致する前記雰囲気温度と前記検出水温、及び前記指定された設定温度に対応する加熱必要時間を特定し、実測時間に変更して前記記憶手段に記憶する。これにより、次に前記手動操作と同一の条件で予約運転が指定された際には、実測値に基づいて予約加熱運転が行われるので、正確な加熱必要時間で予約加熱運転を行うことができるため、エネルギーの無駄を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の即湯ユニットの実施形態の一例について、図1乃至図9を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態の即湯ユニット1は、給湯器2と給湯栓3とを接続する給湯管4と、給湯管4の下流側の第1接続部5と上流側の第2接続部6とで接続された戻り管7とを備え、戻り管7と給湯管4の第1接続部5から第2接続部6の間の部分とにより循環回路8が構成されている。
【0019】
給湯器2は、本実施形態ではガス給湯器であり、給水管9から供給される水をガスバーナにより加熱される熱交換器(図示せず)に通水して湯とし、得られた湯を給湯管4を介して給湯栓3に供給する。給湯器2は、給湯器2内に設けられた第1電装ユニット10により作動が制御され、第1電装ユニット10と接続されたリモコン11により遠隔操作される。この第1電装ユニット10は、マイクロコンピュータやメモリ等の電子部品により構成されている。また、本実施形態における給湯栓3は、キッチンや洗面所或いは浴室等に設けられたカランやシャワー等である。
【0020】
戻り管7には、循環回路8内に滞留した湯水を給湯管4の第2接続部6から第1接続部5の方向に循環される循環ポンプ13(循環手段)と、循環回路8内の湯水を加熱する電気ヒータ14(加熱手段)と、電気ヒータ14の下流側で第2接続部6の上流側の位置で循環回路8内の湯水の温度を検出する水温センサ15(水温検出手段)とが設けられている。
【0021】
また、即湯ユニット1には、給湯器2の第1電装ユニット10と通信可能に接続された第2電装ユニット16が設けられており、循環ポンプ13と電気ヒータ14と水温センサ15とが第2電装ユニット16に接続されている。また、第2電装ユニット16には雰囲気温度センサ12が接続されている。
【0022】
次に、本実施形態の即湯ユニット1の機能的構成について図2を参照して説明する。第2電装ユニット16は、第1電装ユニット10と同様にマイクロコンピュータやメモリ等の電子部品により構成されており、制御プログラム17(制御手段)と、予約プログラム18(予約運転手段)と、加熱時間データベース19(記憶手段)とを備えている。また、第2電装ユニット16は、第1電装ユニット10、循環ポンプ13、電気ヒータ14、水温センサ15、及び雰囲気温度センサ12に接続されている。
【0023】
制御プログラム17は、循環回路8内の湯水の温度がリモコン11により設定された即湯設定水温(設定温度)となるように水温センサ15の検出水温に基づいて循環ポンプ13と電気ヒータ14の作動を制御するプログラムである。予約プログラム18は、リモコン11により設定された予約時刻に循環回路8内の水温が即湯設定水温となるように制御プログラム17を作動させるプログラムである。加熱時間データベース19は、雰囲気温度と循環回路8内の水温と即湯設定水温の各条件によって定まる加熱必要時間を記憶しているデータベースである。
【0024】
この加熱必要時間とは、給湯器2及び即湯ユニット1の運転が停止している状態から即湯ユニット1を作動させ、循環ポンプ13及び電気ヒータ14によって循環回路8内の水温を即湯設定水温にまで加熱するまでに必要な時間である。これは、基本的には外気温等の雰囲気温度と循環回路8内の水温と即湯設定水温によって定まるが、実際には給湯管4及び戻り管7の長さや径、これらの周囲に設けられている断熱材の材質や厚さ、施工状況等により異なってくる。本実施形態においては、給湯管4及び戻り管7の長さや径或いはその周囲の断熱材等の要因について平均的な条件を想定し、当該条件に合致する初期値として加熱時間データベース19に記憶させている。この加熱時間データベース19は、記憶されているデータの書き換えが可能な不揮発性メモリであるEEPROM(図示せず)に記憶されている。
【0025】
次に、加熱時間データベース19のデータ構造を図3に示す。加熱時間データベース19は、雰囲気温度について−20℃から35℃まで1度刻みに図3に示す表形式でデータを記憶している。例えば、図3に示すように気温10℃の表を例にすると、縦軸に予約加熱運転開始時の循環回路8内の水温を取り、横軸に即湯設定水温を取っている。そして、それぞれの条件に該当する加熱必要時間を記憶させている。例えば、図3に示すように、循環回路8内の水温が10℃のときの即湯設定水温が40℃であれば、加熱必要時間は20分となる(太字部分参照)。
【0026】
本実施形態の即湯ユニット1が設けられた給湯器2は、上記構成となっているため、給湯器2がオンとなっている状態で給湯栓3が開栓されると、給湯管4及び給水管9に水流が生じ、給湯器2の第1電装ユニット10がこの水流を検知することによりガスバーナに点火されて給湯運転が開始され、給水管9から供給される水が熱交換器で加熱されて湯が得られる。給湯器2においては、第1電装ユニット10によって、給湯温度がリモコン11によって指示された給湯設定温度になるようにガスバーナの熱量が制御される。そして、給湯栓3が閉栓されて給湯器2への給水が止まると、給湯器2の第1電装ユニット10がガスバーナの燃焼を停止して給湯運転を停止する。
【0027】
また、予約加熱運転が実施されているときは、制御プログラム17によって循環ポンプ13と電気ヒータ14とが制御され、循環回路8内にはリモコン11によって指示された即湯設定水温の湯水が循環し、給湯管4の第1接続部5と第2接続部6との間に、即湯設定水温の湯が存在する状態が保持される。このため、使用者が給湯栓3を開栓したときに、給湯器2の第1接続部5と第2接続部6との間に存在する即湯設定水温の湯が直ちに給湯栓3から供給され、次いで給湯器2により加熱された湯が供給される。これにより、使用者が給湯栓3を開栓してから実際に湯が供給されるまでの遅れ時間が大幅に短縮される。
【0028】
次に、使用者により予約運転の指示がなされた際の作動について図4を参照して説明する。以下の説明において、予約加熱運転とは実際に循環回路8内の水温が加熱されて即湯設定水温に達するまでの運転をいい、予約運転とは使用者により予約運転の指示がなされてから予約加熱運転が終了するまでの運転をいう。使用者がリモコン11により予約時刻を設定し予約運転の指示を行うと(S1)、予約プログラム18は現在時刻から予約時刻までの時間である残り時間を算出する(S2)。同時に、雰囲気温度センサ12によって雰囲気温度を検出し、水温センサ15によって循環回路8内の水温を検出し、リモコン11によりセットされた即湯設定水温を読みとる(S3)。
【0029】
次に、予約プログラム18は、各種の情報から加熱必要時間を抽出する(S4)。具体的には、まず、予約プログラム18が検出された雰囲気温度に対応するマトリクス表20を抽出する。例えば、雰囲気温度が10℃であった場合、図3に示すマトリクス表20が選択される。さらに、検出された循環回路8内の水温と読み出された即湯設定水温とを基にマトリクス表20から加熱必要時間を抽出する。例えば、循環回路8内の水温が10℃であり、即湯設定水温が40℃である場合、図3のマトリクス表20により加熱必要時間として20分という時間が抽出される。
【0030】
次に、予約プログラム18は、残り時間と加熱必要時間とを比較する(S5)。残り時間が加熱必要時間を超えているときは(S5でNO)、再度(S2)から(S4)の処理を行う。残り時間が加熱必要時間以下となったときは(S5でYES)、即湯ユニット1において以下の予約加熱運転が行われる。
【0031】
まず、予約プログラム18は、予約加熱運転の開始時刻を記憶する(S6)。次に、予約加熱運転開始時の雰囲気温度を雰囲気温度センサ12によって検出し、循環回路8内の水温を水温センサ15によって検出し、リモコン11によりセットされた即湯設定水温を読みとる(S7)。次に、予約プログラム18は、制御プログラム17によって循環回路8内の水温がリモコン11により設定された即湯設定水温となるように、水温センサ15の検出水温に基づいて循環ポンプ13を作動させると共に電気ヒータ14を作動させる(S8)。
【0032】
次に、予約プログラム18は、水温センサ15の検出水温が、予約加熱運転開始時に検出された循環回路8内の水温よりも高く、且つ目標とする即湯設定水温よりも低い温度領域にある他の即湯設定水温に達したか否かを判定する(S9)。本実施形態では、予約加熱運転開始時の循環回路8内の水温が10℃であり、即湯設定水温が40℃であるため、10℃を越えて40℃未満の領域には30℃から39℃まで1℃毎に他の即湯設定水温が存在する。そして、水温センサ15の検出水温が他の即湯設定水温に達したときは(S9でYES)、マトリクス表20の当該他の即湯設定水温に該当する加熱必要時間に予約加熱運転開始からこの時点までの経過時間である他の実測値を記憶させる(S10)。本実施形態では、循環回路8内の水温が電気ヒータ14により加熱されて他の設定温度である30℃となった場合、経過時間が13分であったとすると、図5に示すように、13分というデータがマトリクス表20の該当位置に記憶される。
【0033】
ここで、使用者により設定された即湯設定水温が40℃であるため、予約加熱運転が継続される(S11でNO)。そして、(S9)から(S10)までの処理が繰り返され、他の即湯設定水温が1℃上昇するたびにマトリクス表20の加熱必要時間が更新されていく。ここで、図5は、マトリクス表20の縦軸が10℃のときに、水温センサ15の検出水温が32℃まで上昇し、他の即湯設定水温である30℃から32℃までの加熱必要時間が更新された状態を例示している。この場合、実測値がそれぞれ13,13,14(分)であれば、マトリクス表20の各数値が更新前の図3の状態に示す15,15,16(分)から図5に示す実測値に更新される(太字部分参照)。
【0034】
そして、循環回路8内の水温が電気ヒータ14により加熱されて即湯設定水温である40℃に達したときに予約加熱運転が終了する(S11でYES)。このとき、予約プログラム18によって予約加熱運転の開始時刻からの所要時間が実測される(S12)。そして、予約プログラム18は、図6に示すように、マトリクス表20において予約加熱運転開始時点の循環回路8内の水温である10℃と即湯設定水温である40℃とに該当する加熱必要時間が実測値に置き換えられる(S13)。本実施形態において、この実測時間が19分であったとすると、初期設定値の20分というデータが19分に置き換えられる。
【0035】
このように、本実施形態においては、マトリクス表20の予約加熱運転開始時の循環回路8内の水温である10℃の行において、即湯設定水温である40℃に該当する箇所の加熱必要時間が実測されて更新されると共に、他の即湯設定水温である30℃から39℃までの加熱必要時間が実測されて更新される。
【0036】
次に、予約プログラム18は、マトリクス表20において、実測が行われた際の予約加熱運転開始時の雰囲気温度と同一の雰囲気温度で、実測が行われた際の検出水温よりも高い循環回路内水温を条件とする加熱必要時間であって、上述のように実測された加熱必要時間よりも長時間のものがあるかどうかをチェックする(S14)。このとき、実測値よりも長時間のものがある場合は(S14でYES)、予約プログラム18はマトリクス表20の加熱必要時間を上記実測値に書き換える(S15)。ここでは、図7に示すように、循環回路内水温が11℃と12℃の欄において即湯設定水温が30℃から39℃までの領域に記憶されていた加熱必要時間が、実測値よりも長い値となっていたため、それぞれ実測値に書き換えられている(太字部分参照)。
【0037】
これらの書き換えられた領域では加熱必要時間を実測していないが、実測された循環回路内水温が10℃の場合よりも循環回路内水温が高いため、加熱必要時間は10℃の場合の加熱必要時間を越えることはない。従って、このように簡易的に加熱必要時間の置き換えを行うことにより、実測を行っていない領域についてもより現状に合致した加熱必要時間とすることができ、次回にその領域で予約加熱運転が行われた際には電気ヒータ14の無駄な通電が防止される。
【0038】
尚、上記実施形態においては、予約加熱運転時に加熱必要時間を実測しているが、使用者の手動操作により即湯運転が行われた際にも加熱必要時間を実測してもよい。使用者によりリモコン11が操作されて即湯運転が行われるときは、図4に示す(S6)から加熱必要時間の実測が開始され(S15)までの処理が行われる。これにより、手動運転時に実測された加熱必要時間が加熱時間データベース19のマトリクス表20に記憶されるので、次回予約加熱運転が行われる際には実測されたデータを使用できる可能性が高くなる。
【0039】
次に、本発明の即湯ユニット1の変形例について、図8及び図9を参照して説明する。本変形例では、予約運転や手動操作により加熱運転(予約加熱運転又は手動加熱運転)が開始された際に(S21)、加熱運転が開始されたときの循環回路内水温より高い他の循環回路内水温毎に次のような処理が行われる(S22)。尚、本変形例においては、給湯器2、給湯管4、循環回路8等の構成は上記実施形態と同様となっている。
【0040】
本変形例においても予約加熱運転開始時の循環回路8内の雰囲気温度が10℃であって水温が10℃である場合を例にして説明すると、マトリクス表20において当該循環回路内水温である10℃よりも高い他の循環回路内水温は、11℃から35℃である。また、即湯設定水温を40℃とすると、循環回路内水温よりも高く、即湯設定水温よりも低い他の即湯設定水温は30℃から39℃となる。
【0041】
他の循環回路内水温が11℃の場合、図8に示すように、予約プログラム18が循環回路8内の水温が他の循環回路水温である11℃に達したか否かをチェックする(S23)。循環回路8内の水温が他の循環回路水温である11℃に達したときは(S23でYES)、予約プログラム18によって並行処理の開始時刻が記憶される(S24)。
【0042】
次に、予約プログラム18は、循環回路8内の水温が即湯設定水温よりも低い他の即湯設定水温に達したか否かをチェックする(S25)。循環回路8内の水温が他の即湯設定水温に達したときは(S25でYES)、処理開始時刻と到達時刻とから経過時間を実測し(S26)、マトリクス表20の該当箇所に実測値を変更記憶させる(S27)。そして、さらに他の即湯設定水温があるときは(S28でNO)、S25からの処理を継続する。
【0043】
そして、他の即湯設定水温についてすべての経過時刻を実測したとき、即ちマトリクス表20の即湯設定水温の30℃から39℃までの加熱必要時間の実測が終了したときは(S28でYES)、予約プログラム18は並行処理を終了させ、上記実施形態と同様に予約加熱運転の開始時刻から循環回路8の水温が即湯設定水温である40℃に達するまでの時間を実測し(S30)、マトリクス表20の該当箇所に変更記憶させる(S31)。本変形例の並行処理では、上記処理を各他の循環回路水温である11℃から35℃まで並行して行う。
【0044】
以上の並行処理により、1度の加熱運転でマトリクス表20内であって、循環回路8内の水温が予約加熱運転開始時よりも高いもので、予約加熱運転開始時の検出水温より高く指定された即湯設定水温よりも低い多くの他の即湯設定水温におけるデータを実測値に更新することができる。このため、給湯器2等を新たに設置した場合にも、短期間に多くの加熱必要時間を実測することができるため(図9における太字参照)、短期間に設置場所に即した予約加熱運転を行うことが可能となる。
【0045】
尚、加熱運転開始時の雰囲気温度が10℃であって循環回路内水温である10℃における運転開始時の循環回路内水温より高く即湯設定水温より低い各他の即湯設定水温(30℃から39℃)については、上記実施形態と同様の処理で加熱必要時間が実測される(図4のS6〜S11参照)。また、上記並行処理の場合、加熱運転中にそれぞれ経過時間を計測するものであるため、加熱運転が行われていない状態から経過時間を計測する場合よりも電気ヒータ14自体が加熱される時間分、実際には経過時間は短くなる。この時間は厳密に計測した場合に比べて数十秒程度の相違でしかないので、無視することができる。一方で、当該時間差を予め勘案し加熱必要時間を補正した値を加熱時間データベース19に記憶させるようにしてもよい。
【0046】
また、上記実施形態及び変形例においては、雰囲気温度センサ12により第2電装ユニット16近傍の雰囲気を検出しているが、これに限らず、第1電装ユニット10に雰囲気温度センサを接続して給湯器2の雰囲気温度を検出しても良い。また、雰囲気温度は雰囲気温度センサ12により検出しているが、これに限らず、水温センサ15により検出される温度を雰囲気温度として用いてもよい。水温センサ15により検出される循環回路8内の水温は、即湯運転が終了した後所定時間が経過すれば雰囲気温度とほぼ同様となる。従って、この水温センサ15の検出水温を雰囲気温度として用いることができる。また、このように雰囲気温度を水温センサ15の検出水温とすることにより、図3に示す加熱時間データベース19のマトリクス表20が雰囲気温度の1℃分のみで足りるようになるため、加熱時間データベース19の記憶容量を大幅に減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態の一例である即湯ユニットを示す説明図。
【図2】図1の即湯ユニットの機能的構成を示すブロック図。
【図3】加熱時間データベースのデータ構造を示す説明図。
【図4】本実施形態の即湯ユニットの予約加熱運転を示すフローチャート。
【図5】予約プログラムによりデータが更新された状態を示すマトリクス表。
【図6】予約プログラムによりデータが更新された状態を示すマトリクス表。
【図7】予約プログラムによりデータが更新された状態を示すマトリクス表。
【図8】本発明の変形例である即湯ユニットの予約加熱運転を示すフローチャート。
【図9】本発明の変形例において予約プログラムによりデータが更新された状態を示すマトリクス表。
【図10】従来の即湯ユニットを示す説明図。
【符号の説明】
【0048】
1…即湯ユニット、2…給湯器、3…給湯栓、4…給湯管、5…第1接続部、6…第2接続部、7…戻り管、8…循環回路、13…循環ポンプ(循環手段)、14…電気ヒータ(加熱手段)、15…水温センサ(水温検出手段)、17…制御プログラム(制御手段)、18…予約プログラム(予約運転手段)、19…加熱時間データベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯器と給湯栓とを接続した給湯管と、前記給湯管の下流側の第1接続部と上流側の第2接続部とに接続された戻り管と、前記第1及び第2接続部間の給湯管の部分と前記戻り管とからなる循環回路と、前記循環回路内に滞留した湯水を前記給湯管の前記第2接続部から前記第1接続部の方向に循環させる循環手段と、前記戻り管に設けられて前記循環回路内の湯水を加熱する加熱手段と、前記循環回路内の水温を検出する水温検出手段と、前記循環回路内の水温が所定の設定温度となるように前記水温検出手段の検出水温に基づき前記循環手段と前記加熱手段の作動を制御する制御手段とを備え、
前記給湯栓が開栓されたときに、前記給湯管の前記第1及び第2接続部間に滞留した湯水が、前記第2接続部から前記第1接続部の方向に送出されて前記給湯栓から供給される即湯ユニットにおいて、
雰囲気温度を検出する雰囲気温度検出手段と、雰囲気温度と循環回路内の水温と設定温度とによって定まる加熱必要時間を記憶する記憶手段と、予約時刻に前記循環回路内の水温が前記設定温度となるように前記制御手段を作動させる予約運転を行う予約運転手段とを有し、
前記予約運転手段は、予約時刻と設定温度とが指定されて予約運転の指示がなされた後、現在時刻から予約時刻までの残り時間を算出し、前記雰囲気温度検出手段により検出された現在時刻の雰囲気温度と前記水温検出手段により検出された現在時刻の検出水温と前記指定された設定温度とを基にして該当する加熱必要時間を前記記憶手段から読み出し、前記残り時間が前記加熱必要時間以下となったときは前記制御手段により前記加熱手段と前記循環手段とを作動させて予約加熱運転を行うと共に、前記予約加熱運転開始時から前記循環回路内の水温が前記指定された設定温度に達するまでの実測時間を計測し、前記読み出された加熱必要時間を前記実測時間に変更して前記記憶手段に記憶させることを特徴とする即湯ユニット。
【請求項2】
前記記憶手段に記憶されている設定温度のうち、前記予約加熱運転開始時における雰囲気温度に相当する雰囲気温度において前記予約加熱運転開始時における前記検出水温よりも高く前記指定された設定温度よりも低い温度範囲にあるものを他の設定温度としたときに、
前記予約運転手段は、前記予約加熱運転の際に前記検出水温が前記他の設定温度に達したときは、前記予約加熱運転開始時から前記検出水温が前記他の設定温度に達するまでの時間を他の実測時間として計測し、前記他の設定温度における加熱必要時間を前記他の実測時間に変更して前記記憶手段に記憶させることを特徴とする請求項1に記載の即湯ユニット。
【請求項3】
前記記憶手段に記憶された加熱必要時間のうち、前記予約加熱運転開始時における雰囲気温度に相当する雰囲気温度と、前記予約加熱運転開始時の前記検出水温を超える水温と、前記指定された設定温度とを条件として定められた加熱必要時間が前記実測時間を超えているときは、前記予約運転手段は前記加熱必要時間を前記実測時間に変更して前記記憶手段に記憶させることを特徴とする請求項1に記載の即湯ユニット。
【請求項4】
前記記憶手段に記憶された加熱必要時間のうち、前記予約加熱運転開始時における雰囲気温度に相当する雰囲気温度と、前記予約加熱運転開始時の前記検出水温を超える水温と、前記他の設定温度とを条件として定められた加熱必要時間が前記他の実測時間を超えているときは、前記予約運転手段は前記加熱必要時間を前記他の実測時間に変更して前記記憶手段に記憶させることを特徴とする請求項2に記載の即湯ユニット。
【請求項5】
前記予約運転手段は、前記設定温度が指定されて前記制御手段が手動で操作された際に、手動操作開始時の前記雰囲気温度と前記循環回路内の水温とを検出すると共に、前記手動操作開始時から前記循環回路内の水温が前記指定された設定温度に達するまでの実測時間を計測し、
前記記憶手段に記憶された加熱必要時間のうち、前記手動操作開始時における雰囲気温度に相当する雰囲気温度と、前記手動操作開始時の前記検出水温に相当する水温と、前記指定された設定温度とを条件として定められた加熱必要時間を、前記実測時間に変更して前記記憶手段に記憶させることを特徴とする請求項1に記載の即湯ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−17074(P2007−17074A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198652(P2005−198652)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】