説明

卵調理装置

【課題】電子レンジを用いて、動物やキャラクターの姿形等といった所望の立体的形状の卵焼きを、手間をかけずにできあがりよく作ることができる卵調理装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る卵調理装置1は、電子レンジにより溶き卵を加熱固化させて卵焼きを作るにあたり、型枠2に形成された空間である成形部の形状に対応した所望の立体的形状とすることができるので、動物やキャラクター等の姿形等の立体的形状の卵焼きを簡便に作ることができる。また、溶き卵を電子レンジで加熱する手段として、マイクロ波により水貯留部14の水から発生する蒸気による加熱と、境界部15と蓋体12との間に形成された空間部3を通過するマイクロ波による加熱を用いているので、型枠2中の溶き卵が卵焼きを作るのにちょうどよく加熱され、できあがりのよい卵焼きを手間や時間をかけずに簡便に作ることができるとともに、部品点数も少ない卵調理装置1となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵調理装置に関する。さらに詳しくは、電子レンジを用いて卵焼きを作るために使用される卵調理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
卵の調理については、溶き卵をフライパン等で薄く延ばして焼いて、筒状にした卵焼き(玉子焼き)が広く知られている。かかる卵焼きをフライパンで焼き上げる際には、フライパン全面に溶き卵等を入れ、加熱により卵がある程度固まったときに、ヘラで卵を2つ折りないしは4つ折りにして、以後、この過程を所望の回数だけ繰り返すことにより、厚焼きの卵焼きが作られることになる。また、調理の容易化のため、専用のフライパン等の調理器具も提供されていた(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
一方、近年、電子レンジによるマイクロ波加熱(電磁加熱)を用いて各種食材の調理が行われるようになり、ポリプロピレン等のマイクロ波を透過可能な耐熱性の合成樹脂で形成された電子レンジ対応容器も提供されている(例えば、特許文献2を参照。)。また、このような電子レンジ対応容器を用いて、電子レンジによるマイクロ波により卵焼きを作ることも行われている。電子レンジによる卵焼きは、油を使用しないため健康的であり、例えば、朝の時間のない中で作られる弁当のおかずとして用いられることも多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−252201号公報
【特許文献2】特開2004−61091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、卵焼きは子供に人気のあるおかずであることは疑いのないところであるが、子供はおかずに対してもありきたりの形状よりは動物やキャラクターの姿形等の立体的形状を好むため、電子レンジを用いてこのような立体的形状で卵焼きを作ることができれば、子供には非常に喜ばれ、弁当のおかずとしても重宝する。しかしながら、従来の電子レンジ対応容器を用いて得られる卵焼きは、出来合いの面白みのない形状となってしまい、所望の立体的形状の卵焼きを作ることは困難であった。
【0006】
加えて、電子レンジ対応容器を用いて卵焼きを作るには、電子レンジ対応容器に溶き卵を入れ、容器の蓋を閉めて電子レンジでマイクロ波加熱することになるが、例えば、出力ワット数が比較的低い、あるいは時間が短い場合には固まらないことがある一方、出力ワット数が高すぎた場合には全体が破裂してしまうこともある等、マイクロ波の出力ワット数と時間の調整が難しく、できあがりのよい卵焼きを安定して作ることが困難であった。なお、できあがりのよい卵焼きを得るために、30秒〜1分ごとに容器を電子レンジから取り出して容器内の溶き卵をかき混ぜるといった作業を数回繰り返すこともある。また、適度に固まった卵焼きを作るには、所定の出力ワット数で長い時間加熱する必要があるが、これらの作業は手間や時間がかかり、特に朝の時間のない中では避けたい作業であった。
【0007】
本発明の目的は、前記の課題に鑑みてなされたものであり、電子レンジを用いて、動物やキャラクターの姿形等といった所望の立体的形状の卵焼きを、手間や時間をかけずにできあがりよく作ることができる卵調理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明に係る卵調理装置は、電子レンジにより溶き卵を加熱により固化させて調理する卵調理装置であって、境界部により調理部と水貯留部に区画された筐体からなる装置本体と、当該装置本体の開口部を開閉可能に覆う蓋体と、使用時に前記調理部に載置され、内部に溶き卵を充填するための所望の立体的形状の空間となる成形部が形成された型枠と、を含み、前記蓋体を閉めた場合に、当該蓋体と前記境界部との間に前記調理部及び前記水貯留部と連通する空間部が形成され、前記調理部を構成する壁面及び前記蓋体は、マイクロ波が透過不可能とされ、前記水貯留部を構成する壁面及び前記型枠は、マイクロ波が透過可能とされていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る卵調理装置は、前記した本発明において、前記調理部が前記境界部に取り囲まれて形成され、前記水貯留部が前記境界部を介して前記調理部の周囲に配置されることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る卵調理装置は、前記した本発明において、前記境界部が、マイクロ波が透過不可能とされていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る卵調理装置は、前記した本発明において、前記装置本体及び前記蓋体が合成樹脂により形成され、前記マイクロ波が透過不可能に形成されている部分が、合成樹脂の内部に遮蔽板を介在させ、インサート成形により一体的に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る卵調理装置は、電子レンジにより溶き卵を加熱により固化させて、動物やキャラクターの姿形等といった所望の立体的形状の卵焼きを、型枠を効率よく加熱することにより手間や時間をかけずにできあがりよく作ることができ、部品点数も少ない卵調理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る卵調理装置の一態様を示した斜視図(蓋体を開いた状態)である。
【図2】本発明に係る卵調理装置の一態様を示した斜視図(蓋体を閉じた状態)である。
【図3】本発明に係る卵調理装置の一態様を示した斜視図(型枠を取り外した状態)である。
【図4】装置本体の開口部をを上から見た状態を示す概略図である。
【図5】本発明に係る卵調理装置の内部構造を示した概略断面図である。
【図6】卵調理装置を構成する型枠の一態様を示した斜視図(型枠を開いた状態)である。
【図7】卵調理装置を構成する型枠の一態様を示した斜視図(型枠を閉じた状態)である。
【図8】卵調理装置を構成する型枠の一態様を示した斜視図(蓋部を閉じた状態)である。
【図9】卵調理装置を構成する調理部と水貯留部の配置の他の態様を示した概略図である。
【図10】卵調理装置を構成する調理部と水貯留部の配置の他の態様を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る卵調理装置の構成を図面に基づいて説明する。
【0015】
(I)卵調理装置1の構成:
図1は、本発明に係る卵調理装置1の一態様を示した斜視図(蓋体12を開いた状態)、図2は、本発明に係る卵調理装置1の一態様を示した斜視図(蓋体12を閉じた状態)、図3は、本発明に係る卵調理装置1の一態様を示した斜視図(型枠2を取り外した状態)、図4は、装置本体11の開口部16を上から見た状態を示す概略図、図5は、本発明に係る卵調理装置1の内部構造を示した概略断面図、をそれぞれ示す。ここで、1は卵調理装置、11は装置本体、12は蓋体、13は調理部、14は水貯留部、15は境界部、16は開口部、2は型枠、3は空間部、をそれぞれ示す。
【0016】
図1ないし図3に示すように、本実施形態にかかる卵調理装置1は、境界部15を介して調理部13と水貯留部14を備えた装置本体11と、装置本体11の開口部16を開閉する蓋体12と、溶き卵(図示せず。以下同じ。)が充填される空間である所望の立体的形状の成形部23(図6等参照)が内部に形成され、使用時に成形部23に溶き卵を充填した状態で調理部13に載置される型枠2を基本構成として備える。なお、本発明における「溶き卵」とは、鶏卵を溶いた溶き卵そのもののほか、一般に卵焼きに入れることが知られている各種食材、だし汁、調味料等を加えたものも含む。
【0017】
本実施形態に係る卵調理装置1を構成する装置本体11は、本実施形態にあっては、略矩形状の開口部16を有した平面視略矩形状の筐体であり、板状の境界部15を介して調理部13と水貯留部14に区画して分けられている。装置本体11と蓋体12は、ヒンジH1を介して接続されて開閉可能とされ、図1や図3に示すように、蓋体12を開いた状態では、装置本体11の開口部16(調理部13の開口部16a及び水貯留部14の開口部16b)が現れるようになる。
【0018】
装置本体11と蓋体12には、開閉時の脱着の利便のため、蓋体12には爪状の係止凸部182、装置本体11には、かかる係止凸部182を取り外し可能に嵌め込む係止凹部181がそれぞれ形成されている。また、装置本体11には、係止凹部181の下方に把持部111が形成されており、使用者はかかる把持部111を掴んで持ち運ぶことが可能となる。なお、図示しないが、蓋体12には、卵調理装置1の内部と外部を空気的に連通する通気孔が形成されることが好ましく、かかる通気孔は複数個形成することが特に好ましい。
【0019】
調理部13は、後記する型枠2を載置する空間であり、本実施形態にあっては、略矩形状の開口部16aを有し、合計4つの型枠2が載置固定できるようになっている。また、調理部13の底には、型枠を固定するための止め部19(図3参照)が形成されている。止め部19は、本実施形態にあっては、平面視半円状の板状部材である止め部本体191の間に溝192が形成されており、かかる溝192に型枠の下部に形成された嵌め込み部26を入れて嵌め込むことにより、型枠2を調理部13に載置固定することができる。
【0020】
水貯留部14は、電子レンジでマイクロ波を照射した際に蒸気となり、型枠2の成形部23に充填された溶き卵を加熱するための水を貯めることが可能な空間であって、本実施形態にあっては、略矩形状の開口部16bを有している。水貯留部14は、境界部15を介して調理部13と隣り合わせに形成されている。なお、水貯留部14の内面には、水位を表示する目盛り(図示しない)を表示するようにしてもよい。
【0021】
図4は、装置本体11の開口部16を上から見た状態を示す概略図である。本発明に係る卵調理装置1は、電子レンジにおけるマイクロ波による加熱により水貯留部14に入れられた水を加熱し、発生する蒸気により調理部13の型枠2の成形部23に充填された溶き卵を加熱する。また、境界部15の上方に形成された空間部3を通過するマイクロ波が調理部13に載置された型枠2に達し、成形部23に充填された溶き卵を加熱する。よって、電子レンジでの調理時に装置本体11における水貯留部14を構成する壁面141,142,143はマイクロ波が透過できるように形成される一方、調理部13にマイクロ波が透過可能とされると、調理部13に載置される型枠2に充填された溶き卵が過度に加熱されてしまうため、調理部13を構成する壁面131,132,133はマイクロ波が透過できないように形成される必要がある。なお、本発明における「壁面」とは、調理部13や水貯留部14を構成し、装置本体11の外側に現れ、電子レンジからのマイクロ波が直接照射される面のことを意味する。
【0022】
本実施形態に係る卵調理装置1は、全体を例えばポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)等のマイクロ波が透過可能で、電子レンジ内部の蒸気熱に耐えることができる耐熱性を備えた合成樹脂により形成することができる。また、調理部13を取り囲んで構成する壁面131,132,133についてはマイクロ波を遮蔽できるよう、壁面131,132,133の内部にアルミニウム薄板等の遮蔽板17(図5参照)を介在させている。なお、本実施形態にあっては、調理部13を構成する壁面131,132,133の内部に加えて、境界部15の内部及び蓋体12の内部にも、遮蔽板17を介在させている。蓋体12に遮蔽板を介在させて遮蔽させることにより、蓋体12が存在する上方から調理部13へマイクロ波が達することを防止することができ、また、境界部15に遮蔽板を介在させて遮蔽することにより、境界部15をマイクロ波が透過することを防止することができる。
【0023】
かかる構成の装置本体11及び蓋体12を備えた卵調理装置1は、例えば、アルミニウム薄板等の遮蔽板17を成形金型にあらかじめ挿入した後、ポリプロピレン(PP)等の合成樹脂を射出注入して金属と樹脂を一体化させるインサート成形により一体的に形成することができる。本実施形態に係る卵調理装置1はこのようにインサート成形により一体的に形成することができるので、製造コスト及び工程の削減を図ることができる。
【0024】
図5は、本発明に係る卵調理装置の内部構造を示した概略断面図である(ただし、型枠2は簡略化して示している。)。図5に示すように、調理部13の壁面131(及び図5に図示しない壁面132,133。以下同じ。)には合成樹脂の内部に遮蔽板17が介在されているため、電子レンジによるマイクロ波は透過できず、マイクロ波は調理部13の壁面131を透過することによっては調理部13には達しない。一方、水貯留部14の壁面141(及び図5に図示しない壁面142,143。以下同じ。)はマイクロ波が透過可能な合成樹脂のみで形成されているため、透過したマイクロ波が水貯留部14に入れられた水Wを加熱することになる。また、図5に示すように、境界部15の高さは、蓋体12を閉じた場合であっても蓋体12に届くものではないので、境界部15と蓋体12との間には調理部13及び水貯留部14と連通する空間部3が形成されることになる。そして、水貯留部14の壁面141等を透過したマイクロ波は、かかる空間部3を通過して調理部13の型枠2に達し、型枠2に充填された溶き卵を加熱することになる。
【0025】
(II)型枠2の構成:
図6は、卵調理装置1を構成する型枠2の一態様を示した斜視図(型枠2を開いた状態)、図7は、卵調理装置1を構成する型枠2の一態様を示した斜視図(型枠2を閉じた状態)、図8は、卵調理装置1を構成する型枠2の一態様を示した斜視図(蓋部24を閉じた状態)、をそれぞれ示す。型枠2は、本実施形態にあっては、内部に略卵形状の空間である成形部23がくり抜かれて形成されており、かかる成形部23に対応する形状(略卵形状)の卵焼きを作ることができる。
【0026】
型枠2は、内部に成形部23が形成された、略対称形状の第1型枠21と第2型枠22がヒンジH2を介して開閉可能とされている。なお、前記したように、型枠2の下部には嵌め込み部26が形成されており、かかる嵌め込み部26を調理部13の底に形成された止め部19の溝192に嵌め込むことにより、型枠2を調理部13に載置固定することができる。
【0027】
型枠2に溶き卵を充填するには、型枠2を開いた状態(図5)から閉じた状態(図6)として、蓋部24を開けて注ぎ口25から内部に形成された略卵形状の成形部23に所定量の溶き卵を充填する。充填が終わったら、蓋部24を閉じて(図7)、調理部13に載置するようにする。
【0028】
型枠2は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PPX)等の、マイクロ波が透過可能で、電子レンジ内部の蒸気熱に耐えることができる耐熱性を備えた合成樹脂により形成することができる。型枠2は、射出成形等の公知の成形方法で簡便に製造することができる。
【0029】
(III)卵焼きの作り方:
次に、本実施形態に係る卵調理装置1を用いて卵焼きを作る方法の一例を説明する。まず、卵調理装置1を構成する装置本体11の水貯留部14に適量の水を入れ、水貯留部14に水を貯めておく。また、型枠2の成形部23に溶き卵を充填するために、型枠2を閉じて、注ぎ口25から溶き卵を注ぎ入れて充填する。溶き卵を充填した後、蓋部24を閉めて、型枠2の下方に形成された嵌め込み部26を調理部13の底に形成された止め部19の溝192に嵌め込んで、型枠2を調理部13に載置固定する。
【0030】
調理部13に溶き卵を充填済みの型枠2を載置固定したら、蓋体12を閉じて、蓋体12に形成された係止凸部182を装置本体11に形成された係止凹部181に入れて係止し、蓋体12を装置本体11に固定する。
【0031】
このようにして調理部13に溶き卵が充填された型枠2を載置固定し、水貯留部14に水を入れた卵調理装置1を、蓋体12を閉じた状態で電子レンジのターンテーブル(図示せず)等に載せ、電子レンジを運転する。電子レンジを運転させると、マイクロ波は水貯留部14の壁面141,142,143を透過して、水貯留部14に入っている水Wを加熱し、蒸気を発生させる。発生した蒸気は、境界部15の上方に形成された空間部3を通って調理部13に載置されている型枠2に達し、型枠2の成形部23に充填された溶き卵を加熱して固化させる。
【0032】
また、調理部13を形成する壁面131,132,133及び境界部15についてはマイクロ波が透過不可能であるが、水貯留部14の壁面141,142,143を透過したマイクロ波が、境界部15の上方に形成された空間部3を通過して調理部13に載置された型枠2に達し、型枠内部に形成された成形部23に充填された溶き卵を加熱して固化させることになる。このようにして、蒸気の加熱及び境界部15の上方に形成された空間部3を通過するマイクロ波による加熱という2つの手段による加熱により、調理部13の型枠2に充填された溶き卵がちょうどよく加熱固化され、型枠2に形成された成形部23の形状に対応した所望の立体的形状(例えば、動物やキャラクター等の姿形等の立体的形状等)の卵焼きを簡便に作ることができる。
【0033】
なお、本発明に係る卵調理装置1にあっては、前記したように、卵調理装置1を電子レンジのターンテーブル等に載置し、電子レンジを運転させるだけの操作で卵焼きを得ることができる。電子レンジの運転条件については、卵調理装置1の大きさや作ろうとする卵焼きの大きさや数等により適宜決定すればよい。
【0034】
(IV)本発明の効果:
以上説明した本実施形態に係る卵調理装置1は、電子レンジによるマイクロ波により溶き卵を加熱固化させて卵焼きを作るにあたり、調理部13に載置される型枠2に形成された空間である成形部23の形状に対応した所望の立体的形状とすることが可能であるので、例えば、動物やキャラクター等の姿形等の立体的形状の卵焼きを簡便に作ることができる卵調理装置1となる。また、かかる型枠2の成形部23に充填された溶き卵を電子レンジで加熱する手段として、電子レンジにおけるマイクロ波により水貯留部14に入れられた水が加熱されて発生する蒸気による加熱と、装置本体11の境界部15の上方と蓋体12との間に形成された空間部3を通過するマイクロ波による加熱を用いているので、型枠2の成形部23に充填された溶き卵が卵焼きを作るのにちょうどよく加熱され、できあがりのよい卵焼きを手間や時間をかけずに簡便に作ることができる卵調理装置1となる。
【0035】
なお、本発明に係る卵調理装置1は、型枠2の成形部23に充填された溶き卵を、水貯留部14の蒸気等で加熱して蒸すことにより卵焼きを作るものである。一般に、蒸し料理は下からの蒸気で食材を加熱調理するので、通気孔が空けられた中敷等が必要になるが、本発明に係る卵調理装置1は、溶き卵を加熱するための蒸気が、調理部13に隣接されて形成される水貯留部14から発生し、空間部3を通過することにより入れられるので、かかる中敷き等が不要となり、卵調理装置1の部材点数を少なくすることができる。
【0036】
(V)実施形態の変形:
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記し
た実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる
範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。ま
た、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達
成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記した各実
施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本
発明に含まれるものである。
【0037】
例えば、前記した実施形態では、溶き卵が充填される型枠2の内部に略卵形状の空間である成形部23を形成し、略卵形状の卵焼きを作る態様を例に挙げて説明したが、得られる卵焼きの形状は型枠2の成形部23の形状に対応し、かかる成形部23(ないしは得られる形状)は例に挙げた卵形状には限定されず、例えば、動物やキャラクターの顔や姿等の任意の立体的形状とすることができる。
【0038】
前記した実施形態では、略矩形状の開口部16を有した平面視略矩形状の筐体からなる装置本体12を境界部15で調理部13と水貯留部14の2つに区画し、調理部13と水貯留部14が境界部15を介して隣り合う配置を例に挙げて説明したが、調理部13及び水貯留部14の配置はこれには限定されず、蓋体12を閉めた場合に、蓋体12と境界部15との間に調理部13及び水貯留部14と連通する空間部3が形成され、空間部3を通過する水貯留部14からの蒸気及びマイクロ波が調理部13に載置された型枠2の成形部23に充填された溶き卵を加熱できるものであればその配置は任意であり、例えば、図9や図10に示すような配置を採用することができる。
【0039】
図9及び図10は、卵調理装置1を構成する調理部13と水貯留部14の配置の他の態様を示した概略図(装置本体11の開口部16を上から見た状態)である。図9は、調理部13の左右両側に境界部15を介して水貯留部14を配置した構成であり、調理部13を構成する壁面131,132はマイクロ波が透過不可能とされ、水貯留部14を構成する壁面141,142,143,144、145,146はマイクロ波が透過可能となる。また、図10は、調理部13が境界部15に取り囲まれて形成され、水貯留部14が境界部15を介して調理部13の周囲に配置(調理部13の周囲に境界部15を介して水貯留部14を配置)した構成であり、水貯留部14を構成する壁面141,142,143,144は、マイクロ波が透過可能となる。一方、調理部13は、装置本体11の外側に現れて電子レンジからのマイクロ波が直接照射される壁面はなく、境界部15で取り囲まれて構成されることになる。そして、蓋体12を閉めた場合には、蓋体12と境界部15との間に調理部13及び水貯留部14と連通する空間部3が形成され、空間部3を通過する水貯留部14からの蒸気及びマイクロ波が調理部13に載置された型枠2の成形部23に充填された溶き卵を加熱する。かかる図9及び図10の構成もあくまでも一例であり、これ以外の構成を採用することもできる。
【0040】
なお、前記した例ではいずれも装置本体11の開口部16が平面視略矩形状の態様を示したが、例えば、図10の構成において、円形状の調理部13の周囲に円形状の水貯留部14を配置した、装置本体11の開口部16が平面視略円形状となるような構成等、その形状も任意に決定することができる。
【0041】
前記した実施形態では、装置本体11に形成された境界部15の上端と蓋体12との間に隙間が形成するようにして空間部3を形成して、水貯留部14からの蒸気及び水貯留部14の壁面141,142,143を透過したマイクロ波を、調理部13の型枠2に達するようにしたが、例えば、蓋体12が平坦な板状である等、蓋体12と境界部15との間に空間が形成されにくい場合には、境界部15に切り欠きを設けて、空間部3を形成するようにしてもよい。
【0042】
前記した実施形態では、調理部13と水貯留部14を区画する境界部15について、遮蔽板17を介在させてマイクロ波が透過できないような態様を示したが、空間部3付近の部分(例えば0.5〜2.0cm程度。好ましくは1.0〜2.0cm、特に好ましくは1.0〜1.5cm)を遮蔽しないようにする等、その一部を遮蔽しないようにしてもよい。また、境界部15全体を遮蔽しないようにしてもよい。
【0043】
前記した実施形態では、マイクロ波を透過させないように、例えば、図5に示すように、合成樹脂等により形成された壁面131等や蓋体12の内部にアルミニウム薄板等の遮蔽板17を介在させることにより、遮蔽すべき部分の遮蔽を行っていた。一方、遮蔽すべき部分の遮蔽についてはこのような構成に限定されず、例えば、対象となる部分(壁面や蓋体等)を合成樹脂により形成し、その内面をアルミニウム等の金属材料で形成した遮蔽体とした2層構造とするようにしてもよい。また、蓋体12であれば、前記した蓋体12と共通する形状の、ポリプロピレン等の合成樹脂等で形成された蓋体本体(図示せず)と、アルミニウム等の金属材料で形成された遮蔽体(図示せず)とを別々に形成して、これらを開口部16に対して遮蔽体、蓋体本体の順に被せるようにしてもよい。
【0044】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、卵焼きを子供が喜びそうな立体的形状でできあがりよく作ることができる卵調理装置を提供する手段として有利に使用することができ、産業上の利用可能性が非常に高い。
【符号の説明】
【0046】
1 …… 卵調理装置
11 …… 装置本体
111 …… 把持部
12 …… 蓋体
13 …… 調理部
131,132,133 …… 調理部を構成する壁面
14 …… 水貯留部
141,142,143,144,145,146 …… 水貯留部を構成する壁面
15 …… 境界部
16 …… 装置本体の開口部
16a …… 調理部の開口部
16b …… 水貯留部の開口部
17 …… 遮蔽板
181 …… 係止凹部
182 …… 係止凸部
19 …… 止め部
191 …… 止め部本体
192 …… 溝
2 …… 型枠
21 …… 第1型枠
22 …… 第2型枠
23 …… 成形部
24 …… 蓋部
25 …… 注ぎ口
26 …… 嵌め込み部
3 …… 空間部
H1,H2 …… ヒンジ
W …… 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レンジにより溶き卵を加熱により固化させて調理する卵調理装置であって、
境界部により調理部と水貯留部に区画された筐体からなる装置本体と、
当該装置本体の開口部を開閉可能に覆う蓋体と、
使用時に前記調理部に載置され、内部に溶き卵を充填するための所望の立体的形状の空間となる成形部が形成された型枠と、を含み、
前記蓋体を閉めた場合に、当該蓋体と前記境界部との間に前記調理部及び前記水貯留部と連通する空間部が形成され、
前記調理部を構成する壁面及び前記蓋体は、マイクロ波が透過不可能とされ、
前記水貯留部を構成する壁面及び前記型枠は、マイクロ波が透過可能とされていることを特徴とする卵調理装置。
【請求項2】
前記調理部が前記境界部に取り囲まれて形成され、前記水貯留部が前記境界部を介して前記調理部の周囲に配置されることを特徴とする請求項1に記載の卵調理装置。
【請求項3】
前記境界部が、マイクロ波が透過不可能とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の卵調理装置。
【請求項4】
前記装置本体及び前記蓋体が合成樹脂により形成され、
前記マイクロ波が透過不可能に形成されている部分が、合成樹脂の内部に遮蔽板を介在させ、インサート成形により一体的に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の卵調理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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