説明

厚い層の水性エポキシ系用硬化剤としてのポリアルキレンアミン付加物

【課題】タイルグラウトにおいて、水だけ或いは弱酸性水溶液でタイルから容易に除去し得るタイルグラウト組成物及びそれを可能とする硬化剤組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも一つのポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂(A)と、N‐3‐アミノプロピルエチレンジアミン(N3)、N,N’‐ビス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン(N4)及びN,N,N’‐トリス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン(N5)の混合物を含むポリアルキレンアミン組成物(B)との反応生成物を含む硬化剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は付加されたポリアルキレンアミン化合物、前記の化合物から誘導された硬化剤及びアミン‐エポキシ組成物、並びに前記の化合物及び/又は組成物から製造された物に関する。
【背景技術】
【0002】
アミン系硬化剤によって硬化した、固まった、及び/又は架橋したエポキシ樹脂は広く知られている。それらのアミン‐エポキシ素材は、塗料、接着剤及び複合材料から、コンクリートの床材、セルフレベリング(self-leveling)床材(flooring)及びグラウト(grout)のための配合物のような土木建築用まで多岐に渡る用途で広範に用いられる。
【0003】
過去数十年に幾多の水性(waterborne)エポキシ樹脂硬化剤が生まれた。その硬化剤は、エポキシ樹脂と硬化剤との配合物中の溶媒の存在に起因する揮発性有機化合物(volatile organic compounds、以下VOCsと略すことがある)、並びにその溶媒の存在に関連する臭気及び環境と健康の恐れを無くすか減らすことができる。多くの水性エポキシ系は他のエポキシ系、特に100%の固形分又は無溶媒系より粘性も低く、またそれ故に供給しやすく、塗工後の平滑な膜や層まで水準を保ちやすい。
【0004】
特定の用途では、例えば水による希釈で、固形分40%未満のような比較的低固形分に水性硬化剤を配合することが望ましい。多くの水溶性硬化剤は、残念なことに、配合物の相分離を引き起こすこと無しに希釈できるものではない。これは、さもなければ透明な配合物では曇りによって証拠付けられる。前記の相分離は、保管中における硬化剤配合物の不安定性を導く場合があるので好ましくない。幾つかの例では、この問題は、現場での水による希釈において、また使用のためにエポキシ樹脂と硬化剤を混合するすぐ前にだけ注意を向けられる。制御された製造環境における特定の固形分の配合とは対象的に、現場の配合は調和のない混合と汚染物質の導入につながり得るが、これは最終用途では性能上の問題を引き起こす場合がある。水性製造物の安定性を向上させる別の方法は、カルボン酸のような酸を加えることである。典型的に、この方法は最終硬化物の耐水及び耐薬品特性に悪影響を及ぼす。
【0005】
水性エポキシ系又はタイルグラウト(tile grout)の混合及び適用に用いられる装置の洗浄は、多くの場合に難しく、また界面活性剤及び洗浄剤又は溶剤の使用が、申し分のない洗浄のためにたびたび採用されるに違いない。いったんタイルグラウトが適用されると、水だけ或いは弱酸性水溶液でタイルからそれらの系を除去し得ることは有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来の技術における欠点を解消することが可能な硬化剤組成物及びそれを用いたアミン‐エポキシ組成物を提供することにある。また、タイルグラウトにおいて、水だけ或いは弱酸性水溶液でタイルから容易に除去し得るタイルグラウト組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は硬化剤組成物及び前記組成物の製造方法を提供する。これらの硬化剤組成物はエポキシ樹脂の硬化、固化、及び/又は架橋に用いられる。本発明の硬化剤組成物は、少なくとも一つのポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂(A)と、N‐3‐アミノプロピルエチレンジアミン(N3)、N,N’‐ビス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン(N4)及びN,N,N’‐トリス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン(N5)の混合物を含むポリアルキレンアミン組成物(B)との反応生成物を含む。
【0008】
別の態様では、本発明は、
(1)少なくとも一つのポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂(A)と、少なくとも一つのポリアルキレンアミン(B)との反応生成物、
(2)二個以上の活性アミン水素を有する少なくとも一つの多官能価のアミン、及び任意に
(3)酸
の接触生成物を含む硬化剤組成物を提供する。
【0009】
一般に、本発明の硬化剤組成物は、固形分100%基準で約80から約500までのアミン水素当量(AHEW)を有する。
【0010】
水溶性又は水性(WB)硬化剤組成物は本発明の範囲内である。前記水性硬化剤組成物は、上述した硬化剤組成物及び水を含む。この水性(WB)硬化剤組成物は、肉眼で確認できるような相分離なしで、固形分40%未満に、好ましくは固形分20%未満に希釈できる。
【0011】
本発明は、さらに別の態様では、アミン‐エポキシ組成物を提供する。例えば、本発明のアミン‐エポキシ組成物は、
(1)少なくとも一つのポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂(A)と、少なくとも一つのポリアルキレンアミン(B)との反応生成物、
(2)二個以上の活性アミン水素を有する少なくとも一つの多官能価のアミン、及び任意に
(3)酸
の接触生成物を含む硬化剤組成物、
並びに
少なくとも一つの多官能価のエポキシ樹脂を含むエポキシ組成物
の反応生成物を含む。
【0012】
別の例として、本発明のアミン‐エポキシ組成物は、少なくとも一つのポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂(A)と、N‐3‐アミノプロピルエチレンジアミン(N3)、N,N’‐ビス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン(N4)及びN,N,N’‐トリス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン(N5)の混合物を含むポリアルキレンアミン組成物(B)との反応生成物を含む硬化剤組成物、
並びに
少なくとも一つの多官能価のエポキシ樹脂を含むエポキシ組成物の反応生成物を含む。
【0013】
さらに、別の態様では本発明は、直上で述べたアミン‐エポキシ組成物及び水を含む水溶性又は水性(WB)のアミン‐エポキシ組成物を提供する。これらの水性アミン‐エポキシ組成物は、セメント質の支持体上に適用された時には速い硬化速度、良好な耐薬品性、速い固化進行、及び安定性を有する。この発明に基づいたエポキシ系は、水又は弱酸性水で、添加した洗浄剤、界面活性剤又は溶媒の使用なしで、洗浄できる。
【0014】
ここに開示したアミン‐エポキシ組成物から生まれた製品としては、限定されるものではないが、接着剤、塗料、プライマー、シーラント、養生剤(curing compound)、建設用材、床材(flooring product)、又は複合製品、特にタイルグラウト及びセルフレベリング床材のような厚い層の製品が挙げられる。
【0015】
さらに別の態様では、タイルグラウト組成物は、5〜15wt%のエポキシ樹脂、5〜15wt%の本発明のポリアミンエポキシ付加物硬化剤組成物、50〜85wt%の充填剤、及び2〜20wt%の水(水の量は全固形分基準)、及び任意に0.5〜5wt%の添加剤を含む。
【0016】
本発明のさらに別の態様では、
隙間を有する空間的な関係で複数個のタイルを組み立てること、
タイルの隙間に本発明のタイルグラウト組成物を適用すること、
タイル表面から過剰なタイルグラウト組成物を除去すること、及び
タイルグラウト組成物を硬化させて塗り固めたタイルを取り付けること
からなるタイルを塗り固めるための方法が提供される。
【0017】
本発明のさらに別の態様では、セルフレベリング床材用組成物は、10〜20wt%のエポキシ樹脂、10〜20wt%の本発明のポリアミンエポキシ付加物硬化剤組成物、50〜75wt%の充填剤、及び4〜20wt%の水(水の量は全固形分基準)及び任意に0.5〜5wt%の添加剤を含む。
【0018】
本発明のさらに別の態様として、
約3cmまでの厚さで支持体の表面に、本発明のセルフレベリング床材用組成物を適用すること、及び
セルフレベリング床材用組成物を硬化させて平滑な床材を取り付けること
からなるセルフレベリングな床を調整するための方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
下記の定義と略語は、本発明の詳細な説明を理解するうえで当業者を助けるために規定される。
AHEW アミン水素当量(amine hydrogen equivalent weight)
Ancamine(登録商標)2655 N3、N4及びN5の混合物を含み、エア プロダクツ アンド ケミカルズ 社(Air Products and Chemicals, Inc.)から商業的に入手可能な硬化ポリアミン(polyamine curative)
DETA ジエチレントリアミン(diethylenetriamine)
EDA エチレンジアミン(ethylenediamine)
EEW エポキシ当量(epoxy equivalent weight)
EO エチレンオキシド (ethylene oxide)
N3 N‐3‐アミノプロピルエチレンジアミン(N-3-aminopropyl ethylenediamine)
N4 N,N’‐ビス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン(N,N'-bis(3-aminopropyl)ethylenediamine)
N5 N,N,N’‐トリス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン(N,N,N'-tris(3-aminopropyl)ethylenediamine)
PO プロピレンオキシド(propylene oxide)
TEPA テトラエチレンペンタミン(tetraethylenepentamine)
TETA トリエチレンテトラミン(triethylenetetramine)
水溶性 補助溶剤が実質的な含有量で存在することなく(1%未満で)、特定の固形分における目視によって視察された時に、溶液が透明に見える。
WB 水性(waterborne)
【0020】
アミン及びエポキシ‐アミン組成物
本発明は硬化剤組成物とそれらの硬化剤組成物の製造方法を開示する。本発明の硬化剤組成物は、エポキシ樹脂を硬化させ、固化させ、及び/又は架橋させるために使用される。その組成物は下記(A)と(B)との反応生成物を含む。
(A)少なくとも一つのポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂
(B)N‐3‐アミノプロピルエチレンジアミン(N3)、N,N’‐ビス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン(N4)及びN,N,N’‐トリス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン(N5)の混合物を含むポリアルキレンアミン組成物
【0021】
別の態様では、本発明は、下記(1)、(2)及び任意に(3)の接触生成物を含む硬化剤組成物を提供する。
(1)下記(A)と(B)との反応生成物
(A)少なくとも一つのポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂
(B)N‐3‐アミノプロピルエチレンジアミン(N3)、N,N’‐ビス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン(N4)及びN,N,N’‐トリス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン(N5)の混合物を含むポリアルキレンアミン組成物
(2)二個以上の活性アミン水素を有する少なくとも一つの多官能価のアミン、及び任意に
(3)酸、特にカルボン酸
【0022】
一般的に、硬化剤組成物は、固形分100%基準で約80から約500までのアミン水素当量(AHEW)を有する。異なる態様では、硬化剤組成物は固形分100%基準で約80から約300まで、又は約80から約250までのAHEWを有する。さらには、硬化剤組成物は固形分100%基準で約80から約125までのAHEWを有し得る。
【0023】
多官能価のアミンに対する、少なくとも一つのポリアルキレンアミン及び少なくとも一つのポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂の反応生成物の相対量は変わり得る。この変化は、例えば最終用途、望ましい特性、並びに適用の方法及び状態によって決まる。
【0024】
さらに、ここに述べた硬化剤組成物は無溶媒(solventless)である。無溶媒は溶媒なし(solvent-free)とも固形分100%とも呼ばれる。あるいは、本発明の別の態様では、それらの組成物は、例えば水や有機溶媒のような少なくとも一つの希釈剤をさらに含むことができる。適切な有機溶媒がアミン硬化配合物化学の当業者によく知られている。
【0025】
水溶性又は水性の硬化剤組成物は本発明の範囲内である。水性硬化剤組成物は、前述の硬化剤組成物と水との接触生成物を含む。前記の水溶性硬化剤組成物は30〜80wt%、とりわけ50〜70wt%の固形分を含むだろう。
【0026】
本発明の硬化剤組成物は、ポリアルキレンアミン化合物に対する変性ポリエポキシド樹脂の様々な反応物比で製造され得る。少なくとも一つのポリアルキレンアミンのモル数に対するポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂中における理論値のエポキシ基数(eq epoxy)の比が約0.2〜約1.5の範囲(約0.2:1から約1.5:1まで)にあることは、本発明の範囲内である。別の態様では、この比は約0.25、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4又は約1.5である。さらに別の態様では、この比は約0.3〜約1.25の範囲、又は約0.4〜約1.2の範囲である。あるいは、少なくとも一つのポリアルキレンアミンのモル数に対するポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂中における理論値のエポキシ基数の比は、約0.5〜約1.1の範囲である。さらに別の態様では、この比は約0.7〜約1.1の範囲、又は約0.9〜約1.1の範囲である。
【0027】
本発明に従って、硬化剤組成物の製造方法が提供される。この方法は、ポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂及び少なくとも一つのポリアルキレンアミン化合物をその他の成分に加えることからなる。一つの成分、例えばポリエポキシド樹脂が、一般に約1時間から約3時間に亘ってゆっくりと別の成分に加えられる。反応温度は約50℃と約150℃の間である。反応温度は添加工程の間、実質的に一定に保たれる。別の態様では、反応温度は約70℃から約85℃の間である。反応は発熱を引き起こすことがあり、それは設定値よりも温度を上昇させる。添加工程が完了した後は、温度を変えてもよい。添加工程後の温度は約50℃から約150℃の間である。あるいは、この段階での温度は約100℃から約130℃の間である。実質的に完了した反応を与えるために、反応はさらに約30分間から約2時間継続させてもよい。
【0028】
本発明の別の態様では、反応生成物が冷える前に、粘度を下げるため、また硬化剤組成物にとって望ましいAHEWを標的にするために少なくとも一つの多官能価のアミンが加えられる。所望により、前記の水溶性硬化剤組成物にとって望ましい固形分パーセントに調整するために、水が加えられる。
【0029】
さらに、水による希釈の後に単一相系(single phase systems)を形成することは、本発明の水溶性硬化剤組成物にとって有用になり得る。例えば、本発明は約20℃で水溶性組成物を提供するし、そこでは単一相系の水溶性硬化剤組成物を形成するために、硬化剤組成物は水により固形分40%未満に希釈される。水溶性硬化剤組成物は実質的に補助溶媒がない。実質的に補助溶媒がないとは、水以外の溶媒又は希釈剤(例えば、酸や有機溶媒)の1質量%未満が水溶性硬化剤配合物中に存在することを意味する。酸は、アミン基をプロトン化し、またそれによって水中での硬化剤組成物の溶解性を向上させるために使用される。酸の例としては、酢酸、乳酸、サリチル酸及びセバシン酸のようなカルボン酸、若しくはスルファミン酸及びホウ酸のような他の酸、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。サリチル酸が好ましい。
【0030】
また、これらの単一相の水性組成物や配合物は、目視では実質的に透明である。別の態様では、単一相の水溶性硬化剤組成物は、固形分20%未満に水で希釈された後に上記と同条件下で形成され得る。さらなる態様では、単一相の水溶性組成物は、固形分10%未満に水で希釈された後に、実質的に補助溶媒なしで、約20℃において形成される。
【0031】
ここで述べる水溶性硬化剤組成物は長期間に亘り均一に単一相を保持できるが、それは生成物の貯蔵及び対象とする用途におけるその後の使用において求められることがある。また、もしもこの組成物には実質的に補助溶媒がないのならば、これらは実質的に揮発性有機化合物(VOCs)がないことになり得るし、当業者に理解されているように、環境、健康及び安全性の問題で有用になり得る。
【0032】
水性硬化剤組成物は、例えばフェニルグリシジルエーテル、o‐クレシルグリシジルエーテル、p‐tert‐ブチルフェニルグリシジルエーテル、n‐ブチルグリシジルエーテル、及び他の類似のグリシジルエーテル又はエステルのような単官能価のエポキシドでさらに改良してもよい。所望により、本発明の硬化剤組成物は、例えば、酢酸、乳酸、サリチル酸、及びセバシン酸のようなカルボン酸、若しくはスルファミン酸及びホウ酸のような他の酸、又はこれらの組み合わせなどの酸をさらに含み得る。酸の機能の追加は、水への硬化剤組成物の溶解性を増加させる。さらに、ここに開示される硬化性組成物は他の商業的に入手可能な硬化剤及び/又は促進剤と混ぜてもよい。前記の商業的に入手可能な硬化剤としては、限定するものではないが、水性硬化剤が挙げられ、例えば硬化速度、乾燥の速さ、固化の進行、透明度、及び光沢のような特定の特性を目的とする配合に用いられる。
【0033】
本発明は、さらに別の態様において、アミン-エポキシ組成物を提供する。例えば、本発明のアミン-エポキシ組成物は、下記硬化剤と下記エポキシ組成物との反応生成物を含む。
硬化剤は、下記反応生成物(1)と、下記多官能価のアミン(2)と、必要に応じてカルボン酸(3)との接触生成物を含む。
(1)少なくとも一つのポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂(A)と、少なくとも一つのポリアルキレンアミン(B)との反応生成物
(2)二個以上の活性アミン水素を有する多官能価のアミン
(3)カルボン酸
エポキシ組成物は、少なくとも一つの多官能価のエポキシ樹脂を含むエポキシ組成物である。
【0034】
別の例としては、本発明のアミン‐エポキシ組成物は、下記反応生成物(1)の接触生成物を含む硬化剤組成物と下記エポキシ組成物との反応生成物を含む。
(1)少なくとも一つのポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂(A)と、N‐3‐アミノプロピルエチレンジアミン(N3)、N,N’‐ビス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン(N4)及びN,N,N’‐トリス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン(N5)の混合物を含むポリアルキレンアミン組成物(B)との反応生成物である。
エポキシ組成物は、少なくとも一つの多官能価のエポキシ樹脂を含むエポキシ組成物である。
【0035】
さらに、本発明の別の態様では、直前で述べたアミン‐エポキシ組成物及び水を含む水溶性アミン-エポキシ組成物を提供する。
【0036】
本発明は、前述した通りにアミン-エポキシ組成物を含む製造品も含む。前記の製造品としては、限定されるものではないが、接着剤、塗料、プライマー、シーラント、養生剤、建設用材、床材用組成物(flooring composition)、セルフレベリング床用組成物(self-leveling flooring composition)、グラウト、アンカーボルト、又は複合製品が挙げられる。これらの技術分野の当業者によく知られているように追加成分又は添加剤が、製品を製造するために、本発明の成分と共に使用され得る。
【0037】
硬化剤組成物又は硬化剤に対するエポキシ組成物の選定された相対量は、例えば最終用途品、その望ましい性質、及び最終用途品を製造するための二次加工の方法や条件によって変わることがある。例えば、あるアミノ-エポキシ組成物を用いている塗料用途では、硬化剤組成物の量に比べてより多くのエポキシ樹脂を混ぜることは、乾燥時間を増加させるが、硬度を増加させ、光沢によって測定されるような外観の向上した塗料を提供できる。本発明のアミン‐エポキシ組成物は一般に、硬化剤組成物中のアミン水素に対するエポキシ組成物中のエポキシ基の理論比が、約0.7〜約1.5の範囲である。例えば、前記アミン‐エポキシ組成物は、約1.5、約1.4、約1.3、約1.2、約1.1、約1、約0.9、約0.8、又は約0.7の理論比を有し得る。別の態様では、理論比は約0.7〜約1.3の範囲である。さらに別の態様では、理論比は約0.8〜約1.2の範囲になる。さらに別の態様では、理論比は約0.9〜約1.1の範囲である。
【0038】
「接触生成物(contact product)」という用語は、成分の二つ以上がその他の成分を産出しつつ互いに反応するかもしれない可能性を含んで、任意の順序で、任意の方法で、そして任意の長さの時間で、成分同士が共に接触したような組成物を記述するために、ここで用いる。例えば、成分は配合や混合によって接触させられることがある。さらに、ある成分の接触は、ここで述べられた組成物や配合物の他の成分の存在や不存在を問わず起こり得る。追加の原料や成分を混合することは、当業者に知られている任意の方法でなされる。さらに、「接触生成物」という用語としては、混合物、配合物、溶液、分散体、スラリー、及び反応生成物など、又はこれらの組み合わせが挙げられる。「接触生成物」は反応生成物を含むが、それぞれの成分はお互いに反応することを求められるものではない。
【0039】
ポリアルキレンアミン
本発明に有用なポリアルキレンアミンとしては、限定されるものではないが、ポリエチレンアミン、ポリプロピレンアミン、アミノプロピル化エチレンジアミン、アミノプロピル化プロピレンジアミン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
ポリエチレンアミンの例としては、限定されるものではないが、エチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)及び他の高級ポリエチレンアミンが挙げられる。
好ましいポリプロピレンアミンとしては、限定されるものではないが、プロピレンジアミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、及び他の高級ポリプロピレンアミンが挙げられる。
アミノプロピル化エチレンジアミン及びアミノプロピル化プロピレンジアミンとしては、限定されるものではないが、N‐3‐アミノプロピルエチレンジアミン(N3)、N,N’‐ビス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン(N4)、N,N,N’‐トリス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン(N5)、N‐3‐アミノプロピル‐1,3‐ジアミノプロパン、N,N’‐ビス(3‐アミノプロピル)‐1,3‐ジアミノプロパン、及びN,N,N’‐トリス(3‐アミノプロピル)‐1,3‐ジアミノプロパンが挙げられる。
ポリアルキレンアミン化合物の混合物が本発明に用いられ得る。
4個以上の窒素を含むポリエチレンアミンは一般に錯体混合物として利用できることが、当業者に認められるだろう。それらの大部分は同数の窒素を含んでいる。これら混合物の副生物はしばしば同族体(congeners)と呼ばれる。例えば、TETAは直鎖状TETAだけでなく、tris‐アミノエチルアミン、N,N’‐ビス‐アミノエチル‐ピペラジン、及び2‐アミノエチルアミノエチルピペラジンも含む。
【0040】
本発明の一態様では、ポリアルキレンアミン化合物は、EDA、DETA、TETA、TEPA、PHEA、プロピレンジアミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、N3、N4、N5、N‐3‐アミノプロピル‐1,3‐ジアミノプロパン、N,N’‐ビス(3‐アミノプロピル)‐1,3‐ジアミノプロパン、N,N,N’‐トリス(3‐アミノプロピル)‐1,3‐ジアミノプロパン、又はこれらの組み合わせである。別の態様では、ポリアルキレンアミン化合物は、N3、N4、及びN5の混合物、又はN‐3‐アミノプロピル‐1,3‐ジアミノプロパン、N,N’‐ビス(3‐アミノプロピル)‐1,3‐ジアミノプロパン、及びN,N,N’‐トリス(3‐アミノプロピル)‐1,3‐ジアミノプロパンの混合物である。本発明の使用に適した混合物は、一般に1〜25質量部のN3、50〜94質量部のN4、及び3〜25質量部のN5を含む。好ましくは、1〜10質量部のN3、70〜94質量部のN4、及び3〜15質量部のN5を含む。特に好ましくは、1〜5質量部のN3、85〜94質量部のN4、及び3〜8質量部のN5を含む。前記の混合物は、当業者に知られる手法によって製造される。これは、アクリロニトリルとEDAとの反応によるもので、続いて金属触媒によって水素化される。得られたアミノプロピル化EDA混合物の蒸留又はさらなる分離は一般に必要とされない。所望により、反応による低分子量の副生成物は除去し得る。また、これらの副生成物は、典型的にN3よりも揮発しやすい。
【0041】
本発明に役立つポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド(1)は下記(i)と下記(ii)との反応生成物を含むことができる。
(i)少なくとも一つのポリエポキシド化合物
(ii)少なくとも一つのポリアルキレンポリエーテルポリオール
【0042】
適切なポリエポキシド化合物及びその添加剤は、米国特許第4,197,389号明細書第4欄第12行〜第5欄第52行に開示されている。米国特許第4,197,389号明細書の開示は全体として引用することによりここに含まれる。本発明の一態様では、少なくとも一つのポリエポキシド樹脂化合物としては、限定されるものではないが、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、又はこれらの組み合わせが挙げられる。一般的に、約160から約500までの範囲にあるエポキシ当量のポリエポキシド樹脂化合物が本発明に有用である。
【0043】
適切なポリアルキレンポリエーテルポリオールは、米国特許第4,197,389号明細書第5欄第53行〜第6欄第20行に開示されている。本発明に有用なポリアルキレンポリエーテルポリオールの例としては、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はこれらの組み合わせが挙げられる。異なるポリアルキレンポリエーテルポリオールの混合物と同様に、異なる分子量のポリアルキレンポリエーテルポリオールの混合物が使用され得る。異なるポリエーテルポリオールの組み合わせは、初めに混合され、それからポリエポキシド化合物と反応させることができる。或いは、これらの組み合わせは別々にポリエポキシド化合物と反応させられ、その後に混合されるか配合してもよい。一般に、数平均分子量が約200から10,000まで、約400から約8000まで、約600から約5000まで、又は約800から約2500までの範囲にあるポリアルキレンポリエーテルポリオールが、本発明に有用である。好ましいアルキレンオキシドはエチレンオキシドであり、また好ましい多価アルコールはエチレングリコールである。
【0044】
ポリエポキシド樹脂化合物は、米国特許第4,197,389号明細書に開示されている過程に従ってポリアルキレンポリエーテルポリオールと反応させることができる。多くの場合には、この反応を促進させるためにルイス酸触媒が使用される。例えば、当業者によく知られているBF‐アミン錯体である。加えてこの反応は、当業者に知られているようなモノエポキシド、及び溶媒又は軟化剤の存在下で実施され得る。ポリエポキシド化合物と混合して用いることができる典型的なモノエポキシドとしては、限定されるものではないが、ブチレン、シクロヘキセン及びスチレンオキシドなどのようなエポキシ化不飽和炭化水素;エピクロロヒドリンのようなハロゲン含有エポキシド;メチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコール、2‐エチルヘキシルアルコール、ドデシルアルコールなどのような一価アルコールのエポキシエーテル;フェノール、クレゾール、及びオルト位又はパラ位で置換された他のフェノールなどのような一価フェノールのエポキシエーテル;不飽和カルボン酸のグリシジルエステル;不飽和アルコール又は不飽和カルボン酸のエポキシ化エステル;グリシドアルデヒドのアセタール;又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0045】
本発明に有用なポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂を製造するため、ポリアルキレンポリエーテルポリオール中のヒドロキシル基に対するポリエポキシド化合物中のエポキシ基の反応物比は、一般に約1.5〜約8の範囲内である。本発明の別の態様によれば、反応物比は約1.6、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、又は約7.5である。さらに別の態様では、反応物比は約1.8〜約6の範囲である。さらに別の態様では、ポリアルキレンポリエーテルポリオール中のヒドロキシル基に対するポリエポキシド化合物中のエポキシ基の反応物比は、約2〜約4の範囲である。
【0046】
本発明のある実施態様では、本発明に有用なポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂(2)は、1分子につき平均して少なくとも1.5個のエポキシ基を含むアルコキシル化ジフェノールのジグリシジルエーテル誘導体を含んでもよい。
【0047】
前記アルコキシル化ジフェノールエポキシ樹脂は下記式の構造を有する。
【0048】
【化1】

【0049】
式中、Xはジフェノールから誘導されたアリーリデン基であり、RはC、C、若しくはCのアルキレン基、又はこれらの組み合わせであり、またn+m=1〜20、好ましくはn+m=4〜10である。本発明の好ましい実施態様では、ジフェノールはレソルシノール、ビスフェノールA、又はビスフェノールFである。これらのアルコキシル化ジフェノールエポキシ樹脂は、一般に実施例2の手順に従って作られる。例えば、60〜70%溶液としてトルエン、ジオキサン、又はn‐ジブチルエーテルのような溶媒中でアルコキシル化ジフェノールの1モルが用いられる。原料は10℃に冷却される。その温度に達した時に、触媒、三フッ化ホウ素エーテル、又は四塩化スズが加えられ、続いて10分間でエピクロロヒドリンが添加される。化学量論基準で少し過剰のエピクロロヒドリンが使用される(5〜10%)。40〜60分間の反応後、エポキシ価は0mgKOH/g又は0mgKOH/gのごく近くになるべきである。温度を25℃に上げたら、水酸化ナトリウムの最初の4分の1が加えられ、続いて数グラムの水を添加する。次に温度を70℃に上昇させる。10分後、水酸化ナトリウムの次の4分の1が加えられる。そして、これは全ての水酸化ナトリウム(計1.2モル)が使用されるまで繰り返される。次に反応が70℃でさらに2時間続けられ、その後、形成された塩化ナトリウムを溶解させるために水が加えられる。水層から有機相が分離され、次いで有機相は中間層に達するまで除去される。残った水及び溶媒は、アルコキシル化ジフェノールから誘導されたアルコキシル化ジフェノールジグリシジルエーテルの誘導体である好ましいジグリシジルエーテルを与えるために、減圧及び昇温で蒸留される。
【0050】
上述の樹脂(1)及び(2)は、本発明の実施に好ましいポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂である。好ましいポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂(1)は、ポリエチレンポリオール、ポリプロピレンポリオール、又はこれらの組み合わせと反応したビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、又はこれらの組み合わせである。そして好ましいポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂(2)は、EO、PO、1,2‐BO又はテトラヒドロフランにアルコキシル化されたビスフェノールA若しくはビスフェノールFのようなアルコキシル化ビスフェノール、これらの混合物、又はアルコキシル化ポリフェノールのジグリシジルエーテルと、エピクロロヒドリンとの反応から生じたジグリシジルエーテルである。
【0051】
本発明の特定の実施態様では、本発明のポリグリシジルエーテル(ポリエポキシド)に、ビスフェノールA又はビスフェノールFのジグリシジルエーテル、及び他のポリグリシジルエーテル又は同等のモノグリシジルエーテルのような、ポリオキシアルキレン基を含まないポリグリシジルエーテル(ポリエポキシド)を混合することができる。
【0052】
多官能価のアミン
本発明の組成物は、少なくとも一つの多官能価のアミンを含むことができる。多官能価のアミンは、ここで用いられるときは、アミン官能基を有し、2以上の活性アミン水素を含む化合物を表す。
【0053】
本発明の範囲内にある多官能価のアミンの例としては、限定されるものではないが、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、又は脂肪族アミン、脂環式アミン若しくは芳香族アミンのマンニッヒ塩基誘導体、又は脂肪族アミン、脂環式アミン若しくは芳香族アミンのポリアミド誘導体、又は脂肪族アミン、脂環式アミン若しくは芳香族アミンのアミドアミン誘導体、又は脂肪族アミン、脂環式アミン若しくは芳香族アミンのアミン付加物誘導体など、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0054】
2種以上の多官能価のアミンが本発明の組成物に使用され得る。例えば、少なくとも一つの多官能価のアミンは脂肪族アミン及び脂環式アミンのマンニッヒ塩基誘導体を含み得る。同様に、少なくとも一つの多官能価のアミンはある一つの脂肪族アミン及びそれとは異なる一つの脂肪族アミンを含み得る。
【0055】
典型的な脂肪族アミンとしては、ポリエチレンアミン(EDA、DETA、TETA、TEPA、及びPEHAなど)、ポリプロピレンアミン、アミノプロピル化エチレンジアミン(N3、N4、及びN5など)、アミノプロピル化プロピレンジアミン、1,6‐ヘキサンジアミン、3,3,5‐トリメチル‐1,6‐ヘキサンジアミン、3,5,5‐トリメチル‐1,6‐ヘキサンジアミン、及び2‐メチル‐1,5‐ペンタンジアミンなど、又はこれらの組み合わせが挙げられる。本発明の一態様では、多官能価のアミンは、EDA、DETA、TETA、TEPA、PEHA、プロピレンジアミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、N3、N4、N5、N‐3‐アミノプロピル‐1,3‐ジアミノプロパン、N,N’‐ビス(3‐アミノプロピル)‐1,3‐ジアミノプロパン、N,N,N’‐トリス(3‐アミノプロピル)‐1,3‐ジアミノプロパン、又はこれらの任意の組み合わせである。さらに、ハンツマン社(Huntsman Corporation)からジェファーミン(Jeffamine)名称で市販による入手が可能なポリ(アルキレンオキシド)ジアミン及びポリ(アルキレンオキシド)トリアミンは、本発明に有用である。実例としては、以下に限定されるものではないが、Jeffamine(登録商標)D-230、Jeffamine(登録商標)D-400、Jeffamine(登録商標)D-2000、Jeffamine(登録商標)D-4000、Jeffamine(登録商標)T-403、Jeffamine(登録商標)EDR-148、Jeffamine(登録商標)EDR-192、Jeffamine(登録商標)C-346、Jeffamine(登録商標)ED-600、Jeffamine(登録商標)ED-900、及びJeffamine(登録商標)ED-2001など、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0056】
脂環式アミン及び芳香族アミンとしては、限定されるものではないが、1,2‐ジアミノシクロヘキサン、1,3‐ジアミノシクロヘキサン、1,4‐ジアミノシクロヘキサン、水素化ortho‐トルエンジアミン、水素化meta‐トルエンジアミン、メタキシリレンジアミン、水素化メタキシリレンジアミン(市販では1,3‐BACと称される)、イソホロンジアミン、各種の異性体若しくはノルボルナンジアミン、3,3’‐ジメチル‐4,4’‐ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’‐ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,4’‐ジアミノジシクロヘキシルメタン、及びメチレン橋かけポリ(シクロヘキシル‐芳香族)アミンの混合物など、又はこれらの組み合わせが挙げられる。メチレン橋かけポリ(シクロヘキシル‐芳香族)アミンの混合物は、MBPCAAかそれともMPCAと略され、引用によってここに含まれる米国特許第5,280,091号明細書に記載されている。本発明の一態様では、少なくとも一つの多官能価のアミンは、メチレン橋かけポリ(シクロヘキシル‐芳香族)アミンの混合物(MPCA)である。
【0057】
マンニッヒ塩基誘導体は、上述した脂肪族アミン、脂環式アミン、又は、フェノール若しくは置換フェノール及びホルムアルデヒドを伴う芳香族アミンの反応で作られる。本発明に実用的なマンニッヒ塩基を作るために用いられる典型的な置換フェノールは、カルダノールである。カルダノールはカシューナッツの殻液から得られる。或いは、マンニッヒ塩基は、トリス‐ジメチルアミノメチルフェノール又はビス‐ジメチルアミノメチルフェノールのような第三アミンを含むマンニッヒ塩基と多官能価のアミンの交換反応により製造することができる。ポリアミド誘導体は、脂肪酸の二量体、又は脂肪酸の二量体及び脂肪酸の混合物と、脂肪族アミン、脂環式アミン、又は芳香族アミンとの反応により製造される。アミドアミン誘導体は、脂肪酸と、脂肪族アミン、脂環式アミン又は芳香族アミンとの反応により製造される。アミン付加物は、エポキシ樹脂と、脂肪族アミン、脂環式アミン又は芳香族アミンとの反応により製造される。例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、又はエポキシノボラック樹脂である。脂肪族アミン、脂環式アミン、及び芳香族アミンもフェニルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、及び他のアルキルグリシジルエーテルなどのような一価のエポキシ樹脂に付加され得る。
【0058】
幾つかの用途では、作業者の被ばく及び安全性の問題が生じるかもしれない。そのような用途に使われる特異な多官能価のアミンの揮発度を制限することは有用である。したがって、本発明の別の態様では、少なくとも一つの多官能価のアミンは、6個以上の炭素原子を含む。さらに別の態様では、少なくとも一つの多官能価のアミンは、8個以上の炭素原子を含む。さらに別の態様では、少なくとも一つの多官能価のアミンは、12個以上の炭素原子を含む。
【0059】
多官能価のエポキシ樹脂
本発明のアミン‐エポキシ組成物は、硬化剤組成物と、少なくとも一つの多官能価のエポキシ樹脂を含むエポキシ組成物との反応生成物を含む。ここで用いるときは、多官能価のエポキシ樹脂は、1分子につき2個以上の1,2‐エポキシ基を含む化合物として説明される。この型のエポキシド化合物は当業者にとって周知であり、またY. Tanakaの「エポキシドの合成及び特性( "Synthesis and Characteristics of Epoxides" )」 in C.A. May, ed., 「エポキシ樹脂の化学及び技術(Epoxy Resins Chemistry and Technology)」(Marcel Dekker, 1988)中に記載されている。この文献は引用によってここに含まれる。
【0060】
本発明の使用に適したエポキシ樹脂の一つの分類は、多価フェノールのグリシジルエーテルエポキシ樹脂を含む。これは二価フェノールのグリシジルエーテルを含む。実例としては、限定されるものではないが、レソルシノール、ヒドロキノン、ビス‐(4‐ヒドロキシ‐3,5‐ジフルオロフェニル)‐メタン、1,1‐ビス‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐エタン、2,2‐ビス‐(4‐ヒドロキシ‐3‐メチルフェニル)‐プロパン、2,2‐ビス‐(4‐ヒドロキシ‐3,5‐ジクロロフェニル)‐プロパン、2,2‐ビス‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐プロパン(市販ではビスフェノールAとして知られる)、及びビス‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐メタン(市販ではビスフェノールFとして知られる)など、又はこれらの任意の組み合わせのグリシジルエーテルが挙げられる。加えて、下記構造式の改良された二価フェノールも本発明に有用である。
【0061】
【化2】

【0062】
式中、mは整数であり、またRは上で列記した二価フェノールのような二価の炭化水素基である。この式の物質は、二価フェノール及びエピクロロヒドリンの混合物を重合することにより、又は二価フェノールのジグリシジルエーテルと二価フェノールとの混合物を改良することにより、製造される。与えられる分子においてmの値は整数であるところ、この物質は常にmの平均値によって特徴付けられる混合物である。mの平均値は必ずしも整数ではない。0及び約7の間のmの平均値を有する高分子は本発明の一態様に使用することができる。
【0063】
別の態様では、ノボラック樹脂のグリシジルエーテルであるエポキシノボラック樹脂は、本発明の多官能価のエポキシ樹脂として用いることができる。さらに別の態様では、少なくとも一つの多官能価のエポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、DGEBAの改良型若しくは高分子量型、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、又はこれらの任意の組み合わせである。DGEBAの高分子量型若しくは誘導体は、向上した工程によって製造される。この工程では、エポキシ末端の生成物を得るために、過剰なDGEBAがビスフェノールAと反応させられる。前記化合物のエポキシ当量(EEW)は約450から3000又はそれ以上までの範囲にある。これらの化合物は室温において固体であることから、固形エポキシ樹脂(solid epoxy resin)と呼ばれる。
【0064】
DGEBA又は改良型のDGEBA樹脂は、その低価格及び一般的な高性能特性の組み合わせ故に、しばしば塗料配合物に使用される。エポキシ当量が約174から約250まで、より一般には約185から約195までの範囲にあるDGEBAの市販品質の物質は、容易に入手できる。低分子量では、エポキシ樹脂は液体であり、またしばしば液状エポキシ樹脂(liquid epoxy resin)と呼ばれる。純DGEBAが174のEEWを有するので、液状エポキシ樹脂の大部分の等級はわずかに高分子的であることが、当業者に明らかである。EEWが250から450の間にあり、また一般に改良された工程によって製造される樹脂は、それらが室温で固体及び液体の混合物であるために半固形エポキシ樹脂(semi-solid epoxy resin)と呼ばれる。一般に、固形分基準で約160から約750までのEEWを有する多官能価の樹脂が本発明に有用である。別の態様では、多官能価のエポキシ樹脂は約170から約250までの範囲にあるEEWを有する。
【0065】
最終用途に応じて、エポキシ成分の改質によって本発明の組成物の粘度を減じることが、有用になり得る。例えば、簡便な適用を可能にしながら配合物又は組成物中の顔料濃度の増加を許容するために、また高分子量のエポキシ樹脂の使用を許容するために、粘度が減じられる。したがって、少なくとも一つの多官能価のエポキシ樹脂を含むエポキシ成分が、さらに単官能価のエポキシドを含むことは、本発明の範囲内にある。モノエポキシドの例としては、限定されるものではないが、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、並びに、フェノール、クレゾール、tert‐ブチルフェノール、他のアルキルフェノール、ブタノール、2‐エチルヘキサノール、及び炭素数4から14(C4 to C14)のアルコールなどのグリシジルエーテル、又はこれらの組み合わせが挙げられる。多官能価のエポキシ樹脂は、水、有機溶媒、又はそれらの混合物のような希釈剤と共に、溶液又はエマルションで存在してもよい。
【0066】
多種多様な添加剤
本発明の組成物は多種の用途に使用することができる。最終用途の要件に応じて、特定の用途に合わせるために多種の添加剤が配合物又は組成物に使用することができる。これらの添加剤としては、限定されるものではないが、溶媒(水を含む)、促進剤、可塑剤、充填剤、ガラス若しくは炭素繊維のような繊維、顔料、顔料分散剤、レオロジー改質剤、チキソトロープ、流動性若しくはレベリングの補助剤、界面活性剤、脱泡剤、殺生剤、又はこれら任意の組み合わせが挙げられる。当技術分野で知られている他の混合物又は物質は、組成物又は配合物に含めることができ、かつ本発明の範囲内にあると解する。
【0067】
用途
建設、フローリング、及び厚い層の用途は、コンクリート、モルタル、セメント物質、又は建設業で一般に使用される他の材料との併用で随意に本発明のアミン‐エポキシ組成物を含む組成物を採り入れる。「厚い膜(Thick layer)」は約3cm以下の組成物の塗布又は堆積を意味するが、特定の用途では1から3又は4mmまでを意味する。厚い膜用の組成物のさらなる成分は、充填剤、反応性希釈剤、流動性添加剤、着色剤、及び脱泡剤を含む。厚い膜用途の水溶性組成物は5から60wt%までの水を含むだろう。亀裂注入物及び亀裂充填物もここに開示される組成物から製造される。本発明のアミン‐エポキシ組成物は、樹脂又は改良セメント、タイルグラウト(tile grout)、セルフレベリングの床及びグラウトを形成するために、コンクリート配合物のようなセメント質の材料と混合される。
【0068】
タイルグラウト
グラウト組成物(grout composition)の他の成分は充填剤である。充填剤は好ましくはポルトランドセメント無しの砂である。着色されたタイルグラウト(colored tile grout)のためには、スリーエム(3M)のColorQuartz(登録商標)クリスタル(crystal)のような色塗布された砂(color coated sand)が、砂及び分離着色材料の併用を越えて好ましい。基本的に、砂などの色塗布された充填剤(color coated filler)は、砂表面に付着している顔料を含む。前記のいかなる色塗布された砂及び色塗布された充填剤も使用できる。
【0069】
一般に、使用される砂又は他の充填剤の本質は、グラウト組成物の意図された使用によって決められるだろう。典型的なタイルグラウト組成物(tile grout composition)に関しては、砂は約0.075mmから約0.3mmまでの粉末度を有することになるだろう。
【0070】
水に不溶な充填剤の幾つかの種類が、砂に加えてグラウト組成物に使用されてもよい。他の充填剤としては、破砕ガラスのようなガラス、石英、シリコーン、重晶石、石灰石、アルミナ、雲母及びタルクなどのような他の土由来の材料(earthen materials)が挙げられる。砂は好ましい水に不溶な充填剤である。水に不溶な充填剤がグラウト組成物に加えられる時は、それは組成物の他の成分と混合し、そして分散されるか懸濁するだろう。
【0071】
一般に、タイルグラウト組成物は、5〜15wt%のエポキシ樹脂、5〜15wt%の本発明のポリアミンエポキシ付加硬化剤組成物、50〜85wt%の充填剤、2〜20wt%の水(水の量は全固形分基準)、及び必要に応じて0.5〜5wt%の添加剤を含む。
【0072】
本発明のグラウト(grouting)組成物は、こて、ゴムフロート(rubber float)、スキージー、カートリッジ及びディスペンサーを含む分野に知られた任意の方法によって適用される。
【0073】
グラウト組成物は、滑り止め加工された面及び平坦な面などの多種多様の陶材面を塗り固めるのに使用される。タイルは通常はセラミックタイルだろう。しかし、大理石、グラナイト、石灰石、石積みブロック(mason block)及びストーンもあり得る。一般に、グラウトを要する陶材面は、本発明のグラウト組成物と共に使用され得る。
【0074】
グラウトでタイルを塗り固める(grouting tile)方法は、
隙間を有する空間的な関係で複数個のタイルを組み立てること、
タイルの隙間に本発明のタイルグラウト組成物を適用すること、
タイル表面から過剰なタイルグラウト組成物を除去すること、
及びタイルグラウト組成物を硬化させて塗り固めたタイルを取り付けることからなる。
【0075】
セルフレベリング床材用組成物
セルフレベリング床材用組成物(self-leveling flooring composition)は、10〜20wt%のエポキシ樹脂、10〜20wt%の本発明のポリアミンエポキシ付加硬化剤組成物、50〜75wt%の充填剤、4〜20wt%の水(水の量は全固形分基準)、及び必要に応じて0.5〜5wt%の添加剤を含む。タイルグラウトのために説明された砂を含む充填剤は、セルフレベリング床材用組成物に適する。
【0076】
セルフレベリングな床を作る方法は、
約3cmまでの厚さでコンクリート、金属、又は木のような支持体の表面に、本発明のセルフレベリング床材用組成物を適用すること、
及びセルフレベリング床材用組成物を硬化させて平滑な床材を取り付けることからなる。
【実施例】
【0077】
実施例1
ポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂(A1)の合成
379gのポリエチレングリコール1000(OH当量0.758)及び190のEEWを有する490gのビスフェノールAジグリシジルエーテル(エポキシ当量2.58)を、熱電対及び還流冷却器を備えているかくはん反応器に入れた。ポリオール中のヒドロキシル基に対するポリエポキシド化合物中のエポキシ基又はエポキシ当量の比は3.4だった。次いで3gのAnchor(登録商標)1040BF‐アミン触媒を反応器に加えた。反応器の内容物を撹拌しながら、反応器の温度を170℃に上げた。エポキシ当量が約475〜500に増加するまで、この温度を保持した。次に反応器の内容物を冷却し、樹脂A1として指定する反応生成物を得た。樹脂A1のEEWは498であり、また40℃における粘度は33ポアズ(3.3Pa・s)だった。
【0078】
実施例2
ポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂(A2)の合成
温度計、還流冷却器、及び125mlの滴下漏斗を備えたガラス製二重壁の1.2lかくはん反応器に、369.6g(0.558モル)のDianol372(登録商標)プロポキシ化ビスフェノールA(7.2PO)及び120gのn‐ジブチルエーテルを入れた。反応器とつないだ冷却装置を10℃に設定し、そして入れた原料を冷却した。10℃で、1.5gの三フッ化ホウ素エーテルを導入し、続いて110g(1.19モル)のエピクロロヒドリンを5分から10分で添加し、約40分間反応させた。エポキシ価が0mgKOH/gになった時に反応を終えた。反応を25℃に至らせ、12.4g(0.31モル)の固形の水酸化ナトリウムを加え、続いて3gの水を加えた。温度を70℃に上昇させた。10分後、新たに12.4g(0.31モル)の水酸化ナトリウムを加えた。水酸化ナトリウムの添加を10分後も繰り返し、さらに次の10分後も行なった。計4×12.4gの水酸化ナトリウムを加えた。反応は70℃でさらに2時間続けた。次に400gの水を加え、そして生成した全ての塩化ナトリウムを溶解させるべく反応物と徹底的に混合した。有機相から分離するために水層を残し、次いで中間層に達するまで取り除いた。ゆっくりと20mbarまで減圧し、温度を120℃に上げ、さらに残っている水及びn-ジブチルエーテルを取り除いた(132gが集まった)。生成物(450gの樹脂)が、20マイクロメーターのろ過器上に集まった。樹脂A2を仕上げるために、ビスフェノールAエポキシ樹脂のジグリシジルエーテルEpon(登録商標)828の112.5g(20%)を樹脂に加えた。樹脂A2は728のEEW及び40℃で粘度1200ポアズを有した。
【0079】
実施例3
変性ポリエポキシド樹脂/ポリアルキレンアミン付加物1
熱電対、スターラー、還流冷却器、及び500mlの滴下漏斗を備えた700mlのフランジ付き反応器中のAncamine2655(登録商標)硬化剤(175g、1モル)を80℃に加熱した。温度が90℃を超えないことを守りながら、樹脂A2(364.2g、0.5モル)を1.5時間に亘って加えた。滴下を終えたら、温度を120℃に上昇させ、1時間保持した。冷却後、生成物は106のAHEW、396mgKOH/gのアミン価、及び25℃の粘度4968cP(Dowanol PM(登録商標)溶媒中で70%に混合された)を有した。
【0080】
実施例4
変性ポリエポキシド樹脂/ポリアルキレンアミン付加物2
熱電対、スターラー、還流冷却器、及び500mlの滴下漏斗を備えた700mlのフランジ付き反応器中のトリエチレンテトラミン(155g、1モル)を70℃に加熱した。温度が90℃を超えないことを守りながら、樹脂A2(364.2g、0.5モル)を1.5時間に亘って加えた。滴下を終えたら、温度を120℃に上昇させ、1時間保持した。冷却後、生成物は102のAHEWを有した。
【0081】
実施例5
変性ポリエポキシド樹脂/ポリアルキレンアミン付加物3
熱電対、スターラー、還流冷却器、及び500mlの滴下漏斗を備えた700mlのフランジ付き反応器中のAncamine2655(登録商標)硬化剤(175g、1モル)を70℃に加熱した。温度が90℃を超えないことを守りながら、樹脂A1(498g、0.5モル)を1.5時間に亘って加えた。滴下を終えたら、温度を120℃に上昇させ、1時間保持した。冷却後、生成物は135のAHEW、319mgKOH/gのアミン価、及び25℃の粘度10900cP(Dowanol PM(登録商標)溶媒中で70%に混合された)を有した。
【0082】
実施例6
付加物/多官能価のアミン/カルボン酸配合物(1)
熱電対、還流冷却器、及びスターラーを備えた1lのガラス製反応器に付加物A1(265.7g)を入れ、そして80℃に加熱した。58.3g(0.25モル)のベンジル化DETA/TETA(70/30、なお1.3/1.0でベンジル化)を5分間で加え、そして均質かつ透明になるまで10分間に亘って撹拌した。混合物の冷却が速すぎないように、15分間でゆっくりと水(324g)を加え、そして水による生成物の希釈を止めた。最後に、6.5g(固形分基準で2%)のサリチル酸を加え、そして全てのサリチル酸が溶解するまで撹拌した。結果として固形分50.5%の配合物は、AHEW=190、アミン価=222.9mgKOH/g、及び25℃の粘度=1593cPを有した。
【0083】
実施例7
付加物/多官能価のアミン/カルボン酸配合物(2)
熱電対、還流冷却器、及びスターラーを備えた1lのガラス製反応器に付加物A1(265.7g)を入れ、そして80℃に加熱した。meta‐キシレンジアミン(mXDA、58.3g、0.25モル)を5分間で加え、そして均質かつ透明になるまで10分間に亘って撹拌した。混合物の冷却が速すぎないように、15分間でゆっくりと水(299.7g)を加え、そして水による生成物の希釈を止めた。最後に、6g(固形分基準で2%)のサリチル酸を加え、そして全てのサリチル酸が溶解するまで撹拌した。結果として固形分50.5%の配合物は、AHEW=173、アミン価=222.9mgKOH/g、及び25℃の粘度=1593cPを有した。
【0084】
実施例8
付加物/多官能価のアミン/カルボン酸配合物(3)
熱電対、還流冷却器、及びスターラーを備えた1lのガラス製反応器に付加物A1(265.7g)を入れ、そして80℃に加熱した。イソホロンジアミン(IPDA、42.8g、0.25モル)を5分間で加え、そして均質かつ透明になるまで10分間に亘って撹拌した。混合物の冷却が速すぎないように、15分間でゆっくりと水(324g)を加え、そして水による生成物の希釈を止めた。最後に、6.2g(固形分基準で2%)のサリチル酸を加え、そして全てのサリチル酸が溶解するまで撹拌した。結果として固形分50.5%の配合物は、AHEW=178、アミン価=220mgKOH/g、及び25℃の粘度=1394cPを有した。
【0085】
実施例9
付加物/多官能価のアミン/カルボン酸配合物(4)
熱電対、還流冷却器、及びスターラーを備えた1lのガラス製反応器に付加物A1(265.7g)を入れ、そして80℃に加熱した。ジエチレントリアミン/フェニルグリシジルエーテル付加物(DETA/PGE付加物、80g、0.25モル)を5分間で加え、そして均質かつ透明になるまで10分間に亘って撹拌した。混合物の冷却が速すぎないように、15分間でゆっくりと水(345.7g)を加え、そして水による生成物の希釈を止めた。最後に、6.9g(固形分基準で2%)のサリチル酸を加え、そして全てのサリチル酸が溶解するまで撹拌した。結果として固形分50.5%の配合物は、AHEW=199、アミン価=156.5mgKOH/g、及び25℃の粘度=1480cPを有した。
【0086】
実施例10
付加物/多官能価のアミン/カルボン酸配合物(5)
熱電対、還流冷却器、及びスターラーを備えた1lのガラス製反応器に付加物A2(255.7g)を入れ、そして80℃に加熱した。イソホロンジアミン(IPDA、42.8g、0.25モル)を5分間で加え、そして均質かつ透明になるまで10分間に亘って撹拌した。混合物の冷却が速すぎないように、15分間でゆっくりと水(298.5g)を加え、そして水による生成物の希釈を止めた。最後に、6.0g(固形分基準で2%)のサリチル酸を加え、そして全てのサリチル酸が溶解するまで撹拌した。結果として固形分50.5%の配合物は、AHEW=172、アミン価=132mgKOH/g、及び25℃の粘度=2871cPを有した。
【0087】
実施例11
付加物/多官能価のアミン/カルボン酸配合物(6)
熱電対、還流冷却器、及びスターラーを備えた1lのガラス製反応器に付加物A3(337.5g)を入れ、そして80℃に加熱した。イソホロンジアミン(IPDA、42.8g、0.25モル)を5分間で加え、そして均質かつ透明になるまで10分間に亘って撹拌した。混合物の冷却が速すぎないように、15分間でゆっくりと水(380.3g)を加え、そして水による生成物の希釈を止めた。最後に、7.6g(固形分基準で2%)のサリチル酸を加え、そして全てのサリチル酸が溶解するまで撹拌した。結果として固形分50.5%の配合物は、AHEW=219、アミン価=130mgKOH/g、及び25℃の粘度=5453cPを有した。
【0088】
タイルグラウトの評価
ラチクリートインターナショナル社(Laticrete International, Inc.)のSpectraLock(登録商標)タイルグラウト配合物を比較例として用いた。ラチクリート(Laticrete)によって市販されたSpectraLock配合物の樹脂系及び充填剤は、本発明の硬化剤と共に使用された。
【0089】
使用前に、硬化剤含有タイルグラウト配合物を固形分35%に希釈した。表1に示したタイルグラウト配合物を適用した。硬化剤配合物、ラチクリートエポキシ樹脂(EEW=265)、及びラチクリート充填剤の量は質量部である。各々の硬化剤組成物のAHEWも示した。
【0090】
【表1】

【0091】
全ての硬化剤配合物1〜6は室温(RT)、かつ固形分50%又は35%において透明な溶液となった。これらの硬化剤溶液は3ヶ月間以上でも安定していた。
【0092】
表2に示した結果と共にタイルグラウト配合物1〜6を対象にして以下の試験を実施した。
「ショアーD硬度(Shore D)」ショアーD型硬度計(ASTM D 2240)を用いて測定した。値は、6時間後、8時間後、24時間後、72時間後、及び168時間後に集計した。記述した値は5〜10回の測定の平均である。
「紫外線耐性(UV resistance)」湿乾を繰り返しながらグラウトを紫外線(UV)に暴露した後に、黄変度指数(yellowing index)を多種の間隔で測定した。1時間後、7時間後、24時間後、52時間後、168時間後、216時間後、及び360時間後に黄変度指数(Yi)を測定した。
「配合物の塗布性(Formulation spreadability)」ゴム製スキージー(rubber squeegee)による塗布の容易さである。
「配合物の除去性(Formulation clean-up)」50ml/ガロンのビネガー希釈物(vinegar dilution)を用いて過剰なタイルグラウトを除去した。除去の容易さを示した。除去は適用の1時間後に行なった。
【0093】
ショアーD硬度の測定は、本発明の硬化剤がタイルグラウト系の早い硬化の進行を向上させることを示す。7日後の最終的なショアーD硬度は、60〜75の範囲にある値へと収束するようだ。TETA系の配合物5は、遅い硬化の進行を有した。
【0094】
紫外線暴露は、現存する系よりも突出して良いものはないが、最悪であるものもないため、系の大部分が辛うじて同様であることを示した。
【0095】
塗布性は全ての系で同様であり、良好かつ容易であった。接合部(joints、3mm幅)における浸透(penetration)は良好だった。系の中で差異は見つけられなかった。
【0096】
除去性も、1ガロン(gallon)の水に50mlのビネガーを溶かした溶液を用いると全ての系で同様だった。これが、過剰なグラウトを除去し、浄化するためにとても効率的な方法となることを示している。純水の使用は、より困難であり、またスポンジを汚す傾向にあった。せっけん水の使用も有効だが、ビネガー水(vinegar-water)ほど効率的ではなかった。
【0097】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂(A)と、N‐3‐アミノプロピルエチレンジアミン(N3)、N,N’‐ビス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン(N4)及びN,N,N’‐トリス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン(N5)の混合物を含むポリアルキレンアミン組成物(B)との反応生成物を含む硬化剤組成物。
【請求項2】
ポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂が、ポリエポキシド化合物と、ポリアルキレンポリエーテルポリオール、アルコキシル化ジフェノールのジグリシジルエーテル誘導体又はこれらの組み合わせとの反応生成物を含む請求項1に記載の硬化剤組成物。
【請求項3】
ポリアルキレンアミン組成物が、1〜25質量部のN3、50〜94質量部のN4、及び3〜25質量部のN5を含む請求項1に記載の硬化剤組成物。
【請求項4】
ポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂が、下記構造を有するアルコキシル化ジフェノールエポキシ樹脂を含む請求項1に記載の硬化剤組成物。
【化1】

(Xはジフェノールから誘導されたアリーリデン基、RはC、C若しくはCのアルキレン基又はこれらの組み合わせ、そしてn+m=1〜20である。)
【請求項5】
ポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂が、
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、又はこれらの組み合わせであるポリエポキシド化合物と、
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はこれらの組み合わせであるポリアルキレンポリエーテルポリオールとの
反応生成物を含む請求項1に記載の硬化剤組成物。
【請求項6】
(1)少なくとも一つのポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂(A)と、少なくとも一つのポリアルキレンアミン(B)との反応生成物、
(2)二個以上の活性アミン水素を有する少なくとも一つの多官能価のアミン、及び任意に
(3)酸
の接触生成物を含む硬化剤組成物。
【請求項7】
ポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂が、ポリエポキシド化合物と、ポリアルキレンポリエーテルポリオール、アルコキシル化ジフェノールのジグリシジルエーテル誘導体又はこれらの組み合わせとの反応生成物を含む請求項6に記載の硬化剤組成物。
【請求項8】
少なくとも一つのポリアルキレンアミン(B)が、1〜25質量部のN‐3‐アミノプロピルエチレンジアミン(N3)、50〜94質量部のN,N’‐ビス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン(N4)、及び3〜25質量部のN,N,N’‐トリス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン(N5)の混合物を含む請求項6に記載の硬化剤組成物。
【請求項9】
ポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂が、下記構造を有するアルコキシル化ジフェノールエポキシ樹脂を含む請求項6に記載の硬化剤組成物。
【化2】

(Xはジフェノールから誘導されたアリーリデン基、RはC、C若しくはCのアルキレン基又はこれらの組み合わせ、そしてn+m=1〜20である。)
【請求項10】
ポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂が、
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、又はこれらの組み合わせであるポリエポキシド化合物と、
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はこれらの組み合わせであるポリアルキレンポリエーテルポリオールとの
反応生成物を含む請求項6に記載の硬化剤組成物。
【請求項11】
多官能価のアミンが、
脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、
脂肪族アミン、脂環式アミン若しくは芳香族アミンのマンニッヒ塩基誘導体、
脂肪族アミン、脂環式アミン若しくは芳香族アミンのポリアミド誘導体、
脂肪族アミン、脂環式アミン若しくは芳香族アミンのアミドアミン誘導体、
脂肪族アミン、脂環式アミン若しくは芳香族アミンのアミン付加物誘導体、
又はこれらの組み合わせである請求項6に記載の硬化剤組成物。
【請求項12】
酸が、酢酸、乳酸、サリチル酸、セバシン酸、スルファミン酸、ホウ酸又はこれらの組み合わせである請求項6に記載の硬化剤組成物。
【請求項13】
(1)少なくとも一つのポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂(A)と、少なくとも一つのポリアルキレンアミン(B)との反応生成物、
(2)二個以上の活性アミン水素を有する少なくとも一つの多官能価のアミン、及び任意に
(3)酸
の接触生成物を含む硬化剤組成物、
並びに
少なくとも一つの多官能価のエポキシ樹脂を含むエポキシ組成物
の反応生成物を含むアミン‐エポキシ組成物。
【請求項14】
ポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂が、ポリエポキシド化合物と、ポリアルキレンポリエーテルポリオール、アルコキシル化ジフェノールのジグリシジルエーテル誘導体又はこれらの組み合わせとの反応生成物を含む請求項13に記載のアミン‐エポキシ組成物。
【請求項15】
少なくとも一つのポリアルキレンアミン(B)が、1〜25質量部のN‐3‐アミノプロピルエチレンジアミン(N3)、50〜94質量部のN,N’‐ビス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン(N4)、及び3〜25質量部のN,N,N’‐トリス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン(N5)の混合物を含む請求項13に記載のアミン‐エポキシ組成物。
【請求項16】
ポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂が、下記構造を有するアルコキシル化ジフェノールエポキシ樹脂を含む請求項13に記載のアミン‐エポキシ組成物。
【化3】

(Xはジフェノールから誘導されたアリーリデン基、RはC、C若しくはCのアルキレン基又はこれらの組み合わせ、そしてn+m=1〜20である。)
【請求項17】
ポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂が、
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、又はこれらの組み合わせであるポリエポキシド化合物と、
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はこれらの組み合わせであるポリアルキレンポリエーテルポリオールとの
反応生成物を含む請求項13に記載のアミン‐エポキシ組成物。
【請求項18】
多官能価のアミンが、
脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、
脂肪族アミン、脂環式アミン若しくは芳香族アミンのマンニッヒ塩基誘導体、
脂肪族アミン、脂環式アミン若しくは芳香族アミンのポリアミド誘導体、
脂肪族アミン、脂環式アミン若しくは芳香族アミンのアミドアミン誘導体、
脂肪族アミン、脂環式アミン若しくは芳香族アミンのアミン付加物誘導体、
又はこれらの組み合わせである請求項13に記載のアミン‐エポキシ組成物。
【請求項19】
酸が、酢酸、乳酸、サリチル酸、セバシン酸、スルファミン酸、ホウ酸又はこれらの組み合わせである請求項13に記載のアミン‐エポキシ組成物。
【請求項20】
多官能価のエポキシ組成物が、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、DGEBAの改良型若しくは高分子量型、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、又はこれらの組み合わせである請求項13に記載のアミン‐エポキシ組成物。
【請求項21】
下記構造を有するアルコキシル化ジフェノールエポキシ樹脂(1)
【化4】

(Xはジフェノールから誘導されたアリーリデン基、RはC、C若しくはCのアルキレン基又はこれらの組み合わせ、そしてn+m=1〜20である。)、又はビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、若しくはこれらの組み合わせであるポリエポキシド化合物と、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール若しくはこれらの組み合わせであるポリアルキレンポリエーテルポリオールとの反応生成物(2)である少なくとも一つのポリアルキレンポリエーテルポリオール変性ポリエポキシド樹脂(A)、及び
1〜10質量部のN‐3‐アミノプロピルエチレンジアミン(N3)と、70〜94質量部のN,N’‐ビス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン(N4)と、3〜15質量部のN,N,N’‐トリス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン(N5)との混合物を含むポリアルキレン組成物(B)
の接触生成物を含む硬化剤組成物、
並びに
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、DGEBAの改良型若しくは高分子量型、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、又はこれらの組み合わせである少なくとも一つの多官能価のエポキシ樹脂を含むエポキシ組成物
の反応生成物を含むアミン‐エポキシ組成物。
【請求項22】
5〜15wt%のエポキシ樹脂、5〜15wt%の請求項1に記載の硬化剤組成物、50〜85wt%の充填剤、及び全固形分基準で2〜20wt%の水を含むタイルグラウト組成物。
【請求項23】
隙間を有する空間的な関係で複数個のタイルを組み立てること、
タイルの隙間に請求項22に記載のタイルグラウト組成物を適用すること、
タイル表面から過剰なタイルグラウト組成物を除去すること、及び
タイルグラウト組成物を硬化させて塗り固めたタイルを取り付けること
からなるタイルを塗り固める方法。
【請求項24】
10〜20wt%のエポキシ樹脂、10〜20wt%の請求項1に記載の硬化剤組成物、50〜75wt%の充填剤、及び全固形分基準で4〜20wt%の水を含むセルフレベリング床材用組成物。
【請求項25】
3cmまでの厚さでコンクリート、金属、又は木の支持体の表面に、請求項24に記載のセルフレベリング床材用組成物を適用すること、及び
セルフレベリング床材用組成物を硬化させて平滑な床材を取り付けること
からなる床を作る方法。

【公開番号】特開2012−36409(P2012−36409A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254014(P2011−254014)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【分割の表示】特願2008−101382(P2008−101382)の分割
【原出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】