説明

厚鋼板の製造方法

【課題】生産能率に優れた厚鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】スラブを加熱して熱間圧延を行って厚鋼板とし、該厚鋼板を冷却床で冷却して、剪断ラインに搬出する厚鋼板の製造方法において、冷却床入口と出口が近接配置された前記冷却床の出口で、剪断ライン搬出前に、厚鋼板の表面温度を測定し、該表面温度が前記厚鋼板の材質特性に必要な温度まで低下していない場合は、前記厚鋼板を前記冷却床の入口に返送して、再び前記冷却床で冷却を行い、その間に、他の厚鋼板を前記冷却床の出口から抽出して剪断ラインに搬出することを特徴とする厚鋼板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚鋼板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷却床で厚鋼板を冷却する工程は、その前工程である熱間圧延工程から搬入されてきた厚鋼板を後工程である剪断工程に通板可能な温度まで材質に影響のないゆるやかな冷却速度で、形状を損わない均一冷却を行う工程である。また、冷却床は、圧延工程と剪断工程の処理ピッチの差が生じた場合には、その差を冷却床内で吸収するという物流バッファとしての機能を合わせ持つ工程である。従って、冷却床には、上記冷却を行い得る面積を有し、且つ、物流バッファとしての機能を有することが必要とされる。
【0003】
特許文献1には、冷却床内の鋼板位置、トラッキング情報、前後工程のピッチ差予測等から将来の冷却床の占有率推移予測や冷却床の実績占有率から、冷却床の鋼板の間隔を広げるべきか、詰めるべきかの冷却床の運転形態を自動判定する鋼板冷却床の自動制御装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、精整ラインにおける現在の鋼板生産量に応じて、鋼板を搬送すべき冷却床を選択することができる鋼板の製造方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、圧延された鋼材を順次冷却床に装入し、この冷却床内で搬送冷却しつつ精整ラインに抽出する鋼材搬送システムにおいて、冷却床の出口側にバッファゾーンを形成し、冷却床内の鋼材が所定温度以下に冷却されたときにはバッファゾーンに置かずに精整ラインに抽出し、また精整ラインのトラブルやバッファゾーン手前または前記バッファゾーンに移した鋼材が未だ所定温度に冷却されていないとき、バッファゾーンに置き、所定の条件を満たしたときに精整ラインに抽出する鋼板の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−108722号公報
【特許文献2】特開2007−61871号公報
【特許文献3】特開2001−205316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記した特許文献1、2に記載の技術は鋼板の品質のみを考慮し、冷却床内の生産効率を考慮していないという問題がある。
【0008】
即ち、特許文献1、2に記載の技術は、熱間圧延後の厚鋼板を冷却床で冷却する際に、冷却床の運転方法を規定するだけであり、次工程である剪断ラインの前で、厚鋼板の温度が目標値よりも高い場合は、剪断の前のテーブル上で放冷するしかなく、その間は、次に剪断を行う予定の厚鋼板は剪断作業を待機せざるを得ず、生産能率が著しく低下していた。
【0009】
また、特許文献3に記載の技術では圧延ラインから精整ラインへと一方向にしか搬送出来ない直線的な冷却床であるため、所定温度以下の鋼板しか受入が出来ない次工程がある場合は、連続して高温仕上げ材が熱間圧延されると、これらの高温仕上げ材が所定温度以下に下がるまで冷却床で滞留することになり生産効率の点で冷却床がネック工程となっていた。
【0010】
本発明は、上記課題を解決する生産能率に優れた厚鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨は以下の通りである。
【0012】
[1] スラブを熱間圧延して厚鋼板とし、該厚鋼板を冷却床で冷却した後、剪断ラインで剪断するに際し、冷却床で冷却された後、剪断ラインに送られる前の厚鋼板の表面温度を測定し、該表面温度が前記厚鋼板の材質特性に必要な温度まで低下していない場合、該厚鋼板を冷却床に返送して再冷却し、その間に、他の厚鋼板を冷却床から抽出して剪断ラインに送ることを特徴とする厚鋼板の製造方法。
【0013】
[2] スラブを加熱して熱間圧延を行って厚鋼板とし、該厚鋼板を冷却床で冷却して、剪断ラインに搬出する厚鋼板の製造方法において、冷却床入口と出口が近接配置された前記冷却床の出口で、剪断ライン搬出前に、厚鋼板の表面温度を測定し、該表面温度が前記厚鋼板の材質特性に必要な温度まで低下していない場合は、前記厚鋼板を前記冷却床の入口に返送して、再び前記冷却床で冷却を行い、その間に、他の厚鋼板を前記冷却床の出口から抽出して剪断ラインに搬出することを特徴とする厚鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、剪断前に温度が高い厚鋼板は冷却床に逆送するようにしたので、次に剪断する厚鋼板の剪断処理が可能となり、生産能率がアップした。また、これによって厚鋼板の材質特性に必要な冷却温度まで十分冷却するようにしたので、厚鋼板の剪断面の品質が一定水準に保たれるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】厚鋼板の製造工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は厚鋼板の製造工程の一例を示す概略図である。
【0017】
スラブを加熱炉1で所定温度まで加熱した後、熱間圧延機2で所定厚みまで熱間圧延して製造された厚鋼板は、冷却装置3を経て冷却床4に搬送されて所定温度まで冷却される。
【0018】
冷却床4は第1冷却床4aと第2冷却床4bとからなり、第1冷却床4aと第2冷却床4bは搬送ロールテーブル4cによって接続している。冷却が終了した厚鋼板は搬送ルート4dを経て剪断ライン5に搬送されて所定の製品寸法に剪断される。
【0019】
従来、厚鋼板の生産能率を向上するために種々の寸法、材質を有する厚鋼板の冷却床への搬入、搬出を自動化することが行われてきた。その結果、冷却床で冷却した厚鋼板を一旦ラインに載せて次工程である剪断ラインに搬送した場合、当該厚鋼板の表面温度が材質特性確保に必要な温度まで冷却されていないことが判明しても、すでに、次材が到着しており、冷却床に返送できないため剪断ライン上で放冷せざるを得なかった。そのため次材の剪断作業も行えず、その間の生産能率の低下を招いた。
【0020】
そこで、本発明では、剪断ラインの前(冷却床出口4g)で厚鋼板の表面温度を測定し、当該厚鋼板の材質特性に必要な温度まで冷却されていない場合は、冷却床出口4gから冷却床入口4fまで循環ルート4eを経て再び冷却床4へ戻して冷却するようにした。また、本発明では、冷却床入口4fと冷却床出口4gとが近接し、搬送テーブルからなる循環ルート4eが配置されているので、容易に厚鋼板を冷却床に戻すことができる。そして、その間、次材を冷却床出口4gから抽出して剪断ライン5に搬出することで剪断作業が続行できるようにした。
【0021】
第1冷却床4aは厚鋼板を冷却するために厚鋼板を迂回させるバッファゾーンであり、キャリアチェーンとウォーキングビーム(図示せず)によって厚鋼板が搬送される。さらに、搬送ロールテーブル4cによって、第1冷却床4aから第2冷却床4bに厚鋼板が搬送される。第2冷却床4bは第1冷却床4aと同様の構造となっており、冷却床出口4gに向けて鋼板が搬送される。また、冷却床出口4gと冷却床4fをつなげる搬送ロールからなる循環ルート4eを設けたので、第1冷却床4aと第2冷却床4bは搬送ロールテーブル4cと循環ルート4eによってループ状に連結される。
【0022】
これにより、第1冷却床4aと第2冷却床4b内の厚鋼板を循環させることが可能となるので、従来、冷却床で一方向しか搬送出来ない場合、冷却床全長を長くするか厚鋼板を所定温度以下になるまで搬送停止させるしかなかった冷却方法に対して、冷却不足の厚鋼板を冷却床に戻して冷却させることができるので、所定温度以下になっている次材を優先的に剪断工程へ受け渡す事が可能となる。
【0023】
その結果、剪断ライン上に待機する厚鋼板がなくなり生産能率が向上した。
【実施例1】
【0024】
製品寸法が厚さ30.1mm、幅2472mm、長さ20200mmのSS400厚鋼板を用いて剪断能率、鋼板手入れ状況を調べた。その結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

No.1〜No.5は発明例で、冷却不良となった一連の鋼板について冷却床への逆送を可能とする本数を段階的に増加させて剪断能率(生産能率)と剪断後の鋼板手入率(鋼板品質)を比較した。No.6は比較例であり、冷却床への逆送を行なわなかったものである。冷却床への逆送本数を増やして、十分冷却し、且つ他の鋼板を先に剪断した方が剪断能率(生産能率)、鋼板手入率(鋼板品質)ともに良好な結果が得られた。
【符号の説明】
【0026】
1 加熱炉
2 熱間圧延機
3 冷却装置
4 冷却床
4a 第1冷却床
4b 第2冷却床
4c 搬送ロールテーブル
4d 搬送ルート
4e 循環ルート(搬送ロールテーブル)
4f 冷却床入口
4g 冷却床出口
5 剪断ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブを熱間圧延して厚鋼板とし、該厚鋼板を冷却床で冷却した後、剪断ラインで剪断するに際し、冷却床で冷却された後、剪断ラインに送られる前の厚鋼板の表面温度を測定し、該表面温度が前記厚鋼板の材質特性に必要な温度まで低下していない場合、該厚鋼板を冷却床に返送して再冷却し、その間に、他の厚鋼板を冷却床から抽出して剪断ラインに送ることを特徴とする厚鋼板の製造方法。
【請求項2】
スラブを加熱して熱間圧延を行って厚鋼板とし、該厚鋼板を冷却床で冷却して、剪断ラインに搬出する厚鋼板の製造方法において、冷却床入口と出口が近接配置された前記冷却床の出口で、剪断ライン搬出前に、厚鋼板の表面温度を測定し、該表面温度が前記厚鋼板の材質特性に必要な温度まで低下していない場合は、前記厚鋼板を前記冷却床の入口に返送して、再び前記冷却床で冷却を行い、その間に、他の厚鋼板を前記冷却床の出口から抽出して剪断ラインに搬出することを特徴とする厚鋼板の製造方法。

【図1】
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