原位置せん断強度測定装置および原位置せん断強度測定方法
【課題】 岩盤や土質地盤などの原位置でのせん断強度を、簡易な構成で容易に測定することができる原位置せん断強度測定装置を提供する。
【解決手段】 棒状で被測定体Mに打ち込まれる測定棒3と、被測定体Mに打ち込まれた測定棒3を引き抜く引抜ユニット5と、引抜ユニット5によって被測定体Mから測定棒3が引き抜かれている状態における測定棒3の変位と引き抜きに要する荷重(せん断力)とを測定する測定ユニット6とを備えた原位置せん断強度測定装置1とし、測定棒3の外周に、軸方向に沿った凹凸を連続的に形成する。
【解決手段】 棒状で被測定体Mに打ち込まれる測定棒3と、被測定体Mに打ち込まれた測定棒3を引き抜く引抜ユニット5と、引抜ユニット5によって被測定体Mから測定棒3が引き抜かれている状態における測定棒3の変位と引き抜きに要する荷重(せん断力)とを測定する測定ユニット6とを備えた原位置せん断強度測定装置1とし、測定棒3の外周に、軸方向に沿った凹凸を連続的に形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩盤や土質地盤などの原位置でのせん断強度を測定するための測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原位置での、すなわち現場(現地)におけるあるがままの位置、深さでの軟岩や固結度が高い土質などを対象として、露頭面(露出面)にてせん断強度を測定する測定方法として、ブロックせん断試験やロックせん断試験が知られている(例えば、特許文献1参照。)。これらの試験では、垂直方向の加力装置とせん断方向の加力装置とを備え、例えば、同一条件の供試体(被試験体)を4体以上必要とする。そして、ブロックせん断試験では、試験対象とする岩盤面などにコンクリートブロックを打設し、垂直荷重を加えながらコンクリートブロック下の岩盤などをせん断する。また、ロックせん断試験では、試験対象とする岩盤などをブロック状に切り出し、コンクリートで所定の大きさに成形し、垂直荷重を加えながら岩盤などを直接せん断するものである。さらに、コンクリートなどで成形しないで、ブロック状(直立柱状)に切り出した岩盤などをせん断する試験機も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2005−147676号公報
【特許文献2】特開2002−212938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のようなブロックせん断試験やロックせん断試験では、コンクリートブロックやブロック状の岩盤などを加力するため、油圧駆動などによる大掛かりな加力装置を必要とする。また、岩盤面などにコンクリートブロックを打設したり、岩盤などをブロック状に切り出したりしなければならないため、大掛かりな設備、装置や作業を必要とする。さらに、試験対象とする岩盤などの状態(性状)を乱さないで、つまりあるがままの状態で所定の形状の供試体を形成することは容易ではなく、多大な時間と労力とを要する。また、圧縮試験の場合には、引張方向の反力を得るために錘やアンカーなどが必要となる。このように、従来の試験方法では、大掛かりな装置などを要し、しかも多大な時間と労力とを要していた。
【0004】
そこで本発明は、岩盤や土質地盤などの原位置でのせん断強度を、簡易な構成で容易に測定することができる原位置せん断強度測定装置および、容易に測定することができる原位置せん断強度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、岩盤や土質地盤などの被測定体の原位置でのせん断強度を測定するための原位置せん断強度測定装置であって、棒状で前記被測定体に打ち込まれる測定棒と、前記被測定体に打ち込まれた前記測定棒を引き抜く引抜手段と、前記引抜手段によって前記被測定体から前記測定棒が引き抜かれている状態における前記測定棒の変位と引き抜きに要する荷重とを測定する測定手段と、を備えたことを特徴としている。
(作用)
被測定体に打ち込まれた測定棒が、引抜手段によって被測定体から引き抜かれながら、測定手段によって測定棒の変位と引き抜きに要する荷重とが測定される。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の原位置せん断強度測定装置において、前記測定棒の外周に、軸方向に沿った凹凸を連続的に形成したことを特徴としている。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の原位置せん断強度測定装置において、前記測定棒の先端部を円錐状に形成し、同一形状の円錐台を上面が前記先端部側に位置するように同軸上に配設して前記凹凸を形成したことを特徴としている。
【0008】
請求項4に記載の発明は、岩盤や土質地盤などの被測定体の原位置でのせん断強度を測定する原位置せん断強度測定方法であって、棒状の測定棒を前記被測定体に打ち込み、前記測定棒を前記被測定体から引き抜きながら前記測定棒の変位と引き抜きに要する荷重とを測定し、測定された変位と荷重とに基づいて前記被測定体のせん断強度を算出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、被測定体に打ち込まれた測定棒が引き抜かれている状態における測定棒の変位と引き抜きに要する荷重、つまり被測定体によるせん断力とが測定されるため、この変位と荷重とに基づいて被測定体のせん断強度を算出することができる。このように、測定棒と引抜手段と測定手段とを備えた簡易な構成で被測定体のせん断強度を測定することが可能となる。しかも、測定棒が棒状であるため、このような測定棒を被測定体から引き抜くのに大きな力を要せず、引抜手段を手動式などで構成することが可能となり、装置の構成がより簡易化できるとともに、装置を小型化することが可能となる。また、測定棒を被測定体に打ち込み、本装置によって測定棒を引き抜きながら変位と荷重とを測定すればよいため、せん断強度の測定が極めて容易となる。このように、本発明によれば、岩盤や土質地盤などの原位置におけるせん断強度を、簡易な構成の装置で容易に測定することができるものである。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、測定棒の外周に軸方向に沿った凹凸が形成されているため、被測定体のせん断強度をより精度高く測定することが可能となる。すなわち、測定棒を被測定体から引き抜いている状態では、測定棒の外周に形成された凹凸が引き抜き方向とほぼ平行な方向の力、つまりせん断力を被測定体からより適切に受けるため(せん断面が被測定体中を通過するため)、被測定体の原位置でのせん断強度をより精度高く測定することが可能となる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、測定棒の先端部が円錐状に形成され、しかも、上面が先端部側に位置して同一形状の円錐台が同軸上に配設されているため、測定棒を被測定体に打ち込み易い。一方、測定棒を被測定体から引き抜く際には、円錐台の底面が被測定体からのせん断力をより適切に受けるため、せん断強度をより精度よく測定することが可能となる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、測定棒を被測定体に打ち込み、測定棒を引き抜きながら測定棒の変位と引き抜きに要する荷重とを測定するだけで、せん断強度を測定(算出)することができる。このように、従来のように被測定体にコンクリートブロックを打設したり、被測定体をブロック状に切り出したりして、加力する必要がないため、大掛かりな装置や作業が不要となる。このため、岩盤や土質地盤などの原位置におけるせん断強度を、簡易な装置などを用いて容易に測定することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る原位置せん断強度測定装置1を被測定体Mに設置した状態を示す正面図である。この原位置せん断強度測定装置1は、岩盤や土質地盤などの被測定体Mの原位置でのせん断強度を測定するための装置であって、主として、基盤ユニット2と、測定棒3と、打込みユニット4(測定棒3の打ち込み時に使用するため図1に図示せず。図5、8参照。)と、引抜ユニット5(引抜手段)と、測定ユニット6(測定手段)とを備えている。
【0015】
基盤ユニット2は、基盤21と4本のアンカー22とを備えている。基盤21は、図2に示すように、略正四角形の板状で、四隅にアンカー22を挿入するためのアンカー孔21aが形成されている。また、中央部に打込みユニット4または引抜ユニット5を取り付けるための取付雌ネジ(図示せず)が4つ形成され、この取付雌ネジに取り付けられる蝶ボルト21bが備えられている。さらに、中心部には、筒状で測定棒3を案内するガイド筒21cが装着されている。
【0016】
測定棒3は、被測定体Mに打ち込まれるステンレス製の棒で、図3、4に示すように、外周に軸方向に沿った凹凸が連続的に形成されている。すなわち、同一形状の円錐台をその上面が測定棒3の先端部側に位置するように同軸上に複数配設(列設)するようにして、凹凸が軸方向に沿って連続的に、ほぼ全長にわたって形成されている。凹凸の形状、段差、ピッチ、あるいは段数は、被測定体Mの物理的特性や性状などに応じて設定されるが、この実施の形態では、測定棒3の外径が6mmで、凹凸の段差が0.5mm(片側)、凹凸のピッチが1.6mm、先端部の長さが6mmに設定されている。また、この測定棒3の先端部は、円錐状に形成され、その先端角度(平面角度)は60°に形成されている。一方、測定棒3の他端部側には雄ネジ部3aが形成され、この雄ネジ部3aに、測定棒3をハンマーなどで打ち込むための円柱状の打込みコマ31がネジ込まれている。この打込みコマ31の測定棒3の先端側の端部31aは、円錐状にテーパー加工され、打ち込み中に測定棒3が座屈するのを防げるようになっている。そして、このような測定棒3が、この実施の形態では、長短2本備えられている。すなわち、全長が300mm(長尺)の測定棒3と、全長が150mm(短尺)の測定棒3とが備えられ、被測定体Mの硬度などに応じて、長短の測定棒3を選択できるようになっている。
【0017】
打込みユニット4は、測定棒3を被測定体Mに打ち込む際に、測定棒3を支持、案内するために基盤ユニット2に取り付けられるユニットで、図5に示すように、長方形の取付基板41の両端側に、棒状のガイドポスト42が垂直に取り付けられている。そして、長方形の可動板43の両端側に形成された孔(図示せず)にガイドポスト42が挿入され、可動板43がガイドポスト42に沿って上下動できるようになっている。また、符号44は、可動板43をガイドポスト42に固定するための調整ボルトである。取付基板41の中央部には、上記基盤ユニット2のガイド筒21cが挿入される第1挿入孔41aが形成され、ガイドポスト42よりも外側の両端部には、基盤ユニット2の蝶ボルト21bが挿入される取付孔41bが形成されている。可動板43には、測定棒3が挿入されるスリット状(切欠いた長孔状)の第2挿入孔43aが第1挿入孔41aと同心(同軸)上に形成され、可動板43の上面には、ステンレス製のガイド板45が回動可能に取り付けられている。すなわち、ボルト46とスプリングボルト47とによってガイド板45を第2挿入孔43a側に固定した状態では、第2挿入孔43aとガイド板45とによって測定棒3が案内、支持される。また、ボルト46を緩めると、図5(c)の二点鎖線で示すようにガイド板45を回動させることができ、測定棒3から第2挿入孔43aを移動させて打込みユニット4を取り外せるものである。なお、スプリングボルト47は、スプリングのような反発力(弾性力)を有するボルトで、この反発力によって振動や衝撃などによる緩みを防止でき、測定棒3の打ち込み中にも緩まないものである。
【0018】
引抜ユニット5は、被測定体Mに打ち込まれた測定棒3を被測定体Mから引き抜くためのユニットで、基盤ユニット2に取り付けられるようになっている。すなわち、図6に示すように、略四角形の取付基板51の中央両端側に、棒状の支持ポスト52が垂直に取り付けられ、この支持ポスト52の上端部に長方形の固定板53が固定されている。この固定板53の上面に引抜装置54が取り付けられ、引抜装置54の引抜ロッド54aが固定板53に形成された孔(図示せず)を介して取付基板51側に突出されている。引抜装置54には歯車などの伝達機構が内蔵され、ハンドル54bを回すと引抜ロッド54aが上下動するようになっている。さらに、引抜ロッド54aの先端部(取付基板51側の端部)には、取付ナット54cが取り付けられ、この取付ナット54cを測定棒3の雄ネジ部3aにネジ込むことで、引抜ロッド54aと測定棒3とが連結されるようになっている。また、取付基板51の中央部には、基盤ユニット2のガイド筒21cが挿入される挿入孔51aが形成され、この挿入孔51aと引抜ロッド54aとは同心(同軸)上に配設されている。さらに、取付基板51の四隅には、基盤ユニット2の蝶ボルト21bが挿入される取付孔51bが形成されている。
【0019】
測定ユニット6は、引抜ユニット5によって被測定体Mから測定棒3が引き抜かれている状態における測定棒3の変位と引き抜きに要する荷重とを測定するユニットで、変位計61と、ロードセル(荷重計)62と、データ収録装置63とを備えている。変位計61は測定棒3の変位(移動距離)を測定する計器で、引抜ユニット5の固定板53に取り付けられ、その計測ロッド61aが測定板64を介して引抜ロッド54aの先端部側に接続されるようになっている。ロードセル62は引抜ロッド54aに取り付けられ、ひずみゲージを備え、ひずみゲージによって測定されたひずみ量から荷重を算出する計器で、測定棒3を引き抜いているときの荷重(引抜荷重)、つまり被測定体Mによるせん断力を連続的、経時的に測定できるようになっている。データ収録装置63は、データロガー、メモリカード等の記憶媒体、バッテリパックなどを備え、変位計61およびロードセル62と接続されている。そして、変位計61およびロードセル62からの測定データを収録(収集、記憶)し、後述するように、測定データから測定棒3の変位と引抜荷重との関係データが得られるようになっている。
【0020】
次に、このような構成の原位置せん断強度測定装置1を用いた原位置せん断強度測定方法について説明する。図7は、原位置せん断強度測定装置1を用いて被測定体Mの原位置でのせん断強度を測定する手順を示す工程図である。
【0021】
まず、被測定体Mの測定面を面出し、整形し(ステップS1)、その測定面に基盤ユニット2を設置する(ステップS2)。すなわち、基盤ユニット2の基盤21を測定面に位置させ、アンカー22を被測定体Mに打ち込んで、基盤21を被測定体Mに固定させる。次に、基盤ユニット2に打込みユニット4を取り付け(ステップS3)、測定棒3を被測定体Mに打ち込む(ステップS4)。すなわち、図8に示すように、打込みユニット4の取付基板41の第1挿入孔41aを基盤ユニット2のガイド筒21cに挿入し、蝶ボルト21bで取付基板41を基盤21に取り付ける。そして、測定棒3を第2挿入孔43aからガイド筒21cに挿入して上記のようにガイド板45を固定し、測定棒3の打込みコマ31をハンマーなどで叩いて被測定体Mに打ち込む。この際、測定棒3の雄ネジ部3aにはナット32などを取り付けて保護する。測定棒3を所定の深さまで打ち込んだ後に、上記のようにして打込みユニット4を取り外し、基盤ユニット2に引抜ユニット5を取り付け、さらに測定ユニット6を取り付ける(ステップS5)。すなわち、図1に示すように、引抜ユニット5の取付基板51の挿入孔51aを基盤ユニット2のガイド筒21cに挿入し、蝶ボルト21bで取付基板51を基盤21に取り付ける。次に、上記のようにして引抜ロッド54aと測定棒3とを連結し、変位計61とロードセル62とを上記のように取り付け、データ収録装置63を起動準備する。そして、被測定体Mに圧縮反力を取りながら、引抜装置54のハンドル54bを回して測定棒3を被測定体Mから引き抜くとともに、測定ユニット6によって上記のような測定データを収録する(ステップS6)。続いて、データ収録装置63によって得られた測定棒3の変位と引抜荷重との関係データに基づいて、被測定体Mのせん断強度を算出する(ステップS7)。
【0022】
具体的には、図9、図10に示すようなデータがデータ収録装置63によって得られる。図9は、測定棒3を引き抜く経過時間と測定棒3の変位(軸変位)との関係を示し、図10は、測定棒3の変位(軸変位)と引抜荷重(軸荷重)との関係を示すものである。ここで例示したデータは、千葉県富津市の市宿層を被測定体Mとし、全長が300mmで凹凸を含む表面積が69.2cm2の測定棒3(貫入棒)を被測定体Mから引き抜いた際のデータであり、図中No.1〜No.8は、試験番号(測定番号)を示している。そして、図10のデータに基づいて、各引抜荷重を測定棒3の表面積で除してせん断応力を算出し、図11に示すような測定棒3の変位(軸変位)とせん断応力との関係データを得る。次に、図11のデータから、ピークせん断強度とそのときの変位、および残留せん断強度を読み取る。すなわち、図中「↓」印で示すように、せん断応力が最も高い値をピークせん断強度として読み取り、そのピークせん断強度が発生する測定棒3の変位を読み取る。さらに、軸変位に対してせん断応力がほぼ一定となるときのせん断応力(図11では軸変位が6〜8cmのときのせん断応力)を残留せん断強度として読み取るものである。なお、被測定体Mによっては、残留せん断強度が得られない、つまりせん断応力が一定にならない場合がある。
【0023】
このようにして得られたせん断強度とピーク時の変位とを、各試験における被測定体M(岩盤)の色彩、性状などと合わせて、図12に示すようにまとめる。そして、このようなデータを蓄積することで、被測定体Mの原位置密度等の物理的特性や岩盤区分などとせん断強度との関係を解析、把握できるものである。
【0024】
以上のように、本原位置せん断強度測定装置1および原位置せん断強度測定方法によれば、被測定体Mに打ち込まれた測定棒3を引き抜いている状態における測定棒3の変位と引抜荷重(せん断力)とを測定することで、被測定体Mのせん断強度を算出することができる。このように、測定棒3と引抜ユニット5と測定ユニット6などを備えた簡易な構成の装置で被測定体Mのせん断強度を測定することが可能となる。しかも、測定棒3が棒状であるため、このような測定棒3を被測定体Mから引き抜くのに大きな力を要せず、上記のように手動式の引抜装置54などで引き抜くことが可能となる。このため、装置の構成をより簡易化できるとともに、装置を小型化でき、原位置での測定が実務上容易となる。また、測定棒3を被測定体Mに打ち込み、引抜ユニット5で測定棒3を引き抜きながら測定ユニット6によって変位と引抜荷重とを測定すればよいため、せん断強度の測定が極めて容易となる。さらに、従来のように被測定体Mにコンクリートブロックを打設したり、被測定体Mをブロック状に切り出したりして、加力する必要がないため、大掛かりな装置や作業が不要となる。このように、簡易な構成の装置で、被測定体Mの原位置におけるせん断強度を容易に測定することができるものである。
【0025】
また、測定棒3の外周に上記のような凹凸が形成されているため、被測定体Mのせん断強度をより精度高く測定することが可能となる。すなわち、測定棒3を被測定体Mから引き抜いている状態では、測定棒3に形成された凹凸、つまり各円錐台の底面が引き抜き方向(軸方向)とほぼ平行な方向の力、つまりせん断力を被測定体Mからより適切に受ける(せん断面が被測定体M中を通過する)ことになる。このため、被測定体Mの原位置でのせん断強度をより精度高く測定することが可能となる。一方、測定棒3の先端部が円錐状に形成され、しかも、円錐台の上面が先端部側に位置するように凹凸が形成されているため、測定棒3を被測定体Mに打ち込み易い。
【0026】
以上、この発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、この実施の形態では、測定棒3を被測定体Mに直接打ち込んでいるが、測定棒3を打ち込むことによって被測定体Mの内部状態が乱れる(密度が高まるなどする)のを防止、軽減するために、測定棒3を打ち込む前に被測定体Mに下穴を形成するようにしてもよい。この場合、下穴を形成する際の被測定体Mの抵抗値を被測定体Mの物性値のインデックスとして活用することで、より精度高くせん断強度を算出、測定することが可能となる。
【0027】
また、管材で測定棒を構成し、測定棒の周壁に多数の孔を形成する。そして、測定棒内に水や空気などを供給し、測定棒周辺の被測定体Mに正または負の圧力を与えて、せん断面の拘束圧を制御するようにしてもよい。
【0028】
さらに、この実施の形態では、測定棒3の外周に上記のような凹凸を連続的に形成しているが、凹凸の形状等は上記のものに限らず、被測定体Mの物理的特性や性状などに適した形状等に設定すべきであることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る原位置せん断強度測定装置を被測定体に設置した状態を示す正面図(一部断面図)である。
【図2】図1の原位置せん断強度測定装置における基盤ユニットの基盤の平面図である。
【図3】図1の原位置せん断強度測定装置における測定棒の正面図である。
【図4】図3の測定棒の先端部の拡大図である。
【図5】図1の原位置せん断強度測定装置における打込みユニットの正面図(a)と側面図(b)と平面図(c)である。
【図6】図1の原位置せん断強度測定装置における引抜ユニットの正面図(a)と側面図(b)である。
【図7】図1の原位置せん断強度測定装置を用いて被測定体のせん断強度を測定する手順を示す工程図である。
【図8】図1の原位置せん断強度測定装置の測定棒を被測定体に打ち込んでいる状態を示す正面図(一部断面図)である。
【図9】図1の原位置せん断強度測定装置によって測定した経過時間と測定棒の変位(軸変位)との関係を示す図である。
【図10】図1の原位置せん断強度測定装置によって測定した測定棒の変位(軸変位)と引抜荷重(軸荷重)との関係を示す図である。
【図11】図1の原位置せん断強度測定装置によって測定した測定棒の変位(軸変位)とせん断応力との関係を示す図である。
【図12】図1の原位置せん断強度測定装置によって測定したせん断強度と被測定体(岩盤)などとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 原位置せん断強度測定装置
2 基盤ユニット
21 基盤
21b 蝶ボルト
21c ガイド筒
22 アンカー
3 測定棒
31 打込みコマ
4 打込みユニット
41 取付基板
42 ガイドポスト
43 可動板
5 引抜ユニット(引抜手段)
51 取付基板
52 支持ポスト
53 固定板
54 引抜装置
54a 引抜ロッド
54b ハンドル
54c 取付ナット
6 測定ユニット(測定手段)
61 変位計
62 ロードセル
63 データ収録装置
M 被測定体
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩盤や土質地盤などの原位置でのせん断強度を測定するための測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原位置での、すなわち現場(現地)におけるあるがままの位置、深さでの軟岩や固結度が高い土質などを対象として、露頭面(露出面)にてせん断強度を測定する測定方法として、ブロックせん断試験やロックせん断試験が知られている(例えば、特許文献1参照。)。これらの試験では、垂直方向の加力装置とせん断方向の加力装置とを備え、例えば、同一条件の供試体(被試験体)を4体以上必要とする。そして、ブロックせん断試験では、試験対象とする岩盤面などにコンクリートブロックを打設し、垂直荷重を加えながらコンクリートブロック下の岩盤などをせん断する。また、ロックせん断試験では、試験対象とする岩盤などをブロック状に切り出し、コンクリートで所定の大きさに成形し、垂直荷重を加えながら岩盤などを直接せん断するものである。さらに、コンクリートなどで成形しないで、ブロック状(直立柱状)に切り出した岩盤などをせん断する試験機も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2005−147676号公報
【特許文献2】特開2002−212938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のようなブロックせん断試験やロックせん断試験では、コンクリートブロックやブロック状の岩盤などを加力するため、油圧駆動などによる大掛かりな加力装置を必要とする。また、岩盤面などにコンクリートブロックを打設したり、岩盤などをブロック状に切り出したりしなければならないため、大掛かりな設備、装置や作業を必要とする。さらに、試験対象とする岩盤などの状態(性状)を乱さないで、つまりあるがままの状態で所定の形状の供試体を形成することは容易ではなく、多大な時間と労力とを要する。また、圧縮試験の場合には、引張方向の反力を得るために錘やアンカーなどが必要となる。このように、従来の試験方法では、大掛かりな装置などを要し、しかも多大な時間と労力とを要していた。
【0004】
そこで本発明は、岩盤や土質地盤などの原位置でのせん断強度を、簡易な構成で容易に測定することができる原位置せん断強度測定装置および、容易に測定することができる原位置せん断強度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、岩盤や土質地盤などの被測定体の原位置でのせん断強度を測定するための原位置せん断強度測定装置であって、棒状で前記被測定体に打ち込まれる測定棒と、前記被測定体に打ち込まれた前記測定棒を引き抜く引抜手段と、前記引抜手段によって前記被測定体から前記測定棒が引き抜かれている状態における前記測定棒の変位と引き抜きに要する荷重とを測定する測定手段と、を備えたことを特徴としている。
(作用)
被測定体に打ち込まれた測定棒が、引抜手段によって被測定体から引き抜かれながら、測定手段によって測定棒の変位と引き抜きに要する荷重とが測定される。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の原位置せん断強度測定装置において、前記測定棒の外周に、軸方向に沿った凹凸を連続的に形成したことを特徴としている。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の原位置せん断強度測定装置において、前記測定棒の先端部を円錐状に形成し、同一形状の円錐台を上面が前記先端部側に位置するように同軸上に配設して前記凹凸を形成したことを特徴としている。
【0008】
請求項4に記載の発明は、岩盤や土質地盤などの被測定体の原位置でのせん断強度を測定する原位置せん断強度測定方法であって、棒状の測定棒を前記被測定体に打ち込み、前記測定棒を前記被測定体から引き抜きながら前記測定棒の変位と引き抜きに要する荷重とを測定し、測定された変位と荷重とに基づいて前記被測定体のせん断強度を算出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、被測定体に打ち込まれた測定棒が引き抜かれている状態における測定棒の変位と引き抜きに要する荷重、つまり被測定体によるせん断力とが測定されるため、この変位と荷重とに基づいて被測定体のせん断強度を算出することができる。このように、測定棒と引抜手段と測定手段とを備えた簡易な構成で被測定体のせん断強度を測定することが可能となる。しかも、測定棒が棒状であるため、このような測定棒を被測定体から引き抜くのに大きな力を要せず、引抜手段を手動式などで構成することが可能となり、装置の構成がより簡易化できるとともに、装置を小型化することが可能となる。また、測定棒を被測定体に打ち込み、本装置によって測定棒を引き抜きながら変位と荷重とを測定すればよいため、せん断強度の測定が極めて容易となる。このように、本発明によれば、岩盤や土質地盤などの原位置におけるせん断強度を、簡易な構成の装置で容易に測定することができるものである。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、測定棒の外周に軸方向に沿った凹凸が形成されているため、被測定体のせん断強度をより精度高く測定することが可能となる。すなわち、測定棒を被測定体から引き抜いている状態では、測定棒の外周に形成された凹凸が引き抜き方向とほぼ平行な方向の力、つまりせん断力を被測定体からより適切に受けるため(せん断面が被測定体中を通過するため)、被測定体の原位置でのせん断強度をより精度高く測定することが可能となる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、測定棒の先端部が円錐状に形成され、しかも、上面が先端部側に位置して同一形状の円錐台が同軸上に配設されているため、測定棒を被測定体に打ち込み易い。一方、測定棒を被測定体から引き抜く際には、円錐台の底面が被測定体からのせん断力をより適切に受けるため、せん断強度をより精度よく測定することが可能となる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、測定棒を被測定体に打ち込み、測定棒を引き抜きながら測定棒の変位と引き抜きに要する荷重とを測定するだけで、せん断強度を測定(算出)することができる。このように、従来のように被測定体にコンクリートブロックを打設したり、被測定体をブロック状に切り出したりして、加力する必要がないため、大掛かりな装置や作業が不要となる。このため、岩盤や土質地盤などの原位置におけるせん断強度を、簡易な装置などを用いて容易に測定することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る原位置せん断強度測定装置1を被測定体Mに設置した状態を示す正面図である。この原位置せん断強度測定装置1は、岩盤や土質地盤などの被測定体Mの原位置でのせん断強度を測定するための装置であって、主として、基盤ユニット2と、測定棒3と、打込みユニット4(測定棒3の打ち込み時に使用するため図1に図示せず。図5、8参照。)と、引抜ユニット5(引抜手段)と、測定ユニット6(測定手段)とを備えている。
【0015】
基盤ユニット2は、基盤21と4本のアンカー22とを備えている。基盤21は、図2に示すように、略正四角形の板状で、四隅にアンカー22を挿入するためのアンカー孔21aが形成されている。また、中央部に打込みユニット4または引抜ユニット5を取り付けるための取付雌ネジ(図示せず)が4つ形成され、この取付雌ネジに取り付けられる蝶ボルト21bが備えられている。さらに、中心部には、筒状で測定棒3を案内するガイド筒21cが装着されている。
【0016】
測定棒3は、被測定体Mに打ち込まれるステンレス製の棒で、図3、4に示すように、外周に軸方向に沿った凹凸が連続的に形成されている。すなわち、同一形状の円錐台をその上面が測定棒3の先端部側に位置するように同軸上に複数配設(列設)するようにして、凹凸が軸方向に沿って連続的に、ほぼ全長にわたって形成されている。凹凸の形状、段差、ピッチ、あるいは段数は、被測定体Mの物理的特性や性状などに応じて設定されるが、この実施の形態では、測定棒3の外径が6mmで、凹凸の段差が0.5mm(片側)、凹凸のピッチが1.6mm、先端部の長さが6mmに設定されている。また、この測定棒3の先端部は、円錐状に形成され、その先端角度(平面角度)は60°に形成されている。一方、測定棒3の他端部側には雄ネジ部3aが形成され、この雄ネジ部3aに、測定棒3をハンマーなどで打ち込むための円柱状の打込みコマ31がネジ込まれている。この打込みコマ31の測定棒3の先端側の端部31aは、円錐状にテーパー加工され、打ち込み中に測定棒3が座屈するのを防げるようになっている。そして、このような測定棒3が、この実施の形態では、長短2本備えられている。すなわち、全長が300mm(長尺)の測定棒3と、全長が150mm(短尺)の測定棒3とが備えられ、被測定体Mの硬度などに応じて、長短の測定棒3を選択できるようになっている。
【0017】
打込みユニット4は、測定棒3を被測定体Mに打ち込む際に、測定棒3を支持、案内するために基盤ユニット2に取り付けられるユニットで、図5に示すように、長方形の取付基板41の両端側に、棒状のガイドポスト42が垂直に取り付けられている。そして、長方形の可動板43の両端側に形成された孔(図示せず)にガイドポスト42が挿入され、可動板43がガイドポスト42に沿って上下動できるようになっている。また、符号44は、可動板43をガイドポスト42に固定するための調整ボルトである。取付基板41の中央部には、上記基盤ユニット2のガイド筒21cが挿入される第1挿入孔41aが形成され、ガイドポスト42よりも外側の両端部には、基盤ユニット2の蝶ボルト21bが挿入される取付孔41bが形成されている。可動板43には、測定棒3が挿入されるスリット状(切欠いた長孔状)の第2挿入孔43aが第1挿入孔41aと同心(同軸)上に形成され、可動板43の上面には、ステンレス製のガイド板45が回動可能に取り付けられている。すなわち、ボルト46とスプリングボルト47とによってガイド板45を第2挿入孔43a側に固定した状態では、第2挿入孔43aとガイド板45とによって測定棒3が案内、支持される。また、ボルト46を緩めると、図5(c)の二点鎖線で示すようにガイド板45を回動させることができ、測定棒3から第2挿入孔43aを移動させて打込みユニット4を取り外せるものである。なお、スプリングボルト47は、スプリングのような反発力(弾性力)を有するボルトで、この反発力によって振動や衝撃などによる緩みを防止でき、測定棒3の打ち込み中にも緩まないものである。
【0018】
引抜ユニット5は、被測定体Mに打ち込まれた測定棒3を被測定体Mから引き抜くためのユニットで、基盤ユニット2に取り付けられるようになっている。すなわち、図6に示すように、略四角形の取付基板51の中央両端側に、棒状の支持ポスト52が垂直に取り付けられ、この支持ポスト52の上端部に長方形の固定板53が固定されている。この固定板53の上面に引抜装置54が取り付けられ、引抜装置54の引抜ロッド54aが固定板53に形成された孔(図示せず)を介して取付基板51側に突出されている。引抜装置54には歯車などの伝達機構が内蔵され、ハンドル54bを回すと引抜ロッド54aが上下動するようになっている。さらに、引抜ロッド54aの先端部(取付基板51側の端部)には、取付ナット54cが取り付けられ、この取付ナット54cを測定棒3の雄ネジ部3aにネジ込むことで、引抜ロッド54aと測定棒3とが連結されるようになっている。また、取付基板51の中央部には、基盤ユニット2のガイド筒21cが挿入される挿入孔51aが形成され、この挿入孔51aと引抜ロッド54aとは同心(同軸)上に配設されている。さらに、取付基板51の四隅には、基盤ユニット2の蝶ボルト21bが挿入される取付孔51bが形成されている。
【0019】
測定ユニット6は、引抜ユニット5によって被測定体Mから測定棒3が引き抜かれている状態における測定棒3の変位と引き抜きに要する荷重とを測定するユニットで、変位計61と、ロードセル(荷重計)62と、データ収録装置63とを備えている。変位計61は測定棒3の変位(移動距離)を測定する計器で、引抜ユニット5の固定板53に取り付けられ、その計測ロッド61aが測定板64を介して引抜ロッド54aの先端部側に接続されるようになっている。ロードセル62は引抜ロッド54aに取り付けられ、ひずみゲージを備え、ひずみゲージによって測定されたひずみ量から荷重を算出する計器で、測定棒3を引き抜いているときの荷重(引抜荷重)、つまり被測定体Mによるせん断力を連続的、経時的に測定できるようになっている。データ収録装置63は、データロガー、メモリカード等の記憶媒体、バッテリパックなどを備え、変位計61およびロードセル62と接続されている。そして、変位計61およびロードセル62からの測定データを収録(収集、記憶)し、後述するように、測定データから測定棒3の変位と引抜荷重との関係データが得られるようになっている。
【0020】
次に、このような構成の原位置せん断強度測定装置1を用いた原位置せん断強度測定方法について説明する。図7は、原位置せん断強度測定装置1を用いて被測定体Mの原位置でのせん断強度を測定する手順を示す工程図である。
【0021】
まず、被測定体Mの測定面を面出し、整形し(ステップS1)、その測定面に基盤ユニット2を設置する(ステップS2)。すなわち、基盤ユニット2の基盤21を測定面に位置させ、アンカー22を被測定体Mに打ち込んで、基盤21を被測定体Mに固定させる。次に、基盤ユニット2に打込みユニット4を取り付け(ステップS3)、測定棒3を被測定体Mに打ち込む(ステップS4)。すなわち、図8に示すように、打込みユニット4の取付基板41の第1挿入孔41aを基盤ユニット2のガイド筒21cに挿入し、蝶ボルト21bで取付基板41を基盤21に取り付ける。そして、測定棒3を第2挿入孔43aからガイド筒21cに挿入して上記のようにガイド板45を固定し、測定棒3の打込みコマ31をハンマーなどで叩いて被測定体Mに打ち込む。この際、測定棒3の雄ネジ部3aにはナット32などを取り付けて保護する。測定棒3を所定の深さまで打ち込んだ後に、上記のようにして打込みユニット4を取り外し、基盤ユニット2に引抜ユニット5を取り付け、さらに測定ユニット6を取り付ける(ステップS5)。すなわち、図1に示すように、引抜ユニット5の取付基板51の挿入孔51aを基盤ユニット2のガイド筒21cに挿入し、蝶ボルト21bで取付基板51を基盤21に取り付ける。次に、上記のようにして引抜ロッド54aと測定棒3とを連結し、変位計61とロードセル62とを上記のように取り付け、データ収録装置63を起動準備する。そして、被測定体Mに圧縮反力を取りながら、引抜装置54のハンドル54bを回して測定棒3を被測定体Mから引き抜くとともに、測定ユニット6によって上記のような測定データを収録する(ステップS6)。続いて、データ収録装置63によって得られた測定棒3の変位と引抜荷重との関係データに基づいて、被測定体Mのせん断強度を算出する(ステップS7)。
【0022】
具体的には、図9、図10に示すようなデータがデータ収録装置63によって得られる。図9は、測定棒3を引き抜く経過時間と測定棒3の変位(軸変位)との関係を示し、図10は、測定棒3の変位(軸変位)と引抜荷重(軸荷重)との関係を示すものである。ここで例示したデータは、千葉県富津市の市宿層を被測定体Mとし、全長が300mmで凹凸を含む表面積が69.2cm2の測定棒3(貫入棒)を被測定体Mから引き抜いた際のデータであり、図中No.1〜No.8は、試験番号(測定番号)を示している。そして、図10のデータに基づいて、各引抜荷重を測定棒3の表面積で除してせん断応力を算出し、図11に示すような測定棒3の変位(軸変位)とせん断応力との関係データを得る。次に、図11のデータから、ピークせん断強度とそのときの変位、および残留せん断強度を読み取る。すなわち、図中「↓」印で示すように、せん断応力が最も高い値をピークせん断強度として読み取り、そのピークせん断強度が発生する測定棒3の変位を読み取る。さらに、軸変位に対してせん断応力がほぼ一定となるときのせん断応力(図11では軸変位が6〜8cmのときのせん断応力)を残留せん断強度として読み取るものである。なお、被測定体Mによっては、残留せん断強度が得られない、つまりせん断応力が一定にならない場合がある。
【0023】
このようにして得られたせん断強度とピーク時の変位とを、各試験における被測定体M(岩盤)の色彩、性状などと合わせて、図12に示すようにまとめる。そして、このようなデータを蓄積することで、被測定体Mの原位置密度等の物理的特性や岩盤区分などとせん断強度との関係を解析、把握できるものである。
【0024】
以上のように、本原位置せん断強度測定装置1および原位置せん断強度測定方法によれば、被測定体Mに打ち込まれた測定棒3を引き抜いている状態における測定棒3の変位と引抜荷重(せん断力)とを測定することで、被測定体Mのせん断強度を算出することができる。このように、測定棒3と引抜ユニット5と測定ユニット6などを備えた簡易な構成の装置で被測定体Mのせん断強度を測定することが可能となる。しかも、測定棒3が棒状であるため、このような測定棒3を被測定体Mから引き抜くのに大きな力を要せず、上記のように手動式の引抜装置54などで引き抜くことが可能となる。このため、装置の構成をより簡易化できるとともに、装置を小型化でき、原位置での測定が実務上容易となる。また、測定棒3を被測定体Mに打ち込み、引抜ユニット5で測定棒3を引き抜きながら測定ユニット6によって変位と引抜荷重とを測定すればよいため、せん断強度の測定が極めて容易となる。さらに、従来のように被測定体Mにコンクリートブロックを打設したり、被測定体Mをブロック状に切り出したりして、加力する必要がないため、大掛かりな装置や作業が不要となる。このように、簡易な構成の装置で、被測定体Mの原位置におけるせん断強度を容易に測定することができるものである。
【0025】
また、測定棒3の外周に上記のような凹凸が形成されているため、被測定体Mのせん断強度をより精度高く測定することが可能となる。すなわち、測定棒3を被測定体Mから引き抜いている状態では、測定棒3に形成された凹凸、つまり各円錐台の底面が引き抜き方向(軸方向)とほぼ平行な方向の力、つまりせん断力を被測定体Mからより適切に受ける(せん断面が被測定体M中を通過する)ことになる。このため、被測定体Mの原位置でのせん断強度をより精度高く測定することが可能となる。一方、測定棒3の先端部が円錐状に形成され、しかも、円錐台の上面が先端部側に位置するように凹凸が形成されているため、測定棒3を被測定体Mに打ち込み易い。
【0026】
以上、この発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、この実施の形態では、測定棒3を被測定体Mに直接打ち込んでいるが、測定棒3を打ち込むことによって被測定体Mの内部状態が乱れる(密度が高まるなどする)のを防止、軽減するために、測定棒3を打ち込む前に被測定体Mに下穴を形成するようにしてもよい。この場合、下穴を形成する際の被測定体Mの抵抗値を被測定体Mの物性値のインデックスとして活用することで、より精度高くせん断強度を算出、測定することが可能となる。
【0027】
また、管材で測定棒を構成し、測定棒の周壁に多数の孔を形成する。そして、測定棒内に水や空気などを供給し、測定棒周辺の被測定体Mに正または負の圧力を与えて、せん断面の拘束圧を制御するようにしてもよい。
【0028】
さらに、この実施の形態では、測定棒3の外周に上記のような凹凸を連続的に形成しているが、凹凸の形状等は上記のものに限らず、被測定体Mの物理的特性や性状などに適した形状等に設定すべきであることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る原位置せん断強度測定装置を被測定体に設置した状態を示す正面図(一部断面図)である。
【図2】図1の原位置せん断強度測定装置における基盤ユニットの基盤の平面図である。
【図3】図1の原位置せん断強度測定装置における測定棒の正面図である。
【図4】図3の測定棒の先端部の拡大図である。
【図5】図1の原位置せん断強度測定装置における打込みユニットの正面図(a)と側面図(b)と平面図(c)である。
【図6】図1の原位置せん断強度測定装置における引抜ユニットの正面図(a)と側面図(b)である。
【図7】図1の原位置せん断強度測定装置を用いて被測定体のせん断強度を測定する手順を示す工程図である。
【図8】図1の原位置せん断強度測定装置の測定棒を被測定体に打ち込んでいる状態を示す正面図(一部断面図)である。
【図9】図1の原位置せん断強度測定装置によって測定した経過時間と測定棒の変位(軸変位)との関係を示す図である。
【図10】図1の原位置せん断強度測定装置によって測定した測定棒の変位(軸変位)と引抜荷重(軸荷重)との関係を示す図である。
【図11】図1の原位置せん断強度測定装置によって測定した測定棒の変位(軸変位)とせん断応力との関係を示す図である。
【図12】図1の原位置せん断強度測定装置によって測定したせん断強度と被測定体(岩盤)などとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 原位置せん断強度測定装置
2 基盤ユニット
21 基盤
21b 蝶ボルト
21c ガイド筒
22 アンカー
3 測定棒
31 打込みコマ
4 打込みユニット
41 取付基板
42 ガイドポスト
43 可動板
5 引抜ユニット(引抜手段)
51 取付基板
52 支持ポスト
53 固定板
54 引抜装置
54a 引抜ロッド
54b ハンドル
54c 取付ナット
6 測定ユニット(測定手段)
61 変位計
62 ロードセル
63 データ収録装置
M 被測定体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩盤や土質地盤などの被測定体の原位置でのせん断強度を測定するための原位置せん断強度測定装置であって、
棒状で前記被測定体に打ち込まれる測定棒と、
前記被測定体に打ち込まれた前記測定棒を引き抜く引抜手段と、
前記引抜手段によって前記被測定体から前記測定棒が引き抜かれている状態における前記測定棒の変位と引き抜きに要する荷重とを測定する測定手段と、を備えたことを特徴とする原位置せん断強度測定装置。
【請求項2】
前記測定棒の外周に、軸方向に沿った凹凸を連続的に形成したことを特徴とする請求項1に記載の原位置せん断強度測定装置。
【請求項3】
前記測定棒の先端部を円錐状に形成し、同一形状の円錐台を上面が前記先端部側に位置するように同軸上に配設して前記凹凸を形成したことを特徴とする請求項2に記載の原位置せん断強度測定装置。
【請求項4】
岩盤や土質地盤などの被測定体の原位置でのせん断強度を測定する原位置せん断強度測定方法であって、
棒状の測定棒を前記被測定体に打ち込み、前記測定棒を前記被測定体から引き抜きながら前記測定棒の変位と引き抜きに要する荷重とを測定し、測定された変位と荷重とに基づいて前記被測定体のせん断強度を算出することを特徴とする原位置せん断強度測定方法。
【請求項1】
岩盤や土質地盤などの被測定体の原位置でのせん断強度を測定するための原位置せん断強度測定装置であって、
棒状で前記被測定体に打ち込まれる測定棒と、
前記被測定体に打ち込まれた前記測定棒を引き抜く引抜手段と、
前記引抜手段によって前記被測定体から前記測定棒が引き抜かれている状態における前記測定棒の変位と引き抜きに要する荷重とを測定する測定手段と、を備えたことを特徴とする原位置せん断強度測定装置。
【請求項2】
前記測定棒の外周に、軸方向に沿った凹凸を連続的に形成したことを特徴とする請求項1に記載の原位置せん断強度測定装置。
【請求項3】
前記測定棒の先端部を円錐状に形成し、同一形状の円錐台を上面が前記先端部側に位置するように同軸上に配設して前記凹凸を形成したことを特徴とする請求項2に記載の原位置せん断強度測定装置。
【請求項4】
岩盤や土質地盤などの被測定体の原位置でのせん断強度を測定する原位置せん断強度測定方法であって、
棒状の測定棒を前記被測定体に打ち込み、前記測定棒を前記被測定体から引き抜きながら前記測定棒の変位と引き抜きに要する荷重とを測定し、測定された変位と荷重とに基づいて前記被測定体のせん断強度を算出することを特徴とする原位置せん断強度測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−284896(P2007−284896A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110545(P2006−110545)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(599011687)学校法人 中央大学 (110)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(599011687)学校法人 中央大学 (110)
【Fターム(参考)】
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