説明

原位置封じ込め工法

【課題】簡易な手段で封じ込め地区からの汚染地下水の拡散を防止することができる原位置封じ込め工法を提供する。
【解決手段】遮水壁10によって汚染土壌4を周囲5から隔離して封じ込める。遮水壁10には、上端から下方に凹む低所よりなる地下水流出部11が1箇所又は複数箇所に設けられている。浄化部12は、砂、砕石などの透水性材料と、鉄粉及び/又は活性炭などの汚染物質の除去ないし分解等による浄化作用を奏する処理剤との混合物よりなる。遮水壁10の内側の地下水位が上昇すると、この地下水位が集水路14を介して又は直接に浄化部12に流れ込み、該浄化部12で浄化された後、地下水流出部11から周囲5へ流出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染土壌を周囲から離隔して封じ込める原位置封じ込め工法に係り、特に汚染地区を囲むように遮水壁を設ける原位置封じ込め工法に関する。さらに詳しくは、この遮水壁内側の地下水位が上昇したときに、この遮水壁内側から周囲へ流出する地下水を浄化処理するようにした原位置封じ込め工法に関する。
【背景技術】
【0002】
汚染土を原位置において封じ込めることにより、当該汚染土壌から有害物質が溶出して区域外の地下水を汚染することを防止することが土壌汚染対策法に基づく技術的手法の解説(下記非特許文献1)に記載されている。同解説の第111ページには、「具体的には、汚染土壌の範囲及び当該範囲内における土壌汚染の深さをボーリング調査により確認し、土壌汚染の範囲を囲むようにして、汚染土壌の下の最初の不透水層まで鋼製矢板等の遮水壁を打ち込み、土壌汚染が当該範囲外に拡がるのを防ぐ。さらに当該範囲内に降雨等の浸透による封じ込め内部の地下水位への影響が生じないように、遮水機能を保有する材料で封じ込め上面を覆う。上面は舗装措置と同様に厚さが10cm以上のコンクリートの層、又は厚さが3cm以上のアスファルトの層により覆うものとし、さらに必要に応じて土による覆いの措置を行うこととなる。」「封じ込め内部に異常な水位の上昇を確認した場合は、揚水による水位の低下や、遮水構造の補強等、適切な対策を講じる必要がある。」と記載されている。
【0003】
上記の通り、遮水壁で囲んだ汚染地区内で水位が異常に上昇すると、遮水壁を溢流して汚染地下水が周囲に拡散することになるため、揚水等による水位低下等の対策が必要となる。特開2003−53317号には、汚染地区を取り囲むように不透水層に達する遮水壁を構築して汚染土壌を汚染地区内に封じ込める原位置封じ込め工法において、この遮水壁の内側に沿って所定深さに達する集排水溝を設け、この集排水溝より揚水を行うことにより遮水壁内側からの汚染地下水位の周囲への溢出を防止することが記載されている。
【特許文献1】特開2003−53317号
【非特許文献1】土壌汚染対策法に基づく調査及び措置の技術的手法の解説 平成15年9月初版発行 監修:環境省 編・発行:社団法人土壌環境センター
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特開2003−53317号では、ポンプで揚水した汚水地下水を浄化処理する水処理設備が別途必要になる。また、ポンプが必須であり、設備コストが高くなると共に、動力コストも掛かる。
【0005】
本発明は、簡易な手段で封じ込め地区からの汚染地下水の拡散を防止することができる原位置封じ込め工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の原位置封じ込め工法は、汚水地区を取り囲むように不透水層又は難透水層に達する遮水壁を構築して汚染土壌を汚染地区内に封じ込める原位置封じ込め工法において、該遮水壁に、該遮水壁内側の地下水位が上昇したときに該遮水壁内側の地下水が該遮水壁の外部に流出する地下水流出部を設けると共に、この地下水流出部を通って該遮水壁の外部に流出する地下水を浄化する浄化手段を設けたことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の原位置封じ込め工法は、請求項1において、前記浄化手段は、地下水中の汚染物質を除去又は無害化する処理剤と透水性材料とを含むことを特徴とするものである。
【0008】
請求項3の原位置封じ込め工法は、請求項2において、該浄化手段は、前記処理剤及び透水性材料を収容した収容体を備ええており、該収容体の一端側に地下水の流入部が設けられ、他端側に、処理された地下水の流出部が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4の原位置封じ込め工法は、請求項2又は3において、該処理剤は、鉄粉、活性炭、ハイドロタルサイト、希土類化合物、酸化マグネシウム、アルミナ、アロフェン、イオン交換樹脂、キレート樹脂及び粘土鉱物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の混合物であることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5の原位置封じ込め工法は、請求項2ないし4のいずれか1項において、前記遮水壁の内側領域から外側領域へ向う方向に複数の前記浄化手段が多段に設けられており、少なくとも一部の浄化手段の処理剤は他の浄化手段の処理剤と異なることを特徴とするものである。
【0011】
請求項6の原位置封じ込め工法は、請求項1ないし5のいずれか1項において、前記浄化手段は、前記地下水流出部よりも前記遮水壁の内側に設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項7の原位置封じ込め工法は、請求項6において、前記遮水壁の内側領域に、該遮水壁内側の地下水を該地下水流出部に導くための集水路が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項8の原位置封じ込め工法は、請求項7において、該集水路は透水性材料よりなることを特徴とするものである。
【0014】
請求項9の原位置封じ込め工法は、請求項7において、該集水路は、管壁に複数の貫通孔が設けられた孔あき管よりなることを特徴とするものである。
【0015】
請求項10の原位置封じ込め工法は、請求項7ないし9のいずれか1項において、前記流出部は、前記遮水壁の該集水路と同レベルかそれよりも下位に設けられていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項11の原位置封じ込め工法は、請求項1ないし9のいずれか1項において、前記流出部は、前記遮水壁で囲まれた内側領域と該遮水壁の外側領域とを連通するように、流入口が該内側領域内に配置された排水管であることを特徴とするものである。
【0017】
請求項12の原位置封じ込め工法は、請求項11において、該外側領域は下水道であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の原位置封じ込め工法では、遮水壁内側の地下水位が所定以上上昇した場合、この遮水壁内側の地下水が、該遮水壁に設けられた地下水流出部から該遮水壁の外部に流出するが、この流出水を浄化手段で浄化するため、遮水壁の外部の汚染が防止される。
【0019】
本発明の浄化手段としては、地下水の汚染物質を除去又は分解する処理剤と、砂、砕石などの透水性材料とを含むものが好適である。
【0020】
本発明では、この浄化手段は、該処理剤及び透水性材料を収容した収容体を備ええており、該収容体の一端側に地下水の流入部が設けられ、他端側に、処理された地下水の流出部が設けられている構成であることが好ましい。この場合、該収容体内を通過する地下水の流れは押し出し流れとなる。
【0021】
処理剤としては、鉄粉、活性炭、ハイドロタルサイト、希土類化合物、酸化マグネシウム、アルミナ、アロフェン、イオン交換樹脂、キレート樹脂、粘土鉱物などが例示される。これらの処理剤は、地下水の汚染物質の種類に応じ、それぞれ単独で使用してもよく、あるいはこれらの2種以上を混合して使用してもよい。
【0022】
本発明においては、遮水壁の内側領域から外側領域へ向う方向に複数の浄化手段が多段に設けられており、少なくとも一部の浄化手段の処理剤は他の浄化手段の処理剤と異なっている構成としてもよい。このように構成することにより、地下水中の複数種の汚染物質をそれぞれ効率良く除去又は無害化することができる。
【0023】
この浄化手段は、地下水流出部よりも遮水壁内側に設けられることが好ましい。
【0024】
この遮水壁の内側領域に、該遮水壁内側の地下水を該地下水流出部に導くための集水路を設けておくと、汚染地区の地下水をスムーズに集水することができる。
【0025】
この集水管は、透水性材料により構成されてもよく、管壁に複数の貫通孔が設けられた孔あき管により構成されてもよい。
【0026】
本発明において、地下水流出部は、遮水壁の集水路と同レベルか又はそれよりも下位に設けられてもよい。
【0027】
また、この地下水流出部は、該遮水壁の内側領域と外側領域とを連通し、その流入口が該内側領域に配置された排水管であってもよい。この場合、該排水管の流出口は、下水道に接続されていることが好ましい。
【0028】
本発明の原位置封じ込め工法は、不透水層あるいは難透水層に相当するものを人工的に構築したものでも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図1は実施の形態に係る原位置封じ込め工法が適用された地域を示す断面斜視図、図2はこの地域の地下構築物を土を透視した状態で示す平面図、図3(a)は図1のIIIa−IIIa線断面図、図3(b)は図4のIIIb−IIIb線断面図、図4は、土中に設けられた遮水壁、浄化手段及び集水路を示す土中の透視斜視図である。
【0030】
図3(a)の通り、地表1から所定深さに不透水層3あるいは難透水層が存在し、その上側に帯水層2が存在する。
【0031】
この地域の全部又は一部に汚染土壌4が存在しているので、遮水壁10によって該汚染土壌4を周囲5から隔離して封じ込める。
【0032】
この遮水壁10は、下端が不透水層あるいは難透水層3内に達し、上端は地下水位6より上位の地表1近くに位置している。なお、遮水壁10の上端は地表1に達してもよい。
【0033】
この遮水壁10は、汚染土壌4の全周を取り囲んでいる。この実施の形態では、平面視形状が方形枠状であるが、これに限定されない。
【0034】
この遮水壁10は、地中に多数のボーリング穿孔を連続列状に施してコンクリートを流し込むことにより構築することができるが、遮水用鋼矢板を打ち込むことにより形成されてもよい。
【0035】
図4に明示される通り、この遮水壁10には、上端から下方に凹む低所よりなる方形の地下水流出部11が1箇所又は複数箇所(この実施の形態では3箇所)に設けられている。この地下水流出部11の下縁は地下水位6よりも所定高さ(例えば0〜100cm程度)上位となっている。
【0036】
この地下水流出部11よりも内側(汚染土壌4側)に浄化部12が設けられている。この浄化部12は、砂、砕石などの透水性材料と、鉄粉及び/又は活性炭などの汚染物質の除去ないし分解等による浄化作用を奏する処理剤との混合物よりなる。なお、処理剤としては、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、アルミナ、アロフェン、イオン交換樹脂、粘土鉱物などを用いてもよい。
【0037】
この浄化部12の両側及び下部には鋼矢板などよりなる板材13が配置されている。板材13の代りに防水コンクリート壁を設けてもよい。
【0038】
この浄化部12の上面は、地下水流出部11の下縁よりも好ましくは0〜200cm程度上位に位置している。また、浄化部12の下面は、地下水流出部11の下縁よりも好ましくは50〜500cm下位に位置している。浄化部12の両側面は、地下水流出部11の側縁と面一となっているが、浄化部12はそれよりも幅大に設けられてもよい。
【0039】
浄化部12は遮水壁10の内側面に当接するように設けられている。また、この実施の形態では、浄化部12の一部は地下水流出部11内に入り込んでいる。
【0040】
板材13は、浄化部12の上面よりも好ましくは0〜500cm上方にまで延在し、また、浄化部12の下面よりも好ましくは0〜500cm下方にまで延在している。板材13は遮水壁10の内側面に当接している。この当接部には必要に応じシールが施されてもよい。
【0041】
板材13は、浄化部12の両側面及び下部の全体を覆っており、側面から水が浄化部12に流入して短絡的に地下水流出部11へ流出することが防止されている。
【0042】
遮水壁10の内側面と平行方向に且つ地下水位6を含むレベルに集水路14が設けられている。この集水路14は砂、砕石などの透水性材料よりなる。なお、集水路14は孔あき管であってもよい。
【0043】
この集水路14は、浄化部12の地下水流出部11と反対側の端面に接するように配置されている。この集水路14は、遮水壁10の内側面に沿って連続して周回するように設けられているが、途中が部分的に途切れていてもよい。また、汚染地区全域にわたって櫛の歯状に集水路14を設けてもよい。
【0044】
図示はしないが、地表1をアスファルト、コンクリート、遮水シート等によって覆い、雨水の地下浸透を防止するようにしてもよい。
【0045】
このように構成された封じ込め構造において、通常は遮水壁10の内側の地下水位は地下水流出部11の下縁と同位か又はそれよりも下位となっているため、汚染区域から周囲5へ地下水が流出することはない。
【0046】
降雨など何らかの原因によって遮水壁10の内側の地下水位が上昇すると、この地下水が集水路14を介して又は直接に浄化部12に流れ込み、該浄化部12で浄化された後、地下水流出部11から周囲5へ流出する。この流出水は、浄化部12で重金属除去あるいはハロゲン化有機物等の汚染物質の分解ないしは吸着除去処理を受けたものであり、周囲5を汚染することはない。
【0047】
なお、汚染物質が揮発性有機塩素化合物である場合、地表1をアスファルト等で覆うと、(酸素)の地中への拡散が防止され、該化合物の浄化処理効率が向上する。
【0048】
汚染物質が重金属である場合、汚染土壌4や汚染土壌4内の水を空気と接触させてもよく、これにより重金属の浄化処理効率が向上する。
【0049】
図5は別の実施の形態に係る原位置封じ込め工法が適用された地域の平面図、図6はこの地域の地下水流出部付近の拡大平面図、図7は図6のVII−VII線に沿う断面図である。
【0050】
この実施の形態では、遮水壁10に囲まれた内側領域と外側領域とを連通するように、該内側領域に地下水流入口が配置された排水管20が設けられている。
【0051】
図5に示すように、この実施の形態でも、汚染土壌(汚染地域)4の四方を取り囲むようにして方形枠状の遮水壁10が構築されている。前述の通り、この遮水壁10は、下端が不透水層あるいは難透水層3内に達し、上端は地下水位6よりも上位の地表1近くに位置しているが、この遮水壁10の上端は地表1に達してもよい。この実施の形態では、この遮水壁10の上端から下方に凹む低所よりなる流出部11は設けられていない。
【0052】
この実施の形態では、該遮水壁10の内側領域の一コーナー部付近に集水容器21が設置されている。この集水容器21は、この実施の形態では有底筒状の容器であり、底部が地下水位6よりも下位に位置しており、上部は地表1に表出している。この集水容器21の上端には蓋21aが装着されている。ただし、この集水容器21の上部は地表1に表出していなくてもよい。
【0053】
地下水位6よりも下位となる集水容器21の底部付近に、前記排水管20の一端(地下水流入口)が接続されている。この排水管20は、遮水壁10の内側領域から遮水壁10を貫通して遮水壁10の外側領域に延出している。この排水管20は、遮水壁10の内側領域から外側領域に向って下り勾配となるように配設されている。
【0054】
この実施の形態では、この排水管20の他端側(流出口)は、遮水壁10の外側領域を流れる下水道(図示略)に接続されている。なお、下水道がこの排水管20よりも上位となる高さに配設されている場合には、揚水設備(図示略)を介して排水管20と下水道とを接続してもよい。
【0055】
遮水壁10の内側領域において、集水容器21に隣接して浄水部12Aが設置されている。この浄水部12Aは、図6に示すように、砂や砕石などの透水性材料と、汚染物質の除去ないし分解等による浄化作用を奏する処理剤と、これらの透水性材料及び処理剤を収容した収容体24とを備えている。
【0056】
図示の通り、該収容体24は、この実施の形態では、浄水部12Aの3方を取り囲むように略コ字形に配設された、鋼矢板等よりなる3枚の板材24a,24b,24cにより構築されている。各板材24a〜24c同士の接合部には、必要に応じシールが施されている。この収容体24のうち、これらの板材24a〜24cによって塞がれていない側が、該収容体24内への地下水の流入部24dとなっている。この流入部24dと反体側を塞いでいる板材24bには、処理された地下水の流出口24eが設けられている。この流出口24eは、配管25を介して集水容器21内に連通している。なお、上記板材24a〜24cの代りに、コンクリート壁により収容体24を構築してもよい。
【0057】
この収容体24の各板材24a〜24cは、地下水位6よりも好ましくは0〜500cm上方まで延在すると共に、該地下水位6よりも好ましくは0〜500cm下方まで延在している。前記流出口24e及び配管25は、地下水位6を含むレベルに略水平に配設されている。
【0058】
この実施の形態では、収容体24内に、前記流入部24dから流出口24eに向う方向に、第1の透水性材料の層22a、第1の処理剤の層23a、第2の透水性材料の層22b、第2の処理剤の層23b及び第3の透水性材料の層22cがこの順に多層状に形成されている。
【0059】
各層22a〜22c,23a,23bは、互いに対向する板材24a,24c同士の一方の内側面から他方の内側面まで、並びに流入部24dからこれと反対側の板材24bの内側面まで、それぞれフルに充填されている。各層22a〜22c,23a,23bは、それぞれ、下面が地下水位6よりも好ましくは50〜500cm下方にまで達し、上面が該地下水位6よりも好ましくは0〜200cm上方にまで達している。
【0060】
なお、この実施の形態では、各層22a〜22c,23a,23bの上面及び下面と各板材24a〜24cの上辺及び下辺とがそれぞれ略同一レベルに位置しているが、各板材24a〜24cは、各層22a〜22c,23a,23bの下面よりも下方にまで延在していてもよく、また各層22a〜22c,23a,23bの上面よりも上方にまで延在していてもよい。
【0061】
この実施の形態では、第1の処理剤の層23aと第2の処理剤の層23bとはそれぞれ種類(又は配合)の異なる処理剤により構成されている。前述の通り、処理剤としては、鉄粉、活性炭、ハイドロタルサイト、希土類化合物、酸化マグネシウム、アルミナ、アロフェン、イオン交換樹脂、キレート樹脂、粘土鉱物などが例示される。このような処理剤の中から、地下水に含まれる汚染物質に応じて適宜選択される。この際、第1及び第2の各処理剤の層23a,23bとして、種類の異なる処理剤をそれぞれ単独にて(混合せずに)使用してもよく、それぞれ2種類以上の処理剤を混合して使用してもよい。
【0062】
第1〜第3の透水性材料の層22a〜22cは、いずれも同じ種類の透水性材料により構成されてもよく、それぞれ種類の異なる透水性材料により構成されてもよい。
【0063】
この実施の形態では、浄化部12Aの三方を板材24a〜24cで囲むことにより、水が浄化部12Aに流入して短絡的に集水容器21へ流出することが防止されている。なお、必要に応じ、浄化部12Aの底面や上面にも板材を設け、浄化部12Aの底面や上面から水が浄化部12Aに流入することを防止してもよい。
【0064】
この実施の形態では、地下水位6を含むレベルに、遮水壁10の内側の汚染地域全体にわたって櫛の歯状に集水路14Aが設けられている。なお、この実施の形態でも、集水路14Aは砂、砕石などの透水性材料よりなるが、孔あき管等により構成されてもよい。
【0065】
詳しくは、この実施の形態では、図5の通り、遮水壁10によって囲まれた方形の汚染地域4を、集水容器21が設置されたコーナー部付近から対角線状に横切るように、幹集水路14aが延設されている。この幹集水路14aの基端側は、浄水部12Aの流入部24dに臨む第1の透水性材料の層22aの端面に接するように配置されている。
【0066】
この幹集水路14aの延在方向の途中の複数箇所から、遮水壁10の直交2方向(図5の上下方向及び左右方向)の各辺と平行に、それぞれ枝集水路14bが延出している。(なお、この実施の形態では、幹集水路14aから、図5の左右方向及び上下方向にそれぞれ間隔をおいて6本ずつ枝集水路14bが延出している。)
【0067】
図示はしないが、この実施の形態でも、地表1をアスファルト、コンクリート、遮水シート等によって覆い、雨水の地下浸透を防止するようにしてもよい。
【0068】
このように構成された封じ込め構造においても、降雨など何らかの原因によって遮水壁10の内側の地下水位6が上昇すると、この地下水が集水路14Aを介して又は直接に浄化部12Aに流れ込む。この際、該集水路14Aから流入部24dを介して地下水が収容体24内に流入し、第1の透水性材料の層22a、第1の処理剤の層23a、第2の透水性材料の層22b、第2の処理剤の層23b及び第3の透水性材料の層22cを順次に通過することにより、地下水の汚染物質が除去ないし無害化される。
【0069】
この地下水は、該浄化部12Aで浄化された後、流出口24eから配管25、集水容器21及び排水管20を介して、遮水壁10の外側領域を流れる下水道へ流出する。この流出水は、浄化部12Aで汚染物質の分解ないしは吸着除去処理を受けたものであり、下水道を汚染することはない。
【0070】
この実施の形態にあっては、汚染地域4の略全体にわたって集水路14Aが配設されているので、該汚染地域4の略全体にわたって満遍なく地下水を集水することができる。
【0071】
上記の実施の形態では、集水容器21(排水管20の流入口)は遮水壁10の内側領域のコーナー部付近に配置されているが、集水容器21(排水管20の流入口)の配置はこれに限定されない。また、この遮水壁10の内側領域内における集水路の配置も、上記の各実施の形態に限定されない。
【0072】
例えば、図8のように、集水容器21(排水管20の流入口)は、汚染地域4のほぼ中央付近に配置されてもよい。
【0073】
なお、この図8の実施の形態でも、汚染地域4の略全体にわたって集水路14Bが配設されている。
【0074】
この実施の形態では、汚染地域4の3方を囲む遮水壁10の内側面に沿って略コ字形集水路14cが延設され、その内側に一回り小さい略コ字形集水路14dが延設され、その内側にもう一回り小さい略コ字形集水路14eが延設され、その内側にさらにもう一回り小さい略コ字形集水路14fが延設されている。また、これらの略コ字形集水路14c〜14fの両端部付近同士を短絡するように、残る一方の遮水壁10の内側面に沿って集水路14gが延設されると共に、該略コ字形集水路14c〜14fの延在方向の中間部付近同士を横切るようにして、該汚染地域4の中央へ向って集水路14hが延設されている。
【0075】
この最も内側の略コ字形集水路14fの内側に集水容器21と浄化部12Aとが配置されている。集水路14hの末端は、この浄化部12Aに接続されている。
【0076】
この実施の形態にあっても、汚染地域4の略全体にわたって集水路14Bが配設されているので、該汚染地域4の略全体にわたって満遍なく地下水を集水することができる。
【0077】
上記の各実施の形態はいずれも本発明の一例を示すものであり、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施の形態に係る原位置封じ込め工法が適用された地域を示す斜視図である。
【図2】この地域の地下構築物を示す平面図である。
【図3】図3(a)は図1のIIIa−IIIa線断面図、図3(b)は図4のIIIb−IIIb線断面図である。
【図4】遮水壁、浄化手段及び集水路を示す斜視図である。
【図5】別の実施の形態に係る原位置封じ込め工法が適用された地域の平面図である。
【図6】図5の地域の地下水流出部付近の拡大平面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】さらに別の実施の形態に係る原位置封じ込め工法が適用された地域を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0079】
10 遮水壁
11 地下水流出部
12,12A 浄化部
13 板材
14,14A,14B 集水路
20 排水管
21 集水容器
22a〜22c 透水性材料の層
23a〜23b 処理剤の層
24 収容体
24d 流入部
24e 流出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚水地区を取り囲むように不透水層又は難透水層に達する遮水壁を構築して汚染土壌を汚染地区内に封じ込める原位置封じ込め工法において、
該遮水壁に、該遮水壁内側の地下水位が上昇したときに該遮水壁内側の地下水が該遮水壁の外部に流出する地下水流出部を設けると共に、この地下水流出部を通って該遮水壁の外部に流出する地下水を浄化する浄化手段を設けたことを特徴とする原位置封じ込め工法。
【請求項2】
請求項1において、前記浄化手段は、地下水中の汚染物質を除去又は無害化する処理剤と透水性材料とを含むことを特徴とする原位置封じ込め工法。
【請求項3】
請求項2において、該浄化手段は、前記処理剤及び透水性材料を収容した収容体を備ええており、該収容体の一端側に地下水の流入部が設けられ、他端側に、処理された地下水の流出部が設けられていることを特徴とする原位置封じ込め工法。
【請求項4】
請求項2又は3において、該処理剤は、鉄粉、活性炭、ハイドロタルサイト、希土類化合物、酸化マグネシウム、アルミナ、アロフェン、イオン交換樹脂、キレート樹脂及び粘土鉱物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする原位置封じ込め工法。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1項において、前記遮水壁の内側領域から外側領域へ向う方向に複数の前記浄化手段が多段に設けられており、
少なくとも一部の浄化手段の処理剤は他の浄化手段の処理剤と異なることを特徴とする原位置封じ込め工法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記浄化手段は、前記地下水流出部よりも前記遮水壁の内側に設けられていることを特徴とする原位置封じ込め工法。
【請求項7】
請求項6において、前記遮水壁の内側領域に、該遮水壁内側の地下水を該地下水流出部に導くための集水路が設けられていることを特徴とする原位置封じ込め工法。
【請求項8】
請求項7において、該集水路は透水性材料よりなることを特徴とする原位置封じ込め工法。
【請求項9】
請求項7において、該集水路は、管壁に複数の貫通孔が設けられた孔あき管よりなることを特徴とする原位置封じ込め工法。
【請求項10】
請求項7ないし9のいずれか1項において、前記流出部は、前記遮水壁の該集水路と同レベルかそれよりも下位に設けられていることを特徴とする原位置封じ込め工法。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれか1項において、前記流出部は、前記遮水壁で囲まれた内側領域と該遮水壁の外側領域とを連通するように、流入口が該内側領域内に配置された排水管であることを特徴とする原位置封じ込め工法。
【請求項12】
請求項11において、該外側領域は下水道であることを特徴とする原位置封じ込め工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−305543(P2006−305543A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−199725(P2005−199725)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】