説明

原子炉の気水分離設備

【課題】原子炉圧力容器内の気水分離器入口でのクオリティ分布を考慮して、気水分離器全体として低キャリーアンダーを実現できる気水分離設備を提供する。
【解決手段】原子炉中央部に配置される気水分離器の第1段排出流路8aの流路抵抗を、原子炉外周部に配置される気水分離器の第1段排出流路8aの流路抵抗よりも大きくすることで、気水分離器入口でのクオリティが高い原子炉中央部に配置される気水分離器においては気水分離器内部からのキャリーアンダーが抑制され、気水分離器入口でのクオリティが低い外周部に配置される気水分離器においては気水分離器外部からのキャリーアンダーが抑制されることにより、気水分離器の集合体である気水分離設備全体としてキャリーアンダーを低くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉、特には沸騰水型原子炉、で発生した蒸気を冷却水から分離する気水分離器を複数体集合した気水分離設備に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントでは、発電機を駆動する蒸気タービンへ原子炉で発生させた蒸気を供給する。
【0003】
その際に、タービン翼部分でのエロ−ジョンやコロージョンの発生を防いで蒸気タービンの健全性を維持するために、原子炉で発生した蒸気を原子炉内の冷却材から分離する気水分離器と、分離された後の蒸気に含まれる液滴を除去する蒸気乾燥器とで構成される2段階の気水分離システムが改良型沸騰水型原子炉(以下、ABWRという)では採用されている。
【0004】
この2段階の気水分離システムで蒸気に含まれる液滴量を一定値以下にした後、蒸気を蒸気タービンに供給している。
【0005】
ABWRに用いられている従来の気水分離器を、図6を用いて説明する。気水分離器は、冷却材である軽水が原子炉の炉心で加熱され沸騰することにより生成される蒸気と水との気液二相流を、蒸気と水に分離するためのものである。
【0006】
従来の気水分離器は、図6に示すように、シュラウドヘッド13に接続されたスタンドパイプ1,スタンドパイプ1に接続されたディフューザ6,ディフューザ6内に固定したスワラー2,ディフューザ6に接続した内筒3,内筒3の外側に排出流路8を介在して配置された外筒4,外筒4に設けられて内筒3から排出流路8への流路としてギャップ7を形成するピックオフリング5により一段の気水分離機構が構成され、この気水分離機構がピックオフリング5の中央に配置した開口で連通された状態で、上方へ三段分構築されて成る。
【0007】
図6に示すように、各段の対応する部分には、符号a,b,cを付して区別している。
【0008】
従来の気液分離機能は次の通りである。即ち、スタンドパイプ1から流入した気液二相流は、スワラー2により旋回力を与えられ、遠心分離作用により密度の大きい水が外側に押し出され、密度の小さい蒸気が中心に集まる。外側に押し出された水は、内筒3とピックオフリング5のギャップ7から内筒3と外筒4で形成された排出流路8を通って圧力容器15内の冷却材である炉水20に戻される。
【0009】
かかる気水分離機構を気液二相流の流れ方向に沿って3段設けて一体の気水分離器を構成し、三段階にわたって気水分離機能を発揮する。ABWRの場合、そのような気水分離器が複数体集合してシュラウドヘッド13上に設置されている。
【0010】
気水分離器は、冷却材が炉心で加熱され沸騰することにより生成される蒸気と水との気液二相流を、蒸気と水に分離するためのものであるが、気水分離器の排出流路から排出される水には一定量の蒸気が含まれており、その蒸気の分離液に対する重量比をキャリーアンダーという。
【0011】
このキャリーアンダーが大きければそれだけ蒸気が分離液とともにシュラウドヘッドに沿ってダウンカマに流れ込み、強制循環炉であれば冷却材を循環させるインターナルポンプあるいはジェットポンプ(沸騰水型原子炉:BWRの場合)のポンプ性能を低下させる恐れがあり、また、自然循環炉においてはダウンカマの冷却材密度が小さくなることにより、自然循環流量が低下する恐れがある。
【0012】
そのため、気水分離器に要求される性能として、キャリーアンダーは規定値以下となることが要求されている。
【0013】
気水分離器へ流入する気液二相流のクオリティ(気液二相流中の蒸気の重量比)とキャリーアンダーとの関係の一例を図2に示す。キャリーアンダーはあるクオリティX1付近で極小値をもつ。クオリティがX1より大きい場合、気水分離器に流入する蒸気量が増加するため、第1段目の気水分離機構にて分離され、排出流路を通って炉水に戻される分離液中に含まれる蒸気の量が多くなり、気水分離器内部からのキャリーアンダーが増加する。
【0014】
クオリティがX1より小さい場合、第1段目の気水分離機構による気水分離性能が、クオリティがX1より大きい場合よりも低下するため、第2段目以降の気水分離機構の排出流路を通って排出される蒸気と水の量が多くなる。
【0015】
第2段目以降の排出流路の出口は、気水分離器間に形成される炉水の水面より上部に開放されており、気水分離器外部空間に排出された蒸気と水が水面に衝突し、蒸気泡の巻き込みが生じることにより、気水分離器外部領域からのキャリーアンダーが増加する。
【0016】
気水分離器のキャリーアンダー性能は、気水分離器自体の排出流路に設置されている流量制限体などにより排水量を調整することで性能を確保している。また、キャリーアンダー性能を広範囲の運転条件において最適化されるように、炉水位が高く、気水分離器の排出流路にかかる静水圧が大きいときに、排出流路に設置されている流量制限体の抵抗値を小さくして、炉水位の影響を受けにくい気水分離器構造が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0017】
また、原子炉中央部に配置される気水分離器の排出流路の流路抵抗を、外周部に配置される気水分離器の排出流路の流路抵抗よりも小さくすることで、気水分離器内部からのキャリーオーバー(分離した蒸気中に含まれる水の重量比)、キャリーアンダーを低減する気水分離器構造が公知である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平7−151892号公報
【特許文献2】特開昭62−35291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従来のABWRでは約350体の気水分離器が原子炉の圧力容器内に配置されているが、気水分離器の仕様は炉心から出てきた気液二相流の平均クオリティに対して一律に決められている。
【0020】
しかし、炉心から出てくる気液二相流のクオリティは、炉心における各燃料集合体の熱出力の関係から外周部ほど減少する傾向にある。従って、その上方空間である上部プレナム内でクオリティは分布を持ち、気水分離器入口でも場所によってクオリティが異なる。
【0021】
従来はこのクオリティの分布を考慮していないため、気水分離器全体としての気水分離性能の最適化を図ることは困難であった。また、今後国内で予定されている既設炉の出力向上や海外で建設が予定されている高経済性単純化沸騰水型原子炉(ESBWR)、及びABWRよりさらに出力を増大した次世代原子炉においては、現行ABWRよりも気水分離器入口での気液二相流のクオリティが大きくなるため、特に、気水分離器入口での気液二相流のクオリティが平均クオリティよりも高い気水分離器においては、気水分離器内部からのキャリーアンダーが増加する恐れがある。
【0022】
炉水位が高く、気水分離器の排出流路にかかる静水圧が大きいときに、排出路に設置されている流量制限体の抵抗値を小さくする構造、及び、原子炉中央部に配置される気水分離器の排出流路の流路抵抗を、外周部に配置される気水分離器の排出流路の流路抵抗よりも小さくする構造の何れの構造においても、気水分離器入口でのクオリティが高い原子炉中央部に配置される気水分離器においては、第1段目の気水分離機構にて分離される分離液の量が多くなるため、気水分離器内部からのキャリーアンダーを抑制することが困難である。
【0023】
本発明の目的は、原子炉の圧力容器内に広範囲に配置されている各気水分離器入口でのクオリティ分布を考慮して、そのクオリティが上昇しても気水分離器の集合体全体として低キャリーアンダーを実現できる原子炉の気水分離設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の目的を達成するための手段は、気水分離機構を上下多段に有する気水分離器を原子炉中央部から外周部にかけて原子炉の圧力容器内に配置される原子炉の気水分離設備において、前記原子炉中央部に配置される前記気水分離器の下から第1段目の排出流路の流路抵抗を、前記外周部に配置される前記気水分離器の下から第1段目の排出流路の流路抵抗よりも大きくした構成を有する。
【0025】
かかる構成によると、入口でのクオリティが高い原子炉中央部に配置される気水分離器においては気水分離器内部からのキャリーアンダーを抑制し、入口でのクオリティが低い外周部に配置される気水分離器においては気水分離器外部からのキャリーアンダーを抑制することで、複数体の気水分離器の集合体である気水分離設備全体としてキャリーアンダーを低くすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の原子炉の気水分離設備によれば、気水分離設備全体からのキャリーアンダーを低く維持することができるので、原子炉が強制循環炉であれば冷却材を循環させるポンプの性能低下、原子炉が自然循環炉であれば自然循環流量低下のリスクを低減することができ、本発明を採用した原子炉を有するプラントの信頼性向上に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の気水分離設備が採用される改良型沸騰水型原子炉の縦断面図である。
【図2】気水分離器の性能をあらわすキャリーアンダーと気水分離器入口における気液二相流のクオリティとの関係を示したグラフ図である。
【図3】本発明の実施例1による気水分離器縦断面図にして、(a)図は原子炉中央部に配置される気水分離器を、(b)図は原子炉外周部に配置される気水分離器を示した図である。
【図4】本発明の実施例2による気水分離器縦断面図にして、(a)図は原子炉中央部に配置される気水分離器を、(b)図は原子炉外周部に配置される気水分離器を示した図である。
【図5】本発明の実施例3による気水分離器縦断面図にして、(a)図は原子炉中央部に配置される気水分離器を、(b)図は原子炉外周部に配置される気水分離器を示した図である。
【図6】従来の原子炉の気水分離器の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施例は、気水分離機構を上下多段に有する気水分離器を原子炉中央部から外周部にかけて原子炉の圧力容器内に配置される原子炉の気水分離設備において、その原子炉中央部に配置される気水分離器の下から第1段目の排出流路の流路抵抗を、同じく外周部に配置される気水分離器の下から第1段目の排出流路の流路抵抗よりも大きくして、入口でのクオリティが高い原子炉中央部に配置される気水分離器においては気水分離器内部からのキャリーアンダーを抑制し、入口でのクオリティが低い外周部に配置される気水分離器においては気水分離器外部からのキャリーアンダーを抑制している。
【0029】
これにより、複数体の気水分離器の集合体である気水分離設備全体としてキャリーアンダーを低くすることができる。
【0030】
以下に本発明の各実施例を図に基づいて一層具体的に説明する。
【実施例1】
【0031】
まず本発明の各実施例が適用される原子炉であるABWRの構成を、図1に基づいて説明する。図1に示すように、ABWRは、原子炉の圧力容器内に熱を発生する炉心11を内蔵している。その炉心11を取り囲む円筒状のシュラウド12およびシュラウド12の上端部で炉心11の上方を覆うシュラウドヘッド13、シュラウドヘッド13に取り付けた複数体の気水分離器10、その上方に配置された蒸気乾燥器14、圧力容器15内の冷却材である軽水を循環させるインターナルポンプ16を備えている。
【0032】
インターナルポンプ16はシュラウド12外壁面と圧力容器15内壁面との間の流路であるダウンカマ19から冷却水を吸い込んで圧力容器15の下部から炉心11に送り込む。その冷却水は、炉心11で加熱されて沸騰し、蒸気と水の気液二相流となる。
【0033】
この気液二相流は、上昇して気水分離器10で蒸気と水に分離される。分離された蒸気には湿分が多く含まれているので、蒸気乾燥器14で湿分がさらに取り除かれ、クオリティを増した高温高圧な蒸気とされる。そのクオリティを増した蒸気は、圧力容器15に接続された主蒸気配管17を通って図示しない発電機駆動用のタービンに送られ、そのタービンにて駆動蒸気として利用される。その後に、利用された蒸気は液体にされて圧力容器15のダウンカマ19内に図示していない給水系統により給水ノズル18から給水される。
【0034】
また、各気水分離器10で分離された冷却水は、給水ノズル18から供給される給水と圧力容器15内で混合され、ダウンカマ19に流れ込み、インターナルポンプ16によって再度炉心11へと再循環する。
【0035】
各気水分離器10は、図1にみられるように、上方へ湾曲して突き出たシュラウドヘッド13の最上部とその近傍である原子炉中央部からシュラウドヘッド13の上方への湾曲部の圧力容器15内壁面寄りの原子炉外周部にわたって分布して配置されている。
【0036】
個々の気水分離器10は、従来の気水分離器の構造と類似して、以下の構成を有する。
【0037】
即ち、シュラウドヘッド13の上方へ湾曲して突き出た上面には原子炉中央部から原子炉外周部にかけて分布させて配置した複数のスタンドパイプ1の下端が接続されている。スタンドパイプ1の上端にはディフューザ6の下端が接続され、そのディフューザ6内にスワラー2が固定されている。ディフューザ6の上端には内筒3が接続され、内筒3の外側に排出流路8を介在して配置された外筒4が装備されている。その外筒4に設けられて内筒3から排出流路8への流路としてギャップ7をピックオフリング5により形成している。このように一段の気水分離機構が構成され、この気水分離機構がピックオフリング5の中央に配置した開口で連通された状態で、上方へ三段分構築されて一体の気水分離器10が作られている。
【0038】
各図に示すように、各段の対応する部分には、符号a,b,cを付して各段毎の区別を図示している。
【0039】
この構成により、スタンドパイプ1から流入した気液二相流は、スワラー2により旋回力が与えられて気液二相流に遠心力が作用し、遠心分離作用により密度の大きい水が外側に分離されて内筒3の内壁面に捕捉されて上方へ押し出され、密度の小さい蒸気が内筒3の中心に集まって上昇する。
【0040】
上方に押し出された水は、内筒3内壁面を下方から上方への流れによってピックオフリング5まで上昇し、ピックオフリング5で下向きの流れに誘導されてギャップ7から排出流路8を通って炉水20に戻されてダウンカマ19に流れ込む。
【0041】
一方で、内筒3内の蒸気はピックオフリング5の中央部の開口を通過して上昇し、上段の内筒3内で遠心分離を受け、その上段の排出流路8から分離後の水が排出され、同じく炉水に戻され、ダウンカマ19に流れ込む。それ以上の上段の気水分離機構部分においても同様である。
【0042】
本実施例1では、原子炉中央部に配置される気水分離器10の下から第1段目の排出流路8aの流路抵抗を、同じく外周部に配置される気水分離器10の下から第1段目の排出流路8aの流路抵抗よりも大きくするために、図3に示す以下のような構成を有する。
【0043】
即ち、図3(a)に示すように、原子炉中央部に配置される気水分離器10の外筒4aの長さを、図3(b)で示す原子炉外周部に配置される気水分離器10の外筒4aよりも長くしてある。
【0044】
このように原子炉中央部に配置される気水分離器10の下から第1段目の排出流路8aの流路長が原子炉外周部に配置される気水分離器10のそれよりも長くすることにより、原子炉中央部に配置される気水分離器10の下から第1段目の排出流路8aの流路抵抗を原子炉外周部に配置される気水分離器10のそれよりも大きくしている。
【0045】
次に、以上のような構成にした実施例1による気水分離設備の作用を以下に説明する。
【0046】
気水分離器10の入口でのクオリティが高い原子炉中央部に配置される気水分離器10においては、排出流路8aにおける流路抵抗が大きいため、第1段目の気水分離機構にて分離され、排出流路8aを通って炉水20に戻される分離液の流量が減少する。
【0047】
したがって、分離液に巻き込まれ、分離液とともに排出される蒸気量が減少するため、気水分離器内部からのキャリーアンダーが減少する。
【0048】
なお、下から第1段目の気水分離機構にて分離されずに下から第2段目以降の気水分離機構へと流入する気液二相流の流量は増加するが、第2段目以降にて十分に気水分離されるため、気水分離器内部からのキャリーオーバーが増加することはない。
【0049】
また、気水分離器10の入口でのクオリティが低い原子炉外周部に配置されている気水分離器10においては、排出流路8aにおける流路抵抗が小さいため、第1段目の気水分離機構にて分離され、排出流路8aを通って炉水20に戻される分離液の流量が増加する。
【0050】
したがって、第2段目以降の気水分離機構へと流入する気液二相流の流量が減少し、排出流路8b,8cから排出される蒸気と水の量が減少するため、気水分離器外部空間に排出された蒸気と水が炉水20の水面に衝突し、蒸気泡の巻き込みが生じることによる、気水分離器外部領域からのキャリーアンダーが減少する。
【0051】
このように、本実施例1では、気液二相流に旋回力を付与するスワラー2、気液二相流が通過する内筒3、前記内筒3の外部を取り囲むようにして前記内筒3の内壁面に分離された水を外部へ排出するための排出流路8を形成するための外筒4、前記排出流路8の入口に設けたピックオフリング5、前記内筒3へ二相流を導くスタンドパイプ1、流路面積の小さい前記スタンドパイプ1と流路面積が大きい前記内筒3を接続するディフューザ6を備え、前記内筒3と前記外筒4と前記ピックオフリング5で複数段の排出流路8を形成した気水分離器10であって、原子炉中央部に配置される前記気水分離器10の前記外筒4の長さを、原子炉外周部に配置される前記気水分離器10の前記外筒4の長さよりも長くなるように構成した原子炉の気水分離設備によって本発明の目的を達成している。
【実施例2】
【0052】
本発明の実施例2による原子炉の気水分離設備は、既述の実施例1における原子炉中央部に配置される気水分離器10の下から第1段目の排出流路8aの流路抵抗を、同じく外周部に配置される気水分離器10の下から第1段目の排出流路8aの流路抵抗よりも大きくするための構成を変更したもので、その他の構成は既述の実施例1と同じである。
【0053】
その変更の内容は以下の通りである。即ち、図4(a)に示すように、原子炉中央部に配置される気水分離器10の下から1段目の外筒4aの径を、図4(b)で示す原子炉外周部に配置される気水分離器10の外筒4aの径よりも細くしてある。
【0054】
これにより、原子炉中央部に配置される気水分離器10の下から1段目の排出流路8aの流路面積が、原子炉外周部に配置される気水分離器10の下から1段目の排出流路8aの流路面積よりも狭くなることで、原子炉中央部に配置される気水分離器10の下から1段目の排出流路8aの流路抵抗を、原子炉外周部に配置される気水分離器10の下から1段目の排出流路8aの流路抵抗よりも大きくしている。このような実施例2による気水分離設備の作用は実施例1と同じである。
【0055】
このように、本実施例2では、気液二相流に旋回力を付与するスワラー2、気液二相流が通過する内筒3、前記内筒3の外部を取り囲むようにして前記内筒3の内壁面に分離された水を外部へ排出するための排出流路8を形成するための外筒4、前記排出流路8の入口に設けたピックオフリング5、前記内筒3へ二相流を導くスタンドパイプ1、流路面積の小さい前記スタンドパイプ1と流路面積が大きい前記内筒3を接続するディフューザ6を備え、前記内筒3と前記外筒4と前記ピックオフリング5で複数段の排出流路8を形成した気水分離器10であって、原子炉中央部に配置される前記気水分離器10の前記外筒4の径を、外周部に配置される前記気水分離器10の前記外筒4の径よりも細くなるように構成した原子炉の気水分離設備によって本発明の目的を達成している。
【実施例3】
【0056】
本発明の実施例3による原子炉の気水分離設備は、既述の実施例1における原子炉中央部に配置される気水分離器10の下から第1段目の排出流路8aの流路抵抗を、同じく外周部に配置される気水分離器10の下から第1段目の排出流路8aの流路抵抗よりも大きくするための構成を変更したもので、その他の構成は既述の実施例1と同じである。
【0057】
その変更の内容は以下の通りである。即ち、図5(a)(b)に示すように、原子炉中央部に配置される気水分離器10の下から第1段目の排出流路8aと、原子炉外周部に配置される気水分離器10の下から第1段目の排出流路8aとに、それぞれ流量制限体9を流路抵抗となるように設置する。
【0058】
そして、図5(a)(b)に示すように、原子炉中央部に配置される気水分離器10の流量制限体9の外筒4aから排出流路8aへの突き出し長さが、原子炉外周部の気水分離器10のそれよりも長い形状として、流量制限体9の形状を気水分離器10の配置場所により変更した。
【0059】
これにより、原子炉中央部に配置される気水分離器10の下から1段目の排出流路8aの流路抵抗を、原子炉外周部に配置される気水分離器10の下から1段目の排出流路8aの流路抵抗よりも大きくしている。このような実施例3による気水分離設備の作用は実施例1と同じである。
【0060】
このように、本実施例3では、気液二相流に旋回力を付与するスワラー2、気液二相流が通過する内筒3、前記内筒3の外部を取り囲むようにして前記内筒3の内壁面に分離された水を外部へ排出するための排出流路8を形成するための外筒4、前記排出流路8の入口に設けたピックオフリング5、前記内筒3へ二相流を導くスタンドパイプ1、流路面積の小さい前記スタンドパイプ1と流路面積が大きい前記内筒3を接続するディフューザ6を備え、前記内筒3と前記外筒4と前記ピックオフリング5で複数段の排出流路8を形成した気水分離器10であって、原子炉中央部に配置される前記気水分離器10の前記排出流路8に設置されている流量制限体9による流路抵抗を、原子炉外周部に配置される前記気水分離器10の前記排出流路8に設置されている流量制限体9による流路抵抗よりも大きくなるように、前記流量制限体9の形状を前記気水分離器10の配置場所により変更した原子炉の気水分離設備によって本発明の目的を達成している。
【0061】
以上の各実施例では、原子炉中央部に配置される気水分離器10の第1段排出流路8aの流路抵抗を、原子炉外周部に配置される気水分離器10の第1段排出流路8aの流路抵抗よりも大きくすることで、気水分離器10の入口での気液二相流のクオリティが高い原子炉中央部に配置される気水分離器10においては気水分離器10の内部からのキャリーアンダーが抑制され、気水分離器10の入口での気液二相流のクオリティが低い原子炉外周部に配置される気水分離器10においては気水分離器10の外部からのキャリーアンダーが抑制されることにより、気水分離器10の集合体である気水分離設備全体としてキャリーアンダーを低くすることができる。
【0062】
このように、本発明の各実施例では、原子炉の圧力容器15内の気水分離器10入口での気液二相流のクオリティ分布を考慮して、気水分離器内外でのキャリーアンダーを抑制して全体として低キャリーアンダーを実現できる気水分離設備を提供出来る。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は沸騰水型原子炉の圧力容器内における気水分離設備に利用可能性がある。
【符号の説明】
【0064】
1 スタンドパイプ
2 スワラー
3 内筒
4 外筒
5 ピックオフリング
6 ディフューザ
7 ギャップ
8 排出流路
9 流量制限体
10 気水分離器
11 炉心
12 シュラウド
13 シュラウドヘッド
14 蒸気乾燥器
15 圧力容器
16 インターナルポンプ
17 主蒸気配管
18 給水ノズル
19 ダウンカマ
20 炉水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気水分離機構を上下多段に有する気水分離器を原子炉中央部から外周部にかけて原子炉の圧力容器内に配置される原子炉の気水分離設備において、前記原子炉中央部に配置される前記気水分離器の下から第1段目の排出流路の流路抵抗を、前記外周部に配置される前記気水分離器の下から第1段目の排出流路の流路抵抗よりも大きく構成したことを特徴とした原子炉の気水分離設備。
【請求項2】
請求項1において、原子炉中央部に配置される前記気水分離器の外筒の長さを、原子炉外周部に配置される前記気水分離器の外筒の長さよりも長くなるように構成したことを特徴とする原子炉の気水分離設備。
【請求項3】
請求項1において、原子炉中央部に配置される前記気水分離器の外筒の径を、原子炉外周部に配置される前記気水分離器の外筒の径よりも細くなるように構成したことを特徴とする原子炉の気水分離設備。
【請求項4】
請求項1において、前記気水分離器の下から第1段目の排出流路に流量制限体を設け、原子炉中央部に配置される前記気水分離器に設けた流量制限体による排出流路の流路抵抗を、原子炉外周部に配置される前記気水分離器に設けた流量制限体による排出流路の流路抵抗よりも大きくなるように、前記流量制限体の形状を前記気水分離器の配置場所により変更したことを特徴とする原子炉の気水分離設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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