説明

原子炉構成要素の振動を減衰する装置及び方法

【課題】原子炉構成要素の振動を機械的に減衰する装置及び方法を提供する。
【解決手段】振動減衰装置100は、ピストン130を捕捉する筐体101を含む。筐体101からの漏れ又は筐体101に流入する原子炉冷却材が原子炉又はこの減衰装置を損傷しないように、筐体101は原子炉冷却材に適合する振動減衰流体で充満され且つ/又は充満可能であってもよい。装置は、ピストン130と筐体101との間の運動に対抗する弾性力を加える1つ以上のばねを更に含んでもよい。ピストン130の軸及び筐体101の一端部は、減衰される相対運動又は振動を伴う2つの原子炉構成要素に結合されてもよい。また方法は、原子炉の構成要素の間の相対運動及び振動を減少及び/又は防止するために振動減衰装置100を使用してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、原子炉構成要素の振動を機械的に減衰する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単一の構成要素の振動を軽減又は減衰するために及び/又は複数の構成要素の間の振動及び相対運動を軽減又は減衰するために、機械式振動減衰装置が使用されてもよい。従来の機械式振動減衰装置は、2つの構成要素が振動する間に構成要素の間に復元力を与え、それにより振動を軽減し且つ減衰するばねのような弾性構成要素を採用してもよい。更に、従来の機械式振動減衰装置は、2つの構成要素が振動する間に構成要素間の任意の運動に対抗する力を加え、それにより振動を減衰する高粘度流体などの摩擦要素又は非弾性要素を採用してもよい。
【0003】
原子炉及び関連する動作中の構成要素は、モータ、弁、タービンなどのいくつかの運動する部品並びに高圧、高粘度の冷却材の流れ及び原子炉内部で起こりうる沸騰などによって、構成要素間で振動及び相対振動を起こす場合がある。燃料棒で起こる核分裂、腐食及び材料損傷により、通常、原子炉の動作条件は高レベルの放射能を含む。時間の経過に伴い、放射能及び腐食は炉心構成要素の材料強度及び弾性を劣化させる。従って、放射線が存在する環境で起こる振動及び長期にわたる運転サイクルは、原子炉構成要素に障害を引き起こす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0271182号明細書
【特許文献2】米国特許第5,978,433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、原子炉構成要素間の振動を減衰し且つ/又は軽減する装置及び方法に関する。本発明に係る装置は、原子炉の2つの構成要素の間に結合され、それら2つの構成要素の間の振動及び/又は相対運動を減衰してもよい。本発明は、2つの構成要素の間の振動及び/又は相対運動を減衰するための減衰流体として原子炉冷却材又は原子炉冷却材に適合する流体を使用してもよい。
【0006】
本発明に係る振動減衰装置は、ピストンを捕捉し、保持し、包囲し且つ/又はその他の態様により収容する筐体を含んでもよい。筐体からの漏れ又は筐体に流入する冷却材が原子炉又は本発明に係る装置を損傷しないように、筐体は原子炉冷却材に適合する振動減衰流体によって充満され且つ/又は充満可能であってもよい。振動の減衰は、ピストンと筐体との相対運動により実現され、相対運動は、筐体及び/又はピストンに配置可能である流体流路を通して振動減衰流体を押し出す。本発明は、ピストンと筐体との間の運動に対抗する弾性力を加える1つ以上のばねを更に含んでもよい。ピストンの軸及び筐体の一端部は、減衰される相対運動又は振動を伴う2つの原子炉構成要素に結合されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は本発明に係る振動減衰装置の一実施形態を示した図である。
【図2】図2は本発明に係る振動減衰装置の別の実施形態を示した図である。
【図3】図3は本発明に係る振動減衰装置の更なる実施形態を示した図である。
【図4】図4は従来の沸騰水型軽水炉(BWR)のジェットポンプ構体を示した図である。
【図5】図5は図4のジェットポンプ構体を示した横断面図である。
【図6】図6はジェットポンプ構体を有する第1の構成例において使用される振動減衰装置の一実施形態を示した図である。
【図7】図7はジェットポンプ構体を有する第2の構成例において使用される振動減衰装置の一実施形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
添付の図面を詳細に説明することにより、本発明は更に明らかになるであろう。図面は単に例示を目的として提示され、従って、本発明を限定しない。図中、同じ要素は同じ図中符号により示される。
【0009】
詳細な例示的実施形態を本明細書において開示する。しかし、本明細書において開示する特定の構造及び機能の詳細は、実施形態を説明するための代表例にすぎない。実施形態は、多くの代替形態で実施されてもよく、本明細書で示される実施形態にのみ限定されるものとして解釈されるべきではない。
【0010】
第1、第2などの用語が種々の要素を説明するために本明細書において使用されるが、それら要素はそれら用語により限定されるべきではないことが理解されるだろう。それらの用語は、ある要素を別の要素と区別するために使用されるにすぎない。例えば、実施形態の範囲から逸脱せずに、第1の要素を第2の要素と呼んでもよく、同様に、第2の要素を第1の要素と呼んでもよい。本明細書において使用されるように、用語「及び/又は」は、列挙される1つ以上の関連する項目の任意の組み合わせ及び全ての組み合わせを含む。
【0011】
要素が別の要素に「接続」、「結合」、「係合」、「装着」又は「固着」されるものとして示される場合、その要素はその別の要素に直接接続又は直接結合されるか、あるいは仲介する要素が存在してもよいことが理解されるだろう。それに対して、要素が別の要素に「直接接続」又は「直接結合」されるものとして示される場合、仲介する要素は存在しない。要素間の関係を説明するために使用される他の用語は、同様の方法で解釈されるべきである(例えば、「〜の間」と「〜の間に直接」、「隣接する」と「直接隣接する」など)。
【0012】
本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、実施形態を限定することを意図しない。本明細書において使用されるように、特に指示のない限り、単数形は複数形も含むことを意図する。用語「具備する」及び/又は「含む」は、本明細書において使用される場合、記載される特徴、数字、ステップ、動作、要素及び/又は構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、数字、ステップ、動作、要素、構成要素及び/又はそれらの集合の存在又は追加を除外しないことが更に理解されるだろう。
【0013】
尚、別のいくつかの実現例において、図示される機能/動作は、図面に示される順序と異なる順序で行われてもよい。例えば、連続して示される2つの図面は、実際には関係する機能性/動作に依存して、ほぼ同時に実行されてもよく又は逆の順序で実行されてもよい。
【0014】
原子炉内部に特有の環境は、その環境の影響を受ける構成要素に対する従来の振動減衰機構及び振動減衰方法の使用には適していないことを本発明者は見い出した。放射能、冷却材の化学的性質に課される過酷な要求、高温及び大きな流体流量などの条件が組み合わさって、従来のスナバ型又はばね型の振動減衰装置を破壊又は劣化する。更に、油などの高粘度流体を使用してもよい流体利用非弾性振動減衰装置において、万一、振動減衰流体が漏れ又は他の理由により冷却材にさらされた場合、化学的不適合及び損傷という受け入れがたい危険が起こる場合がある。
【0015】
振動に関連する損傷、構成要素間の摩耗及びその結果として必要になる構成要素の交換を考慮すると、原子炉内部のいくつかの構成要素は振動の減衰によって利するところがあると本発明の発明者は更に認識した。原子炉の内部には極度の高温、高圧及び放射線により誘起される脆化が同時に存在しているため、構成要素間の極端な可変振動及びそのような振動から起こる互いに接触する構成要素の摩耗によって、原子炉構成要素は特に損傷を受けやすい。
【0016】
図1は、運転中の原子炉の内部で2つの構成要素の間の振動を減衰するために使用可能である振動減衰装置100の一実施形態を示した図である。本実施形態の振動減衰装置100は、一般に装置100の他の要素を包囲し且つ/又は収容してもよい筐体101を含む。筐体101は一般に管状及び/又は円筒形であってもよいが、本実施形態の振動減衰装置100の適用用途の特定の大きさ条件及び形状条件に基づいて、四面体、卵形、楕円形などの他の形状が使用されてもよい。
【0017】
取り付け端部102及び/又は軸端部103を除いて、筐体101はほぼ中空であってもよい。振動を減衰する所望の原子炉構成要素に例えば第1の取り付け穴106を介して接合するのに十分な材料強度を得るために、取り付け端部102はほぼ中実であってもよい。第1の取り付け穴106は、所望の構成要素への直接及び/又は間接的な固着を助長するような任意の大きさ又は任意の形状であってもよい。例えば、ボルト又はねじを貫通させて本実施形態の装置100を所望の構成要素に装着するために、第1の取り付け穴106はほぼ円筒形であり且つねじ山が形成されてもよい。あるいは、ラッチ機構、ロック/キー機構又は他の接合機構により、取り付け端部102が所望の構成要素に堅固に結合されてもよい。
【0018】
図1において、取り付け端部102及び取り付け穴106は筐体101の一端部に示されるが、振動を減衰される構成要素の場所及び向きに応じて、取り付け端部102は筐体101の周囲の任意の所望の位置に配置されてもよい。例えば、取り付け端部102は、筐体101の一方の側から横方向に延出するタブの形態であってもよく且つ/又は筐体101から横方向に離間した位置で原子炉構成要素に装着するための取り付け穴106及び/又は他の接合機構を含んでもよい。取り付け端部102は、取り付け端部102に装着される構成要素と本実施形態の装置100とを一体に結合できるような厚さで且つ/又は他の支持体を含めて形成されてもよい。
【0019】
筐体101は、一般に流体チャンバ120及びピストン130を包囲し且つ/又は収容する。ピストン130は、筐体101の内部に捕捉された少なくとも1つの軸131及び少なくとも1つのヘッド132を含んでもよい。ピストンヘッド132は流体チャンバ120を2つの別個のチャンバ、すなわち第1の流体チャンバ121及び第2の流体チャンバ122に分割してもよい。そのように2つのチャンバに分割するために、ピストンヘッド132の周囲は、ピストンヘッドの周囲のほぼ全長に沿って筐体101に当接又は接触してもよい。流体チャンバ120をそのように分割するために、筐体101の構成に基づいて、ピストンヘッド132は任意の形状であってもよく且つ/又は任意の大きさであってもよい。
【0020】
筐体101は、ピストン130の軸131が貫通する穴又は他の通路を有する軸端部103を有する。軸端部103は、図1に示されるように軸131に当接してもよいが、本実施形態の装置100を取り巻く周囲環境と流体チャンバ120との間で流体を流通させるように軸131から離間してもよい。軸端部103は、軸端部103を通して軸131を低摩擦で運動させる球軸受、ブッシュ、潤滑剤又は他の機構を更に含んでもよい。更に、軸端部103はピストン130を捕捉する部材として作用するような大きさ及び/又は形状に形成されてもよい。すなわち、軸端部103はピストン130を筐体101の内部で運動させるが、筐体101からピストンを完全には脱落させない。例えば、ピストンヘッド132が筐体101の外へ出るのを防止するために、軸端部103の穴はピストンヘッド132の大きさより小さく形成されてもよい。
【0021】
ピストン130の軸131は、本実施形態の振動減衰装置100を選択された別の構成要素に結合させるための第2の取り付け穴105を含んでもよい。図1に示される第2の取り付け穴105は軸131の一端部にあるが、選択された別の構成要素に結合するために、第2の取り付け穴105及び/又は軸131は別の向きを有してもよい。例えば、所望の構成要素に結合するために、軸131はL字形に屈曲し且つ/又は異なる方向に延出してもよく、取り付け穴105は軸131に沿った任意の位置に配置されてもよく、又は使用されなくてもよい。振動を減衰する所望の原子炉構成要素に例えば第2の取り付け穴105を介して接合するのに十分な材料強度を得るために、軸131はほぼ中実であってもよい。第2の取り付け穴105は、他方の所望の構成要素への直接且つ/又は間接的な固着を助長するような任意の大きさ又は形状であってもよい。例えば、ボルト又はねじを貫通させて、本実施形態の装置100を第2の所望の構成要素に装着するために、第2の取り付け穴105は通常円筒形であり且つねじ山が形成されてもよい。あるいは、ラッチ機構、ロック/キー機構又は他の接合機構により、軸131が他方の所望の構成要素に堅固に結合されてもよい。
【0022】
筐体101は少なくとも1つの流体流路150を更に含む。流体流路150は、第1の流体チャンバ121及び第2の流体チャンバ122のうち少なくとも1つの流体チャンバに流体を流入させ且つ/又は第1の流体チャンバ121及び第2の流体チャンバ122のうち少なくとも1つの流体チャンバから本実施形態の振動減衰装置100を取り囲む周囲環境へ流体を流出させる筐体101の孔又は他の開口部であってもよい。筐体101の構造的一体性を保持し且つ筐体101に何らかの流体流れを流通させるように、流体流路150は任意の形状又は大きさであってもよい。図1において、流体流路150は筐体101を分離するように見えるが、そのように見えるのは、図1の装置100が特定の方向からの断面図で示されているためである。他の方向から見れば、筐体101は連続しており且つ剛性であるので、筐体101は、取り付け端部102及び軸端部103を含む単一の剛性の本体を形成する。
【0023】
本実施形態の振動減衰装置100は、筐体101の内部に第1のばね161及び/又は第2のばね162を更に含んでもよい。第1のばね161及び/又は第2のばね162は、第1の流体チャンバ121及び第2の流体チャンバ122にそれぞれ配置されてもよい。ピストンヘッド132と取り付け端部102との任意の相対運動に対して弾性抵抗を与えるように、第1のばね161は、第1の流体チャンバ121の内部でピストンヘッド132と取り付け端部102との間に結合されてもよい。同様に、第2のばね162は、ピストンヘッド132と軸端部103との任意の相対運動に対して弾性抵抗を与えるようにピストンヘッド132と軸端部103との間に結合されてもよい。ばね161及び162は、周知のコイルばね及び中実の弾性バー部材を含めて、ピストン130と筐体101との間に弾性復元力を与える多様な形態をとってもよい。ばね161及び162は単独で使用されてもよく、組み合わせて使用されてもよく、あるいは全く使用されなくてもよい。
【0024】
原子炉環境内部の第1の構成要素及び第2の構成要素に取り付け端部102及び軸130を堅固に結合することにより、本実施形態の振動減衰装置100は、第1の構成要素と第2の構成要素との相対運動を防止し且つそれらの構成要素間の振動を減衰してもよい。運転中の原子炉の構成要素は、先に述べた化学的性質条件を課される冷却材により取り囲まれている。ピストン132が筐体101の内部で運動した場合、冷却材は1つ以上の流体流路150を通って第1の流体チャンバ121及び/又は第2の流体チャンバ122に対して流入/流出し、それにより、筐体101内部におけるピストン130の運動を減衰する。このように、運転中の原子炉の環境においては許容されない油などの高粘度流体振動減衰媒体を使用することなく、装置100に装着された第1の構成要素及び第2の構成要素は、筐体101とピストン130との間で流体による非弾性振動減衰を受ける。
【0025】
本実施形態の装置は流体チャンバ120において流体として使用可能な冷却材により取り囲まれてもよいので、本実施形態では振動減衰流体の補充又はそれに関連する保守が不要である。更に、相変化の結果として又は放射性崩壊生成物として流体チャンバ120の内部に蓄積するガスは、いずれも、本実施形態の振動減衰装置100を損傷することなく流体流路150を通って筐体101から容易に流出してもよい。
【0026】
更に、流体流路150の大きさ及び位置は、冷却材が所望の流速で流体流路150を流通できるように規定されてもよい。流路150を更に細く形成するか又は筐体101のある特定の流体チャンバに流路150を形成しないことにより、筐体101内部におけるピストン130の運動、並びに本実施形態の装置100に装着された構成要素の相対運動及び振動は、液圧振動減衰及び構成要素の相対運動に対する抵抗を更に受けることになる。また、ばね161及び/又は162は、本実施形態の装置100に装着された構成要素の相対運動に対して更なる弾性減衰及び抵抗を加えてもよい。本明細書の開示を読み且つ構成要素の振動及び摩耗の種類及び頻度に関する知識を有する当業者は、本発明に従った振動減衰を実行しない場合に互いに対して運動し、振動し且つ摩耗する可能性がある原子炉構成要素に対して適切な振動減衰及び減衰の種類を提供するために流体150及びばね161/162を適正に選択でき且つ変形できるであろう。
【0027】
本発明に係る振動減衰装置は、運転中の原子炉の環境にさらされた場合に物理的特性をほぼ維持し且つ先に説明された構造の機能を実行する材料から製造される。例えば、先に説明された要素を製造するために、腐食する確率が最小限であり且つ核横断面が小さい剛性材料が選択されてもよい。例えば、先に説明された部品のうちいくつか又は全てを製造するために、ステンレス鋼、アルミニウム合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金及び/又はニッケル系合金が使用されてもよい。これにより、本発明に係る装置は、運転サイクルが終了するまで又はそれを超える期間にわたり、運転中の原子炉の過酷な環境における材料損傷に起因する原子炉の交換の必要なく、更には動作中の原子炉の劣化及び損傷を引き起こすことなく、構成要素間の振動を減衰でき且つ構成要素を支持できる。
【0028】
図2は、別の実施形態の振動減衰装置200を示した図である。本実施形態の振動減衰装置200は振動減衰装置100に類似する特徴を有してもよく、それらの特徴は振動減衰装置100の対応する特徴と同一の図中符号により示され、重複する説明は省略される。図2に示されるように、装置200は筐体201の内部に流体流路を含まず且つ/又はピストン130のヘッド232に流体流路250を含んでもよい。ヘッド232の流体流路250の形状及び位置は、ピストン130が筐体201の内部で運動するにつれて流体チャンバ121及び122の間を流体が通過できるように規定されてもよい。流路250の形状を適正に形成することにより、筐体201の内部におけるピストン130の運動及び装置200に装着された構成要素の運動は、液圧振動減衰及び構成要素の相対運動に対する抵抗を受ける。例えば、流体流路250の大きさを縮小すると、それを流れる流体に対する摩擦力が増加するので、筐体201の内部におけるピストン130の運動に対する液圧抵抗は大きくなり且つ本実施形態の振動減衰装置200に装着された構成要素の振動は減衰される。
【0029】
流体チャンバ121及び122の内部で使用される流体は、いずれも、原子炉冷却材に適合してもよく且つ/又は実際の冷却材材料であってもよいので、本実施形態の振動減衰装置200における漏れ又は障害により、使用される流体にさらされた原子炉構成要素が損傷又は破壊されることはない。更に、本実施形態の振動減衰装置200が振動減衰流体として使用可能な原子炉冷却材の中に浸漬されている場合、漏れが起こっても、流体チャンバ120の保守又は補充は必要ない。このように、本実施形態の振動減衰装置200は、運転中の原子炉環境において構成要素の障害又は損傷のおそれなく使用可能である。
【0030】
図3は、更なる実施形態の振動減衰装置300を示した図である。本実施形態の振動減衰装置300は、前述した実施形態の振動減衰装置100及び200の特徴に類似する特徴を有してもよく、重複する説明は省略される。図3に示されるように、本実施形態の振動減衰装置300は、振動を減衰される構成要素301の内部にあってもよい。構成要素301は、振動の減衰又は運動に対する抵抗を必要とする運転中の原子炉において見られる任意の構成要素であってもよく、例えばBWRのジェットポンプ構体止めねじ、BWRのジェットポンプ感知ライン支持体又は蒸気乾燥器支持構体などを含む。
【0031】
流体チャンバ320は、構成要素301に存在してもよく、あるいは適切な穴あけ処理又は機械加工処理により構成要素301からくり抜かれてもよい。選択された構成要素における流体チャンバ320の位置及び構成要素全体の大きさに応じて、流体チャンバ320は、例えば図3に示されるような円筒形の孔のように多様な形状及び大きさを有してもよい。流体チャンバ320は、流体チャンバ320の内部で運動するピストン330を収容してもよい。ピストン330は、ピストン330が流体チャンバ320の外へ完全に出てしまうのを防止するような形状に形成されたストッパ332を更に含んでもよい。
【0032】
流体チャンバ320の内部においてピストン330及び/又はストッパ332の運動に摩擦によって対抗することによりピストン330に対して振動の減衰を実行する流体で流体チャンバ320は充満されてもよい。先に説明した実施形態の場合と同様に、流体チャンバ320において使用される流体は原子炉冷却材に適合してもよく且つ/又は冷却材自体であってもよいので、漏れが起こった場合でも、原子炉構成要素に対する損傷は防止又は軽減される。更に、構成要素301が原子炉冷却材の中に浸漬されている場合、漏れが起こっても、構成要素301の周囲に存在する原子炉冷却材が漏れ部分を通して流体チャンバ320に流入することにより振動減衰流体を補給できるので、流体チャンバ320の保守及び補充の必要は少ない。
【0033】
ピストン330は、構成要素301との間で望ましくない振動又は相対運動を起こす第2の原子炉構成要素に装着され且つ/又は当接してもよい。第2の原子炉構成要素はピストン330に堅固に接触するか又はピストン330と共に運動するので、流体チャンバ320の中の流体は、構成要素301と第2の構成要素との間の運動及び振動を減衰できる。本実施形態の振動減衰装置300は、ごく近接する2つの構成要素の間で且つ/又は追加の筐体を使用せずに振動及び運動を減衰すると共に、不適合な振動減衰流体の漏れによる冷却材汚損の危険を低減する。
【0034】
本発明に係る振動減衰装置は、任意の原子炉構成要素の間の振動を減衰し且つ/又はそれらの間の相対運動を減少するために使用されてもよい。以下に説明される方法例は、BWRのジェットポンプにおいて振動を減衰するために本発明に係る装置を使用する可能性を示す。
【0035】
図4は、従来の沸騰水型軽水炉のジェットポンプ構体10を示した側面図である。水はジェットポンプ構体10を通って流れ、炉心(図示せず)に流入してもよい。ジェットポンプ構体10は昇水管構体12、中間構体14、2つの入口ミキサ構体16A及び16B並びに2つのディフューザ構体18A及び18Bを含んでもよい。特に、昇水管構体12は、昇水管構体12を原子炉容器(図示せず)に結合する昇水管ブレース20A及び20Bにより支持されてもよい。水の流れを2つの経路、すなわち入口ミキサ16Aを通過する経路及び入口ミキサ16Bを通過する経路に分割するために、中間構体14は昇水管構体12の上端部22に結合されてもよい。水はジェットポンプ入口ノズル24を通って昇水管構体12に流入してもよい。入口ミキサ16A及び16Bは、一端部でエルボ26A及び26Bにより中間構体14にそれぞれ結合され且つ他方の端部で滑り嵌めによってジェットポンプディフューザ構体18A及び18Bにそれぞれ結合されてもよい。配管を支持し且つ配管の振動を防止するために、リストレーナブラケット28A及び28Bが入口ミキサ構体16A及び16Bを昇水管構体12に結合してもよい。
【0036】
図5に示されるように、従来、リストレーナブラケット28A及び28Bと入口ミキサ16A及び16Bとの間に、ウェッジブラケット32A及び32Bによりウェッジ30A及び30Bがそれぞれ配置されてもよい。ウェッジボルト34A及び34Bはウェッジ30A及び30Bをウェッジブラケット32A及び32Bにそれぞれ結合してもよく、従来、ウェッジ30A及び30Bをボルト34A及び34Bに沿って滑らせるように構成されてもよい。ねじ接合部36A、36B、36C及び36Dはリストレーナブラケット28A及び28Bを貫通し、入口ミキサ16A及び16Bにそれぞれ接触することにより、密接で堅固な嵌合を構成する。ねじ接合部36A及び36Bは、リストレーナブラケット28Aにおいてウェッジ30Aからそれぞれ120°の位置に配置されてもよく、ねじ接合部36C及び36Dは、リストレーナブラケット28Bにおいてウェッジ30Bからそれぞれ120°の位置に配置されてもよい。従来、止めねじ36A、36B、36C及び/又は36Dがゆるむのを防止するために、止めねじ36A、36B、36C及び36Dはリストレーナブラケット28A及び28Bに仮付け溶接される。しかし、原子炉容器内に存在する過酷な条件がウェッジの支え不足と組み合わさって、仮付け溶接を剥離させる可能性がある。その結果、止めねじ36A、36B、36C及び/又は36Dがゆるみ、リストレーナブラケット28A及び28Bにおける入口ミキサ16A及び16Bの密接で堅固な嵌合が破壊される。堅固な嵌合が失われると、入口ミキサ16A及び16Bは振動する場合があり、これは望ましくない状態である。
【0037】
図6に示されるように、本発明に係る振動減衰装置はウェッジ30及びウェッジボルト34の代わりに及び/又はそれらに加えて使用されてもよい。例えば、本発明に係る振動減衰装置100(図1に示される)又は他の任意の実施形態は、各取り付け穴106及び105(図示せず)においてウェッジブラケット32とウェッジ30との間に装着されてもよい。これにより、装置100は、リストレーナブラケット28及び入口ミキサ16における振動を減衰すると共に、入口ミキサ16、ウェッジ30及び/又はリストレーナブラケット28の間に堅固な嵌合を確保し、それらの相対運動を減少してもよい。入口ミキサ16A及び振動減衰装置100は原子炉冷却材に取り囲まれ且つその中に浸漬されてもよいので、振動減衰装置100は、不適合な流体が原子炉内部に漏れ出す危険なく冷却材を振動減衰流体として使用できる。
【0038】
あるいは、図7に示されるように、ウェッジが完全に取り除かれ、その代わりに本発明に係る振動減衰装置が使用されてもよい。リストレーナブラケット28及び入口ミキサの振動を減衰する一方で、堅固な嵌合を確保し且つ入口ミキサ16とリストレーナブラケット28との相対運動を減少するために、リストレーナブラケット28とウェッジブラケット32との間に本発明に係る振動減衰装置100が固着されてもよい。
【0039】
更に、リストレーナブラケット28A及び関連する構成要素の代わりに本発明に係る振動減衰装置が使用されてもよく、2つの入口ミキサ16A及び16Bを互いに対して固着し且つ入口ミキサ16A及び16Bの間の振動を減衰するように、振動減衰装置は2つの入口ミキサ16A及び16Bの間に装着され且つ/又は昇水管(12)に結合されてもよい。
【0040】
あるいは、本発明に係る振動減衰装置300(図3に示される)は、止めねじ36A〜36Dにおいて実現されてもよい。例えば、構成要素301(図3)は止めねじ本体36Aであってもよく、ピストン330は止めねじ36Aの端部で入口ミキサ16Aに当接してもよい。これにより、振動減衰装置300は堅固な嵌合を確保してもよく、止めねじ36A及び入口ミキサ16Aの振動を減衰すると共に、止めねじ36Aと入口ミキサ16Aとの相対運動を減少してもよい。止めねじ36A及び入口ミキサ16Aは原子炉冷却材により取り囲まれ且つその中に浸漬されてもよいので、本発明に係る振動減衰装置300は、不適合な流体が原子炉の中へ漏れ出す危険なく冷却材を振動減衰流体として使用できる。
【0041】
以上、本発明を説明したが、定期的実験を通して、更なる発明活動なしに実施形態を変形できることは当業者には理解されるであろう。例えば、本発明において使用されるピストンは、移動ピストンとして機能可能である限り、中空内部筐体などの種々の形状及び大きさをとってもよい。変形は、本発明の趣旨の範囲からの逸脱とみなされるべきではなく、当業者には明らかであろうと考えられるそのような全ての変形は、添付の請求の範囲の範囲内に含まれることを意図する。
【符号の説明】
【0042】
30A、30B ウェッジ
32A、32B ウェッジブラケット
100 振動減衰装置
101 筐体
120 流体チャンバ
121 第1の流体チャンバ
122 第2の流体チャンバ
130 ピストン
132 ピストンヘッド
150 流体流路
161 第1のばね
162 第2のばね
200 振動減衰装置
201 筐体
232 ピストンヘッド
250 流体流路
300 振動減衰装置
301 構成要素
320 流体チャンバ
330 ピストン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転中の原子炉で使用する振動減衰装置(100)において、
前記運転中の原子炉の第1の構成要素に装着されるように構成されたピストン(130)と;
前記ピストン(130)を捕捉し且つ前記運転中の原子炉の第2の構成要素(30)に装着されるように構成された筐体(101)とを具備し、
前記筐体(101)は、前記ピストン(130)と前記筐体(101)との間の運動を減衰するように前記運転中の原子炉の内部の冷却流体を前記筐体(101)に流入させるか又は前記筐体(101)から流出させるように構成された少なくとも1つの流体筐体(150)を含み、前記ピストン(130)及び前記筐体(101)は、前記運転中の原子炉において物理的特性をほぼ維持する材料から構成される振動減衰装置(100)。
【請求項2】
前記筐体(101)の内部に配置された少なくとも1つのばねを更に具備し、前記少なくとも1つのばねは、前記ピストン(130)と前記筐体(101)との間の運動を減衰するように前記ピストン(130)と前記筐体(101)との間に結合される請求項1記載の振動減衰装置(100)。
【請求項3】
前記筐体(101)は、前記ピストン(130)のヘッドにより第1の流体チャンバ(121)及び第2の流体チャンバ(122)に分割される請求項1記載の振動減衰装置(100)。
【請求項4】
前記筐体(101)の内部の前記第1の流体チャンバ(121)の中に配置された第1のばね(161)と;
前記筐体(101)の内部の前記第2の流体チャンバ(122)の中に配置された第2のばね(162)とを更に具備し、
前記第1のばね(161)及び前記第2のばね(162)は、前記ピストン(130)と前記筐体(101)との間の運動を減衰するように前記ピストン(130)と前記筐体(101)との間に結合される請求項3記載の振動減衰装置(100)。
【請求項5】
前記第1の構成要素(32)は第1のジェットポンプ入口ミキサであり、前記第2の構成要素(30)はリストレーナブラケット、止めねじ、第2のジェットポンプ入口ミキサ及びジェットポンプ昇水管のうち少なくとも1つである請求項1記載の振動減衰装置(100)。
【請求項6】
運転中の原子炉で使用するための振動減衰装置(200)において、
少なくとも1つの流体筐体(250)を含み、前記運転中の原子炉の第1の構成要素(32)に装着されるように構成されたピストン(130)と;
前記ピストン(130)を捕捉し且つ前記運転中の原子炉の第2の構成要素(30)に装着されるように構成され、前記ピストン(130)と共に、前記運転中の原子炉において物理的特性をほぼ維持する材料から製造される筐体(210)と;
前記筐体(201)の内部に存在し、前記ピストン(130)と前記筐体(210)との間の運動を減衰し且つ前記少なくとも1つの流体筐体(250)を通過して流れ、前記運転中の原子炉の冷却流体に対して化学的適合性を有する振動減衰流体とを具備する振動減衰装置(200)。
【請求項7】
前記筐体(201)は、前記ピストン(130)のヘッド(232)により第1の流体チャンバ(121)及び第2の流体チャンバ(122)に分割される請求項6記載の振動減衰装置(200)。
【請求項8】
運転中の原子炉で使用するための振動減衰装置(300)において、
前記運転中の原子炉の第1の構成要素(30/32)に当接するように構成され、前記運転中の原子炉の第2の構成要素(301)の第1のチャンバ(320)の内部に捕捉され、且つ前記運転中の原子炉において物理的特性をほぼ維持する材料から製造されたピストン(330)と;
前記流体チャンバ(320)の内部に存在し、前記ピストン(330)と前記第2の構成要素(301)との間の運動を減衰し、且つ前記運転中の原子炉の内部の冷却流体に対して化学的適合性を有する振動減衰流体とを具備する振動減衰装置(300)。
【請求項9】
原子炉の第1の構成要素と第2の構成要素との間の振動及び相対運動を減衰する方法において、
前記原子炉の第1の構成要素(32)にピストン(130)を装着することと;
前記原子炉の第2の構成要素(30)に筐体(101)を装着することとから成り、前記筐体(101)は前記ピストン(130)を捕捉し、前記筐体(101)は、前記ピストン(130)と前記筐体(101)との間の運動を減衰するように前記原子炉の冷却流体を前記筐体(101)に流入させるか又は前記筐体(101)から流出させるように構成される少なくとも1つの流体筐体(150)、前記ピストン(130)及び前記筐体(101)は、前記運転中の原子炉において物理的特性をほぼ維持する材料から製造される方法。
【請求項10】
前記第1の構成要素(32)は第1のジェットポンプ入口ミキサであり、前記第2の構成要素(30)はリストレーナブラケット、止めねじ、第2のジェットポンプ入口ミキサ及びジェットポンプ昇水管のうち少なくとも1つである請求項9記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−282025(P2009−282025A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−111739(P2009−111739)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(508177046)ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナージー・アメリカズ・エルエルシー (101)
【氏名又は名称原語表記】GE−HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC
【Fターム(参考)】