説明

原子移動ラジカル重合を使用して調製されるカルバメート官能性ポリマーを含む熱硬化性組成物

【課題】原子移動ラジカル重合を使用し、それによって十分に規定された分子量およびポリマー鎖構造、および狭い分子量分布を有するように調製されるカルバメート官能性ポリマーを含む熱硬化性組成物を開発すること
【解決手段】以下を含む熱硬化性組成物が提供される:(a)カルバメートと反応性である少なくとも2つの官能基を有する架橋剤;および(b)少なくとも1つのラジカル移動可能基を有する開始剤の存在下で、原子移動ラジカル重合によって調製される非ゲル化カルバメート官能性ポリマー。このポリマーは以下のポリマー鎖構造の内の少なくとも1つを含む:−{(M)−(G)−または−{(G)−(M)−。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、1つ以上の架橋剤および1つ以上のカルバメート官能性ポリマーの熱硬化性(硬化可能)組成物に関する。カルバメート官能性ポリマーは、原子移動ラジカル重合によって調製され、そして、よく規定されたポリマー鎖構造、分子量および分子量分布を有する。本発明はまた、基材をコーティングする方法、この方法によってコーティングされる基材、カラープラスクリア(color−plus−clear)複合コーティング構成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
硬化可能組成物による環境破壊を減少すること(硬化可能コーティング組成物の適用の間の、揮発性有機物の空気中への放出と関係する)は、近年、進行中の調査および開発の分野である。従って、部分的に、高固体液体コーティング組成物の比較的低い揮発性有機物含量(VOC)のために、高固体液体コーティング組成物への関心が強くなり、このことにより、有意に、適用プロセス間の空気放出を減少する。
【0003】
低いVOCコーティング組成物は、使用される比較的大量のコーティングのために、自動車の相手先商標製造製品(original equipment manufacture)(OEM)市場で、特に所望される。しかし、低いVOCレベルの要求に加えて、自動車製造は、使用されるコーティングの非常に厳しい性能要求を有する。例えば、自動車OEMクリアトップコートは、典型的に、良好な外装耐久性、耐酸腐食性および耐水滴性、ならびに卓越した光沢および外観の組み合わせを有することが要求される。
【0004】
カルバメート官能性ポリマーを含む熱硬化性コーティングは、近年、自動車OEMクリアトップコートとしての使用のために、開発されてきた。このようなコーティング組成物は、典型的にカルバメートと反応性の少なくとも2つの官能基を有する架橋剤、およびカルバメート官能性ポリマーを含む。このようなコーティング組成物において使用されるカルバメート官能性ポリマーは、典型的に標準的な方法(すなわち、非リビング、ラジカル重合法)によって、典型的に調製され、これらの方法は、分子量、分子量分布およびポリマー鎖構造の制御をほとんど提供しない。
【0005】
物理特性、例えば、所定のポリマーの粘度は、直接的にその分子量に関係し得る。より高い分子量は、例えば、より高いTg値および粘度に、典型的に関係する。広い分子量分布(例えば、2.5を超える多分散性指標(PDI)を有する)を有するポリマーの物理特性は、それを含む種々のポリマー種の間の不確定の相互作用および個々の物理特性の平均として特徴付けられ得る。このように、広い分子量分布を有するポリマーの物理特性は可変であり得、そして制御することが困難であり得る。
【0006】
ポリマーのポリマー鎖構造、または構成は、ポリマーの骨格または鎖に沿ったモノマー残基の配列として記述され得る。標準的なラジカル重合技術によって調製されるカルバメート官能性コポリマーは、種々の個々のカルバメート当量およびポリマー鎖構造を有するポリマー分子の混合物を含む。これらのコポリマーにおいて、カルバメート官能基は、ポリマー鎖に沿ってランダムに配置される。さらに、官能基の数は、ポリマー間で均等に分けられず、その結果、いくらかのポリマー分子は、カルバメート官能基を実際に有し得ない。熱硬化性組成物において、3次元架橋ネットワークの形成は、官能基当量およびそれを含む個々のポリマー分子の構成に依存する。反応性官能基をほとんど、または全く有しない(または、ポリマー鎖に沿ったそれらの位置のために、架橋反応に参加しそうにない官能基を有する)ポリマー分子は、3次元架橋ネットワークの形成に、ほとんど、または全く寄与せず、その結果、架橋密度を減少し、最終的に形成された重合体(例えば、硬化性または熱硬化性コーティング)の最適な物理特性より低くなる。
【0007】
より低いVOCレベルおよび好ましい性能特性の組合わせを有する新しく、そして改善された熱硬化性組成物の引き続く開発が、所望される。特に、十分に規定された分子量およびポリマー鎖構造、および狭い分子量分布(例えば、2.5より低いPDI値)を有するカルバメート官能性ポリマーを含む熱硬化性組成物を開発することが望ましい。
【0008】
特許文献1および特許文献2および特許文献3は、原子移動ラジカル重合(ATRP)と呼ばれるラジカル重合を記載する。ATRPプロセスは、リビングラジカル重合として記載され、このリビングラジカル重合は、予測可能な分子量および分子量分布を有するポリマーの形成を生じる。これらの公報のATRPプロセスはまた、制御された構造(すなわち、制御可能な位相幾何、組成など)を有する高度に均一な生成物を提供するように記載される。これらの特許公報はまた、ATRPによって調製されたポリマーを記載し、このポリマーは、例えば、ペイントおよびコーティング用の広い種々の適用において有用である。
【特許文献1】国際公開第97/18247号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,763,548号明細書
【特許文献3】米国特許第5,789,487号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
原子移動ラジカル重合を使用し、それによって十分に規定された分子量およびポリマー鎖構造、および狭い分子量分布を有するように調製されるカルバメート官能性ポリマーを含む熱硬化性組成物を開発することが望ましい。このような組成物は、より低い粘性に起因するより低いVOCレベル、および好ましい性能特性の組み合わせ(特にコーティング適用における)を有する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明によると、以下の項目1〜67が提供され、上記目的が達成される。
【0011】
(項目1) 熱硬化性組成物であって、該組成物が、以下:
(a)カルバメートと反応性である少なくとも2つの官能基を有する架橋剤;および
(b)少なくとも1つのラジカル移動可能基を有する開始剤の存在下で、原子移動ラジカル重合によって調製される非ゲル化カルバメート官能性ポリマーであって、ここで該ポリマーは、2.0未満の多分散性指数を有し、そして以下のポリマー鎖構造のうちの少なくとも1つを含み:
−[(M)−(G)
または
−[(G)−(M)
ここで、Mは、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーの、カルバメート官能基を含まない残基であり;Gは、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーの、以下の構造のペンダントカルバメート官能基を有する残基であり:
【0012】
【化1】

ここで、Rは、水素、または1〜10個の炭素原子を有する1価のアルキル基、もしくは6〜10個の炭素原子を有するアリール基であり;pおよびqは、各ポリマー鎖構造中の残基の1ブロックに存在する残基の平均数を表し;そしてp、qおよびxはそれぞれ独立して、各構造について、該カルバメート官能性ポリマーが、少なくとも250の数平均分子量を有するように選択される、カルバメート官能性ポリマー、を含む、組成物。
【0013】
(項目2) 前記カルバメート官能性ポリマーが、500〜16,000の数平均分子量を有する、項目1に記載の熱硬化性組成物。
【0014】
(項目3) 前記開始剤が、それぞれ少なくとも1つのラジカル移動可能基を有する、直鎖または分枝鎖脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物、多環式芳香族化合物、複素環式化合物、スルホニル化合物、スルフェニル化合物、カルボン酸のエステル、ポリマー化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目1に記載の熱硬化性化合物。
【0015】
(項目4) 前記開始剤が、ハロメタン、メチレンジハライド、ハロホルム、四ハロゲン化炭素、メタンスルホニルハライド、p−トルエンスルホニルハライド、メタンスルフェニルハライド、p−トルエンスルフェニルハライド、1−フェニルエチルハライド、2−ハロプロピオニトリル、2−ハロ−C−C−カルボン酸のC−C−アルキルエステル、p−ハロメチルスチレン、モノ−ヘキサキス(α−ハロ−C−C−アルキル)ベンゼン、ジエチル−2−ハロ−2−メチルマロネート、臭化ベンジル、エチル2−ブロモイソブチレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される、項目3に記載の熱硬化性組成物。
【0016】
(項目5) 前記ポリマーが、101〜10,000g/当量のカルバメート当量を有する、項目1に記載の熱硬化性組成物。
【0017】
(項目6) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、ここで、各xセグメントおよび各構造について、pおよびqがそれぞれ独立して、0〜100の範囲内であり、そして各xセグメントについて、pとqとの和が0より大きく、かつ少なくとも1つのxセグメントについて、qが0より大きい、組成物。
【0018】
(項目7) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、ここで、各構造のxセグメントが独立して、少なくとも1〜100の範囲である、組成物。
【0019】
(項目8) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、ここで、Mが、ビニルモノマー、(メト)アリルモノマー、およびオレフィンのうちの少なくとも1つから誘導される、組成物。
【0020】
(項目9) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、ここで、Mが、アルキル基中に1〜20個の炭素原子を有するアルキル(メト)アクリレート、不飽和芳香族モノマーおよびオレフィンのうちの少なくとも1つから誘導される、組成物。
【0021】
(項目10) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、ここでGが、少なくとも1つの以下の構造のエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーから誘導され:
【0022】
【化2】

ここで、Rは、水素またはメチル基であり、そしてRは、1〜30個の炭素原子を含む2価の連結基である、組成物。
【0023】
(項目11) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、ここで、前記カルバメート官能性ポリマーが、以下のポリマー鎖構造のうちの少なくとも1つを含み:
φ−[{(M)−(G)−(M)−T]
または
φ−[{(G)−(M)−(G)−T]
ここで、rおよびsはそれぞれ独立して、0〜100の範囲であり;φは、ラジカル移動可能基を含まない開始剤の残基であるか、または該残基から誘導され;xは、少なくとも1〜100の範囲であり;各xセグメントについて、pおよびqはそれぞれ独立して、0〜100の値内であり;各xセグメントについて、pとqとの和は、0より大きく;少なくとも1つのxセグメントについて、qは0より大きく;zは、少なくとも1であり;Tは、該開始剤の該ラジカル移動可能基であるか、または該ラジカル移動可能基から誘導され;そして該カルバメート官能性ポリマーは、2.0未満の多分散性指数を有する、組成物。
【0024】
(項目12) 前記カルバメート官能性ポリマーが、500〜16,000の数平均分子量、および1.8未満の多分散性指数を有する、項目11に記載の熱硬化性組成物。
【0025】
(項目13) Tがハライドである、項目11に記載の熱硬化性組成物。
【0026】
(項目14) Tが脱ハロゲン化後反応により誘導される、項目11に記載の熱硬化性組成物。
【0027】
(項目15) 前記脱ハロゲン化後反応が、前記カルバメート官能性ポリマーを、制限ラジカル重合化可能エチレン性不飽和化合物と接触させる工程を包含する、項目14に記載の熱硬化性組成物。
【0028】
(項目16) 前記制限ラジカル重合化可能エチレン性不飽和化合物が,1,1−ジメチルエチレン、1,1−ジフェニルエチレン、イソプロペニルアセテート、α−メチルスチレン、1,1−ジアルコキシオレフィンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目15に記載の熱硬化性組成物。
【0029】
(項目17) 前記架橋剤が、メチロールおよび/またはメチロールエーテル基を含むアミノプラスト、ポリシロキサン、ポリ無水物、ならびに複数の活性メチロール官能基を有する化合物からなる群から選択される、項目1に記載の熱硬化性組成物。
【0030】
(項目18) 前記カルバメート官能性ポリマーが、直鎖ポリマー、分枝鎖ポリマー、超分枝鎖ポリマー、スターポリマー、グラフトポリマーおよびそれらの混合物からなる群から選択される、項目1に記載の熱硬化性組成物。
【0031】
(項目19) 前記カルバメート官能性ポリマーが、1.50未満の多分散性指数を有する、項目1に記載の熱硬化性組成物。
【0032】
(項目20) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、ここで、(b)のカルバメート基対(a)の反応性官能基の当量比が、1:0.5から1:1.5の範囲内である、組成物。
【0033】
(項目21) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、ここで、前記熱硬化性組成物中の樹脂固体の全重量を基準にして、(a)が10〜90重量%の量で存在し、(b)が10〜90重量%の量で存在する、組成物。
【0034】
(項目22) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、ここでカルバメート官能基が、トランスカルバモイレーションによって、あるいはまずイソシアネート−または無水−官能性ポリマーを形成し、そして該イソシアネート−または無水−官能性ポリマーを、ヒドロキシアルキルカルバメートと反応させることによって、前記カルバメート官能性ポリマーに組み込まれ、該カルバメート官能性ポリマーを生成する、組成物。
【0035】
(項目23) 基材をコーティングする方法であって、該方法が、以下:
(a)熱硬化性組成物を該基材に塗布する工程;
(b)該熱硬化性組成物を実質的に連続なフィルムの形態で、該基材に合着する工程;ならびに
(c)該熱硬化性組成物を硬化する工程、
を包含し、ここで該熱硬化性組成物が以下:
(i)カルバメートと反応性である少なくとも2つの官能基を有する架橋剤;および
(ii)少なくとも1つのラジカル移動可能基を有する開始剤の存在下で、原子移動ラジカル重合によって調製される非ゲル化カルバメート官能性ポリマーであって、ここで該ポリマーは、2.0未満の多分散性指数を有し、そして以下のポリマー鎖構造のうちの少なくとも1つを含み:
−[(M)−(G)
または
−[(G)−(M)
ここで、Mは、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーの、カルバメート官能基を含まない残基であり;Gは、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーの、以下の構造のペンダントカルバメート官能基を有する残基であり:
【0036】
【化3】

ここで、Rは、水素、または1〜10個の炭素原子を有する1価のアルキル基、または6〜10個の炭素原子を有するアリール基であり;pおよびqは、各ポリマー鎖構造中の残基のブロックに存在する残基の平均数を表し;そしてp、qおよびxはそれぞれ独立して、各構造について、該カルバメート官能性ポリマーが、少なくとも250の数平均分子量を有するように選択される、カルバメート官能性ポリマー、を含む、
方法。
【0037】
(項目24) 前記カルバメート官能性ポリマーが500〜16,000の数平均分子量を有する、項目23に記載の方法。
【0038】
(項目25) 前記開始剤が、それぞれ少なくとも1つのラジカル移動可能基を有する、直鎖または分枝鎖脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物、多環式芳香族化合物、複素環式化合物、スルホニル化合物、スルフェニル化合物、カルボン酸のエステル、ポリマー化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目23に記載の方法。
【0039】
(項目26) 前記開始剤が、ハロメタン、メチレンジハライド、ハロホルム、四ハロゲン化炭素、メタンスルホニルハライド、p−トルエンスルホニルハライド、メタンスルフェニルハライド、p−トルエンスルフェニルハライド、1−フェニルエチルハライド、2−ハロプロピオニトリル、2−ハロ−C−C−カルボン酸のC−C−アルキルエステル、p−ハロメチルスチレン、モノ−ヘキサキス(α−ハロ−C−C−アルキル)ベンゼン、ジエチル−2−ハロ−2−メチルマロネート、臭化ベンジル、エチル2−ブロモイソブチレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される、項目25に記載の方法。
【0040】
(項目27) 前記ポリマーが、101〜10,000g/当量のカルバメート当量を有する、項目23に記載の方法。
【0041】
(項目28) 項目23に記載の方法であって、ここで、各xセグメントおよび各構造について、pおよびqがそれぞれ独立して、0〜100の範囲内であり、そして各xセグメントについて、pとqとの和が0より大きく、かつ少なくとも1つのxセグメントについて、qが0より大きい、方法。
【0042】
(項目29) 項目23に記載の方法であって、ここで、各構造についてxが独立して、少なくとも1から100の範囲である、方法。
【0043】
(項目30) 項目23に記載の方法であって、ここで、Mが、ビニルモノマー、(メト)アリルモノマー、およびオレフィンのうちの少なくとも1つから誘導される、方法。
【0044】
(項目31) 項目23に記載の方法であって、ここで、Mが、アルキル基中に1〜20個の炭素原子を有するアルキル(メト)アクリレート、不飽和芳香族モノマーおよびオレフィンのうちの少なくとも1つから誘導される、方法。
【0045】
(項目32) 項目23に記載の方法であって、ここでGが、少なくとも1つの以下の構造のエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーから誘導され:
【0046】
【化4】

ここで、Rは、水素またはメチル基であり、そしてRは、1〜30個の炭素原子を含む2価の連結基である、方法。
【0047】
(項目33) 項目23に記載の方法であって、ここで、前記カルバメート官能性ポリマーが、以下のポリマー鎖構造のうちの少なくとも1つを含み:
φ−[{(M)−(G)−(M)−T]
または
φ−[{(G)−(M)−(G)−T]
ここで、rおよびsはそれぞれ独立して、0〜100の範囲であり;φは、ラジカル移動可能基を含まない開始剤の残基であるか、または該残基から誘導され;xは、少なくとも1〜100の範囲であり;各xセグメントについて、pおよびqはそれぞれ独立して、0〜100の値内であり;各xセグメントについて、pとqとの和は、0より大きく;少なくとも1つのxセグメントについて、qは0より大きく;zは、少なくとも1であり;Tは、該開始剤の該ラジカル移動可能基であるか、該ラジカル移動可能基から誘導され;そして該カルバメート官能性ポリマーは、2.0未満の多分散性指数を有する、方法。
【0048】
(項目34) 前記カルバメート官能性ポリマーが、500〜16,000の数平均分子量、および1.8未満の多分散性指数を有する、項目33に記載の方法。
【0049】
(項目35) Tがハライドである、項目33に記載の方法。
【0050】
(項目36) Tが脱ハロゲン化後反応により誘導される、項目33に記載の方法。
【0051】
(項目37) 前記脱ハロゲン化後反応が、前記カルバメート官能性ポリマーを、制限ラジカル重合化可能エチレン性不飽和化合物と接触させる工程を包含する、項目36に記載の方法。
【0052】
(項目38) 前記制限ラジカル重合化可能エチレン性不飽和化合物が,1,1−ジメチルエチレン、1,1−ジフェニルエチレン、イソプロペニルアセテート、α−メチルスチレン、1,1−ジアルコキシオレフィンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目37に記載の方法。
【0053】
(項目39) 前記架橋剤が、メチロールおよび/またはメチロールエーテル基を含むアミノプラスト、ポリシロキサン、ポリ無水物、ならびに複数の活性メチロール官能基を有する化合物からなる群から選択される、項目23に記載の方法。
【0054】
(項目40) 前記カルバメート官能性ポリマーが、直鎖ポリマー、分枝鎖ポリマー、超分枝鎖ポリマー、スターポリマー、グラフトポリマーおよびそれらの混合物からなる群から選択される、項目23に記載の方法。
【0055】
(項目41) 前記カルバメート官能性ポリマーが、1.50未満の多分散性指数を有する、項目23に記載の方法。
【0056】
(項目42) 項目23に記載の方法であって、ここで、(ii)のカルバメート基対(i)の反応性官能基の当量比が、1:0.5から1:1.5の範囲内である、方法。
【0057】
(項目43) 項目23に記載の方法であって、ここで、前記熱硬化性組成物中の樹脂固体の全重量を基準にして、(i)が10〜90重量%の量で存在し、(ii)が10〜90重量%の量で存在する、方法。
【0058】
(項目44) 項目23に記載の方法であって、ここでカルバメート官能基が、トランスカルバモイレーションによって、あるいはまずイソシアネート−または無水−官能性ポリマーを形成し、そして該イソシアネート−または無水−官能性ポリマーを、ヒドロキシアルキルカルバメートと反応させることによって、前記カルバメート官能性ポリマーに組み込まれ、該カルバメート官能性ポリマーを生成する、方法。
【0059】
(項目45) 項目23に記載の方法によってコーティングされた基材。
【0060】
(項目46) 多成分複合コーティング構成物であって、該構成物は着色フィルム形成組成物から堆積したベースコート、および該ベースコート上に塗布された透明性トップコートを含み、ここで、該透明性トップコートはクリアフィルム形成組成物から堆積され、そして以下を含む熱硬化性組成物であり:
(a)カルバメートと反応性である少なくとも2つの官能基を有する架橋剤;および
(b)少なくとも1つのラジカル移動可能基を有する開始剤の存在下で、原子移動ラジカル重合によって調製される非ゲル化カルバメート官能性ポリマーであって、ここで該ポリマーは、2.0未満の多分散性指数を有し、そして以下のポリマー鎖構造のうち少なくとも1つを含み:
−[(M)−(G)
または
−[(G)−(M)
ここで、Mは、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーの、カルバメート官能基を含まない残基であり;Gは、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーの、以下の構造のペンダントカルバメート官能基を有する残基であり:
【0061】
【化5】

ここで、Rは、水素、または1〜10個の炭素原子を有する1価のアルキル基、または6〜10個の炭素原子を有するアリール基であり;pおよびqは、各ポリマー鎖構造中の残基のブロックに存在する残基の平均数を表し;そしてp、qおよびxはそれぞれ独立して、各構造について、該カルバメート官能性ポリマーが、少なくとも250の数平均分子量を有するように選択される、カルバメート官能性ポリマー、を含む、構成物。
【0062】
(項目47) 前記カルバメート官能性ポリマーが、500〜16,000の数平均分子量を有する、項目46に記載の多成分複合コーティング構成物。
【0063】
(項目48) 前記開始剤が、それぞれ少なくとも1つのラジカル移動可能基を有する、直鎖または分枝鎖脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物、多環式芳香族化合物、複素環式化合物、スルホニル化合物、スルフェニル化合物、カルボン酸のエステル、ポリマー化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目46に記載の多成分複合コーティング構成物。
【0064】
(項目49) 前記開始剤が、ハロメタン、メチレンジハライド、ハロホルム、四ハロゲン化炭素、メタンスルホニルハライド、p−トルエンスルホニルハライド、メタンスルフェニルハライド、p−トルエンスルフェニルハライド、1−フェニルエチルハライド、2−ハロプロピオニトリル、2−ハロ−C−C−カルボン酸のC−C−アルキルエステル、p−ハロメチルスチレン、モノ−ヘキサキス(α−ハロ−C−C−アルキル)ベンゼン、ジエチル−2−ハロ−2−メチルマロネート、臭化ベンジル、エチル2−ブロモイソブチレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される、項目48に記載の多成分複合コーティング構成物。
【0065】
(項目50) 前記ポリマーが、101〜10,000g/当量のカルバメート当量を有する、項目46に記載の多成分複合コーティング構成物。
【0066】
(項目51) 項目46に記載の多成分複合コーティング構成物であって、ここで、各xセグメントおよび各構造について、pおよびqがそれぞれ独立して、0〜100の範囲内であり、そして各xセグメントについて、pとqとの和が0より大きく、かつ少なくとも1つのxセグメントについて、qが0より大きい、構成物。
【0067】
(項目52) 項目46記載の多成分複合コーティング構成物であって、ここで、各構造についてxが独立して、少なくとも1から100の範囲である、構成物。
【0068】
(項目53) 項目46に記載の多成分複合コーティング構成物であって、ここで、Mが、ビニルモノマー、(メト)アリルモノマー、およびオレフィンのうちの少なくとも1つから誘導される、構成物。
【0069】
(項目54) 項目46に記載の多成分複合コーティング構成物であって、ここで、Mが、アルキル基中に1〜20個の炭素原子を有するアルキル(メト)アクリレート、不飽和芳香族モノマーおよびオレフィンのうちの少なくとも1つから誘導される、構成物。
【0070】
(項目55) 項目46に記載の多成分複合コーティング構成物であって、ここでGが、少なくとも1つの以下の構造のエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーから誘導され:
【0071】
【化6】

ここで、Rは、水素またはメチル基であり、そしてRは、1〜30個の炭素原子を含む2価の連結基である、構成物。
【0072】
(項目56) 項目46に記載の多成分複合コーティング構成物であって、ここで、前記カルバメート官能性ポリマーが、以下のポリマー鎖構造のうちの少なくとも1つを含み:
φ−[{(M)−(G)−(M)−T]
または
φ−[{(G)−(M)−(G)−T]
ここで、rおよびsはそれぞれ独立して、0〜100の範囲であり;φは、ラジカル移動可能基を含まない開始剤の残基であるか、または該残基から誘導され;xは、少なくとも1〜100の範囲であり;各xセグメントについて、pおよびqはそれぞれ独立して、0〜100の値内であり;各xセグメントについて、pとqとの和は、0より大きく;少なくとも1つのxセグメントについて、qは0より大きく;zは、少なくとも1であり;Tは、該開始剤の該ラジカル移動可能基であるか、該ラジカル移動可能基から誘導され;そして該カルバメート官能性ポリマーは、2.0未満の多分散性指数を有する、構成物。
【0073】
(項目57) 前記カルバメート官能性ポリマーが、500〜16,000の数平均分子量、および1.8未満の多分散性指数を有する、項目56に記載の多成分複合コーティング構成物。
【0074】
(項目58) Tがハライドである、項目56に記載の多成分複合コーティング構成物。
【0075】
(項目59) Tが脱ハロゲン化後反応により誘導される、項目56に記載の多成分複合コーティング構成物。
【0076】
(項目60) 前記脱ハロゲン化後反応が、前記カルバメート官能性ポリマーを、制限ラジカル重合化可能エチレン性不飽和化合物と接触させる工程を包含する、項目59に記載の多成分複合コーティング構成物。
【0077】
(項目61) 前記制限ラジカル重合化可能エチレン性不飽和化合物が,1,1−ジメチルエチレン、1,1−ジフェニルエチレン、イソプロペニルアセテート、α−メチルスチレン、1,1−ジアルコキシオレフィンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目60に記載の多成分複合コーティング構成物。
【0078】
(項目62) 前記架橋剤が、メチロールおよび/またはメチロールエーテル基を含むアミノプラスト、ポリシロキサン、ポリ無水物、ならびに複数の活性メチロール官能基を有する化合物からなる群から選択される、項目46に記載の多成分複合コーティング。
【0079】
(項目63) 前記カルバメート官能性ポリマーが、直鎖ポリマー、分枝鎖ポリマー、超分枝鎖ポリマー、スターポリマー、グラフトポリマーおよびそれらの混合物からなる群から選択される、項目46に記載の多成分複合コーティング構成物。
【0080】
(項目64) 前記カルバメート官能性ポリマーが、1.50未満の多分散性指数を有する、項目46に記載の多成分複合コーティング構成物。
【0081】
(項目65) 項目46に記載の多成分複合コーティング構成物であって、ここで、(b)のカルバメート基対(a)の反応性官能基の当量比が、1:0.5から1:1.5の範囲内である、構成物。
【0082】
(項目66) 項目46に記載の多成分複合コーティング構成物であって、ここで、前記クリアフィルム形成組成物中の樹脂固体の全重量を基準にして、(a)が10〜90重量%の量で該クリアフィルム形成組成物中に存在し、(b)が10〜90重量%の量で該クリアフィルム形成組成物中に存在する、構成物。
【0083】
(項目67) 項目46に記載の多成分複合コーティング構成物であって、ここでカルバメート官能基が、トランスカルバモイレーションによって、あるいはまずイソシアネート−または無水−官能性ポリマーを形成し、そして該イソシアネート−または無水−官能性ポリマーを、ヒドロキシアルキルカルバメートと反応させることによって、前記カルバメート官能性ポリマーに組み込まれ、該カルバメート官能性ポリマーを生成する、構成物。
【0084】
本発明に従って、以下を含む、熱硬化性組成物が提供される:
(a)カルバメートと反応性の少なくとも2つの官能基を有する架橋剤;および
(b)少なくとも1個のラジカル移動可能基を有する開始剤の存在下で、原子移動ラジカル重合によって調製される、非ゲル化カルバメート官能性ポリマーであって、ここで、このポリマーは、以下のポリマー鎖構造のうちの少なくとも1つを含み:
−{(M)−(G)
または
−{(G)−(M)
ここで、Mは、少なくとも1個のエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーのカルバメート官能基のない残基であり;Gは、少なくとも1個のエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーの、以下の構造のペンダントカルバメート官能基:
【0085】
【化7】

を有する残基であり、ここで、Rは、水素または1〜10個の炭素原子を有する一価のアルキル基または6〜10個の炭素原子を有するアリール基であり;pおよびqは、各ポリマー鎖構造において残基のブロックに存在する平均残基数を示し;そしてp、qおよびxは、カルバメート官能性ポリマーが少なくとも250の数平均分子量を有するように各構造について、各々独立して選択される、非ゲル化カルバメート官能性ポリマー。
【0086】
本発明によって、本発明の組成物を使用する基材をコーティングする方法、このような方法によってコーティングされる基材、およびカラープラスクリア複合コーティング組成物がまた提供される。
【0087】
操作例以外において、または他に指示する場合以外、本明細書および特許請求の範囲において使用される、成分の量を表現する全ての数、反応条件などは、用語「約」によって、全ての場合において改変されるものとして理解されるべきである。
【0088】
(発明の詳細な説明)
本明細書中に使用される、用語「ポリマー」は、ホモ重合体(すなわち、単一のモノマー種から作製されるポリマー)とコポリマー(すなわち、2以上のモノマー種から作製されるポリマー)の両方、ならびにオリゴマーの言及を意味する。
【0089】
本発明の組成物に使用されるカルバメート官能性ポリマーは、少なくとも1つのラジカル移動可能基を有する開始剤の存在下で原子移動ラジカル重合によって調製される、非ゲル化ポリマーである。このポリマーは、以下のポリマー鎖構造をのうちの少なくとも1つを含む:
(I) −{(M)−(G)
または
(II) −{(G)−(M)
ここで、Mは、少なくとも1個のエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーのカルバメート官能基のない残基であり;Gは、少なくとも1個のエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーの、以下の構造のペンダントカルバメート官能基:
【0090】
【化8】

を有する残基であり、ここで、Rは、水素(これが好ましい)または1〜10個の炭素原子を有する一価のアルキル基または6〜10個の炭素原子を有するアリール基であり;pおよびqは、各ポリマー鎖構造において残基のブロックに存在する平均残基数を示し;そしてp、qおよびxは、カルバメート官能性ポリマーが少なくとも250、好ましくは少なくとも1000、そしてより好ましくは少なくとも2000の数平均分子量(M)を有するように各構造について、各々独立して選択される。カルバメート官能性ポリマーはまた、典型的に16,000未満の、好ましくは、10,000未満の、より好ましくは5000未満のMを有する。カルバメート官能性ポリマーのMは、記載された値を含めて、これらの値の任意の組み合わせの間で変動し得る。他に示されない限り、明細書および特許請求の範囲に記載される全ての分子量は、ポリエチレン標準を使用するゲルパーミエーションクロマトグラフィーから決定される。構造IおよびIIは、ポリマー内に「xセグメント」を規定することに注意せよ。
【0091】
構造IおよびIIに示されるように、下付文字pおよびqは、各ポリマー鎖構造内の残基のブロックに存在する残基の平均数を表す。典型的には、pおよびqは、それぞれ独立して、一般ポリマー構造IおよびIIについて、0以上の、好ましくは少なくとも1の、そしてより好ましくは少なくとも5の値を有する。また、下付文字pおよびqは、それぞれ独立して、一般ポリマー構造IおよびIIのそれぞれについて、典型的には100未満の、好ましくは20未満の、そしてより好ましくは、15未満の値を有する。下付文字pおよびqの値は、記載された値を含めて、これらの値の任意の組み合わせの間で変動し得る。さらに、pおよびqの合計は、xセグメント内で0より大きく、qは、ポリマーの少なくとも1つのxセグメント内で0より大きい。
【0092】
典型的には、構造IおよびIIにおいて示されるような下付文字xは、少なくとも1の値を有する。また、下付文字xは、典型的には、100未満、好ましくは、50未満、そしてより好ましくは、10未満の値を有する。下付文字xの値は、記載された値を含めて、これらの値の任意の組み合わせの間で変動し得る。さらに、構造1および/またはIIの1つより多くが、ポリマー分子内に存在する場合、xは、各構造について異なる値(pおよびqであり得る)を有し得、グラジエントコポリマーのような種々のポリマー構成を可能にする。
【0093】
一般構造IおよびIIの−(M)−部分は、(1)単一のタイプのM残基のホモブロック(pユニットの長さである)、(2)2つのタイプのM残基の交互ブロック、(3)2以上のタイプのM残基のポリブロック、または(4)2以上のタイプのM残基のグラジエントブロックを表す。説明のために、M−ブロックが、例えば、10モルのメチルメタクリレートから調製される場合、構造IおよびIIの−(M)−部分は、メチルメタクリレートの10残基のホモブロックを表す。M−ブロックが、例えば5モルのメチルメタクリレートおよび5モルのブチルメタクリレートから調製される場合、一般構造IおよびIIの−(M)−部分は、典型的に、当業者に公知であるように調製条件に依存して以下を表す:(a)合計で10残基(すなわちp=10)を有する、メチルメタクリレートの5残基およびブチルメタクリレートの5残基のジブロック;(b)合計で10残基を有する、ブチルメタクリレートの5残基およびメチルメタクリレートの5残基のジブロック;(c)メチルメタクリレート残基またはブチルメタクリレート残基のいずれかで始まり、合計で10残基を有する、メチルメタクリレート残基およびブチルメタクリレート残基の交互ブロック;あるいは(d)メチルメタクリレート残基またはブチルメタクリレート残基のいずれかで始まり、合計で10残基を有する、メチルメタクリレート残基およびブチルメタクリレート残基のグラジエントブロック。
【0094】
ポリマー鎖構造IおよびIIの−(G)−部分は、−(M)−部分と同じ様式で記載され得る。
【0095】
以下は、一般的なポリマー鎖構造IおよびIIによって表される種々のポリマー構成を示すために提示される。
【0096】
(ホモブロックポリマー構成:)
xが1であり、pが0であり、qが5である場合、一般的なポリマー鎖構造Iは、5G残基のホモブロックを表し、より詳細には以下の一般式IVによって示される:
IV
−(G)−(G)−(G)−(G)−(G)−。
【0097】
(ジブロックコポリマー構成:)
xが1であり、pが5であり、qが5である場合、一般的なポリマー鎖構造Iは、5M残基および5G残基のジブロックを表し、より詳細には以下の一般式Vによって示される:

−(M)−(M)−(M)−(M)−(M)−(G)−(G)−(G)−(G)−(G)−。
【0098】
(交互コポリマー構成:)
xが1より大きく(例えば5)、pおよびqが各x−セグメントについてそれぞれ1である場合、ポリマー鎖構造Iは、M残基およびG残基の交互ブロックを表し、より詳細には以下の一般式VIによって示される:
VI
−(M)−(G)−(M)−(G)−(M)−(G)−(M)−(G)−(M)−(G)−。
【0099】
(グラジエントコポリマー構成:)
xが1より大きく(例えば4)、pおよびqが各x−セグメントについてそれぞれ独立して、例えば1〜3の範囲内である場合、ポリマー鎖構造Iは、M残基およびG残基のグラジエントブロックを表し、より詳細には以下の一般式VIIによって示される:
VII
−(M)−(M)−(M)−(G)−(M)−(M)−(G)−(G)−(M)−(G)−(G)−(M)−(G)−(G)−(G)−。
【0100】
グラジエントコポリマーは、ATRP法によって2つ以上のモノマーから調製され得、ポリマー骨格に沿って、次第に、そして対称的かつ予測可能な様式で変化する構成を有するように一般的に記載される。グラジエントコポリマーは、ATRP法により、(a)重合過程の間、反応媒体に供給されるモノマー比を変えることによって、(b)異なる重合速度を有するモノマーを含むモノマー供給を使用して、または(c)(a)および(b)の組み合わせで調製され得る。グラジエントコポリマーは、国際特許公報WO97/18247の頁72〜78にさらに詳細に記載される。
【0101】
一般的なポリマー鎖構造IおよびIIの残基Mは、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーから誘導される。本明細書中および特許請求の範囲に使用される場合、「エチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマー」などの用語は、ビニルモノマー、(メト)アリルモノマー、オレフィンおよび他のラジカル重合可能なエチレン性不飽和モノマーを含むことを意味する。
【0102】
Mが誘導され得るビニルモノマーのクラスには、(メト)アクリレート、ビニル芳香族モノマー、ビニルハライドおよびカルボン酸のビニルエステルが挙げられるがこれらには限定されない。本明細書中および特許請求の範囲に使用される場合、「(メト)アクリレート」などの用語は、メタクリレートおよびアクリレートの両方を意味する。好ましくは、残基Mは、アルキル基において1〜20の炭素原子を有するアルキル(メト)アクリレート、ビニル芳香族モノマー、ビニルハライド、カルボン酸のビニルエステルおよびオレフィンの少なくとも1つから誘導される。残基Mが誘導され得る、アルキル基において1〜20の炭素原子を有するアルキル(メト)アクリレートの具体例には、以下が挙げられるが、これには限定されない:メチル(メト)アクリレート、エチル(メト)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メト)アクリレート、プロピル(メト)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メト)アクリレート、イソプロピル(メト)アクリレート、ブチル(メト)アクリレート、tert−ブチル(メト)アクリレート、2−エチルへキシル(メト)アクリレート、ラウリル(メト)アクリレート、イソボルニル(isobornyl)(メト)アクリレート、シクロへキシル(メト)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロへキシル(メト)アクリレート、およびイソブチル(メト)アクリレート。
【0103】
残基Mはまた、1個より多い(メト)アクリレート基を有するモノマー(例えば、無水(メト)アクリル酸およびジエチレングリコールビス((メト)アクリレート))から選択され得る。残基Mはまた、分枝モノマーとして働き得る、ラジカル移動可能基を含むアルキル(メト)アクリレート(例えば、2−(2−ブロモプロピオノキシ)エチルアクリレート)から選択され得る。
【0104】
Mが誘導され得るビニル芳香族性モノマーの具体的な例には、以下が挙げられるが、これには限定されない:スチレン、p−クロロメチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレンおよびジビニルナフタレン。Mが誘導され得るビニルハライドには以下が挙げられるが、これには限定されない:ビニルクロリドおよびビニリデンフルオリド。Mが誘導され得るカルボン酸のビニルエステルには、以下が挙げられるが、これには限定されない:ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート、VERSATIC Acidのビニルエステル(VERSATIC Acidは、Shell Chemical Companyから入手可能である3級脂肪族カルボン酸の混合物である)など。
【0105】
本明細書中および特許請求の範囲に使用される場合、「オレフィン」などの用語は、石油留分を分解することによって得られるような、1つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪族炭化水素を意味する。Mが誘導され得るオレフィンの具体例には以下が挙げられるが、これには限定されない:プロピレン、1−ブテン、1,3−ブタジエン、イソブチレンおよびジイソブチレン。
【0106】
本明細書中および特許請求の範囲に使用される場合、「(メト)アリルモノマー(単数または複数)」は、置換および/または非置換のアリル官能基を含むモノマー、すなわち、以下の一般式VIIIによって示される1つ以上のラジカルを意味する:
VIII
C=C(R)−CH
ここで、Rは、水素、ハロゲンまたはC〜Cアルキル基である。最も一般的には、Rは、水素またはメチル基である。(メト)アリルモノマーの例には、以下が挙げられるが、これには限定されない:(メト)アリルアルコール;(メト)アリルエーテル(例えば、メチル(メト)アリルエーテル);カルボン酸の(メト)アリルエステル(例えば、(メト)アリルアセテート;(メト)アリルベンゾエート;(メト)アリルn−ブチレート;VERSATIC Acidの(メト)アリルエステル)など。
【0107】
Mが誘導され得る、他のエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーには、以下が挙げられるが、これには限定されない:環状無水物(例えば、無水マレイン酸、無水1−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸および無水イタコン酸);不飽和であるがα,β−エチレン性不飽和を有さない、酸のエステル(例えば、ウンデシレン酸のメチルエステル);およびエチレン性不飽和二塩基酸のジエステル(例えば、ジエチルマレアート)。
【0108】
残基Gは、以下の構造の、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーから誘導され得る:
【0109】
【化9】

ここで、Rは、上記のように定義され、Rは、水素またはメチル基であり、そしてRは、1〜30個の炭素原子を含む二価の連結基である。適切なカルバメート官能性ビニルモノマーには、例えば、メタクリル酸のカルバメート官能性アルキルエステルが挙げられる。これらのカルバメート官能性アルキルエステルは、例えば、ヒドロキシアルキルカルバメート(例えば、ヒドロキシプロピルカルバメート)と、無水メタクリル酸とを反応させることによって調製される。ヒドロキシプロピルカルバメートおよび無水メタクリル酸の反応生成物において、Rは、以下の構造を有する:
【0110】
【化10】

他のカルバメート官能性ビニルモノマーは、例えば、ヒドロキシエチル(メト)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メト)アクリレートなどのヒドロキシル官能性アクリルモノマー;ジイソシアネート;およびヒドロキシアルキルカルバメートの反応生成物である。
【0111】
適切な芳香族ジイソシアネートの例は、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよびトルエンジイソシアネートである。適切な脂肪族ジイソシアネートの例は、1、6−ヘキサメチレンジイソシアネートのような直鎖脂肪族ジイソシアネートである。脂環式ジイソシアネートがまた、使用され得る。例としては、イソホロンジイソシアネート(これが好ましい)および4,4’−メチレン−ビス−(シクロへキシルイソシアネート)が挙げられる。
【0112】
1つの実施態様において、カルバメート官能性ビニルモノマーは、ヒドロキシエチルメタクリレート、イソホロンジイソシアネート、およびヒドロキシプロピルカルバメートの反応生成物であり、そして、Rは、以下の構造を有する:
【0113】
【化11】

例えば、イソシアン酸(HNCO)と、ヒドロキシ官能性のアクリルモノマーまたはメタクリルモノマー(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート)との反応生成物のような、なお他のカルバメート官能性ビニルモノマーが使用され、これらは、米国特許3,479,328号に記載される。
【0114】
あるいは、カルバメート官能基は、例えば、「トランスカルバモイレーション」反応により、ヒドロキシル官能性ポリマーと低級分子量カルバメート官能性物質を反応させることによって、後反応によってカルバメート官能性ポリマーに組み込まれ得る。この反応において、アルコールまたはグリコールエーテルから誘導される低分子量カルバメート官能性物質は、ポリマーのヒドロキシル基と反応され、カルバメート官能性ポリマーおよび元々のアルコールまたはグリコールエーテルを生じる。アルコールまたはグリコールエーテルから誘導される低分子量カルバメート官能性物質は、最初に、触媒の存在下で、アルコールまたはグリコールエーテルと尿素とを反応させることによって調製される。適切なアルコールには、低分子量脂肪族、脂環式、および芳香族アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、2−エチルヘキサノール、および3−メチルブタノール)が挙げられる。適切なグリコールエーテルには、エチレングリコールメチルエーテル、およびプロピレングリコールメチルエーテルが挙げられる。プロピレングリコールメチルエーテルが好ましい。
【0115】
上記構造において(G)として示されるモノマーブロックは、1つのタイプのモノマーまたは2つ以上のモノマーの混合物から誘導され得る。上で議論されるように、このような混合物は、モノマー残基のブロックであり得るか、またはこれらは、交互残基であり得る。
【0116】
好ましくは、このポリマーは、以下のポリマー鎖構造のうちの少なくとも1つを含み:
(XII) φ−[{(M)−(G)−(M)−T]
または
(XIII) φ−[{(G)−(M)−(G)−T]
ここで、下付文字rおよびsは、MおよびG残基のそれぞれのブロックに存在する残基の平均数を表す。一般構造式XIIおよびXIIIの−(M)−および−(G)−部分は、部分−(M)−および−(G)−に関して本明細書中で先に記載された意味と同じ意味を有する。部分φは、ラジカル移動可能基のない開始剤の残基であるか、またはこの残基から誘導され;p、qおよびxは、上のように定義され;zは、少なくとも1であり;Tは、開始剤のラジカル移動可能基であるか、またはこの基から誘導され;そしてカルバメート官能性ポリマーは、2.5未満の、好ましくは2.0未満の、より好ましくは1.8未満の、さらにより好ましくは1.5未満の多分散性指数を有する。
【0117】
構造XIIおよびXIIIは、ポリマー自体を表し得るか、あるいは、この構造の各々は、ポリマーの末端セグメントを含み得る。例えば、ポリマーが1つのラジカル移動可能基を有する開始剤を使用するATRPによって調製され、zが1である場合、構造XIIでもXIIIでもいずれでも、全体の直鎖ポリマーを表し得る。しかし、カルバメート官能性ポリマーが、スターポリマーまたは他の分子鎖ポリマーである場合、分枝鎖のうちのいくらかが、カルバメート官能性基を有し得ず、一般的なポリマー鎖構造XIIおよびXIIIは、カルバメート官能性ポリマーの一部を表す。
【0118】
各一般的なポリマー構造XIIおよびXIIIについて、下付文字rおよびsは、それぞれ独立して、0以上の値を有する。各一般的なポリマー構造XIIおよびXIIIについて、下付文字rおよびsは、それぞれ独立して、典型的には、100未満、好ましくは、50未満、そしてより好ましくは、10未満の値を有する。rおよびsの値はそれぞれ、記載された値を含む、これらの値の任意の組み合わせ間の範囲であり得る。
【0119】
カルバメート官能性ポリマーは、典型的に、少なくとも101g/当量のカルバメート当量を有し、好ましくは、少なくとも200g/当量である。ポリマーのカルバメート当量はまた、好ましくは、10,000g/当量未満であり、好ましくは、5,000g/当量未満、そしてより好ましくは、1,000g/当量未満である。カルバメート官能性ポリマーのカルバメート当量は、記載された値を含む、これらの値の任意の組み合わせ間の範囲であり得る。
【0120】
上記のように、本発明の熱硬化性組成物において使用されるカルバメート官能性ポリマーは、原子移動ラジカル重合によって調製される。このATRP法は、「リビング重合(living polymerization)」(すなわち、本質的に連鎖移動がなく本質的に連鎖停止がなく増える、鎖成長重合)として記載される。ATRPによって調製されるポリマーの分子量は、反応物の化学量論(すなわち、モノマー(単数または複数)および開始剤(単数または複数)の初期濃度)によって制御され得る。さらに、ATRPはまた、例えば、狭い分子量分布(例えば、2.5未満のPDI値)およびうまく定義されたポリマー鎖構造(例えば、ブロックコポリマーおよび交互コポリマー)を包含する特徴を有する、ポリマーを提供する。
【0121】
ATRPプロセスは、一般に、以下の工程を包含すると記載され得る:開始系の存在下で、1つ以上のラジカル重合可能モノマーを重合する工程;ポリマーを形成する工程;および形成されたポリマーを単離する工程。開始系は、以下を含む:少なくとも1つのラジカル移動可能な原子または基を有する開始剤;遷移金属化合物(すなわち、触媒)(これは、上記開始剤を用いる可逆酸化還元サイクルに関与する);およびリガンド(これは、遷移金属化合物と配位する)。ATRPプロセスは、国際特許公開WO97/18247ならびに米国特許第5,763,548号および同第5,789,487号にさらに詳細に記載される。
【0122】
本発明のカルバメート官能性ポリマーの調製において、開始剤は、直鎖または分枝鎖の脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物、多環式芳香族化合物、複素環式化合物、スルホニル化合物、スルフェニル化合物、カルボン酸のエステル、ポリマー化合物およびそれらの混合物からなる群から選択され得、これら各々は、少なくとも1つのラジカル移動可能基を有し、これは、典型的に、ハロ基である。開始剤はまた、官能基(例えば、カルバメート基)で置換され得る。さらなる有用な開始剤およびそれらと会合し得る種々のラジカル移動可能基は、国際特許公開WO97/18247の第42〜45頁に記載される。
【0123】
ラジカル移動可能基を有するポリマー化合物(オリゴマー性化合物を含む)は、開始剤として使用され得、そして本明細書中で「マクロ開始剤(macroinitiator)」として言及される。マクロ開始剤の例としては、カチオン重合によって調製され、そして末端ハライド(例えば、クロリド)を有するポリスチレン、ならびに2−(2−ブロモプロピオノキシ(bromopropionoxy)エチルアクリレートおよび1つ以上のアルキル(メト)アクリレート(例えば、ブチルアクリレート)のポリマー(従来の非リビングラジカル重合によって調製される)が挙げられるが、これらに限定されない。マクロ開始剤は、グラフトポリマー(例えば、グラフト化されたブロックコポリマーおよびくし型(comb)コポリマー)を調製するための、ATRPプロセスにおいて使用され得る。マクロ開始剤のさらなる議論は、米国特許5,789,487号に見出される。
【0124】
好ましくは、開始剤は、ハロメタン、メチレンジハライド、ハロホルム、カーボンテトラハライド、メタンスルホニルハライド、p−トルエンスルホニルハライド、メタンスルフェニルハライド、p−トルエンスルフェニルハライド、1−フェニルエチルハライド、2−ハロプロピオニトリル、2−ハロ−C〜Cカルボン酸のC〜Cアルキルエステル、p−ハロメチルスチレン、モノ−ヘキサキス(α−ハロ−C〜Cアルキル)ベンゼン、ジエチル−2−ハロ−2−メチルマロネート、ベンジルハライド、エチル2−ブロモイソブチレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される。ジエチル−2−ブロモ−2−メチルマロネートが、特に好ましい。
【0125】
本発明のカルバメート官能性ポリマーの調製において使用され得る触媒は、開始剤および成長ポリマー鎖を用いる、酸化還元サイクルに関与し得る任意の遷移金属化合物を含む。遷移金属化合物がポリマー鎖との直接炭素−金属結合を形成しないことが好ましい。本発明において有用である遷移金属触媒は、以下の一般式XIV:
(XIV)
TMn+
によって表され得る。ここで、TMは、遷移金属であり、nは、0〜7の値を有する遷移金属上の形式電荷であり、そしてQは、対イオンまたは共有結合成分である。遷移金属(TM)の例としては、Cu、Au、Ag、Hg、Pd、Pt、Co、Mn、Ru、Mo、Nb、Fe、およびZnが挙げられるが、これらに限定されない。Qの例としては、ハロゲン、ヒドロキシ、酸素、C〜Cアルコキシ、シアノ、シアナト(cyanato)、チオシアナト、およびアジドが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい遷移金属は、Cu(I)であり、そしてQは、好ましくは、ハロゲン(例えば、クロリド)である。従って、遷移金属触媒の好ましいクラスは、ハロゲン化銅(例えば、Cu(I)Cl)である。遷移金属触媒が少量(例えば、1モル%)の酸化還元結合体(例えば、Cu(II)Cl(Cu(I)Clが使用される場合))を含むこともまた好ましい。本発明のカルバメート官能性ポリマーの調製において有用なさらなる触媒は、国際特許公開WO97/18247の第45および46頁に記載される。酸化還元結合体は、国際特許公開WO97/18247の第27〜33頁に記載される。
【0126】
本発明のカルバメート官能性ポリマーの調製において使用され得るリガンドには、1つ以上の窒素、酸素、リンおよび/またはイオウ原子(これらは、遷移金属触媒化合物に例えばσおよび/またはπ結合を介して配位され得る)を有する化合物が挙げられるが、これらに限定されない。有用なリガンドのクラスとして以下が挙げられるが、これらに限定されない:非置換および置換のピリジンおよびビピリジン;ポルフィリン;クリプタンド;クラウンエーテル、例えば、18−クラウン−6;ポリアミン、例えば、エチレンジアミン;グリコール、例えば、エチレングリコールのようなアルキレングリコール;一酸化炭素;ならびに配位モノマー、例えば、スチレン、アクリロニトリルおよびヒドロキシアルキル(メト)アクリレート。リガンドの好ましいクラスは、置換されたビピリジン、例えば、4,4’−ジアルキル−ビピリジルである。本発明のカルバメート官能性ポリマーの調製において使用され得るさらなるリガンドは、国際特許公開WO97/18247の第46〜53頁に記載される。
【0127】
本発明のカルバメート官能性ポリマーの調製において、開始剤、遷移金属化合物およびリガンドの量ならびに相対比は、ATRPが最も効果的に行われるものである。使用される開始剤の量は、広範に変化し得、そして典型的に反応媒体中に10−4モル/リットル(M)〜3M(例えば、10−3M〜10−1M)の濃度で存在する。カルバメート官能性ポリマーの分子量は、開始剤およびモノマー(単数または複数)の相対濃度に直接関連し得、開始剤のモノマーに対するモル比は、ポリマー調製において重要な因子である。開始剤のモノマーに対するモル比は、典型的に、10−4:1〜0.5:1(例えば、10−3:1〜5×10−2:1)の範囲内である。
【0128】
本発明のカルバメート官能性ポリマーの調製において、遷移金属化合物の開始剤に対するモル比は、典型的に、10−4:1〜10:1(例えば、0.1:1〜5:1)の範囲である。リガンドの遷移金属化合物に対するモル比は、典型的に、0.1:1〜100:1(例えば、0.2:1〜10:1)の範囲内である。
【0129】
本発明の熱硬化性組成物において有用であるカルバメート官能性ポリマーは、溶媒の非存在下で(すなわち、塊状重合プロセスによって)調製され得る。一般に、カルバメート官能性ポリマーは、溶媒(典型的に、水および/または有機溶媒)の存在下で調製される。有用な有機溶媒のクラスとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:エーテル、環式エーテル、C〜C10アルカン、C〜Cシクロアルカン、芳香族炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、アミド、ニトリル、スルホキシド、スルホンおよびそれらの混合物。超臨界溶媒(例えば、CO、C〜Cアルカンおよびフルオロカーボン)がまた、使用され得る。溶媒の好ましいクラスは芳香族であり、その特に好ましい例はキシレン、およびSOLVESSO 100(Exxon Chemicals Americaから市販されている芳香族溶媒のブレンド)である。さらなる溶媒は、国際特許公開WO97/18247の第53〜56頁にさらに詳細に記載される。
【0130】
カルバメート官能性ポリマーは、典型的に、25℃〜140℃(好ましくは、50℃〜100℃)の範囲内の反応温度、ならびに1〜100気圧(通常、大気圧)の範囲内の圧で調製される。原子移動ラジカル重合は、典型的に、24時間未満(例えば、1時間と8時間との間)で完了する。
【0131】
本発明の熱硬化性組成物において使用する前に、ATRP遷移金属触媒およびその関連のリガンドは、典型的に、カルバメート官能性ポリマーから分離または除去される。しかし、これは本発明の要件ではない。ATRP触媒の除去は、公知の方法(例えば、触媒結合剤の、ポリマー、溶媒および触媒の混合物への添加、続く濾過、を包含する)を用いて達成される。適切な触媒結合剤の例としては、例えば、アルミナ、シリカ、クレイ、またはそれらの組み合わせが挙げられる。ポリマー、溶媒およびATRP触媒の混合物は、触媒結合剤の床(bed)を通過され得る。あるいは、ATRP触媒は、インサイチュで酸化され得、そしてカルバメート官能性ポリマー中に保持され得る。
【0132】
カルバメート官能性ポリマーは、直鎖ポリマー、分枝鎖ポリマー、超分枝鎖ポリマー、スターポリマー、グラフトポリマーおよびそれらの混合物からなる群から選択され得る。ポリマーの形状または全体的構成は、その調製において使用される開始剤およびモノマーの選択によって制御され得る。直鎖カルバメート官能性ポリマーは、1または2つのラジカル移動可能基を有する開始剤(例えば、ジエチル−2−ハロ−2−メチルマロネートおよびα,α’−ジクロロキシレン)を使用することによって調製され得る。分枝カルバメート官能性ポリマーは、分枝モノマー(すなわち、ラジカル移動可能基または1より多いエチレン性不飽和のラジカル重合可能基を含むモノマー(例えば、2−(2−ブロモプロピオノキシ)エチルアクリレート、p−クロロメチルスチレンおよびジエチレングリコールビス(メタクリレート)))を使用することによって調製され得る。超分枝鎖カルバメート官能性ポリマーは、使用される分枝モノマーの量を増加させることによって調製され得る。
【0133】
スターカルバメート官能性ポリマーは、3以上のラジカル移動可能基を有する開始剤(例えば、ヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼン)を使用することによって調製され得る。当業者に公知のように、スターポリマーは、コア−アームまたはアーム−コア法によって調製され得る。コア−アーム法において、スターポリマーは、多官能性開始剤(例えば、ヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼン)の存在下でモノマーを重合させることによって調製される。類似の組成物および構成のポリマー鎖またはアームは、コア−アーム法において、開始剤コアから成長する。
【0134】
アームコア(arm−core)法において、このアームは、コアとは別に調製され、必要に応じて、異なる組成、構成、分子量およびPDIを有し得る。アームは、異なるカルバメート当量を有し得、あるものはいずれのカルバメート官能基なしで調製され得る。アームの調製の後に、これらは、コアに接続される。
【0135】
グラフトポリマーの形態のカルバメート官能性ポリマーは、本明細書中で前述されたように、マクロ開始剤を使用して調製され得る。グラフト、分枝、超分枝およびスターポリマーは、国際特許公報WO97/18247の頁79〜91にさらに詳細に記載される。
【0136】
本発明に有用なカルバメート官能性ポリマーの多分散性指数(PDI)は、典型的に、2.5未満であり、より典型的には、2.0未満であり、好ましくは1.8未満(例えば1.5)である。本明細書中および特許請求の範囲で使用されるように、「多分散性指数」は、以下の等式により決定される:(重量平均分子量(M)/数平均分子量(M))。単分散(monodisperse)ポリマーは、1.0のPDIを有する。
【0137】
構造XIIおよびXIIIで示されるように、記号φは、ラジカル移動可能基を含有しない、開始剤の残基であるか、またはこれから誘導される;これは、最もしばしばスルホニル基またはマロネートである。例えば、カルバメート官能性ポリマーが臭化ベンジルによって開始される場合、記号φ、より詳細にはφ−は、以下の構造の残基:
【0138】
【化12】

である。
【0139】
記号φはまた、開始剤の残基から誘導され得る。例えば、ポリマーが、エピクロロヒドリンを使用して開始される場合、記号φ、より詳細にはφ−は、2,3−エポキシ−プロピル残基:
【0140】
【化13】

である。次いで、この2,3−エポキシ−プロピル残基は、例えば、2,3−ジヒドロキシプロピル残基に変換され得る。開始剤残基の誘導または変換は、好ましくは、ポリマー骨格に沿ったカルバメート官能基の損失が最小であるATRPプロセスの地点(例えば、カルバメート官能基を有する残基のブロックの取り込みの前)で行われる。
【0141】
一般式XIIおよびXIIIにおいて、下付文字zは、φに結合したカルバメート官能性ポリマー鎖の数と等しい。下付文字zは少なくとも1であり、そして広範な値を有し得る。くし型(comb)ポリマーまたはグラフトポリマーの場合、φは、いくつかのラジカル移動可能なペンダント基を有するマクロ開始剤であり、zは、10を越す値、例えば、50、100または1000を有し得る。典型的に、zは、10未満であり、好ましくは、6未満、そしてより好ましくは、5未満である。本発明の好ましい実施態様において、zは1または2である。
【0142】
一般式XIIおよびXIIIの記号Tは、開始剤のラジカル移動可能基であるか、またはこれから誘導される。例えば、カルバメート官能性ポリマーがジエチル−2−ブロモ−2−メチルマロネートの存在下で調製される場合、Tはラジカル移動可能ブロモ基であり得る。
【0143】
ラジカル移動可能基は必要に応じて、(a)除去されるか、または(b)別の部分に化学的に変換され得る。(a)または(b)のいずれかにおいて、記号Tは、本明細書中で、開始剤のラジカル移動可能基から誘導されると考えられる。ラジカル移動可能基は、求核性化合物(例えば、アルカリ金属アルコキシレート)との置換によって除去され得る。本発明において、ラジカル移動可能基が除去される方法でも、化学的に変換される方法でもいずれでもまた、ポリマーのカルバメート官能基に対して比較的穏やかであることが所望される。
【0144】
本発明の好ましい実施態様において、ラジカル移動可能基はハロゲンであり、このハロゲンは穏やかな脱ハロゲン化反応により除去され、この反応はポリマーのカルバメート官能基に影響しない。この反応は典型的に、ポリマーが形成した後、少なくともATRP触媒の存在下で、後反応として実施される。好ましくは、脱ハロゲン化後反応は、ATRP触媒およびその対応するリガンドの両方の存在下で行われる。
【0145】
穏やかな脱ハロゲン化反応は、本発明のハロゲン末端カルバメート官能性ポリマーを、1つ以上のエチレン性不飽和化合物と接触させることによって行われる。エチレン性不飽和化合物は、原子移動ラジカル重合が行われる条件下のスペクトルの少なくとも一部分で容易にラジカル重合し得ず、本明細書中以下で、「制限ラジカル重合可能なエチレン性不飽和化合物」(LRPEU化合物)と称される)。本明細書中で使用される「ハロゲン末端」および類似の用語は、例えば、分枝鎖ポリマー、くし型ポリマーおよびスターポリマーとして表される、ペンダントハロゲンもまた含むことを意味する。
【0146】
いずれの理論にも縛られることを意図しないが、手近な証拠に基づいて、ハロゲン末端カルバメート官能性ポリマーと1つ以上のLRPEU化合物との間の反応は、(1)末端ハロゲン基の除去、および(2)少なくとも1つの炭素−炭素二重結合の付加(ここで、末端炭素−ハロゲン結合は切れる)を生じると考えられる。脱ハロゲン化反応は典型的に、0℃〜200℃の範囲の温度(例えば、0℃〜160℃)、0.1〜100気圧の範囲の圧力(例えば、0.1〜50気圧)で行われる。この反応はまた、典型的には、24時間未満(例えば、1時間と8時間との間)で行われる。LRPEU化合物は、化学量論的な量より少ない量で添加され得るが、好ましくは、カルバメート官能性ポリマー中に存在する末端ハロゲンのモルに対して少なくとも化学量論的な量で添加される。化学量論的な量より多く添加される場合、LRPEU化合物は、典型的に、5モル%を超えない量(例えば、1〜3モル%)で存在し、末端ハロゲンの全モルを越す。
【0147】
穏やかな条件下で、本発明の組成物のカルバメート官能性ポリマーを脱ハロゲン化するのに有用な、制限ラジカル重合可能なエチレン性不飽和化合物には、以下の一般式XVIで表される化合物が挙げられる:
【0148】
【化14】

一般式XVIにおいて、RおよびRは、同一であるかまたは異なる有機基、例えば、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基;アリール基;アルコキシ基;エステル基;アルキル硫黄基;アシルオキシ基;および窒素含有アルキル基であり得、ここで、RおよびR基のうち少なくとも一方は有機基であり、一方、他方は有機基または水素であり得る。例えば、RまたはRの一方がアルキル基である場合、他方はアルキル、アリール、アシルオキシ、アルコキシ、アレーン、硫黄含有アルキル基、または窒素含有アルキル基および/もしくは窒素含有アリール基であり得る。R基は同一であるか、または水素もしくは低級アルキルから選択される異なる基であり得、カルバメート官能性ポリマーの末端ハロゲンとLRPEU化合物との間の反応が阻止されないように選択される。また、R基はRおよび/またはR基に結合され、環式化合物を形成し得る。
【0149】
LRPEU化合物はハロゲン基を含有しないことが好ましい。適切なLRPEU化合物の例には、1,1−ジメチルエチレン、1,1−ジフェニルエチレン、イソプロペニルアセテート、α−メチルスチレン、1,1−ジアルコキシオレフィンおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる例には、イタコン酸ジメチルおよびジイソブテン(2,4,4−トリメチル−1−ペンテン)が挙げられる。
【0150】
例示の目的のために、ハロゲン末端カルバメート官能性ポリマーとLRPEU化合物(例えば、α−メチルスチレン)との間の反応は、以下の一般スキーム1で要約される。
【0151】
【化15】

一般スキーム1において、P−Xは、ハロゲン末端カルバメート官能性ポリマーを表す。
【0152】
上に示したように、カルバメート官能性ポリマーは、直鎖ポリマー、分枝鎖ポリマー、超分枝鎖ポリマー、スターポリマー、グラジエントポリマー、およびグラフトポリマーから選択される、多くのポリマー構造のいずれかを有し得る。これらのポリマーの1つ以上の異なるタイプの混合物が、本発明の組成物において使用され得る。
【0153】
カルバメート官能性ポリマーは、本発明の熱硬化性組成物において、樹脂結合剤または添加剤として、別個の樹脂結合剤(これは、原子移動ラジカル重合または従来の重合方法によって調製され得る)と共に使用され得る。添加剤として使用される場合、本明細書中に記載されるようなカルバメート官能性ポリマーは、典型的に、少ない官能基(例えば、単官能基)および対応して高い当量を有し得る。あるいは、反応希釈剤としての使用のような他の適用について、添加剤は、対応する低い当量を有する多い官能基であり得る。
【0154】
カルバメート官能性ポリマーは典型的に、本発明の熱硬化性組成物中に、熱硬化性組成物の樹脂固体の全重量に基づいて、少なくとも0.5重量%(添加剤として使用される場合)、好ましくは少なくとも10重量%(樹脂結合剤として使用される場合)、そしてより好ましくは少なくとも25重量%の量で存在する。熱硬化性組成物はまた、典型的に、熱硬化性組成物の樹脂固体の全重量に基づいて、99.5重量%未満、好ましくは90重量%未満、そしてより好ましくは75重量%未満の量で存在するカルバメート官能性ポリマーを含有する。カルバメート官能性ポリマーは、本発明の熱硬化性組成物中に、これらの値の任意の組み合せの間の範囲の量で存在し得る(記載の値を含む)。
【0155】
本発明の熱硬化性組成物は、カルバメートと反応性の少なくとも2つの官能性基を有する架橋剤をさらに含む。適切な架橋剤の例には、メチロールおよび/またはメチロールエーテル基を含むアミノプラスト、ポリシロキサン、ポリ無水物、および複数の活性メチロール官能基を有する化合物が挙げられる。
【0156】
アミノプラストは、ホルムアルデヒドと、アミンまたはアミドとの反応から得られる。最も一般的なアミンまたはアミドは、メラミン、尿素、またはベンゾグアナミンであり、これらが好ましい。しかし、他のアミンまたはアミドとの縮合が使用され得る;例えば、グリコルリル(glycoluril)のアルデヒド縮合物、これは、粉末コーティングにおいて有用な高い融点の結晶性生成物を与える。使用されるアルデヒドは、最もしばしばホルムアルデヒドであるが、アセトアルデヒド、クロロトンアルデヒド、およびベンズアルデヒドのような他のアルデヒドが使用され得る。
【0157】
アミノプラストは、メチロール基を含み、好ましくは、これらの基の少なくとも一部分が、硬化応答を改変するためにアルコールでエーテル化される。任意の一水素アルコール(メタノール、エタノール、ブタノール、イソブタノール、およびヘキサノールを含む)が、これらの目的にために使用され得る。
【0158】
好ましくは、使用されるアミノプラストは、メラミン−ホルムアルデヒド、尿素−ホルムアルデヒド、またはベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合体であり、これらは、1〜4個の炭素原子を含むアルコールでエーテル化される。
【0159】
他の適切な架橋剤には、ポリ無水物が挙げられ、例えば、ポリ無水コハク酸、および無水物官能基を有する重合可能なエチレン性不飽和モノマー(例えば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水プロペニルコハク酸など)と、他のエチレン性不飽和モノマーとの重合によって調製されるフリーラジカル付加ポリマーが挙げられる。このようなエチレン性不飽和物質の例には、アクリル酸およびメタクリル酸のエステル(例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート);ビニル化合物(例えば、ビニルアセテートおよびビニルクロリド);ビニル芳香族化合物(例えば、スチレンおよびα−メチルスチレン);アリル化合物(例えば、アリルクロリドおよびアリルアセテート)ならびに他の共重合可能エチレン性不飽和モノマー(例えば、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルを含むニトリル);アミド(例えば、アクリルアミドおよびメタクリルアミド);ならびにジエン(例えば、1,3−ブタジエン)が挙げられる。トリメトキシシロキサンのようなポリシロキサンもまた、適切な架橋剤である。
【0160】
架橋剤は、典型的には、本発明の熱硬化性組成物中に、組成物の全樹脂固体重量に基づいて、少なくとも10重量%、そして好ましくは少なくとも25重量%の量で存在する。架橋剤はまた、典型的に、組成物中に、組成物の全樹脂固体重量に基づいて、90重量%未満、好ましくは75重量%未満の量で存在する。本発明の熱硬化性組成物に存在する架橋剤の量は、これらの値の任意の組み合せの間の範囲であり得る(記載の値を含む)。
【0161】
ポリマー中のカルバメート基の、架橋剤における反応性官能基に対するの当量比は、典型的には、1:0.5〜1:1.5の範囲であり、好ましくは1:0.8〜1:1.2の範囲である。
【0162】
通常、熱硬化性組成物はまた、好ましくは、ポリマー(単数または複数)の反応性基と架橋剤の硬化を加速するために触媒を含む。アミノプラストおよび活性メチロール硬化のために適切な触媒には、酸ホスフェートおよびスルホン酸または置換スルホン酸のような酸が挙げられる。例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、フェニル酸ホスフェート、エチルへキシル酸ホスフェートなどが挙げられる。触媒は、通常、熱硬化性組成物中に全樹脂固体重量に基づいて、約0.05〜約5.0重量%、好ましくは約0.25〜約2.0重量%の量で存在する。
【0163】
本発明の熱硬化性組成物は、好ましくは、フィルム形成(コーティング)組成物として使用され、このような組成物において通常使用される補助成分を含み得る。例えば、可塑剤、界面活性剤、チキソトロープ剤、抗気泡発生剤、有機共溶媒、フロー制御剤、抗酸化剤、UV光吸収剤および当該分野において通例の類似の添加剤のような任意の成分は、組成物中に含まれ得る。これらの成分は、典型的には、全樹脂固体重量に基づいて、約40重量%まで存在する。
【0164】
本発明の熱硬化性組成物は、典型的に、液体であり、水に浮き(waterborne)得るが、通常溶媒に浮く。適切な溶媒キャリアには、種々のエステル、エーテル、および芳香族溶媒(これらの混合物を含む)が挙げられ、これらは、コーティング処方物の分野において公知である。組成物は、典型的に、約40〜80重量%の全固体含有量を有する。
【0165】
本発明の熱硬化性組成物は、表面コーティングにおいて通常使用される着色顔料を含み得、モノコートとして使用され得る;すなわち、色素性コーティング。適切な色素顔料には、例えば以下が挙げられる:無機顔料(例えば、二酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、クロム酸鉛、およびカーボンブラック)、ならびに有機顔料(例えば、フタロシアニンブルーおよびフタロシアニングリーン)。上記顔料の混合物がまた、使用され得る。適切なメタリック顔料には、特に、アルミニウムフレーク、銅青銅フレークおよび酸化金属コーティングマイカ、ニッケルフレーク、スズフレーク、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0166】
一般に、顔料は、コーティング固体の全重量を基準にして、約80重量%までの量でコーティング組成物に組み込まれる。メタリック顔料は、コーティング固体の全重量を基準にして、約0.5〜約25重量%の量で使用される。
【0167】
上記のように、本発明の熱硬化性組成物は、熱硬化性組成物を基材に塗布する工程、その熱硬化性組成物を、実質的に連続なフィルムの形態で基材上に合着する工程、およびその熱硬化性組成物を硬化する工程を包含する、基材のコーティング方法において使用され得る。
【0168】
これらの組成物は、これらが接着する様々な基材(木材、金属、ガラスおよびプラスチックを含む)に塗布され得る。これらの組成物は、従来の方法(ブラッシング、浸漬、フローコーティング、スプレーなどを含む)によって塗布され得るが、これらは、スプレーによって最も頻繁に塗布される。エアスプレーおよび静電スプレーのための通常のスプレー技術および装置、ならびに手動方法または自動方法のいずれかが使用され得る。
【0169】
組成物を基材に塗布した後、この組成物を合着して、基材上に実質的に連続なフィルムを形成する。典型的には、このフィルム厚は、約0.01〜約5ミル(約0.254〜約127ミクロン)、好ましくは、約0.1〜約2ミル(約2.54〜約50.8ミクロン)の厚さである。このフィルムは、加熱または空気乾燥時間によって、溶媒(すなわち、有機溶媒および/または水)をフィルムから除去し、基材の表面上に形成される。好ましくは、加熱は、任意の引き続き塗布されるコーティングが、組成物を溶解することなく、確実にフィルムに塗布され得るのに十分な短時間だけである。適切な乾燥条件は、特定の組成物に依存するが、一般に、約68〜250°F(20〜121℃)の温度で、約1〜5分の乾燥時間が適切である。最適な外観を表す、1つより多い組成物が塗布され得る。コーティング間で、すでに塗布されたコーティングがフラッシュされ得る;すなわち、約1〜20分間周囲条件に曝される。
【0170】
本発明のフィルム形成組成物は、好ましくは、多成分複合コーティング構成物におけるクリアコート層(例えば、「カラープラスクリア」コーティングシステム)(これは、少なくとも1つの色素性または着色ベースコートおよび少なくとも1つのクリアトップコートを含む)として使用される。この実施態様において、クリアフィルム形成組成物は、本発明の熱硬化性組成物を含み得る。
【0171】
カラープラスクリアシステム中のベースコートのフィルム形成組成物は、コーティング塗布、特に、自動車の塗布に有用な、任意の組成物であり得る。ベースコートのフィルム形成組成物は、樹脂結合剤および着色剤として作用する顔料を含む。特に有用な樹脂結合剤は、アクリルポリマー、ポリエステル(アルキドを含む)、およびポリウレタンである。原子移動ラジカル重合を使用して調製されるポリマーはまた、ベースコートにおける樹脂結合剤として使用され得る。
【0172】
ベースコート組成物は溶媒に浮く(solventborne)または水に浮き得る。カラープラスクリア構成物中の水に浮くベースコートは、米国特許第4,403,003号に開示され、そしてこれらのベースコートを調製する際に使用される樹脂組成物は、本発明の実施において使用され得る。また、水に浮くポリウレタン(例えば、米国特許第4,147,679号に従って調製されるような水に浮くポリウレタン)は、ベースコート中の樹脂結合剤として使用され得る。さらに、水に浮くコーティング(例えば、米国特許第5,071,904号に記載されるような水に浮くコーティング)は、ベースコートとして使用され得る。
【0173】
これらのベースコートは、その色を示す顔料を含む。適切な顔料には、上記のような顔料が挙げられる。一般に、顔料は、コーティング固体の重量を基準にして、約1〜80重量%の量で、コーティング組成物に組み込まれる。メタリック顔料は、コーティング固体の重量を基準にして、約0.5〜25重量%の量で用いられる。
【0174】
所望ならば、ベースコート組成物は、調合表面コーティングの分野に周知の、上記の物質を含む、追加の物質を含み得る。これらの物質は、コーティング組成物の全重量の、40重量%までを構成し得る。
【0175】
ベースコーティング組成物は、従来の手段によって、これらの組成物が接着する種々の基材に塗布され得るが、これらは、最も頻繁に、スプレーによって塗布され得る。スプレーおよび静電スプレーのための通常のスプレー技術および装置、ならびに手動方法または自動方法のいずれかが使用され得る。
【0176】
ベースコート組成物を基材に塗布している間、ベースコートのフィルムは基材上で形成される。典型的には、ベースコート厚は、約0.01〜5ミル(0.254〜127ミクロン)、好ましくは、0.1〜2ミル(2.54〜50.8ミクロン)の厚さである。
【0177】
ベースコートを基材に塗布した後、クリアコートが、ベースコート組成物を溶解する組成物なしで、ベースコートに塗布され得るのを保証するのに十分であり、さらにベースコートを十分に硬化するのには不十分な加熱または空気乾燥時間によって、ベースコートフィルムから溶媒を除去することによって、フィルムが基材の表面上に形成される。1より多いベースコートおよび複数のクリアコートが、最適な外観を表すために塗布され得る。通常、コーティング間で、すでに塗布されたコートがフラッシュされる。
【0178】
クリアトップコート組成物は、任意の従来のコーティング技術(例えば、ブラッシング、スプレー、浸漬またはフローイング)によって、ベースコート基材に塗布され得るが、優れた光沢のため、スプレー塗布が好ましい。任意の公知のスプレー技術(例えば、圧縮空気スプレー、静電スプレー、および手動方法または自動方法のいずれか)が用いられ得る。
【0179】
クリアコート組成物がベースコートに塗布された後、コーティングされた基材は、コーティング層(単数または複数)を硬化するために加熱され得る。硬化の実施において、溶媒は除去され、そしてこの組成物中のフィルム形成物質は架橋される。加熱または硬化の実施は通常、160〜250°F(71〜177℃)の範囲の温度で行われるが、必要ならば、それより高いかまたは低い温度が、架橋機構を活性化するために、必要に応じて使用され得る。
【0180】
本発明は、以下の実施例においてより詳細に説明され、これらの実施例は、そこにおける多数の改変および変更が当業者に明らかであるため、例示のみであることを意図する。他に記載しない限り、全ての部およびパーセントは重量による。
【0181】
(合成比較例AおよびEならびに合成実施例B〜DおよびF〜H)
合成比較例Aおよび合成実施例B〜Dは、ヒドロキシル官能性ポリマーの調製を記載する。これらのポリマーをカルバミル化し、比較例Eおよび実施例F〜Hのカルバメート官能性ポリマーを形成する。比較例Eおよび実施例F〜Hのカルバメート官能性ポリマーは、比較例1および実施例2〜4のコーティング組成物において使用される。比較例Eのカルバメート官能性ポリマーは、非リビングラジカル重合によって調製される比較ポリマーである。実施例F〜Hのカルバメート官能性ポリマーは、本発明の熱硬化性コーティング組成物において有用なポリマーの代表である。
【0182】
合成比較例Aおよび合成実施例B〜Dにおいて、以下のモノマーの略語が使用される:イソブチルメタクリレート(IBMA);およびヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)。合成比較例Aおよび合成実施例B〜Dの各ポリマーを、モノマーの全重量を基準にして、60重量%のIBMAモノマーおよび40重量%のHPMAモノマーから構成されるモノマーから調製した。各実施例B〜Dに示されるブロックコポリマー構造は、代表的なブロックコポリマーの一般式である。
【0183】
(比較例A)
ヒドロキシル官能性ポリマーを、表Aにおいて列挙した成分から、標準的な(すなわち、非制御あるいは非リビング)ラジカル重合によって調製した。
【0184】
【表1】

(a)2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)開始剤(E.I.du Pont de Nemours and Companyから購入)。
【0185】
充填物1を、2リットルの丸底フラスコ中で、窒素ブランケット下、大気圧で、還流温度まで加熱した。このフラスコは、ロータリーブレードアジテーター、還流凝縮器、温度計、ならびに温度コントローラを通るフィードバックループにおいて共に連結される加熱マントル、窒素入口ポート、ならびに2つの添加ポートを備えていた。還流条件下の間、充填物2を、上記のフラスコへ、3時間にわたって供給した。充填物2の添加が完了すると、フラスコの内容物をさらに1時間還流を維持した。このフラスコの内容物を、次いで、100℃まで冷却し、充填物3を10分かけて添加し、続いて、100℃で2時間維持した。フラスコの内容物を冷却し、そして適切な容器に移した。得られたヒドロキシル官能性ポリマーは、49%の全固体を有した。
【0186】
(実施例B)
ヒドロキシル官能性ジブロックコポリマーを、表Bにおいて列挙した成分から、原子移動ラジカル重合によって調製した。この実施例のヒドロキシル官能性ブロックコポリマーは、以下のように図式で要約する:
(IBMA)−(HPMA)
【0187】
【表2】

(b)臭化銅(II)は、フレークの形態であり、Aldrich Chemical Companyから得た。
(c)銅粉末は、25ミクロンの平均粒子サイズ、1g/cmの密度を有し、OMG Americasから購入した。
【0188】
充填物1を、2リットル4口フラスコ中で、50℃まで加熱し、そしてこの温度で1時間維持し、このフラスコは、モータ駆動ステンレス鋼攪拌ブレード、水冷式凝縮器、ならびに温度フィードバック制御デバイスによって接続された加熱マントルおよび温度計を備えていた。このフラスコの内容物を、25℃まで冷却し、そして充填物2を10分間にわたって添加した。次いで、充填物3を、15分間にわたって添加し、続いて30℃で3時間維持した。この3時間の維持が完了すると、充填物4を、15分間にわたって添加し、続いて80℃で2時間維持した。2時間の維持が完了すると、400gのキシレンおよび100のMAGNESOR合成ケイ酸マグネシウム(The Dallas of Americaから購入)を、このフラスコに添加し、続いて、70℃で30分間混合した。フラスコの内容物を濾過し、そして濾過した樹脂を、全固体が、全重量を基準にして70重量%になるまで真空スプリップした。
【0189】
(実施例C)
ヒドロキシル官能性トリブロックコポリマーを、表Cにおいて列挙した成分から、原子移動ラジカル重合によって調製した。この実施例のヒドロキシル官能性ブロックコポリマーを、以下のように図式で要約する:
(HPMA,IBMA)−(IBMA)−(HPMA)
【0190】
【表3】

(b)臭化銅(II)は、フレークの形態であり、Aldrich Chemical Companyから得た。
(c)銅粉末は、25ミクロンの平均粒子サイズ、1g/cmの密度を有し、OMG Americasから購入した。
【0191】
充填物1を、2リットル4つ口フラスコ中で、50℃まで加熱し、そしてこの温度で1時間維持した。このフラスコは、モータ駆動ステンレス鋼攪拌ブレード、水冷式凝縮器、ならびに温度フィードバック制御デバイスによって接続された加熱マントルおよび温度計を備えていた。このフラスコの内容物を、25℃まで冷却し、そして充填物2を10分間にわたって添加した。次いで、充填物3を、15分間にわたって添加し、続いて、フラスコの内容物を80℃まで加熱し、そしてこの温度で3時間維持した。この3時間の維持が完了すると、次いで、充填物4を15分間にわたって添加し、続いて80℃で2時間維持した。この2時間の維持が完了すると、400gのキシレンおよび100gのMAGNESOL合成ケイ酸マグネシウム(The Dallas Group of Americaから購入)を、このフラスコに添加し、続いて、70℃で30分間混合した。フラスコの内容物を濾過し、そして濾過した樹脂を、全固体が、全重量を基準にして70重量%になるまで真空スプリップした。
【0192】
(実施例D)
本発明の熱硬化性組成物に有用な、ヒドロキシル官能性トリブロックコポリマーを、原子移動ラジカル重合によって、表Dに列挙する成分から調製した。この実施例のヒドロキシル官能性ブロックコポリマーを、以下のように図式で要約する:
(IBMA)−(HPMA)−(IBMA)
【0193】
【表4】

充填物1を、実施例Bに記載のように装着された2リットルの4つ口フラスコ中で70℃に加熱して、この温度で1時間維持した。このフラスコの内容物を25℃まで冷却し、そして充填物2を10分間にわたって添加し、続いて、充填物3を15分間にわたって添加した。充填物3の添加が完了してすぐに、フラスコの内容物を80℃まで加熱して、この温度で2時間維持した。この2時間の維持が完了すると、フラスコの内容物を70℃まで冷却し、そして充填物4を15分間にわたって添加し、続いて、70℃で2時間維持した。次に、フラスコの内容物を80℃まで加熱し、そして充填物5を15分間にわたって添加し、続いて、80℃で2時間維持した。この2時間の維持が完了すると、200gのキシレンおよび100gのMAGNESOL合成ケイ酸マグネシウム(The Dallas Group of Americaから購入)を、このフラスコに添加し、続いて、70℃で30分間混合した。フラスコの内容物を濾過し、そして濾過した樹脂を、全固体が、全重量を基準にして70重量%になるまで真空ストリップした。
【0194】
【表5】

(d)DOWANOL PM溶媒(Dow Chemical Company製のメチル2−ヒドロキシプロピルエーテル)とウレアとの反応生成物。この反応は、過剰のDOWANOL PM溶媒中、窒素流下、ブチルスズ酸およびトリフェニルホスファイトの存在下、120℃〜140℃の温度で、8〜12時間にわたって実施した。気体アンモニアがこの反応の過程で形成されるため、これを、窒素流によってこの反応容器から除去した。反応生成物は、全重量を基準にして、39重量%の固体を有した。
(e)DOWANOL PM溶媒−メチル2−ヒドロキシプロピルエーテル、Dow Chemical Companyから購入。
【0195】
比較例Eおよび実施例F〜Hのカルバメート官能性ポリマーの各々を、以下の方法に従って調製した。モータ駆動ステンレス鋼攪拌ブレード、真空ポンプおよびドライアイス、アセトン浴中の丸底フラスコに連結された水冷式凝縮器、ならびに温度フィードバック制御デバイスによって接続された加熱マントルおよび温度計を備えた4つ口丸底フラスコを、室温および周囲圧で10分間、窒素でスパージ(sparge)した。充填物1をこのフラスコに添加し、40℃まで加熱し、そして溶媒を真空ストリップした。真空を解除し、そして充填物2を、大気圧で、このフラスコのストリップした内容物に添加し、続いて140℃まで加熱した。フラスコの内容物を140℃に維持しながら、充填物3を、381mmHgの(15インチHg)の同時に真空に引きながら、2時間にわたって、ゆっくりと添加した。この充填物3の添加が完了すると、フラスコの内容物で引かれた真空を381mmHgから686mmHg(27インチHg)に上げ、蒸留がやむことが観察されるまでこの圧力を維持した。この真空を解除し、フラスコの内容物を90℃まで冷却し、そして充填物4を添加した。比較例Eおよび実施例F〜Hのカルバメート官能性ポリマーの物理的特性を測定し、表2にまとめる。
【0196】
【表6】

(f)数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン標準を使用して、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定した。
(g)全重量を基準にした%重量固体は、0.2gのサンプルから、110℃/1時間で測定した。
【0197】
(比較例1および実施例2〜4のコーティング組成物)
実施例2、3および4は、本発明に従う代表的な熱硬化性コーティング組成物であり、一方、比較例1のコーティング組成物は比較例である。これらのコーティング組成物を、表3に列挙される成分から調製した。
【0198】
【表7】

(h)Cytec Industriesから購入したCYMEL 1130メラミン架橋剤。
(i)ポリ(ブチルアクリレート)フロー添加剤は、全重量を基準にして、キシレン中60重量%の固体であり、Mn=6700およびMw=2600を有する。
(j)ドデシルベンゼンスルホン酸。
(k)Ciba−Geigy Corp.から購入したTINUVIN 328紫外線安定剤。この会社は、これが2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tertアミルフェニル]−2−H−ベンゾトリアゾールであると記載する。
【0199】
比較例1および実施例2〜4のコーティング組成物の成分を、それぞれ、適切な容器中で十分混合する。液体コーティング組成物の物理的特性を測定し、その結果を表4にまとめる。まず、試験パネルを白色ベースコート(DCT−6640 白色ベースコート、PPG Industries,Incから購入)でコーティングし、これを93℃で5分間乾燥した。比較例1および実施例2〜4の液体コーティング組成物を、この白色ベースコーティングされた試験パネルに塗布し、そして141℃で30分間硬化した。この硬化したコーティングの物理的特性を測定し、その結果を表5にまとめる。
【0200】
【表8】

(l)コーティング組成物の%重量固体は、100℃で60分間測定した。
(m)粘度は、液体コーティング組成物が、充填されたNumber 4 Ford Cup(Gardner Labから市販される)からドレイン(drain)するのにかかる時間を測定することによって決定した。
【0201】
【表9】

(n)メーカーの提案した操作方法に従って、BYK Gardner Haze−Gloss Meterを使用して、20°光沢値を得た。
(o)硬化コーティングの画像の明瞭さ(DOI)の値を、メーカーが提案した操作方法に従って、DORIGON II DOIメーターを使用して得た。より大きなDOI値は、より滑らかなコーティングを表す。
(p)硬化したコーティングのヌープ硬度を、American Standard Test Method(ASTM) D 1474−92に従って、Tukon Microhardness Tester Model 300(Wilson Instruments,Division of Instron Corporation製)を使用して、測定した。この微小硬度テスターを、インデンター(indentor)で25g重で作動させた。より大きいヌープ硬度値はより硬いコーティングを表す。10以上のヌープ硬度値が一般に、所望であると考えられる。(q)硬化フィルムの鉛筆硬度を、軟らかい芯を有する鉛筆からより硬い芯を有する鉛筆にして、一連の鉛筆を用いるフィルム表面のスクラッチを試みることによって手動で測定する。最も軟らかい〜最も硬い鉛筆硬度系列は、4B、3B、2B、B、F、HB、H、2H、3H、4H、5Hである。表5に列挙された鉛筆硬度は、溶媒処理したフィルム表面をスクラッチしなかった、最も硬い鉛筆の硬度である。
(r)約1〜1.5cmの直径を有するキシレン滴を、3分間硬化フィルムの表面にのせた。キシレン滴をこのフィルムからふき取り、そしてこの滴があったフィルムの鉛筆硬度を、前述のように測定した。
【0202】
表5にまとめられた結果は、本発明に従う熱硬化性コーティング組成物(すなわち、実施例2、3および4)が、比較組成物(すなわち、比較例1)から得られた特性と同様の特性を有する硬化コーティングを提供することを示す。さらに、表4にまとめられた結果は、同じ粘度において、本発明に従う液体コーティング組成物(すなわち、実施例2、3および4)が、比較液体コーティング組成物(比較例1)より高い%重量固体を有することを示す。
【0203】
本発明を、その特定の実施態様の具体的な詳細を参照して記載した。このような詳細が、添付の特許請求の範囲に含まれる限りを除き、そして特許請求の範囲に含まれる程度までを除き、本発明の範囲の限定であるとみなされることは、意図されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性組成物であって、該組成物が、以下:
(a)カルバメートと反応性である少なくとも2つの官能基を有する架橋剤;および
(b)少なくとも1つのラジカル移動可能基を有する開始剤の存在下で、原子移動ラジカル重合によって調製される非ゲル化カルバメート官能性ポリマーであって、ここで該ポリマーは、2.0未満の多分散性指数を有し、そして以下のポリマー鎖構造のうちの少なくとも1つを含み:
−[(M)−(G)
または
−[(G)−(M)
ここで、Mは、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーの、カルバメート官能基を含まない残基であり;Gは、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーの、以下の構造のペンダントカルバメート官能基を有する残基であり:
【化1】

ここで、Rは、水素、または1〜10個の炭素原子を有する1価のアルキル基、もしくは6〜10個の炭素原子を有するアリール基であり;pおよびqは、各ポリマー鎖構造中の残基の1ブロックに存在する残基の平均数を表し;そしてp、qおよびxはそれぞれ独立して、各構造について、該カルバメート官能性ポリマーが、少なくとも250の数平均分子量を有するように選択される、カルバメート官能性ポリマー、を含む、組成物。

【公開番号】特開2007−70639(P2007−70639A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293357(P2006−293357)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【分割の表示】特願2004−278575(P2004−278575)の分割
【原出願日】平成11年8月30日(1999.8.30)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】