説明

原料混合装置、混合物製造システム、及び混合物の製造方法

【課題】流体の原料をより十分に混合できる装置及び方法を提供すること。
【解決手段】流体である原料を混合する装置20は、対向配置された一対の回転板32,35を備え、一対の回転板32,35の対向する側の面には、回転中心を中心にして円状かつ回転板32,35の径方向に関して互いに異なる位置に凸部33,36が設けられ、凸部33,36同士の間に介在する隙間45が回転板32,35の外部へと連通する混合部と、一対の回転板32,35を互いに反対方向に回転させるモータ50a,50bと、を備え、隙間45へと供給された原料が、隙間45を通過することで混合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体である原料を混合して、混合物を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体の原料を混合する装置は、対向配置された一対の回転板を備え、回転板同士の隙間に原料を供給しながら、回転板を一体的に回転させる。これにより、隙間を原料が通過し、混合物が製造される。また、混合効率を向上するため、回転板の対向する面に凹凸を設け、隙間を複雑な形状とした装置が種々提案されている(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−114396号公報
【特許文献2】特開2001−321651号公報
【特許文献3】特開2010−99574号公報
【特許文献4】特開平2010−260031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の装置では、隙間が複雑な形状であっても、回転板の外方への遠心力が負荷される原料は、ショートカットした単純な経路で隙間を通過してしまい、十分な混合を実現することが困難である。
【0005】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、流体の原料をより十分に混合できる装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、回転板を互いに反対方向に回転させることで、原料の流れが複雑化し、原料が隙間を通過しにくくなることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0007】
(1) 流体である原料を混合する装置であって、
対向配置された一対の回転板を備え、前記一対の回転板の対向する側の面には、回転中心を中心にして円状かつ前記回転板の径方向に関して互いに異なる位置に凸部が設けられ、前記凸部同士の間に介在する隙間が前記回転板の外部へと連通する混合手段と、
前記一対の回転板を互いに反対方向に回転させる回転手段と、を備え、
前記隙間へと供給された前記原料が、前記隙間を通過することで混合される装置。
【0008】
(2) 一対の回転板の凸部は、前記回転板の径方向に関し、交互に配置される(1)記載の装置。
【0009】
(3) 前記回転手段は、前記一対の回転板の各々の回転速度を独立して調節する調節手段を有する(1)又は(2)記載の装置。
【0010】
(4) 前記隙間は、前記回転板の径方向に関して異なる2箇所以上において、前記回転板の外部へと連通する(1)から(3)いずれか記載の装置。
【0011】
(5) 前記凸部は、前記回転中心を中心とする円弧の接線方向に角度をなして設けられている(1)から(4)いずれか記載の装置。
【0012】
(6) (1)から(5)いずれか記載の装置と、前記隙間へと前記原料を供給する供給手段と、前記隙間から前記原料が混合された混合物を回収する回収手段と、を備える混合物製造システム。
【0013】
(7) 前記供給手段は、前記回転板の少なくとも一方の回転軸の内部に設けられ、前記原料が流通する1以上の供給路を有する(6)記載の混合物製造システム。
【0014】
(8) 前記回収手段は、前記回転板を包囲する筐体と、前記隙間から前記筐体へと放出された混合物を回収する回収路と、を有する(6)又は(7)記載の混合物製造システム。
【0015】
(9) 流体である原料を混合して混合物を製造する方法であって、
(6)から(8)いずれか記載の混合物製造システムを用い、
前記一対の回転板を互いに反対方向に回転させた状態で、前記隙間へと前記原料を供給し、前記隙間を通過させることで混合させ、
生成された混合物を前記隙間から回収する工程を有する方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一対の回転板を互いに反対方向に回転させるので、原料の流れが複雑になり、原料は、凸部同士の間に介在する複雑な隙間を十分に通過した後に、回転板の外部へと放出される。このため、流体の原料をより十分に混合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る混合物製造システムの概略構成図である。
【図2】図1の混合物製造システムが備える原料混合装置の要部拡大図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】図2における一方の回転板の平面図である。
【図5】図2における他方の回転板の平面図である。
【図6】図2における回転板の回転状況と、原料の流れのイメージを示す図である。
【図7】本発明の別の実施形態に係る原料混合装置が有する回転板の凸部の配置を示す図である。
【図8】図6の回転板を回転させたときの原料の流れのイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、第1実施形態以外の各実施形態の説明において、第1実施形態と共通するものについては、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る混合物製造システム10の概略構成図である。システム10は、原料混合装置20、混合手段としての混合部、供給手段としての供給部40、回収手段としての回収部を備える。以下、各要素の詳細を説明する。
【0020】
図2は、図1の混合物製造システム10が備える原料混合装置20の要部拡大図であり、図3は図2のα部分の拡大図である。図4及び5は、図2における回転板32,35の平面図である。混合部は、対向配置された一対の回転板32,35を備え、一対の回転板32,35の対向する側の面には凸部33,36が設けられている。
【0021】
回転板32,35の略中央には、回転軸31,34が回転板32,35の平面方向に略直交して設けられ、後述の駆動源としてのモータ50a,50bにより回転軸31,34が回転させられることで、回転板32,35が回転する。凸部33,36は、回転中心を中心にして円状(図4及び5)、かつ回転板32,35の径方向(図2における左右方向)に関して互いに異なる位置に設けられ、凸部33,36同士の間に介在する隙間45が回転板32,35の外部へと連通する。
【0022】
前述のように、回転軸31,34にはモータ50a,50bが設けられており、モータ50a,50bは、回転軸31,34を介して一対の回転板32,35を互いに反対方向に回転させる。なお、図1では、モータ50a,50bが回転軸31,34に直接設けられているが、これに限られず、ベルト及びプーリ等を介して間接的に設けられてもよい。また、回転板32,35を反対方向に回転できる限りにおいて、モータの数は単数であってもよい。
【0023】
回転板32,35の回転方向は、一定であっても、可変であってもよい。前者は回転手段の構成を簡素化できる点で好ましく、後者は後述の原料の流れをより複雑化できる点で好ましい。なお、回転板32,35の回転方向が反対であることは、常に継続されることが好ましいが、そのような期間が部分的にでも存在すればよい。
【0024】
本実施形態において、回転軸31,34の内部に、供給路411,413,43が設けられており、後述の供給部からの原料が流通する。なお、本実施形態では、供給路の数が3つであるが、これに限定されるものではない。また、供給路は回転軸とは別体としてもよく、また、すべての供給部が回転軸の内部に設けられていなくてもよいが、本実施形態は構成が簡素である点で有利である。本実施形態における供給路411,413は、回転軸31の内部に位置する内管41により、回転軸31の内部空間が仕切られることで形成されている。これにより、供給路を構成する部材が共通化するため、構成を更に簡素化することができる。
【0025】
また、筐体21の内部は、激しい混合が行われるため、温度が上昇しやすい。このため、温度上昇による悪影響(例えば、原料の変質)を抑制する観点で、筐体21を冷却する冷却手段を設けてもよい。冷却手段の具体的構造は特に限定されないが、例えば、筐体21の外面に、冷却水が内通するジャケットを取り付けることができる。
【0026】
供給部40は、第1供給部415、第2供給部418、第3供給部46を備え、これらの各々には、流体の原料が収容されている。第1供給部415、第2供給部418、第3供給部46には、第1流通路412、第2流通路416、第3流通路44がそれぞれ設けられ、これらの流通路は供給路411,413,43へと接続され、最終的に隙間45へと連通される。第1流通路412、第2流通路416、第3流通路44の途中には第1ポンプ414、第2ポンプ417、第3ポンプ441が設けられており、それらの出力に応じた量の原料が隙間45へと供給される。なお、第1流通路412、第2流通路416、第3流通路44と、供給路411,413,43との接続構造は適宜選択すればよく、詳細な説明を省略する。
【0027】
回収部は、回転板32,35を包囲する筐体21と、この筐体21から延出する回収路48とを有する。供給路411,413,43から隙間へと供給された原料は、隙間45を通過することで混合物になった後、回転板32,35の外部へと放出される。放出された混合物は筐体21に収容され、回収路48から筐体21の外部へと回収されていく。なお、本実施形態での筐体21と回転軸31,34とは、ベアリング23,25を介して密接されており、これにより、回転軸31,34を回転させることができる。
【0028】
より正確には、図3に示されるように、筐体21と回転軸31との間には、シール24が介在し、これにより、筐体21の内部空間の気密性が保たれている。そして、シール24よりも筐体21の内側の箇所において、外部から誘導路49が連通しており、この誘導路49から流体が筐体21の内部空間へと導入される。すると、この流体が筐体21と回転板32との間に蓄積されようとする混合物を押し出し、回収路48への侵入を促進する。これにより、混合物の回収率、及び回収(特に粉体を含むペースト)の筐体21内部での堆積を予防することができる。誘導路49から導入する流体としては、混合物を変質させない液体(例えば、無反応性液体、原料の一部を構成する液体)が好ましい。なお、図3には、筐体21と回転軸31との境界のみ示したが、筐体21と回転軸34との境界も同様の構造であることが好ましい。
【0029】
図6は、回転板32,35の回転状況と、原料の流れのイメージを示す図である。停止状態にある回転板32,35(図6(A))が回転すると、隙間45に供給された原料が、回転する凸部33,36により動かされ、遠心力によって外方へと付勢される。このとき、本発明での回転板32,35は反対方向に回転するため、外方へと動こうとする原料は凸部33,36に繰り返し激しく衝突し、原料の流れが複雑になる(図6(B))。これにより、原料は、複雑な隙間45を十分に通過した後に、回転板32,35の外部へと放出されるので、原料をより十分に混合することができる。
【0030】
図2に戻って、凸部33,36は、回転板32,35の径方向に関し、交互に配置される。これにより、いずれの凸部33,36の間も狭まるため、原料の混合効率を更に向上することができる。ただし、求められる混合効率によっては、凸部33,36が交互に配置されていなくても足りる。
【0031】
本実施形態における隙間45は、回転板32,35の回転中心(411、413)、外縁、及びその間(43)において、回転板32,35の外部へ連通している。このように、隙間は、回転板の径方向に関して異なる2箇所以上において、回転板の外部へと連通することが好ましい。これにより、隙間に供給された原料が、隙間から放出される前に、十分な距離に亘って通過するため、混合効率をより向上することができる。つまり、回転板の径方向に関して同じ箇所において連通した場合、回転板の回転に伴ってその回転方向に移動させられた原料が、すぐに回転板から放出されてしまう。また、原料の混合を、前後に分けて順次行いたい場合には、原料の供給路が隙間へ連通する箇所を回転板の径方向に関して互いに異ならせればよく、同時に行いたい場合には、原料の供給路が隙間へ連通する箇所を回転板の径方向に関して略同じにすればよい。
【0032】
本実施形態における原料混合装置20は、一対の回転板32,35の各々の回転速度を独立して調節する調節手段(図示せず)を有することが好ましい。これにより、凸部33,36の数、形状、配置等に応じて、混合を適度に行うことができる。例えば、凸部の数が少なかったり、凸部が回転板の径方向に関して内側に配置されていたり、凸部の形状が滑らかであったりする場合、その凸部が設けられた回転板は高速で回転させることが好ましい。他方、凸部の数が多かったり、凸部が回転板の径方向に関して外側に配置されていたり、凸部の形状が角部を有したりする場合、その凸部が設けられた回転板は高速で回転させることが好ましい。
【0033】
本実施形態における凸部33,36の形状は、円柱である。このような凹部を有しない形状(例えば、円柱、楕円柱)の場合、原料が凸部33,36の外周全体を滑らかに流れるため、凸部33,36への原料の付着が抑制されやすい。ただし、凸部33,36の形状はこれに限られず、矩形柱等の任意の形状であってよい。
【0034】
図7は別の実施形態における回転板の凸部33A,36Aの配置を示す図であり、図8は回転板32Aを回転させたときの原料の流れのイメージを示す図である。この実施形態において、凸部33A,36Aは、回転中心を中心とする円弧の接線方向に角度をなして設けられている。これにより、原料が凸部33A,36Aに衝突すると、回転板の径方向内側へと跳ね返されるため、原料の隙間45内での滞留をより延長することができる。
【0035】
また、本実施形態における凸部33,36は、回転板32,35の径方向に関し異なる箇所に、同じ個数で同心円状に配置されているが、これに限られない。例えば、径方向に関して外方の箇所では凸部の数を増し、内方の箇所では凸部の数を減らしてもよい。これにより、凸部同士の間隔が均等化し、原料の隙間45内での滞留をより延長することができる。
【0036】
本発明は、上記の混合物製造システムを用いた混合物の製造方法も包含する。この方法は、一対の回転板32,35を互いに反対方向に回転させた状態で、隙間45へと原料を供給し、隙間45を通過させることで混合させ、生成された混合物を隙間45から回収する工程を有する。これにより、原料の流れが複雑になり、原料は、凸部33,36同士の間に介在する複雑な隙間45を十分に通過した後に、回転板32,35の外部へと放出される。このため、流体の原料をより十分に混合することができる。
【0037】
本発明において、流体とは粉体又は液体を指し、供給される原料はいずれも異なるのが一般的であるが、同じであってもよい。例えば、粉体は、リチウムイオン電池の電極材料等の無機質の粉体である。この粉体は凝集して粒子径が大きくなりやすく、粒子径を均一化させるために細化状態で混合物中に存在させる必要がある。液体は、樹脂製のポリマー、水、溶剤等である。この液体は粉体を繋ぐ役割を有し、紛体の分散を促進させる分散剤や不粘着化剤等を含んでもよい。粉体が油性物であり、液体が水であってもよく、この場合には、混合物に含まれる油性物が微細化されて乳化する。また、他の例として、混合物がアクリル及びウレタンから構成されるハイブリッド・ポリマーであってもよい。
【0038】
製造した混合物は、そのまま利用してもよく、更なる加工(例えば混合)を行った後に利用してもよい。
【0039】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0040】
10 混合物製造システム
20 原料混合装置
21 筐体
23,25 ベアリング
24 シール
31,34 回転軸
32,35 回転板
33,36 凸部
40 供給部(供給手段)
41 内管
411,413,43 供給路
412 第1流通路
414 第1ポンプ
415 第2供給部
416 第2流通路
417 第2ポンプ
418 第3供給部
44 第3流通路
45 隙間
441 第3ポンプ
46 第3供給部
47 吸気路
48 回収路
49 誘導路
50 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体である原料を混合する装置であって、
対向配置された一対の回転板を備え、前記一対の回転板の対向する側の面には、回転中心を中心にして円状かつ前記回転板の径方向に関して互いに異なる位置に凸部が設けられ、前記凸部同士の間に介在する隙間が前記回転板の外部へと連通する混合手段と、
前記一対の回転板を互いに反対方向に回転させる回転手段と、を備え、
前記隙間へと供給された前記原料が、前記隙間を通過することで混合される装置。
【請求項2】
一対の回転板の凸部は、前記回転板の径方向に関し、交互に配置される請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記回転手段は、前記一対の回転板の各々の回転速度を独立して調節する調節手段を有する請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記隙間は、前記回転板の径方向に関して異なる2箇所以上において、前記回転板の外部へと連通する請求項1から3いずれか記載の装置。
【請求項5】
前記凸部は、前記回転中心を中心とする円弧の接線方向に角度をなして設けられている請求項1から4いずれか記載の装置。
【請求項6】
請求項1から5いずれか記載の装置と、前記隙間へと前記原料を供給する供給手段と、前記隙間から前記原料が混合された混合物を回収する回収手段と、を備える混合物製造システム。
【請求項7】
前記供給手段は、前記回転板の少なくとも一方の回転軸の内部に設けられ、前記原料が流通する1以上の供給路を有する請求項6記載の混合物製造システム。
【請求項8】
前記回収手段は、前記回転板を包囲する筐体と、前記隙間から前記筐体へと放出された混合物を回収する回収路と、を有する請求項6又は7記載の混合物製造システム。
【請求項9】
流体である原料を混合して混合物を製造する方法であって、
請求項6から8いずれか記載の混合物製造システムを用い、
前記一対の回転板を互いに反対方向に回転させた状態で、前記隙間へと前記原料を供給し、前記隙間を通過させることで混合させ、
生成された混合物を前記隙間から回収する工程を有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−187474(P2012−187474A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51760(P2011−51760)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000251211)冷化工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】