説明

原盤露光装置

【課題】トラックピッチ及び溝形状が異なる複数の記録領域を有する情報記録媒体において、安定したフォーカスサーボ及びトラッキングサーボを実現する。
【解決手段】凹凸パターンにより形成された記録トラックが、第一及び第二の記録領域R1,R2と、この領域間に配置された記録領域遷移区間Sxとを備え、R1におけるトラックピッチtp1、溝幅w1、及び溝深さd1並びにR2におけるトラックピッチtp2、溝幅w2、及び溝深さd2が式(1)と式(2)及び/又は式(3)とを満たし、0<|tp1−tp2|(1)、0<|w1−w2|(2)、0<|d1−d2|(3)、Sxが、トラックピッチがtp1からtp2へと遷移するトラックピッチ遷移区間Stpと、溝幅がw1からw2へと、及び/又は、溝深さがd1からd2へと遷移する溝形状遷移区間Sgとを備え、StpとSgとが少なくとも一部の領域SLを共有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばBlu−rayディスク等の情報記録媒体と、その情報記録媒体を製造するための原盤露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
Blu−rayディスク等の情報記録媒体では、基板上に記録層が形成され、レーザー光を記録層に集光させることでデータの書き込みあるいは読み取りができるようになっている。
また、媒体上にはトラックが螺旋状に形成されてなり、データの読み書きは、情報記録媒体をスピンドルモーターなどに載置回転させつつ、トラックに沿ってレーザー光を集光することによって実行される。
【0003】
トラックは、基板上に物理的に刻設された溝やピットによって具現化されている。例えば記録型Blu−rayディスクにおいては、トラックは溝によって具現化されている。また、例えば再生専用型Blu−rayディスクにおいては、トラックはピットによって具現化されている。
【0004】
ここで、溝とは、情報記録媒体の周方向に物理的に連続して形成された凹凸パターンのことである。また、ピットとは、情報記録媒体の周方向に断続して形成された凹凸パターンのことであり、多数個のピットが情報記録媒体の周方向に並ぶことにより、一つのトラックを構成している。
【0005】
なお、情報記録媒体の種類によっては、同一の情報記録媒体上に溝及びピットの両方が、それぞれ所定の領域内で刻設されてなるものもある。すなわち、例えば溝のみが刻設された領域を記録可能な領域として用い、ピットのみが刻設された領域を再生専用領域として用いる等の場合がある。
【0006】
一方、記録型Blu−rayディスクの場合、情報記録媒体の最適記録パワーやメディア製造者情報等が、コントロールデータとして予め情報記録媒体上に記録されている(コントロールデータが記録された領域を「コントロールデータ領域」という。後述するように「PIC領域」という場合もある。)。コントロールデータの記録は、ユーザーデータ領域とは異なる変調方式によって溝を蛇行させることによりなされている。
【0007】
ここで、蛇行とは、溝を所定の振幅及びパターンで情報記録媒体の半径方向に微小に変位させることによって実現されるものである。また、変調方式とは、予め記録しておきたいデータを所定の蛇行パターンに変換するための変換方式のことである。なお、以下の記載では、簡便のため、「溝の蛇行に用いられる変調方法」のことを、単に「ウォブル変調方式」と記述することとする。
【0008】
更に、記録型Blu−rayディスクにおいては、ドライブによるコントロールデータの読み取りをより確実なものとするため、コントロールデータ領域のトラックピッチを、ユーザーデータ領域のトラックピッチよりも大きくするように形成されている。
【0009】
ここでトラックピッチとは、情報記録媒体を半径方向に見たときの隣接する二つのトラックの中心間距離のことである。上述したように、記録型Blu−rayディスクにおいては、溝が情報記録媒体の半径方向に微小量蛇行させられているが、トラックピッチの値を議論する際には、溝の蛇行は考慮に入れない。従って、トラックピッチは、情報記録媒体を半径方向に見たときの溝間の平均的な距離に等しい。
一方、情報記録媒体に照射されたレーザー光については、その一部が反射され、反射光は、例えば二分割フォトディテクターなどで受光される。
【0010】
図15(a)〜(c)はそれぞれ、規格化プッシュプル信号振幅(トラックに沿った方向に検出面が分割された二分割フォトディテクターの各々の出力の差を、各々の出力の和で除算した信号の振幅)と、トラックピッチ、溝幅、及び溝深さとの相関関係を表わすグラフである。
【0011】
図15(a)〜(c)のグラフから分かるように、例えば記録型Blu−rayディスクの場合、コントロールデータ領域のトラックピッチは、ユーザーデータ領域のトラックピッチよりも広いので、コントロールデータ領域とユーザーデータ領域の溝形状が略同一の場合、コントロールデータ領域から得られる規格化プッシュプル信号振幅は、ユーザーデータ領域から得られる規格化プッシュプル信号振幅よりも大きくなる。また、規格化プッシュプル信号振幅の大きさが、溝幅及び溝深さによって変化することも知られている。
【0012】
一方、レーザー光を集光するための対物レンズを搭載したピックアップは、規格化プッシュプル信号を基にしてトラックに追随していく(以下、トラックに追随して動作することを「トラッキング」と呼び、トラッキングを実行する制御のことを「トラッキングサーボ」と呼ぶ。)。ピックアップは、通常、規格化プッシュプル信号振幅がある所定の範囲内であることを前提として設計される。言い換えると、規格化プッシュプル信号振幅が所定の範囲内である時に、初めて安定したトラッキングサーボを実現できることになる。
【0013】
例えば、規格化プッシュプル信号振幅が所定の範囲内の値よりも小さい場合、安定したトラッキングサーボを実現するための十分な信号振幅が得られず、トラッキングサーボ不良を引き起こすという悪影響が出る。
また、例えば、規格化プッシュプル信号振幅が所定の範囲内の値よりも大きい場合、必要以上の信号振幅がトラッキングサーボ回路に入力され、その結果サーボ系が発振する、といった悪影響が出る。
【0014】
更に、規格化プッシュプル信号振幅が相対的に大き過ぎる場合、フォーカスサーボを行なう上で用いられるフォーカスエラー信号にプッシュプル信号(トラックに沿った方向に検出面が分割された二分割フォトディテクターの各々の出力の差信号)がノイズとして重畳してしまい、フォーカスが外れる等の課題を引き起こす可能性がある。
【0015】
なお、ピックアップの種類によっては、規格化プッシュプル信号以外の信号を用いてトラッキングを実行する場合も考えられるが、トラッキングの実行に用いられる信号振幅が所定の範囲内にあるときに初めて安定したトラッキングサーボを実現できるという点では同様に考えてよい。
【0016】
また、たとえ規格化プッシュプル信号振幅が所定の範囲内であっても、急激な規格化プッシュプル信号振幅の変化に対してはサーボ系のゲインコントロール回路が追従できず、トラッキングサーボ不良を引き起こすといったケースも起こり得る。従って、規格化プッシュプル信号振幅の変化をできるだけ小さくした方が、トラッキングサーボに関する不具合を起こす可能性が低くなる。
【0017】
上記のように、規格化プッシュプル信号振幅の急激な変化はトラッキングサーボ或いはフォーカスサーボに悪影響を及ぼすので、例えばコントロールデータ領域とユーザーデータ領域との溝形状を異ならせることによって、コントロールデータ領域とユーザーデータ領域との規格化プッシュプル信号振幅の差を小さくすればよいことが知られている。
【0018】
なお、一般的な情報記録媒体の製造方法によれば、原盤露光装置における露光パワーを領域毎に変化させることによって、領域毎に溝形状を変化させることができる。
また、上記トラックピッチの異なる領域に対して安定したトラッキングサーボを実現するための提案として、トラックピッチの異なる領域同士を一つの螺旋状のトラックとして形成し、かつトラックピッチを徐々に変化させる遷移区間を設ける提案もなされている(特許文献1)。
【0019】
上記トラックピッチを徐々に変化させる遷移区間を設けるという技術は、例えば記録型Blu−rayディスクにおいて採用されている。この技術によれば、コントロールデータ領域とユーザーデータ領域とは連続した螺旋状のトラックとされ、両領域はトラックピッチを徐々に変化させたトラックピッチ遷移区間Stpを設けることによって接続されている。
【0020】
記録型Blu−rayディスクにおける、コントロールデータ領域、ユーザーデータ領域、及びトラックピッチ遷移区間Stpの配置について、図16を用いて説明する。なお、図16は、一般的な記録型Blu−rayディスクにおけるコントロールデータ領域、ユーザーデータ領域、及びトラックピッチ遷移区間Stpの配置を説明するための図である。
【0021】
図16に示すように、記録型Blu−rayディスクでは、コントロールデータ領域はユーザーデータ領域よりも内周側に設置され、コントロールデータ領域におけるトラックピッチは約0.35μmに、ユーザーデータ領域のトラックピッチは約0.32μmに、それぞれ設定される。
【0022】
更に、ユーザーデータ領域とコントロールデータ領域との間には、保護領域(Protection zone)が設けられており、トラックピッチ遷移区間Stpは、保護領域に完全に包含されるように形成される。
トラックピッチ遷移区間Stpよりも内周側に存在する保護領域(図16における内周側保護領域)のトラックピッチは、コントロールデータ領域のトラックピッチと同じ値に設定される。
一方、トラックピッチ遷移区間Stpよりも外周側に存在する保護領域(図16における外周側保護領域)のトラックピッチは、ユーザーデータ領域のトラックピッチと同じ値に設定される。
【0023】
更に、ウォブル変調方式は、コントロールデータ領域とユーザー領域とで異なった方式とされ、保護領域のウォブル変調方式はユーザーデータ領域のウォブル変調方式と同じものとされる。つまり、ウォブル変調方式は、保護領域とコントロールデータ領域との境界部において変化するように形成されている(特許文献2)。
【0024】
すなわち、保護領域とは、ウォブル変調方法及びトラックピッチが相異なる二領域の間に設けられ、一つの螺旋状のトラックとして形成された二領域を接続するために設けられた領域である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開2003−346384号公報
【特許文献2】特開2006−12355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明が解決しようとする課題について、Blu−rayディスクを例に挙げて説明する。
上述したように、Blu−rayディスクにおいては、コントロールデータ領域が、相対的に広いトラックピッチでユーザーデータ領域の内周側に設けられている。両者は連続したトラック上に設けられ、両者の間にはトラックピッチを徐々に変化させたトラックピッチ遷移区間Stpが設けられている。
また、コントロールデータ領域とユーザーデータ領域との規格化プッシュプル信号振幅の差を小さくするために、原盤露光装置において両領域の露光パワーをそれぞれ異ならせることによって、両記録領域の溝形状を互いに異ならせることができる。
【0027】
しかし、両記録領域の溝形状を異ならせると、異なった溝形状の接続部分において規格化プッシュプル信号振幅の不連続が発生し、ドライブの動作に必要なだけの大きさの規格化プッシュプル信号振幅が得られない、或いはトラッキングサーボやフォーカスサーボに支障をきたすほどの大きな規格化プッシュプル信号振幅が得られてしまう、等の不具合があった。
更に、規格化プッシュプル信号振幅が不連続であることにより、トラッキングサーボ系のゲインコントロール回路が追従しきれず、トラッキングサーボ不良を引き起こすという不具合もあった。
【0028】
このような不具合は、特に、記録層に有機色素材料を含んだ、イングルーブ型のLow−To−High記録型Blu−rayディスクにおいて顕著であった。ここで、イングルーブ型とは、凹凸パターンのうち、記録再生光が入射する側の記録媒体表面から遠い側の溝底部を記録トラックとするタイプのBlu−rayディスクのことである。また、Low−To−High記録型Blu−rayディスクとは、記録マーク部分の反射率が未記録部分の反射率よりも高い構成とされたBlu−rayディスクのことである。
【0029】
イングルーブ型のLow−To−High記録型Blu−rayディスクにおいては、ユーザーデータ領域において実用上十分な記録再生特性を得るために、記録前の規格化プッシュプル信号振幅をある程度大きくすることが望まれる。このため、記録前の状態においては、コントロールデータ領域とユーザーデータ領域における規格化プッシュプル信号振幅との差が大きくなり、両領域の接続部分における規格化プッシュプル信号振幅の不連続に起因するトラッキングサーボ不良等の不具合が出易くなるものと考えられる。
【0030】
本発明は、上記の課題を解決するべくなされたものである。即ち、本発明の目的は、トラックピッチ及び溝形状が異なる複数の記録領域を有する情報記録媒体であって、安定したフォーカスサーボ及びトラッキングサーボを実現することが可能な情報記録媒体と、この情報記録媒体を製造することが可能な原盤露光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、トラックピッチ及び溝形状が異なる複数の記録領域を有する情報記録媒体において、これらの記録領域間に、トラックピッチが遷移する区間と溝形状が遷移する区間とを有する遷移区間を設けるとともに、これらの区間が少なくとも一部領域を共有するようにすることにより、安定したフォーカスサーボ及びトラッキングサーボを実現することが可能となることを見出した。また、原盤露光装置に、記録光の強度を単調増加又は単調減少でスイープさせる機構、或いは、記録光強度を補間して調節する動作を100msec以下のサイクルで繰り返し行なう機構を設けることにより、このような情報記録媒体を製造することが可能となることを見出し、本発明者らは本発明を完成させた。
【0032】
即ち、本発明の要旨は、凹凸パターンにより形成された記録トラックを有する情報記録媒体において、該記録トラックが、第一の記録領域R1と、第二の記録領域R2と、第一の記録領域R1及び第二の記録領域R2の間に配置された記録領域遷移区間Sxとを少なくとも備え、第一の記録領域R1におけるトラックピッチtp1、溝幅w1、及び溝深さd1、並びに第二の記録領域R2におけるトラックピッチtp2、溝幅w2、及び溝深さd2が、下記式(1)と、下記の式(2)及び/又は式(3)とを満たし、
0 < |tp1−tp2| (1)
0 < |w1−w2| (2)
0 < |d1−d2| (3)
記録領域遷移区間Sxが、トラックピッチがtp1からtp2へと遷移するトラックピッチ遷移区間Stpと、溝幅がw1からw2へと遷移し、及び/又は、溝深さがd1からd2へと遷移する溝形状遷移区間Sgとを備え、トラックピッチ遷移区間Stpと溝形状遷移区間Sgとは、少なくとも一部の領域SLを共有していることを特徴とする、情報記録媒体に存する(請求項1)。
【0033】
ここで、第一の記録領域R1と、第二の記録領域R2と、記録領域遷移区間Sxとが、物理的に連続した溝によって形成されていることが好ましい(請求項2)。
【0034】
また、前記情報記録媒体が、有機色素を含む記録層を有することが好ましい(請求項3)。
【0035】
また、記録マーク部分における反射率が、未記録部分の反射率よりも高い構成とされることが好ましい(請求項4)。
【0036】
また、凹凸パターンのうち、記録再生光入射側の情報記録媒体の表面から遠い側の溝底部を記録トラックとすることが好ましい(請求項5)
【0037】
また、記録層の組成及び膜厚が、少なくとも、第一の記録領域R1と、第二の記録領域R2と、記録領域遷移区間Sxと、において同一であることが好ましい(請求項6)。
【0038】
また、ディスク状の情報記録媒体であって、溝形状遷移区間Sgのトラックに沿った長さLgが、ディスク状の情報記録媒体におけるトラック一周分以上であることが好ましい(請求項7)。
【0039】
また、溝形状遷移区間Sgにおける溝幅及び/又は溝深さが、トラックに沿って単調増加又は単調減少で変化していることが好ましい(請求項8)。
【0040】
また、トラックピッチ遷移区間Stpのトラックに沿った長さLtpと、トラックピッチ遷移区間Stpと溝形状遷移区間Sgとが共有する領域SLのトラックに沿った長さLLとが、下記の式(4)及び式(5)を満たすことが好ましい(請求項9)。
0.2 ≦ Lg/Ltp ≦ 2.5 (4)
0.1 ≦ LL/Ltp ≦ 1.0 (5)
【0041】
また、第一の記録領域R1及び第二の記録領域R2における、未記録状態での規格化プッシュプル信号振幅の最大値をNPPmaxとし、最小値をNPPminとした場合に、記録領域遷移区間Sx内の全領域において、規格化プッシュプル信号振幅NPPが以下の式を満たすことが好ましい(請求項10)。
NPPmin ≦ NPP ≦ NPPmax (6)
【0042】
また、第一の記録領域R1及び第二の記録領域R2における、未記録状態での溝部反射率の最大値をRgvmaxとし、最小値をRgvminとした場合に、記録領域遷移区間Sx内の全領域において、未記録状態での溝部反射率Rgvが以下の式を満たすことが好ましい(請求項11)。
Rgvmin ≦ Rgv ≦ Rgvmax (7)
【0043】
また、第一の記録領域R1が、第二の記録領域R2よりも内周側に配置され、かつ、第一の記録領域R1の内周側に、第一の記録領域R1におけるトラックピッチtp1及び第二の記録領域R2におけるトラックピッチtp2よりも広いトラックピッチtp3を有した第三の記録領域R3が配置される構成とすることが好ましい(請求項12)。
【0044】
また、第三の記録領域R3においては、溝の蛇行による情報の記録がなされていないことが好ましい(請求項13)。
【0045】
また、第三の記録領域R3と第一の記録領域R1の間に、トラックピッチがtp3からtp1へと遷移するトラックピッチ遷移区間Stp’が配置されることが好ましい(請求項14)。
【0046】
また、第一の記録領域R1が、所定の情報を格納した読取専用領域であり、第二の記録領域R2が、ユーザーデータを書き込み可能な読み書き可能領域であることが好ましい(請求項15)。
【0047】
また、読み取り専用領域におけるトラックピッチが0.35μmであり、読み書き可能領域におけるトラックピッチが0.32μmであることが好ましい(請求項16)。
【0048】
また、読み取り専用領域における規格化プッシュプル信号振幅をNPP1とし、読み書き可能領域における未記録状態での規格化プッシュプル信号振幅をNPP2とし、読み書き可能領域における記録後の規格化プッシュプル信号振幅をNPP2aとし、さらに、
各々の最大値の中で最も大きい値をNPPALmaxとし、各々の最小値の中で最も小さい値をNPPALminとしたとき、
NPPALmax/NPPALmin ≦ 3
であることが好ましい(請求項17)。
【0049】
また、
NPPALmax/NPPALmin ≦ 2
であることがさらに好ましい(請求項18)。
【0050】
また、読み取り専用領域に対しては第一のウォブル変調方式が適用され、読み書き可能領域に対しては第一のウォブル変調方式とは異なった第二のウォブル変調方式が適用され、かつ、記録領域遷移区間Sxにおいては読み書き可能領域と同じウォブル変調方式が適用されていることが好ましい(請求項19)
【0051】
また、本発明の別の要旨は、記録光源と、所定のフォーマットに基づいた所定の偏向信号を発生させる偏向信号生成機構と、上記偏向信号生成機構が生成した偏向信号に基づいて、上記記録光源が発生する記録光を偏向させる記録光偏向機構と、上記記録光を原盤上に集光させる集光機構と、上記原盤を載置し回転させるための回転機構と、上記集光機構を上記原盤の半径方向に相対的に移動させる半径移動機構と、トラックピッチの異なる複数の記録領域を生成できるように、予め設定した値に基づいて、上記回転機構の回転速度と、上記半径移動機構の移動速度と、上記集光機構の位置とを制御する制御機構と、上記記録光の強度を調節する記録光強度調節機構と、予め設定した値に基づいて、上記記録光の強度を単調増加又は単調減少でスイープさせる、記録光強度スイープ機構とを備えたことを特徴とする、原盤露光装置に存する(請求項20)。
【0052】
ここで、予め設定した特定の半径位置に集光機構が達したことを検出して、上記記録光強度スイープ機構による記録光強度のスイープを開始及び/又は終了する機構を備えることが好ましい(請求項21)。
【0053】
また、予め設定した特定のアドレスを上記偏向信号生成機構が出力したことを検出して、上記記録光強度スイープ機構による記録光強度のスイープを開始及び/又は終了する機構を備えることが好ましい(請求項22)。
【0054】
また、予め設定した特定の半径位置に集光機構が達したことを検出して、上記記録光強度スイープ機構による記録光強度のスイープを開始し、かつ、予め設定した所定の時間経過後に上記スイープを終了する機構を備えることが好ましい(請求項23)。
【0055】
また、予め設定した特定のアドレスを上記偏向信号生成機構が出力したことを検出して、上記記録光強度スイープ機構による記録光強度のスイープを開始し、かつ、予め設定した所定の時間経過後に上記スイープを終了する機構を備えることが好ましい(請求項24)。
【0056】
また、本発明の別の要旨は、記録光源と、所定のフォーマットに基づいた所定の偏向信号を発生させる偏向信号生成機構と、上記偏向信号生成機構が生成した偏向信号に基づいて上記記録光源が発生する記録光を偏向させる記録光偏向機構と、上記記録光を原盤上に集光させる集光機構と、上記原盤を載置し回転させるための回転機構と、上記集光機構を上記原盤の半径方向に相対的に移動させる半径移動機構と、トラックピッチの異なる複数の記録領域を生成できるように、予め設定した値に基づいて、上記回転機構の回転速度と、上記半径移動機構の移動速度と、上記集光機構の位置とを制御する制御機構と、上記集光機構の位置と、予め設定した特定の半径値における記録光強度設定値とに基づいて、記録光強度を補間して調節する記録光強度調節機構と、上記記録光強度調節動作を繰り返し行なう繰り返し動作機構とを少なくとも備え、上記繰り返し動作機構の1サイクルに要する動作時間が、100msec以下であることを特徴とする、原盤露光装置に存する(請求項25)。
【発明の効果】
【0057】
本発明の情報記録媒体は、トラックピッチ及び溝形状が異なる複数の記録領域を有するとともに、安定したフォーカスサーボ及びトラッキングサーボを実現することができる。
また、本発明の原盤露光装置によれば、上記の情報記録媒体を効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】(a),(b)は何れも、本発明の情報記録媒体が有する層構成の例を示す、模式的な部分断面図である。
【図2】本発明の情報記録媒体における第一の記録領域R1、第二の記録領域R2、及び記録領域遷移区間Sxの関係を説明するための図であり、第一の記録領域R1、第二の記録領域R2、及び記録領域遷移区間Sxの各々における、隣接する二つの溝の断面形状の例を、模式的に示している。
【図3】本発明の情報記録媒体の一例である記録型Blu−rayディスクにおける記録領域の配置を説明するための模式的上方視図である。
【図4】(a)〜(i)は、本発明の情報記録媒体を製造するためのスタンパの製造手順の一例を説明するための図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る原盤露光装置の基本構成の例を模式的に示す機能ブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る原盤露光装置の第2の態様において、連続的な補間により得られる理論的な露光強度と集光機構の半径値との関係を表わすグラフである。
【図7】本発明の一実施形態に係る原盤露光装置の第2の態様において、補間動作の繰り返しによって得られる実際の露光強度と集光機構の半径値との関係を表わすグラフである。
【図8】(a)は、各実施例及び各比較例の情報記録媒体の評価に用いた情報再生装置(以下「評価用情報再生装置」という。)の要部の構成を示す機能ブロック図であり、(b)は、(a)に示す評価用情報再生装置が有する4分割フォトダイオードの構成を説明するための図である。
【図9】実施例1の情報記録媒体における規格化プッシュプル信号振幅NPP及び和信号SUMの、情報記録媒体約2分の一周分の波形を示す図である。
【図10】実施例2の情報記録媒体における規格化プッシュプル信号振幅NPP及び和信号SUMの、情報記録媒体約2分の一周分の波形を示す図である。
【図11】実施例3の情報記録媒体における規格化プッシュプル信号振幅NPP及び和信号SUMの、情報記録媒体約2分の一周分の波形を示す図である。
【図12】比較例1の情報記録媒体における規格化プッシュプル信号振幅NPP及び和信号SUMの、情報記録媒体約2分の一周分の波形を示す図である。
【図13】比較例2の情報記録媒体における規格化プッシュプル信号振幅NPP及び和信号SUMの、情報記録媒体約2分の一周分の波形を示す図である。
【図14】実施例1〜7及び比較例1,2の情報記録媒体について得られたLg/LtpとLL/Ltpとの関係をプロットした図である。
【図15】(a)〜(c)はそれぞれ、規格化プッシュプル信号振幅(グルーブトラックに沿った方向に検出面が分割された二分割フォトディテクターの各々の出力の差信号)と、トラックピッチ、溝幅及び溝深さとの相関関係を表わすグラフである。
【図16】一般的な記録型Blu−rayディスクにおけるコントロールデータ領域、ユーザーデータ領域、及びトラックピッチ遷移区間Stpの配置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下「発明の実施の形態」という。)について、図面を参照して説明する。
【0060】
但し、本発明は以下の発明の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々変形して実施することができる。
なお、本発明は、イングルーブ型のLow−To−High記録型Blu−rayディスクに対して適用することが好ましいので、以下の発明の実施の形態の説明では、情報記録媒体として適宜、イングルーブ型のLow−To−High記録型Blu−rayディスクを例にとって説明する。但し、本発明は特定の情報記録媒体にのみ適用されるものではなく、種々の情報記録媒体(例えば、オングルーブ型等の記録型Blu−rayディスクや、DVD(Digital Versatile Disc)等のBlu−rayディスク以外の情報記録媒体等)にも適用可能である。
【0061】
[I.情報記録媒体]
〔I−1.基本構成〕
本発明の情報記録媒体は、凹凸パターンにより形成された記録トラックを有する情報記録媒体であって、通常は円盤状(ディスク状)の基板と、基板上に形成された記録層とを少なくとも備えてなる。
【0062】
基板は、従来公知の材料を適宜使用することができるが、情報記録媒体がある程度の剛性を有するよう、形状安定性を備えることが望ましい。即ち、機械的安定性が高く、剛性が大きいことが好ましい。
このような材料としては、例えばアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に非晶質ポリオレフィン)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂や、ガラス等を用いることができる。これらの材料は何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。中でも、成形性などの高生産性、コスト、低吸湿性、形状安定性などの点からは、基板の材料としてはポリカーボネート樹脂が好ましい。
基板の厚みとしては、通常0.5mm以上、また、通常1.2mm以下とするのが好ましい。
【0063】
記録層は、レーザー光の照射によりその物理特性あるいは形状等が変化し、反射率等の光学特性の変化による情報の記録再生が可能な従来公知の材料を適宜使用することができる。このような材料としては、有機色素材料、相変化材料を始めとする無機材料等が挙げられる。
有機色素材料としては、例えば大環状アザアヌレン系色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポルフィリン色素等)、ピロメテン系色素、ポリメチン系色素(シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素等)、アントラキノン系色素、アズレニウム系色素、含金属アゾ系色素、含金属インドアニリン系色素等が挙げられる。
無機材料としては、例えばGeTe、GeSbTe等のカルコゲン系合金膜、Si/Ge、Al/Sb等の2層膜、BiGeN、SnNbN等の(部分)窒化膜、TeOx、BiFOx等の(部分)酸化膜等が用いられる。これらの材料は何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
記録層の膜厚は、通常1nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは90nm以下である。
【0064】
ここで、記録層の組成及び膜厚は、少なくとも第一の記録領域R1と、第二の記録領域R2と、記録領域遷移区間Sxと、において同一であることが好ましいが、製造プロセスや溝形状に起因した不可避的な記録層の組成及び膜厚の分布の不均一を禁止するものではない。すなわち、例えば記録層として有機色素材料を一般的なスピンコート法を用いて塗布する場合、溝形状の相違する領域あるいはディスクの内外周において記録層膜厚が若干異なる場合が生じるが、安定したフォーカスサーボ及びトラッキングサーボが実現出来る範囲であれば許容される。
【0065】
また、本発明は、イングルーブ型のLow−To−High記録型のBlu−rayディスクに対して適用されることが好ましく、従って記録層の組成や膜厚は、記録マーク部分における反射率が、未記録部分の反射率よりも高い構成とされることが好ましい。なぜなら、前述の通り、イングルーブ型のLow−ToHigh記録型のBlu−rayディスクは、規格化プッシュプル信号振幅の不連続に起因するトラッキングサーボ不良等の不具合が出易いからである。しかし、いわゆるHigh−To−Low記録型のBlu−rayディスクなどに適用してもよく、記録層の組成や膜厚は任意に選択可能である。
【0066】
そして、本発明の情報記録媒体は、公知の記録及び/又は再生装置を用いて、記録又は再生のためのレーザー光を記録層に対して照射することにより、記録層にデータを記録し、或いは記録層に記録されたデータを再生することができる。
【0067】
なお、本発明の情報記録媒体は、その他の層を有していてもよい。その他の層の例としては、反射層、カバー層、中間層、界面層等が挙げられる。
【0068】
反射層は、記録再生に使用されるレーザー光に対する一定以上の反射率を有することが必要とされ、従来公知の材料を適宜使用することができる。このような材料としては、例えばAl、Ag、Au等の金属又は合金が用いられる。これらの材料は何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
反射層の膜厚は、通常3nm以上、好ましくは50nm以上、また、通常400nm以下、好ましくは300nm以下である。
【0069】
カバー層は、記録再生に使用されるレーザー光に対して透明で複屈折の少ない材料が選ばれ、通常は、プラスチック板(シートと呼ぶ)を接着剤で貼り合せるか、塗布後、光、放射線、または熱等で硬化して形成する。これらの材料は何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
カバー層の膜厚は、通常10μm以上、好ましくは50μm以上、また、通常300μm以下、好ましくは150μm以下であるが、Blu−rayディスクにおいては、通常100μm程度であり、好ましくは97μm以上、また、好ましくは103μm以下である。
【0070】
中間層は、主に記録層を複数有する積層型情報記録媒体において用いられる。記録再生に使用されるレーザー光に対してある程度の光透過性を有する必要があるほか、凹凸により溝やピットが形成可能である必要がある。
中間層の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂(遅延硬化型を含む)等の樹脂材料を挙げることができる。これらの材料は何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
中間層の膜厚は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは70μm以下である。
【0071】
界面層は、記録層とカバー層との界面、記録層と反射層との界面等に設けられ、相互の層の拡散防止や光学特性の調整等の機能を有する。
界面層の膜厚は、通常1nm以上、好ましくは3nm以上、また、通常50nm以下、好ましくは15nm以下である。
【0072】
本発明の情報記録媒体における、これらの層の数や組み合わせ、積層順等に制限はなく、任意である。
【0073】
本発明の情報記録媒体が有する具体的な層構成の例について、図1(a),(b)を用いて説明する。ここで、図1(a),(b)は何れも、本発明の情報記録媒体が有する層構成の例を示す、模式的な部分断面図である。
【0074】
具体的に、図1(a)に示す情報記録媒体100は、単層型の情報記録媒体の一例であり、基板101、反射層102、記録層103、カバー層104が、この順に積層されてなる。そして、記録又は再生のためのレーザー光105を、カバー層104側から記録層103に照射することにより、記録層103にデータを記録し、或いは記録層103に記録されたデータを再生することができる。
【0075】
また、図1(b)に示す情報記録媒体200は、二層型の情報記録媒体であり、基板201、第1の反射層202、第1の記録層203、中間層204、第2の反射層205、第2の記録層206、カバー層207が、この順に積層されてなる。そして、記録又は再生のためのレーザー光208を、カバー層207側から第1の記録層203又は第2の記録層206に照射することにより、第1の記録層203又は第2の記録層206にデータを記録し、或いは第1の記録層203又は第2の記録層206に記録されたデータを再生することができる。
【0076】
以下、図1(a),(b)に示す層構成を例として説明を行なう場合があるが、これら図1(a),(b)に示す層構成は、あくまでも本発明の情報記録媒体の層構成の一例である。本発明の情報記録媒体はこれらの層構成に制限されるものではなく、その他の層構成を有していてもよい。例えば、図1(a),(b)に示す層構成のうち一部の層を削除したり、他の層を追加したり、二以上の層を一層として形成したり、積層順を変更したり、三層以上の記録層を設けたり、その他任意の変更を加えることが可能である。
【0077】
また、本発明の情報記録媒体は、その何れかの層(通常は基板や中間層等)に、凹凸パターンにより具現化された螺旋状のトラックを有する。
そして、このトラックを基準として、記録のためのレーザー光を記録層に照射することにより、トラックに沿ってデータが記録される。
また、このトラックを基準として、再生のためのレーザー光を記録層に照射することにより、トラックに沿って記録されたデータを再生することができる。
【0078】
具体的に、図1(a)に示す一層型の情報記録媒体においては、基板101上にトラック(グルーブトラック)GT1が形成され、反射層102、記録層103、カバー層104がその上に積層形成されている。
【0079】
また、図1(b)に示す二層型の情報記録媒体においては、基板201上にトラック(グルーブトラック)GT21が形成され、第1の反射層202、第1の記録層203、中間層204がその上に積層されている。また、中間層204の第1の記録層203とは反対側の面にトラック(グルーブトラック)GT22が形成され、第2の反射層205、第2の記録層206、カバー層207がその上に積層されている。
【0080】
以下の記載では原則として、図1(a),(b)に示すように、基板又は中間層にトラックが形成される場合を例として説明を行なうが、本発明の情報記録媒体においてトラックが形成される層は、基板又は中間層に制限されるものではない。
【0081】
また、トラックは情報記録媒体のレーザー光入射側から見た場合における凹凸パターンの凹部によって形成されてもよく、凸部によって形成されてもよく、凸部と凹部の双方によって形成されてもよい。但し、特に有機色素材料を記録層として有する膜面入射方式の情報記録媒体においては、レーザー光入射側から見た場合における凹凸パターンの凹部によってトラックが形成されることが好ましい。この様な、レーザー光入射側から見た場合における凹凸パターンの凹部によって形成されるトラックを、以下の記載では「グルーブトラック」と呼ぶ。図1(a),(b)に示すトラックGT1、GT21、GT22は、何れもグルーブトラックの例である。
【0082】
以下の記載では特に断り書きのない限り、図1(a),(b)に示すように、基板や中間層等の溝(凹部)によって形成されるグルーブトラックを前提として説明を行なうが、本発明の情報記録媒体が有するトラックはグルーブトラックに制限されるものではない。
【0083】
また、トラックが溝によって形成される場合、その溝の断面形状(情報記録媒体の厚み方向における断面形状)は制限されず、任意である。例としては、矩形、台形、半円形、半楕円形等が挙げられる。
【0084】
なお、本発明では、トラックを形成する溝の幅を「溝幅」と定義する。なお、トラックを形成する溝の幅が情報記録媒体の厚み方向の位置によって異なる場合、例えば、トラックの断面形状が台形の場合等には、溝の最大深さの2分の1の位置における幅をもって「溝幅」とすることができる。
【0085】
また、本発明では、トラックを形成する溝の深さを、「溝深さ」と定義する。なお、トラックを形成する溝の深さが情報記録媒体の半径方向の位置によって異なる場合(例えば、溝の断面形状が半円の場合等)には、その深さの最大値をもって「溝深さ」とすることができる。
【0086】
なお、トラックを形成する溝の形状は、主にこれらの「溝幅」及び「溝深さ」によって規定される。よって以下の記載では、情報記録媒体の溝幅及び/又は溝深さを、「溝形状」として総称する場合がある。
【0087】
〔I−2.記録領域及び記録領域遷移区間Sx〕
次いで、本発明の情報記録媒体の記録トラックが有する第一の記録領域R1、第二の記録領域R2、及び記録領域遷移区間Sxの関係について、図2を参照しながら説明する。なお、図2は、本発明の情報記録媒体における第一の記録領域R1、第二の記録領域R2、及び記録領域遷移区間Sxの関係を説明するための図であり、第一の記録領域R1、第二の記録領域R2、及び記録領域遷移区間Sxの各々における、隣接する二つの溝の断面形状の例を、模式的に示している。
【0088】
本発明の情報記録媒体の記録トラックは、図2に示すように、第一の記録領域R1と、第二の記録領域R2とを少なくとも備える。
そして、第一の記録領域R1におけるトラックピッチtp1、溝幅w1、及び溝深さd1、並びに第二の記録領域R2におけるトラックピッチtp2、溝幅w2、及び溝深さd2が、下記式(1)と、下記の式(2)及び/又は式(3)とを満たす。
0 < |tp1−tp2| (1)
0 < |w1−w2| (2)
0 < |d1−d2| (3)
【0089】
換言すれば、式(1)は、第一の記録領域R1におけるトラックピッチtp1と、第二の記録領域R2におけるトラックピッチtp2とが、互いに異なった値を有することを表わしている。
また、式(2)は、第一の記録領域R1における溝幅w1と、第二の記録領域R2における溝幅w2とが、互いに異なった値を有することを表わしている。
また、式(3)は、第一の記録領域R1における溝深さd1と、第二の記録領域R2における溝深さd2とが、互いに異なった値を有することを表わしている。
【0090】
なお、式(2)及び式(3)は、何れか一方のみを満たしていてもよく、両方を満たしていてもよい。
即ち、第一の記録領域R1の溝幅w1と第二の記録領域R2の溝幅w2とが異なると共に、第一の記録領域R1の溝深さd1と第二の記録領域R2の溝深さd2とが異なっていてもよく、第一の記録領域R1の溝幅w1と第二の記録領域R2の溝幅w2とが異なる一方で、第一の記録領域R1の溝深さd1と第二の記録領域R2の溝深さd2とが同一であってもよく、第一の記録領域R1の溝幅w1と第二の記録領域R2の溝幅w2とが同一である一方で、第一の記録領域R1の溝深さd1と第二の記録領域R2の溝深さd2とが異なっていてもよい。
図2では、第一の記録領域R1の溝幅w1と第二の記録領域R2の溝幅w2とが異なると共に、第一の記録領域R1の溝深さd1と第二の記録領域R2の溝深さd2とが異なる場合を示しているが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0091】
なお、第一の記録領域R1におけるトラックピッチtp1、溝幅w1、及び溝深さd1、並びに第二の記録領域R2におけるトラックピッチtp2、溝幅w2、及び溝深さd2は、何れも通常は各記録領域R1,R2の全体に亘って略同一である。
【0092】
更に、本発明の情報記録媒体は、図2に示すように、上述の第一の記録領域R1及び第二の記録領域R2の間に配置された記録領域遷移区間Sxを備える。即ち、第一の記録領域R1と第二の記録領域R2とは物理的に分離しており、これら第一の記録領域R1と第二の記録領域R2との間に記録領域遷移区間Sxが配置される。
そして、この記録領域遷移区間Sxは、トラックピッチがtp1からtp2へと遷移するトラックピッチ遷移区間Stpと、溝幅がw1からw2へと遷移し、及び/又は、溝深さがd1からd2へと遷移する溝形状遷移区間Sgとを備えている。
【0093】
ここで、トラックピッチ遷移区間Stpとは、記録領域R1とR2との間に存在し、トラックに沿って情報記録媒体を見た場合に、トラックピッチがtp1からtp2に徐々に変化している領域を指す。
また、溝形状遷移区間Sgとは、トラックピッチ遷移区間Stpと同様、記録領域R1とR2との間に存在し、トラックに沿って情報記録媒体を見た場合に、溝幅がw1からw2へと徐々に変化している、及び/又は、溝深さがd1からd2へと徐々に変化している領域を指す。
【0094】
即ち、第一の記録領域R1の溝幅w1と第二の記録領域R2の溝幅w2とが同一である場合には、溝形状遷移区間Sgの溝幅は変化せず、w1及びw2と同一であって、溝深さのみがd1からd2へと徐々に変化していることになる。また、第一の記録領域R1の溝深さd1と第二の記録領域R2の溝深さd2とが同一である場合には、溝形状遷移区間Sgの溝深さは変化せず、d1及びd2と同一であって、溝幅のみがw1からw2へと徐々に変化していることになる。
【0095】
更に、これらのトラックピッチ遷移区間Stpと溝形状遷移区間Sgとは、少なくとも一部の領域SLを共有している。
ここで、記録領域遷移区間Sxとトラックピッチ遷移区間Stp、溝形状遷移区間Sgの関係については、例えば以下の1)〜3)の態様が考えられる。
【0096】
1)トラックピッチ遷移区間Stp及び溝形状遷移区間Sgが完全に一致し、互いに全領域SLを共有している場合、記録領域遷移区間Sxも両者に一致する。
2)トラックピッチ遷移区間Stp及び溝形状遷移区間Sgが一部領域SLを共有し、それぞれ単独で存在する領域を有する場合、記録領域遷移区間Sxは前記共有領域SL及びそれぞれの単独領域をあわせた領域を指す。
3)トラックピッチ遷移区間Stp及び溝形状遷移区間Sgのうち、何れか一方の(広い方の)記録領域に他方の(狭い方の)記録領域が完全に含まれる場合、狭い方の記録領域の全てとなるSLが共有されることとなる一方、記録領域遷移区間Sxは両者の領域のうち広い方の領域と一致する。
【0097】
ここで重要な点は、トラックピッチ遷移区間Stpと溝形状遷移区間Sgが少なくとも一部領域SLを共有していることである。即ち、両領域が完全に分離した態様は、本発明の対象には含まれない。
【0098】
なお、図2では、明確化のために、記録領域遷移区間Sxの溝断面形状として、トラックピッチ遷移区間Stpと溝形状遷移区間Sgとが共有する領域SLの溝断面形状を示している。即ち、トラックピッチがtp1とtp2との間であり、溝幅がw1とw2との間であり、溝深さがd1とd2との間である場合を模式的に示したものである。上述のように、記録領域遷移区間Sxの溝断面形状はこれに限られるものではない。
【0099】
ここで、溝形状とは、溝幅や溝形状に代表されるように記録媒体に垂直な断面における個々の溝の幾何学的な形状を指すのであって、ウォブル変調方法によって変化する溝自体の半径方向への蛇行のことを指すのではない。従って、溝形状の遷移とは、溝自体の半径方向への蛇行量の遷移を意味するものではなく、両者は独立して制御可能である。ただし、溝形状遷移区間Sg内におけるウォブル変調方法の変化や、溝自体の半径方向への蛇行量の変化を禁止するものではなく、媒体の特性上問題がないのであれば、例えば溝形状遷移区間Sg内でウォブル変調方法が変化していても差し支えない。
【0100】
また、溝形状の急激な変化を抑えるためには、溝形状遷移区間Sgのトラックに沿った長さLgが、ディスク状の情報記録媒体におけるトラック一周分以上であることが好ましい。
【0101】
また、トラックピッチ遷移区間Stpにおけるトラックピッチの変化の状態は、トラックに沿って単調に増加或いは減少することが、規格化プッシュプル信号振幅の急激な変動を抑える上で好ましい。
また、トラックピッチ遷移区間Stpにおいて、トラックピッチは連続的に変化していることが好ましい。但し、実用上差し支えない程度に規格化プッシュプル信号振幅の変動が抑えられていれば、トラックピッチの変化が不連続であってもよい。
【0102】
また、溝形状遷移区間Sgにおける溝形状の変化の状態は、溝幅及び/又は溝深さがトラックに沿って単調に増加或いは減少することが、規格化プッシュプル信号振幅の急激な変動を抑える上で好ましい。
また、溝形状遷移区間Sgにおいて、溝形状は連続的に変化していることが好ましい。但し、実用上差し支えない程度に規格化プッシュプル信号振幅の変動が抑えられていれば、溝形状の変化が不連続であってもよい。
【0103】
すなわち、上記のように溝形状の変化をトラックに沿って単調に増加あるいは減少させることにより、記録領域R1と記録領域R2における未記録状態での溝部反射率の最大値をRgvmaxとし、最小値をRgvminとした場合に、記録領域遷移区間Sx内の全領域において、未記録状態での溝部反射率Rgvが
Rgvmin ≦ Rgv ≦ Rgvmax
を満たす可能性が高まる。遷移領域遷移区間Sx内の全領域において未記録状態での溝部反射率Rgvが上記式を満たせば、規格化プッシュプル信号振幅の変動を抑えることをより確実なものとすることが出来る。
【0104】
また、トラックピッチ遷移区間Stpのトラックに沿った長さLtpと、溝形状遷移区間Sgのトラックに沿った長さLgとの比Lg/Ltpが、通常0.2以上、中でも0.4以上、更には0.6以上、また、通常2.5以下という関係を満たすように、Ltp及びLgの値を設定することが好ましい。
【0105】
更に、トラックピッチ遷移区間Stpと溝形状遷移区間Sgとが共有する領域SLのトラックに沿った長さをLLとした時、LLとLtpとの比LL/Ltpが、通常0.1以上、中でも0.2以上、また、通常1.0以下という関係を満たすように、LL及びLtpの値を設定することが好ましい。
【0106】
Lg、Ltp、LLの値を上記範囲内に設定することで、急激な規格化プッシュプル信号振幅の変化を抑えることができる上、記録領域R1,R2間に存在する記録領域遷移区間Sxの全領域において、規格化プッシュプル信号振幅を所定の範囲に収めることが可能となり、安定したフォーカスサーボ及びトラッキングサーボ状態を実現することができる。
ここで、所定の範囲とは、必要に応じてフォーカスサーボ回路およびトラッキングサーボ回路に微調整を加えるだけで、十分に良好なフォーカスサーボ特性およびトラッキングサーボ特性が実現できる範囲のことである。
【0107】
即ち、Lg、Ltp、LLの値を上記範囲内に設定することで、記録領域R1と記録領域R2における未記録状態での規格化プッシュプル信号振幅の最大値をNPPmaxとし、規格化プッシュプル信号振幅の最小値をNPPminとしたとき、記録領域遷移区間Sx内の全領域において、規格化プッシュプル信号振幅NPPが常に以下の式(6)を満たす可能性が高まる。
NPPmin ≦ NPP ≦ NPPmax (6)
【0108】
すなわち、記録領域遷移区間Sx内の規格化プッシュプル信号振幅値が、記録領域R1及び記録領域R2における規格化プッシュプル信号振幅の範囲に常に収めることができるので、フォーカスサーボ回路及びトラッキングサーボ回路を特に調整することなく、安定したフォーカスサーボ及びトラッキングサーボ状態を実現することができるので、好ましい。
【0109】
本発明者は、本発明の情報記録媒体によって、安定したフォーカスサーボ及びトラッキングサーボ状態を実現できる理由を、以下のように推定している。
【0110】
即ち、トラックピッチの異なる2つの記録領域R1,R2の境界部において、トラックピッチを徐々に変化させることにより、即ち、トラックピッチ遷移区間Stpを設けることにより、トラックピッチの相違に由来する規格化プッシュプル信号振幅の急峻な変化を抑制することができる。
【0111】
また、トラックピッチの異なる2つの記録領域R1,R2における溝形状を適宜変更することにより、両記録領域R1,R2での規格化プッシュプル信号振幅の差を小さくすることが可能となり、安定したフォーカスサーボ及びトラッキングサーボ状態を実現することができる。
【0112】
しかしながら、溝形状の異なる2つの記録領域R1,R2の境界部において、溝形状が急激に変化すると、規格化プッシュプル信号振幅も急峻に変化してしまい、フォーカスサーボ及びトラッキングサーボに悪影響を与えてしまう。
【0113】
そこで、本発明では、溝形状遷移区間Sgを少なくともトラックピッチ遷移区間Stpと一部領域を共有するように設けることにより、上記溝形状の変化に伴う規格化プッシュプル信号振幅の急峻な変化を抑制することが可能となるのである。
【0114】
なお、本発明の情報記録媒体は、上述の第一の記録領域R1、第二の記録領域R2及び記録領域遷移区間Sxの組み合わせを、少なくとも一組有していればよいが、二組以上有していてもよい。このように、第一の記録領域R1、第二の記録領域R2及び記録領域遷移区間Sxの組み合わせが二組以上存在する場合には、一の組み合わせにおける第一の記録領域R1と、他の組み合わせにおける第二の記録領域R2とが、同一の記録領域であってもよい。
【0115】
また、本発明の情報記録媒体においては、第一の記録領域R1、第二の記録領域R2及び記録領域遷移区間Sxの全てが、物理的に連続した溝によって形成されることが好ましい。物理的に連続した溝とは、内周から外周に渡ってトラックに沿って溝を見た場合、いずれの場所においても溝が断裂されていないということである。但し、規格化プッシュプル信号振幅及び記録再生特性に影響を与えない程度であれば、溝が断続的である場合を排除するものではなく、その構成は任意に選択できる。
【0116】
また、本発明の情報記録媒体がディスク状の場合、第一の記録領域R1及び第二の記録領域R2は、何れがディスクの内周側に存在し、何れがディスクの外周側に存在してもよいが、通常は、上述の第一の記録領域R1及び第二の記録領域R2の関係を満たす二つの記録領域のうち、ディスクの内周側に存在する記録領域を第一の記録領域R1とし、ディスクの外周側に存在する記録領域を第二の記録領域R2とするものとする。
【0117】
ここで、第一の記録領域の内周側に、第一の記録領域R1におけるトラックピッチtp1及び第二の記録領域R2におけるトラックピッチtp2のいずれよりも広いトラックピッチtp3を有した第三の記録領域R3が配置された態様をとってもよい。
この場合、第三の記録領域R3においては、溝の蛇行による情報の記録がなされていなくてもよい。
【0118】
また、第三の記録領域R3と第一の記録領域R1の間に、トラックピッチがtp3からtp1へと遷移するトラックピッチ遷移区間Stp’が配置されていてもよい。
これらの態様を記録型Blu−rayディスクに適用した場合の例に関しては、以下で詳細に述べる。
【0119】
〔I−3.記録型Blu−rayディスクに適用した例〕
次に、本発明の情報記録媒体を記録型Blu−rayディスクに適用した場合の構成について、図3を用いて説明する。なお、図3は本発明の情報記録媒体の一例である記録型Blu−rayディスクにおける記録領域の配置を説明するための模式的な上方視図である。
【0120】
図3に示す記録型Blu−rayディスク300は、トラックピッチの異なる三つの記録領域を有している。
【0121】
まず、ディスクの最内周には、BCA(Burst Cutting Area)領域301が形成されている。BCA領域301のトラックピッチは略2.0μmであり、ディスク中心からの半径値が約21mmから約22.2mmまでの区間に亘って形成される。BCA領域301にはバーコード状の低密度の記録がなされ、情報記録媒体の各種属性情報が格納される。BCA領域には、通常、溝の蛇行による情報の記録がなされていない。
【0122】
BCA領域301の外側には、PIC(Permanent Information and Control data)領域(これを「コントロールデータ領域」と呼ぶ場合もある。)302が形成されている。PIC領域302は、トラックピッチが略0.35μmであり、ディスク中心からの半径値が約22.2mmから約23.2mmまでの区間に亘って形成される。PIC領域302には、例えば最適記録パワーやメディア製造者情報等が格納され、読取専用とされる。
【0123】
PIC領域302の外側には、ユーザーデータ領域303が形成されている。ユーザーデータ領域303は、トラックピッチが略0.32μmであり、ディスク中心からの半径値が約23.2mmから約58.5mmまでの区間に亘って形成される。ユーザーデータ領域303にはデータの書き込みが可能であり、書き込まれたデータは読み取り可能とされる。
【0124】
なお、PIC領域302及びユーザーデータ領域303は、それぞれ所定の規格化プッシュプル信号振幅が得られるように、その溝形状が調整されている。
PIC領域302における溝幅は0.01μm以上が好ましく、更に好ましくは0.07μm以上である。また、0.25μm以下が好ましく、更に好ましくは0.13μm以下である。PIC領域302における溝深さは10nm以上が好ましく、更に好ましくは20nm以上である。また、50nm以下が好ましく、更に好ましくは40nm以下である。
ユーザーデータ領域303における溝幅は0.10μm以上が好ましく、更に好ましくは0.17μm以上である。また、0.28μm以下が好ましく、更に好ましくは0.21μm以下である。ユーザーデータ領域303における溝深さは20nm以上が好ましく、更に好ましくは30nm以上である。また、70nm以下が好ましく、更に好ましくは60nm以下である。
【0125】
なお、PIC領域302とユーザーデータ領域303とを接続するために、両領域302,303の間に保護領域を設けることが好ましい(図示せず)。
【0126】
ここで、第一の記録領域R1が、所定の情報を格納した読取専用領域であるPIC領域を含み、第二の記録領域R2が、ユーザーデータを書き込み可能な読み書き可能領域であるユーザーデータ領域を含むようにすることが好ましい。これは、記録領域遷移区間Sxが、保護領域に完全に包含される態様である。すなわち、PIC領域のトラックピッチ及び溝形状が、保護領域内において、ユーザーデータ領域のトラックピッチ及び溝形状に遷移することを意味している。
第一の記録領域R1と第二の記録領域R2との溝形状、すなわち溝幅w1及びw2と、溝深さd1及びd2は、情報記録媒体に求められる記録再生特性や情報記録媒体の製造プロセスなどによって、上述の通りそれぞれ適当な値が選択される。ここで、例えばBlu−rayディスクにおいては、PIC領域とユーザーデータ領域のトラックピッチが異なった値とされており、両領域のトラックピッチの差に起因する規格化プッシュプル信号振幅の差を両領域間で小さくする場合、溝幅を異なった値とするだけでなく、溝深さについても異なった値とすることが、製造プロセス上好ましい。なぜなら、例えばPIC領域における規格化プッシュプル信号振幅をユーザーデータ領域における規格化プッシュプル信号振幅と同等程度にするためには、PIC領域の溝幅をユーザーデータ領域の溝幅よりも狭くしなければならないが、PIC領域の溝幅を狭くすることのみで対応しようとすると、場合によってはPIC領域の溝幅が狭くなりすぎて原盤露光装置の分解能の限界を超えてしまい、溝が正しく形成されない場合が発生する可能性があるからである。この場合は、溝幅の変更とともに、PIC領域の溝深さをユーザーデータ領域の溝深さよりも浅くすることが効果的である。
従って、第一の記録領域R1と第二の記録領域R2との溝幅のみを異なった値として媒体を製造するよりも、溝幅と同時に溝深さについても異なった値とした方が、情報記録媒体の製造上好ましい。
【0127】
また、第三の記録領域R3を、BCA領域を含む領域とすることが好ましい。
ここで、PIC領域における規格化プッシュプル信号振幅をNPP1とし、ユーザーデータ領域における未記録状態での規格化プッシュプル信号振幅をNPP2とし、ユーザーデータ領域における記録後の規格化プッシュプル信号振幅をNPP2aとし、さらに、各々の最大値の中で最も大きい値をNPPALmaxとし、各々の最小値の中で最も小さい値をNPPALminとしたとき、
NPPALmax/NPPALmin ≦ 3
を満たすように溝形状及び記録層等の組成や膜厚を調整することが好ましい。こうすることにより、記録前後のいずれにおいても、PIC領域及びユーザーデータ領域の両領域での規格化プッシュプル信号振幅の値を一定の範囲に収めることが出来るので、安定したフォーカスサーボ及びトラッキングサーボ状態を実現することが出来る。
【0128】
中でも、
NPPALmax/NPPALmin ≦ 2
を満たすように溝形状及び記録層等の組成や膜厚を調整することが、さらに好ましい。こうすることにより、より安定したフォーカスサーボ及びトラッキングサーボ状態を実現することが出来る。
【0129】
また、記録型Blu−rayディスク300においては、BCA領域301、PIC領域302、ユーザーデータ領域303の全てのトラックが連続したトラックとして形成されるとともに、BCA領域301とPIC領域302との境界部、及び、PIC領域302とユーザーデータ領域303との境界部には各々、トラックピッチ遷移区間Stpが設けられる(図3では図示を省略している。)。これらのトラックピッチ遷移区間Stpでは、上述のように、トラックピッチが連続的に変化されてなる。
【0130】
ここで、上述の記録型Blu−rayディスク300を本発明の情報記録媒体として構成する場合、BCA領域301とPIC領域302との境界部、及び/又は、PIC領域302とユーザーデータ領域303との境界部に、上述の溝形状遷移区間Sgを、トラックピッチ遷移区間Stpと少なくとも一部の領域を共有するように形成する(即ち、上述した記録領域遷移区間Sxを設ける)。これにより、急激な規格化プッシュプル信号振幅の変化を抑えることができ、安定したフォーカスサーボ及びトラッキングサーボ状態を実現することができる。
【0131】
なお、記録領域遷移区間Sx及び溝形状遷移区間Sgは、BCA領域301とPIC領域302との境界部、及び、PIC領域302とユーザーデータ領域303との境界部のうち、何れか一方のみに設けてもよく、双方に設けてもよい。但し、少なくともPIC領域302とユーザーデータ領域303との境界部に記録領域遷移区間Sx及び溝形状遷移区間Sgを設けることにより、上述の効果を顕著に得ることができるので好ましい。
【0132】
なお、ウォブル変調方法は、コントロールデータ領域とユーザーデータ領域とで通常異なった方法とされる。ここで、保護領域内部においては、ウォブル変調方法は同一であり、かつユーザーデータ領域と同じウォブル変調方式が適用されることが好ましい。
【0133】
一方、前述の通り、本発明の記録型Blu−rayディスクにおいては、記録領域遷移区間Sxは保護領域に完全に包含されることが好ましい。すなわち、記録領域遷移区間Sx内の全領域においては、ウォブル変調方法が同一であることが好ましい。
【0134】
〔I−4.測定方法〕
なお、情報記録媒体が有する溝形状(溝幅及び溝深さ)は、以下の手順により測定することができる。
例えば、記録型Blu−rayディスク等の、グルーブトラックに相当する凹凸パターンが形成された基板上に記録層が積層され、更にその上に紫外線硬化樹脂等よりなるカバー層が形成されている情報記録媒体の場合には、例えば、記録層の積層前の基板をAFM(Atomic Force Microscope:原子間力顕微鏡)で測定することにより、溝の深さや幅を直接測定することができる。
また、記録層上にカバー層が形成されてなる情報記録媒体の場合は、例えば、カッターナイフなどでカバー層を剥離して、グルーブトラックに相当する基板上の凹凸パターンを表面に露出させることにより、AFMを用いて溝形状を測定することが可能となる。
【0135】
また、情報記録媒体が有する溝形状遷移区間Sgのトラックに沿った長さLgも、AFMを用いて以下の手順により求めることができる。
具体的には、まず、溝形状遷移区間Sg内及びその近傍の複数個所の溝形状を測定し、更に、当該測定箇所の情報記録媒体上における半径値を測定することにより、溝形状遷移区間Sgの内周端半径値及び外周端半径値を求める。次に、溝形状遷移区間Sg内に存在するトラックの本数をカウントし、溝形状遷移区間Sgが存在する半径値における円周長さとの積を取ることにより、溝形状遷移区間Sgのトラックに沿った長さLgを求めることができる。
【0136】
但し、上述の方法で溝形状遷移区間Sgのトラックに沿った長さLgを求める為には、複数個所の溝形状について精度良い測定が求められる上、当該測定箇所の半径値の測定が求められる等、煩雑な場合がある。そのような場合は、情報記録媒体を適当な再生装置で以って再生し、溝形状遷移区間Sgにおける反射光の光量の変化の様子を調べることによって溝形状遷移区間Sg情報のトラックに沿った長さLgを求めてもよい。
すなわち、当該情報記録媒体をスピンドルモーターに載置回転させつつ、対物レンズにてレーザー光をトラック上に集光させると、溝形状に応じた光量の反射光が得られる。溝形状遷移区間Sgにおいては溝形状が変化させられているので、レーザー光を集光した箇所の情報記録媒体上における半径値と、反射光の光量の変化との対応の様子を調べることによって、溝形状遷移区間Sgのトラックに沿った長さLgを知ることができる。
【0137】
また、情報記録媒体が有するトラックピッチ及びトラックピッチ遷移区間Stpの長さLtpについては、以下の手順で測定することができる。
まず、上述の溝形状の場合と同様、AFMにより、情報記録媒体が有するトラックピッチ及びトラックピッチ遷移区間Stpの長さLtpを直接測定することができる。
【0138】
あるいは、第一の記録領域R1及び第二の記録領域R2のトラックピッチを光学的に測定することもできる。
本発明の情報記録媒体が有する第一の記録領域R1及び第二の記録領域R2においては、グルーブトラックが等間隔で多数並んでいる。この場合、レーザー光などのコヒーレントな光をこれらの記録領域R1,R2に照射することにより、多数並んだグルーブトラックが回折格子の役割を果たし、トラックピッチに応じた角度で回折光が現れることが一般的に知られている。また、この原理を応用した形状測定装置も考案されている(特開昭57−187604公報等参照)。この原理を利用すれば、回折光の現れる角度を測定することにより、トラックピッチを知ることができる。
【0139】
また、この原理を利用して、トラックピッチ遷移区間Stpのトラックに沿った長さを求めることもできる。すなわち、例えばレーザー光を情報記録媒体の半径方向に走査し、回折光の現れる位置を、レーザー光が照射されている半径値とともに記録しておくことにより、トラックピッチ遷移区間Stpの半径方向の大きさを知ることができる。更に、トラックピッチ遷移区間Stpの半径方向の大きさと、トラックピッチ遷移区間Stpの前後におけるトラックピッチから求めた平均トラックピッチとに基づいて、トラックピッチ遷移区間Stpのトラックに沿った長さを見積もることができる。
【0140】
また、上記回折光の強度は、溝形状に応じて変化するということも一般的に知られているので、レーザー光を情報記録媒体の半径方向に走査し、回折光の現れる位置及び強度を同時に測定することにより、溝形状遷移区間Sg及びトラックピッチ遷移区間Stpの存在の様子を同時に測定することも可能である。
【0141】
なお、上述の各測定は、AFMの他に、例えばSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)等を用いて行なうことも可能である。
【0142】
[II.情報記録媒体の製造方法]
本発明の情報記録媒体は、制限されるものではないが、例えば以下に説明する方法により製造される。
情報記録媒体の一般的な製造手順においては、基板や中間層に形成されるトラックの凹凸パターンの形状と相補的な形状の凹凸パターンを有するスタンパを用意し、このスタンパを用いて基板や中間層に凹凸パターンのトラックを形成する。
従って、上述の溝形状遷移区間Sgを有する本発明の情報記録媒体を製造するためには、このスタンパが有する凹凸パターンの形状を所望の形状となるようにすればよい。
【0143】
スタンパが有する凹凸パターンの形状は、通常、スタンパの製造手順における原盤の露光時に決定される。ここで、本発明で規定する特定の形状の凹凸パターンを形成するためには、特定の原盤露光装置を使用することが有効である。
よって、以下の記載では、まずスタンパの製造手順について説明した上で、次いでそのスタンパを用いた情報記録媒体の製造手順について説明し、続いて章を改めて、所望の形状の凹凸パターンを有するスタンパを得るための原盤露光装置(本発明の原盤露光装置)について説明することにする。
【0144】
[II−1.スタンパの製造]
まず、本発明の情報記録媒体を製造するためのスタンパの製造手順の一例について、図4を用いて詳細に説明する。なお、図4(a)〜(i)は、本発明の情報記録媒体を製造するためのスタンパの製造手順の一例を説明するための図である。但し、以下の製造手順はあくまでも一例であり、本発明の情報記録媒体を製造するためのスタンパの製造手順は、以下の例に限定されるものではない。
【0145】
まず、原盤用基板501上にフォトレジスト502を塗布してなる原盤503を用意する(図4(a)参照)。
原盤用基板501の材質は制限されないが、通常はガラス板が用いられる。
フォトレジスト502としては、いわゆるノボラック・ジアゾナフトキノン系レジストや化学増幅型レジストなど、一般的なフォトレジストを使用することができる。また、ポジ型レジストを用いてもよく、ネガ型レジストを用いてもよい。更にこれらは何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。なお、ポジ型レジスト及びネガ型レジストの定義については後述する。
フォトレジスト502は通常、いわゆるスピンコート法で原盤用基板501上に塗布され、その膜厚は原盤用基板501の面内で略均一とされる。具体的なフォトレジスト502の膜厚は、目的とするスタンパの凹凸パターンの形状に応じて設定すればよいが、通常10nm以上、また、通常100nm以下の範囲とする。
【0146】
次に、原盤露光装置を用いて原盤503を露光処理し、原盤用基板501上のフォトレジスト502に、目的とするトラックに相当する凹凸パターンに対応する所定のパターン504を潜像として形成する(図4(b)参照)。本工程で使用する原盤露光装置の構成及び動作については、次章[III.原盤露光装置]で詳しく説明する。
【0147】
続いて、原盤503に現像処理を施し、潜像として形成されたパターン504を、物理的な凹凸パターンとして顕在化させる(図4(c)参照)。
一般的には、原盤503を現像機のターンテーブルに載置し、ターンテーブルを回転させながら現像液を滴下させる方法が取られるが、例えばガラス板を静止した状態で現像液を液盛りする方法(いわゆるパドル現像法)等を用いることもできる。
このとき、フォトレジスト502の種類を選択することによって、潜像として形成されたパターン504側を凹にすることもできるし、逆に潜像として形成されたパターン504を凸にすることもできるが、一般的にはパターン504側が凹になるようなフォトレジスト(これを「ポジ型レジスト」と呼ぶ。)を用いる場合が多い。
本明細書では、図4を含め、主にポジ型レジストを用いた場合について説明するが、パターン504側が凸となるようなフォトレジスト(これを「ネガ型レジスト」と呼ぶ。)を用いてもよく、その選択は任意である。
【0148】
以上の手順により、物理的な凹凸パターンを有する原盤(これを「凹凸原盤」という。)503’が得られる。
次いで、この凹凸原盤503’を用いて、以下の手順によりスタンパを作製する。
【0149】
まず、上述の凹凸原盤503’上に、スパッタ法や無電解メッキ法等を用いて、スタンパの材料を成膜し、導電層505を形成する(図4(d)参照)。
スタンパの材料としては、通常は金属材料が用いられる。金属材料としては、例えばニッケルが挙げられる。スタンパの材料は何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
導電層505の厚さは特に制限されないが、後述する電気めっきにおいて支障をきたさない厚さであれば、任意に選択できる。
【0150】
次に、導電層505が形成された凹凸原盤503’を電鋳装置に取り付け、電気めっき法等により、導電層505上に更にスタンパの材料を積層することにより、ファザー層506を形成する(図4(e)参照)。ファザー層506は導電層505と一体に形成され、その厚さは特に制限されないが、通常100μm以上、通常500μm以下である。
【0151】
次いで、ファザー層506を凹凸原盤503’より剥離し、必要に応じて、ファザー層506上に付着したフォトレジストを、フォトレジスト除去液等を用いて除去する(図4(f)参照)。フォトレジスト除去液は、フォトレジスト502の種類に応じて適宜選択すればよいが、例えば、アセトンや、ナガセケムテックス株式会社製N−303Cを用いることができる。これらは何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
こうして得られたファザー層506を、ファザースタンパと呼ぶ(以下「ファザー」と称する。)。このファザー506上には凹凸パターンが写し取られているが、その凹凸パターンは凹凸原盤503’上の凹凸パターンとは逆転したものとなっている。
【0152】
次いで、このファザー506の凹凸パターン表面を、酸化処理等の手法で処理することにより、剥離層507を形成する(図4(g)参照)。剥離層507の厚さは特に制限されないが、通常0.1nm以上、通常100nm以下である。
【0153】
更に、この剥離層507上に、電気めっき法等によりスタンパの材料を積層し、マザー層508を形成する(図4(h)参照)。マザー層508の厚さは特に制限されないが、通常100μm以上、通常500μm以下である。
【0154】
次いで、このマザー層508を剥離させる(図4(i)参照)。
こうして得られたマザー層508を、マザースタンパと呼ぶ(以下「マザー」と称する。)。このマザー508上にも凹凸パターンが写し取られており、その凹凸パターンは凹凸原盤503’上での凹凸パターンと同じものとなっている。
【0155】
以上の手順により得られたファザー506又はマザー508を、何れもスタンパとして使用することが可能である。
【0156】
また、これらのスタンパ506,508を型として、更に別の材料に凹凸パターンを写し取ることにより、新たなスタンパを作製することも可能である。例えばファザースタンパ506から、複数枚のマザースタンパ508を写し取っていくこともできるし、マザースタンパ508から更にサンスタンパ(図示せず)を写し取っていくこともできる。こうして得られるサンスタンパ上の凹凸パターンは、ファザースタンパ506上での凹凸パターンと同じものとなっている(以下、サンスタンパのことを単に「サン」と称する場合がある)。
【0157】
また、樹脂材料からなるスタンパ(樹脂製スタンパ)を製造する場合には、上述の手順により金属材料からなるスタンパ(金属製スタンパ)を作製し、この金属製スタンパを型として樹脂材料を射出成形することにより、金属製スタンパの凹凸パターンが写し取られた樹脂製スタンパを得るという手法が有効である。
【0158】
[II−2.情報記録媒体の製造]
次に、上記の手順で作製されたスタンパを型として、基板や中間層等に凹凸パターンを形成し、本発明の情報記録媒体を製造する。
【0159】
例として、図1(a)に示す一層型の情報記録媒体100を製造する場合には、まず、上述のスタンパを用いて、トラックに相当する凹凸パターンが形成された基板101を作製する。具体的には、例えば、上述のスタンパを型として、基板101の材料を射出成形することにより、スタンパの凹凸パターンが写し取られた基板101を形成し、得られた基板101をスタンパから剥離して使用すればよい。基板101の材料や厚さ等は、上述の通りである。また、スタンパとしては、通常は金属材料からなるスタンパ(金属スタンパ)を用いる。
【0160】
なお、スタンパから基板101上に写し取られた凹凸パターンは、スタンパの凹凸パターンとは逆転したものとなる。よって、例えばいわゆるイングルーブ型の記録型Blu−rayディスクを製造する場合、記録トラックはレーザー光入射側から見て凹側であるので、ファザースタンパあるいはサンスタンパを型として用いればよい。一方、例えばレーザー光入射側から見て凸側を記録トラックとして用いるオングルーブ型の記録型Blu−rayディスクを製造する場合、記録トラックはレーザー光入射側から見て凸側であるので、マザースタンパを型として用いればよい。なお、記録層に有機色素を用いる情報記録媒体においては、イングルーブ型を採用することが、製造方法及び記録特性の面から好ましい。
【0161】
続いて、基板101の凹凸パターン上に、反射層102を形成する。反射層102の材料や厚さ等は、上述の通りである。反射層102の形成方法としては、例えばスパッタリング法等が挙げられる。
【0162】
次に、反射層102上に、記録層103を形成する。記録層103の材料や厚さ等は、上述の通りである。記録層103の形成方法としては、例えば記録層103が有機色素材料である場合はスピンコート等の塗布法等、無機材料の場合はスパッタリング法等が挙げられる。
【0163】
続いて、記録層103上に、カバー層104を形成する。カバー層104の材料や厚さ等は、上述の通りである。カバー層104の形成方法としては、例えばスピンコート法等が挙げられる。また、別に用意したカバー層104を、接着層等を介して記録層103上に接着してもよい。
【0164】
また、別の例として、図1(b)に示す二層型の情報記録媒体200を製造する場合には、まず、スタンパを用いて、トラックの凹凸パターンが形成された基板201を作製する。その形成手順は、図1(a)の基板101の場合と同様である。
続いて、基板201の凹凸パターン上に第1の反射層202、第1の記録層203を順に積層形成する。これらの層の材料や厚さ、形成手順等は、図1(a)の反射層102及び記録層103の場合と同様である。
【0165】
次いで、第1の記録層203上に、中間層204を形成する。中間層204の材料や厚さ等は、上述の通りである。中間層204の形成方法としては、例えば塗布法等が挙げられる。
【0166】
この中間層204の形成時に、スタンパを用いて凹凸パターンを形成する。凹凸パターンの形成手順は制限されないが、中間層204上にスタンパの凹凸パターンを押し当てることにより、スタンパの凹凸パターンを中間層204上に写し取ればよい。
【0167】
中でも好ましい手法としては、中間層204の材料として紫外線硬化性樹脂や可視光硬化性樹脂等の光硬化性樹脂を用い、この光硬化性樹脂を第1の記録層203上に所望の厚みに成膜し、その上に更にスタンパを載置した状態で、光硬化性樹脂を硬化させることが可能な紫外線や可視光等の光を、スタンパを通じて光硬化性樹脂に照射し、光硬化性樹脂を硬化させる。これにより、スタンパの凹凸パターンが写し取られた中間層204を形成することが可能となる。なお、この場合、スタンパとしては、光硬化性樹脂を硬化させることが可能な紫外線や可視光等の光を透過させることが可能な材料からなるスタンパ(通常は樹脂製スタンパ)を用いることになる。
【0168】
なお、スタンパから中間層204上に写し取られる凹凸パターンは、スタンパの凹凸パターンとは逆転したものとなるので、上述のように、所望の情報記録媒体の形式に応じてマザー、ファザー或いはサンを選択すればよい。
【0169】
続いて、中間層204の凹凸パターン上に、第2の反射層205、第2の記録層206を順に積層形成する。これらの層の材料や厚さ、形成手順等は、図1(a)の反射層102及び記録層103の場合と同様である。
次いで、第2の記録層206上に、カバー層207を形成する。カバー層207の材料や厚さ、形成手順等は、図1(a)のカバー層104の場合と同様である。
【0170】
なお、図1(b)に示す二層型の情報記録媒体200の場合、基板201が有するトラックの凹凸パターンの形状と、中間層204が有するトラックの凹凸パターンの形状とは同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。基板201及び中間層204の凹凸パターンの形状が互いに異なる場合には、基板201及び中間層204のうち少なくとも一方が本発明の規定を満たしていればよい(即ち、本発明で規定する第1の記録領域R1と、第2の記録領域R2と、記録領域遷移区間Sxとを有していればよい)が、基板201及び中間層204の双方が本発明の規定を満たしていてもよい。
【0171】
また、トラックが三層以上に存在する情報記録媒体(即ち、三層以上の記録層を有する情報記録媒体)の場合も、それらの少なくとも何れか一層が本発明の規定を満たしていればよいが、それらの全ての層が本発明の規定を満たしていてもよい。
【0172】
以上の手順により、本発明の情報記録媒体が製造される。
なお、以上の説明では、記録型Blu−rayディスクを例として説明したが、その他の情報記録媒体についても、上述の手順に適宜変更を加えることにより製造することができる。例えば、DVD(Digital Versatile Disc)を製造する場合、厚さ0.6mmの基板を貼り合せた構成とすればよい。
【0173】
[III.原盤露光装置]
本発明の情報記録媒体は、上述のように、トラックピッチ及び溝形状が異なる二つの記録領域の間に、トラックピッチ遷移区間Stpに加えて、所定の溝形状遷移区間Sgを有するものであるが、この溝形状遷移区間Sgは、情報記録媒体の製造時に使用されるスタンパの凹凸パターン形状に応じて形成される。そして、スタンパの凹凸パターン形状は、スタンパの製造手順における原盤の露光工程(上述の図4(b)参照)において、原盤露光装置によって具現化されることになる。
以下、本発明の情報記録媒体を製造するために使用される原盤露光装置(本発明の原盤露光装置)について、実施形態を挙げて説明する。
【0174】
[III−1.基本構成]
まず、本発明の一実施形態に係る原盤露光装置の基本構成について、図5を参照しながら説明する。なお、図5は、本発明の一実施形態に係る原盤露光装置の基本構成の例を模式的に示す機能ブロック図である。
【0175】
図5に示す原盤露光装置600は、所定の偏向信号を発生させるフォーマッター(偏向信号生成機構)601と、記録光を発生させるためのレーザー光源(記録光源)602と、記録光を所定の出力に設定させるパワー調整素子(記録光強度調節機構)603と、フォーマッター601の出力信号に基づいてレーザー光を偏向させるためのEOD(Electro Optical Deflector)素子(記録光偏向機構)604と、レーザー光を原盤503上に絞り込むための対物レンズ(集光機構)605と、原盤503を載置し、回転させるためのターンテーブル(回転機構)606と、対物レンズ605を原盤503の半径方向に相対的に移動させるためのスライダー(半径移動機構)607と、レーザー光の方向を制御するための一又は複数のミラー608とを備える。更に、これらの構成要素601〜608のうち一部又は全部を協調制御するためのコントローラー(制御機構)609を備えてなる。特に、コントローラー609は、予め設定した値に基づいて、ターンテーブル606の回転速度と、スライダー607の移動速度と、対物レンズ605の位置とを制御する機能を有してなる。
【0176】
レーザー光源602から出射された記録光は、まずパワー調整素子603を通る。パワー調整素子603は、予め設定した値に基づいて記録光強度を変化させることができる。
【0177】
パワー調整素子603で強度を調整された記録光は、次いで記録光を偏向させる為にEOD素子604に導かれる。なお、本実施形態ではEOD素子604を用いているが、記録光を偏向させる機能を持った素子であれば特にEOD素子604に限定されるものではなく、例えばAOD(Acoustic Optical Deflector)素子を用いてもよい。EOD素子604にはフォーマッター601が接続され、フォーマッター601が発生する信号に基づいて記録光を角度方向に偏向させることができる。
【0178】
なお、製造する情報記録媒体の種類によっては、記録光を変調させるためのAOM(Acoustic Optical Modulator)素子やEOM(Electro Optical Modulator)素子(図5では図示省略)を設けてもよい。
更に、記録光を変調させる機能と偏向させる機能を一つの素子にまとめて受け持たせてもよく、その構成は、製造する情報記録媒体の種類によって任意に変更できる。
【0179】
次に、EOD素子604から出た記録光は、原盤503上に集光させるための対物レンズ605に導かれる。なお、対物レンズ605に記録光を入射させる前に、ビーム形状を整形するためのビームエキスパンダー(図5では図示省略)を通してもよい。
【0180】
また、対物レンズ605はフォーカスアクチュエータ(図5では図示省略)に取り付けられ、原盤503面と対物レンズ605との間の距離を常に一定に保つようにフォーカスサーボがかけられている。フォーカスサーボをかけることによって、原盤503面と対物レンズ605との間の距離を一定に保つことができるので、原盤503面上に集光された記録光のスポットサイズは常に同一となり、幅が均一なパターンを露光することができる。
【0181】
なお、螺旋状のトラックに相当するパターンを原盤503上に形成するためには、原盤503を載置したターンテーブル606を所定の回転数で回転させながら、スライダー607を所定の送り速度で送ればよい。
【0182】
次に、上記構成を有する原盤露光装置600の動作に関して説明する。
まず、予め設定した線速及びトラックピッチに基づいて、ターンテーブル606を回転させ、且つスライダー607を所定の速度で移動させる。こうすることにより、第一のトラックピッチを持つ第一の記録領域R1のトラックに相当するパターンを形成する。
なお、ターンテーブル606の回転方向や回転数、スライダー607の移動速度や移動方向等の条件は、作製したいスタンパ及び情報記録媒体のフォーマットに基づいて任意に選ぶことができ、適切な動作条件を選択すればよい。
また、記録光の強度も、各々の製造プロセスや、形成したい溝形状により、任意に設定することができる。
【0183】
本発明の情報記録媒体が記録型Blu−rayディスクである場合、その溝は媒体の半径方向に所定の振幅で蛇行するように形成される。蛇行パターンとしては数種類が予め規定されており、複数種類の蛇行パターンの組み合わせによって、アドレス情報やディスク製造者情報などの情報を記録するという方法が取られる。ここで、蛇行パターンによる情報の記録とは、蛇行の振幅や周期等、ディスク面内の溝の蛇行形状自体を変更することにより情報を記録していることを指しているのであり、溝深さや溝幅、平均的なトラックピッチを変更する訳ではない。このような溝の蛇行は、原盤露光装置600において、記録光を原盤503の半径方向に所定の分量だけその都度偏向させることにより形成することができる。記録光を偏向させるための偏向信号はフォーマッター601によって発生され、記録光の偏向はEOD素子604によってなされる。なお、蛇行パターンはフォーマッター601の内部構成を変更することにより任意とすることができる。よって、本発明の情報記録媒体として記録型Blu−rayディスク以外の情報記録媒体を作製する場合には、その都度適切な蛇行パターンを形成するようにフォーマッターの内部構成を変更すればよい。
【0184】
以上の手順により、第一の記録領域R1のトラックに相当するパターンの形成が完了すると、次に第二のトラックピッチを持つ第二の記録領域R2のトラックに相当するパターンの形成に移行する。この段階で、トラックピッチ遷移区間Stp及び溝形状遷移区間Sgの形成を行なうことになるので、トラックピッチ遷移区間Stp及び溝形状遷移区間Sgの形成方法に関して述べる。
【0185】
トラックピッチ遷移区間Stpは、スライダー607の移動速度を変化させることによって形成することができる。例えば、予めトラックピッチ遷移区間Stpの形成を開始したい半径値を原盤露光装置600内部に記憶させるなどしておき、スライダー607が当該半径値を通過したことを検出してスライダー607の移動速度を変化させればよい。移動速度を変化させる方法としては、例えばスライダー607を駆動させる為のパルス列の周波数を変化させるなどする。このとき、例えばスライダー607を駆動させるためのパルス列の周波数のスイープ時間を変えることによって、任意の長さのトラックピッチ遷移区間Stpとすることができる。長めのトラックピッチ遷移区間Stpとしたい場合は周波数のスイープ時間を長くすれば良いし、短めのトラックピッチ遷移区間Stpとしたい場合は周波数のスイープ時間を短くすればよい。このとき、スライダー607の移動速度を段階的に変化させてもよいが、トラックピッチの変化の仕方を滑らかなものとするためには、スライダー607の移動速度を連続的に変化させることが好ましい。
【0186】
一方、溝形状遷移区間Sgの形成方法としては、二つの態様が考えられ、それに応じて、原盤露光装置600の構成も異なる。以下、これら二つの態様について、節を改めて説明する。
【0187】
[III−2.第1の態様]
第1の態様では、上述の原盤露光装置600に、予め設定した値に基づいて、記録光の強度を単調増加又は単調減少でスイープさせる機構(記録光強度スイープ機構)を設ける。そして、溝形状遷移区間Sgに相当する凹凸パターンの形成時に、記録光の強度を単調増加又は単調減少でスイープさせることにより、溝幅がw1からw2へと徐々に変化する、及び/又は、溝深さがd1からd2へと徐々に変化するパターン(即ち、溝形状遷移区間Sgに相当する凹凸パターン)を形成することができる。
この態様によれば、急激な記録光強度の変化に起因する急激な溝形状変化を抑制することができるので、最終的に得られる情報記録媒体での急激な規格化プッシュプル信号振幅の変化を抑制することができ、ひいては、安定したフォーカスサーボ及びトラッキングサーボ状態を実現することが可能な情報記録媒体を得ることが可能となる。
【0188】
ここで、記録光強度スイープ機構が、予め設定した特定の半径位置に集光機構が達したことを検出して、記録光強度のスイープを開始及び/又は終了する機能を有することが好ましい。
また、記録光強度スイープ機構が、予め設定した特定のアドレスを上記偏向信号生成機構が出力したことを検出して、記録光強度のスイープを開始及び/又は終了する機能を有することも好ましい。
記録光強度スイープ機構がこれらの機能を有することによって、記録光強度の変化開始点を正確に一定の値に保った原盤を常に作製することができるので、最終的に得られる情報記録媒体での規格化プッシュプル信号振幅の変化の仕方を常に一定にすることができ、ひいては、安定したフォーカスサーボ及びトラッキングサーボ状態を実現することが可能な情報記録媒体を得ることができる。
【0189】
また、記録光強度スイープ機構が、予め設定した特定の半径位置に集光機構が達したことを検出して記録光強度のスイープを開始し、かつ、予め設定した所定の時間経過後に上記スイープを終了する機能を有することも好ましい。
また、記録光強度スイープ機構が、予め設定した特定のアドレスを上記偏向信号生成機構が出力したことを検出して、上記記録光強度スイープ機構による記録光強度のスイープを開始し、かつ、予め設定した所定の時間経過後に上記スイープを終了する機能を有することも好ましい。
記録光強度スイープ機構がこれらの機能を有する場合、記録光強度スイープ機構はスイープ開始トリガーの監視及びスイープ時間の管理のみを行なっていればよいので、原盤露光装置の構成を簡便なものとすることができる。
【0190】
なお、以上説明した記録光強度スイープ機構の各種機能は、例えばソフトウェア等を用いてコントローラー609に所望の動作をさせることにより、コントローラー609の機能として実現することが可能である。
【0191】
[III−3.第2の態様]
本発明では、トラックピッチの異なる二つの記録領域の境界部における急激な規格化プッシュプル信号振幅の変動を抑えることを意図している。よって、実用上問題ない程度にまで規格化プッシュプル信号振幅の変動が抑えられるのであれば、必ずしも溝形状が連続的に変化する必要は無く、断続的な変化であっても構わない。このような着眼点に立つと、上述の第1の態様よりも簡素な構成で、メンテナンスが容易な態様の原盤露光装置も考えられる。
【0192】
すなわち、第2の態様では、上述の原盤露光装置600に、対物レンズ(集光機構)605の位置と、予め設定した特定の半径値における記録光強度の設定値とに基づいて、記録光強度を補間して調節する記録光強度調節機構と、上記記録光強度調節動作を繰り返し行なう繰り返し動作機構とを設ける。そして、上記繰り返し動作機構の1サイクルに要する動作時間を、100msec以下とする。
【0193】
本態様に係る原盤露光装置の基本的な動作に関して、図6及び図7を参照して、以下に詳細に説明する。なお、図6は、本態様に係る原盤露光装置において、連続的な補間によって得られる理論的な露光強度と集光機構の半径値との関係を表わすグラフであり、図7は、本態様に係る原盤露光装置において、補間動作の繰り返しによって得られる実際の露光強度と集光機構の半径値との関係を表わすグラフである。
【0194】
また、以下の記載では、
(1)第一の記録領域R1が第二の記録領域R2よりも内周側に存在する記録情報媒体のトラックに相当するパターンを露光する場合であって、
(2)第一の記録領域R1のトラックに対応するパターンは露光強度P1にて露光し、
(3)第二の記録領域R2のトラックに対応するパターンは露光強度P2にて露光し、
(4)溝形状遷移区間Sgのトラックに対応するパターンは半径値RiからRoに亘って形成し、
(5)半径値Riでの露光パワーはP1に等しく、
(6)半径値Roでの露光パワーはP2に等しく、
(7)露光動作は内周から外周に向かって行なう、
という条件の下で説明を行なう。
【0195】
但し、露光パワーや半径値の設定等の詳細に関しては、種々のケースが考えられるため、上記(1)〜(7)の条件下に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0196】
また、本態様に係る原盤露光装置では、例えば、第一の記録領域R1のトラックに対応するパターンを形成する際の露光パワーP1、第二の記録領域R2のトラックに対応するパターンを形成する際の露光パワーP2、溝形状遷移区間Sgの内側半径値Ri、外側半径値Ro等のパラメータを、予め原盤露光装置内部に記憶させる等しておくものとする。
【0197】
本態様によれば、予め設定した線速及びトラックピッチに基づいてターンテーブル606を回転させ、且つスライダー607を所定の速度で移動させつつ、記録光強度調節機構が対物レンズ605の原盤上での半径位置を読み取り、対物レンズ605がどの領域を露光中であるのかをまず判断する。次いで、その判断の結果を元に、露光強度を然るべき値へと設定する。一方、スライダー607は所定の速度で常に移動しているので、露光光強度を然るべき値とさせた瞬間には、対物レンズ605は、当初読み取った半径位置とは異なった半径位置に移動している。そこで再び対物レンズ605の半径位置を読み取り、対物レンズ605がどの領域を露光中であるのかを再度判断し、判断結果を基に、露光強度をしかるべき値へと変化させる。このようにして、半径位置読み取りから露光強度設定までを1サイクルとし、このサイクル動作を所望の半径位置まで順次繰り返して行なうことにより、所望の露光強度での露光を原盤全面に関して行なうことができる。
【0198】
この補間動作について、以下、より具体的に説明する。なお、簡便のため、半径位置読み取りから露光強度設定までの1サイクルに要する動作時間をTuと記載することにする。なお、Tuは原盤露光装置の性能により左右される値である。
【0199】
すなわち、対物レンズ605が第一の記録領域R1を露光中であれば露光強度をP1とするように記録光強度調整機構が作動し、第二の記録領域R2を露光中であれば露光強度をP2とするように記録光強度調整機構が作動する。対物レンズ605が溝形状遷移区間Sgを露光中であると判断された場合は、例えば図6に示すように、RiとRoの間を適当な形態の関数で補間するような露光強度となるように記録光強度調整機構が作動する。つまり、第一の記録領域R1が第二の記録領域R2よりも内周側に位置し、更にRiとRoの間を一次関数的に補間する場合には、対物レンズ605が半径位置Rc(ここで、Ri≦Rc≦Roとする。)に位置する場合の露光パワーPcは、下記式により算出される。
Pc = (P2−P1)×(Rc−Ri)/(Ro−Ri)+P1
【0200】
なお、上記説明では一次関数的に露光強度を補間しているが、関数の形態は一次関数に限定されるものではなく、例えば二次関数的に露光強度が増減されてもよい。つまり、計算によって補間して露光強度を設定するという点が重要なのである。
【0201】
ところが、先にも述べたように、原盤露光装置には繰り返し動作時間Tuが必要であるため、溝形状遷移区間Sg内での実際の露光強度は、図6に示すように平滑とはならず、図7に示すように階段状となる。ここで、階段の1ステップに相当するトラック長さSuは、Tuに露光時の線速LVを乗じたものに相当し、下記式で表わされる。
Su = LV×Tu
【0202】
以上が、本態様に係る原盤露光装置の基本的な動作である。
すなわち、第一の記録領域R1の形成を完了した後、溝形状遷移区間Sgを形成する際に、対物レンズ605の半径位置を順次読み込んで記録光強度を階段状に、即ち段階的に変えるので、結果として溝形状遷移区間Sgにおける溝形状を段階的に変化させることができる。ここで、規格化プッシュプル信号振幅の変動をある程度にまで抑えることが望ましいので、段階的に変化された溝形状の1ステップに相当するトラック長さSuをある程度にまで短くすることが望まれる。
【0203】
ここで、Suを短くするためには次のようにする。すなわち、1ステップの長さSuは、露光時の線速LVとTuとの積であるので、Suを小さくするためには、LVを小さくするかTuを小さくすればよい。
しかし、LVを小さくしてしまうと、露光に要する時間が長くなるという課題が発生してしまう。露光に要する時間が長くなると生産量が落ちてしまうだけでなく、長時間に亘る原盤露光装置の安定性の確保が困難となってしまうという課題が発生する。
【0204】
すなわち、Suを小さくするためには、Tuを小さくする方法がより適切であり、現実的な露光時の線速LVを確保するためには、Tuを少なくとも100msec以下とすることが望まれる。Tuが長過ぎる場合、現実的な速さの露光線速で露光すると、溝形状遷移区間Sg内の溝形状変化が極めて粗い状態となってしまい、規格化プッシュプル信号振幅の急激な変化を抑え切れなくなってしまう場合がある。
【実施例】
【0205】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例により限定されるものではない。
以下の各実施例及び各比較例では、情報記録媒体として、溝形状遷移区間Sg及びトラックピッチ遷移区間Stpの形成条件を変えた記録型Blu−rayディスクを作製し、得られた情報記録媒体を情報再生装置にて再生することにより評価を行なった。
【0206】
[スタンパの製造]
所望の溝形状遷移区間Sg及びトラックピッチ遷移区間Stpを有する、各実施例及び各比較例の情報記録媒体を製造するために、まず、目的とする溝形状遷移区間Sg及びトラックピッチ遷移区間Stpに相当する凹凸パターンを有するスタンパ(ファザー)を製造した。
スタンパの製造は、前述の[II−1.スタンパの製造]の欄で説明した方法に従い行なった。具体的な条件としては、厚さ6mmのガラス板を原盤用基板501として、その上にフォトレジスト502を厚さ60nmとなるように形成した原盤503を用い、これを後述の条件に基づいて露光した後、現像し、凹凸原盤503’を得た。この凹凸原盤503’上に、スパッタ法を用いてニッケルを厚さ20nmとなるように成膜し(導電層505)、更に電気めっき法でニッケルを積層することにより、厚さ290μmのファザー層506を形成した。このファザー層506を剥離して、ファザースタンパ506とした。
【0207】
なお、原盤の露光は、以下の条件により行なった。
記録型Blu−rayディスクにおいては、PIC領域がディスクの内周側、ユーザーデータ領域がディスクの外周側に相当する。トラックはPIC領域からユーザーデータ領域へと進む方向であり、原盤露光もPIC領域からユーザーデータ領域へと進む方向で行なった。
【0208】
また、何れの実施例及び比較例においても、第一の記録領域R1をPIC領域とし、第二の記録領域R2をユーザーデータ領域とし、第一の記録領域R1におけるトラックピッチtp1を0.35μm、第二の記録領域R2におけるトラックピッチtp2を0.32μmとした。
【0209】
また、後に説明する規格化プッシュプル信号振幅NPPが後述の管理範囲を満足するように、PIC領域及びユーザーデータ領域の溝形状を調整した。具体的な数値としては、PIC領域の溝深さを30nm、溝幅を0.10μmとし、ユーザーデータ領域の溝深さを60nm、溝幅を0.19μmとした。
【0210】
また、原盤露光時の露光光強度の調節は、実施例3のみ、上述の第2の態様に係る原盤露光装置(記録光強度調節機構及び繰り返し動作機構を備えた原盤露光装置)を用い、それ以外の実施例及び比較例については、上述の第1の態様に係る原盤露光装置(記録光強度スイープ機構を備えた原盤露光装置)を用いて行なった。
【0211】
[情報記録媒体の製造]
各実施例及び各比較例の情報記録媒体は、上述のスタンパを用いて基板を作製し、その基板上に反射層、記録層、界面層及びカバー層をこの順に積層して形成することにより、行なった。
【0212】
具体的には、まず、基板の材料としてポリカーボネートを使用し、上述のスタンパを型として射出成形することにより、スタンパの凹凸パターンが写し取られた基板を形成した。なお、基板の厚みは1.1mmとした。
【0213】
次いで、この基板上に、AgNdCu合金からなる反射層を、スパッタ法にて70nmの厚さに形成した。
【0214】
続いて、この反射層上に、含金属アゾ系色素をオクタフルオロペンタノール(OFP)で希釈後、スピンコート法にて成膜することにより、記録層を形成した。スピンコート法の条件は次の通りである。すなわち、有機色素を1.0重量%の濃度でOFPに溶解させた溶液を、基板の中央付近に1.5g環状に塗布し、基板を1200rpmで7秒間回転させ色素を延伸し、その後、9200rpmで3秒間回転させ色素を振り切ることによって塗布を行なった。なお、塗布後には媒体を100℃の環境下で1時間保持することで、溶媒であるOFPを蒸発させて除去した。記録層の厚みは30nm程度を目標とした。
【0215】
次に、この記録層上に、スパッタ法により、ZnS:SiO2からなる界面層を、16nmの厚さに形成した。
【0216】
続いて、この界面層上に、厚さ75μmのポリカーボネート樹脂のシートと厚さ25μmの感圧接着剤層とからなる、合計の厚さ100μmの透明なカバー層を貼り合わせた。
【0217】
[評価用情報再生装置]
各実施例及び各比較例の情報記録媒体の評価には、図8に示す構成の情報再生装置(以下「評価用情報再生装置」という。)を用いた。なお、図8(a)は、各実施例及び各比較例の情報記録媒体の評価に用いた評価用情報再生装置の要部の構成を示す機能ブロック図であり、図8(b)は、図8(a)に示す評価用情報再生装置が有する4分割フォトダイオードの構成を説明するための図である。
【0218】
図8(a)に示す評価用情報再生装置900は、4分割フォトダイオード901、プッシュプル信号生成回路902、和信号生成回路903、規格化プッシュプル信号生成回路904、合成回路905、スピンドルモーター(図示省略)、半導体レーザー等の光源(図示省略)、対物レンズ(図示省略)、増幅回路(図示せず)等を具備する。また、スピンドルモーターに、評価対象となる情報記録媒体906を装着できるようになっている。
【0219】
半導体レーザー等から出射されたレーザー光は、スピンドルモーターに固定された情報記録媒体906上に、対物レンズにて集光される。情報記録媒体906上で反射されたレーザー光は4分割フォトダイオード901へと導かれる。4分割フォトダイオード901は、図8(b)に示すように、4つに分割されたディテクタからなり、各ディテクタへと入射するレーザー光の強度に応じた電気信号が、各々のディテクタより出力される。
【0220】
各々のディテクタより出力された電気信号は、必要に応じて増幅回路(図示せず)などを通過された後、プッシュプル信号生成回路902及び和信号生成回路903へと導かれる。プッシュプル信号生成回路902は、(A+B)−(C+D)を計算してプッシュプル信号PPを生成する。また、和信号生成回路903は、(A+B)+(C+D)を計算して和信号SUMを生成する。更に、規格化プッシュプル信号生成回路904は、PP及びSUMをもとにPP/SUMを計算して、規格化プッシュプル信号を生成する。そして、規格化プッシュプル信号に基づいて、サーボユニット(図示せず)がトラッキング制御を実行する。
【0221】
[情報記録媒体の評価手順]
各実施例及び各比較例の情報記録媒体の評価は、上述の評価用情報再生装置900を用いて、以下の手順により行なった。
【0222】
評価にあたっては、PIC領域とユーザーデータ領域との境界近傍での未記録状態でのプッシュプル信号PP及び和信号SUMを、トラッキングサーボを行なわない状態でオシロスコープにて測定し、規格化プッシュプル信号振幅NPPを算出した。そして、PIC領域とユーザーデータ領域との境界近傍におけるNPPの変動の様子を調べることで、NPPの特性を評価した。
なお、下記の実施例1〜3及び比較例1,2については、以上の手順により測定された規格化プッシュプル信号振幅NPP及び和信号SUMのオシロスコープによる波形を、図9〜13として掲げているが、これらは何れも、情報記録媒体のトラック約2分の1周分の波形を示している。即ち、これらの図の横軸は、何れもトラック約2分の1周分に相当する。
【0223】
また、何れの実施例及び比較例においても、PIC領域におけるNPPの管理範囲を0.26〜0.52とした。PIC領域におけるNPPをこの範囲に入れておけば、PIC領域において安定したフォーカスサーボ及びトラッキングサーボ状態が実現できる。
【0224】
また、何れの実施例及び比較例においても、ユーザーデータ領域における未記録状態でのNPPとしては0.6程度を目標とし、ユーザーデータ領域における未記録状態でのNPPの上限を0.8と設定した。また、ユーザーデータ領域における未記録状態でのNPPの下限は0.21と設定した。ユーザーデータ領域における未記録状態でのNPPをこの範囲に入れておけば、ユーザーデータ領域において安定したフォーカスサーボ及びトラッキングサーボ状態が実現できる。
【0225】
また、何れの実施例及び比較例においても、記録領域遷移区間Sxにおける未記録状態でのNPPの管理範囲は、上記PIC領域及びユーザーデータ領域の管理範囲のうち、より範囲の広いユーザーデータ領域と同様とした。すなわち、記録領域遷移区間Sxにおける未記録状態でのNPPの管理範囲を、0.21〜0.8とした。
【0226】
なお、上記NPPの管理範囲は、サーボ系の性能により左右される流動的な数値であり、使用するサーボ系により適宜決定される。
今回設定した値は、通常のサーボ装置の性能よりもやや低い装置でも安定したフォーカスサーボ及びトラッキングサーボ状態が実現できると考えられる範囲とした。
すなわち、情報記録媒体全面におけるNPPが上記の範囲内である情報記録媒体が提供できれば、様々な記録再生装置において安定したフォーカスサーボ及びトラッキングサーボ状態が実現できると考えられる。
なお、以下の実施例及び比較例におけるNPPとは、全て未記録状態でのNPPのことを指す。
【0227】
[実施例1]
原盤露光時に、トラックピッチ遷移区間Stpのトラックに沿った長さLtpを3.2mとし、溝形状遷移区間Sgのトラックに沿った長さLgを4.5mとした。トラックピッチ遷移区間Stpの開始点は溝形状遷移区間Sgの開始点よりも時間的に早くし、StpとSgの重なり部分のトラックに沿った長さLLを2.9mとした。ここで、Lg/Ltpの値は1.41、LL/Ltpの値は0.91となる。
以上の条件で情報記録媒体を作製した。これを実施例1の情報記録媒体とする。
【0228】
実施例1の情報記録媒体について、上述の手順で評価を行なった。その結果として得られた、PIC領域とユーザーデータ領域の境界近傍での規格化プッシュプル信号振幅NPP及び和信号SUMの様子を、図9に示す。
【0229】
実施例1の情報記録媒体では、PIC領域でのNPPは0.3であり、ユーザーデータ領域でのNPPは0.63であった。
【0230】
更に、PIC領域及びユーザーデータ領域の境界近傍では、NPPが滑らかに変化しており、記録領域遷移区間Sxにおいても所定のNPPの管理範囲の下限及び上限を外れることがなかった。
【0231】
また、記録領域遷移区間Sx内のNPPが、PIC領域のNPPよりも常に大きく、ユーザーデータ領域のNPPよりも常に小さくなっていた。
【0232】
以上の結果から、本実施例では、十分に安定したフォーカスサーボ及びトラッキングサーボ状態の実現可能な情報記録媒体が得られたことが分かる。
【0233】
[実施例2]
原盤露光時に、トラックピッチ遷移区間Stpのトラックに沿った長さLtpを3.2mとし、溝形状遷移区間Sgのトラックに沿った長さLgを2.5mとした。トラックピッチ遷移区間Stpの開始点と溝形状遷移区間Sgの開始点とを略同一箇所とし、StpとSgの重なり部分のトラックに沿った長さLLを2.5mとした。ここで、Lg/Ltpの値は0.78、LL/Ltpの値は0.78となる。
以上の条件で情報記録媒体を作製した。これを実施例2の情報記録媒体とする。
【0234】
実施例2の情報記録媒体について、上述の手順で評価を行なった。その結果として得られた、PIC領域とユーザーデータ領域の境界近傍での規格化プッシュプル信号振幅NPP及び和信号SUMの様子を、図10に示す。
【0235】
実施例2の情報記録媒体では、PIC領域でのNPPは0.39であり、ユーザーデータ領域でのNPPは0.63であった。
【0236】
ここで、記録領域遷移区間SxでのNPPが一部領域においてやや増大しているが、増大部分におけるNPPの最大値は0.77であり、所定のNPPの管理範囲の上限を上回ることはなかった。
【0237】
以上の結果から、本実施例では、安定したフォーカスサーボ及びトラッキングサーボ状態の実現可能な情報記録媒体が得られたことが分かる。
【0238】
[実施例3]
原盤露光時に、トラックピッチ遷移区間Stpのトラックに沿った長さLtpを1.6mとし、溝形状遷移区間Sgのトラックに沿った長さLgを3.9mとした。トラックピッチ遷移区間Stpの開始点は溝形状遷移区間Sgの開始点よりも時間的に早くし、StpとSgの重なり部分のトラックに沿った長さLLを0.4mとした。ここで、Lg/Ltpの値は2.44、LL/Ltpの値は0.25となる。
【0239】
また、原盤露光時には、上述の第2の態様に係る原盤露光装置(記録光強度調節機構及び繰り返し動作機構を備えた原盤露光装置)を用い、PIC領域とユーザーデータ領域の遷移部において露光光強度スイープを行なわず、記録領域遷移区間Sxにおいて、記録光強度調節機構により記録光強度を調整するという動作を90msec毎に繰り返した。
以上の条件で情報記録媒体を作製した。これを実施例3の情報記録媒体とする。
【0240】
実施例3の情報記録媒体について、上述の手順で評価を行なった。その結果として得られた、PIC領域とユーザーデータ領域の境界近傍での規格化プッシュプル信号振幅NPP及び和信号SUMの様子を、図11に示す。
【0241】
実施例3の情報記録媒体では、PIC領域でのNPPは0.34であり、ユーザーデータ領域でのNPPは0.66であった。
【0242】
また、PIC領域及びユーザーデータ領域の境界近傍では、一部NPPが小さい箇所があるが、当該箇所のNPPは0.26であり、所定のNPPの管理範囲の下限値を下回ることはなかった。
【0243】
つまり、この構成の情報記録媒体では、上記原盤露光装置の繰り返し動作が100msec以下となっているので、記録領域遷移区間SxにおいてNPPが急激に変化している様子は見られなかった。また、NPPが極端に大きい箇所或いは極端に小さい箇所が存在せず、所定のNPPの管理範囲の下限及び上限を外れることがなかった。
【0244】
以上の結果から、本実施例では、フォーカスサーボ回路及びトラッキングサーボ回路の微調整により十分に安定したフォーカスサーボ及びトラッキングサーボ状態が実現可能な情報記録媒体が得られたことが分かる。
【0245】
[実施例4〜7]
Ltp、Lg、LLの値を各々、以下の表1に示す値とした以外は、実施例1と同様の手順により情報記録媒体を作製した。これらを実施例4〜7の情報記録媒体とする。
【0246】
実施例4〜7について、実施例1〜3と同様にNPPを測定したところ、何れも所定の範囲の数値に納まっており、安定したフォーカスサーボ及びトラッキングサーボ状態の実現可能な情報記録媒体が提供できた。
【0247】
[比較例1]
原盤露光時に、トラックピッチ遷移区間Stpのトラックに沿った長さLtpを3.2mとし、溝形状遷移区間Sgのトラックに沿った長さLgを0.5mとした。トラックピッチ遷移区間Stpの終了点と溝形状遷移区間Sgの開始点とを略同一箇所とし、StpとSgの重なり部分のトラックに沿った長さLLを0m(つまり、StpとSgの重なり部分が無い状態)とした。ここで、Lg/Ltpの値は0.16、LL/Ltpの値は0となる。
以上の条件で情報記録媒体を作製した。これを比較例1の情報記録媒体とする。
【0248】
比較例1の情報記録媒体における、PIC領域とユーザーデータ領域の境界近傍での規格化プッシュプル信号振幅NPP及び和信号SUMの様子を、図12に示す。
【0249】
比較例1の情報記録媒体では、PIC領域でのNPPは0.41であり、ユーザーデータ領域でのNPPは0.67であった。
また、記録領域遷移区間SxにおけるNPPの最大値は0.9であり、最小値は0.07であった。
【0250】
即ち、NPPが一部領域において管理範囲の上限を上回っており、更に別の領域においては下限を下回ってしまっている。この程度にまでNPPが管理範囲を超えていると、安定してトラッキングサーボを実行することは困難である。
【0251】
また、NPPの変化が比較的急激であり、不連続に変化してしまっている。このような情報記録媒体は、当該箇所においてトラッキングサーボに障害が生じる可能性がある。
【0252】
[比較例2]
原盤露光時に、トラックピッチ遷移区間Stpのトラックに沿った長さLtpを3.2mとし、溝形状遷移区間Sgのトラックに沿った長さLgを0m、すなわち、Stpの開始点を境に溝形状を一気に変更し、溝形状遷移区間Sgを全く設けない状態とした。
以上の条件で情報記録媒体を作製した。これを比較例2の情報記録媒体とする。
【0253】
比較例2の情報記録媒体における、PIC領域とユーザーデータ領域の境界近傍での規格化プッシュプル信号振幅NPP及び和信号SUMの様子を、図13に示す。
【0254】
比較例2の情報記録媒体では、PIC領域でのNPPは0.3であり、ユーザーデータ領域でのNPPは0.61であった。
また、記録領域遷移区間SxにおけるNPPの最大値が1.2であり、最小値が0.2であった。
【0255】
即ち、NPPが管理範囲の上限を超えてしまっている箇所と、下限を下回っている箇所が存在した。この程度にまでNPPが管理範囲を超えていると、安定してトラッキングサーボを実行することは困難である。
【0256】
また、NPPの変化が比較的急激であり、不連続に変化してしまっている。このような情報記録媒体は、当該箇所においてトラッキングサーボに障害が生じる可能性がある。
【0257】
[評価]
各実施例及び各比較例における、トラックピッチ遷移区間Stpのトラックに沿った長さLtp、溝形状遷移区間Sgのトラックに沿った長さLg、トラックピッチ遷移区間Stpと溝形状遷移区間Sgとの重なり部分のトラックに沿った長さLL、Lg/Ltp及びLL/Ltpの各数値を、以下の表1に示す。
【表1】

【0258】
図14は、実施例1〜7及び比較例1,2の情報記録媒体について得られたLg/LtpとLL/Ltpとの関係をプロットした図である。グラフ中の太線の枠は、本発明において好適なLg/Ltp及びLL/Ltpの値の範囲(0.2≦Lg/Ltp≦2.5、0.1≦LL/Ltp≦1.0)を示している。
【0259】
以上の結果より、本発明において、Lg/Ltp及びLL/Ltpの上述の好適な範囲内に設定することが、安定したフォーカスサーボ及びトラッキングサーボ状態を実現する上で好ましいことが判る。
【産業上の利用可能性】
【0260】
本発明の情報記録媒体及び原盤露光装置は、例えばBlu−rayディスク等の情報記録媒体の分野に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0261】
100,200 情報記録媒体
101,201 基板
102 反射層
103 記録層
104,207 カバー層
105,208 レーザー光
202 第1の反射層
203 第1の記録層
204 中間層
205 第2の反射層
206 第2の記録層
300 記録型Blu−rayディスク
301 BCA領域
302 PIC領域
303 ユーザーデータ領域
501 原盤用基板
502 フォトレジスト
503 原盤
503’ 凹凸原盤
504 パターン
505 導電層
506 ファザー層(ファザースタンパ、ファザー)
507 剥離層
508 マザー層(マザースタンパ、マザー)
600 原盤露光装置
601 フォーマッター(偏向信号生成機構)
602 レーザー光源(記録光源)
603 パワー調整素子(記録光強度調節機構)
604 EOD素子(記録光偏向機構)
605 対物レンズ(集光機構)
606 ターンテーブル(回転機構)
607 スライダー(半径移動機構)
608 ミラー
609 コントローラー(制御機構)
900 評価用情報再生装置
901 4分割フォトダイオード
902 プッシュプル信号生成回路
903 和信号生成回路
904 規格化プッシュプル信号生成回路
905 合成回路
906 評価対象の情報記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録光源と、
所定のフォーマットに基づいた所定の偏向信号を発生させる偏向信号生成機構と、
上記偏向信号生成機構が生成した偏向信号に基づいて、上記記録光源が発生する記録光を偏向させる記録光偏向機構と、
上記記録光を原盤上に集光させる集光機構と、
上記原盤を載置し回転させるための回転機構と、
上記集光機構を上記原盤の半径方向に相対的に移動させる半径移動機構と、
トラックピッチの異なる複数の記録領域を生成できるように、予め設定した値に基づいて、上記回転機構の回転速度と、上記半径移動機構の移動速度と、上記集光機構の位置とを制御する制御機構と、
上記記録光の強度を調節する記録光強度調節機構と、
予め設定した値に基づいて、上記記録光の強度を単調増加又は単調減少でスイープさせる、記録光強度スイープ機構とを備えた
ことを特徴とする、原盤露光装置。
【請求項2】
予め設定した特定の半径位置に集光機構が達したことを検出して、上記記録光強度スイープ機構による記録光強度のスイープを開始及び/又は終了する機構を備えた
ことを特徴とする、請求項1記載の原盤露光装置。
【請求項3】
予め設定した特定のアドレスを上記偏向信号生成機構が出力したことを検出して、上記記録光強度スイープ機構による記録光強度のスイープを開始及び/又は終了する機構を備えた
ことを特徴とする、請求項1記載の原盤露光装置。
【請求項4】
予め設定した特定の半径位置に集光機構が達したことを検出して、上記記録光強度スイープ機構による記録光強度のスイープを開始し、かつ、予め設定した所定の時間経過後に上記スイープを終了する機構を備えた
ことを特徴とする、請求項1記載の原盤露光装置。
【請求項5】
予め設定した特定のアドレスを上記偏向信号生成機構が出力したことを検出して、上記記録光強度スイープ機構による記録光強度のスイープを開始し、かつ、予め設定した所定の時間経過後に上記スイープを終了する機構を備えた
ことを特徴とする、請求項1記載の原盤露光装置。
【請求項6】
記録光源と、
所定のフォーマットに基づいた所定の偏向信号を発生させる偏向信号生成機構と、
上記偏向信号生成機構が生成した偏向信号に基づいて上記記録光源が発生する記録光を偏向させる記録光偏向機構と、
上記記録光を原盤上に集光させる集光機構と、
上記原盤を載置し回転させるための回転機構と、
上記集光機構を上記原盤の半径方向に相対的に移動させる半径移動機構と、
トラックピッチの異なる複数の記録領域を生成できるように、予め設定した値に基づいて、上記回転機構の回転速度と、上記半径移動機構の移動速度と、上記集光機構の位置とを制御する制御機構と、
上記集光機構の位置と、予め設定した特定の半径値における記録光強度設定値とに基づいて、記録光強度を補間して調節する記録光強度調節機構と、
上記記録光強度調節動作を繰り返し行なう繰り返し動作機構とを少なくとも備え、
上記繰り返し動作機構の1サイクルに要する動作時間が、100msec以下であることを特徴とする、原盤露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−48011(P2013−48011A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−242101(P2012−242101)
【出願日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【分割の表示】特願2007−308246(P2007−308246)の分割
【原出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Blu−ray
【出願人】(501495237)三菱化学メディア株式会社 (105)
【Fターム(参考)】