説明

原稿搬送装置及び画像読取装置

【課題】第1搬送ローラ対から原稿の後端が抜ける際に発生する駆動側の第1搬送ローラのトルク変動に起因する読取画像の画質低下を防止することができる原稿搬送装置を提供する。
【解決手段】原稿搬送装置は、原稿の画像を読み取る読取部7,8の上流側に配置され、原稿Sを読取部7,8に搬送する第1搬送ローラ対5,6と、読取部7,8の下流側に配置され、該読取部7,8を通過した原稿を下流側に搬送する第2搬送ローラ対9,10と、該第2搬送ローラ対9,10の駆動側の第2搬送ローラ9を駆動する駆動手段10と、駆動側の第2搬送ローラ9の駆動力を第1搬送ローラ対5,6の駆動側の第1搬送ローラ5に伝達する伝達手段21b,13,14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、スキャナ、ファクシミリ、複写機等の画像読取装置に用いられる原稿搬送装置、及び該原稿搬送装置を備える画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の原稿搬送装置を備える画像読取装置として、例えば図8に示すものがある。
【0003】
この画像読取装置は、給紙トレイ2に積載された複数枚の原稿Sがフィードローラ3及びリタードローラ4によって一枚ずつ分離されて搬送路に給送され、搬送路に給送された原稿Sは、第1搬送ローラ対5,6によって下流側に搬送される。
【0004】
下流側に搬送された原稿Sは、読取センサ7,8によって表裏の画像が読み取られ、その後、第2搬送ローラ対9,10によって積載トレイ11に排出される。
【0005】
また、図9に示すように、第1搬送ローラ対5,6の第1搬送ローラ5はローラ軸より駆動力が伝達される側であり、第1搬送ローラ6が従動ローラとされる。駆動モータ12の駆動力がモータギア13および第1駆動ギア14を介して減速して第1搬送ローラ5に伝達されることで第1搬送ローラ対5,6が回転駆動される。
【0006】
更に、第2搬送ローラ対9,10の第2搬送ローラ9はローラ軸より駆動力が伝達される側であり、第2搬送ローラ10が従動側とされる。第1駆動ギア14の駆動力がアイドラギア16及び第2駆動ギア15を介して第2搬送ローラ9に伝達されることで第2搬送ローラ対9,10が回転駆動される。このように、第1搬送ローラ対5,6と第2搬送ローラ対9,10は、同一の駆動モータ12により、ギア列等を介して回転駆動される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−296925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、厚みのある原稿(厚紙、名刺、カード、プラスチックカード等)を搬送する場合、原稿の後端が第1搬送ローラ対5,6を抜けるとき、ローラ間のニップ圧により、原稿の後端が第1搬送ローラ5を回転させる力が働く。このとき、第1駆動ギア14の回転が一時的に駆動モータ12の駆動力によって駆動されているときの回転よりも速くなり、その後に、ギアのバックラッシュの分、第1駆動ギア14は一瞬停止状態となる。そのため、駆動モータ12の回転に第1駆動ギア14が追従し、モータギア13の回転が第1駆動ギア14に伝達されるまで原稿の搬送が瞬間的ではあるが停止する現象が発生する。
【0009】
このとき、読取センサ7,8によって画像の読取動作が行われていると、読み取られた画像は、センサの副走査方向に対して部分的に縮んだり伸びたりするため、画像のブレや歪みが発生する。
【0010】
即ち、第1駆動ギア14が所定の搬送速度よりも速く回転する間は、画像が縮み、第1駆動ギア14がモータギア13の回転に追従するまで原稿の搬送が停止している間は、画像が伸びる。
【0011】
以下、上記現象が発生する理由について説明する。
【0012】
図10(a)は第1搬送ローラ対5,6で原稿Sを搬送しているときの状態を示す図、図10(b)は原稿Sの後端が第1搬送ローラ対5,6を抜けた直後の状態を示す図である。
【0013】
図において、Rは第1搬送ローラ5の半径、rは第1搬送ローラ6の半径、Pは第1搬送ローラ6による加圧力、Fは加圧力Pによって原稿Sの後端が第1搬送ローラ5を抜けた直後に第1搬送ローラ5に働く力である。また、f1はFの接線方向の分力、f2はFのラジアル方向の分力である。
【0014】
原稿Sの後端が第1搬送ローラ5を抜けるときに作用する第1搬送ローラ5を速く回転させる力は、分力f1が相当する。
【0015】
第1搬送ローラ5の中心を基準にして、第1搬送ローラ5と第1搬送ローラ6との当接点と、第1搬送ローラ5と原稿Sの後端との当接点とのなす角度をαとすると、f1=Fsinαとなる。また、原稿Sが第1搬送ローラ対5,6を抜けた直後に第1搬送ローラ5に発生する回転トルクTはT=R・f1=RFsinαとなる。
【0016】
図11は、モータギア13と第1駆動ギア14との噛合状態を説明するための説明図である。図11(a)は原稿Sを搬送しているときの状態、図11(b)は原稿Sの後端が第1搬送ローラ対5,6を抜けた直後の状態、図11(c)は図11(b)の状態から所定の時間が経過した後の状態を示す。
【0017】
原稿Sの後端が第1搬送ローラ対5,6を抜ける際、第1搬送ローラ5には分力f1が作用し、等速回転状態に加速度が生じることで速度が増加する。第1搬送ローラ5は、モータギア13と噛合する第1駆動ギア14と連結されているので、ギアのバックラッシュの量だけ、第1駆動ギア14が余分に回転する。
【0018】
この為、図11(a)に示すように、モータギア13の歯13aと第1駆動ギア14の歯14aとが接している状態から、第1駆動ギア14がバックラッシュ分余分に回転する。そして、図11(b)に示すように、モータギア13の歯13aに対して、第1駆動ギア14の歯14aの次の歯14bが当接する。
【0019】
この時点で第1駆動ギア14の回転が停止し、その停止状態が、図11(c)に示すように、モータギア13の歯13aの次の歯13bが第1駆動ギア14の歯14bに当接するまで継続する。
【0020】
また、第1搬送ローラ5の回転は、第1駆動ギア14によってアイドラギア16を介して第2駆動ギア15に伝達されるので、第2駆動ギア15においても同様の現象が発生する。なお、ギアのバックラッシュ以外に、ギアやプーリ等の駆動伝達部材と搬送ローラ軸との連結部分の嵌合ガタによる駆動ガタがある場合も同様である。
【0021】
そこで、本発明は、搬送ローラ対を原稿の後端が抜ける際に発生する搬送速度変動に起因する読取画像の画質低下を防止又は低減することができる原稿搬送装置及び画像読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために、本発明の原稿搬送装置は、原稿の画像を読み取る読取部の上流側に配置され、原稿を前記読取部に搬送する第1搬送ローラ対と、前記読取部の下流側に配置され、該読取部を通過した原稿を下流方向に搬送する第2搬送ローラ対と、前記第1搬送ローラ対及び前記第2搬送ローラ対の駆動源と、該駆動源から前記第2搬送ローラ対の少なくとも一方のローラに駆動力を伝達する第1伝達手段と、該第1伝達手段により伝達された駆動力を更に前記第1搬送ローラ対の少なくとも一方のローラに伝達する第2伝達手段と、を備えることを特徴とする。
【0023】
本発明の画像読取装置は、原稿搬送装置により搬送される原稿の画像を読み取る読取部を備える画像読取装置であって、前記原稿搬送装置として、請求項1〜4のいずれか一項に記載の原稿搬送装置が用いられる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、搬送ローラ対を原稿の後端が抜ける際に発生する搬送速度変動に起因する読取画像の画質低下を防止又は低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態である原稿搬送装置を備える画像読取装置を説明するための概略断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態である原稿搬送装置を備える画像読取装置の変形例を説明するための概略断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態である原稿搬送装置を備える画像読取装置の変形例を説明するための概略断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態である原稿搬送装置を備える画像読取装置を説明するための概略断面図である。
【図5】第1搬送ローラ対及び第2搬送ローラ対の駆動系を説明するための斜視図である。
【図6】本発明の第3の実施形態である原稿搬送装置を備える画像読取装置を説明するための概略断面図である。
【図7】本発明の第4の実施形態である原稿搬送装置を備える画像読取装置を説明するための概略断面図である。
【図8】従来の原稿搬送装置を備える画像読取装置を説明するための概略断面図である。
【図9】図8に示す従来の原稿搬送装置の搬送ローラの駆動系を説明するための斜視図である。
【図10】(a)は第1搬送ローラ対で原稿を搬送しているときの状態を示す図、(b)は原稿の後端が第1搬送ローラ対を抜けた直後の状態を示す図である。
【図11】モータギアと第1駆動ギアとの噛合状態を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0027】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態である原稿搬送装置を備える画像読取装置を説明するための概略断面図である。
【0028】
図1に示す画像読取装置1は、給紙トレイ2に表側を下向きにして積載された複数枚の原稿Sがフィードローラ3とリタードローラ4とによって最も下に位置する原稿から1枚ずつ搬送路に分離給送される。
【0029】
搬送路に給送された原稿Sは、第1搬送ローラ対5,6により下流方向に搬送され、一対の読取センサ7,8を通過する際に、まず、読取センサ(読取部)7によって表面の画像が読み取られ、次いで、読取センサ8によって裏面の画像が読み取られる。表裏両面の画像が読み取られた原稿Sは、第2搬送ローラ対9,10によって下流方向に搬送され、排紙トレイ11に順次排紙されて積載される。
【0030】
ここで、本実施形態では、第1搬送ローラ対5,6の第1搬送ローラ5が軸5aから駆動力が伝達される駆動ローラ(一方のローラ)とされ、第1搬送ローラ6が従動ローラ(他方のローラ)とされている。また、第2搬送ローラ対9,10の第2搬送ローラ9が軸9aから駆動力が伝達される駆動ローラ(一方のローラ)とされ、第2搬送ローラ10が従動ローラとされている。そして、駆動モータ(駆動源)12の駆動力を第2搬送ローラ9にまず伝達し、該第2搬送ローラ9の軸9aに連動するギア21aの駆動力をギア機構を介して駆動側の第1搬送ローラ5に伝達する。
【0031】
具体的には、駆動モータ12は、第2搬送ローラ対9,10の近傍位置で装置本体内に設置されており、駆動モータ12のモータ軸には、モータプーリ20が固定されている。なお、駆動モータは、ステッピングモータ、ブラシレスモータ等のどのようなモータでもよい。
【0032】
第2搬送ローラ9の軸9aには、プーリ21a及びギア21bが一体に形成されたギアプーリ21が固定されている。また、モータプーリ20とギアプーリ21のプーリ21aとの間には、タイミングベルト22が架設されており、これらの部材が本発明の第1伝達手段の一例に相当する。なお、ギアプーリ21に代えて独立したプーリ21aとギア21bとを軸9aに取り付けてもよく、また、第1伝達手段をギア等に変更してもよい。更に、第1伝達手段は、第2搬送ローラ9と第2搬送ローラ10の両方のローラに駆動力を伝達する構成としてもよく、本発明に含まれる。
【0033】
一方、第1搬送ローラ5の軸5aには、第1駆動ギア14が固定され、第1駆動ギア14は、アイドラギア16を介してギアプーリ21のギア21bに連結されている。これらの部材が本発明の第2伝達手段の一例に相当する。なお、第2伝達手段にプーリ−ベルト機構等を用いてもよい。また、第2伝達手段は、第1搬送ローラ5と第1搬送ローラ6の両方のローラに駆動力を伝達する構成としてもよく、本発明に含まれる。
【0034】
本実施形態では、駆動モータ12の駆動力は、モータプーリ20からタイミングベルト21を介してギアプーリ21のプーリ21aに伝達され、これにより、第2搬送ローラ9が回転駆動され、また、第2搬送ローラ10が第2搬送ローラ9に従動して回転する。
【0035】
そして、第2搬送ローラ9の軸9aに連動するギアプーリ21のギア21bからアイドラギア16を介して第1駆動ギア14に駆動力が伝達されて、第1搬送ローラ5が回転駆動され、また、第1搬送ローラ6が第1搬送ローラ5に従動して回転する。
【0036】
以上説明したように、本実施形態では、駆動モータ12の駆動力を読取センサ7,8の下流側に配置される第2搬送ローラ9にまず伝達する。そして、第2搬送ローラ9に連動する回転体から駆動力をギア機構を介して読取センサ7,8の上流側に配置される第1搬送ローラ5に伝達する。
【0037】
これにより、原稿Sの後端が第1搬送ローラ対5,6を抜けるとき、原稿Sの後端が第1搬送ローラ5を回転させる力が作用しても、第2搬送ローラ対9,10は、原稿Sを所定のニップ圧で挟持した状態で、第2搬送ローラ9が駆動モータ12により駆動される。
【0038】
従って、第2搬送ローラ9は、第1搬送ローラ5の軸5aに固定した第1駆動ギア14のバックラッシュによる第1搬送ローラ5のトルク変動の影響を受けることはない。この結果、第1搬送ローラ対5,6を原稿Sの後端が抜ける際に発生する駆動側の第1搬送ローラ5のトルク変動に起因する読取画像の伸び縮みによる画質低下を防止することができる。
【0039】
なお、図2に示すように、アイドラギア16に代えて、タイミングベルト25を用いて第2搬送ローラ9の駆動力を第1搬送ローラ5へ伝達してもよい。
【0040】
図2の例では、第2搬送ローラ9の軸9aに固定された2段プーリ23と第1搬送ローラ5の軸5aに固定されたプーリ24との間にタイミングベルト25を架設し、第2搬送ローラ9の駆動力を第1搬送ローラ5へ伝達する。このようにすると、ギアのバックラッシュを低減出来る為、より効果的である。なお、2段プーリでなく、2つの独立したプーリを軸9aに取り付けてもよい。
【0041】
また、図3に示すように、第2搬送ローラ9の軸9aに直接、駆動モータ12を連結して第2搬送ローラ9を回転駆動してもよい。
【0042】
図3の例では、第2搬送ローラ9の軸9aに固定されたプーリ26と第1搬送ローラ5の軸5aに固定されたプーリ24との間にタイミングベルト25を架設して、第2搬送ローラ9の駆動力を第1搬送ローラ5へ伝達する。
【0043】
(第2の実施形態)
次に、図4及び図5を参照して、本発明の第2の実施形態である原稿搬送装置を備える画像読取装置について説明する。なお、上記第1の実施形態に対して重複又は相当する部分については、各図に同一符号を付してその説明を省略する。
【0044】
本実施形態では、図4及び図5に示すように、第1搬送ローラ対5,6の上流側近傍に第1原稿検知センサ27が配置され、第2搬送ローラ対9,10の下流側近傍に第2原稿検知センサ28が配置される。
【0045】
また、第1搬送ローラ5の軸5aには、電磁クラッチ29が設けられている。該電磁クラッチ29は、第1駆動ギア14に連結され、第1駆動ギア14から第1搬送ローラ5の軸5aへ伝達される駆動力を締結/遮断する。
【0046】
図4において、フィードローラ3及びリタードローラ4によって1枚ずつ搬送路に分離給送された原稿Sの先端が、第1原稿検知センサ27の設置位置に到達して検知信号が出力されると、不図示の制御部は、該検知信号に基づき、電磁クラッチ29をONにする。
【0047】
これにより、駆動力が第1駆動ギア14を介して第1搬送ローラ5の軸5aに伝達され、第1搬送ローラ5が回転駆動される。
【0048】
第1搬送ローラ対5,6によって搬送される原稿Sは、読取センサ7、8によって表裏の画像が読み取られる。そして、原稿Sの先端が第2搬送ローラ対9,10のニップ部を通過して第2原稿検知センサ28によって検知信号が出力されると、不図示の制御部は、該検知信号に基づき、電磁クラッチ29をOFFにする。
【0049】
これにより、第1駆動ギア14から第1搬送ローラ5の軸5aに伝達される駆動力が遮断され、第1駆動ギア14は空転する。この状態で、原稿Sは、第2搬送ローラ対9,10によってのみ搬送され、第1搬送ローラ対5.6は、搬送される原稿Sによって連れ周り回転する。
【0050】
以上説明したように、本実施形態では、原稿Sの先端が第2搬送ローラ対9,10のニップ部を通過して第2原稿検知センサ28によって検知されると、原稿Sは、第2搬送ローラ対9,10によってのみ搬送される。
【0051】
これにより、第1搬送ローラ対5,6を原稿の後端が抜けるときの影響を低減できる。また、第1搬送ローラ5と第2搬送ローラ9の各ローラ径の製造上の誤差等により生じる微妙な周速度の違いにより、第1搬送ローラ対5,6と第2搬送ローラ対9,10との間で原稿(特に薄手の原稿)にシワが発生するのを防止することができる。
【0052】
また、シワの付いた原稿が搬送される場合があるが、この場合も第1搬送ローラ5が連れ周り回転することにより、原稿Sには第1搬送ローラ5の連れ周り負荷によるバックテンションが作用するので、シワを伸ばす効果がある。その他の構成及び作用効果は、上記第1の実施形態と同様である。
【0053】
(第3の実施形態)
次に、図6を参照して、本発明の第3の実施形態である原稿搬送装置を備える画像読取装置について説明する。なお、上記第1及び第2の実施形態に対して重複又は相当する部分については、図に同一符号を付してその説明を省略する。
【0054】
また、図6において、第2搬送ローラ9への駆動力の伝達機構、及び第2搬送ローラ9から第1搬送ローラ5への駆動力の伝達機構は、上記第1の実施形態と同様であるので、図示を省略する。更に、図6では、図1における給紙トレイ2、フィードローラ3、リタードローラ4及び排紙トレイ11の図示を省略している。
【0055】
本実施形態では、図6(a)に示すように、第1搬送ローラ対5,6の駆動側の第1搬送ローラ5に対して従動側の第1搬送ローラ6を相対的に接近離間移動させる移動機構30を備える。
【0056】
移動機構30は、ソレノイド31と、該ソレノイド31のプランジャ部31aと第1搬送ローラ6の軸6aとを連結する略L形状のアーム32と、第1搬送ローラ6を第1搬送ローラ5に当接させる方向にアーム32を付勢する引張バネ33とを備える。
【0057】
図6(a)に示すように、第1原稿検知センサ27の設置位置に搬送される原稿Sの先端が到達して検知信号が出力されると、不図示の制御部は、該検知信号に基づき、ソレノイド31を電気的にOFFする。
【0058】
このとき、ソレノイド31のプランジャ部31aは、伸長状態とされ、第1搬送ローラ6は、引張バネ33の付勢力により第1搬送ローラ5に当接した状態である。
【0059】
図6(b)に示すように、原稿Sの先端が第2搬送ローラ9と第2搬送ローラ10のニップ部を通過し、第2原稿検知センサ28の設置位置に到達して検知信号が出力されると、不図示の制御部は、ソレノイド31を電気的にONにする。
【0060】
このとき、ソレノイド31のプランジャ部31aが収縮動作し、プランジャ部31aに連結されたアーム32が支点32aを中心に図の時計回り方向に引張バネ33の付勢力に抗して回動する。
【0061】
これにより、第1搬送ローラ6が第1搬送ローラ5から離間移動し、原稿Sは、第2搬送ローラ対9,10によってのみ搬送される。
【0062】
また、第2原稿検知センサ28によって原稿Sの後端が検知されるか、第1原稿検知センサ27により次の原稿Sの先端が検知されると、不図示の制御部は、ソレノイド31を電気的にOFFにする。
【0063】
これにより、ソレノイド31のプランジャ部31aが開放されて、引張バネ33の付勢力により該プランジャ部31aが伸長動作し、アーム32が支点32aを中心に図の反時計回り方向に回動して、第1搬送ローラ6が第1搬送ローラ5に当接する。
【0064】
以上説明したように、本実施形態では、原稿Sの先端が第2搬送ローラ対9,10のニップ部を通過して第2原稿検知センサ28の設置位置に到達し、検知信号が出力されると、原稿Sは、第2搬送ローラ対9,10によってのみ搬送される。
【0065】
これにより、第1搬送ローラ対5,6を原稿Sの後端が抜けるときの影響を低減できる。また、第1搬送ローラ5と第2搬送ローラ9の各ローラ径の製造上の誤差等により生じる微妙な周速度の違いにより、第1搬送ローラ対5,6と第2搬送ローラ対9,10との間で原稿(特に薄手の原稿)にシワが発生するのを防止することができる。
【0066】
また、第1搬送ローラ5から第1搬送ローラ6が離間移動することにより、原稿Sに対して第1搬送ローラ6の圧による負荷が加わらないので、極薄手の原稿であっても搬送ジャムや破損を防止することができる。その他の構成及び作用効果は、上記第1の実施形態と同様である。
【0067】
(第4の実施形態)
次に、図7を参照して、本発明の第4の実施形態である原稿搬送装置を備える画像読取装置について説明する。なお、上記第1の実施形態に対して重複又は相当する部分については、図に同一符号を付してその説明を省略する。
【0068】
本実施形態では、図7に示すように、読取センサ7,8の上流側に第1搬送ローラ対101,102及び第1搬送ローラ対103,104が配置され、読取センサ7,8の下流側に第2搬送ローラ対105,106及び第2搬送ローラ対107,108が配置される。なお、図7では、図1における給紙トレイ2、フィードローラ3、リタードローラ4及び排紙トレイ11の図示は省略している。
【0069】
第1搬送ローラ101,103の各軸101a,103aには、それぞれプーリ109,110が固定され、各プーリ109,110及びアイドラプーリ111には、タイミングベルト112が架設されている。
【0070】
第2搬送ローラ105,107の各軸105a,107aには、それぞれプーリ113,114が固定され、各プーリ113,114及び駆動モータ12のモータ軸に固定されたモータプーリ20には、タイミングベルト115が架設されている。
【0071】
また、第2搬送ローラ107のプーリ114に一体に形成された同軸の小径プーリ114a、及びアイドラプーリ111に一体に形成された同軸の小径プーリ111aには、タイミングベルト116が架設されている。
【0072】
従って、駆動モータ12の駆動力は、モータプーリ20からタイミングベルト115を介してプーリ113,114に伝達される。これにより、第2搬送ローラ105,107が回転駆動され、また、第2搬送ローラ106,108が第2搬送ローラ105,107に従動して回転する。
【0073】
また、第2搬送ローラ107の軸107aと連動する小径プーリ114aからの駆動力は、タイミングベルト116、小径プーリ111a、アイドラプーリ111及びタイミングベルト112を介してプーリ109,110に伝達される。これにより、第1搬送ローラ101,103が回転駆動され、また、第1搬送ローラ102,104が第1搬送ローラ101,103に従動して回転する。
【0074】
以上説明したように、本実施形態では、第1搬送ローラ対及び第2搬送ローラ対をそれぞれ複数配置し、駆動モータ12の駆動力を読取センサ7,8の下流側に配置される第2搬送ローラ105,107に伝達する。そして、該第2搬送ローラ107の駆動力をプーリ・ベルト機構を介して読取センサ7,8の上流側に配置される第1搬送ローラ101,103に伝達する。
【0075】
ここで、原稿Sの後端が第1搬送ローラ対101,102及び第1搬送ローラ対103,104を抜けるとき、原稿Sの後端が第1搬送ローラ101,103を回転させる力が働く。
【0076】
しかし、第2搬送ローラ対105,106及び第2搬送ローラ対107,108は、原稿Sを所定のニップ圧で挟持した状態で、第2搬送ローラ105,107が駆動モータ12により駆動される。
【0077】
従って、第2搬送ローラ105,107は、プーリと搬送ローラ軸との連結部分の嵌合ガタ等の駆動ガタによる第1搬送ローラ101,103のトルク変動の影響を受けることはない。この結果、第1搬送ローラ対101,102及び第1搬送ローラ対103,104を原稿Sの後端が抜ける際に発生する駆動側の第1搬送ローラ101,103のトルク変動に起因する読取画像の伸び縮みによる画質低下を防止することができる。
【0078】
なお、本発明の構成は、上記各実施形態に例示したものに限定されるものではなく、材質、形状、寸法、形態、数、配置箇所等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0079】
例えば、上記各実施形態では、第1搬送ローラ対及び第2搬送ローラ対のいずれも両方のローラの一方のローラのみを駆動ローラとしたが、第1搬送ローラ対及び第2搬送ローラ対の少なくとも一方の搬送ローラ対の両方のローラを駆動ローラとしてもよい。即ち、第1搬送ローラ対の両方のローラを駆動ローラとしてもよく、第2の搬送ローラ対の両方のローラを駆動ローラとしてもよい。また、上記各実施形態の構成要素を組み合わせてもよく、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1 画像読取装置
5,6 第1搬送ローラ対
7,8 読取センサ
9,10 第2搬送ローラ対
12 駆動モータ
14 第1駆動ギア
16 アイドラギア
20 モータギア
21 ギアプーリ
22,25 タイミングベルト
23 2段プーリ
24 プーリ
27 第1原稿検知センサ
28 第2原稿検知センサ
29 電磁クラッチ
30 移動機構
31 ソレノイド
31a プランジャ部
32 アーム
33 引張バネ
101,102 第1搬送ローラ対
103,104 第1搬送ローラ対
105,106 第2搬送ローラ対
107,108 第2搬送ローラ対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の画像を読み取る読取部の上流側に配置され、原稿を前記読取部に搬送する第1搬送ローラ対と、
前記読取部の下流側に配置され、該読取部を通過した原稿を下流方向に搬送する第2搬送ローラ対と、
前記第1搬送ローラ対及び前記第2搬送ローラ対の駆動源と、
該駆動源から前記第2搬送ローラ対の少なくとも一方のローラに駆動力を伝達する第1伝達手段と、
該第1伝達手段により伝達された駆動力を更に前記第1搬送ローラ対の少なくとも一方のローラに伝達する第2伝達手段と、を備える
ことを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項2】
前記第2搬送ローラ対を原稿の先端が通過したことを検知するための原稿検知手段と、
前記第1搬送ローラ対の一方のローラへ伝達される前記駆動力を締結/遮断するクラッチ手段と
前記原稿検知手段の出力する原稿の検知信号に基づいて、前記クラッチ手段を制御して前記駆動力を遮断する制御手段と、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の原稿搬送装置。
【請求項3】
前記第2搬送ローラ対を原稿の先端が通過したことを検知するための原稿検知手段と、
前記第1搬送ローラ対の一方のローラに対して他方のローラを接近離間移動させる移動機構と、
前記原稿検知手段の出力する原稿の検知信号に基づいて、前記移動機構を制御して前記第1搬送ローラ対の前記一方のローラから離間する方向に前記他方のローラを移動させる制御手段と、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の原稿搬送装置。
【請求項4】
前記第1搬送ローラ対及び前記第2搬送ローラ対がそれぞれ複数配置される、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の原稿搬送装置。
【請求項5】
原稿搬送装置により搬送される原稿の画像を読み取る読取部を備える画像読取装置であって、
前記原稿搬送装置として、請求項1〜4のいずれか一項に記載の原稿搬送装置が用いられる、
ことを特徴とする画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−235286(P2010−235286A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86928(P2009−86928)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】