説明

原稿読取装置、原稿読取方法、および画像形成装置

【課題】原稿の読取解像度が不適切になるのを抑制しつつ、読取時間を短縮する技術を提供する。
【解決手段】画像読取装置は、原稿を搬送する原稿搬送部と、原稿搬送部によって搬送されてくる原稿の第1面および第2面の読取処理の可能な読取部21、22と、原稿の第1面の読取処理を開始する際の第1解像度よりも低解像度である第2解像度での原稿の第2面の読取処理が適切か否かを判断する判断部41と、第2解像度での第2面の読取処理が適切と判断された場合、第2面の読取時の解像度を第2解像度に切替える切替部42とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原稿読取装置に関し、詳しくは原稿読取装置において原稿を読取る際の読取解像度を変更する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原稿読取装置において原稿を読み取る際の読取解像度を変更する技術として、例えば、特許文献1には、原稿の両面読取中にユーザが操作部を操作することにより、読取途中から読取解像度を変更する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−160877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術文献等のようにすれば、例えば、第1解像度で読み取り始めたが第1解像度が高解像度で読取処理が遅いと感じた時に、ユーザは、操作部を操作して第1解像度よりも低解像度である第2解像度に変更することで、読取速度を上げることができる。
【0005】
しかしながら、ユーザがやみくもに読取解像度を第2解像度に変更すれば、読取速度を上げることはできるものの、写真等の高解像度で読み取るべき原稿も不適切な第2解像度で読んでしまう虞がある。
【0006】
また、ユーザが原稿の画像を確認した上で読取解像度を第2解像度に変更すれば、高解像度で読み取るべき原稿を第2解像度で読み取ってしまう可能性を低減することはできるものの、原稿の確認と操作に時間がかかり、読取開始から読取終了までの読取時間を短縮しにくいという不都合が生じる。
【0007】
本発明は、原稿の読取解像度が不適切になるのを抑制しつつ、読取時間を短縮する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明の原稿読取装置は、原稿を搬送する原稿搬送部と、前記原稿搬送部によって搬送されてくる前記原稿の第1面および第2面の読取処理の可能な読取部と、前記原稿の第1面の読取処理を開始する際の第1解像度よりも低解像度である第2解像度での前記原稿の第2面の読取処理が適切か否かを判断する判断部と、前記第2解像度での前記第2面の読取処理が適切と判断された場合、前記第2面の読取時の解像度を前記第2解像度に切替える切替部とを備える。
本構成によれば、第1面の読取が第1解像度で開始された場合であっても、第1解像度よりも低解像度である第2解像度での第2面の読取処理が適切と判断された場合、第2面の読取時の解像度が第2解像度に切替えられる。そのため、原稿の読取解像度が不適切になるのを抑制しつつ、読取時間を短縮することができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明の原稿読取装置において、前記第1面の読取画像を解析する第1解析部をさらに備え、前記判断部は、前記第1解析部によって前記第1面の読取画像がテキスト画像であると解析された場合、前記第2解像度での前記第2面の読取処理が適切と判断する。
本構成によれば、原稿搬送部で一連の読取処理で読み取られる原稿の第1面がテキスト画像であれば第2面もテキスト画像である蓋然性が高く、第1面がテキスト画像である場合に第2解像度での第2面の読取処理が適切と判断することで、原稿の読取解像度が不適切になるのを抑制しつつ、読取時間を短縮することができる。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明の原稿読取装置において、前記読取部は、搬送されてくる前記原稿の前記第1面を第1読取位置で読み取る第1読取部と、前記第1読取部の原稿搬送方向下流側に設けられ、前記第1読取部から搬送されてくる前記第1面を有する原前記稿の反対面である前記第2面を第2読取位置で読み取る第2読取部とを含む。
本構成によれば、ダブル読取部、例えばダブルCIS(密着型イメージセンサ)の構成において、原稿の読取解像度が不適切になるのを抑制しつつ、読取時間を短縮することができる。
【0011】
第4の発明は、第3の発明の原稿読取装置において、前記第1解像度で読み取るべき面と前記第2解像度で読み取るべき面とを有する原稿を読み取る読取処理をユーザが選択するための選択部と、当該読取処理が選択された場合、前記第1解像度で読み取るべき面を前記第1面として前記原稿搬送部にセットするように報知する報知部と、をさらに備え、前記判断部は、当該読取処理が選択された場合、前記第2解像度での前記第2面の読取処理が適切と判断する。
本構成によれば、第1解像度で読み取るべき面と第2解像度で読み取るべき面とを有する原稿を読み取る読取処理を実行する場合、原稿の読取解像度が不適切になるのをより確実に抑制できる。
【0012】
第5の発明は、第4の発明の原稿読取装置において、前記切替部は、前記第1面の読取処理が終了した時に、前記第2面の読取時の解像度を前記第2解像度に切替える。
本構成によれば、第1面全体を第1解像度で読み取れるので第1面の読取画質が良い。第1面が高解像度で読み取られるべき画像であるときに有効となる。
【0013】
第6の発明は、第3の発明の原稿読取装置において、前記第1面の読取画像を解析する第1解析部と、前記第2面の読取画像を解析する第2解析部と、前記第1解析部による解析結果と前記第2解析部による解析結果とから、前記第1面の画像と前記第2面の画像とが同一画像であるか否かを推定する推定部とをさらに備え、前記判断部は、前記第1解析部による解析結果から前記第2解像度での前記原稿の前記第1面の読取処理が適切であると判断し、且つ前記推定部の推定から各面の画像が同一画像であると推定された場合、前記第2解像度での前記第2面の読取処理が適切と判断する。
本構成によれば、第1面と第2面とで同一画像であるにもかかわらず、異なる読取解像度で読み取ってしまうのを抑制できる。
【0014】
第7の発明は、第6の発明の原稿読取装置において、前記第1解析部は前記第1面で使用されている色を抽出し、前記第2解析部は前記第2面で使用されている色を抽出し、前記推定部は、前記第1面の画像と前記第2面の画像とが同一画像であるか否かを、抽出された各面の色が同一であるか否かを比較して推定する。
本構成によれば、原稿が長辺とじであるか、あるいは短辺とじであるかに係わらず、第1面の画像と第2面の画像とが同一画像であるか否かを好適に比較できる。
【0015】
第8の発明は、第6の発明の原稿読取装置において、前記第1解析部は前記第1面の解像度推定区間後端位置の少なくとも1ラインデータを抽出し、前記第2解析部は前記第2面の解像度推定区間後端位置の少なくとも1ラインデータを抽出し、前記推定部は、前記第1面の画像と前記第2面の画像とが同一画像であるか否かを、抽出された各面の抽出ラインデータが同一であるか否かを比較して推定する。
本構成によれば、原稿が短辺とじである場合に、第1面の画像と第2面の画像とが同一画像であるか否かを好適に比較できる。
【0016】
第9の発明は、第6の発明の原稿読取装置において、前記第1解析部は前記第1面の解像度推定区間先端位置の数ラインデータを抽出し、前記第2解析部は前記第2面の解像度推定区間先端位置の数ラインデータを抽出し、前記推定部は、前記第1面の画像と前記第2面の画像とが同一画像であるか否かを、抽出された各面の抽出ラインデータが同一であるか否かを比較して推定する。
本構成によれば、原稿が長辺とじである場合に、第1面の画像と第2面の画像とが同一画像であるか否かを好適に比較できる。
【0017】
第10の発明は、第6から第9のいずれかの発明の原稿読取装置において、前記切替部は、前記第2解像度での前記第2面の読取処理が適切と判断された時点で、前記第1面の読取時の解像度も前記第2解像度に切替える。
本構成によれば、読取時間をより短縮できる。読取途中で解像度を切替ることになるが、両面とも低解像度で読み取ればよい画像なので、読取画質にむらが生じても許容できる。
【0018】
第11の発明は、第10の発明の原稿読取装置において、前記第1解像度で読み取られた画像を前記第2解像度に変換する変換部をさらに備える。
本構成によれば、読取画質にむらが生じるのを抑制できる。
【0019】
第12の発明の画像形成装置は、第1から第11のいずれかの発明の原稿読取装置と、前記原稿読取装置によって読み取られた原稿に基づいて画像を形成する画像形成部とを備える。
本構成によれば、原稿読取機能を備えた画像形成装置において、原稿の読取解像度が不適切になるのを抑制しつつ、読取時間を短縮することができる。
【0020】
第13の発明の原稿読取方法は、原稿の第1面および第2面の読取処理の可能な読取部を備えた原稿読取装置における原稿読取方法であって、前記原稿の第1面の読取処理を前記読取部によって開始する際の第1解像度よりも低解像度である第2解像度での前記原稿の第2面の読取処理が適切か否かを判断する判断工程と、前記判断工程によって前記第2解像度での前記第2面の読取処理が適切と判断された場合、前記第2面の読取時の解像度を前記第2解像度に切替える切替工程とを含む。
本構成によれば、原稿の読取解像度が不適切になるのを抑制しつつ、読取時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態に係る複合機の電気的構成を示す模式図
【図2】読取部の構成を簡略化して示す模式図
【図3】ASICの電気的構成を示すブロック図
【図4】解像度推定レベルの説明図
【図5】読取処理の流れを示すフローチャート
【図6】裏表同一原稿推定処理の選択を示すフローチャート
【図7】Aの裏表同一原稿推定処理の流れを示すフローチャート
【図8】Bの裏表同一原稿推定処理の流れを示すフローチャート
【図9】Cの裏表同一原稿推定処理の流れを示すフローチャート
【図10】Dの裏表同一原稿推定処理の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態>
本発明の実施形態を、図1〜図10を参照して説明する。
1.画像読取装置の構成
図1は、プリント機能、スキャン機能、およびコピー機能を備えた、いわゆる複合機(画像形成装置、画像読取装置の一例)1の電気的構成を示す模式図である。なお、画像形成装置は複合機に限られず、例えば、単にコピー機であってもよい。また、画像読取装置も複合機に限られず、例えば、単にイメージスキャナーであってもよい。
【0023】
複合機1は、制御部10、操作部12、読取部13、ASIC14、および印刷部(画像形成部の一例)15を含む。
【0024】
制御部10は、CPU11、ROM11a、及びRAM11bを含む。CPU11はROM11aに記憶されている各種のプログラムを実行することによって複合機1の各部を制御する。ROM11aはCPU11が実行する各種のプログラムなどを記憶している。RAM11bはCPU11が各種の処理を実行するための主記憶装置として用いられる。
【0025】
操作部12(選択部、報知部の一例)は、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置(報知部の一例)や各種のボタン(選択部の一例)などを含む。ユーザは操作部12を操作することによって機能の選択や読取条件の設定などの各種の操作を行うことができる。
【0026】
読取部13は、原稿5を搬送するADF(Auto Document Feeder:原稿搬送部の一例、図2参照)27やイメージセンサなどを含み、原稿5を読み取って画像データをASIC40に出力する。読取部13は、原稿の裏面(「原稿の第1面」に相当)5bを読み取る第1のCIS(Contact Image Sensor:第1読取部の一例、図2参照)21と、原稿の表面(「原稿の第2面」に相当)5aを読み取る第2のCIS22(第2読取部の一例、図2参照)とを有している。これらのCIS21,22によって、原稿5の両面5a,5bが読み取られる。
【0027】
すなわち、第1のCIS21は、搬送されてくる原稿の裏面(以下「原稿裏面」と記す)5bを第1読取位置P1で読み取る。一方、第2のCIS22は、第1のCIS21の原稿搬送方向下流側に設けられ、第1のCIS21から搬送されてくる原稿の表面5(以下「原稿表面」と記す)aを第2読取位置P2で読み取る。
【0028】
ASIC40(Application Specific Integrated Circuit)は、読取部13から出力された画像データや、あるいは複合機1と通信可能に接続されている図示しない外部のコンピュータから送信された画像データなどに各種の処理を施す回路である。ASIC14の構成については後述する。
【0029】
印刷部15は、例えば、ASIC40から出力された画像データに基づいて紙などの被記録媒体にCMYK4色の色材(トナー、インクなど)を用いて電子写真方式、インクジェット方式などで画像を形成(印刷)する装置である。
【0030】
2.読取部の構成
図2は、読取部13の構成を簡略化して示す模式図である。
【0031】
複合機1の筐体23(図2では一部のみを図示)は概ね箱形に形成されており、上部に第1プラテンガラス24と第2プラテンガラス25とが並設されている。
【0032】
原稿カバー26は筐体23の上面を覆う閉姿勢と筐体23の上面を開放する開姿勢とに回動可能に筐体23に連結されている。原稿カバー26には、ADF27、紙などの原稿5が積載される原稿トレイ28、排紙トレイ29などが設けられている。
【0033】
ADF27の内部には、分離ローラ30、分離ローラ30を軸支する軸に基端側を軸支されたアーム31の先端部に回転自在に設けられている吸入ローラ32、複数の搬送ローラ33、34、排紙ローラ35、これらに圧接する複数の従動ローラ36が設けられている。原稿5はこれらのローラに搬送されて搬送経路37上を搬送され、第1のCIS21による読取位置P1、および第2のCIS22による読取位置P2を通過して排紙トレイ29上に排紙される。
【0034】
また、例えば、分離ローラ30と搬送ローラ33との間に原稿センサ38が設けられている。原稿センサ38は、例えば、分離ローラ30から搬送されて来る原稿5の先端部を検出して原稿検出信号を生成し、原稿5の後端部の通過に伴って原稿検出信号をオフする。原稿検出信号はASIC40に供給される。ASIC40は、原稿検出信号の検出タイミングに基づいて、読取に係る各種の制御を行う。例えば、ASIC40は、原稿検出信号に基づいて、原稿5の位置を推定する。原稿5の位置は、原稿5の搬送速度(既知)と、原稿検出信号の検出タイミングと、検出タイミングからの経過時間とを用いて推定される。検出タイミングからの経過時間は、タイマー(図示せず)によって計測される。
【0035】
第2のCIS22は、筐体23の内部に収容されており、原稿表面(第2面)5aを読み取る。ここで、原稿表面5aは、原稿トレイ28上に載置されている状態の原稿5において上を向く面、または第1プラテンガラス24に載置されている状態の原稿5において下を向く面である。第2のCIS22は等倍光学系を用いて原稿5を読み取るものであり、紙面に垂直な主走査方向に直線状に配列された複数の受光素子を有するCMOSイメージセンサ、RGB3色の発光ダイオードを有する光源、原稿5で反射された反射光をCMOSイメージセンサの各受光素子に結像させるロッドレンズアレイ、これらが搭載されるキャリッジ、および、キャリッジを副走査方向(主走査方向に垂直な方向であって第1プラテンガラス24の盤面に平行な方向)に往復移動させる図示しない搬送機構を備えている。
【0036】
第2のCIS22は、ADF27によって搬送される原稿5を読み取るときは第2プラテンガラス25の下に停止し、光源の色を順に切り替えながら原稿5を読み取る。一方、第1プラテンガラス24上に載置されている原稿5を読み取るときは、第2のCIS22は副走査方向に一定速度で移動しつつ、光源の色を順に切り替えながら原稿5を読み取る。第2のCIS22は、例えば、100dpi、200dpi、300dpi、および600dpiの解像度での読み取りが可能である。
【0037】
第1のCIS21はADF27の内部に固定されており、ADF27によって搬送される原稿裏面(原稿の第1面)5bを読み取る。ここで、原稿裏面5bは、原稿トレイ28上に載置されている状態の原稿5において下を向く面である。第1のCIS21の構成は、移動可能に構成されていない点を除いて第2のCIS22の構成と実質的に同一である。
【0038】
3.ASICの構成
図3は、主にASIC40の電気的構成を示すブロック図である。
【0039】
ASIC40は、判断部41、切替部42、第1解析部43、第2解析部44、推定部45、および変換部46を含む。
判断部41は、原稿裏面5bの読取処理を開始する際の第1解像度よりも低解像度である第2解像度での原稿表面5aの読取処理が適切か否かを判断する。例えば、ここでは、第1解像度を600dpiとし、第2解像度を300dpiとする。
【0040】
切替部42は、判断部41によって第2解像度(300dpi)での原稿表面5aの読取処理が適切と判断された場合、原稿表面5aの読取時の解像度を、第2解像度(300dpi)に切替える。
なお、切替部42は、第2解像度での原稿表面5aの読取処理が適切と判断された時点で、原稿裏面5bの読取時の解像度も第2解像度(300dpi)に切替えるようにしてもよい。
【0041】
第1解析部43は、第1のCIS21に接続され、原稿裏面5bの読取画像を解析する。一方、第2解析部44は、第2のCIS22に接続され、原稿の表面5bの読取画像を解析する。
【0042】
判断部41は、第1解析部43によって原稿裏面5bの読取画像がテキスト画像であると解析された場合、第2解像度(300dpi)での原稿表面5aの読取処理が適切と判断する。
【0043】
なお、判断部41は、第1解像度が所定解像度、例えば、100dpiである場合、第2解像度での原稿表面5aの読取処理が適切でないと判断するようにしてもよい。これは、第1解像度が最低解像度に設定されている場合、第2解像度が設定できないからである。
【0044】
ADF27で一連の読取処理で読み取られる原稿裏面5bがテキスト画像であれば表面5aもテキスト画像である蓋然性が高い。そのため、裏面5bがテキスト画像である場合に第2解像度(300dpi)による表面5aの読取処理が適切と判断することで、原稿5の読取解像度が不適切になるのを抑制しつつ、読取時間を短縮することができる。
【0045】
推定部45は、第1解析部43による解析結果と第2解析部44による解析結果とから、原稿裏面5bの画像と原稿表面5aの画像とが同一画像であるか否かを推定する。このとき、判断部41が、第1解析部43による解析結果から第2解像度(300dpi)での原稿裏面5の読取処理が適切であると判断し、且つ推定部45の推定から各面5a,5bの画像が同一画像であると推定された場合、判断部41は、第2解像度(300dpi)での原稿表面5aの読取処理が適切と判断する。
【0046】
変換部46は、第1のCIS21あるいは第2のCIS22によって第1解像度で読み取られた画像を、第2解像度の画像に変換する。特に、切替部42が、第2解像度での原稿表面5aの読取処理が適切と判断された時点で、原稿裏面5bの読取時の解像度も第2解像度(300dpi)に切替える場合、変換部46は、第1解像度(600dpi)で読み取られた画像を、第2解像度(300dpi)に変換するようにしてもよい。
【0047】
4.読取処理
次に図4および図5を参照して、本実施形態における原稿5の読取処理について説明する。図5は、読取処理の流れを示すフローチャートである。本処理はユーザが原稿5を原稿トレイ28上に載置し、原稿読取開始キーを押下すると開始される。
【0048】
4−1.解像度推定区間
「読取処理」の説明に先立って、「解像度推定区間」について説明する。
「解像度推定区間」は、例えば、ユーザによって解像度推定レベルが入力される目盛り位置Xmによって決定される。解像度推定レベルの設定目盛り12Aは、例えば、図4に示される。目盛りは、例えば、「高速・簡易」側からの「1」から「低速・詳細」の「15」とされ、図4には、目盛り「7」が選択された場合を示す。なお、解像度推定レベルの設定目盛り12Aは、例えば、操作部12の表示装置に表示される。
【0049】
解像度推定レベルにおいて、「高速・簡易」に設定されると、解像度推定区間が狭くなる。一方、「低速・詳細」に設定されると、解像度推定区間が広くなる。
【0050】
「解像度推定区間」は、例えば、以下のように目盛り位置Xmによって算出される。裏面CIS位置(P1)から表面CIS位置(P2)までの距離L1+原稿長L2を目盛り分「15」で分割して分割区間Yを算出する。「解像度推定区間」をZとすると、
Z=Xm*Y (式1)
として算出する。
【0051】
このように「解像度推定区間」を算出するのは、適切な解像度推定区間は原稿の印字パターンに依存するため、ユーザに選択してもらう必要があるためである。ここで、裏面CIS位置から表面CIS位置までの距離L1+原稿長L2の値は、裏面原稿先端の読み始めから表面原稿後端読み終わりまでの用紙の移動距離となる。ユーザの設定次第で、最大で全読取範囲を解像度推定区間に設定できる。
【0052】
4−2.読取に係る各処理
さて、搬送ローラ33等によって原稿5が第1のCIS21まで搬送されると(ステップS110)、第1のCIS21は、原稿裏面5bの読取を開始する(ステップS115)。次いで、ASIC40は、原稿センサ38からの原稿検出信号に基づいて、解像度推定区間Zの後端位置と裏面読取距離とが等しいかどうか判定する(ステップS120)。ここで、解像度推定区間Zの後端位置は上記(式1)から決定され、裏面読取距離(原稿の位置)は、上記したように原稿検出信号等に基づいて算出される。
【0053】
解像度推定区間Zの後端位置と裏面読取距離とが等しくないと判定された場合(ステップS120:NO判定)、さらに原稿5が搬送される。
等しいと判定された場合(ステップS120:YES判定)、原稿5の搬送が停止され(ステップS125)、裏面最適解像度が推定される(ステップS130)。
【0054】
ここで裏面最適解像度の推定は、例えば、画像を2値化して、連続領域のサイズから推定する方法によって行われる。この方法では、「文字」のサイズを判定して解像度が推定される。
具体的には、例えば、画像を左上から右下に検索する際、ラベリングによって、連続する領域を検出する。検出された連続領域を囲む最大矩形のサイズを算出し、この矩形が文字であるか判定する。そして、文字と判定された矩形のサイズが所定の閾値以下であるかどうかを判定し、閾値以下と判断されたら、「高解像度」と推定し、閾値以上と判断されたら、「低解像度」と推定する。
【0055】
次いで、ステップS140において、後述する「裏表同一原稿推定処理」が行われる。「裏表同一原稿推定処理」において、裏表同一原稿と推定された場合(ステップS145:YES)、ASIC40は、裏面の最適解像度を読取解像度に設定する(ステップS150)。
【0056】
一方、「裏表同一原稿推定処理」において、裏表同一原稿でないと推定された場合(ステップS145:NO)、ASIC40は、表面の最適解像度を推定する(ステップS155)。表面最適解像度の推定は、上記裏面最適解像度の推定方法と同様である。
【0057】
次いで、ASIC40は、裏面の最適解像度と表面の最適解像度とを比較し、裏面の最適解像度の方が表面の最適解像度より高い場合(ステップS160:YES)、ステップS150に移行する。一方、裏面の最適解像度が表面の最適解像度より高くない場合(ステップS160:NO)、表面の最適解像度を読取解像度に設定する(ステップS165)。
【0058】
次いで、原稿裏面5bの読取および搬送を再開し(ステップS170)、原稿裏面5bの読取が終了した場合(ステップS175:YES)、原稿表面5aの読取および搬送を再開する(ステップS180)。
そして、ASIC40は、解像度推定区間Zの読取データを、最適解像度のデータに変換する(ステップS185)。
【0059】
5.裏表同一原稿推定処理
次に、図6〜図10の各フローチャートを参照して、「裏表同一原稿推定処理」を説明する。
【0060】
図6に示されるように、「裏表同一原稿推定処理」は、原稿5の印字形態が「長辺とじ」と「短辺とじ」とによって異なる。「長辺とじ」とは、読取原稿5が複数枚あり、各原稿5の長辺側がとじられるように印字された印字形態であり、「短辺とじ」とは、読取原稿5が複数枚あり、各原稿5の短辺側がとじられるように印字された印字形態である。
【0061】
ASIC40は、「裏表同一原稿推定処理」を行う前に、まず印字形態の判定を行う。印字形態の判定は、例えば、ユーザによるスキャン原稿の設定によって判定できる。
【0062】
原稿5が「長辺とじ」であると判定された場合(ステップS210:YES)、「裏表同一原稿推定処理」として「Dの処理」を行う(ステップS220)。一方、原稿5が「短辺とじ」であると判定された場合(ステップS230:YES)、「裏表同一原稿推定処理」として「Bの処理」または「Cの処理」を行う(ステップS240)。また、原稿5が「長辺とじ」でも「短辺とじ」でもない場合(もしくは印字形態が限定(判定)できない場合)、例えば、読取原稿5が一枚の場合(ステップS230:NO)、「Aの処理」を行う(ステップS260)。なお、この場合、「Aの処理」〜「Dの処理」のいずれか一つの処理を行ってもよい。
【0063】
次に各処理を説明する。
5−1.「Aの処理」
図7は「Aの処理」を示す、フローチャートである。
【0064】
ASIC40の第1解析部43は、原稿裏面5bで使用されている色を抽出する(ステップS261)。また、ASIC40の第2解析部44は、原稿表面5aで使用されている色を抽出する(ステップS262)。
【0065】
ASIC40の推定部45は、裏面の画像と表面の画像とが同一画像(同一原稿)であるか否かを、抽出された各面の色が同一であるか否かを比較して推定する。すなわち、抽出された各面の色が同一であると判定した場合(ステップS263:YES)、裏表同一原稿と推定する(ステップS264)。一方、抽出された各面の色が同一でないと判定した場合(ステップS263:NO)、裏表同一原稿でないと推定する(ステップS265)。
なお、ここで、色の抽出および色の同一性の判定は、例えば、各色の画像中での出現頻度を表すヒストグラムを用いて行われる。例えば、モノクロ原稿をカラー読取し、裏面と表面のヒストグラムを作成する。そして、裏面、表面共に白と黒の出現頻度が高く、その他の色の出現頻度が低い傾向がヒストグラムに見られる場合、裏表同一原稿と推定する。
【0066】
5−2.「Bの処理」
図8は「Bの処理」を示す、フローチャートである。
【0067】
ASIC40は、原稿長が、裏面読取距離と表面読取距離とを加算したものと等しいかどうか判定する(ステップS241)。ステップS241で「NO」判定の場合は、原稿5を搬送するとともに、読取を再開する(ステップS242)。一方、ステップS241で「YES」判定の場合は、原稿5の搬送および読取を停止する(ステップS243)。
【0068】
次いで、ASIC40の第1解析部43は原稿裏面5bの解像度推定区間Zの後端位置の1ラインデータを抽出する(ステップS244)。また、ASIC40の第2解析部44は原稿表面5aの解像度推定区間Zの後端位置の1ラインデータを抽出する(ステップS245)。
【0069】
ASIC40の推定部45は、原稿裏面5bの画像と原稿表面5aの画像とが同一画像(同一原稿)であるか否かを、抽出された各面の抽出ラインデータが同一であるか否かを比較することによって推定する。すなわち、抽出された各ラインデータがほぼ一致すると判定した場合(ステップS246:YES)、裏表同一原稿と推定する(ステップS247)。一方、抽出された各ラインデータが一致しないと判定した場合(ステップS246:NO)、裏表同一原稿でないと推定する(ステップS248)。
【0070】
なお、ステップS246において、表面ラインデータは、原稿の右端から左端へ向けて、裏面ラインデータは、原稿の左端から右端へ向けて照合される。
【0071】
5−3.「Cの処理」
図9は「Cの処理」を示す、フローチャートである。
【0072】
ASIC40は、原稿長+「数ライン」を加算した長さが、裏面読取距離と表面読取距離とを加算したものより小さいかどうか判定する(ステップS251)。ステップS251で「NO」判定の場合は、原稿5を搬送するとともに、読取を再開する(ステップS252)。一方、ステップS251で「YES」判定の場合は、原稿5の搬送および読取を停止する(ステップS253)。
【0073】
次いで、ASIC40の推定部45は、原稿裏面5bの画像と原稿表面5aの画像とが同一画像(同一原稿)であるか否かを、原稿裏面5bと原稿表面5aにおいて読取った「数ライン」のデータが同一であるか否かを比較することによって推定する。すなわち、抽出された各ラインデータがほぼ一致すると判定した場合(ステップS254:YES)、裏表同一原稿と推定する(ステップS255)。一方、抽出された各ラインデータが一致しないと判定した場合(ステップS254:NO)、裏表同一原稿でないと推定する(ステップS256)。
【0074】
5−4.「Dの処理」
図10は「Dの処理」を示す、フローチャートである。
【0075】
ASIC40の第1解析部43は原稿裏面5bの解像度推定区間Zの先端位置の数ラインデータを抽出する(ステップS221)。また、ASIC40の第2解析部44は原稿表面5aの解像度推定区間Zの先端位置の数ラインデータを抽出する(ステップS222)。
【0076】
ASIC40の推定部45は、原稿裏面5bの画像と原稿表面5aの画像とが同一画像(同一原稿)であるか否かを、抽出された各面の抽出ラインデータが同一であるか否かを比較することによって推定する。すなわち、抽出された各ラインデータがほぼ一致すると判定した場合(ステップS223:YES)、裏表同一原稿と推定する(ステップS224)。一方、抽出された各ラインデータが一致しないと判定した場合(ステップS223:NO)、裏表同一原稿でないと推定する(ステップS225)。
【0077】
6.実施形態の効果-
原稿裏面5bの読取が第1解像度(600dpi)で開始された場合であっても、第1解像度(600dpi)よりも低解像度である第2解像度(300dpi)での原稿表面5aの読取処理が適切と判断された場合、原稿表面5aの読取時の解像度が第2解像度(300dpi)に切替えられる。そのため、原稿5の読取解像度が不適切になるのを抑制しつつ、読取時間を短縮することができる。
【0078】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0079】
(1)操作部12は、第1解像度で読み取るべき面と第2解像度で読み取るべき面とを有する原稿を読み取る読取処理をユーザが選択するための選択ボタン(選択部の一例)を含むようにする。そして、この読取処理が選択された場合、LCDなどの表示装置(報知部の一例)によって第1解像度で読み取るべき面を原稿裏面5bとしてADF27にセットするように報知するようにしてもよい。そして、判断部41は、この読取処理が選択された場合、第2解像度での原稿表面5aの読取処理が適切と判断するようにし、この場合、切替部42は、原稿裏面5bの第1解像度での読取処理が終了した時に、原稿表面5aの読取時の解像度を第2解像度に切替えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…複合機
12…操作部
13…読取部
21…第1のCIS
22…第2のCIS
40…ASIC
41…判断部
42…切替部
43…第1解析部
44…第2解析部
45…推定部
46…変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を搬送する原稿搬送部と、
前記原稿搬送部によって搬送されてくる前記原稿の第1面および第2面の読取処理の可能な読取部と、
前記原稿の第1面の読取処理を開始する際の第1解像度よりも低解像度である第2解像度での前記原稿の第2面の読取処理が適切か否かを判断する判断部と、
前記第2解像度での前記第2面の読取処理が適切と判断された場合、前記第2面の読取時の解像度を前記第2解像度に切替える切替部と、
を備えた原稿読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の原稿読取装置において、
前記第1面の読取画像を解析する第1解析部をさらに備え、
前記判断部は、前記第1解析部によって前記第1面の読取画像がテキスト画像であると解析された場合、前記第2解像度での前記第2面の読取処理が適切と判断する、原稿読取装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の原稿読取装置において、
前記読取部は、
搬送されてくる前記原稿の前記第1面を第1読取位置で読み取る第1読取部と、
前記第1読取部の原稿搬送方向下流側に設けられ、前記第1読取部から搬送されてくる前記第1面を有する前記原稿の反対面である前記第2面を第2読取位置で読み取る第2読取部とを含む、原稿読取装置。
【請求項4】
請求項3に記載の原稿読取装置において、
前記第1解像度で読み取るべき面と前記第2解像度で読み取るべき面とを有する原稿を読み取る読取処理をユーザが選択するための選択部と、
当該読取処理が選択された場合、前記第1解像度で読み取るべき面を前記第1面として前記原稿搬送部にセットするように報知する報知部と、をさらに備え、
前記判断部は、当該読取処理が選択された場合、前記第2解像度での前記第2面の読取処理が適切と判断する、原稿読取装置。
【請求項5】
請求項4に記載の原稿読取装置において、
前記切替部は、前記第1面の読取処理が終了した時に、前記第2面の読取時の解像度を前記第2解像度に切替える、原稿読取装置。
【請求項6】
請求項3に記載の原稿読取装置において、
前記第1面の読取画像を解析する第1解析部と、
前記第2面の読取画像を解析する第2解析部と、
前記第1解析部による解析結果と前記第2解析部による解析結果とから、前記第1面の画像と前記第2面の画像とが同一画像であるか否かを推定する推定部と、をさらに備え、
前記判断部は、前記第1解析部による解析結果から前記第2解像度での前記原稿の前記第1面の読取処理が適切であると判断し、且つ前記推定部の推定から各面の画像が同一画像であると推定された場合、前記第2解像度での前記第2面の読取処理が適切と判断する、原稿読取装置。
【請求項7】
請求項6に記載の原稿読取装置において、
前記第1解析部は前記第1面で使用されている色を抽出し、
前記第2解析部は前記第2面で使用されている色を抽出し、
前記推定部は、前記第1面の画像と前記第2面の画像とが同一画像であるか否かを、抽出された各面の色が同一であるか否かを比較して推定する、原稿読取装置。
【請求項8】
請求項6に記載の原稿読取装置において、
前記第1解析部は前記第1面の解像度推定区間後端位置の少なくとも1ラインデータを抽出し、
前記第2解析部は前記第2面の解像度推定区間後端位置の少なくとも1ラインデータを抽出し、
前記推定部は、前記第1面の画像と前記第2面の画像とが同一画像であるか否かを、抽出された各面の抽出ラインデータが同一であるか否かを比較して推定する、原稿読取装置。
【請求項9】
請求項6に記載の原稿読取装置において、
前記第1解析部は前記第1面の解像度推定区間先端位置の数ラインデータを抽出し、
前記第2解析部は前記第2面の解像度推定区間先端位置の数ラインデータを抽出し、
前記推定部は、前記第1面の画像と前記第2面の画像とが同一画像であるか否かを、抽出された各面の抽出ラインデータが同一であるか否かを比較して推定する、原稿読取装置。
【請求項10】
請求項6から請求項9のいずれか一項に記載の原稿読取装置において、
前記切替部は、前記第2解像度での前記第2面の読取処理が適切と判断された時点で、前記第1面の読取時の解像度も前記第2解像度に切替える、原稿読取装置。
【請求項11】
請求項10に記載の原稿読取装置において、
前記第1解像度で読み取られた画像を前記第2解像度に変換する変換部をさらに備える、原稿読取装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の原稿読取装置と、
前記原稿読取装置によって読み取られた原稿に基づいて画像を形成する画像形成部と、
を備えた、画像形成装置。
【請求項13】
原稿の第1面および第2面の読取処理の可能な読取部を備えた原稿読取装置における原稿読取方法であって、
前記原稿の第1面の読取処理を前記読取部によって開始する際の第1解像度よりも低解像度である第2解像度での前記原稿の第2面の読取処理が適切か否かを判断する判断工程と、
前記判断工程によって前記第2解像度での前記第2面の読取処理が適切と判断された場合、前記第2面の読取時の解像度を前記第2解像度に切替える切替工程と、
を含む原稿読取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−75006(P2012−75006A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219320(P2010−219320)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】