説明

原稿読取装置

【課題】 RGB光源の時分割処理によるカラー原稿読取装置において、ACSを実施すると偽色が発生してしまい、判定精度が著しく悪くなってしまう。
【解決手段】 ACSを実施する選択がなされた場合に、副走査の解像度を上げて、偽色の発生を低減し、ACSの判定精度を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はライン順次点灯によるカラー原稿読取装置の自動色判定を実施する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリンタ複合機は、ACS機能(オートカラーセレクト)を搭載してきた。この機能は、原稿の一部に色味が検出された時には、プリンタ複合機をカラーモードで動作させる事が出来る機能である。つまり、利用者が操作パネルから操作をする事なしに、原稿に応じて、カラー印刷と白黒印刷を選択する事が出来る機能である。このACS機能により、利用者はトナーの節約やサービス料金の抑制を実現できる。(例えば、特許文献2)。
【0003】
一方、従来は上記ACS機能を搭載するようなプリンタ複合機は、カラー透過フィルタ付き3色ラインセンサを用いた原稿読取装置が一般的であった。しかし、省スペースや低コストの要求により、モノクロのラインセンサにRGB3色の光源(例えばLED)と導光管を配置した密着型イメージセンサが利用されるようになった。(例えば、特許文献1)。
【0004】
この密着型イメージセンサは、モーター駆動によって副走査方向に移動しながら、RGB3色の光源を時分割のライン順次で点灯するものが一般的である。このRGB3色の光源の反射光をモノクロラインセンサが、ライン順次で受光する。これによって、原稿をRGBのカラー読取を実現することができる。
【0005】
この時、モーターの駆動速度に応じて、原稿読取速度と副走査解像度が決定される。例えば、25枚/分で600dpiの解像度のRGBカラー画像が読み取る事ができる原稿読取装置がある。これを、モーターの駆動速度を2倍にすると、50枚/分で300dpiの解像度のRGBカラー画像を読み取る事が出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2003-315931号公報
【特許文献2】特開2010-21628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、密着型イメージセンサを300dpi以下の解像度で動作させた時には、色ずれ、モアレが原因となる偽色が発生する為、ACS機能が正確に働かなくなるという課題があった。
【0008】
密着型イメージセンサの色ずれの原因は、読取用のモーターを動かしながら、RGB3色を時分割で読み取る為、同じ位置を見込めない事である。そして、RGB3色の距離が離れる(副走査解像度が低下する)ほど、色ずれが大きくなる。
【0009】
密着型イメージセンサのモアレの原因は、解像度に対する解像力が大きくなり過ぎる為、平滑化されない事である。更に、RGB3色を時分割で読み込む為、原稿に主走査方向の波模様があった場合に、RGBの各初期位相が変わってしまい、モアレに色が付いてしまう。
【0010】
ACS機能は、読み取った原稿画像をRGB画像に変換する。更にRGB画像から色味を抽出し、色味の2値化を行って閾値以上の色味を持つ画素をカラー画素として特定する。この時、偽色が発生していると、本来はモノクロ画素であった筈の画素をカラー画素として判定しまい、結果としてカラー原稿として誤判定してしまう。
【0011】
この課題は、3色ラインセンサでは発生しない課題である。何故なら、3色ラインセンサはRGB同時読取方式であり、同時間で全てのRGBライン画像を読み込める。よって、RGBで同じ位置を読む事が可能である。一方、時分割である密着型イメージセンサでは、300dpiにすると、RGBのそれぞれの間隔が大きくなる。よって、読み込めないライン画像が発生する。
【0012】
以上の理由から、密着型イメージセンサによるカラー原稿読取装置では、副走査解像度を300dpiにすると、偽色が発生し、ACSが誤判定する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
RGB光源(206)を時分割に点灯してライン順次にカラー画像を読み取る原稿読取手段(401,402)と、
原稿の読取方法を選択する為の操作手段(411)、
読み取った画像がカラーであるかモノクロであるかを判定する為の自動カラー判定装置(117)を備えた原稿読取装置において、
前記原稿読取手段(401,402)は、前記操作手段(411)においてACS機能(S302)を選択された場合に、高解像度モード(S304)で原稿読取動作をする事を特徴とする原稿読取装置。
【発明の効果】
【0014】
RGB光源の時分割点灯によるライン順次カラー読取装置において、ACS機能の精度を向上させる事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1、実施例2を説明する為のプリンタ複合機のコントローラ構成である。
【図2】実施例1、実施例2を説明する為のプリンタ複合機の原稿読取装置の構成である。
【図3】実施例1を説明する為のフローチャートである。
【図4】実施例1、実施例2を説明する為のプリンタ複合機の図である。
【図5】実施例2を説明する為のフローチャートである。
【図6】色ずれの原因を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【0017】
(実施例1)
図4は、本発明を利用したプリンタ複合機の全体構成を示す図である。
【0018】
図1は、コントローラボード(405)の構成を示すブロック図である。
【0019】
図2は、原稿読取コントローラユニット(410)と読取センサーユニット(409)の構成を示すブロック図である。
【0020】
図4のプリンタ複合機は、ADFユニット(401)、原稿読取装置(402)、記録部を含む本体(408)、及びコントローラボード(405)で構成されている。
【0021】
原稿読取用コントローラユニット(410)は、モーター(403、404)、読取センサーユニット(409)と接続し、コントローラボード(405)の中の読取装置インタフェイス(103)との通信を行う。また、原稿読取用コントローラユニット(410)は、ADコンバータ(208)、LED点灯制御回路(209)、圧板用モーター制御(210)、ADF用モーター制御(210)を持つ。
【0022】
更に、読取センサーユニット(409)は、RGBの3色LED(206)、及び受光センサ(207)を持つ。
【0023】
プリンタ複合機は、操作部(411)を持っており、操作部インタフェイス(101)を通して、外部からの操作を可能とする。
【0024】
コントローラボード(405)は、LANインタフェイス(113)を通してインターネット回線(408)と接続されている。また、コントローラボード(405)は、NCU(119)を通して、電話回線(407)に接続されている。
【0025】
図3は、実施例1を説明する為のフローチャートである。図3のフローチャートの各ステップは、CPU(105)が、ROM(106)に格納されたプログラムに応じて処理を実施する。また、各ステップで取り扱われる電子画像データは、BUS(116)を通してRAM(107)に格納しながら読み込み、書き込み処理が実施される。
【0026】
S301において、操作部(411)は、外部から入力されたコピー処理のモード設定を選択する。コピー処理のモード設定は、操作部インタフェイス(101)から、CPU(105)に通達する。
【0027】
S302において、CPU(105)は、コピー処理のモード設定に応じた読取解像度を判定する。
【0028】
本発明のポイントは、実施例1において、原稿の色によって、下表の選択をすることである。
【0029】
【表1】

また、カラー選択をしない場合には、設定された原稿タイプに応じて切り替える事も考えられる。例えば、原稿が新聞であれば、モノクロとして低解像度が選択される。
【0030】
表1において、高解像度は、主走査は600dpi、副走査は600dpiである。また、低解像度は、主走査が600dpi、副走査は300dpiである。
【0031】
低解像度では画素数が少なくなる為、読取速度が速くなるというメリットがある。一方で、RGB間の色ずれや、有色のモアレがある。よって、原稿画像内のモノクロエッジの周りに偽色が発生する事が分かっている。
【0032】
低解像度で色ずれが発生する原因については、図6で説明する。図6は300dpiの副走査解像度で原稿エッジを読み取った時の模式図である。図6のRGBの各山は光源(206)が時分割に点灯する事によって、受光センサ(207)が読み取れる原稿(201)の反射光の位置である。この時、低解像度読取では、R、G、B、のそれぞれの山が離れている。そして、原稿エッジ部が来た時にBは読み取る事ができるが、G、Rは、Bと同じ位置で読み取る事が出来ない。これが原因で色ズレが発生する。
【0033】
低解像度で有色のモアレが発生する原因は、本発明で用いる原稿読取装置では、副走査を低解像度で読み取ると、解像度に対する相対的な解像力が高くなり、モアレが強くでる事である。さらに、時分割である為、RGBの初期位相が違う事でモアレの位相が違い、偽色が発生する。
【0034】
高解像度では画素数が多くなる為、読取速度が遅くなる。一方で、RGB間の色ずれが小さくなり、更に有色のモアレも発生し難くなる。よって、原稿画像内のモノクロエッジの周りの偽色が抑えられる。
【0035】
本実施例の構成では、低解像度で読み取る場合は、高解像度で読み取る場合の2倍の速度で原稿読取を実施できる。一方、高解像度では、偽色が殆ど発生しない事が分かっている。
【0036】
S303において、高解像度が選択されていた場合には、S304にステップが進む。S304では、読取装置インタフェイス(103)を通して、原稿画像(201)の読取を実施する。
【0037】
読取装置コントローラ(211)は、原稿画像の読取開始をCPU(105)から指示されると、モーター制御1(210)とLED点灯制御回路(209)に動作を指示する。
【0038】
モーター制御1(210)は、高解像度設定がされているので、モーター(404)を副走査600dpiの解像度で読み込む為の速度で動かす。
【0039】
尚、ADF(401)からの原稿読取が選択されていた場合には、モーター制御1(210)とモーター(404)の代わりに、モーター制御2(211)とモーター(403)を利用する。そして、ADF(401)に搭載された原稿(412)を流し読みが実施される。更に、流し読みの為に、モーター制御1(210)、モーター(404)を利用して、読取センサーユニットを流し読みに適切な位置に移動させる。適切な位置とは、例えば、白ローラ(413)の下である。
【0040】
LED点灯制御(209)では、RGBのLED光源(206)がライン順次に時分割点灯する。そして、原稿(201)からの反射光を受光センサ(207)がライン順次で受光する。次に、受光センサ(207)にライン順次に、受光したRGB画像信号が、ADコンバータ(208)に転送されて、RGB画像信号に変換される。RGB画像信号は、読取装置コントローラ(211)を経由してRAM(106)に転送される。
【0041】
S306では、CPU(105)は、RAM(106)に格納されたRGB画像信号に対して、画像処理装置(104)とACS判定装置(117)を用いてACS判定を実施する。ACS判定の方法には、特許文献2に記載されている為、割愛する。但し、本実施例では、ACS判定が実施される時は、副走査の解像度は必ず600dpi以上である。
【0042】
S303において、低解像度が選択されていた場合には、S305にステップが進む。S305では、読取装置インタフェイス(103)を通して、原稿画像(201)の読取を実施する。
【0043】
読取装置コントローラ(211)は、原稿画像の読取開始をCPU(105)から指示されると、モーター制御1(210)とLED点灯制御回路(209)に動作を指示する。
【0044】
モーター制御1(210)は、低解像度設定がされているので、モーター(404)を副走査300dpiの解像度で読み込む為の速度で動かす。
【0045】
S307において、原稿画像は副走査を低解像度(300dpi)で読み込まれている為、画像処理装置(104)は、高解像度(600dpi)に拡大処理を実施する。
【0046】
この時の拡大処理は、一般にはバイキュービックを用いるが、本発明では拡大方法を限定はしない。
【0047】
S308において、ACS(117)でカラーと判定、若しくはS301でカラーが選択されていた場合には、S309において、画像処理装置(104)は、RGB画像をCMYK画像に色変換を実施する。
【0048】
S308において、ACS(117)でモノクロと判定、若しくはS301でモノクロが選択されていた場合には、S310において、画像処理装置(104)は、RGB画像をK単色画像に色変換を実施する。
【0049】
S311で、プリンタコントローラ(108)にCMYK画像、若しくはK単色画像を転送し、カラー印刷、モノクロ印刷を行う。
【0050】
以上、実施例1の構成によれば、コピー時のACSの誤判定を防ぐ事が出来る。
【0051】
(実施例2)
実施例1において、出力解像度が600dpiであるコピーのカラー設定に限定して記載した。
【0052】
第2実施例では、相手によって解像度やカラー設定が変わる画像データ送信機能である場合について記載する。
【0053】
尚、実施例2では、実施例1との差分についてのみ記載をする。
【0054】
図5は、実施例2を説明する為のフローチャートである。図5のフローチャートの各ステップは、CPU(105)が、ROM(106)に格納されたプログラムに応じて処理を実施する。また、各ステップで取り扱われる電子データは、BUS(116)を通してRAM(107)に格納しながら読み込み、書き込み処理が実施される。
【0055】
S501において、操作部(411)は、外部から入力された送信処理のモード設定を選択する。送信処理のモード設定は、操作部インタフェイス(101)から、CPU105に通達する。尚、送信処理は、NCU(119)を用いたFAX送信、及びLANインタフェイス(113)を用いて、電子画像データを送信する。
【0056】
S502において、CPU105は、送信処理のプロトコルに応じてモノクロ、ACSを判定する。例えば、FAX回線を用いた場合、相手先がカラー非対応、若しくは本実施例のプリンタ複合機がカラー非対応であった場合、モノクロ固定である。一方、両方がカラー対応であった場合、ACS処理を実施する。
【0057】
また、ネットワークを利用して、プリンタ印刷を利用する場合もある。この時、印刷するプリンタがモノクロ印刷機である事が分かっている場合には、モノクロ固定である。
【0058】
そして、ACS機能を実施する場合には、実施例1と同様に高解像度で原稿を読み込む必要がある。
【0059】
S504〜S506は、S304〜S306と同じ処理である為、説明を割愛する。
【0060】
S507の解像度変換については、ACS機能のあり無しに関わらず、送信の要求解像度に応じた解像度変換をする。例えば、FAXでは200dpiなどの解像度が決まっている。また、ネットワーク上のパソコン(410)に送る時には、様々な解像度を選択する事が出来る。
【0061】
S508は、S308と同じ処理である為、説明を割愛する。
【0062】
S509では、カラー送信である為、画像処理装置(104)及び圧縮伸長装置(102)を利用して、RGB画像をJPEG画像に変換している。
【0063】
一方、S510では、画像処理装置(104)を利用してモノクロ画像に変換する。また、送信先、送信方法によっては、圧縮伸長装置(102)を利用して圧縮する場合もある。
【0064】
S511では、NCU(119)やLANインタフェイス(113)を利用して、画像を外部に送信する。
【0065】
以上、実施例2の構成によれば、送信方法に応じてACS機能が必要かどうかを判断して、ACS機能が必要な場合にはACS機能の誤判定を防ぐ事ができる。
【符号の説明】
【0066】
117 ACS装置
411 操作部
409 ライン順次の読取センサーユニット
206 RGBのLED光源


【特許請求の範囲】
【請求項1】
RGB光源(206)を時分割に点灯してライン順次にカラー画像を読み取る原稿読取手段(401,402)と、
原稿の読取方法を選択する為の操作手段(411)、
読み取った画像がカラーであるかモノクロであるかを判定する為の自動カラー判定装置(117)を備えたマルチファンクションプリンタ(図4)において、
前記原稿読取手段(401,402)は、前記操作手段(411)においてACS(S302)を選択された場合に、高解像度モード(S304)で原稿読取動作をすることを特徴とするマルチファンクションプリンタ(図4)。
【請求項2】
操作手段(411)においてACSを選択されなかった場合(S302)には、
低解像度モード(S305)で原稿読取動作をすることを特徴とする請求項1に記載のマルチファンクションプリンタ (図4)。
【請求項3】
高解像度とは、副走査解像度が600dpi以上の解像度であることを特徴とする請求項1に記載のマルチファンクションプリンタ(図4)。
【請求項4】
低解像度とは、副走査解像度が300dpi以下の解像度であることを特徴とする請求項2に記載のマルチファンクションプリンタ(図4)。
【請求項5】
RGB光源(206)を時分割に点灯してライン順次にカラー画像を読み取る原稿読取手段(401,402)と、
原稿の読取方法を選択する為の操作手段(411)、
読み取った画像がカラーであるかモノクロであるかを判定する為の自動カラー判定装置(117)と、
画像をネットワーク(406,407)へ送信する為の送信手段(110,119)を備えたマルチファンクションプリンタ(図4)
において、
前記読取手段(103)は、前記操作手段(101)で選択された送信方法に応じて、
高解像度モードで原稿読取動作をすることを特徴とするマルチファンクションプリンタ(図4)。
【請求項6】
操作手段(411)においてACSを選択されない設定だった場合(S502)には、
低解像度モード(S505)で原稿読取動作をすることを特徴とする請求項5に記載のマルチファンクションプリンタ(図4)。
【請求項7】
高解像度とは、副走査解像度が600dpi以上の解像度であることを特徴とする請求項5に記載のマルチファンクションプリンタ(図4)。
【請求項8】
低解像度とは、副走査解像度が300dpi以下の解像度であることを特徴とする請求項6に記載のマルチファンクションプリンタ(図4)。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−85172(P2013−85172A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224782(P2011−224782)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】