説明

双子接点キーボード装置

【課題】信号線数を減らし、より低コストなキーボード装置を提供する。
【解決手段】キーボード装置は複数キー、及びキーボード・デコーダで構成される。複数キーのそれぞれは、少なくとも1つの駆動接点と複数の検知接点を含む。各駆動接点は、キーボード・デコーダの出力(駆動)線に接続することが可能であり、各検知接点は各キーが検出線の一意の組み合わせに接続されるようにキーボード・デコーダの入力(検知)線に接続することが可能である。キー・プレスは、トリガされる検知線の一意の組み合わせによって識別することが可能である。トリガされる検知線の組み合わせは、種々のキーの機能を示すルックアップ・テーブルに対するアドレスとして使用することが可能である。駆動信号特性(例えば、周波数、位相や波形)の変形を使用して、キー入力を更に区別し、かつ/又は、より多数のキー及び/若しくは対応する機能を備えることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、電子データ入力の方法及び装置に関し、特に、マトリクス・キーボード制御の方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のキーを有する電子装置では、マトリクス・スイッチング装置を使用して、キーを走査するために必要な線の数を削減することが可能である。例示的なマトリクス・スイッチング装置を図1に示す。図の左側部分には、6キーのキーボード101を略示する。図の右側部分では、キーは、以下に更に詳細に説明するように、行の線及び列の線の「交差」を示す破線で表している。
【0003】
マトリクス・スイッチング装置は、6つ以上のキーが関係する場合、個々のキーを検知するよりも有利になる。例えば、各キーが個々に検出された場合、6キーのキーボード101は6本の線を必要とする。しかし、2本の列(X1、X2)及び3本の行(Y1、Y2、Y3)のX−Yマトリクスを使用すれば、必要な線の数は5に削減される。キーの数が増加するにつれ、マトリクス装置を使用することの経済は更に大きくなる。例えば、36キーのキーボードは通常、36本の個々の線を必要とする。しかし、X−Yマトリクスを使用した場合に使用することが可能な線の数は12になる(例えば、6行及び6列)。行の線及び列の線は、キーボード・コントローラ102によって駆動し、読み出すことが可能である。キーボード・コントローラは、プログラムされたマイクロコントローラ/プロセッサ、又はプログラム可能なロジック・デバイス(CPLD、FPGA等)であり得る。あるいは、標準的なX−Yマトリクス走査手法は、National Semiconductor社の74C922/923デバイスと同様な市販のキーボード・デコーダ部品を使用することも可能である。
【0004】
図1に示すもののようなキーボードの動作は、当業者に周知である。キー1乃至6の何れかを押すことで、押されたスイッチに一意に対応する列の線と行の線との間の静電容量における変動、又は電気接触を機械的に起動させる。よって、例えば、キー1を押すことで、列X1と行Y1との間の静電容量における変動、又は列X1と行Y1との間の接触を生じさせる。マイクロプロセッサや他のキーボード走査装置は駆動信号を各列に順々に印加することが可能であり、各駆動線(例えば、列X1、X2)が刺激されている間、各検知線(例えば、行Y1、Y2、Y3)を読み出して、現在刺激されている線上の各キーが押されているか否かを判定することが可能である。キーが押されているか否かは、検知線上に現れる信号の特性に基づいて判定することが可能である。この特性は、押されたキーによって生じる、静電容量における変動、又は電気接触の関数である。
【0005】
前述のように動作する装置を使用すれば、利用可能な数本のI/O線は通常、プレミアム付きであり、I/Oの数が多い装置はより高価である。したがって、より少数のI/O線を使用することにより、より低い費用の装置の使用が容易になり得る。したがって、X−Yマトリクスよりも少ない数の線を使用したキーボード走査装置が望ましい。
【0006】
少ないI/O線で、多数のキーの走査を達成するための種々のアナログ手法が提案されている。前述の装置は、例えば、それぞれの内容全体を本明細書及び特許請求の範囲に援用する、「Multi−Button IR Remote Control Using the MC9RS08KA2」と題する、Freescale Semiconductor Application Note、及びMicrochipの「Tips ‘n Tricks 8−pin Flash PIC(登録商標) Microcontrollers Outperform the Competition」に開示されている。前述の解決策は多くの場合、キーの抵抗値における変動、キー接点に対する経年変化の影響、及び種々の他のパラメータが理由で、信頼度の減少を被る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、標準X−Yマトリクスよりも使用する線の数が少ない、改良されたキーボード走査の装置、方法及び手法が当該技術分野において必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
特定の実施例では、本発明はキーボード装置に関係し得る。キーボード装置は、各キーが駆動接点、及び複数の(例えば、2つの)検知接点を有する複数のキーを含み得る。キーボード装置は、少なくとも1本の出力線、及び複数の入力線を有するキーボード・デコーダも含み得る。複数のキーは、キーボード・デコーダの1本又は複数本の出力線に駆動接点を接続させ、駆動接点をキーボード・デコーダの入力線に接続させることが可能である。より具体的には、キーの検知接点は、入力線の一意の組み合わせに各キーが接続されるように接続することが可能である。
【0009】
特定の実施例では、カスタム回路、プログラムされたマイクロプロセッサ、FPGA/CPLD等であり得るキーボード・デコーダは、位相、周波数、波形等において変動する別々の複数の駆動信号を供給するよう適合することが可能である。特定の実施例では、キーを押すことにより、入力線上に構成されるアドレスを使用して、キーボード・デコーダと一体化されているか、又は、キーボード・デコーダと別個であるが、キーボード・デコーダに接続されたメモリに格納されたルックアップ・テーブルにおけるキーの機能をルックアップすることが可能である。有効なキー・プレスに対応しない、ルックアップ・テーブル内の値は、ルックアップ・テーブルにおいて無効と示すことが可能である。
【0010】
他の実施例では、本発明は、キーボード・コントローラにおけるキーボード入力をデコードする方法に関係し得る。方法は、キーボード・コントローラの複数本の入力線からアドレスを読み出す工程を含み得る。入力線は前述と実質的に同様なキーボードのキーに接続される。すなわち、各キーは複数本(例えば、2本)の入力線に接続され、入力線の一意の組み合わせに接続される。方法は、アドレスを使用してルックアップ・テーブル内のキー値をルックアップする工程、及びルックアップ・テーブル内に、アドレスにおいて格納されたキー値を戻す工程も含み得る。
【0011】
他の実施例では、方法は、キーボード・コントローラの複数の入力線上のアドレスに関連付けられた駆動信号の1つ又は複数のパラメータ(例えば、位相、周波数や、波形)を判定する工程を含み得る。前述の1つ又は複数のパラメータを使用して、キー値をルックアップするために適切なルックアップ・テーブルを選択することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
前述及び他の実施例は、後述する明細書及び図面を参照することにより、分かり得る。
【実施例】
【0013】
本明細書及び特許請求の範囲には、例を図2に略示する双子接点キーボード検知装置を記載している。双子接点装置では、2本の「行」(すなわち、「検知」)の線、及び1本の「列」(すなわち、「駆動」)の線Cは、2本の行の線の一意の組み合わせを各キーが有するように各キーに接続される。例えば、例証した実施例では、7本の行の線(1乃至7)及び単一の列の線Cが存在している。21個のキーそれぞれに接続される、行の線の組み合わせは、1−2、 1−3、 1−4、 1−5、 1−6、 1−7、 2−3、 2−4、 2−5、 2−6、 2−7、 3−4、 3−5、 3−6、 3−7、 4−5、 4−6、 4−7、 5−6、 5−7 及び 6−7になる。キーは、何れの形状にも配置することができ、図示した形状は、行及び列の接続ルーティングの例証の都合によるものに過ぎない。
【0014】
複数本の列の線を使用する通常のX−Yマトリクス・スイッチング装置と違って、双子接点装置は、単一の列の線を使用することが可能である。特定の実施例では、単一の列の線を切り換えて別個の2つの位相(例えば、1つが正であり、1つが負である)を生成し、同数の線を使用して走査することが可能なキーの数を事実上、倍にすることが可能である。よって、図2に示す装置は、更に21個のキー(合計42個のキー)を収容することが可能である。X−Yマトリクス装置を使用すれば、同じ42キーのキーボードは13本の線を必要とすることになる。位相間での切り換えを使用して、Shift、Ctrl、Alt等などの修飾キーを備えることが可能である。あるいは、別々の複数の位相、周波数、及び/又は波形をこの目的で備えることが可能である。
【0015】
例示的な2相の列ドライバ回路を図3に示す。図3では、入力クロック信号を反転させてCOL_P信号及びCOL_N信号を発生させる。クロッキング信号COL_CLKの速度により、キーボードを走査することが可能な最高速度が決まってくる(例えば、走査時間10msの場合、100Hzである)。これは、特定のキーのディバウンス要件に応じて、より高速に、又はより低速になり得る。
【0016】
双子接点デコード装置の更なる利点は、行の線が、ルックアップ・テーブルのXビットのアドレス(Xは、行の線の数である)を構成するので、キーのデコードは単純化されるという点である。ルックアップ・テーブルは、キーボード・デコーダと別個のメモリ、又はキーボード・デコーダと一体化されたメモリに記憶することが可能であり、リードオンリ・メモリ(ROM)又はランダム・アクセス・メモリ(RAM)であり得るものであり、それにより、種々の機能にキーボードを再構成することが可能になり得る。列駆動信号の相補的な位相を使用する場合、行の線は、Xビットのアドレスを双子ルックアップ・テーブルに構成することが可能であり、列の線の状態は、適切なルックアップ・テ―ブルを選択するために使用される。
【0017】
42キーのキーボードを例として使用すれば、7本の行の線は、7ビットのアドレスを128バイトの双子ルックアップ・テーブルに構成することが可能であり、COL_CLK信号の状態は、どのテーブルが使用されるかを選択するために使用される。128個のエントリのうちの21は、各ルックアップ・テーブルにおいて有効であり、他のエントリは全て、処理ファームウェア又は処理ロジックによって使用される「無効」値にセットする。更に、キーに対する圧力が十分でない場合、2つの行接点のうちの1つは、閉じられ、「無効」値にデコードし、処理されない。図2の検知装置のルックアップ・テーブルの例を図4に示し、ルックアップ処理の流れ図は図7に示す。
【0018】
以下のテーブルは、伝統的なX−Yマトリクス・キーボードと、双子接点装置を使用したものとの間の線の数を示す。
【0019】
【表1】

双子接点装置を使用したキーの例示的な回路図記号を図5に示す。双子接点装置を使用したキーの例示的なPCBレイアウト・フットプリントを図6に示す。何れの例証においても分かるように、キーを押すと、2つの行の接続と、列の接続との間の、電気接続(又は静電容量における変動)が生じ、上述のようにスイッチが動作することが可能になる。本明細書及び特許請求の範囲記載の双子接点装置は、静電容量無接点スイッチ、ラバー・ドーム・スイッチ、メンブレン・スイッチ、金属接点スイッチや、フォーム・エレメント・スイッチを含む種々のキーボード/スイッチ・タイプとともに使用することができる。前述の装置は、コンピュータのキーボード、娯楽向装置等のリモコン、電化製品の制御、自動車の制御を含む種々のアプリケーションに使用することも可能である。
【0020】
好ましい実施例及び他の実施例の上記説明は、本出願の出願人が考え出した本発明の概念の範囲又は適用性を限定又は制限することを意図するものでない。例えば、双子接点スイッチング装置を例証しているが、より多数の検知接点を有するスイッチング装置も想定される。本明細書記載の本発明の概念を開示する代償として、本出願人は、本特許請求の範囲によって与えられる特許権全てを望む。したがって、請求項又はその均等物の範囲内に収まる範囲に対する修正及び改変全てを本願の特許請求の範囲が含むことを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来技術のマトリクス・スイッチング装置を示す図である。
【図2】双子接点キーボード装置を示す図である。
【図3】双子接点キーボード装置とともに使用することができる列ドライバ回路を示す図である。
【図4】双子接点キーボード装置のルックアップ・テーブルを示す図である。
【図5】双子接点キーの回路例を示す回路図である。
【図6】双子接点キーのPCBレイアウト例を示す図である。
【図7】双子接点キーボード装置を使用したルックアップ処理を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0022】
101 キーボード装置
102 キーボード・デコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーボード装置であって、
駆動接点及び複数の検知接点を各キーが有する複数のキーと、
少なくとも一本の出力線及び複数本の入力線を有するキーボード・デコーダとを備え、
前記複数のキーそれぞれは、各キーが、入力線の一意の組み合わせに接続されるようにその検知接点を別々の入力線に接続させており、その駆動接点を前記少なくとも一本の出力線に接続させているキーボード装置。
【請求項2】
請求項1記載のキーボード装置であって、各キーは2つの検知接点を有するキーボード装置。
【請求項3】
請求項1記載のキーボード装置であって、前記キーボード・デコーダは、変動する位相、周波数、及び/又は波形を有する複数の駆動信号を供給するよう適合されたキーボード装置。
【請求項4】
請求項1記載のキーボード装置であって、その中に1つ又は複数のルックアップ・テーブルを格納させたメモリを更に備え、前記複数本の入力線は前記ルックアップ・テーブルのアドレスを提供し、前記ルックアップ・テ―ブルは1つ又は複数のアドレスに格納され、キー・プレスの機能は、前記1つ又は複数のアドレスに対応するキーボード装置。
【請求項5】
請求項4記載のキーボード装置であって、前記ルックアップ・テーブルは、1つ又は複数のアドレスに対して「無効」のエントリを格納するキーボード装置。
【請求項6】
請求項4記載のキーボード装置であって、前記メモリはキーボード・コントローラと一体化されているキーボード装置。
【請求項7】
キーボード・コントローラにおけるキーボード入力をデコードする方法であって、
前記キーボード・コントローラの複数本の入力線からアドレスを読み出す工程であって、前記入力線は、各キーが複数本の入力線に接続され、入力線の一意の組み合わせに接続されるようにキーボードのキーに接続される工程と、
前記アドレスを使用してルックアップ・テーブル内のキー値をルックアップする工程と、
前記ルックアップ・テーブル内で読み出しアドレスにおいて格納されたキー値を戻す工程とを含む方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法であって、前記キーボード・コントローラの前記複数本の入力線上の前記アドレスに関連付けられた駆動信号の1つ又は複数のパラメータを判定する工程を更に含み、前記アドレスを使用して、ルックアップ・テーブル内のキー値をルックアップする工程は、前記判定された1つ又は複数のパラメータに基づいてルックアップ・テーブルを選択する工程を更に含む方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法であって、前記判定された1つ又は複数のパラメータはクロック位相を含む方法。
【請求項10】
請求項8記載の方法であって、前記判定された1つ又は複数のパラメータは波形を含む方法。
【請求項11】
請求項8記載の方法であって、前記判定された1つ又は複数のパラメータは周波数を含む方法。
【請求項12】
請求項7記載の方法であって、各キーは2本の入力線に接続される方法。
【請求項13】
キーボード装置であって、
駆動接点、及び2つの検知接点を各キーが有する複数のキーと、
少なくとも一本の出力線及び複数本の入力線を有するキーボード・デコーダとを備え、
前記複数のキーそれぞれは、各キーが、入力線の一意の組み合わせに接続されるようにその検知接点を2本の入力線に接続させており、その駆動接点を前記少なくとも一本の出力線に接続させているキーボード装置。
【請求項14】
請求項13記載のキーボード装置であって、前記キーボード・デコーダは、1つ又は複数の変動パラメータを有する複数の駆動信号を供給するよう適合されたキーボード装置。
【請求項15】
請求項14記載のキーボード装置であって、前記1つ又は複数の変動パラメータは、位相、周波数、及び波形を有する群から選択されるキーボード装置。
【請求項16】
請求項14記載のキーボード装置であって、その中に複数のルックアップ・テーブルを有するメモリを更に備え、各ルックアップ・テ―ブルは前記1つ又は複数の変動パラメータの1つに対応し、前記複数の入力線は前記ルックアップ・テーブルのアドレスを提供し、前記ルックアップ・テーブルは1つ又は複数のアドレスを格納し、キー・プレスの機能は、前記1つ又は複数のアドレスに対応するキーボード装置。
【請求項17】
請求項16記載のキーボード装置であって、前記ルックアップ・テーブルは、1つ又は複数のアドレスに対して「無効」のエントリを格納するキーボード装置。
【請求項18】
請求項16記載のキーボード装置であって、前記メモリは前記キーボード・コントローラと一体化されているキーボード装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−123220(P2009−123220A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292535(P2008−292535)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(500080720)ポリコム・インコーポレイテッド (22)
【Fターム(参考)】