説明

双安定ネマチック液晶ディスプレイの改良

本発明は、電界を一切印加せずに二つの安定したテクスチャを持つ双安定ネマチックマトリクスLCDをアドレッシングするための方法に関する。画素のアドレッシングは受動型多重化タイプである。本方法は、基板間に印加される電気的電圧の値を、この電圧の平均値、好ましくは平均二次値が、イメージディスプレイの初期コマンドから切替直前の時刻まで、ディスプレイされるべき情報に左右されない既定値を持つように、選択することに特徴があり、この方法はイメージの画素全てについて同じである。好ましくは、平均電圧の既定値を得るために、少なくとも一つの等化パルス(84、84)が切替えられるべき画素に対応する列に印加される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイの技術分野に関する。より具体的には、本発明は、双安定ネマチック液晶ディスプレイに関する。本発明は、約180°のねじれだけ異なる二つの安定したテクスチャのあるアンカリングブレイクにより、双安定ネマチック液晶ディスプレイに特に適合する。
【本発明の目的】
【0002】
本発明の第一の目的は、双安定ディスプレイ装置の性能を改善することである。
第二の目的は、全てのディスプレイ装置に渡って制御され、かつ一様な灰色レベルの取得を可能にする双安定ディスプレイ装置のアドレッシング原理を提供することである。
これらの二つの効果は、全てのディスプレイ装置に渡って一つのテクスチャからもう一つのテクスチャへの切替閾値を一様にするのを可能にするアドレッシング信号を使用することにより得られる。
【背景技術】
【0003】
従来の双安定ネマチック液晶装置について記述する。
【0004】
複数の双安定ネマチック液晶装置が既に提案されている。
【0005】
それらの内の一つは、本発明が特に適合するものであり、「BiNem」の名称で知られている。これらの「BiNem」ディスプレイは、180°のねじれだけ異なる二つの安定したテクスチャのあるアンカリングブレイクによる双安定ネマチック液晶ディスプレイである。これらは、特許文献1及び非特許文献2に記載されている。
【0006】
この方式によるBiNemディスプレイは、二つのガラスブレード、一つは「マスター」ブレード30、もう一つは「スレーブ」ブレード32、により形成される二つの基板間に位置するキラル化ネマチック液晶の層から成る。行電極34と列電極36は、基板の各々にそれぞれ付いており、電気的制御信号を受信し、面に垂直な電界のネマチック液晶への印加を可能にする。アンカリング層38,40は、該当する電極上に位置する。マスターブレード上で、液晶分子のアンカリング38は強くて少し傾いており、スレーブブレード上では、アンカリング40は弱くて平坦であるか、またはごく少しだけ傾いている。
【0007】
二つの双安定テクスチャを得ることができる。これらの二つの双安定テクスチャは、ねじれが±180°だけ異なっており、トポロジー的に互換性がない。一様な又は少しねじれたテクスチャはUと命名され、ねじれたテクスチャはTと命名されている。ネマチックの自然発生ピッチは、セル厚さの四分の一に大体等しく、UとTのエネルギーを基本的に等しくするように選ばれる。電界がない場合、より低いエネルギーに対する他の状態は存在せず、UとTは真の双安定を実現する。
【0008】
光学的に、二つの状態UとTは非常に異なっており、100以上のコントラストで黒と白のイメージをディスプレイできるようにしている。
【0009】
強電界Eの下では、Hと命名されるほとんどホメオトロピックなテクスチャが得られる。スレーブ面40に於いて、分子はこの面の近辺のプレートに対してノーマルであり、アンカリングは「ブロークン」と呼ばれるが、電界が遮断されると、セルは安定状態UまたはTのいずれかに向って進化する(図1参照)。コマンド信号が使用されマスターブレード30の近辺での液晶の強流が誘起されると、マスターブレードとスレーブブレード間の流体力学的カップリング42はテクスチャTを誘起する。反対に、弱いアンカリングの角度調節にも支援されるかも知れないが、弾性カップリング44によりテクスチャUが得られる。この後、BiNemスクリーンアイテムの「切替」がホメオトロープ(アンカリングブレーク)を通過する液晶分子を指定し、その後、電界が遮断された場合の二つの安定状態UまたはTに向けての進化を指定することになる。
【0010】
スレーブブレードとマスターブレード間の流体力学的カップリング(非特許文献6)は、液晶の粘度に関連している。電界の遮断に際し、マスターブレードにアンカリングされた分子が平衡に戻ると、マスターブレードのすぐ近くに流れが生じる。この流れは、1マイクロセカンド以下の間に、セルの厚さ方向全てに広がる。
【0011】
流体力学的流れ46が十分に強く、スレーブブレード32に近い場合、流体力学的流れ46はテクスチャTを含む方向の分子をスレーブブレード32の近くで傾けるので、分子は二つのブレード上で反対方向に転回する。スレーブブレード近くの分子が平衡に戻ると言うことは流れに対する第二の推進力を意味し、この第二の推進力は流れを強め、画素のテクスチャTへの一様な切替を支援する。このように電界印加時テクスチャHのテクスチャTへの切替は流れ、従ってマスターブレードの分子のアンカリングが傾けられる方向に於ける液晶の変位を使って達成される(図2参照)。
【0012】
二つのブレード間の弾性カップリングは、電界印加時のテクスチャHに於いて、スレーブブレード近くで非常にわずかな傾きを発生させる。これは印加電界がブレードに垂直な分子に向おうとしている時でさえそうである。実際、マスターブレードの強く傾けられたアンカリングは、近くの分子を傾いたままに保つ。マスターブレード近くの傾きは、スレーブブレードまでの液晶の方向弾性によって伝えられ、スレーブブレードでは、アンカリングの強さとアンカリングの可能な傾きが分子の傾きを増大させる(非特許文献7)。電界の遮断に関して、流体力学的カップリングは、スレーブブレード近くの分子の残余傾きに抗うには十分ではなく、両方のブレード近くの分子は、同一方向に転回することにより平衡に戻り、テクスチャUが得られる。これら二つの転回は同時に起るので、お互いが反するように動作する反対方向に流れる流れを含む。つまり、合計の流れ速度はほとんど存在しない。従って、テクスチャHからテクスチャUへの切替期間中の液晶の全体的な変位は存在しない。
【0013】
BiNemディスプレイで最も多いのは、マスター基板とスレーブ基板上に置かれた垂直な導電片の交点に創成される、N×M画素から成るマトリクススクリーンである。従来技術により創成された4行50×4列52ディスプレイの一例を図3に提示する。行電極に於いて、いわゆる「励起」信号が順番に印加され、全行の画素切替を可能にする。行励起信号の第一の部分が全行に渡るアンカリングのブレイクを可能にする。行励起信号の第二の部分の期間で、行画素の各々に対して、信号が各々の列に印加される。この信号が、該当行の他の画素から独立して、この画素の最終的なテクスチャの選択を可能にする。全ての列信号は、全ての該当行の画素に同時に印加される。ディスプレイは、全ての行が引き続いて励起され終わった時点で、いわゆる「アドレッシング」される。このようにして、多重化信号の適用が、行信号と列信号の組合せにより、ディスプレイを形成するマトリクスのN×M画素の最終的な状態の選択を次のように可能にする。該当行の励起時間中に該当画素に印加された切替電圧は、第一のフェーズ(V1L,T1)でアンカリングをブレイクし、その後第二のフェーズ(V2L,T2)で該当画素の最終的なテクスチャを決定するパルスを形成する(図4参照)。一般に、要求に応じて、この第二のフェーズ期間に、前記印加電圧は、突然停止し、ねじれたテクスチャTを誘起するのに十分な電圧低下を起こさせるか、または場合によっては電圧レベルを徐々に低下させ、一様なテクスチャUを創成するか、のいずれかになる。電圧低下速度を決定する画素電圧の大きさは一般的に低い。画素電圧は、いわゆる「列」信号を多重化することによって創成され、イメージ情報を含む。従って、アンカリングが一度「ブロークン」した時、該当画素の最終的なテクスチャの選択を可能にするのは列電圧である。アンカリングのブレイクを可能にする画素電圧の大きさはもっと大きい。画素電圧は、いわゆる「行」信号を多重化することによって創成され、イメージコンテンツからは独立している。今後、「行」信号の印加を可能にするディスプレイの電極は行と呼ばれ、「列」電圧の印加を可能にするディスプレイの電極は列と呼ばれることになる。多重化信号の印加は、スクリーンの各行を引き続きスイープし、列信号を同時に印加することにより、行の全画素のテクスチャの選択を可能にし、励起された行の画素の各々の状態を決定する。従来技術による信号多重化の一例が図5に提示されている。
【0014】
この図に於いて、Lnは行nに対応し、Cmは列mに対応し、Cm+1は列m+1に対応し、P(n,m)は画素n,mに対応し、さらにPn,m+1は画素P(n,m+1)に対応する。各行に於いて、電圧V1LとV2Lの信号がそれぞれT1とT2の期間だけ印加され、一方、列mに於いて、電圧Vcが期間Tcだけ印加される。列信号は、交互に正と負になる。
【0015】
好ましい実施形態によれば、多重BiNemディスプレイの行は、流体力学的流れの方向と垂直な方向に向いている。
【0016】
小さな寸法の画素上で切替が実行される場合、(BiNemディスプレイの場合は一般的に、画素は数百マイクロメータの辺を持つ)、液晶の流れ方向に依存する画素の縁に於いてテクスチャTを選択するのは明らかに禁止である。この現象は、Tの切替期間の間の、画素の限界に於ける液晶流れの低下として解釈される[9]。
【0017】
BiNem型双安定ディスプレイに於ける多重化モードのアドレッシングの場合、はけ塗り印の方向D2(図3)にある画素の縁に於いてテクスチャUが観測できる。
【0018】
この現象は、灰色レベルを持ったBiNem型双安定ディスプレイを創成するのに賢明に用いることができる。実際、画素が独立して機能する場合、Tの画素切替の一部を形成し、従って電気信号は、画素の切替られた面の漸進的変化により灰色の色合いを得るように調整できる(図6及び図7参照)。
【0019】
図6は、四つの部分、6a,6b,6c,6dを含む。図6aに於いて、白い四角60は画素のテクスチャがTであることを示す。図6b,6c及び6dに於ける黒い部分(四角の62,64,66)は、テクスチャUに対応する。
図6bは、白いテクスチャTが支配的な薄い灰色のレベルに対応し、
図6cは、テクスチャUが支配的な濃い灰色のレベルに対応し、かつ
図6dは、黒色(テクスチャU)に対応する。
【0020】
図7は、アドレッシングされた列電圧Vcに関連し、従来技術による160×480ディスプレイ用画素の光学的状態を示す。この図7に於いて、テクスチャTを通過するのは薄く、テクスチャUは通過せずに濃い。両矢印D1は、行電極の方向を表す。
【0021】
行電極の方向に関しスレーブブレードのはけ塗り印方向の光学的構成を用いることにより、二つのはっきりと異なるドメイン、単一の境界線、一般に直線の境界線により分離されたドメインTとドメインUが一つの同じ画素の中で得られる。ドメインの寸法が大きければ、最適な安定度となる。該当画素に於けるこの境界線の位置の検査は、従って一組の灰色レベルを決定する。この目的のために実行される手段は、特許文献9及び非特許文献10に記載されている。
【0022】
この実行手段には、該当画素の各々内の制御された灰色レベルを得るために、液晶の変位速度を制御し、従って該当画素の各々内の二つの安定状態の内の一つの範囲を漸進的に制御するのに適合したコマンド信号の応用が含まれる。
【0023】
上記コマンド信号は、図8に示すように、異なるパラメータの変調により、とりわけ列信号の電圧レベル及び/又は列信号の期間、の変調により、前進できる。
【0024】
このように、図8aは行Ln用の信号を示し、図8bは行Ln+1用の信号を示し、図8cは列信号の振幅Vcを変調した列信号Cmを示し、図8dはこの列信号の期間Tcを変調した列信号Cmを示し、そして図8eは列信号Cmの位相ΔTcの変調を示す。
【0025】
灰色レベルを持ったディスプレイの場合、テクスチャの占有表面と画素の合計表面間の比で定義される、各画素の最終的な光学的状態は、スクリーンの画素の各々に対して精確に制御できることが重要である。そうでなければ、ある灰色レベルに対するイメージディスプレイの一様性は、期待に添えないことになろう(つまり、効率的に利用できる異なった灰色レベルの数が低下しよう)。例えば、一つの画素に八つの異なる灰色レベルを創成するためには、画素表面の最低精度100/8=12.5%でゾーンuとゾーンt間の境界線の位置を制御できることが重要である。一般に、画素が200μmの等しい辺を持つ正方形である場合、最低25μmの精度で境界線の位置を制御することが必須である。
【0026】
従来技術により創成されるBiNemディスプレイが示す制限事項
多重化モードでの灰色レベルの創成であるが、BiNemディスプレイに対して、電気光学的参照曲線、つまり電圧V2L(図4及び図6)に関して切替後の光学的状態またはテクスチャTのパーセンテージが定義されている。図9に示すこの参照曲線(列への印加電圧が0値、つまりVc=0について描出)は、ディスプレイの多重化のために用いられるパラメータについての情報を提供する。この図9で、電圧V2Lは横座標に、そしてテクスチャTのパーセンテージは縦座標に記入された。二つの可能な動作点V2LG(左)とV2LD(右)の存在を観測できる。当業者ならば、電圧V2Lをこれらの二つの動作点V2LGとV2LDのいずれかの側から進入させれば、テクスチャTのパーセンテージは100%と0%の間、および0%と100%の間を、それぞれ急速に進行すると言うことを実際に理解できる。
【0027】
多重化時の灰色レベルの精確な表示は、列信号のパラメータ、とりわけ、選択された動作点近辺で光学的応答曲線に沿って動かすために、列信号の電圧レベル及び/又は列信号の期間、を変調することによって実現される。
【0028】
V2LD近辺で列信号の電圧振幅を変調することによって灰色レベルが創成される単純化した一例を図10に示す。図10は、二つの部分、10a,10bを含む。最初の部分(図10a)に於いてボルトを単位とする行電圧U1は、縦座標に既に記入され、右の時刻tに向った、そして左ではテクスチャTのパーセンテージである横座標に既に記入されている。図10aのこのダイアグラムの左で、曲線70は電気光学的曲線を形成し、点72はVc=0ボルトでテクスチャTが50%となる動作点である。
【0029】
第二の部分、10bに於いて、列電圧VcはボルトVを単位とする縦座標に既に進入し、図10aと同様に、右が時刻tで左がテクスチャTのパーセンテージである横座標に既に進入している。
【0030】
動作点の値V2LDから誘起される列電圧Vciは、電気光学的応答曲線に依存して、画素内のテクスチャTの60%を含む灰色レベルを得るのを可能にする。更に、列電圧VckとVcj、それぞれについてテクスチャTの30%または90%が得られる。
【0031】
平均二次電圧RMSの影響について記述する。BiNemセルに於いては、画素が切替信号を受信する前に画素に印加される平均電圧に関連し、および特に画素の切替前に画素に印加され、Vrmsacと呼ばれ、次の(1)式で定義される電圧の平均二次値の平方根(即ち、「Root Mean Square」を意味するRMS電圧)に関連し、動作点の値の依存性が観測される。
[式1]

【0032】
実際、切替前のRMS電圧として上で定義された値は、画素の切替前に問題となる画素内の液晶のテクスチャを決定する。以下で提示されるように、この初期のテクスチャは、問題の画素に対して得られる電気光学的曲線に直接影響する。
【0033】
多重化受動型アドレッシングに於いて、従来技術で述べたように、切替前のRMS電圧の値は可変である。実際、トランジスタ式「能動型マトリクス」技術が用いられない場合、ある行の画素は、画素の位置する列に印加される全ての電圧に左右される。図5は、行nと列mの交点にある画素(n,m)は、列mに印加される全ての電圧に左右されることを実際に示している。画素切替の前、つまり画素の属する行の励起の前、にこの画素に印加される平均二次電圧の平方根Vrmsac(n,m)は、p<nのように、問題の画素の行に先立つp行のアドレッシング期間中に列mに印加される電圧Vcmにとりわけ左右される。電圧Vrmsac(n,m)は、次の式(2)によれば(式1と比較)、列の時刻と行の時刻、それぞれTcmとTligneにもまた左右される。
【0034】
[式2]

【0035】
この式(2)は、画素の切替前に行nと列mの交点にある画素で観測される平均二次電圧RMSの平方根に相当するが、ここにTligneは、(図8で定義されるように)一行に対するアドレッシング時間であり、これはTligne=T1+T2+TLである。
【0036】
Vrmsacの値は一般に、0ボルト(例えば、スクリーンのスイープ方向の第一行に位置する画素に対して)、と3ボルトの間で変化する。
【0037】
黒色と白色のアドレッシングと言う特殊な場合、二つの可能性だけがある列信号が一般に用いられ、これらの二つの列信号は、同一の期間Tcと等しい絶対電圧値Vc(一つの交番電圧は正であり、他方は負である)を持つ。Vrmsacは従って、次の式(3)により単純化される。
【0038】
[式3]

【0039】
この特殊な場合には、Vrmsacは一定値を持つ。
【0040】
灰色レベルを得ることを目的とするアドレッシングの場合、列信号の電圧と期間は、得られるべき灰色レベル「g」に関連させて調整される。従って、16灰色レベルに対しては、16個の異なる電圧値Vc及び/又は16個の異なる列パルス期間Tcが存在する。各灰色レベル「g」は従って、電圧Vrmsacに対して灰色レベルなりの特殊な寄与をする。画素の切替前にある画素に印加される平均二次電圧は従って、式(2)により同一の列に位置する前の画素に表示された灰色レベルに左右される。
【0041】
離れた行の画素の切替に対する電圧Vrmsacの影響について述べる。
16行×16列の解像度を持ち、行電極方向に90°ブラッシングされたBiNemスクリーンのプロトタイプが創成された。列電極の幅は約0.27mmであり、列電極の長さは約5mmであり、列間の分離部は約0.015mmである。列電極の幅は約0.27mmであり、列電極の長さは約5mmであり、列間の分離部は約0.015mmである。行の幅は約0.27mmであり、行の長さは約5mmであり、行間の分離部は約0.015mmである。基本の画素80は、プロトタイプの一部の拡大表示を示す図11に示されている。この図に於いて、方向D2はブラッシング方向である。組み立てられたセルに於いて、マスターブレードとスレーブブレードのブラッシング方向は、平行である。ディスプレイには、反射モードで動作させるための背面反射体、前面偏光板、および前面照明装置が付いており、テクスチャTは通過し(ディスプレイは薄く見える)、テクスチャUは通過しない(ディスプレイは濃く見える)。適切な電子的制御装置が16行信号と16列信号を供給し、プロトタイプ装置を完成させ、多重化モードでのディスプレイのアドレッシングを可能にする。
【0042】
プロトタイプの画素は、画素にあるテクスチャの観測に適合する倍率の下で観測される。
Vpre=20Vで期間1msの電圧パルスが、全ての画素をテクスチャTに切替えるための図12に示すアドレッシングに先立ってプロトタイプ全体を通して送出される。このパルスは「プリ−T」と呼ばれることになる。
【0043】
初期のテクスチャTからテクスチャUへの切替を体系的に観測することにしよう。
ここでは、一行の切替の場合に焦点を合わせ、全ての他の行は塊に接続されているとする。
【0044】
スクリーンは、行4(L4)上の行信号により(図12a)、そして1から16の全ての列に渡る同一の列信号により(図12b)、アドレッシングされる。印加信号は図12に示されている。ここに、V1L=20V、T1=500μs、T2=750μs、TL=50μsである。
【0045】
行4のアドレッシング信号は、一般に二つのレベルV1LとV2Lを持つ一つの信号であり、V2Lの値は行4の全ての画素について状態Uを得るためにこのように(V2L=11V)調整される。
【0046】
列は、周期Tligne(Tligne=1300μs)、矩形電圧状、振幅Vadj、期間Tadj(Tadj=750μs)でp周期を含む周期的信号によりアドレッシングされる。この周期的信号は、多重化アドレッシング中の画素で実際に見られるパルスと同様な、列データタイプのパルスをシミュレートできる。これらのパルスは、「列プリパルス」と呼ばれることになる。電圧Vadjの調整は、従って、次の式(4)による、画素切替前の行nの画素に印加される平均二次電圧の直接変更を可能にする。
【0047】
[式4]

【0048】
図13は、行4(n=4)の画素のT->U切替に際しVadjの異なる値に対して得られる効果を示す。
【0049】
同一条件下で、切替前の行4の画素に印加される電圧Vrmsacの増加は、画素のアドレッシング信号への応答を大幅に変える。Vrmsacの値が増加すると、T->U切替後に得られるテクスチャUの割合は減少する。
【0050】
列プリパルスに関連する行4の画素のテクスチャUの全体的消滅に対応する電圧閾値は、式(4)で与えられるRMSタイプの法則に従って、Vadjと比Tadj/Tligneに左右される、と言うことが実験的に既に検証されている。
【0051】
テクスチャUの消滅閾値に対する特殊なRMS値(例では、約1.5V)は、用いられる信号のタイプに応じて(例えば、V1L、V2L、T1、T2...の値に応じて)可変である。
【0052】
テクスチャUからテクスチャTへの切替メカニズムは、切替信号の印加に先立って、切替えられるべき画素に印加される平均二次電圧の存在により同様に影響される、と言うことが実験的に既に検証されている。
【0053】
多重化アドレッシングモードにおける電圧Vrmsacの影響の内、一行を除外して単純化したTのイメージ型式の場合、について述べる。
【0054】
多重化モードにあるBiNemスクリーンのアドレッシングの間、ある画素には、前の行群のアドレッシングの間画素が位置する列の送出信号による平均二次電圧、が観測される。
【0055】
16×16画素のプロトタイプの行L1、L2からL5までを引き続きアドレッシングすることにより、行1から4の切替の間に送出される列データに関連させて、行5の画素に対する平均二次電圧Vrmsacの影響について検討できる。
【0056】
図14のダイアグラムは、この目的のために用いられる信号を示す。
パラメータは以下の通りである。
【0057】
上述の信号と同様で、ディスプレイの全ての行に共通で、振幅Vpre=20Vと期間Tp=1msのプリ−T信号。
V1L=20V、V2L=6V
T1=500μs、T2=750μs、TL=50μs、Tc=T2、従ってTligne=1300μs
Vc1−4=Vc1=Vc2=Vc3=Vc4=−2V又は−3V又は−4V
Vc5=4V
【0058】
行1から4の選択中に印加される列電圧Vc1−4は、同一である。列電圧Vc1−4は、テクスチャTへのこれらの行1から4の切替と行5に印加される電圧Vrmsac(5)の値の調整を可能にする。従って、次の通りである。
−Vc1−4=−2V電圧Vrmsac(5)=1.52V(式(2)による)
−Vc1−4=−3V電圧Vrmsac(5)=2.32V(式(2)による)
−Vc1−4=−4V電圧Vrmsac(5)=3.1V(式(2)による)
−1Vと−4Vの間のVc1−4の値に対して、行1から4はテクスチャTへ常に切り替わる、と言うことに注意しなければならない。
【0059】
この単純化した場合、行5の選択中に全ての列に印加される列電圧は、この行の全体を一様なUテクスチャへ切替えるためにVc=+4Vに固定されている。
【0060】
図15は、Vc1−4が−2Vから−4Vへ進む場合の、これらの信号による多重化中のセルに対する切替結果を示す。もっと特定すれば図15は、Vc1−4の三つの値に対する図14に示す信号を用いることにより、多重化タイプのスイープ期間中の行5切替に電圧Vrmsacが与える影響を示している。
【0061】
多重化タイプのスイープ期間中の行5の画素に印加される電圧Vrmsacの値は、切替信号に対する画素の応答に影響する、と言うことが明白に見て取れる。Vrms(5)の振幅が大きくなればなるほど、55に於けるT→U切替はますます困難となり、L1LとV2Lの選択値にとっては不可能になる。
【0062】
全てのイメージの場合の電圧Vrmsacの存在による切替の変更について述べる。
ここで、画素に印加される切替信号が異なるVcの値を取る場合、画素切替前に画素に印加される平均二次電圧の影響が存在する。これは、全てのイメージのディスプレイに対応する一般的な場合である。
【0063】
図16は、行5の画素に於けるテクスチャTからテクスチャUへの切替閾値の進展を、画素に印加される列電圧Vcに対する値と切替信号前に画素の後半に印加される電圧Vrmsacに関連付けて示すものである。このダイアグラムに於いて行5に対するVcの値は、ボルトを単位とする横座標、および画素に於けるテクスチャTの割合を示す縦座標に既に記入されている。
【0064】
電圧Vrmsacが増加すると、例えばテクスチャTの50%を得るために印加されるべき列電圧Vcの値もまた増加する、と言うことが明白に見て取れる。
【0065】
画素で観測される電圧Vrmsacによる切替の乱れは、図10に示すように動作点のスリップと言う結果に繋がる。
【0066】
このような条件ではイメージの灰色レベルを精度良く制御するのは不可能である、と分かる。
実際、ある列電圧を印加しても、前にアドレッシングされた画素に印加された列電圧が低かったのか、それとも高かったのかに基づく、従ってイメージのコンテンツに基づく、問題の画素に於けるテクスチャUとテクスチャTの同一の割合には結果としてならない。
【0067】
N行とM列から成るディスプレイ上で灰色レベルを持つイメージのディスプレイの場合、行N、1≦n<N、と列m、1≦m<Mの交点、P(n,m)と表記、に位置する画素は、「g(n,m)」と表記されることになる灰色レベルを持つ。
【0068】
画素P(n,m)に印加される電圧Vrmsac(n,m)は、従って、p<nの時、行pのアドレッシング中に列mに印加される信号による寄与分の合計である。
【0069】
行p<nと列mの交点に位置する画素P(p,m)に刻まれた灰色レベルg(p,m)を検討すると、この画素をアドレッシングするのに用いられた(電圧Vcg(p,m)と期間Tcg(p,m)の)列信号の、画素P(n,m)で観測されるVrmsac(n,m)に対する寄与分Vcontribg(p,m)2は、次の式(5)で定義される。
【0070】
[式5]

画素P(n,m)で観測される電圧Vrmsacは、従って、次の式(6)に基づき前のn−1行にディスプレイされる灰色レベルに左右される。
【0071】
[式6]

【0072】
ディスプレイの画素で観測される電圧Vrmsacの制限について述べる。
受動型多重化モードに於いて双安定スクリーンのアドレッシングを行う場合に付いて回る電圧Vrmsacに基づく制限を解決するための第一の方策は、この電圧の変動を一定の十分に低い値以下に保つことであろう。行相互間の時間(および従ってTligne)は、例えば、いかなる列電圧が印加されようとも、各灰色レベルの電圧Vrmsacへの寄与分の間の差を1/10ボルト以下に保つように、十分に延長することができよう。
【0073】
この方法には、イメージ用のアドレッシング時間を延ばしてしまうと言う欠点がある。
【0074】
標準的液晶装置(TNとSTN)について述べる。
単安定ディスプレイ、つまりツイストネマチック(TN)型のディスプレイに関し、または非制限例としてのスーパーツイストネマチック(STN)型のディスプレイに関してさえ、用いられているネマチックサーモトロピック液晶の混合物は、問題の画素へ印加される電圧V(n,m)の絶対値に良くは反応せず、印加される電気的信号の周波数fがf>>(1/c)である限りに於いて平均二次値の平方根に良く反応する。なお、ここに、τは液晶混合物分子の平均方向の再方向化の時間特性である。両方(TNとSTN)の場合、画素に印加される平均二次電圧の値は、液晶のテクスチャを決定し、従って画素の光学的伝送特性を決定する。画素(n,m)に印加される平均二次電圧の値の制御は、従って、「受動マトリクス」タイプのアドレッシングとの関連でネマチック液晶ディスプレイに対する必要条件である(非特許文献11)。
【0075】
画素(n,m)に印加される平均二次電圧係数の平方根の計算は、一方で、列mの全ての列信号により印加される電位差を、そして他方でかつ双安定ディスプレイの場合と違って、行励起の時刻、つまり行信号がこの行に印加される時刻に於ける行nの電位差を考慮する。当業者は、「オン」状態の画素を保持するための平均二次電圧VRMSON(n,m)、および「オフ」状態の画素を保持するための平均二次電圧VRMSON(n,m)に注意を向ける。全ての画素の灰色を造る白色、黒色の光学的状態を発生する特定のテクスチャの保持は、各画素の端子の平均二次電圧を適切に保持することにより適当な状態にされる。全ての画素の同一の平均二次電圧は、スクリーン全体に一様な灰色を創成する。
【特許文献1】FR2740 894
【非特許文献2】C.Joubert,proceeding SID 2002,p.30−33,“Ultra low power bright reflective displays using binem technology fabricated by standard manufacturing equipment”.
【特許文献3】特許出願FR 02 01448
【特許文献4】特許出願FR 02 04940
【特許文献5】FR2824400
【非特許文献6】M.Giocondo,I.Lelidis,I.Dozov,G.Durand,Eur.Phys.J.AP 5,227(1999).
【非特許文献7】I.Dozov,Ph.Martinot−Lagarde,Phys.Rev.E.,58,7442(1998).
【特許文献8】FR0106045
【特許文献9】FR0305934
【非特許文献10】C.Joubert et al,proceeding IDW04,p1711,“A new approach to gray scale in biNem LCDs”.
【非特許文献11】Liquid Crystal Displays, addressing schemes and electrooptical effects, Ernst Lueder, John Wiley and Sons, Ed2001,chapter 12(p167)
【0076】
本発明の基礎について述べる。
従来技術に関連する欠点を克服するために、本発明は、画素切替の前にディスプレイの各画素に印加される平均電圧が、好ましくは平均二次電圧の平方根が同一の状態にされ、かつ表示されるべきイメージのコンテンツから独立した状態にされる、双安定ネマチック液晶によるマトリクスディスプレイ装置を提供する。
【0077】
以下に於いて、平均二次電圧の等化の場合だけが検討されることになる。しかしこの例は、制限するものではなく、異なる計算をされた平均電圧もまた適用可能である。
【0078】
一行毎にアドレッシングが実行される受動型多重化モードに於いて、各行の全ての画素の端子の平均二次電圧は、各行の励起に先立つ瞬間には一定値に固定されている。このことにより、この行の励起の前にこの行の全ての画素のためである、液晶分子の同一のテクスチャを得ることが可能になっている。この方法により本発明は、この行の各画素の選択されたテクスチャへの切替について精確な制御を保証する。この方法は各行に対しても同じく適用される。
【0079】
平均二次電圧は、双安定スクリーン全体がアドレッシングされ終わった時、またはこの同じスクリーンでリフレッシュを必要とする部分がアドレッシングされ終わった時、零となる。
【0080】
本発明の実施形態によるのは、以下の通りである。
- 固定の平均電圧の値を計算するための時刻境界線の選択は任意である。
- 画素の切替前のディスプレイ装置の各画素で見られる平均二次電圧Vrmsacは、イメージデータとデータから独立したイメージを表す列アドレッシング信号により与えられた値を超えて調整できる。
- Vrmsacの等化信号は、ディスプレイの列信号を経由して、または行信号と列信号の組合せを経由してさえも、印加できる。
- 本発明の実施形態の本質は、各行の時刻に於ける電圧Vrmsacの等化信号を付加することにある。例えばこの等化信号は、行の励起時刻中に、とりわけ行励起信号の始点時刻に印加される。
- 電圧Vrmsacの等化信号が列信号経由で印加される場合、イメージ内で再生成されるべき灰色レベル「g」の各々に対して、カップル(列電圧Vc/列パルス期間Tc)は一般にイメージデータを表すように定義され、相補カップル(RMS等化電圧Vcomp/RMS等化期間Tcomp)は一般に、電圧Vrmsacをディスプレイ全体に共通な値、Vrmsacと記述、に調整するように定義されよう。
- これらのRMS等化電圧の値とRMS等化信号期間の値は従って、必要なVrmsacの値に関連付けて各灰色レベルに対して調整される。
RMS等化信号は例えば、電圧Vcompを一定に保ったまま期間Tcompを調整することにより、または期間Tcompを一定に保ったまま電圧Vcompを調整することにより、全ての灰色レベル「g」について計算できることになる。
- VcompとTcompの両方を変化させるように、あるいは行電極の全てまたは一部に印加される電圧の値を変化させるように、またはこれらの異なる可能性の組合せで変化させるように選ぶこともまた可能であろう。
- 等化値Vrmsacは、1V以上か、または1Vに等しい。
- 本発明のもう一つの実施形態の本質は、p>1の時、p行毎に電圧Vrmsacの等化信号を付加することにある。
【0081】
例えば等化信号は、問題の行(p行毎に1行)の励起時間中に、例えば行励起信号の始点に於いて、印加される。
【0082】
列信号を経由してのVrmsac等化信号は、スクリーンの物理的行がアドレッシングされていない時でも、いわゆる「仮想」行のアドレッシング期間中に実行することができる。
- 行の励起信号は双極性であり、画素で見られる平均電圧は液晶の電気化学的損傷を防ぐオーダーに制限されており、そして等化信号は行励起信号の最初の極性の間に印加される。
【0083】
本発明は、画素切替前の双安定ディスプレイの各画素に印加される平均二次値が、一定温度に於いて定数値になるよう制御することを提示している。本発明は全体として、標準のディスプレイ(例えば、TNとSTN)に用いられる技術とは異なる。標準のディスプレイでは、平均二次電圧の平方根は選択された行に印加される電位差をやみくもに考慮しなければならない。更に、標準のディスプレイでは、画素の端子の一定平均二次電圧は、問題の画素に於いて常に同一であると言う状態を得るまでに達する。
【0084】
本発明の長所について述べる。
画素の切替前にディスプレイ装置の画素の各々に印加される平均二次電圧の平方根を規制すると言う第一の長所は、イメージの一様性に於ける明白な改良である。一つの同一の列にある画素毎の電圧Vrmsacの変動に基づく切替閾値の変動は全て、実際に制御される。
【0085】
本発明の更なる長所は、ある行のアドレッシング時間は灰色レベルの精確な再生成を得るために延長される必要がない、と言うことである。
【0086】
本発明の更なる長所は、実現が簡単なことである。実際、画素の切替前にディスプレイ装置の画素の各々で見られる平均二次電圧の平方根を規制するために、付加のイメージメモリは必要ないし、前の行についてのイメージ情報や前のフィールドについてのイメージ情報を考慮する必要もない。
【0087】
本発明の更なる長所は、電圧Vrmsacを規制することで、ディスプレイのその他の変動パラメータにより発生する動作点の非一様性を修正するのが可能になることである。
【0088】
本発明はこのように、一般的に言えば、次のことに関する。電界を印加することなく二つの安定したテクスチャを提供する双安定ネマチック液晶マトリクスのためのアドレッシング方法、その間に液晶が置かれる二つの基板を含むこのスクリーン、電極をアドレッシングする行を含む第一の基板と電極をアドレッシングする列を含む第二の基板、受動型多重化タイプの画素のアドレッシング、列が各行の励起時間中に同時にアドレッシングされる間に一行毎にアドレッシングされる行、および
【0089】
画素の切替時刻に対応する画素のレベルで基板間に印加される電気的切替電圧によりコマンドされ一つの状態からもう一つの状態へと切替える各画素の切替。
【0090】
本発明による方法は、イメージディスプレイのコマンドが始まってから切替に即座に先立つ瞬間までのこの電圧の平均時間値は、好ましくは平均二次値は、ディスプレイされるべき情報の既定で独立し、イメージの画素全てについて同一である値を与えるように、基板間に印加される電気的電圧が各画素について選択されることに特徴がある。
【0091】
一つの実施形態に於いて、平均電気的電圧は、問題の平均電圧に最大の寄与をする一様な灰色レベルのディスプレイにより得ることのできる最大平均電気的電圧に少なくとも等しい。
【0092】
一つの実施形態に於いて、平均電圧の既定値を得るために、少なくとも一つの等化パルスが切替の必要な画素に対応する列に印加される。
【0093】
この場合、一つの実施形態によれば、各行に於いて平均電圧の同じ既定値を得るために、各行には少なくとも一つの等化パルスが供給される。
【0094】
一つの実施形態によれば、対応する画素の行の励起中にこの画素に対応する列に、前記の少なくとも一つの等化パルスが印加される。
【0095】
一つの実施形態によれば、各画素に於いて必要な灰色レベルを得るために、画素、少なくとも一つの等化パルスに先行される必要なテクスチャに対する選択パルス、前記の選択パルス、および平均が既定値の平均電圧に対応するような電圧を持つ少なくとも一つの等化パルス、に対応する列に等化パルスが印加される。この場合、前記の等化パルスは、例えば、切替えられるべき画素の行の励起中に、とりわけ切替えられるべき画素の行の励起の始まり中、に印加される。
【0096】
一つの実施形態によれば、行のための励起信号は異なる極性を持つ二つの引き続く部分を提供し、そして等化信号はこの励起信号の最初の部分の期間に印加される。
【0097】
一つの実施形態に於いて、平均電圧に対する前記の既定値を得るために、前記の少なくとも一つの等化パルスが、対応する画素の行に先立つ行励起中に該当画素に対応する列に印加される。例えば等化パルスは、pの行、pは1より大きい既定数、の励起中に印加される。
【0098】
一つの実施形態に於いて、平均電圧の前記の既定値を得るために、前記の少なくとも一つの等化パルスは二つの連続した行の励起信号の間に印加されるが、この等化パルスは従って行励起信号のない時に印加される。例えば等化パルスは、既定数pの行を分離する期間に対応する期間に従って印加される。
【0099】
一つの実施形態に於いて、平均電圧の前記の既定値を得るために、少なくとも一つの等化パルスが、第一の行の励起信号に先立って、該当の列に印加される。
【0100】
一つの実施形態に於いて、各画素の電圧に必要な平均値は、この画素の切替の直前に、前に印加された等化パルスの振幅および/または期間を選ぶことによって得られる。
【0101】
一つの実施形態に於いて、各イメージの多重化モードでのディスプレイに先立って、全ての画素に同一の状態、つまり同一のテクスチャを与えるような全ての画素に信号が印加される。
【0102】
一つの実施形態に於いて、既定数の画素を含むイメージ部分を変更するために、この既定数の画素は等化パルスに支配される。
【0103】
一つの実施形態に於いて、液晶の双安定テクスチャのそれぞれのねじれは、プラス180°またはマイナス180°だけ大体異なる。例えば、第一のテクスチャは一様またはわずかだけねじれている。
【0104】
本発明は、以上で定義したアドレッシング方法を用い、そして双安定ネマチック液晶マトリクススクリーンを含むディスプレイ装置に関する。このスクリーンはその間に液晶が置かれる二つの基板を含み、第一の基板は行アドレッシング電極を提供し、そして第二の基板は列アドレッシング電極を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0105】
本発明のその他の特徴、目的および長所は、以下の詳細な記述および添付の図面から明白になるはずである。これらは特定・制限・限定をするものではなく、例として提供されている。図面は以下の通りである。
【0106】
変形1:固定Vcompの場合、Vrmsac=Vrmsac(max)値のディスプレイの画素で見られる電圧Vrmsacの等化の例について述べる。
Vrmsac(max)は、電圧Vrmsacに最大の寄与をする灰色レベルのディスプレイが得られるVrmsacの最大電圧であるとして定義される。
【0107】
この例で、ディスプレイの画素の各々で見られる電圧Vrmsacは、各灰色レベルに適切な等化信号を付加することによりVrmsac(max)に等しく保持される。
【0108】
この変形に基づき電圧Vrmsacの等化を実行する信号の例が図17aと図17bに示されている。
【0109】
この例に於いて、灰色レベル「h」が最初に決定されるべきであり、この灰色レベル「h」に対するパラメータVcとtcは電圧Vrmsacに最大の寄与をし、次の式(10)のようにVrmsac(max)を決定する。
【0110】
[式10]

従って、この例で、Vrmsacの等化は、各行に於いて次の式(10)のように実行される。
【0111】
[式10a]

各灰色レベル「g」に対してそうするために、印加されるべき等化信号の期間は、Vcompが補正電圧または等化電圧である時、固定のVcompに関連付けて次の式(11)により計算される。
【0112】
[式11]

Vcomp電圧は、全ての灰色レベルに対して電圧Vrmsacの完全な等化を可能にする全ての値に等しいように選択できよう。
【0113】
従って、各灰色レベルに対応する列信号によりもたらされる合計矩形電圧Vrmsacへの寄与分、Vrmsと記述、は次の式(12)のように定数となる。
【0114】
[式12]

【0115】
ディスプレイの列に印加される信号は従って、各行について、二つの部分から成る。一つはディスプレイされるべき灰色レベルを選択するために用いられる「ユースフル」部分、およびディスプレイ装置全体を通して電圧Vrmsacの値を一様にするための電圧Vrmsacの等化部分である。
【0116】
列信号のこれらの二つの部分は、ひとえにディスプレイされるべき灰色レベルに左右される。これらの二つの部分は、ディスプレイの画素の位置、または問題の画素の外側でディスプレイされるべきイメージのコンテンツからは独立している。
【0117】
図17aのダイアグラムに於いて部分Aは、時刻tに関係する行電圧の変化を示し、部分Bは灰色レベル「h」に対するVrmsh=Vrmsac(max)の行1に対する列電圧Vcolを示す。部分Cと部分Dで、等化パルス82と84は、灰色レベル「s」と「t」のためにそれぞれ示されており、列パルス86に対しては灰色レベル「s」を与え、列パルス86に対しては灰色レベル「t」を与えるような列パルス86と86がそれぞれ示されている。行1に関係する部分Bに於いて、レベル「h」に対する等化パルスは存在しないことに注目できる。
【0118】
図17aのこのダイアグラムに於いて、部分Eは、行3の画素で見られる信号を最終的に示している。この信号は、Vligne−行3Vcolonneに等しい。
【0119】
図17bで表されている変化は、図17aで表されている変化と類似しているが、図17bの変化は、行信号励起が図17bの部分Aに示されるように双極性である、と言う点で異なっている。他の部分B、C、D、Eは、図17aの同じ参照記号の付いた部分に対応している。従って、灰色レベル、それぞれ「s」と「t」を与えるためのパルス86および86と同様に等化パルス84および84に対しての定めが成立する。
【0120】
表(1)の例に於いて、Vrmsac(max)は1.5Vに等しく、灰色レベル0または7について得られる。Vcomp=3Vと固定することにより、式(11)は次の表(1)で与えられる各灰色レベル「g」に対するTcompを計算するために用いられる。
【0121】
灰色レベルgを得るために列に印加されるべき電圧Vcは、実験的に決定される。
【0122】

【0123】
電圧Vrmsacの等化のための列パルスパラメータの選択について述べる。
各行時刻に於ける列等化パルスの挿入について述べる。
第一のオプションとして、Vrmsacのための列等化パルスは、各行時刻に於いて挿入される。
Vrmsacのための列等化パルスの位置は、イメージデータを表す選択信号に重ならないと言う条件で、時刻行中のいかなる点に於いても選択できよう。等化列信号は、図17aと図17bに示すように、行励起信号の始点近辺で印加される。
【0124】
好ましくは、等化列信号は、行間挿入時間が許すならば、行スペース時刻TLの期間中に、またはアンカリングブレイクフェーズ(V1L、T1)の間の行時刻の始点に、位置することになる。
【0125】
電圧Vcomp(またはもっと一般的には、各灰色レベルに対するVcomp)は、例えば、列ドライバ(これはVdriver maxと呼ばれることになる)により認証される最大電圧に等しく選択できよう。
それにもかかわらず、Vcompに基づく列信号は、列信号の位置にも依るが、アドレッシング専用信号を妨害する場合もあろう。列信号がアンカリングブレイクフェーズ(V1L、T1)の間の行信号の始点に位置するのがこの場合である。電圧Vcompが列に存在する場合、液晶はVligneとVcomp間の差に等しい全体電圧に支配される、と言うことが実際に分かる。
【0126】
図17aと図17bの場合、行3の画素に印加される電圧が信号Vcompの期間を通して(V1L−Vcomp)に等しいのは明白である。
選択信号(アンカリングブレイク)の特性は、従って、変更される。
有利なことに、行電圧の極性に反対の信号Vcompに対する電圧極性は、列信号(Vcomp,Tcomp)の存在する間は、画素で見られる合計絶対電圧がV1Lで表されるアンカリングブレイク電圧より大となるように、選択できよう。
【0127】
図17aと図17bの一つの変形(示されてはいない)に於いて、負極性の補正信号が選択され、従って行3の画素で見られる全体電圧の取得を、次の式(13)のように可能にする。
【0128】
[式13]

ここで、|Vcomp|はVcompの絶対値である。

低Vcomp値はまた、アドレッシング専用信号への妨害を最小にするようにも選択できよう。低Vcomp値を選択すればまた、より大きなTcomp(式(11))に必要な時間ピッチを得ることが可能になり、これにより列ドライバの電子的制御の実現が容易になる。
【0129】
ある場合には、液晶内部の電荷移動の影響を制限し、従ってディスプレイの寿命スパンを増加させるために、Vrmsac等化信号の極性を変更するように選ぶことができよう。この実施形態は、高速でディスプレイする場合、例えばビデオをディスプレイする場合に、特に有利となる。Vrmsacの列等化パルス用の極性を変更するモードは、従来技術による各フィールドに於いて、各行に於いて、またはいかなる時間ピリオドに基づいても、選択できよう。
【0130】
更に、行の信号励起は、画素で見られる平均電圧を制限するような方法で双極性にでき、これは液晶で起る電気化学的損傷を防ぐことになり、そして等化信号は、図17bに示されるように、行信号励起の第一の極性の期間で印加される。第一の極性用のフォーマットは図17bに示されるようなフォーマットに制限されるわけではなく、例えば二つのレベルが付いたフォーマットもまた可能である。
【0131】
図18aと図18bは、160×160画素のディスプレイ上のVrmsac=Vrmsac(max)によるVrmsac等化の創成の一例を示す。画素の次元は、前に記述したプロトタイプの次元に同じである。
以下の信号が用いられている。
行信号:
V1L=V2L=18V
T1=T2=500μs
TL=80μs
列信号:
T(薄いテクスチャ)提供信号:
Vc=2V;Tc=300μs;Vrmsac=1.05V
U(濃いテクスチャ)提供信号:
Vc=5V;Tc=180μs;Vrmsac=2.04V
テクスチャT用のRMS等化提供信号:
Vcomp=5V;Tcomp=130μs
この目的は、薄い背景(テクスチャT)の上に、濃い縞模様(テクスチャU)を含むイメージを刻むことである。
【0132】
図18aと図18bの矢印Dは、スイープの方向に相当する。
図18aは、電圧Vrmsacの等化が作動しない場合に得られるイメージを示し、テクスチャTへの切替が完全でないことが見て取れる。理論的にはT(薄い)が100%でなければならない全ての行は、テクスチャUが非零で可変比を呈し、少し濃い縞模様の形になっている。
図18bは、本発明による電圧Vrmsacの等化が作動した場合に得られるイメージを示す。次のように選択されることになる。
Vrmsac=Vrmasc(max)=Vrmsac=2.04V
Tを発生する列信号に、振幅Vcomp=5Vと期間Tcomp=130μsのRMS等化列パルスが付加される。ディスプレイの画素の全てで見られる電圧Vrmsacは、従って2.04Vに等しい。薄くなければならない行は全て、Tが正確に100%であり、それ以外の濃い部分はUで目立たない。
【0133】
p行毎の列等化パルスの挿入について述べる。
第二のオプションとして、列等化パルスがp行毎に挿入される。
図18−1は、本オプションによるVrmsacの等化の実施を示す。この例では、p=4が選択されることになる。行n、n+1、n+2のアドレッシング中には何も挿入されず、従って等化信号は行n+3の、そして最後の行までの、アドレッシング中の列信号に挿入される。この図18−1の下部のダイアグラムに於いて、パルス92と94は電圧Vrmsac用の補正列パルスである。
【0134】
明らかに、第一のオプションに比較して、等化電圧パラメータは異なっており、理由は列電圧の寄与分に於けるパラメータ計算係数がp行についてのものであり、一行についてのものではないからである。
【0135】
仮想行の列等化パルスの挿入について述べる。
前述の第一のオプションは、行選択信号の印加に先立って画素に印加される平均二次電圧の等化を可能にする。それは、列上のパルスが「ユースフル」パルス(イメージ情報)を妨害しないような瞬間に列に付加されたパルスの周りを回転する。この技術は、行アドレッシングの期間がテクスチャ選択用の列信号の期間に匹敵する場合、複雑になる。この場合、等化パルスの作用に選択パルスの作用を重畳させないのは不可能である。
【0136】
第三のオプションは、Vrmsac等化電圧を列に印加するために、そしてこの行の周期の間は他の行の選択電圧を印加せずに、一行のためのアドレッシング時間を用いることである。
この技術は結局、p>1の時、pの物理的行の各ブロックのために「仮想」行を(等化電圧により)アドレッシングすると言うことになる。
図18−2は、p=4の時、仮想行の使用を推奨するような方法を示す。物理的4行毎に、列電圧を経由しての等化92、94は、仮想行のアドレッシング期間中に実行される。この図18−2に於いて、行Ln+3とLn+7は仮想行である。
【0137】
この実施形態の長所は、この実施形態が、切替信号の前に、行周期が選択パルス期間と等化パルス期間の合計より小さい場合に於いてさえ、画素に印加される電圧のVrmsac値の等化を可能な状態にもする、と言うことである。
【0138】
この実施形態の欠点は、この実施形態は、一行のためのリフレッシュ時間とブロック行数pをスクリーンの行の総数で割った商に比例する期間だけ、スクリーン全体に対するリフレッシュ時間をのばしてしまう、と言うことである。
【0139】
ディスプレイの第一行の励起の前に印加されるプリ‐パルスの使用は、部分的にこの方法に基づく、と言うことに注目できる。
【0140】
変形2:固定Tcompの場合、Vrmsac=Vrmsac(max)値のディスプレイの画素で見られる電圧Vrmsacの等化の例について述べる。
電圧Vrmsacの等化の一実施形態に於いて、Tcompを一定値に固定し、従って各灰色レベル「g」に対して、次の式(14)により、固定TcompとVrmsac=Vrmsac(max)に関連付けて、印加されるべき等化信号の電圧Vcompを計算するように選択できよう。
【0141】
[式14]

Tcompの選択に関する考慮は、変形1で開示されている考慮に同じである。
従って、灰色レベルの各々に対応する列信号によってもたらされる合計電圧Vrmsacへの寄与分は、次の式(15)のように定数となる。
【0142】
[式15]

【0143】
この実施形態は、列ドライバ管理の簡単化した制御として、より適切な場合がある。
この方法は、前述の各種オプション、つまり行毎の、p行毎の、または仮想行毎の等化の挿入、と互換性がある。
【0144】
変形3:固定Tcompの場合、Vrmsac>Vrmsac(max)値のディスプレイの画素で見られる電圧Vrmsacの調整について述べる。
変形1と変形2の例に於いて、使用されるVrmsacの選択値は、イメージデータに存在する最大値である。この値は、もっと高い電圧Vrmsacに調整できる。この手順の長所は、ディスプレイの品質を最適化するように、TからUへの切替閾値の位置を制御することにある。
上の例を用いて、従って次の式(16)が得られよう。
【0145】
[式16]

ここで、VrmsはVrmsacを調整するために自由に既に選択された値である。

残りの計算は従って、固定Vcompに於ける調整の場合は式(11)により与えられる計算に、または固定Tcompに於ける調整の場合は式(14)により与えられる計算に同じである。
この方法は、前述の各種の異なるオプション、つまり行毎の、p行毎の、または仮想行毎の等化の挿入、と互換性がある。
【0146】
変形4:アドレッシングされる第一行の画素で見られるRMS電圧の等化について述べる。
本発明のこの変形では、スクリーンの第一行の励起の前に、t「仮想」行に対応して列パルスを付加することが提案されている。この実施形態は、ディスプレイの第一行で見られることになる電圧の調整を可能にする。この実施形態は、上述のRMS電圧の等化原理を補完するために、またはRMS電圧の等化原理から独立した状態にするために、用いることができよう。
【0147】
実際、イメージのディスプレイが起動する場合、スクリーンの第一行では切替信号に先立つ電圧は零であり、RMSの等化が用いられる場合でさえそうである。
この現象は、イメージの始点に於ける灰色レベルの乱れと非一様性に繋がる。
実験的に、この現象はイメージディスプレイの始点の多数の行に跨ることが既に知られている。
従って、イメージのスイープの効果的な起動の前にRMS電圧の値を安定させると言う観点から、列プリ‐パルスを付加してRMSの等化原理を拡張することを提案する。
【0148】
図19に示す第一の実施形態に於いて、列プリ‐パルスは、Tligneに等しい周期により、イメージの第一行の前の仮想行に対応するように時刻分配パルスを持っている。第一行の値に同一の値、または所要イメージ品質に適切であろう全ての他の値は、これらの仮想行の期間中に印加される列信号のための電圧値および時刻値として用いることができよう。
【0149】
第二の実施形態に於いて、仮想行は、所要電圧値にとって適切な期間と電圧の単一列プリ‐パルスで置き換えることができよう。
例えば、第一行に於いて1ボルトの電圧を得るためには、2ボルトに等しい電圧、期間100μs、および300μsだけのスペースにより、10個から50個の間の列パルスを前記の第一行のアドレッシングの前に送出できよう。図19の下部のダイアグラムに於いて、6個の列プリ‐パルスから成る96は、ディスプレイの始まる前に既に現れている。参照記号98はディスプレイの始点に相当する。
数ミリセカンドの間、列に1ボルトのDC電圧を印加することによっても、同一のRMS電圧の効果を得られよう。
【0150】
図20は、上述のような160行×160列のディスプレイに対するディスプレイの始点についての結果を示す。
使用される信号は、図18の信号と同様な信号である。参照記号100は、行ディスプレイの始点に相当する。
図20aに於いて、ディスプレイの第一行は、等化信号を受信しない。期待されたような100%Tのテクスチャは示さず、非零割合のパラサイトテクスチャU(濃い)を含むことが見て取れる。
図20bに於いて、ディスプレイの第一行は、10個の列プリ‐パルスから成る等化信号を受信する。パラサイトテクスチャUの減少を見て取れる。
図20cに於いて、ディスプレイの第一行は、20個の列プリ‐パルスから成る等化信号を受信する。パラサイトテクスチャUは、既に仮想的に零になっている。
従って、10個から20個のRMS等化プリ‐パルスをディスプレイの始まりの前に付加することにより、ディスプレイの第一行上で観測される乱れを効果的に防げる、と言うことが見て取れる。
【0151】
ディスプレイの始まりの前のRMS等化プリ‐パルスの付加は、行電極を経由してもまた実行できよう。例えば、ディスプレイの第一行は、イメージスイープを起動する前にRMS等化信号を選択的マナーで受信することができよう。
【0152】
変形5:部分的イメージリフレッシュの場合について述べる。
スイープ起動前のRMS等化原理は、部分的イメージリフレッシュの場合に拡張することができる。
イメージの一部だけが変更を必要とする場合、行NからN+Pと列MからM+Kの交点に位置するP×K画素のグループは、前述のようにRMS等化電圧に関係するP×K画素を支配すると決定できよう。上の場合のように、これらのRMS等化信号は、列電極を経由して、または行電極と列電極の両方を用いて、のいずれかで印加できよう。
【0153】
この方法は、前述の各種の異なるオプション、つまり行毎の、p行毎の、または仮想行毎の等化の挿入、と互換性がある。
【0154】
変形6:ディスプレイの他の特性に基づく動作点の非一様性を補正するためのRMS電圧の規制の使用について述べる。
BiNem型ディスプレイの左動作点と右動作点のローカル値は、例えば、ディポジティングパラメータまたはブラッシングパラメータの不良制御による非一様なアンカリング層の場合、画素毎に異なる可能性がある。このローカル値はまた、セルギャップ内の変動(例えば、分子による)によっても影響を受ける可能性がある。
従って、一定のディスプレイに固有のこれらの非一様性に対して補正するために、RMS電圧規制信号を用いるのは適切であろう。
【0155】
図21の例に於いて、変形1に基づき図18に示された型のディスプレイは、変形1で述べたようなRMS電圧の補正(Vrmsac=2.04V)を用いて、一様な灰色レベル「g」をディスプレイすることが必要であると考えられる。
それにもかかわらずディスプレイは、要求条件以下に低下するテクスチャTの品質を持つ画素に対応して、もっと濃いゾーン(ゾーンAと呼ばれる)を持っている。
このゾーンは従って、図22に示すように、スクリーンの残りの部分の電圧より低い電圧Vrmsac=2.04VによるT→U切替閾値を与える。この非一様性は、ディスプレイの製造パラメータの不良制御による可能性がある。
【0156】
この非一様性を正すための解決策は、従って、本発明によるRMS電圧規制を用いての、ゾーンAの画素で見られるRMS電圧Vrmsac*の修正(この例の場合、Vrmsac*>Vrmsacが必要であろう)にある可能性があろう。この本発明によるRMS電圧規制は、ゾーンAの画素のための切替閾値を、ディスプレイの残りの部分の電圧値や列時間値と互換性のある電圧値と列時間値に向けて進展させると言うような方法である(図22参照)。
【0157】
図22のダイアグラムに於いて、列電圧Vcは横座標にあり、テクスチャTの割合は縦座標に既に記入されている。曲線110はVrmsac=2.04Vで等化されたRMS電圧のディスプレイについての電気光学的応答曲線であり、曲線112はVrmsac=2.04Vで等化されたRMS電圧のゾーンAについての電気光学的応答曲線であり、そして曲線114はVrmsac=2.1Vで等化されたRMS電圧のゾーンAについての電気光学的応答曲線である。縦座標に於いて、参照記号116はゾーンAの灰色レベルを示すために既に用いられており、参照記号118は必要な灰色レベル「g」を示すために既に用いられている。
【0158】
ディスプレイの画素で見られるRMS電圧は、同じ列に位置する前の行の画素をアドレッシングするのに既に用いられている列信号に左右される。一般に、画素の切替時刻に画素で見られるRMS電圧を評価するためには、約10行から約20行の間の前の行を考慮に入れる必要がある。
【0159】
本発明の手段を用いての、Vrmsac*≠Vrmsac(Vrmscはディスプレイの画素の残りの部分に対する本発明による等化RMS電圧である)のようなディスプレイの一定のゾーンAに於けるRMS電圧Vrmsac*の規制は、VrmsacからVrmsac*に向けてのRMS電圧の更なる変形を用いて、ディスプレイの連続性と言う形で実現できよう。
好ましくは、しかしながら、これは仮想行を導入することにより実現されることになる。このようにしてディスプレイ全体を通しての切替閾値の精確な制御が、イメージリフレッシュ時間をわずかでも延長しながら、可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】BiNemタイプのディスプレイに対する動作原理を示した図である。
【図2】電界に突然の遮断があった場合のセル内の流体力学的流れの様子を示した図である。
【図3】従来技術による4行×4列のBiNemディスプレイを示した図である。
【図4】一つの同じ行の画素の同時切替用の制御信号を示した図である。
【図5】BiNemスクリーンを多重化するのに用いられる信号を示した図である。
【図6】従来技術により灰色レベルを創成するための原理を示した図である。
【図7】アドレッシング化列電圧Vcに関連する従来技術による160×480ディスプレイの画素の光学的状態を示した図である。
【図8】従来技術による「カーテン効果」による灰色レベルの創成のための列信号パラメータの変調の例を示した図である。
【図9】BiNemディスプレイに対する電気光学的曲線の例を示した図である。
【図10】列電圧の振幅の変調によりBiNemディスプレイに対する電気光学的曲線に沿って灰色レベルを得るための原理を示した図である。
【図11】BiNemディスプレイの多重化モードに於ける画素の切替を示した図である。
【図12】16×16プロトタイプの列と行4に印加される信号を示した図である。
【図13】図12の信号を用いることによる、行4の切替に際しての電圧Vrmsacの影響を示した図である。
【図14】多重化タイプのスイープのために用いられる信号を示した図である。
【図15】図14に示した信号を用いる多重化タイプのスイープ期間中の、Vc1−4の三つの値に対する、行5の切替に際しての電圧Vrmsacの影響を示した図である。
【図16】画素で見られる電圧Vrmsacに関連するT->U切替閾値の進展を示した図である。
【図17a】本発明の一つの実施形態に基づき電圧Vrmsacの等化を実行する際のアドレッシングダイアグラムの例を示すが、この際、列等化パルスは行毎に挿入された図である。
【図17b】本発明の一つの実施形態に基づき電圧Vrmsacの等化を実行する際のアドレッシングダイアグラムの例を示すが、この際、列等化パルスは行毎に挿入され、行の励起信号は双極性であることを示した図である。
【図18】多重化モードのBiNem160×160ディスプレイに於いて、本発明の一つの実施形態に基づき電圧Vrmsacの等化を実行する際の例を示した図である。
【図18−1】列等化パルスがp=4の時p行毎に挿入される、本発明のもう一つの実施形態に基づき電圧Vrmsacの等化を実行する際のアドレッシングダイアグラムの例を示した図である。
【図18−2】列等化パルスが三つの物理的行毎に一つの仮想行の時この仮想行毎に挿入される、本発明の別の更なる実施形態に基づき電圧Vrmsacの等化を実行する際のアドレッシングダイアグラムの例を示した図である。
【図19】スイープされる第一行の前に仮想行プリ‐パルスと列プリ‐パルスを付加することにより、本発明に基づく電圧Vrmsacの等化を実行する際の例を示した図である。
【図20】本発明に基づく電圧Vrmsacの等化を実行した際の結果を示す。
【図21】Vrmsacの等化からは独立した灰色レベルの非一様性の例を示した図である。
【図22】本発明によるゾーンAに於ける電圧Vrmsacの増加の影響を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
双安定ネマチック液晶マトリクススクリーンのためのアドレッシング方法であって、印加される電界が一切なくても二つの安定したテクスチャを提供し、このスクリーンは間に液晶が置かれる二つの基板を含み、第一の基板は行アドレッシング電極を含み、第二の基板は列アドレッシング電極を含み、画素のアドレッシングは受動型多重化タイプであり、行は各行の励起時間中に全ての列が同時にアドレッシングされる間に一行ずつアドレッシングされ、
一つの状態からもう一つの状態への各画素の切替は画素切替の時刻に対応する画素のレベルで基板間に印加される電気的切替電圧によりコマンドされ、
基板間に印加される電気的電圧の値は各画素に対して、イメージディスプレイコマンドの始まりから前記画素の切替の直前の瞬間までの、この電圧の平均時間値、好ましくは平均二次値が、全てのイメージの画素について同一であるディスプレイされるべき情報の既定で独立した値を与えるように、選択されることを特徴とする、双安定ネマチック液晶マトリクススクリーンのためのアドレッシング方法。
【請求項2】
平均電気的電圧が当該平均電圧に対し最大に寄与をする一様な灰色レベルのディスプレイにより得ることのできる最大平均電気的電圧に少なくとも等しい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
平均電圧の既定値を得るために、少なくとも一つの等化パルスが切替の必要な画素に対応する列に印加される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
各行に少なくとも一つの等化パルス(84,84)を供給することにより、各行に於いて平均電圧の同一既定値を得ることが選択される、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項5】
各画素に於いて所要灰色レベルを得るために、少なくとも一つの等化パルス(84,84)に先行される所要テクスチャのための選択パルス(86,86)が画素に対応する列に印加され、選択パルスと少なくとも一つの等化パルスは平均が既定値の平均電圧に対応するような電圧を持つ、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
等化パルスが、切替えられるべき画素の行の励起期間に印加される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
等化パルスが、切替えられるべき画素の行の励起の始まり期間に印加される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
行のための励起信号は異なる極性を持つ二つの引き続く部分を提供し、等化信号(84,84)は励起信号の第一の部分の期間中に印加される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも一つの等化パルスが、対応画素の行の励起期間中に画素に対応する列に印加される、請求項3〜7の一項に記載の方法。
【請求項10】
平均電圧に対する既定値を得るために、少なくとも一つの等化パルスが対応画素の行に先行する行の励起期間に画素に対応する列に印加される、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
等化パルス(92,94)は、pが1より大の既定数である時、pの行(Ln+3,Ln+7)の励起期間に印加される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
平均電圧に対する前記既定値を得るために、少なくとも一つの等化パルスが二つの引き続く行の励起信号の間に印加され、この等化パルスはその後行励起信号が無い時に印加される、請求項1,2又は3に記載の方法。
【請求項13】
等化パルスが、既定数pの行を分離する周期に対応する周期に基づいて印加される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
平均電圧に対する前記既定値を得るために、少なくとも一つの等化パルスが、第一の行の励起信号に先行して、列に印加される、請求項1〜13の一項に記載の方法。
【請求項15】
各画素の電圧に必要な平均値が、この画素の切替直前に、周期的に印加される等化パルスの振幅及び/又は期間を選択することにより得られる、請求項1〜14の一項に記載の方法。
【請求項16】
各イメージの多重化モードでのディスプレイに先行して、画素に同じ状態を与える画素、即ち、同じテクスチャ、の全てに信号が印加される、請求項1〜15の一項に記載の方法。
【請求項17】
既定数の画素を含むイメージ部を変更するために、この決定された数の画素が等化パルスに支配される請求項1〜16の一項に記載の方法。
【請求項18】
液晶の二つの安定したテクスチャのそれぞれのねじれは略プラス180°又はマイナス180°だけ異なる、請求項1〜17の一項に記載の方法。
【請求項19】
第一のテクスチャが一様であるか又は少しねじれている、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ディスプレイ装置であって、請求項1〜19の一項に記載のアドレッシング方法を用い、かつ双安定ネマチック液晶マトリクススクリーンを含み、このスクリーンは間に液晶が置かれる二つの基板を含み、第一の基板は行アドレッシング電極を提供し、第二の基板は列アドレッシング電極を含むディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17a】
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【図17b】
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【図18】
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【図18−1】
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【図18−2】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2009−532731(P2009−532731A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503624(P2009−503624)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【国際出願番号】PCT/FR2007/050965
【国際公開番号】WO2007/116162
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(508301065)
【Fターム(参考)】