説明

双方向チョッパ回路

【課題】低損失で、磁気騒音を抑止でき、さらにノイズを低減できる小型な双方向チョッパ回路を提供する。
【解決手段】第1入出力端子1に一方の端子が接続された昇圧用リアクトル10a、昇圧用リアクトルの他方の端子と接地端子との間に接続された昇圧用スイッチング素子11aおよび昇圧用リアクトルの他方の端子と第2入出力端子2との間に接続されたワイドギャップ半導体ユニポーラデバイスから成る昇圧用ダイオード12aを備えた昇圧チョッパ回路6と、第1入出力端子1に一方の端子が接続された降圧用リアクトル10b、降圧用リアクトルの他方の端子と接地端子との間に接続されたワイドギャップ半導体ユニポーラデバイスから成る降圧用ダイオード12bおよび降圧用リアクトルの他方の端子と第2入出力端子2との間に接続された降圧用スイッチング素子11bを備えた降圧チョッパ回路7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は双方向チョッパ回路に関し、特にスイッチング損失を低減させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば二次電池を利用した車載用ドライブ装置や回生エネルギーを蓄積して利用する交通車両では、電圧を制御するチョッパ回路が使用されている。これらの場合、力行モードでは二次電池の出力で駆動し、回生モードで二次電池を充電するために双方向チョッパ回路が必要になる。
【0003】
一般に、双方向チョッパ回路においては、入出力の関係は非絶縁であり、入出力電圧の関係は昇降圧で双方向である。このような従来の双方向チョッパ回路の一般的な構成を図4に示す(特許文献1参照)。
【0004】
この双方向チョッパ回路は、リアクトル51、スイッチング素子52、ダイオード53、平滑コンデンサ54、蓄電池55、スイッチング素子56、ダイオード57および平滑コンデンサ58を備えている。この双方向チョッパ回路では、昇圧時には、トランジスタ56が常にオフにされ、トランジスタ52が高周波でオン/オフされる。これにより、双方向チョッパ回路は、昇圧チョッパ回路として機能し、蓄電池55を放電する。一方、降圧時には、トランジスタ52が常にオフにされ、トランジスタ56が高周波でオン/オフされる。これにより、双方向チョッパ回路は、降圧チョッパ回路として機能し、蓄電池55を充電する。
【0005】
このような双方向チョッパ回路では、スイッチング素子52、スイッチング素子56、ダイオード53およびダイオード57は、一般に、シリコン半導体を用いて作製されている。高耐圧用(例えば素子耐圧600V以上)のスイッチング素子52、スイッチング素子56、ダイオード53およびダイオード57としては、一般に、バイポーラデバイスが採用されている。
【特許文献1】特開2001−224164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した双方向チョッパ回路においては、スイッチング動作時において、例えばスイッチング素子52がターンオンすると、反対アームのダイオード53がオフするが、この際、PN接合部に形成される空乏層に少数キャリアの蓄積がなされる。そして、この蓄積された少数キャリアによる逆回復電流(リカバリ電流)がダイオード53に流れ、リカバリ損失が発生する。リカバリ損失はダイオードのスイッチング損失であり、スイッチング動作のたびに発生する損失となる。また、この逆回復電流がターンオンの過渡状態にあるスイッチング素子52に流れ込み、スイッチング素子52のスイッチング損失の増大を引き起こし、発熱損失が大きくなる。スイッチング素子56についても同様である。
【0007】
従って、スイッチング素子52およびスイッチング素子56を冷却するためのヒートシンク等といった冷却構造が大型化してしまう。また、十数kW以上の容量を有する装置で使用される双方向チョッパ回路では、スイッチング損失、つまり発熱を低減させるためにスイッチング周波数を下げることが行われている。
【0008】
しかしながら、スイッチング周波数を下げると所望の出力を得るためにはリアクトルが大型化し、また、リアクトルによる磁気騒音が発生し、この磁気騒音を抑える防音構造が必要になる。一般に、双方向チョッパ回路において、回路体積と回路損失とにはトレードオフの関係がある。なお、特許文献1に開示された双方向チョッパ回路では、発熱を抑えるためにリアクトルが追加されているので、小型化が難しいという問題は依然として残されている。
【0009】
また、スイッチング周波数を可聴周波数(例えば16kHz)以上にするとリアクトルの大型化と磁気騒音の発生という問題は起きないが、上述したように、スイッチング損失の増大により冷却構造が大型化し、またノイズ増大による制御機器や周辺の他の機器への影響が大きくなるという別の問題が生じる。
【0010】
本発明は、低損失、小型で、磁気騒音を抑止することができ、さらに、ノイズを低減できる双方向チョッパ回路を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、第1の発明に係る双方向チョッパ回路は、第1入出力端子に印加された直流電圧より高い直流電圧を第2入出力端子に出力する昇圧動作を行う昇圧チョッパ回路と、前記第2入出力端子に印加された直流電圧より低い直流電圧を前記第1入出力端子に出力する降圧動作を行う降圧チョッパ回路とを備えた双方向チョッパ回路であって、前記昇圧チョッパ回路は、前記第1入出力端子に一方の端子が接続された昇圧用リアクトルと、前記昇圧用リアクトルの他方の端子と接地端子との間に接続された昇圧用スイッチング素子と、前記昇圧用リアクトルの他方の端子と前記第2入出力端子との間に接続されたワイドギャップ半導体を用いたユニポーラデバイスから成る昇圧用ダイオードとを備え、前記降圧チョッパ回路は、前記第1入出力端子に一方の端子が接続された降圧用リアクトルと、前記降圧用リアクトルの他方の端子と接地端子との間に接続されたワイドギャップ半導体を用いたユニポーラデバイスから成る降圧用ダイオードと、前記降圧用リアクトルの他方の端子と前記第2入出力端子との間に接続された降圧用スイッチング素子とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、第2の発明に係る双方向チョッパ回路は、第1入出力端子に印加された直流電圧より高い直流電圧を第2入出力端子に出力する昇圧動作および前記第2入出力端子に印加された直流電圧より低い直流電圧を前記第1入出力端子に出力する降圧動作を行う双方向チョッパ回路であって、前記第1入出力端子に一方の端子が接続されたリアクトルと、前記リアクトルの他方の端子と接地端子との間に接続された昇圧用スイッチング素子と、前記リアクトルの他方の端子と前記第2入出力端子との間に接続されたワイドギャップ半導体を用いたユニポーラデバイスから成る昇圧用ダイオードと、前記リアクトルの他方の端子と前記第2入出力端子との間に接続された降圧用スイッチング素子と、前記降圧用リアクトルの他方の端子と前記接地端子との間に接続されたワイドギャップ半導体を用いたユニポーラデバイスから成る降圧用ダイオードとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明に係る双方向チョッパ回路によれば、ワイドギャップ半導体を用いたユニポーラデバイスで昇圧用ダイオードおよび降圧用ダイオードを構成したので、これら昇圧用ダイオードおよび降圧用ダイオードのリカバリ損失を低減すると共に、昇圧用スイッチング素子および降圧用スイッチング素子のスイッチング損失も低減させることができる。その結果、発熱を低減することができるので、冷却構造の小型化が可能になる。また、スイッチング損失を低減させるためにスイッチング周波数を下げる必要もないので、リアクトルの小型化、低騒音化が可能になる。
【0014】
また、第2の発明に係る双方向チョッパ回路によれば、上述した第1の発明に係る双方向チョッパ回路と同様の効果を奏するとともに、第1の発明に係る双方向チョッパ回路に比べてリアクトルの数を減らすことができるので、双方向チョッパ回路を簡単且つ安価に構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の実施例1に係る双方向チョッパ回路の構成を示す回路図である。この双方向チョッパ回路は、第1入出力端子1、第2入出力端子2、接地端子3、第1平滑コンデンサ4、第2平滑コンデンサ5、昇圧チョッパ回路6、降圧チョッパ回路7および制御回路8から構成されている。第1入出力端子1と接地端子3との間には、例えば直流電源(図示しない)が接続され、第2入出力端子2と接地端子3との間には、例えばインバータ(図示しない)が接続される。
【0017】
第1平滑コンデンサ4は、第1入出力端子1と接地端子3との間に接続され、例えば直流電源から出力される電圧又は直流電源へ供給する電圧を平滑化する。第2平滑コンデンサ5は、第2入出力端子2と接地端子3との間に接続され、例えばインバータから出力される電圧又はインバータへ供給する電圧を平滑化する。
【0018】
昇圧チョッパ回路6は、昇圧用リアクトル10a、昇圧用スイッチング素子11aおよび昇圧用ダイオード12aから構成されている。
【0019】
昇圧用リアクトル10aは、直流電力の蓄積および放出を行うものであり、その一方の端子は第1入出力端子1に接続され、他方の端子は昇圧用スイッチング素子11aと昇圧用ダイオード12aとの接続点P1に接続されている。昇圧用スイッチング素子11aは、例えばNPNトランジスタから構成されており、そのエミッタは接地端子3に接続され、コレクタは接続点P1に接続され、ベースは制御回路8に接続されている。
【0020】
昇圧用ダイオード12aは、ワイドギャップ半導体を用いたユニポーラデバイスから構成されており、そのアノードは接続点P1に接続され、カソードは第2入出力端子2に接続されている。ユニポーラデバイスとは、ワイドギャップ半導体と金属とを接続したものである。ワイドギャップ半導体としては、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)、ダイアモンド等を用いることができる。
【0021】
降圧チョッパ回路7は、降圧用リアクトル10b、降圧用スイッチング素子11bおよび降圧用ダイオード12bから構成されている。
【0022】
降圧用リアクトル10bは、直流電力の蓄積および放出を行うものであり、その一方の端子は第1入出力端子1に接続され、他方の端子は降圧用スイッチング素子11bと降圧用ダイオード12bとの接続点P2に接続されている。降圧用スイッチング素子11bは、例えばNPNトランジスタから構成されており、そのエミッタは接続点P2に接続され、コレクタは第2入出力端子2に接続され、ベースは制御回路8に接続されている。
【0023】
降圧用ダイオード12bは、ワイドギャップ半導体を用いたユニポーラデバイスから構成されており、そのアノードは接地端子3に接続され、カソードは接続点P2に接続されている。ワイドギャップ半導体としては、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)、ダイアモンド等を用いることができる。
【0024】
制御回路8は、昇圧チョッパ回路6内の昇圧用スイッチング素子11aを高速でオン/オフさせるための制御信号SW1を生成するとともに、降圧チョッパ回路7内の降圧用スイッチング素子11bを高速でオン/オフさせるための制御信号SW2を生成する。この制御回路8で生成された制御信号SW1は、昇圧用スイッチング素子11aを構成するトランジスタのベースに供給され、制御信号SW2は降圧用スイッチング素子11bを構成するトランジスタのベースに供給される。
【0025】
なお、昇圧用スイッチング素子11a、降圧用スイッチング素子11b、昇圧用ダイオード12aおよび降圧用ダイオード12bとしては、それぞれ個別の半導体素子を使用することもできるが、昇圧用スイッチング素子11aと昇圧用ダイオード12aとを同一パッケージに収めた半導体モジュールと、降圧用スイッチング素子11bと降圧用ダイオード12bとを同一のパッケージに収めた半導体モジュールとを使用することもできる。
【0026】
次に、このように構成される本発明の実施例1に係る双方向チョッパ回路の動作を、図2に示す波形図を参照しながら説明する。
【0027】
まず、双方向チョッパ回路における昇圧動作について説明する。この場合、第1入出力端子1が入力側になり、第2入出力端子2が出力側になる。
【0028】
制御回路8は、昇圧チョッパ回路6を動作させるために、高速でオン/オフする制御信号SW1を昇圧用スイッチング素子11aに供給するとともに、低レベルの制御信号SW2を降圧用スイッチング素子11bに供給して降圧用スイッチング素子11bをオフさせる。これにより、図2(a)に示すように、昇圧用スイッチング素子11aのみが高速でオンとオフを繰り返す。昇圧用スイッチング素子11aがオンになると、第1入出力端子1→昇圧用リアクトル10a→昇圧用スイッチング素子11a→接地端子3という経路で電流が流れる。これにより、昇圧用リアクトル10aに直流電力が蓄積される。昇圧用スイッチング素子11aのオン期間が長いほど昇圧用リアクトル10aに蓄積される直流電力は大きくなり、その起電力も大きくなる。
【0029】
次に、昇圧用スイッチング素子11aがオフになると、第1入出力端子1→昇圧用リアクトル10a→昇圧用ダイオード12a→第2入出力端子2という経路で電流が流れる。このとき、第2入出力端子2に発生する電圧は、第1入出力端子1に印加される電圧に、昇圧用リアクトル10aに蓄積された直流電力による起電力が加えられた電圧である。従って、第1入出力端子1に印加される電圧より第2入出力端子2に発生する電圧が大きくなり、昇圧される。
【0030】
次に、昇圧用スイッチング素子11aがオンすると、昇圧用ダイオード12aに逆電圧が加わり、昇圧用ダイオード12aはオフする。この時、仮に昇圧用ダイオード12aがバイポーラデバイスであるPN接合ダイオードにより構成されていると、昇圧用ダイオード12aに少数キャリアの蓄積による逆回復電流が流れて昇圧用ダイオード12aにリカバリ損失が生じる。更に、この逆回復電流は昇圧用スイッチング素子11aにも流れ込み、昇圧用スイッチング素子11aのスイッチング損失を増加させる。
【0031】
これに対し、実施例1に係る双方向チョッパ回路では、ワイドギャップ半導体を用いたユニポーラデバイスにより構成された昇圧用ダイオード12aが用いられているので、PN接合部を有する半導体のような空乏層が形成されず、少数キャリアが蓄積されない。その結果、逆回復電流が流れないので、昇圧用ダイオード12aのリカバリ損失が著しく低減される。また、これと同時に、昇圧用スイッチング素子11aへ流れ込む逆回復電流も著しく低減するので、昇圧用スイッチング素子11aのスイッチング損失も低減される。また、図2(c)に示すように、昇圧用スイッチング素子11aの立ち上がりタイミングで発生するターンオン時のノイズも低減される。
【0032】
なお、図2(b)は、従来の双方向チョッパ回路においてスイッチング素子の立ち上がりタイミングで発生するターンオン時のノイズ(実施例1に比べて大きい)を示している。さらに、昇圧用ダイオード12aとしてワイドギャップ半導体を用いたので高耐圧ユニポーラデバイスが実現されている。
【0033】
次に、双方向チョッパ回路における降圧動作について説明する。この場合、第2入出力端子2が入力側になり、第1入出力端子1が出力側になる。
【0034】
制御回路8は、降圧チョッパ回路7を動作させるため、高速でオン/オフする制御信号SW2を降圧用スイッチング素子11bに供給するとともに、低レベルの制御信号SW1を昇圧用スイッチング素子11aに供給して昇圧用スイッチング素子11aをオフさせる。これにより、図2(a)に示すように、降圧用スイッチング素子11bのみが高速でオンとオフを繰り返す。降圧用スイッチング素子11bがオンになると、第2入出力端子2→降圧用スイッチング素子11b→降圧用リアクトル10b→第1入出力端子1という経路で電流が流れる。これにより、降圧用リアクトル10bに直流電力が蓄積される。降圧用スイッチング素子11bのオン期間が短いほど降圧用リアクトル10bに蓄積される直流電力は小さくなり、その起電力も小さくなる。
【0035】
次に、降圧用スイッチング素子11bがオフになると、接地端子3→降圧用ダイオード12b→降圧用リアクトル10b→第1入出力端子1といった経路で電流が流れる。このとき第1入出力端子1に発生する電圧は、降圧用リアクトル10bに蓄積された直流電力による起電力分のみである。従って、第2入出力端子2に印加される電圧より第1入出力端子1に発生する電圧が小さくなり、降圧される。
【0036】
次に、降圧用スイッチング素子11bがオンすると、降圧用ダイオード12bに逆電圧が加わり、降圧用ダイオード12bはオフする。この時、仮に降圧用ダイオード12bがバイポーラデバイスであるPN接合ダイオードにより構成されていると、降圧用ダイオード12bに少数キャリアの蓄積による逆回復電流が流れて降圧用ダイオード12bにリカバリ損失が生じる。更に、この逆回復電流は降圧用スイッチング素子11bにも流れ込み、降圧用スイッチング素子11bのスイッチング損失を増加させる。
【0037】
これに対し、実施例1に係る双方向チョッパ回路では、ワイドギャップ半導体を用いたユニポーラデバイスにより構成された降圧用ダイオード12bが用いられているので、PN接合部を有する半導体のような空乏層が形成されず、少数キャリアが蓄積されない。その結果、逆回復電流が流れないので、降圧用ダイオード12bのリカバリ損失が著しく低減される。また、これと同時に、降圧用スイッチング素子11bへ流れ込む逆回復電流も著しく低減するので、降圧用スイッチング素子11bのスイッチング損失も低減される。また、図2(c)に示すように、降圧用スイッチング素子11bの立ち上がりタイミングで発生するターンオン時のノイズも低減される。なお、図2(b)は、従来の双方向チョッパ回路においてスイッチング素子の立ち上がりタイミングで発生するターンオン時のノイズ(実施例1に比べて大きい)を示している。さらに、降圧用ダイオード12bとしてワイドギャップ半導体を用いたので高耐圧ユニポーラデバイスが実現されている。
【0038】
以上説明したように、本発明の実施例1に係る双方向チョッパ回路によれば、ワイドギャップ半導体を用いたユニポーラデバイスで昇圧用ダイオード12aおよび降圧用ダイオード12bを構成したので、これら昇圧用ダイオード12aおよび降圧用ダイオード12bのリカバリ損失を低減すると共に、昇圧用スイッチング素子11aおよび降圧用スイッチング素子11bのスイッチング損失も低減させることができる。その結果、発熱を低減することができるので、冷却構造の小型化が可能になる。また、スイッチング損失を低減させるためにスイッチング周波数を下げる必要もないので、リアクトルの小型化、低騒音化が可能になる。
【実施例2】
【0039】
次に、本発明の実施例2に係る双方向チョッパ回路を、図3に示した回路図を参照しながら説明する。なお、実施例1と同一の構成部分には実施例1と同一の符号を付して説明する。
【0040】
実施例2に係る双方向チョッパ回路は、第1入出力端子1、第2入出力端子2、接地端子3、第1平滑コンデンサ4、第2平滑コンデンサ5、リアクトル10、昇圧用スイッチング素子11a、降圧用スイッチング素子11b、昇圧用ダイオード12a、降圧用ダイオード12bおよび制御回路8から構成されている。第1入出力端子1と接地端子3との間には、例えば直流電源(図示しない)が接続され、第2入出力端子2と接地端子3との間には、例えばインバータ(図示しない)が接続される。
【0041】
第1平滑コンデンサ4は、第1入出力端子1と接地端子3との間に接続され、例えば直流電源から出力される電圧又は直流電源へ供給する電圧を平滑化する。第2平滑コンデンサ5は、第2入出力端子2と接地端子3との間に接続され、例えばインバータから出力される電圧又はインバータへ供給する電圧を平滑化する。
【0042】
リアクトル10は、直流電力の蓄積および放出を行うものであり、その一方の端子は第1入出力端子1に接続され、他方の端子は昇圧用スイッチング素子11aと降圧用スイッチング素子11bとの接続点Pに接続されている。
【0043】
昇圧用スイッチング素子11aは、例えばNPNトランジスタから構成されており、そのエミッタは接地端子3に接続され、コレクタは接続点Pに接続され、ベースは制御回路8に接続されている。
【0044】
昇圧用ダイオード12aは、ワイドギャップ半導体を用いたユニポーラデバイスから構成されており、降圧用スイッチング素子11bに逆並列に接続されている。具体的には、昇圧用ダイオード12aのアノードは接続点Pに接続され、カソードは第2入出力端子2に接続されている。ワイドギャップ半導体としては、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)、ダイアモンド等を用いることができる。
【0045】
降圧用スイッチング素子11bは、例えばNPNトランジスタから構成されており、そのエミッタは接続点Pに接続され、コレクタは第2入出力端子2に接続され、ベースは制御回路8に接続されている。
【0046】
降圧用ダイオード12bは、ワイドギャップ半導体を用いたユニポーラデバイスから構成されており、昇圧用スイッチング素子11aに逆並列に接続されている。具体的には、降圧用ダイオード12bのアノードは接地端子3に接続され、カソードは接続点Pに接続されている。ワイドギャップ半導体としては、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)、ダイアモンド等を用いることができる。
【0047】
制御回路8は、昇圧用スイッチング素子11aを高速でオン/オフさせるための制御信号SW1および降圧用スイッチング素子11bを高速でオン/オフさせるための制御信号SW2を生成する。この制御回路8で生成された制御信号SW1は、昇圧用スイッチング素子11aを構成するトランジスタのベースに供給され、制御信号SW2は降圧用スイッチング素子11bを構成するトランジスタのベースに供給される。
【0048】
なお、昇圧用スイッチング素子11a、降圧用スイッチング素子11b、昇圧用ダイオード12aおよび降圧用ダイオード12bとしては、それぞれ個別の半導体素子を使用することもできるが、昇圧用スイッチング素子11aと昇圧用ダイオード12aとを同一パッケージに収めた半導体モジュールと、降圧用スイッチング素子11bと降圧用ダイオード12bとを同一のパッケージに収めた半導体モジュールとを使用することもできる。また、昇圧用スイッチング素子11aと降圧用ダイオード12bとを同一のパッケージに収めた半導体モジュールと、降圧用スイッチング素子11bと昇圧用ダイオード12aとを同一パッケージに収めた半導体モジュールとを使用することもできる。昇圧用スイッチング素子11a、降圧用スイッチング素子11b、昇圧用ダイオード12aおよび降圧用ダイオード12bを同一のパッケージに収めた半導体モジュールを使用することもできる。
【0049】
次に、上記のように構成される本発明の実施例2に係る双方向チョッパ回路の動作を、図2に示す波形図を参照しながら説明する。
【0050】
まず、この双方向チョッパ回路における昇圧動作について説明する。この場合、第1入出力端子1が入力側になり、第2入出力端子2が出力側になる。
【0051】
制御回路8は、昇圧動作時には、高速でオン/オフする制御信号SW1を昇圧用スイッチング素子11aに供給するとともに、低レベルの制御信号SW2を降圧用スイッチング素子11bに供給して降圧用スイッチング素子11bをオフさせる。これにより、図2(a)に示すように、昇圧用スイッチング素子11aのみが高速でオンとオフを繰り返す。昇圧用スイッチング素子11aがオンになると、第1入出力端子1→リアクトル10→昇圧用スイッチング素子11a→接地端子3という経路で電流が流れる。これにより、リアクトル10に直流電力が蓄積される。昇圧用スイッチング素子11aのオン期間が長いほどリアクトル10に蓄積される直流電力は大きくなり、その起電力も大きくなる。
【0052】
次に、昇圧用スイッチング素子11aがオフになると、第1入出力端子1→リアクトル10→昇圧用ダイオード12a→第2入出力端子2という経路で電流が流れる。このとき第2入出力端子2に発生する電圧は、第1入出力端子1に印加される電圧に、昇圧用リアクトル10に蓄積された直流電力による起電力が加えられた電圧である。従って、第1入出力端子1に印加される電圧より第2入出力端子2に発生する電圧が大きくなり、昇圧される。
【0053】
次に、昇圧用スイッチング素子11aがオンすると、昇圧用ダイオード12aに逆電圧が加わり、昇圧用ダイオード12aはオフする。この時、仮に昇圧用ダイオード12aがバイポーラデバイスであるPN接合ダイオードにより構成されていると、昇圧用ダイオード12aに少数キャリアの蓄積による逆回復電流が流れて昇圧用ダイオード12aにリカバリ損失が生じる。更に、この逆回復電流は昇圧用スイッチング素子11aにも流れ込み、昇圧用スイッチング素子11aのスイッチング損失を増加させる。
【0054】
これに対し、実施例2に係る双方向チョッパ回路では、ワイドギャップ半導体を用いたユニポーラデバイスにより構成された昇圧用ダイオード12aが用いられているので、PN接合部を有する半導体のような空乏層が形成されず、少数キャリアが蓄積されない。その結果、上述した実施例1と同様の効果を奏する。
【0055】
次に、双方向チョッパ回路における降圧動作について説明する。この場合、第2入出力端子2が入力側になり、第1入出力端子1が出力側になる。
【0056】
制御回路8は、降圧動作時は、高速でオン/オフする制御信号SW2を降圧用スイッチング素子11bに供給するとともに、低レベルの制御信号SW1を昇圧用スイッチング素子11aに供給して昇圧用スイッチング素子11aをオフさせる。これにより、図2(a)に示すように、降圧用スイッチング素子11bのみが高速でオンとオフを繰り返す。降圧用スイッチング素子11bがオンになると、第2入出力端子2→降圧用スイッチング素子11b→リアクトル10→第1入出力端子1という経路で電流が流れる。これにより、リアクトル10に直流電力が蓄積される。降圧用スイッチング素子11bのオン期間が短いほどリアクトル10に蓄積される直流電力は小さくなり、その起電力も小さくなる。
【0057】
次に、降圧用スイッチング素子11bがオフになると、接地端子3→降圧用ダイオード12b→降圧用リアクトル10→第1入出力端子1といった経路で電流が流れる。このとき第1入出力端子1に発生する電圧は、リアクトル10に蓄積された直流電力による起電力分のみである。従って、第2入出力端子2に印加される電圧より第1入出力端子1に発生する電圧が小さくなり、降圧される。
【0058】
次に、降圧用スイッチング素子11bがオンすると、降圧用ダイオード12bに逆電圧が加わり、降圧用ダイオード12bはオフする。この時、仮に降圧用ダイオード12bがバイポーラデバイスであるPN接合ダイオードにより構成されていると、降圧用ダイオード12bに少数キャリアの蓄積による逆回復電流が流れて降圧用ダイオード12bにリカバリ損失が生じる。更に、この逆回復電流は降圧用スイッチング素子11bにも流れ込み、降圧用スイッチング素子11bのスイッチング損失を増加させる。
【0059】
これに対し、実施例2に係る双方向チョッパ回路では、ワイドギャップ半導体を用いたユニポーラデバイスにより構成された降圧用ダイオード12bが用いられているので、PN接合部を有する半導体のような空乏層が形成されず、少数キャリアが蓄積されない。その結果、上述した実施例1と同様の効果を奏する。
【0060】
以上説明したように、本発明の実施例2に係る双方向チョッパ回路によれば、上述した実施例1に係る双方向チョッパ回路と同様に、ワイドギャップ半導体を用いたユニポーラデバイスで昇圧用ダイオード12aおよび降圧用ダイオード12bを構成したので、これら昇圧用ダイオード12aおよび降圧用ダイオード12bのリカバリ損失を低減すると共に、昇圧用スイッチング素子11aおよび降圧用スイッチング素子11bのスイッチング損失も低減させることができ、ノイズの少ない低損失な双方向チョッパ回路を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の双方向チョッパ回路は、車載用ドライブ装置や交通車両等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施例1に係る双方向チョッパ回路の構成を示す回路図である。
【図2】本発明の実施例1に係る双方向チョッパ回路の動作を説明するための波形図である。
【図3】本発明の実施例2に係る双方向チョッパ回路の構成を示す回路図である。
【図4】従来の双方向チョッパ回路を説明するための図である。
【符号の説明】
【0063】
1 第1入出力端子
2 第2入出力端子
3 接地端子
4 第1平滑コンデンサ
5 第2平滑コンデンサ
6 昇圧チョッパ回路
7 降圧チョッパ回路
8 制御回路
10 リアクトル
10a 昇圧用リアクトル
10b 降圧用リアクトル
11a 昇圧用スイッチング素子
11b 降圧用スイッチング素子
12a 昇圧用ダイオード
12b 降圧用ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入出力端子に印加された直流電圧より高い直流電圧を第2入出力端子に出力する昇圧動作を行う昇圧チョッパ回路と、前記第2入出力端子に印加された直流電圧より低い直流電圧を前記第1入出力端子に出力する降圧動作を行う降圧チョッパ回路とを備えた双方向チョッパ回路であって、
前記昇圧チョッパ回路は、
前記第1入出力端子に一方の端子が接続された昇圧用リアクトルと、
前記昇圧用リアクトルの他方の端子と接地端子との間に接続された昇圧用スイッチング素子と、
前記昇圧用リアクトルの他方の端子と前記第2入出力端子との間に接続されたワイドギャップ半導体を用いたユニポーラデバイスから成る昇圧用ダイオードとを備え、
前記降圧チョッパ回路は、
前記第1入出力端子に一方の端子が接続された降圧用リアクトルと、
前記降圧用リアクトルの他方の端子と接地端子との間に接続されたワイドギャップ半導体を用いたユニポーラデバイスから成る降圧用ダイオードと、
前記降圧用リアクトルの他方の端子と前記第2入出力端子との間に接続された降圧用スイッチング素子と、
を備えたことを特徴とする双方向チョッパ回路。
【請求項2】
第1入出力端子に印加された直流電圧より高い直流電圧を第2入出力端子に出力する昇圧動作および前記第2入出力端子に印加された直流電圧より低い直流電圧を前記第1入出力端子に出力する降圧動作を行う双方向チョッパ回路であって、
前記第1入出力端子に一方の端子が接続されたリアクトルと、
前記リアクトルの他方の端子と接地端子との間に接続された昇圧用スイッチング素子と、
前記リアクトルの他方の端子と前記第2入出力端子との間に接続されたワイドギャップ半導体を用いたユニポーラデバイスから成る昇圧用ダイオードと、
前記リアクトルの他方の端子と前記第2入出力端子との間に接続された降圧用スイッチング素子と、
前記降圧用リアクトルの他方の端子と前記接地端子との間に接続されたワイドギャップ半導体を用いたユニポーラデバイスから成る降圧用ダイオードと、
を備えたことを特徴とする双方向チョッパ回路。
【請求項3】
前記昇圧動作を行う時に、前記昇圧用スイッチング素子をスイッチングさせ且つ前記降圧用スイッチング素子をオフさせ、前記降圧動作を行う時に、前記降圧用スイッチング素子をスイッチングさせ前記昇圧用スイッチング素子をオフさせる制御回路を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の双方向チョッパ回路。
【請求項4】
前記昇圧用スイッチング素子及び前記降圧用スイッチング素子は、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ)から成ることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の双方向チョッパ回路。
【請求項5】
前記昇圧用ダイオードおよび前記降圧用ダイオードを構成するユニポーラデバイスに用いられるワイドギャップ半導体は、SiC(シリコンカーバイド)、またはGaN(ガリウムナイトライド)、またはダイアモンドから成ることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項記載の双方向チョッパ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−6061(P2006−6061A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181485(P2004−181485)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】