説明

双眼鏡

【課題】簡単に焦点・視度調節が可能で、調節後にその調節状態を固定できる双眼鏡。
【解決手段】調節レンズを前後進可能に支持し、互いに平行に配置された一対の支持体と、前記一対の支持体の中心軸線に平行に、かつそれらの中間に位置する中心軸線を中心にして回転可能な中央転輪と、この中央転輪の回転により回転可能な、外周面に雄ネジを備え、一方の支持体を結合する内部筒体と、前記内部筒体の雄ネジに螺合する雌ネジを内周面に有し、他方の支持体を結合し、かつ外周面に係合片を備えた外部筒体と、前記中央転輪と同軸に回転可能に形成され、前記係合片を回動不能及び軸方向移動可能のいずれかに規制する規制部材を備えた視度調節環と、中央転輪を回転可能及び回転不能のいずれかに規制する中央転輪回転規制部及び視度調節環を回転可能又は回転不能のいずれかに規制する視度調節環回転規制部とを有することを特徴とする双眼鏡。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、双眼鏡に関し、更に詳しくは、双眼鏡を持つ手の位置をわざわざ変更することなく焦点調節及び視度調節を行うことができ、しかも調節後にその調節状態を固定することのできる双眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
図4に示されるように、従来の双眼鏡100においては、左右の光学系の視度を同時に調節する中央転輪101と、左右の視度差を調整する視度調節環102とを備えた、中央繰り出し式の視度調整機構が多く採用されている。この場合、左右どちらかの接眼レンズの光軸と同軸になるように視度調節環102が設けられている。そうすると、中央転輪101と視度調節環102とが離れているので、双眼鏡を持ち続けている両手のそれぞれの指で、例えば右手の指で中央転輪101を操作し、左手の指で視度調節環を操作することを余儀なくされ、又は、右手の指で中央転輪101を操作してからその指の位置を変えて視度調節環を操作することを余儀なくされる。
【0003】
1970年以降の特許出願につき、特許庁ホームページにアップされている電子図書館にて、視度調節をキーワードにして公開公報を検索すると、以下の2件が見出された。
【0004】
特許文献1に記載の発明は視度補正機構に関し、その請求項1には、「接眼レンズを保持する接眼レンズ鏡筒と、該接眼レンズ鏡筒の端面を含む一端部が突出するように前記接眼レンズ鏡筒を保持する双眼鏡本体と、前記端面より光軸方向に摺動させながら前記接眼レンズ鏡筒の外側に装着され前記一端部の外周面を被覆する視度調節環と、前記視度調節環を前記接眼レンズ鏡筒に固定する固定手段と、前記視度調節環の光軸周りの回転操作による前記接眼レンズ鏡筒の回転により該接眼レンズ鏡筒を光軸方向に移動させ視度補正を可能にする機構とを有する双眼鏡の視度補正機構において、前記固定手段は、前記接眼レンズ鏡筒の一端部の側面に前記端面との間に顎部を形成するように穿設された切欠き溝と、弾性部材によって前記視度調節環の内周面に一体に形成され、前記摺動時に前記顎部によって弾性変形させられ、前記被覆完了時に弾性復帰して前記切欠き溝内まで侵入する弾性突起とを有し、前記切欠き溝と前記弾性突起との係合により前記視度調節環を前記接眼レンズに光軸方向に固定したことを特徴とする双眼鏡の視度補正機構。」が提案されている。
【0005】
この特許文献1に記載された双眼鏡においては、前記したように、視度調節環と中央転輪とが相互に離れた位置に設けられているので、前記した問題点を有する。
【0006】
特許文献2に記載された双眼鏡は、その請求項1に記載されているように、「一対の接眼光学系と対物光学系との間に設けられる調節レンズを光軸に沿って前後進可能に支持する一対の支持体と、
前記一対の支持体を光軸方向に同時に前後進させて焦点調節を行う焦点調節手段と、
一方の支持体を、他方の支持体を不動状態にしたまま、光軸方向に前後進させて視度調節を行う視度調節手段と、
前記焦点調節手段と視度調節手段とを切り替える切替手段とを有する焦点視度調節ユニットを備えてなることを特徴とする双眼鏡。」である。
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示された双眼鏡は、請求項2に記載されたように、「前記焦点調節手段が、固定中心軸体に回転可能に装着され、外周に雄ネジを有する太径部と外周に雄ネジを有する細径部とを有し、調節レンズを支持する一方の支持体を回動不能に前記太径部で支持するリード環と、
前記リード環と螺合により結合され、回転により前記リード環を前後進させる第1回転体とを備え、
前記視度調節手段が、前記リード環に回転可能に支持され、他方の調節レンズを支持する他方の支持体を支持する小リード環を備え、
前記切替手段が、固定中心軸体の軸線に沿って一方向に移動すると、前記小リード環に回転運動伝達不能状態下に前記第1回転体に回転運動を伝達可能にし、前記軸線方向に沿って逆方向に移動すると前記第1回転体の回転運動伝達不能状態下に前記小リード環に回転運動を伝達可能とする第2回転体を備えて成る
前記請求項1に記載の双眼鏡。」といった態様しか示されていない。
【0008】
【特許文献1】特開平7−281103号公報
【特許文献2】特開2006−53381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明が解決しようとする課題は、中央転輪と視度調節環との操作を、操作する指を変えたりすることなく1本又は2本の指で簡単に行うことができ、中央転輪操作で焦点位置を決定し、視度調節環操作で視度位置を決定した後に、簡単に中央転輪と視度調節環とを固定することのできる双眼鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題を解決するための手段として、
請求項1は、
「 一対の接眼光学系と対物光学系との間に設けられる調節レンズを光軸に沿って前後進可能に支持するとともに互いに平行に配置された一対の支持体と、
前記一対の支持体の中心軸線に平行に、かつ前記一対の支持体の中間に位置する中心軸線を中心にして回転可能な中央転輪と、
この中央転輪の回転により回転するとともに外周面に雄ネジを備え、一方の支持体を結合する内部筒体と、
前記内部筒体の雄ネジに螺合する雌ネジを内周面に有すると共に他方の支持体を結合し、かつ外周面に係合片を備えた外部筒体と、
前記中央転輪と同軸に回転可能に形成されるとともに前記係合片を、回動不能及び軸方向移動可能のいずれかに規制する規制部材を備えた視度調節環と、
中央転輪を回転可能及び回転不能のいずれかに規制する中央転輪回転規制部及び視度調節環を回転可能又は回転不能のいずれかに規制する視度調節環回転規制部と、
を有することを特徴とする双眼鏡」であり、
請求項2は、
「 前記中央転輪は、回転操作可能な操作円筒体と、その操作円筒体の内側であって、その中心軸線を共有するように前記操作円筒体の内部に設けられた中心軸体とを備えて成り、前記中心軸体は、この中心軸体が挿入される挿入孔を備えると共に前記視度調節環を回転可能に装着する外周面を備えた筒状基体における前記挿入孔に挿入配置され、前記中央転輪回転規制部は、前記筒状基体の外周端部に形成された中央転輪用係合部及び前記中央転輪に設けられた中央転輪被係合部とからなり、前記視度調節環回転規制部は、前記筒上基体の外周に形成された視度調節環用係合部及び前記視度調節環に設けられた視度調節環用被係合部とからなる前記請求項1に記載の双眼鏡」である。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る双眼鏡においては、中央転輪回転規制部により中央転輪を回転可能にし、また、視度調節環回転規制部により視度調節環を回転可能にしておく。双眼鏡を両手で持って構えた状態で、例えば指で中央転輪を回転させる。
【0012】
中央転輪が回転すると中央転輪の回転により回転する雄ネジに螺合する雌ネジを内周面に備える内部筒体に回転力が伝達される。また、この内部筒体の外周面に形成された雄ネジに螺合する雌ネジを有する外部筒体は、その外周面に備わる係合片が規制部材により回動不能に規制されているので、回転不能になっている。そうすると、内部筒体に伝えられた中央転輪の回転力は、中央転輪の回転方向に応じて、内部筒体がその軸線方向に前後進する並進移動力に、変換される。つまり、中央転輪の回転により、内部筒体がその軸線方向に沿って前後進する。
【0013】
この内部筒体の外周面に形成された雄ネジに螺合する雌ネジを備える外部筒体もまた回転不能になっている。そうすると、内部筒体に伝達された回転力は、内部筒体の並進移動力に変換されて、内部筒体が並進移動する。内部筒体の並進移動は、外部筒体の並進移動をもたらす。外部筒体には、他方の支持体を結合するので、内部筒体と外部筒体との同時並進移動により、一対の支持体が同時に並進移動する。
【0014】
一対の支持体の同時並進移動により、一対の支持体それぞれに結合された一対の調節レンズが同時に並進移動して焦点調節が行われる。
【0015】
例えば焦点調節が完了すると、中央転輪回転規制部を操作することにより、中央転輪の回転を不能にする。つまり、中央転輪を固定する。これによって、双眼鏡の操作中に不用意に中央転輪に手が触れるなどして焦点の狂いを生じることがなくなる。
【0016】
例えば焦点調節の後に視度調節をするとなると、視度調節環を例えば指操作により回動させる。視度調節環が回動すると、規制部材により係合片が回動されて係合片と結合する外部筒体が回動する。外部筒体が回動すると、外部筒体の雌ネジに螺合する内部筒体は外部筒体の回動量に応じて中心軸線に沿って並進移動をする。外部筒体の並進移動により、外部筒体に結合する支持体も並進移動する。外部筒体の並進移動による調節レンズが並進移動して視度調節が行われる。
【0017】
視度調節が完了すると、例えば指操作により、視度調節環における視度調節環用係合部及び前記視度調節環に設けられた視度調節環用被係合部とを係合させて、視度調節環を回動不能に規制する。これによって、双眼鏡の操作中に不用意に視度調節環に手が触れるなどして視度の狂いを生じることがなくなる。
【0018】
かくして、この発明によると、中央転輪と視度調節環とが、双眼鏡の一対の光軸の中央であって前記光軸と平行な軸線を有するように同軸かつ近接して配置されているので、この双眼鏡を持っている手の指を変えることなく、指1本又は2本で焦点調節と視度調節とを簡単に操作することができる双眼鏡を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この発明の一例である双眼鏡を図1及び図2に示す。図1に示されるように、この発明の一例である双眼鏡1は、接眼光学系と対物光学系とを内蔵する一方の鏡筒2aと、同様に接眼光学系と対物光学系とを内蔵する他方の鏡筒2bと、前記一方の鏡筒2aと前記他方の鏡筒2bとを回動可能に結合して接眼光学系の一方の光軸と接眼光学系の他方の光軸とを観察者の両眼間隔に一致させることができるようにする回動結合部3とを備える。
【0020】
この双眼鏡は、鏡筒2aの軸線と鏡筒2bの軸線との中間であって前記軸線に平行な仮想的中間軸線上に配置された視度調節環4と中央転輪5とを備える。この視度調節環4と中央転輪5とは仮想的中間軸線を共有する。
【0021】
図1に示されるように、前記回動結合部3は、一方の鏡筒2aの略中央部から張り出した装着部と他方の鏡筒2bの略中央部から張り出した装着部とを回動可能に装着する基体(図示せず。)を有する。
【0022】
図2に示されるように、前記基体の接眼部側端部に、仮想的中間軸線Xを共有していて円筒状をなす筒状基体6が取り付けられる。この筒状基体6は、前記回動結合部3側の端部を閉鎖する有底円筒体であり、その円筒状外周部6cに視度調節環4が装着され、その開口端を閉鎖するように中央転輪5が装着される。
【0023】
前記筒状基体6の外周面における接眼部側端部周側面に、外周面中央部よりも大きな半径をもって半径方向側に張り出した環状のフランジ6aが、形成される。このフランジ6aの中央転輪5に向かう環状面に筒状基体6の外周を一巡するように複数の歯6bが、形成される。
【0024】
この筒状基体6の外周面には、円筒状の視度調節環4が嵌められている。
【0025】
この視度調節環4は、前記フランジ6aの外径よりもわずかに大きな内径を有する操作環部4aと、筒状基体6の円筒状外周部6cの中央部に嵌められた装着円筒部4bとを有する。前記装着円筒部4bの内周面と前記操作環部4aの内周面とは、環状段差面4cで連絡しており、この環状段差面4cには、前記複数の歯6bに歯合することのできる複数の歯4dが、この環状段差面4c上を一巡するように、形成される。この視度調節環4は、前記筒状基体6の円筒状外周部6c上を仮想的中間軸線Xに沿って並進移動することができ、前記フランジ6aの歯6bと前記操作環部4aにおける歯4dとが係合すると、この視度調節環4は仮想的中間軸線Xを中心にして回動不能になり、前記歯6bと歯4dとが係合しないときには、この視度調節環4は仮想的中間軸線Xを中心にして回動可能になっている。
【0026】
前記筒状基体6の円筒状外周部6cには、その外周面とその内周面とを貫通するボール配設孔6dが開設され、このボール配設孔6dの中に、付勢部材6e例えば板バネによりこの筒状基体6の内側から外側へと付勢されたボール6fが、嵌められている。
【0027】
前記視度調節環4における装着円筒部4bの内周面には、前記ボール6fの一部が没入する2つの第1環状溝4e、及び第2環状溝4fが形成されている。これによって、前記筒状基体6の円筒状外周部6cに嵌められた視度調節環4の例えば第1環状溝4eに前記ボール6fが嵌り込んでいると、外力と特に加えない限り、この視度調節環4はその位置に固定される。この視度調節環4を筒状基体6の円筒状外周部6cの外周面上でスライドさせるように外力を加えると、視度調節環4のスライド移動に応じて前記ボール6fが前記付勢部材6eの付勢力に抗してボール配設孔6d内に押し込められ、更に視度調節環4が筒状基体6の外側表面をスライドして行き、もう一つの第2環状溝4fがボール配設孔6dに対応する位置に到ると、ボール6fが第2環状溝4fの中に付勢部材6eの付勢力により押し込められる。この視度調節環4を指で操作する操作者は、前記第2環状溝4fにボール6fが嵌り込んだことを指で微妙に感じ取ることができるので、指による視度調節環4のスライド操作を止める。そうすると、視度調節環4にはもはや外力が加わらなくなるので、視度調節環4は、第2環状溝4fにボール6fが嵌り込んだ状態でその位置が固定される。
【0028】
前記第1環状溝4e、及び第2環状溝4f及びボール配設孔6dの形成位置は、この視度調節環4をスライドさせて前記第2環状溝4fにボール6fが嵌り込んだときに歯4cと歯6bとが係合し合うように、決定されることができる。
【0029】
前記筒状基体6には、前記仮想的中間軸線Xを中心軸線とする貫通孔6gが開設される。この貫通孔6gは、筒状基体6の仮想的中間軸線Xを軸線とする細径部6hと前記仮想的中間軸線Xを軸線とする太径部6iとが直列に形成されることにより、その内部空間として形成される。太径部6iの内径は細径部6hの内径よりも大きく設計される。
【0030】
前記細径部6hは、一方の鏡筒2aの略中央部から張り出した装着部と他方の鏡筒2bの略中央部から張り出した装着部とを回動可能に装着する基体(図示せず。)側に設けられる。
【0031】
この細径部6hの周側面には、その内側から外側へと貫通する第2ボール配設孔6jが開設される。このボール配設孔6jには、ボール6kが装着される。このボール6kは,第2付勢部材6m例えば板バネにより太径部6iの内部に向かって付勢される。
【0032】
前記細径部6hの外周面には、回転筒体7が、仮想的中間軸線Xを中心にして回転可能に、嵌装される。この回転筒体7は、その外周面に雄ネジ7aを有すると共に、その内周面に係合部材7b例えばキーを備える。
【0033】
前記回転筒体7の外側には、内側筒体8が、嵌められている。この内側筒体8の内周面には雌ネジ8aが設けられ、この雌ネジ8aは前記雄ネジ7aと歯合する。前記内側筒体8の外周面には雄ネジ8bが設けられている。この内側筒体8の前記基体(図示せず。)側の端部に円環状フランジ8cが半径方向に突出して形成される。この円環状フランジ8cには、第1支持体9aの一端が結合される。
【0034】
この第1支持体9aは、筒状基体6に設けられた装着貫通孔6rに挿通され、その第1支持体9aの他端部は、適宜の部材10を介して又は介さずに、鏡筒2a内に設けられている調節レンズ(図示せず。)に結合されている。したがって、この第1支持体9aが仮想的中間軸線Xと同じ軸線方向に沿って、前後進可能になっている。
【0035】
前記内側筒体8の外側には、外側筒体11が、配設される。この内側筒体8の雄ネジ8bと前記外側筒体11の内周面に形成された雌ネジ11aとが歯合する。
【0036】
この外側筒体11の外周面には、係合片11bが設けられる。この係合片11bは、仮想的中間軸線Xと平行に形成された長端辺と前記仮想的中間軸線Xを中心とする半径方向に沿って形成された短端辺とを有する長方形板状を呈する。この長方形板状をなす係合片11bは、装着円筒部4bの内周面に形成された規制部材4gに係合される。この規制部材4gは、半径方向であって仮想的中間軸線Xに向かって開口する係合溝を有する。この係合溝に前記係合片11bが嵌められている。したがって、装着円筒部4bを有する視度調節環4を回動させると、前記係合溝を有する規制部材4gも回動し、この規制部材4gの回動によって前記係合溝に嵌められた係合片11bが回動し、この係合片11bの回動により、内側筒体8が仮想的中間軸線Xに沿って前進又は後進する。
【0037】
一方、この外側筒体11の下端には、半径方向に張り出した環状の第2フランジ11cが形成される。この第2フランジ11cには、第2支持体9bの一端が、結合される。
【0038】
この第2支持体9bは、筒状基体6に設けられた第2装着貫通孔6pに挿通され、その第2支持体9bの他端部は、適宜の部材10を介して又は介さずに、他方の鏡筒2b内に設けられている調節レンズ(図示せず。)に結合されている。
【0039】
前記したように、視度調節環4を回動することにより、内側筒体8が仮想的中間軸線Xに沿って前進又は後進することにより、第1支持体9aが仮想的中間軸線Xに沿って前進又は後進する。
【0040】
前記中央転輪5は、図2に示されるように、一端を開口する有底円筒体に形成される。図2においては、底部5aが上側に位置し、開口部が下側に位置し、円筒状周側部5bが前記底部5aの両端部から下方に延在するように、形成されている。この底部5aの、前記円筒状周側部5bに囲まれた空間に向かう面の中央部には、円柱状突出基部5cが形成され、その円柱状突出基部5Cの外周には、係合部材7b例えばキーに係合する被係合部材5d例えばキー溝が形成されている。この被係合部材5d例えばキー溝に、回転筒体7の内周面に形成された係合部材7b例えばキーが、嵌められて係合している。つまり、この中央転輪5を回転させると、この被係合部材5d及び係合部材7bの係合によって、回転筒体7も回転するように、なっている。
【0041】
前記円柱状突出基部5cの先端部から更に細径の装着ピン5eが延在形成され、この装着ピン5eが、細径部6hにおける貫通孔に、回転可能に嵌入されている。この装着ピン5eの先端部には円柱状の太径ヘッド5fが形成される。この太径ヘッド5fの外径は、前記細径部6hの内径よりも大きく設計される。この太径ヘッド5fの外周側面には断面半円形をし、かつ前記太径ヘッド5fの外周面を一巡するように形成された環状溝が2個形成されている。2個の太径ヘッド5fそれぞれを、太径ヘッド5fの端面側から、第1環状溝5g及び第2環状溝5hと称する。
【0042】
これら第1環状溝5g及び第2環状溝5hには、ボール配設孔6jに配設されたボール6kの一部が、第2付勢部材6m例えば板バネによる付勢力で押圧された状態で、嵌り込むことができる。
【0043】
一方、筒状基体6の円筒状外周部6cにおける環状端面には歯6nが設けられる。前記中央転輪5における底部5aの、円筒状周側部5b近傍に、環状に列設された歯5iが設けられている。この歯6nと歯5iとは、中央転輪5を仮想的中間軸線Xに沿って移動させると、互いに歯合することができるように、形成される。
【0044】
歯6nと歯5iとが噛み合わずに相互に離れる状態となっている前記中央転輪5の位置が、前記第1環状溝5gにボール6kが嵌り込み、これによって中央転輪5に外力を加えなければ中央転輪5がその位置を安定的に保持し、この状態にある中央転輪5を仮想的中間軸線Xに沿って移動させて歯6nと歯5iとが噛み合う状態になったときに、前記第2環状溝5hにボール6kが嵌り込み、これによって中央転輪5に外力を加えなければ中央転輪5がその位置を安定的に保持することができるように、前記第1環状溝5g及び第2環状溝5hの形成位置、及びボール配設孔6jの開設位置が、決定される。
【0045】
次に、以上構成の双眼鏡の作用について、以下に説明する。
【0046】
操作者が双眼鏡を両手で持って構え、両眼に接眼部を当てる。初期状態つまり焦点調節をする前の状態では、図2に示されるように、歯6nと歯5iとが噛み合わず、また歯4dと歯6bとが噛み合わない状態であり、この状態では図3(A)に示されるように、回転結合部3から視度調節環4が離れた状態になっている。この状態のとき、ボール6fが第1環状溝4eに嵌り込み、ボール6kが第1環状溝5gに嵌り込んでいるので、この中央転輪5および視度調節環4に仮想的中間軸線Xに沿う方向に外力を加えない限り、仮想的中間軸線Xを中心にして回動可能となっている以外に、安定した位置にある。
【0047】
操作者が例えば指で中央転輪5を回転させる。中央転輪5が回転すると、被係合部材5d例えばキー溝に係合部材7b例えばキーが係合しているので、回転筒体7が回転する。外側筒体11に結合している係合片11bが規制部材4gにより回動不能に規制されているので、回転体7の回転により、内側筒体8及び外側筒体11が一体になって仮想的中間軸線Xに沿って例えば図2における下方又は上方に移動する。内側筒体8に結合された第1支持体9aと外側筒体11に結合された第2支持体9bとが、仮想的中間軸線Xに沿って同時に移動する。これにより、焦点調節が行われる。焦点調節が終わると、この中央転輪5を仮想的中間軸線Xに沿って押圧する。押圧により中央転輪5における歯5iと円筒状外周部6cの端面に形成されている歯6nとが噛み合うと共に、ボール配設孔6j内に配設されているボール6kが第1環状溝5gから第2環状溝5hへとその没入位置を変える。
【0048】
歯5jと歯6nとが噛み合うことにより、中央転輪5は回転不能になり、その位置が固定される。したがって、中央転輪5を不用意に例えば手で触れることがあっても、中央転輪5がその位置を狂わせることがないので、調節された焦点に狂いが生じない。
【0049】
次いで、視度調節環4を指で操作することにより、視度調節環4を回動させる。視度調節環4が回動するにつれて規制部材4gに規制された係合片11bも回動し、外側筒体11も回動する。通常の場合、この外側筒体11の回動範囲は仮想的中間軸線Xを中心とする中心角で120度以内に設計される。
【0050】
外側筒体11が回動すると、この外側筒体11の内周面に形成されている雌ネジ11aに噛み合う雄ネジ8bを外周面に有する内側筒体8が、回動する。内側筒体8の内周面に形成されている雌ネジ8aに噛み合う雄ネジ7aを有する回転筒体7は回転不能になっているので、外側筒体8の回動により内側筒体7が回動しつつ仮想的中間軸線Xに沿って移動する。内側筒体7の移動により、第1支持体9aだけが仮想的中間軸線Xに沿って移動し、第2支持体9bは移動しない。これによって、第1支持体9aに連携する調節レンズによる視度調節が完了する。
【0051】
視度調節が完了すると、視度調節環4を、仮想的中間軸線Xに沿って移動させる。視度調節環4を仮想的中間軸線Xに沿って移動させることにより、歯4dと歯6bとを噛み合わせることにより、視度調節環4が回動不能になる。また、ボール6kが第1環状溝5gから第2環状溝5hへとその配設位置を変えて、ボール6kが第2環状溝5hに収まるので、この視度調節環4は大きな外力が作用しない限り仮想的中間軸線Xに沿って移動せず、視度調節環4による視度調節に狂いを生じることがない。
【0052】
以上、この発明の一例について説明したが、この発明は前記実施の態様に限定されることはなく、様々の設計変更を行うことができる。
【0053】
この発明における支持体は、双眼鏡における一対の鏡筒内それぞれに存在する接眼光学系と対物光学系との間に設けられる調節レンズを、光軸に沿って前後進可能に支持することができる限り、様々の機械的構造を取り得る。支持体は、一つの部材で形成されていても複数の部材の組合せにより形成されていても良い。この支持体の材質及び寸法は、双眼鏡を用いるフィールド及び状況等に応じて適宜に決定することのできる設計事項である。
【0054】
この発明における中央転輪は、接眼光学系と対物光学系との間に配設される調節レンズを光軸に沿って前後進可能に支持すると共に互いに平行に配置された一対の支持体の軸線に平行であり、かつ前記一対の支持体の中間に位置する仮想的中間軸線を中心にして回転することができ、この回転によって、一方の支持体に結合される内部筒体を回転させることができる限り、様々の構造を有することができる。この中央転輪は、一つの部材で形成されていても複数の部材の組合せにより形成されていても良い。この中央転輪の材質及び寸法は、双眼鏡を用いるフィールド及び状況等に応じて適宜に決定することのできる設計事項である。
【0055】
この発明における内部筒体は、中央転輪の回転により回転することができること、及び外周面に雄ネジを有すること、及び視度調節のための調節レンズに結合される支持体を結合することという条件を満たす限り、様々な構造を採用することができる。この内部筒体は、通常、中央転輪が有する仮想的中間軸線を共有する軸線を有する筒状体を呈する。この内部筒体の材質及び寸法は、双眼鏡を用いるフィールド及び状況等に応じて適宜に決定することのできる設計事項である。
【0056】
この発明における外部筒体は、前記内部筒体の外周面に形成された雄ネジと噛み合う雌ネジを内周面に備えること、視度調節環を回転させると回動可能である一方、前記中央転輪の回転により回転不能であること、及び焦点調節のための調節レンズに結合される他の支持体を結合することという条件を満たす限り、様々な構造を採用することができる。この外部筒体は、通常、中央転輪が有する仮想的中間軸線を共有する軸線を有する筒状体を呈する。この外部筒体の材質及び寸法は、双眼鏡を用いるフィールド及び状況等に応じて適宜に決定することのできる設計事項である。
【0057】
視度調節環は、内側筒体に結合する支持体に取り付けられた調節レンズを仮想的中間軸線に沿って前後進させることが機能を発揮するために、前記外側筒体を回動させることができる一方、中央転輪が回転しているときには外側筒体を回動ないし回転させないように形成される。この視度調節環の材質及び寸法は、双眼鏡を用いるフィールド及び状況等に応じて適宜に決定することのできる設計事項である。
【0058】
中央転輪回転規制部は中央転輪の回転を可能にし、また、回転を不能にする機能を有する限り様々の構造を採用することができる。視度調節環回転規制部は視度調節環の回転を可能にし、また、回転を不能にする機能を有する限り様々の構造を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1はこの発明の双眼鏡の一例を示す説明図である。
【図2】図2はこの発明の双眼鏡の一例における構造を示す一部断面説明図である。
【図3】図3はこの発明の双眼鏡の一例における中央転輪及び視度調節環を示す説明図であり、図3(A)はいずれも回転可能な状態にある中央転輪及び視度調節環を示す説明図であり、図3(B)はいずれも回転不能な状態にある中央転輪及び視度調節環を示す説明図である。
【図4】図4は従来の双眼鏡の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1 双眼鏡
2a 一方の鏡筒
2b 他方の鏡筒
3 回動結合部
4 視度調節環
4a 操作環部
4b 装着円筒部
4c 環状段差面
4d 歯
4e 第1環状溝
4f 第2環状溝
4g 規制部材
5 中央転輪
5a 底部
5b 円筒状周側部
5c 円柱状突出基部
5d 被係合部材
5e 装着ピン
5f 太径ヘッド
5g 第1環状溝
5h 第2環状溝
5i 歯
6 筒状基体
6a フランジ
6b 歯
6c 円筒状外周部
6d ボール配設孔
6e 付勢部材
6f ボール
6g 貫通孔
6h 細径部
6i 太径部
6j ボール配設孔
6k ボール
6m 第2付勢部材
6n 歯
6p 第2装着貫通孔
6r 装着貫通孔
7 回転筒体
7a 雄ネジ
7b 係合部材
8 内側筒体
8a 雌ネジ
8b 雄ネジ
8c 円環状フランジ
9a 第1支持体
9b 第2支持体
10 適宜の部材
11 外側筒体
11a 雌ネジ
11b 係合片
11c 第2フランジ
X 仮想的中間軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の接眼光学系と対物光学系との間に設けられる調節レンズを光軸に沿って前後進可能に支持するとともに互いに平行に配置された一対の支持体と、
前記一対の支持体の中心軸線に平行に、かつ前記一対の支持体の中間に位置する中心軸線を中心にして回転可能な中央転輪と、
この中央転輪の回転により回転するとともに外周面に雄ネジを備え、一方の支持体を結合する内部筒体と、
前記内部筒体の雄ネジに螺合する雌ネジを内周面に有すると共に他方の支持体を結合し、かつ外周面に係合片を備えた外部筒体と、
前記中央転輪と同軸に回転可能に形成されるとともに前記係合片を、回動不能及び軸方向移動可能のいずれかに規制する規制部材を備えた視度調節環と、
中央転輪を回転可能及び回転不能のいずれかに規制する中央転輪回転規制部及び視度調節環を回転可能又は回転不能のいずれかに規制する視度調節環回転規制部と、
を有することを特徴とする双眼鏡。
【請求項2】
前記中央転輪は、回転操作可能な操作円筒体と、その操作円筒体の内側であって、その中心軸線を共有するように前記操作円筒体の内部に設けられた中心軸体とを備えて成り、前記中心軸体は、この中心軸体が挿入される挿入孔を備えると共に前記視度調節環を回転可能に装着する外周面を備えた筒状基体における前記挿入孔に挿入配置され、前記中央転輪回転規制部は、前記筒状基体の外周端部に形成された中央転輪用係合部及び前記中央転輪に設けられた中央転輪被係合部とからなり、前記視度調節環回転規制部は、前記筒上基体の外周に形成された視度調節環用係合部及び前記視度調節環に設けられた視度調節環用被係合部とからなる前記請求項1に記載の双眼鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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